※人間と実装石の会話は全てリンガル使用済みとしてお読みください。 俺はしがない庭師。 今日は役所から請け負った仕事で、公園の植え込みを刈り込んでいる。 昼飯を食べるためにベンチで休憩していると、二匹の野良実装がなにやらバタバタと暴れていた。 「デェェン! やめてデスゥゥ!」 「デププwww クックなしのみすぼらしいドレイジッソウは黙って美しいワタシのオモチャになってればいいデスゥ♪」 なんだ、喧嘩かと思ったら一方的なリンチ……虐めか。 それにしても“クック”ってなんだ? と思ってよく見ると、虐められている野良実装のほうには靴がなかった。 クックというのは靴のことか…… 実装石というものは自分たちと少しでも違う者を徹底的に差別し、排斥するというのは知っていたが……それにしても禿裸ならともかく、靴がないだけで奴隷扱いにされるんだな。 「デェェーン! デェェーン!」 「デプププwww いい気分デスゥ♪」 俺は別に「いじめ、カッコ悪い」という思想の持ち主ではない。 むしろ『弱いやつは強いやつに何をされても文句は言えない』という、弱肉強食の掟こそがあらゆる生き物に適用される真理だと思っている。 それにしても、この光景は無性に不愉快だった。 実装石の戦力差など、人間から見れば熟練工がフライス盤で削り出した金属の板を指でなぞり、ミクロン単位の凹凸を感じ取ろうとするようなものだ。 そんな実装石が、少しばかり自分が上の立場に立ったからといって調子こいてる様は殺意を催すものでしかない。 実装石虐待の世界では少しばかり名の知れた俺としては、この糞蟲をこのまま生かして返すのはどうにも腹に据えかねる。 よし……仕事に戻る前に、かつて『虐待師 ザ・ニン○ャ』と異名をとった俺の技を少しばかりこいつに見せてやるとするか。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- まずは準備だ。 太い枝を切り落とすための大鉈は持ってきているが、活性剤の類がないな。 あ……いや、あったわ……今日の朝、路上で出勤中のリーマンたち相手に配ってた試供品のモン○ターエナジーが。 冷えてないのなんてその場で飲めねえだろと思いつつ、作業着のポケットに入れたままにしてた。 すでに人肌まで温まって飲めたもんじゃないし、とりあえず食い終わったコンビニ弁当の容器に注いで活性剤の代わりにしよう。 糖分や栄養分さえあればいいんだから、これならブドウ糖とカフェインでばっちり効くだろ。 「おい」 準備が終わったところで、まだリンチを続けている成体実装の後ろから声をかける。 「デデッ……ニンゲンが何の用デス。ひょっとして高貴で美しいワタシを飼いジッソウにしたいデスゥ?」 そう言いつつ口元に手を当て、媚びのポーズをとる自称・美しい実装石。 いやあ、虐待派としての本能に訴えかけてきてくれるいい糞蟲っぷりだ。 だが、俺が声をかけたかったのはこいつではない。 「お前じゃない、そっちの泣かされてるほうの実装石だ」 「デギャァァ!!! なんでそんなブサイクなやつに声をかけるデスゥ! 飼うなら美しいワタシのはずデッシャァァァ!!!!!」 糞蟲が金切り声を上げながら地団駄を踏む。 いや、飼うなんて話は一言もしてねえし。 というか、実装石の顔なんて人間には全く見分けがつかないんだが……実装石同士では顔の美醜が区別できるのか? そう思って虐められていたほうの実装石の顔をよく見てみる。 うーん、確かに糞蟲のほうのこいつと比べると、若干ではあるがブサイクな気がしてきた。 糞蟲のほうは実装石の特徴である三ツ口が定規で書いたように直線的な『A』型で整っているのに対し、虐められていたほうは口元が『人』の字のように微妙に曲線的だ。 しかもそれがウサギのような可愛さを感じさせることは微塵もなく、むしろブルドッグやパグといった『ブサ可愛い』と言われる犬から可愛さだけを限りなく削ぎ落としたような、ブサイクというより愛嬌のない顔というべきか。 まあ良蟲だろうと糞蟲だろうと、ましてや美しかろうとブサイクだろうと飼う気など全くないし、こいつへの慈悲でやることでもないのだから顔の造形など正直どうでもいい。 「おい、そこのお前……こいつが憎くはないか?」 「デ……」 虐められていた実装石が顔を上げ、俺のほうをじっと見つめてくる。 うん、殴られてボロボロなせいもあるのか分からんが、気になりだすと余計にブサイクに見えるな。 「こいつが憎いか? もし復讐できるものなら、自分と同じ目に遭わせてやりたいか? と聞いてるんだ」 「デデェッ!? このニンゲンはギャクタイハデスゥ? う、美しいワタシをテゴメにしてあんなことやこんなことを………デヒィィィーッ!」 糞蟲が妙な想像をして胸と股間を隠すように抑えてやがる。 黙らねえとその口をキ○タマの皺みてえにグチャグチャに縫い合わせた後、亀頭にサンドペーパーを接着したマラ実装の前に放り出すぞこの色ボケ糞蟲が。 「デェェ……憎いデスゥ………できるものならこいつをワタシと同じ目にあわせてやりたいデスゥ!」 それを聞いた俺は、思わずニヤリと笑みをこぼした。 「………恨み……聞き届けたり………」 まるで某地獄の使者のように呟くと、俺は糞蟲のほうに向き直り、その髪を掴んで宙に持ち上げた。 「だ、そうだ」 「デヒィィーッ!?」 さて、こいつをどうやって痛めつけてやろうか。 糞蟲というやつは肉体的な痛みを与えても泣き叫ぶばかりで、あまり絶望を味わわせることができない。 『なぜ可愛いワタシがこんな目に』という、それ自体がムカついてしょうがない思考による絶望を向こうが勝手に味わうことはあるが、こちらが与えたい絶望というのはそういうものではないのだ。 そのため、糞蟲を心から絶望させる虐待をするには必然的に搦め手を使うことになるのだが、この手の輩に最も効果的な方法は……やはり、ご自慢の顔を奪ってやるのがいいか。 それも最も屈辱的な方法でだ。 ————— ドボォ! ————— 「デボォェ!」 まずはジタバタと暴れないよう、ボディブローを食らわせて悶絶させる。 そして胸の高さまで持ち上げた糞蟲を横向きにして、 ————— ザンッ! ————— 「デビャァァァァァァァッ!?!?!?」 大鉈を縦に一閃し、頭巾からはみ出している部分、つまり顔を横から一気に削ぎ落とした。 眼球がはまったままの顔がべろりとめくれて地面に落ちる。 「デビャッ! デビョァァッ!」 筋繊維がむき出しとなり、もはやスプラッタ映画に出てくる何かと化した顔で、糞蟲が血泡を噴きながら暴れ回る。 その体を下ろし、痛みで地面をゴロゴロと転げ回るのを無視して、 「おい、お前もこっちに来い」 「デヒッ!?」 目の前で起こった凄惨な光景を目にした恐怖でパンコンしているブサイクを手招きして呼び寄せる。 「デ……デェェ………」 ブサイクは怯えながらも、俺の言うとおりにするしかないと判断したのか、おずおずと近づいてきた。 「さっさと来い!」 「デェェェッ!?」 ブサイクの髪を掴んで持ち上げ、そして————— ————— ザシュッ! ————— 「デギェェェェッ!!!!!」 糞蟲と同じように、大鉈で顔を削ぎ落とした。 違うのは、ブサイクの体を地面に下ろさなかったことだけ。 下ろしてしまうと、いま地面を転がっている糞蟲のほうと見分けがつかなくなってしまうためだ。 「ブビェァァァ!!!」 「あーうるせえ! ちょっと静かにしてろ! いま治してやるから」 そう言いつつ、先ほど削ぎ落とした糞蟲の『自称・美しい顔』をブサイクのほうに貼り付け、その頭を用意しておいたモン○ターエナジー入りの弁当箱に浸す。 ————— シュゥゥゥゥゥ……… ————— まずボコボコと泡が立ち、それが静かになると細かい泡が立ち始める。 最初の大きな泡はブサイクが溺れて吐き出した空気だが、後の細かい泡はモン○ターエナジーの炭酸ではなく、傷口が再生しているときの細胞分裂によるものだ。 そして三分ほど経ってから顔を上げさせると、貼り付けた糞蟲の『自称・美しい顔』が見事にブサイク……いや、『元・ブサイク』の顔に定着していた。 おお、さすがはモン○ターエナジー、ばっちり効いてるじゃないか。 元・ブサイクは酸欠で仮死状態になっているが、それはまあ後で蘇生させればいいので、今度は糞蟲のほうの処置に移る。 顔を削ぎ落としたのとは逆の順番で、元・ブサイクからとったブサイクな顔を糞蟲の顔の切り口に貼り付け、同じようにモン○ターエナジー入りの弁当箱に浸して傷口を再生させる。 また三分ほど経ってから顔を上げさせると、糞蟲の『自称・美しい顔』はブサイクのものと交換され、糞蟲は『かつては美しかった(?)糞蟲』に成り果てていた。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「おい、二匹とも起きろ」 脇の下のたるんだ肉を思い切りつねって気付けをする。 「デギャァッ!?」 「デギャァァッ!!!」 刺すような痛みに思わず二匹が仮死状態から復活した。 「デ……ここは………」 「い、一体なにが起こったデスゥ?」 「ここは公園のトイレだ。お前らに面白いものを見せてやろうと思ってな」 そう言いつつ、俺は二匹の襟首を掴んで持ち上げ、手洗い場に備え付けてある鏡を見せてやった。 「デ………」 「………デ?」 二匹とも、何がなんだか分からないといった顔だ。 「分からんか? じゃあさっきブサイクなほうを虐めていたやつ、鏡に向かって手を振ってみろ」 言われたほうは怪訝な顔をしていたが、とりあえず俺の言うとおりにしてみた。 だが、鏡の中で手を振ったのは自分が虐めていたブサイクなほうの実装石。 「……………デデッ?」 「今度はさっき虐められていたほうのやつ、鏡に向かって手を振ってみろ」 もう一匹が、言われるままに手を振ってみる。 しかしこれもまた、鏡の中で手を振ったのは顔立ちがいい方の実装石。 「……………デデェッ!?」 そしてお互いが顔を見合わせるが、そのまま固まって動かない。 多分こいつらは今まで鏡を見たことがないのだろう。 お互い見ているその顔こそが、自分自身の顔であることが分からないのだ。 「これはな、鏡といって自分の姿を映すものだ。さっきブサイクなほうを虐めていたやつが手を振ると、なぜか鏡の中ではブサイクなほうが手を振っている。そして虐められていたほうのやつが手を振ると、 なぜか鏡の中では美しい(自称)ほうが手を振っている………これがどういうことか分かるか?」 「デェェ………どういうことデスゥ」 「な、何がどうなったデスゥ?」 「お前らの頭では分からんか………ならば事実だけを教えてやろう。ブサイクなほうの顔を美しい(自称)ほうの体に、美しい(自称)ほうの顔をブサイクなほうの体に付け替えてやったんだよ」 「「デ………デェェーーーーッ!!!!!?」」 二匹が同時に悲鳴を上げる。 「これぞ忍法『顔うつし』!!!」 そう、これこそ俺が虐待派の間で『ザ・ニン○ャ』などと異名をとる所以である。 実装石という生物は( ○ A ● )で表現できるぐらい単純な顔のくせに、何の根拠もなく自分を『美しい』だの『可愛い』だのと思い込む。 その習性を逆に利用し、実装石の価値観から見ても醜い容姿に貶めることで、肉体的な苦痛ではなかなか絶望しない糞蟲を追い込むことができるのだ。 一般的な方法としては髪や服を奪うというのもあるが、今回俺がやった方法は自分自身の生身の体が、健常な状態でありながら根本から醜くなるという点において、実装石にとっては髪や服以上に取り返しのつかない 救いようのない絶望を感じるのだ。 「デッギャァァァ! な、なんてことしやがるデスゥゥー!!! ワタシの美しい顔を返せデシャァァァ!!!!!」 元・美しかった糞蟲が半狂乱になって俺の手の中でジタバタと暴れる。 「やかましい!」 ————— ブチッ! ブチぶちっ! ビリビリィッ! ————— 元・美しかった糞蟲の髪をちぎり、服を引き裂いて、あっという間に禿裸にする。 いつもならやらないことだが、今回は元・ブサイクのほうが靴を失っていたので、それ以上のものを奪うことでバランスを傾けたのだ。 「デ、デェェェッ!?」 「これでお前はさんざん馬鹿にしていたブサイクな顔になったうえ、しかも禿裸だ。さて………さっき虐められていたほうの元・ブサイクよ、お前はこいつの美しい(あくまで自称)顔を手に入れたうえ、 しかもこいつは靴どころか髪も服も失ったわけだが………どうする?」 そう言って元・ブサイクのほうを見てみると、糞蟲の『自称・美しい顔』を手に入れたことですっかり自信をつけたのか、まるで体から闘気が立ち上るのが見えるようだ。 「デプッ………デプププププ……………よくも今まで好き勝手やってくれやがったデスゥ……………ワタシの怒りを思い知れデッシャァァァァァ!!!!!」 「デ、デヒィィーッ!!!」 たちまちリンチが始まった。 変わったのは顔だけで体はそのままなのだから、本来ならば彼我の戦力差はそのままのはずなのだが。 そもそも実装石同士の争いなどというものは、体格が同じであれば勝負はほとんど勢いのみで決まる。 要は図々しく、ふでぶてしい個体ほど有利になるというだけなのだ。 顔を奪われ、髪と服を奪われて意気消沈し、自分自身の心が『自分はドレイ扱いされるブサイクな禿裸なのだ』と認めてしまったせいで、糞蟲と元・ブサイクの力関係は完全に逆転していた。 「デェェーン! やめてデスゥゥー!」 「オマエはそう言ったワタシに何をしたデスゥゥーッ!!!」 まあ、元・ブサイクの言うとおりだわな。 人間の世界にしても、不幸な目に遭った人間を嘲笑ったり助けようとしない連中というものは、『明日はわが身』という言葉を完全に失念しているか、もしくは無知ゆえにそれを知らない。 気づくのはいつも、自分が同じどん底まで墜ちてからだ。 元・ブサイクによるリンチはどんどんエスカレートし、糞蟲の(元・ブサイクの)顔はまるで某怪談に出てくる幽霊のようにボコボコに腫れ上がっている。 「よし、そこまででいいだろ。最後は俺にトドメを刺させろ」 返事を聞くことなく元・ブサイクの体を足で押しのけ、糞蟲の耳を摘んで引っ張り上げる。 「デェェン……もうゆるしてデズゥゥ………助けてデズゥゥゥ………」 「(フン……助かるかどうかはお前の根性次第だ……)うーん、いい顔になったじゃないか。ほれっ! 自分の姿を鏡で見てみろ!」 そう言いつつ糞蟲の両肩を掴み、鏡の前でしっかりと前を向かせる。 すると次の瞬間————— 「デ……………」 「ん?」 「デッアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」(パキン!) この世の終わりのような悲鳴と共に、糞蟲の体内で偽石が砕ける音が聞こえた。 糞蟲はというと、ボコボコの顔をまるでムンクの『叫び』のように歪め、両目から黒い涙を流して、もの凄い形相のまま固まって死んでいた。 美しさを売りにして生きてきた糞蟲ゆえに、自分の姿のあまりの醜さに精神が耐えられなかったのだろう。 もしも『こんなことあるわけないデス………これはきっと夢デスゥ………』みたいな感じで、精神だけが壊れて現実逃避されていたら興醒めだったところだが、上手く偽石まで砕けてくれた。 禿裸にされただけでなく、ついさっきまで見下していた相手に自慢の顔を奪われ、おまけにブサイクになった自分の顔をさらにボコボコに歪まされたのが効いたようだな。 死んだ糞蟲の体を地面に下ろし、元・ブサイクに見せてやる。 「こんなもんでどうだ。満足したか?」 「大満足デスゥ!」 「そうか………じゃあ俺は行くぞ。そろそろ仕事に戻らにゃならん」 そう言って、公園のトイレから出て行こうとする。 すると後ろから、元・ブサイクが俺に声をかけてきた。 「ニンゲン、ちょっと待つデス」 「ん?」 「オマエは実に使えるニンゲンデス。だから美しくなったワタシを飼うことをトクベツに許可してやるデッスーン♪」 すっかり調子に乗った元・ブサイクが、腰をくねらせながら気色の悪いポーズをとる。 あー、調子こきすぎてやっぱり糞蟲化しちゃったか。 今回は糞蟲がムカついたから久しぶりにやっちゃったけど、本当は実装石虐待からは足を洗ったつもりでいたから、その台詞さえなければこのまま帰してやってもよかったのになあ……… 少々面倒臭いが、言っちゃったからにはしょうがない……死んでもらおうか。 『口は災いの元』とは、本当によくいったものだと思う。 糞蟲化した元・ブサイクの言葉は無視して、死んだ糞蟲の体を再び手洗い場の上に乗せ、さらに作業着の袖ポケットに挟んであったカッターナイフで胸を開く。 さっき偽石が砕けるときの音は胸から聞こえたから、破片はこのあたりにあるはずだ。 そして内臓(といっても糞袋だけみたいなもんだが)を軽く引き出して水道水でジャブジャブ洗い、中から出てきた偽石の破片を全て取り除いた。 「デ? ニンゲン、何してるデス? さっさとワタシを楽園に連れて行くデスゥ」 元・ブサイクに向き直り、今度はその体を乱暴に引っ掴む。 「デェェッ!? ご主人様に何をするデスゥゥ!」 『いつからお前が主人になったんだ糞蟲が』という言葉を飲み込みつつ、スマホの偽石サーチアプリを起動して位置を特定し、その部分をカッターで切り開いてやった。 「デギャァァァッ!!!」 傷口に指を突っ込むと、指先に骨とは違うコリコリとした感触。 あった、これがこいつの偽石だ。 偽石を取り出し、糞蟲化した元・ブサイクの体は地面に放り出すと、それを今度は死んだ糞蟲のほうの体の中に突っ込み、弁当の空箱に満たしてあったモン○ターエナジーを傷口に直接注ぎ込んだ。 さらに、先ほど破いた糞蟲の服を包帯代わりにして、胴体をグルグル巻きにしておく。 剥がした顔がくっついたんだから、これも数分すれば傷口が塞がるはずだ。 「デ、デギャァァス!!! ワタシのお石を帰せデスゥゥゥ!!!」 元・ブサイクが立ち上がり、俺の足に殴りかかろうとする。 だが、 ずるっ—————べちゃん! 「デェアッ!?」 元・ブサイクは足を滑らせて転んでしまった。 「デェェッ!? あ、足がうまく動かないデス? デ……なんだかオメメもぼやけて……………ニ、ニンゲン! ワタシにいったい何をしたデスゥゥ!!!」 「なーに、お前の偽石をこっちの糞蟲の死体に移植してやっただけさ。偽石ってのはまさにお前らの意識、魂そのものみたいなもんだからな。別の個体の体内に移植すると、そっちの肉体にお前の意識が乗り移ってしまって、 そのうち元の体と完全に入れ替わってしまうのさ。ほぉら………見てみろ。お前がジタバタ動こうとしているのに、だんだんそっちの体は動かなくなって。こっち体のほうが動き始めてるぞぉ♪」 俺の言葉通り、両目が完全に白濁していた糞蟲の体が時折電気を流したかのようにピクピクと動く。 「デェェッ! イ、イヤデスゥ! そんなブサイクな顔になりたくないデスゥゥーッ!!!!!」 オイオイ、こっちがお前の元々の顔だろうが。 「まあ……あと数時間もすれば完全に意識と体が入れ替わるだろう。これぞ忍法『順逆自在の術』ってな」 「デッギャァァァ! な、なんてことしやがるデスゥゥー!!!」 ………さっき死んだ糞蟲と全く同じ台詞を吐きやがって。 その後、俺は仕事に戻って作業を続けた。 そして夕方、日も暮れかけた頃————— 「よーし、これでいいだろう。後は片付けて撤収だな………おっとその前に、小便がてらさっきの糞蟲の様子でも見に行くか」 トイレを訪れてみると、元・ブサイク—————いや、元の顔に戻ったのだからブサイクというべきか—————は、手洗い場の鏡の前に座った姿勢で、先ほど死んだ糞蟲と全く同じ表情とポーズのまま固まって死んでいた。 混濁した意識が戻った後、自分の姿を鏡で見て発狂し、偽石が崩壊したのだ。 顔の傷は胸の傷と同じようにある程度治癒していたのだが、ブサイクな顔に戻された挙句、体のほうは他石のもので、しかも靴どころか服も髪もない禿裸ときては、少なくとも元の境遇より二段階は落とされたことになる。 美しい顔(自称)を手に入れ、さらには飼い実装になれると思い込んで上がっていた分、絶望のあまり偽石が崩壊してもおかしくはないだろう。 実装石の顔には個体差があり、美醜があるという。 少なくとも愛護派はそう主張するし、虐待派ですら『虐待して楽しい顔』『嗜虐心をそそる顔』というものは確かにあるという。 それでもなお、実装石が顔の美醜をネタに他石を見下しているのを見るのは滑稽かつ不愉快なものだと思う。 ( ○ A ● )で表現できるほど単純な顔のくせに、その配置や微妙な角度の差を比べてどうするというのだ。 お前らの顔など、絵心が全くない俺でもペイントソフトで図形ツールだけを使って描けるというのに。 俺は死んだ糞蟲の体を拾うと、手足と首を引きちぎって六つに分割し、それを便器に放り込んで流す。 さらにブサイクのほうの体も同じように分割して便器に放り込み、小便を済ませてから流した。 「………じゃあな糞蟲ども。あの世ではブサイク同士仲良くしろよ」 -END- ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- あとがき 今回は別に書いていた作品が詰まってしまい、気分転換のつもりでサラっと書いてみました。 忍法の元ネタはもちろん○ン肉マンのザ・ニン○ャが使った技からです。 というか、彼はブ○ッケンJrの顔を奪って何がしたかったんでしょうね。(衆人環視の中なんだから、成り代わってもバレバレなのに……) 個人的には、実装石の顔にはさほど美醜の差はないと思ってます。 描く絵師さんによって好き嫌いはあるんですが、同じ絵師さんが描いたものなら同じだろと。 それで実装石が自分を可愛いだの何だのと言ってるのが常々気に食わなかったので、『そんなにご自慢の顔なら実装石の目から見たブサイクの顔と交換してやろうじゃないか』と思い立ったのが今回のお話を書いたきっかけです。 次回作は……今書いているものがあとはラストだけなので、それがスラスラと書けたらすぐに出せるんですが……… もしかしたら詰まったままで、また別のものを書くことになるかもしれません。

| 1 Re: Name:ジグソウ石 2016/07/21-21:18:23 No:00002448[申告] |
という台詞に自己レスですが、私が描くとこんな感じになります |
| 2 Re: Name:壇 実 2016/07/22-00:12:07 No:00002449[申告] |
| >ジグソウ様
ペイントソフトでこんなふうに描きたいのですが、未だに使い方がわからんとです・・・。 |
| 3 Re: Name:ジグソウ石 2016/07/22-01:08:13 No:00002450[申告] |
いやー、これは簡単ですよ?(ちょっと時間はかかりましたが) 参考画像乗せてみましたが(ちなみにWin7です) 図形ツールの赤で囲ったやつと、あとはオレンジで囲った 「消しゴム」などのツールしか使ってません まず「楕円」で頭と顔の輪郭(二つの○)を描きます 次に「曲線」ですが(参考画像の左から二本目の線です) これはまず一番左の線のように、A点からB点の線を引き、そこからクリックすることで 線を二回まで引っ張り、曲げることができます (一番左の線が、二番目の線のように曲げられます) それを使ってアーチを描き、耳をつけます 前髪も同じように描き、また「楕円」を使って目を描き、今度は「直線」を使って口の「A」を描きます そこまでできたら、耳の部分の付け根の、輪郭の円と重なってるところや 前髪のはみ出した線などを「消しゴム」で消します さらに「曲線」を使って体と髪を描き、エプロンは大まかな四角を書いた後に いくつも「楕円」を並べ、内側の線だけを「消しゴム」で消すという方法で描きました あとは色を自分で作るのが面倒だったので、他の方の画像の服や髪、目の色の部分だけをトリミングして余白部分に貼り付け ツールの「スポイト」で色を抜き出して、あとは「塗りつぶし」で一気に塗っただけです それで塗りきれなかった部分は「鉛筆」でチマチマ塗り、仕上げに消しゴムをかけて フリーハンドで描いたのは胸のリボンだけですよ |
| 4 Re: Name:匿名石 2016/07/22-01:20:41 No:00002451[申告] |
| 調子こいた実装が懲らしめられるのは痛快だわ
実装同士とはいえ調子付かせるべきでは無い、この男はしっかり両者を落とす虐待師の鏡 手が込んだ技術を駆使して面白いし最後も自壊に追い込むあたり手が込んでいる |
| 5 Re: Name:匿名石 2016/07/22-05:55:27 No:00002452[申告] |
| 鏡を知らないという部分が一番面白かった。
お前ら自分の顔が相手より上か下か今迄どう判断してたんだと。 |
| 6 Re: Name:壇 実 2016/07/22-16:22:21 No:00002454[申告] |
| >ジグソウ様
お手数おかけして、すみません。 ご丁寧な説明をしていただき、ありがとうございます。 「スポイト」なんてあったんですね。 ホント、知らんかったとです。感謝します。 |
| 7 Re: Name:匿名石 2016/07/22-17:39:31 No:00002455[申告] |
| > それでもなお、実装石が顔の美醜をネタに他石を見下しているのを見るのは滑稽かつ不愉快なものだと思う。
> ( ○ A ● )で表現できるほど単純な顔のくせに、その配置や微妙な角度の差を比べてどうするというのだ。 超同意 人間にも良くあることだけど、変わんねーし!その本人の中でだけ重要なんだろう拘りキメーし!ってのはイライラ来る しかもそれを根拠に他人を攻撃してたりすると、嫌悪感が閾値越える |
| 8 Re: Name:匿名石 2016/07/22-22:59:26 No:00002456[申告] |
| 丸顔の実装石はやっぱり可愛い |
| 9 Re: Name:匿名石 2016/10/01-21:26:51 No:00002549[申告] |
| トイレに流すのは公園と水道局の迷惑だからよくないと思った
あとは傑作ですなあ |