『次は破裂〜次は破裂〜です』 抑揚のない声のアナウンスが聞こえた後、僕の右側で小さな物体が不意に浮かんだと思ったら一瞬で床にたたきつけられた。 タパァン! 肉が弾けたと思えないような音を立てた後も、物体はまだ生きていた。 デ…ゲェ… 弾けた物体は実装石だった。 ご丁寧に止めと言わんばかりに、床に腸をへばりつかせた実装石が剥がされて、宙に浮く。 『次も〜破裂、破裂〜です。』 もう一度床にたたきつけられる。今度は頭の中身が床に花を咲かせた。 そこで目が覚めた。 『猿夢』 目が覚めると、ケージに入れてあった実装石の原型が無くなっていた。 夢の中で見た通りの死体だ。 もう、毎朝の事なのでいつも通りに片づける。 ゴミの内わけは、実装石の原型の無い死骸、そしてペンダントの中で砕けた偽石だ。 件の悪夢を見はじめて、かれこれもう20日経っている。 未だによく生きながらえているものだ、と我ながら関心する。 最初はわけもわからず恐怖するだけだった。 『次は活けづくり〜活けづくりです』 『 次はえぐり出し〜えぐり出しです』 『次は挽肉〜挽肉です〜』 そんなアナウンスとともに、一日毎に目の前で人が死ぬのだ。 ましてやそれがどんどん近づいてくる。 そして自分の出番が回ってきた。そう思っていた。 『次は腸詰〜腸詰〜です。』 デスー!デスー! 自分の横から実装石の悲鳴が聞こえる。 目線を横に向けるとそれは家で飼っている実装石のミドリだった。 デッギぃ!デギャぁああぁあああぁああああ! 奇怪な糸巻と、回転式プレス機が現れたと思えば それはミドリの腸を引きずり出し、かと思えば脚からミンチに そして、素材を使って腸詰を作っていく。 まるでどこぞのカートゥ−ンみたいに馬鹿げた手際の良さだった。 そしてミドリがグロテスクな腸詰になって床に放り棄てられたところでその日は目が覚めた。 目が覚めてまず鼻についたのは、実装石の血と糞とが混じった臭いだった。 「あれは夢だったんだ…あれは夢だったんだ…、きっとこの臭いはミドリが寝てる間に自分でやらかしたからなんだ…」 そんな淡い期待はケージを一目見て打ち砕かれた。 そこには夢で見た通りの、グロテスクな腸詰が転がっているだけだった。 慌てて胸元のペンダントの中身を見る。(ペンダントは「何時でも実装ちゃんと一緒、実装ちゃんの?入れ」とか言う愛誤商品だった) ペンダントの中に有ったはずのミドリの偽石は真っ黒な砂になっていた。 それが悪夢の初日の事だった。 つまり僕は、実装石のおかげでひとまず命拾いしたのだ。 そこからは、どうにかしてあの悪夢の処刑から逃れんがために実装石を公園から攫い続けている。 2日目も逃れたのはその直前に見ていたファイナルデスティネーションのおかげと言っていいだろう。 とにかく嫌な予感がしたのだ。目が覚めてからも執着的な視線をずっと感じ続けていた。 起きたその足で公園へ行き、実装石の4石一家を攫って、偽石を抜いた。 デギャテギャテヂャレピッっと、偽石を3つ、二日目はペンダントに封入した。 そして打開策は無いかとネットで検索したりしている内に、気が付いたら電車の中に居た。 「しまった!」 どうにも調べものをしている内に意識が落ちたらしい。 後悔したところでもう遅い。抑揚のないアナウンスが始まった。 『次は〜あぶく〜あぶく〜。です。』 デッ…デデデデデデ テブっ…テベテベテベテベ 隣の座席には実装石が2石。 親と中実装、仔実装の姿はなかった。 どちらも一瞬驚いた顔をした後、口からぼこぼことあぶくを吹いた。 なんだ?この夢にしてはおとなしい殺し方だなと思っていたら、そんな事はなかった。 実装石の緑の服が赤く染まる。 服の下が何か蠢くようにもぞもぞと動いている。 がぼがぼがぼぼぼぼ べばっテばばばばばばば 二石が宙に浮きながら仰向けになる。 だらりと床へ向けて垂れた四肢を伝って、赤と緑の水がびしゃびしゃと滴る。 よく見ると、実装服の腹からどんどん厚みが無くなっていく。 ばっばっデ…ばっ… …っ…っ べちゃりと、ドロドロになった実装服が床に落ちる。 残りの手と脚と頭。合計して10の部品は一瞬、宙に留まっていたが 不意に重力を思い出したかのように続けて床にぼとぼとと落ちた。 床には泡の大量に混じった得体のしれない泥水と、実装石の残骸、そしてどろどろになった実装服が汚らしく転がっている。 2日目はそこで目が覚めた。 テ…テ…テ… 目が覚めて、まず聞こえてきたのは瀕死の仔実装の声だった。 ケージを見れば夢の通りの死に様の親実装と、中実装。 仔実装はいつから起きていたのか、その時に見た時刻は午前4時だった。 兎角、仔実装はなぜか瀕死で、か細い声を出すだけになっていた。 確認がてらペンダントの中身を外に出すと中にはひび割れた小さな偽石が一つ。 後は黒い砂が混じっているばかり。 実装石は過度なストレスがかかると偽石にもダメージが入ると聞いているから 仔実装は恐らく、肉親が異様な死に様をしていく姿を直に観続けてしまったのだろう。 では、黒い砂は…異様な死体になった親実装と中実装の偽石だった物だろうか。 テテテテテテテテ…… ガクガクと仔実装が異様な震えとともに呻く。 手元の小さな偽石からピシピシとひび割れる音が聞こえる。 パキン そのまま仔実装は事切れてしまった。 2日目の悪夢での事だった。 『次は〜本、本です。びらりびらりばらばら。』 一週間ほど経って理解していた事は、どうやら最低でも中実装以上でなくては身代わりにはならないらしいとい事。 ペンダントに幾つ偽石を入れても、身代わりになるのは一回だけという事。 そして、悪夢から逃れようとあがいても、どんな事をしても日付の変わる深夜12時に夢へ連行されるということだった。 がぶがぶとカフェインを取ろうがどんなに激しい運動をしていようが、時計の針が12時を指すと同時に、あの電車の中に居るのだ。 始めの一週間はとにかく余裕が無かった。 毎日毎日、惨殺されるか否か、その恐怖だけが頭をよぎった。 夜になれば時計の針がまるでギロチンの如く、死刑執行をするそれに見えたほどだ。 近くの公園はデスデスデギャデギャとまだにぎやかだった。 『次は、血管、血管。です』 二週間もすれば少し精神的に余裕が出て、どんな条件の実装石ならば身代わりになるのかを調べ始めた。 1度赤目染めの仔を入れたが、夢には連れて行けず意味がなかった。 公園から連れてきた仔や蛆も、夢には連れて行けなかった。 中実装に至っては、夢に連れて行けたり行けなかったりで却って危ない代物だとわかった。 それはつまり、ペンダントに偽石を封入する際は必ず成体実装でなくてはならないということだ。 効率的に命をつなぐならば、公園からは親になれる成体実装だけを攫ってくればいい。 二週間目はあの人が来れば飼い実装にしてもらえると噂になっているらしく、公園に行けば実装石がすぐ寄って来ていた。 公園はデステステチとまだにぎやかだった。 『次は〜増殖〜増殖〜です。』 三週間目、物事は慣れが出ると危ない。 何せ命がかかっているのだ。なまじ油断したならば、おそらく二目と見れぬ姿で、凄惨に苦しんで死ぬ事だろう。 公園の実装石は流石に何かがおかしいと、僕が公園に行っただけじゃ近づいてこなくなった。 どの実装石も遠巻きに様子をうかがっている。 毎日、それも二週間してからは親実装ばかり狙って攫っているのだから不審がられるのも当たり前の事だった。 こそこそと隠れられるので、三週間目からは無駄に労力を使うハメになってしまった。 一々、ごそごそと植え込みや遊具、用具入れの影等を調べ回る必要が出てきたのだ。 既に住人の居ない段ボールも散見するので、思った以上に時間がかかるのだ。 『次は〜芽吹き花咲〜。大輪の花の美しさは何物にも代えがたく〜』 18日目の夢、そんなアナウンスが流れていた。 デッデッデッデッデッデッ…… そんな恨めしい目で見るな。 夢に連れこんだ実装石、その実装服の下が蠢く。 もう何度か見たパターンだ。 こうなると大抵は盛大に拡がって、辺り一面、時には天井までも赤や緑、肉片で汚す。 デデデデデデデデデデデ そろそろだ、覚悟しよう。 デギャァバラァアアアア!!!バガギャッ!ベギャァバアッ! 実装石の小さな体から出たとはとても思えない悲鳴が響く。 今日はまず腹から破裂して、次に肋骨が開き、そして頭蓋骨が花の如く開き 最後に実装石の内容物という内容物、それらが全て広く放射状に飛び出した。 芸術的だと思ったのは、その飛び出した部品の全てがちぎれることなく細く繋がっている事だった。 なるほど、遠目に見れば奇妙な花の集合体に見えないことも無い。 実装石の赤と緑の血を盛大にかぶりながら、そんなのんきな感想すら浮かべていた。 目覚める直前、辺り一面に肌色とピンクの、二色刷りの花びらが舞い散っていた。 19日目、つまり昨日。 その日も、かなり濃い実装石の血と汚物の臭いで目が覚めた。 現実の部屋の天井にまで色々と染みこんでいるのだから、根本的な掃除はもう諦めている。 元はミドリの居た場所。それが今や身代わりの定位置になっている。 部屋の惨状はどこぞの前衛芸術もかくや、といった塩梅だ。 現在の壁紙の模様は赤と緑のまだら模様で、それが毎日更新されている。 床はせめてもの抵抗にビニールシートを引いているが、その上が得たいのしれない泥だまりと化している。 今日に至っては、細かくなった皮膚と思しき物が壁から天井から、あちこちにへばりついてかなり気持ち悪い。 ビニールシートの真ん中には檻がある。 そこにはびたびたと触手のように四方八方あちこちへ細長く伸びた残骸が鎮座していた。 檻の脚全てに細長い物が絡みついて、触手の根本には原型の無い何かの残骸が。 「うぷっ」 その日は掃除だけでかなり時間を取られてしまった。 部屋のあちこちにへばりついた皮膚、肉の触手。 部屋の中でそれら残骸が触っていない場所がなかったのだ。 僕自身の吐しゃ物など、汚れとしては誤差の範囲内でしかなかった。 もはや根本的な掃除は不可能とはいえ、塊で腐ると酷く蟲が湧くのである程度はやはり片づけねばならない。 ぎとぎとに汚れた実装石用のケージの片隅に、ミドリが隠していた玩具を見つけてふと我に帰った。 なんでこんな事になってしまったのだろう? どの段階で僕は実装石を消耗品として見るようになったのだろう? そしてこんな人間的ではない生活をする羽目になってまで、生き延びている意味があるのだろうか? 自問自答すれど根本的な解決が不可能であるので、ただ虚無感で泣くばかりだった。 公園に行けどもう実装石は姿すら見せてくれない。 僕の事はおおかた虐待派として認識されたようだ。 茂みの奥を漁る。 この公園は実装石を攫い過ぎたせいか、もうこんな奥まった場所にしか実装石が居ないのだ。 巣は葉っぱ等を糞で張り付けてカムフラージュされていた。 どうやらいくらか賢い奴の巣であるらしい、戸代わりの蓋を開けると中の住人と目があった。 デギャアアアア! 完全に怯えられてしまっている、これはあまりに近所迷惑だ。 手早く、指を喉の奥に突っ込んで黙らせる。 偽石さえ割れなければ身代わりに使える。 多少の肉体の損壊は、そもそも翌朝になれば全てが壊れているのだから誤差にすらならない。 公園でする声に、デスという声はかなり少なくなっていた。 『次は破裂〜次は破裂〜です』 『次も〜破裂、破裂〜です。』 20日目、目が覚めてからすることはいつも通り。 掃除をして、成体の実装石を確保して、夢に備える。 いつも通りじゃなくなったのは、公園が封鎖されていたからだ。 「え、なんで?」 見回せばなにか作業をしている人達が居た。 手元を観察していると実装石の巣を撤去しているようだった。 「すみません、なにかあったんですか?」 「ああ、すみませんね。現在公園の清掃中なんですよ。」 作業着を着た内の一人はそう答えた。 「実装石も含めてですか?」 「あんた、虐待派の人?」 一瞬ドキリとしたが、冷静に振り返れば既に虐待派みたいなものなのだ。 「ええ、まぁそんなもんです。」 「物好きなこった。まぁ人間に手を出さないうちは何も言わんよ。」 そういう相手の顔は不審者を見るそれである。 「それで、なぜ急に公園清掃なんて始まったのでしょうか?」 「ああ、なんかここ一月でここの実装石が急に減ったってんで渡に船と決まってね」 「なんせ、よっぽど良い群れじゃなきゃいくら清掃しても2日3日で元通りに汚しちまうからなぁ。」 作業服の男が元は巣だった段ボールを折りたたむ。 中からはなにかカサカサとした音がしていた。 「ついでだってんで、明日からは実装石対策もやってくらしいから、1週間はこの公園は使えないよ?」 不味い、実装石の確保ができない。 「すみません、ぶしつけで申し訳ないのですが。」 「何?」 「処分する予定の実装石をいただけはしませんか?なるべくなら成体の奴が良いのですけれど。」 作業服の男は訝しんだ表情をして 「いや、駄目だよ?規則で決まってるから。」 「どうしても、でしょうか?」 「そんなに欲しいならショップで買えばいいじゃないの。」 「成体でないと駄目なのです。ショップの奴は中実装になるまでに廃棄してしまうでしょう?」 作業服の男はため息を一つ吐いて 「熱意は判ったんだが、それでも無理なものは無理。」 手の平をこちらにむけて拒絶の意思を示した、 「何故ですか」 「そもそも、もう生きてる実装石が居ねえんだ。」 ほれ、と作業服の男はナマモノと書かれた箱を見せてきた。 その中は実装石の死骸で埋め尽くされている。 いずれも小さく、そして痩せ衰えていた。 「この通りでな?それと、どの巣箱も残ってたのは小せぇのばかりだったから、兄ちゃんの欲しがってたサイズのはどのみち居なかったんじゃねぇかな」 足元がぐらつく。 「おい兄ちゃん、大丈夫かよ?」 「大丈夫です。」 反射的にそう答えた。 「顔に血の気がねぇぞ?」 「いえ、本当に大丈夫です。ご迷惑をおかけしました。」 そう、まだ生きている。生きているならまだ足掻ける。 成体の実装石を探さなければ。 公園からは作業をしている男達の声しか聞こえない。 「駄目だ、見つからない。」 必要な時に限って見つからないというのはある種のジンクスじみている。 あの後、ふらふらと成体の実装石を探して街の中を彷徨った。 だが、どこにも成体になった実装石の姿が無い。 いや、むしろ実装石の姿そのものが街中に殆んどなかった。 いわゆる、お決まりの場所をいくつか探した。 だが、路地裏、コンビニの近く、建物の隙間。 いずれにも実装石の姿は無い。 最後の望みとショップにも立ち寄ったが、やはり仔実装以下しかいなかった。 成体実装石も二匹だけ居るには居たが、ともに高級実装でそもそも店長も売る気が無いだとか。 時計を見る。時刻は午後の10時を指している。 秒針が刻々と、死刑執行の12時へと向けて止まることなく進んで行く。 時計をじっと見ていると、ぐにゃぐにゃと、走馬灯がよぎった。 そんな時だった。 デック…デック…デチュー……デェェン… 電信柱の影で実装石が泣いていた。 どうやら迷子になったらしく、ピンク色した市販の実装服の首元が赤と緑でまだら模様が出来ている。 もしかしたら捨て実装なのかもしれないが。 実装石の境遇なんて今はどうでもいい。 実装石だ。見たところちゃんと成体の、デス鳴きの実装石だ。 こいつがいれば、1日分の余裕ができる。 そう判断したならば行動は早かった。 「君、迷子かい?」 デック…デック…デェ? 「僕がおうちに連れて行ってあげるよ。」 デビャーーーー!!コキュッ。−−−−!−−−−!っェっ! 時刻は日付変更の10分前。 糞が、暴れやがって。時間ぎりぎりじゃないか。 チャラチャラカラカラとペンダントの鎖と中身が音を奏でる。 ペンダントを首にかける。 これで一日分は時間ができた。 あとは行ける範囲で実装石が居る公園を探さねば… 明日もやらなきゃいけないことは多いなぁ… そう思いながらネットで地図を調べている内に時計が午前12時を指したらしい。 気が付けば、体はいつものように動かなくなり、どこかの電車の中に居た。 ああ、来てしまった。 がたんごとん、夢の中であっても揺れや音はリアルな電車のそれなのがまた滑稽だ。 そろそろ、アナウンスが来るころだ。 相変わらず体は動かないので、目線で隣の座席を見る。 何も居ない。何もいなかった。 何故?どうして?混乱してもどうにもならない。 恐怖しようがどうしようが、体に力などこれっぽっちも入らないのだから。 「おや、お客様、顔色がずいぶんとすぐれないようですが?」 すぐ近くで肉声が聞こえた。 目線を上げるといまいち顔の判別のできない車掌が立っていた 「いやぁ、手古摺らせてくれましたねお客様?」 「ここまで長くお乗りになられたのは珍しいですよぉ客様?」 「おかげで〜、随分と予定に乱れが生じてしまいましたよぉー客様ぁ?」 顔の当りから、声色の違う3つの声が聞こえる。 「それもここまでです。」 淡々とした 「逃げられると思っていたのですか?本当に?本当にぃ?」 ねちっこく 「次はぁ〜、短冊〜短冊。枯れ木も華の賑わいとー…。」 どこか無邪気な 口ぐちに、死刑執行の言葉が放たれた。 みしみしという音が体の内側から聞こえて デー…デッ!? 実装石が目を覚ますと、まず初めに酷い悪臭に襲われた。 デヒッ?デヒッ?デヂィ!!? そして服も髪もなく、胸には不細工で乱雑な縫い目が出来ていた。 デッ…!? 取り乱して腕を振るったところで、カシャンと何かにぶつかる。 それはひどく汚れた檻だった。 よくよく見れば、檻には赤と緑の血がこびりついている。 檻の外側や、実装石が座っている床も、赤や緑では無い部分が存在しないほど。 その部屋の持ち主がどういう性癖かを、愚鈍な実装石にさえ容易に想像させる悪趣味な芸術品だった。 デッ、デッビャアアアアアア!? ガシャン、ガシャン! 実装石が何度も檻に体当たりをする。 生命の危機を感じているのか、肩の肉が壊れても気にも留めていない。 その内に、檻が横倒しになって蓋が壊れて外れた。 デチッ…デエエ… 顔を強かに打ち付けた実装石はふらふらと、赤と緑の地獄を抜け出した。 デヂュ… 実装石はきょろきょろと家の中を見回すが、もちろん見覚えのある者等一つもなかった。 ふらふらと、逃げ道を探して家の中を彷徨う。 キシッ…ギシッ…ぃ… そうしている内に、部屋の一つから何か軋むような音が聞こえてきた。 木のような、それよりも少し脆そうな、妙な塩梅の音だった。 キシッ…ミシッ………ゥ 部屋は幸いにも和室だったのか、襖で仕切られていた。 非力な実装石でも、襖くらいならばなんとか開けられた。 ギッ…ギギ…ギギィ… 襖を開けると、軋む音は、何かを引き延ばしているような音なのだと聞こえた。 デ? 実装石はぽかんと、襖を開けた先を見ている。 そこにあったのは、朱い掛布団を貫いて生える、奇妙な枯れた木だった。 枯れた木は実装石が見ている今もなお、キシキシと音を立てて伸びている。 ギシギシぉギシ、ギぁギギ、ギイギぃギイ。 その木からは時折奇妙な、人の声のような物が混じって聞こえ それは朝陽が上り、木が枯れ崩れるまで続いたのだった。 テー…テチッ! 「お、どうしたんだい?」 うちの実装石が珍しくおねだりをしてきた。 仔実装の指さす先では綺麗な、おそらく高級実装であろう個体が仔実装向けの教育番組に出ていた。 「ふぅむ?なになに?」 リンガルを起動して仔実装が何を言っているのか確認をする。 『私も早くあんなお姉さんになってみたいテチ。早くおっきくなりたいテチ』 「ほぉ、そうか。私ならそれは叶えられないことも無いぞ?」 テチィ? 仔実装は不思議そうな顔をして僕をじっと見る。 リンガルには『本当に?』と表示されていた。 「ああ、本当だとも。私なら君たちにとって少しだけ不思議な技を使えるからね」 テッチー!テチー! 『本当に!なら大人にしてほしいテチ!』 仔実装は無邪気にはしゃぐ。 「さぁ、もう寝なさい。朝起きたら君はもう大人になっているから、楽しみにしていなさい」 テチー! 仔実装が自分のベッドに入る。テチー、テチー♪と調子はずれな声がしてまるで眠る様子がない。 まぁ、それも直に聞こえなくなるだろう。 仔実装を寝かしつけてから、私は手術の準備を始めた。 「さてと、まずは生体の体を用意して、それからあいつの偽石を…」

| 1 Re: Name:匿名石 2016/07/07-22:38:30 No:00002441[申告] |
| 偽石は仔実装だったのか。
しかし一日とはいえニンゲンさんの身代わりになれるとは 使える実装石だなぁ。あっぱれ。 実装石がいる世界だったら、実装石は 蠱毒とかの呪術に使われてもおかしくないかも。 |
| 2 Re: Name:匿名石 2016/07/07-22:55:52 No:00002443[申告] |
| ああ、中身だけ仔実装に変えたやつだから身代わりにならなかったってことか
※1の人が書いてくれなかったら、最後の部分が理解できなかったわ つーかもっと早い段階で別の狩場を確保しとくか、中実装や仔実装が途切れることなく成体になるように 計画的にブリーディングしとけばよかったのに… |
| 3 Re: Name:匿名石 2016/07/07-23:21:46 No:00002444[申告] |
| ラストがちょっと難解だったが読み応えあったな。
猿夢が実装石の虐待に目覚めて「もっと実装石連れて来い」って言うオチだと読んでる途中で想像してたが全然違った。 |
| 4 Re: Name:匿名石 2016/10/12-00:16:05 No:00002579[申告] |
| いまいち。 |
| 5 Re: Name:匿名石 2016/10/12-09:20:39 No:00002580[申告] |
| 別に過去作品の感想を書くのは構わないが
批判しかしないならわざわざかき込むなと言いたい ただでさえ過疎化してるのに新規作者が寄りつかなくなる |
| 6 Re: Name:匿名石 2016/10/13-16:09:05 No:00002583[申告] |
| いまいちと言うなら何がいまいちかまで書かんと。
合わないだけなのか、純粋におもしろくないのか、なにか引っ掛かってのれなかったのか、ただ悪口書きたいだけなのか。 |
| 7 Re: Name:匿名石 2016/10/14-16:56:58 No:00002586[申告] |
| ※5
ほんとそれ そもそも批評ばかりしてるぐらいなら自分で書けよ 絵が描けなくても文章ぐらい考え付くだろ? いつ消えてもおかしくないようなオワコンなのに、わずかな絵師やスク師が 少しでも盛り上げようと必死こいて作品作り続けてくれてるんだぞ 何の協力もしないくせに文句しか垂れないならもうこのジャンル卒業すればいいだろ |