※人間と実装石の会話は全てリンガル使用済みとしてお読みください。 季節は冬の初め。 まだ雪こそ降り振り出していないものの、気温は日に日に下がってくる。 いつもなら冬支度を終えた実装石たちがダンボールに篭もり、蓄えた木の実などを齧って細々と過ごしているはずの公園は、1週間ほど前から地獄と化していた。 秋の終わりごろ、愛護派が無責任に行った餌付けのせいで実装石たちが爆発的に増殖した。 当然餌は全員に行き渡らなくなり、争いが起こる。 「デッジャァァァ! それはワタシのモノデスゥゥァ!!!」 「フザケンナデスッァァ! ドレイニンゲンが持ってくる餌は全てワタシのモノだと天地開闢から決まってるデジャァアー!!!」 「テチャァァァ! イタイテチィィ! オテテが取れちゃったテチィィ! ママァーッ! ママァァァ!」 成体実装同士が取っ組み合いの喧嘩を始め、巻き込まれた仔実装は大怪我をして血と糞を撒き散らす。 餌を求めて足に縋りつくぐらいならまだしも、そのうち餌が足りない責任を餌付けに来る愛護派に転嫁し、聞くに堪えない台詞で罵倒する糞蟲も現れ始める。 そうして愛護派が姿を消す———という光景は、年中いたるところの公園で見られるもので、別段珍しいものではない。 だが、今回の場合は特にタイミングが悪かった。 今は多くの実装石たちが冬に備えて餌を蓄え、枯葉やタオルを集めてはダンボールに詰め込み、忙しく準備をする時期である。 それなのに増えすぎた同属たちのせいで、餌だけでなくあらゆるものの絶対数が足りなくなっていた。 それらの物資を巡っての争いはさらに苛烈を極め、成体の親実装たちは顔を合わせればお互いの集めた物資を奪い合い、血みどろの戦いを繰り広げていた。 飢えそのものはまだ深刻ではないので、お互いの肉体や仔実装を共食いしあうところまではエスカレートしていない。 だが物資の奪い合いに破れた個体とその家族は、やがて来る冬の寒さと飢えに耐え切れずに命を落とすことは必定だ。 逆に仔の数が多ければ多いほど、飢えが極限に達するのも早くなり、共食いによって家族が崩壊するときの惨状は目を覆うばかりのものになる。 くたびれたダンボールの中で、ズタボロの服を着た成体の実装石が大勢の仔実装たちを前に俯いていた。 一般的に実装石は多産であるといわれているが、死亡率の高い公園ではせいぜい7〜8匹を生んで、そのうち4匹が中実装になるまで生き残れば御の字である。 蛆にいたっては最初から非常食としてしか数えられていない。 だが、この親実装はじつに14匹もの仔を生み、そのうち12匹までを今までちゃんと育て、養ってきていた。 それはひとえに彼女の知能の高さと、彼女の親の授けた知恵が優れていたことによるのだが、いかんせん腕力での勝負となると彼女は平均以下でしかなかった。 彼女は腕力がものを言う現在の公園の状況に対応できず、餌を取りに行けば収穫物を奪われ、冬に備えてダンボールハウスの中を快適にすれば、それも他所の家族に奪われた。 今この家族が住んでいるのは、雨水を吸って腐りかけ、今にも自重で崩壊しそうなボロボロのダンボールである。 これすら2日前にやっと見つけたもので、当然中には枯葉もタオルも、それどころか最も大切な水を蓄えるためのペットボトルすらなかった。 「このままでは皆死を待つだけデス……」 親実装は意を決し、最後の手段に出ることにした。 飼い実装にしてくれと人間に依頼することである。 「子供たち、皆よく聞くデスゥ。このままでは冬を越せずに全員飢えて死ぬか、凍死してしまうデス。助かる方法はたった一つ、ニンゲンさんに飼ってもらうことデスゥ」 仔実装たちは思いもかけない話にテチテチと騒ぎだすが、賢い親が厳しく育ててきたものあってか、親実装が噛んで含めるように言い聞かせると、全員がそれに納得した。 親実装は飼い依頼の危険性も、成功率の低さも十分に認識していた。 まだ公園に愛護派がやってきていた頃、餌が全員に行き渡らなくなったことに危機感を覚えた連中が「ワタシを飼うデス! 今なら特別にカワイイ子供たちもついてくるデスー!」などと勝手なことを喚いていたが 愛護派でさえ眉を顰めるそのあまりの糞蟲ぶりのせいで、彼らは公園に来ることすらなくなったのだ。 そして愛護派と入れ替わるようにやってきた虐待派に媚びた連中は、バールのようなものでもれなく頭を砕かれた。 それらの光景を彼女は遠巻きに見ていた。 失敗すれば飢えと寒さで死ぬだけでは済まない。 近づく人間を間違えれば、その場で全員が惨殺されることもありえるのだ。 それでもやらなければならない。 それ以外に家族が生き延びる方法はないのだ。 最悪の場合、自分だけがここに残ることになってもいい。 12匹いる仔のうちたとえ1匹でも、ニンゲンさんの下で幸せになってくれれば——— だが彼女は知らなかった。 幸せ回路を持つ実装石の知能で思いつく『最悪の場合』など、所詮はコンペイトウよりも甘っちょろい夢でしかないのだということを。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ その虐待派の男は特殊な嗜好を持っていた。 他の虐待派にありがちな、バールでの殴打などの直接的攻撃を好まない。 男が好むのは、実装石を火だるまにして、その踊り狂う様を楽しむことだった。 季節は冬。 空気が乾燥し、物が燃えやすくなる、男が最も愛する季節であった。 そして男が虐待の対象としてこよなく愛する実装石も、ダンボールに自ら枯葉などの可燃物をせっせと蓄えてくれる季節である。 今年は何軒のダンボールハウスを燃やしてやろうかと、男は小躍りしそうなほどウキウキしながら公園に向かった。 男が公園を訪れると、今年は少しばかり様子が違っていた。 ダンボールハウスそのものの数は多いのだが、警戒されないようオペラグラスで遠くから中を窺うと、備蓄されている枯葉の量がどうにも少ない。 タオルなどは所持していない家のほうが多いぐらいだ。 これでは火をつけても大炎上は望めないではないか。 実装石の個体数が多すぎるせいで1軒あたりの備蓄量が少なくなっていることに、男は長年の経験からすぐに気づいた。 だからといって自分で間引きを行い、理想的な状況になるまで待つなど面倒が過ぎるし、何よりただ数を減らすためのバールでの大量虐殺など、自分自身の虐待派としての美学に反する。 どうしたものかと男が思案していると、大勢の仔を連れた成体実装が目の前で自分を見上げていた。 「ニンゲンさん、どうか私たちを飼って欲しいデスー。餌が少ないうえ寒さを凌ぐための枯葉もなくて、このままでは皆飢えて死ぬか寒くて死んでしまうデス」 「全員が無理なら子供たちだけでも、1人だけでもいいんデス。どうかお願いしますデスー」 成体実装は口を開くと現在の窮状を訴え、野良実装にしては珍しいほど礼儀正しく口上を述べたうえで、最後にぺこりと頭を下げた。 よほど賢い個体なのであろう。 糞蟲だと思われないよう言動を謹み、精一杯畏まって見せているのだ。 親はもちろん、大勢の仔実装たちでさえ1人も「テチュゥ〜ン♪」と媚びたりはしない。 実装石の本能に刻まれた行為ではあるが、それはときに人間を逆上させる場合があることを親から厳しく躾けられているらしい。 身なりにせよ、親実装本人こそ小汚いボロボロの格好をしているが、仔実装たちは皆小奇麗にしている。 親実装は十分に相手を選んだつもりであった。 自身の経験から、青と赤に塗り分けられた鉄の棒を持っている人間には決して近づいてはいけないと知っている。 公園がこのような惨状を呈している段階で、コンペイトウらしきものをばら撒く人間にも近づいてはいけない。 それを口にした同属が次々に倒れ、口から泡や血を吐いて死んでいったことを親から教えられている。 全身白い服で身を包んだ人間は最も危険だ。 実装石たちの間で通称『白い悪魔』と呼ばれるその集団が現れたら、公園から逃げ出すことすら不可能である。 生き延びるには茂みの中や物陰に身を隠し、見つからないようにただ祈るしかないと、他所の公園から渡ってきた同属の話で聞き及んでいた。 子供も駄目だ。 女の子は同情してくれる可能性が高いが、その親が飼うのを許さないことが多い。 男の子に至っては、実装石を『手足を毟って遊ぶと、悲鳴を上げるぶん昆虫よりは面白いオモチャ』ぐらいにしか認識していない。 目の前にいる人間はそのどれにも当てはまっていない。 飼われるか、無視されるか、それとも殺されるか。 いずれにせよ、殺される確率はそれほど高くはないはずと親実装は踏んでいた。 男はほくそ笑んでいた。 そうだ、自然に理想的な環境が整うのを待つよりも、理想的な環境の整った場所に誘い込んでやればいいではないか。 しかもそれなら普段の野良実装相手にはやれないような、大量の実装石を一遍に燃やす大火炎祭りだって可能になる。 「わかった、君たちを飼ってあげるよ。もちろん君も一緒にね」 男は表面上だけ、菩薩か聖者のような顔を取り繕って親実装に告げた。 「デェッ!? ほ、本当デスゥ?」 「ああ、本当だとも。僕は一人暮らしでね、寂しいから大勢の実装石に囲まれて暮らしたいと前々から思っていたんだよ」 見る人が見ればそれは患者に向けられるト○の微笑みではなく、いい木偶を手に入れたア○バの笑顔だと分かるのだが、幸せ回路のスイッチが入った実装石にはそれに気づくことができない。 「とりあえず、君たちを連れて帰るのにそのままじゃ無理だから、家に帰ってダンボールか何かを持ってくるよ。僕が帰ってくるまで、どこかの茂みにでも隠れているといい」 男は親実装にそう告げて一旦家に引き返した。 そんな口約束が反故にされることは実装石にとって日常茶飯事なため、親実装は少し不安げな顔をしたが、男が約束の印だと言ってコンペイトウを袋ごと渡してやると、たちまち笑顔で男を送り出した。 公園を出てから数10分後、男は約束どおり帰ってきた。 仔実装たちはもちろん、親実装も入れる大きなダンボールを携えていたのを見て、親仔は歓喜の涙で男を迎える。 「よかったデス……これで皆助かるデスゥ」 「帰る前に1つ聞いてもいいかな? この公園には他にも君たちのように飢えた野良実装が多いのかい?」 「たくさんいるデスが……どうしてデスゥ?」 「君たちだけでなく、他にも死にそうな実装石がいたら飼ってあげたくてね。さっきも言ったとおり、新しい家族は多ければ多いほどいいんだ」 「デスゥ……」 「よかったら、君たちが他の実装石たちに呼びかけてくれないかな? 飼って欲しい者がいれば皆ここに来ればいいって」 親実装は一瞬戸惑った。 こんなことを言い出す人間がいるだろうか? 「ママ、このニンゲンサンはいい人テチ」 「きっと今まで1人ぼっちで寂しかったテチィ」 「ワタチたちをみんな拾ってくれるぐらいだから、他の家族が入ってもダイジョウブな大きなオウチに住んでるテチ」」 賢い親実装も、袋入りのコンペイトウで久しぶりに満腹を味わった仔実装たちが口々に勧めるのを見て、ついに男の言葉を信じた。 「じゃあ君たち皆で公園の実装石たちに呼びかけてきてくれるかい? そんな話は信じられないという実装石がいたら、これを渡して信用してもらうといい。話がついたら、皆で公園の入口に集合しよう」 そう言いながら、男は新しいコンペイトウの袋を仔実装たちに渡した。 そうしてさらに1時間後、成体はもちろん仔実装や親指、蛆に至るまで、最初の親仔を含めると総勢80匹近くの野良実装が公園の入口に集まっていた。 どの個体も一様にみすぼらしい姿で、禿裸のものまでいる。 皆この公園で物資の奪い合いに敗北した、弱い実装石たちである。 最初、仔実装たちが男の存在と飼い実装になれるという話を吹聴して回ったとき、多くのものがその話を信じなかった。 禿裸の個体などは、飢えから仔実装たちを襲おうとしたほどである。 だが仔実装たちが男からもらった大量のコンペイトウを惜しむことなく配って回ったことにより、話を聞いた実装石のほとんどが男の話を信じるに至った。 というよりも、最初の親仔と同じく、一縷の望みに賭けるしかない家族ばかりだったのだ。 断ったのは決して人間を信じようとしない賢い個体か、物資の奪い合いに勝利して冬支度をすでに終え、さほど不自由なく暮らしている一部の家族のみだった。 「じゃあ皆、家族ごとに自分たちの家にしていたダンボールに入ってくれるかな。ダンボールを持ってない家族には新しいのをあげるよ」 そう言って、男は最初の親仔のために持ってきたのとは別に、大きなダンボールをいくつも持ってきた。 それらに全ての家族が入り終わると、男は乗ってきた大きなワンボックスの車に全てのダンボールを積み込んで家に向かった。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 男の家は住宅街から少し離れた場所にあった。 田舎の家らしく、家そのものも無駄に広ければ、庭はそれに輪をかけて広い。 それを見た最初の親仔は安心した。 「ほら、ワタチのいったとおりデチィ。ニンゲンサンのオウチはとっても広いから、みんなで住んでもダイジョウブテチ」 「嬉しいデスゥ……夢みたいデスゥ……」 どの家族も感極まって涙を流していた。 家に到着すると、男はダンボールを車から降ろして、全ての家族を庭に整列させた。 「えーっと、数が思ったより多かったんで、まだ皆を受け入れる準備ができていないんだ。皆とりあえずこっちに入っていてくれるかい?」 男が家族を案内したのは、一般的に飼い実装が入れられるような小さなケージではなく、大型犬などを庭で飼うための大きな囲いだった。 鉄製の柵が土の地面に直接アンカーのように打ち込んであり、犬が体当たりしても倒れたりしないように補強してあった。 柵はそれほど目が細かいわけではなく、成体実装でも腕を出すことぐらいはできるが、地面から20センチほどの高さまでは金属製の板で四方を囲まれており、仔実装以下のものは乗り越えることができない。 それに大きいとはいっても、80匹近い実装石がひしめき合うとほとんど隙間がなく、下手に動くと仔実装や親指を踏み潰しかねないほどの広さしかなかった。 蛆たちは特に危険なので、どの家族も地面に寝かさずに姉の仔実装たちが抱えている。 一応地面にはダンボールが敷いてあるが、これでは壁がない分ダンボールハウスの中よりも寒い。 というよりも、風に対してほぼ吹き曝しである。 「デェェ……ご主人サマ、寒いデスゥゥ。早くお家の中に入れて欲しいデスゥ……」 「あー、ごめんね。すぐに暖かいところに入れてあげるよ。すぐに…………ね」 そう言って振り向いた男は、まるで藤田○日郎の漫画に出てくる妖怪のように「きしぃ!」と擬音が出そうな歪んだ笑みを浮かべていたが、その顔は実装石たちからは見えない。 「とりあえず皆、体を洗おうか。そのままじゃ家が汚れちゃうからね。シャワーをかけて洗っちゃおう。服は着たままでもいいよ」 家の中から何かを取ってきた男の両手に握られていたものは、明らかにシャワーヘッドではなく長いスプレー缶なのだが、飼い実装の生活を味わったことのない野良実装にはそれに気づく術はない。 スプレー缶には『パーツブレーキクリーナー(非速乾性)』と書かれていた。 プシュゥゥゥゥゥゥゥゥ………… 男はスプレー缶の中身を惜しげもなく、80匹の実装石の親仔たちに満遍なく振りかけていく。 「テェェ! 冷たいテチィィ!」 「冷たいテチャァァ!!!」 「テヒャァーーーァァァ!!!」 「さ、寒いデスゥゥゥ!!!」 たちまち悲鳴の大合唱になる。 だが、男が聞きたいのはこんな生温い悲鳴ではない。 もっと命そのものを燃やして搾り出すような悲鳴である。 このパーツブレーキクリーナーというものは、その名のとおり車・バイクなどのブレーキや、金属部品の油汚れを落とす脱脂剤である。 その液体がどうやって油汚れを落とすのか、それはもちろん『油汚れは油で落とす』の原理を応用したもの。 つまりこの液体そのものが立派な『第一種石油類』、すなわち可燃性である。 しかも速乾性のものではないので、実装石たちの体にかかった液体は髪や服に染み込む。 男が5本目のスプレーを空にしたときには、すでに床に敷いてあるダンボールにも十分に液体が染み込んでいた。 それどころか、一部水溜りのようになっている部分まであるほどだ。 「よーし、皆綺麗になったね。じゃあそろそろ暖かいところへ案内してあげるよ」 その言葉に、屋外の寒さと冷たいシャワーに震えていた実装石たちは揃って安堵のため息を漏らす。 男はそれを見て微笑むと、安全のために軍手をはめ、開いた傘の影に身を隠すようにして、かなり離れた位置から目いっぱい腕を伸ばし、これまたノズルの長いチャッ○マンの先端だけを檻の中に差し込む。 「まあ暖かいっていうか……『死ぬほど熱い』ところなんだけどね」 そう呟くと、スイッチを入れた。 ボンッッッ!!!!!!!!!! 大爆発が起こった。 その威力が想像以上だったのか、男自身も爆風で2メートルほど吹っ飛ばされた。 もしも傘に身を隠していなかったら、自分にも飛び火していたかもしれない。 それどころか、庭が広くなかったら家まで延焼しているところだ。 男が体勢を立て直すと、火の玉と化した数匹の仔実装や親指実装が上空から落下してきて、地面に落ちると同時に潰れて人魂のような炎のみが残った。 体重が軽すぎて、火柱とともに上空に舞い上がったらしい。 よく見ると、他にもあちこちに千切れた実装石の体のパーツが転がっている。 上ではなく横へ吹っ飛ばされたやつが、檻の柵に当たった拍子にバラバラになったのだ。 「ちょっとパークリ(パーツブレーキクリーナー)を使いすぎたか……昔これを毛虫にかけて燃やしたときも軽く爆発したからな。揮発性のない油にすべきだったか」 男はそう反省したが、檻の中ではちゃんと男が見たかった光景が繰り広げられていた。 「デッギャァァァァァァァス!!!!!!!!!!」 「デッジャァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」 「デヂャアァァァァァァアアア!!!!!!!!!!」 「レッピィィィィィ!!!!!!!!!!」(パキン) そこにあったのはまさに地獄絵図。 蛆から成体まで、あらゆる大きさの実装石が踊り狂う大焦熱地獄だった。 痛みや苦しみに耐性のない蛆はあっという間に偽石を崩壊させて死ぬか、暴れ回る親や仔実装たちに踏み潰されて死んでゆく。 親指や仔実装もまた同じく、多くが成体実装の狂乱に巻き込まれ、炎で焼け死ぬ前に手足を千切られる痛みを味わって死んでいった。 男にとって1番面白かったのは成体実装だ。 仔実装たちはただ手足をバタバタと振り回すだけだったが、成体実装たちは暴れ、のたうち、転げまわりたいのに、ひしめき合った同属たちのせいで満足に動くこともできず まるで昭和50年代に流行したというゲー○ウォッチの敵キャラのように、曲げた手足をその場でイゴイゴと上下させるという、不細工極まりない動きで間抜けなダンスを踊り続けていた。 これだ! これだ!! これだ!!! この火炎地獄こそ俺が見たかったものだ! 男のテンションは炎の勢いと比例するかのように上昇していく。 そんなとき、1匹の成体実装が柵を掴み、もの凄い形相で何かを訴えるかのように檻を揺らした。 それは男が最初に連れ帰ろうとした家族の親実装だったのだが、元々実装石の個体差など人間には見分けがつかないうえ、男のボルテージはすでにマックスである。 そんなことに気づくはずもない。 男は危険も顧みずに燃え盛る実装石の顔に自分の顔を近付け、その実装石に合わせるように柵を掴んで檻をガシャガシャと揺らしまくる。 そのとき、男の脳内では映画『○○7 ○ぬのは奴らだ』(※)のオープニングテーマが大音量で鳴り響いていた。 (※注 死ぬのは○らだ:映画『○○7』シリーズの1つ。オープニング映像において、大きく目を見開いた黒人女性の頭がキャンドルのように燃やされ、出来の悪い模型のような骸骨になるという少々グロい演出が見られる) 「イェェェェイ!!!!! Live and Let Dieーーーーーーーーーイィィ!!!!!!!!!!」 檻を揺らしていた実装石の肉が燃え尽き、オッドアイの両目すらなくなった骸骨がガシャリと音を立てて崩れると、男はようやく落ち着きを取り戻してその場に座り込んだ。 「はぁぁぁぁ……最っっ高…………」 すでに実装石たちの悲鳴は聞こえず、炎の勢いも幾許かは弱まっていた。 もうすぐ日が沈む。 天を仰ぎ「ほぼイキかけました」と言わんばかりのアヘ顔でうっとりとする男だけが、夕闇の中で炎に照らされていた。 -END- ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ あとがき 前作の続編です。 保管庫にある、かつてある方が製作してくださった実装石虐待ゲーム『糞花火』で、いつも自分がやっていること (100匹以上の実装石を檻の中に放り込み、火をつけて阿鼻叫喚の様を楽しむ)を実際にやれたら……というのと 長らく製作がエタっている『糞花火』の、実装石たちの悲鳴が実装された完成版がいつの日か出来たら……という願いを込めて書きました。 作中の爆発描写については毛虫のくだりがあるように、あくまで実体験できたレベルから想像したものです。 実際にどうなるか、あの程度で済むのかどうかは不明です。 絶対に真似をしないようお願いします。 あと伏字多すぎでスイマセン。 固有名詞はなるべく『○』表記でぼかすようにしました。

| 1 Re: Name:匿名石 2016/03/16-01:42:15 No:00001996[申告] |
| 最後のシーンで主人公の脳内に流れていたイメージURLデス
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm14645058 |
| 2 Re: Name:匿名石 2016/03/16-12:13:52 No:00001997[申告] |
| 死ぬのは●らだ! の方ですね。
それにしても最高でした。 がんばって生きてきた実装石が家族どころか 公園の仲間たちすら道連れに! ものすごく興奮しました。 |
| 3 Re: Name:ジグソウ石 2016/03/16-15:16:39 No:00001998[申告] |
ちなみにこっちはイメー画像デス |
| 4 Re: Name:匿名石 2016/03/26-14:32:00 No:00002069[申告] |
| たぶん画像つけてくれた人のすら生ぬるい地獄絵図なんだろうな
あと、この男が録画してないっぽいのが残念だなあ どうせ架空とはいえ録画を見ることで模倣者が出て全国実装火祭りになればいいのに |