タイトル:【虐食】 DEXT 第二部・3話 ~弱惨強悦(前)~
ファイル:DEXT 8話.txt
作者:みぃ 総投稿数:41 総ダウンロード数:854 レス数:1
初投稿日時:2016/03/15-12:24:56修正日時:2016/03/15-12:24:56
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   1

「テッチ……テッチ……」

 一匹の実装石が街道を歩いている。
 彼女の辿った道には緑と赤のラインが敷かれていた。
 枯れることのない涙を流し続けているのだ。

 武器も持っていない。動物よけのマホウの水も被っていない。
 はっきり言っていつ襲撃されて殺されてもおかしくない状態だった。
 しかしそれはあまりに不幸な彼女に対する天の慈悲か。
 滅ぼされた『よしあきさんの町』の最後の生き残りである『エメラル』は、恐ろしいほどの幸運でもって夜通し歩き続け、明け方になって同族の住む別の町に辿り着くことに成功した。

「ゼェ、ゼェ……」
「ど、どうしたテチ!」

 安堵のあまり思わずその場で倒れ込むと、門の前で見張りをしていた実装石が慌てて彼女に駆け寄った。
 エメラルは彼女たちに伝える。

「ニンゲンサンが、現れたテチ……」
「テェッ!? ニンゲンサン!?」

 驚くのも無理はない。
 この門番実装もまた人間が神殿(デッグラド)の中には存在しないことを知りつつ、この世界のどこかで自分たちを見守っていると信じている敬虔なる実装石なのだ。

「でも、違うテチ。あれは、あれはワタシタチが敬う神様(ニンゲンサン)じゃないテチィ!」
「お、落ち着くテチ。落ち着いて話してみるテチ」
「あれは、あれは……」

 落ち着いたと思った涙がまた止めどなく流れ始める。
 愛する家族が、仲間たちが、そして町が燃え崩れ去る光景を思いながら、エメラルは叫んだ。

「邪神(ギャクタイハ)、テチィ!」



   2

 過去世界からやってきた、その虐待派たちと言えば。

「じゃーん! 仔実装ちゃんのソテー、アップルジンジャー風味でーす!」

 桐野妹が皿にのせた手作り実装料理をお盆で運んでくる。
 仔実装——正確にはこの世界では成体なのだが——の腹を切りさばき、内臓の代わりにショウガとリンゴ、それからいくつもの香辛料を振って高温の油で灼いたスタミナ料理である。
 丸々と原型を保ったそれを目の前に置かれ、桐野はげんなりとする。

「朝からずいぶん重いな……」
「なあにお兄ちゃん、文句あるなら食べなくても良いよ」
「食うけどさ」

 どうも桐野はこの実装料理というのがいまいち好きではない。
 ソフトな虐待派である彼にとって、やはり人型をした生き物を食うのは若干の抵抗がある。
 まあ、妹の作る料理に味は間違いがないのだが。

「ウッホァ! 美味そうだなァ!」

 対照的に跳び上がるほどに喜びナイフとフォークを握り締めるのはモヒカン茂比。
 こいつは実装料理に対する抵抗は皆無らしい。

「テチィィィィィィッ!」

 と、部屋の隅から生きている実装石の叫び声が聞こえた。

「麗華さんも、ご飯食べちゃいましょうよー」
「うん、ちょっと待って♪ もうすぐこいつ死ぬから♪」

 逃げられないよう大きめの水槽の中に閉じ込めた仔実装。
 それをアイスピックで突いて遊んでいるのは桐野の彼女の麗華である。
 彼女が虐めて楽しんでいるのは昨日太田が持って帰って来た実装石の一匹である。
 取りに行くのは面倒くさがるが、やはり彼女もまたハードな虐待派なのである。

「ヂィィィィィィィィィィィィッィィィィィィッ!」

 二階から強烈な叫び声が聞こえてきた。
 それは麗華に虐められている個体とは比べものにならない絶望の声。
 ロッジに戻ってくるなり個室に引きこもった太田によって、想像を絶する責め苦を与えられているのだろう。

「うわあ、かわいそうですねぇ。この仔たちの方がまだ幸せだったかも」

 困ったように笑いながら実装ソテーの頭部を指先で撫でる桐野妹。
 自称愛護派のくせに虐待を気にしないこいつも相当にイカれていると桐野は思う。

「みんな、集まっているか?」

 リビングルームのドアを開けてリーダーの木下がやってくる。
 相変わらず全身黒ずくめの恰好で、ネックウォーマーで顔半分を隠している。
 昨日は単独で遠方の調査をしてくれており、帰りも遅かったらしく桐野たちが眠ってから帰って来たようだ。

「太田さんがいませーん」
「放っておこう。後で誰か伝えておいてくれ」
「木下さん、何かわかったんですか?」
「ああ……単刀直入に言うぞ、驚かずに聞いてくれ」

 前置きをして、一呼吸分の間を開けてから、木下は驚くべき事実を口にした。

「ここは人間の住む世界じゃない……
 実装石の住む異世界、あるいは人間が滅亡した後の未来の地球だ」



「な、何だってーっ!」



「ふーんァ」
「へえ、びっくりですねー」
「テチィィィ!」
「きゃはは♪ ほら逃げろ逃げろ♪」

 おい、お前ら。
 いや突っ込むまい。こいつらは実装石さえいればどこでも楽しめるようなやつらだ。
 麗華だけは実装イジメに飽きた後で大騒ぎするかもしれないが、とりあえずは放っておこう。

 正直に言えばかなり驚いてしまった桐野だったが、周りのやつらの反応を見て冷静に戻った。
 現実的な対処を思考するには落ち着きが大事だ。ありがとうキチガイ共。

「ごほん……間違いじゃ、ないんですね?」
「十中八九。少なくとも俺たち以外の人間はこの辺りに存在しない」

 木下はそう考えるに至った理由をいくつか並べた。
 地層がどうとか植物がどうとか、掴まえて問い質してみた実装石の発言内容がどうとか。 
 正直言って言っていることはよくわからなかったが、彼が言うなら間違いじゃないのだろう。

「元の世界に戻る方法は、ないんですか……?」
「原因がわからないうちは何とも言えないな。とりあえずしばらくは様子を見るしかない。
 俺は明日も遠方を調査するつもりだが——」
「もぐっ、んっ……じゃ、じゃああ、その間は糞蟲どもを殺し放題なんですねァ!?」

 ソテー実装の足を口の端からはみ出させながら茂比が子供のように目を輝かせる。

「問題ない……が、身の回りにはくれぐれも気をつけろ。
 実装石だけじゃなく野生の獣も多く存在しているからな」
「わかってますってァ!」

 どーんと胸を張って答える茂比。
 骨の髄まで好きなことに熱中できる奴は、それさえあればどこでも生きていけるんだな……
 少し羨ましく思いつつも、こうはなりたくないと考える桐野であった。



   3

「バカな、信じられんテチ……」

 ここは『ほしあきさんの町』の議会。
 町の中では神殿(デッグラド)の次に大きな建物であり、現在は緊急会議が開かれていた。

 涙ながらに自らが被った被害の様子を伝えるのは、『よしあきさんの町』から命からがらやってきた実装石、エメラル。
 その彼女の言葉を誰もが息をのんで聞いていた。

「そしてワタシの町は、ニンゲンサンに燃やされたテチ……」

 鬼気迫る表情。
 少なくとも嘘や冗談じゃないことはわかる。
 だが、簡単には信じられない。
 自分たちがずっと崇めてきたニンゲンサンがそんな酷いことをするなんて。

 これまでも野犬や猫の襲撃を受けて壊滅的被害を受けた町の話は聞いた事があった。
 だが集落すべてを焼き尽くし滅ぼすような所業は前代未聞。
 補食ですらない虐殺がこの世にあるなどと、善良な実装石たちは思いもしない。
 中には嘔吐する者もいた。

「と、とりあえず、対策を取るべきだと思うテチ」

 ことの真偽追求はともかく、『その状況がもし本当にこの町に起こったらどうするか』を主題において話し合う。
 自らが弱いことを自覚し、生きるために知恵と絞る町の実装石たちは、何よりも現実的な対策を取ることを大事とした。

 しかし良いアイディアはでない。
 とりあえずエメラルの話を参考に、町の出入り口を増やすことと、武器の保管庫を数カ所に分けるべきというところまで決まった時。

 息を切らせながら入ってきた門番実装が、タイムアウトの知らせを告げた。

「た、大変テチ! でっかいやつが町に近づいてるテチ!」



   4

「ヒャッハァー! 下がれ糞蟲共ーァ! 人間様のご降臨だーァ!」

 キラキラの太い棒を振り回し、髪を逆立てたニンゲンサンが暴れ回る。
 門はあっさりと破壊され、近くの実装石たちを片っ端から殴り踏みつぶす。

「イタイ、イタイレチ……チベッ」
「やめて、お願いやめテチ、やめ——ブホアッ!?」
「ママーッ! ママーッ! デベシッ!」
「わははは潰されろーァ! それとも撲殺されてえかーァ!」

 泣き叫ぼうが哀願しようがニンゲンサンは止まらない。
 数分前まで笑顔が溢れていた実装石の町は、あっという間に地獄と化した。



「ああーっァ、たまらねえァ……」

 茂比は恍惚としていた。
 肉がはじけ飛ぶ感触。糞蟲共の叫び声。この圧倒的全能感。
 何もかもを彼を満たしてくれる。これだから虐殺派はやめられない。

 今日はソロ狩りである。
 木下さんと桐野は周囲の調査。他のやつらは昨日捉えた糞蟲共で室内遊びをしている。
 ここにいる糞蟲共、全部俺様の獲物なんだァ。

「……お?」
「テシャァァァッ! テシャァァァッ!」

 何匹かの糞虫がこちらに向かってくる。
 その手には竹串のような槍や、オモチャのような弓を持った者もいた。
 そういえば、今回は武器庫とやらを先に攻撃するのを忘れてたな。

「テシャァッ! 打ち方はじめーテシャァ!!」

 一匹の号令を合図に矢が飛んでくる。
 弓は持ち手が実装石でも支えられるようグローブ状になっており、思ったよりもしっかりと矢が飛んできた。
 だが、ほとんどの矢は男の来ていた革のズボンに当たって落ちる。
 もし素肌の部分に当たっていたら少しは痛かったかもしれない。

「く、糞蟲のくせに弓矢だとァ……!?」

 茂比の顔が怒りに歪む。
 弓矢実装は次の矢を番え、その間に槍を持った実装石が足下へ駆けてくる。

「男なら拳で勝負しろや糞共がァ!」
『テチィィィィッ!』

 茂比はバッドをゴルフスイングのように振りかぶって槍実装たちを吹き飛ばす。
 そしてポケットからいくつかの石を取り出すと、それを弓実装に向けて投擲した。

「飛び道具とか卑怯だと思わねえのかァ!」
「チベッ」
「ヂュィッ」
「チベシッ」
「邪魔する奴は石ころ一つでダウンだァ!」

 すべての兵士実装たちが無残に殺されたのを見ると、町の実装石たちは一目散に近くの建物へと避難を開始した。

「に、逃げるテチ! 隠れるテチ!」
「殺されるテチィ! 『アクマ』テチィ!」
「テェェン、ママー、ママー、テェェェェン……ヂッ」

 とりあえず逃げずに泣いていた親指を踏みつぶした後、茂比は眉間にしわを寄せながら悪態をついた。

「ちっ、建物の中に逃げられると面倒なんだよなァ」

 煉瓦は堅いが接着が甘く、バットで殴れば中身ごと潰すのは難しくない。
 助かったと安心している糞蟲を地獄にたたき落とすのも悪くないが、虐殺派としては糞蟲の肉が飛び散る様を視覚的にも楽しみたいのだ。

 どうしたもんかと考えていると、一匹の実装石が茂比の目の前に立った。

「お、テメエは逃げねえのかァ?」
「テチ、テチテチ、テチ」

 何かを一生懸命語りかけてくる。
 心持ち程度だが他の実装石よりも少しサイズが大きい。
 それでも仔実装の範疇からは出ないが、おそらくこの町のリーダーか何かだろう。
 普段なら構わず踏みつぶすところだが、多少クールダウンしていた茂比は外れていたリンガルイヤホンをつけ直した。

「もう一回はじめから言えァ」
「話は通じるテチ? アナタとお話がしたいテチ」

 やはり命乞いか。
 まあいい、冷めた気分をもう一度高揚させるにはこいつらの糞蟲っぷりを確認するのが一番だ。

「おうおう、何でも聞いてやるぞァ」
「アナタは本当にニンゲンサンなんテチ?」
「見てわからねえか?」
「ワタシタチ、ニンゲンサンを実際に見たことはないテチ。ママのママのそのまたママから聞かされてるだけテチ」

 なるほど、この世界に人間がいないってのはどうやら本当のようだな。
 実装石の世界か。ってことは、まだまだこんな町は無数にあるんだな。
 俺、わくわくしてきたぜァ。

「間違いなく人間さんだぜァ」
「……ニンゲンサンは、ワタシタチを守ってくれる優しい方だと思ってたテチ」
「そりゃ愛護派のバカ共だなァ。残念ながら俺は虐待派、その中でも最右翼の虐殺派だァ」
「アイゴハ? ギャクタイハ?」
「そうだ。テメエラ糞蟲を虐めたりぶっ殺したりするのが大好きなのが虐待派だ。
 まあ、俺様と出逢ったのが運の尽きと思って諦めるんだな」
「なんで、ギャクタイハはそんなことをするテチ?」

 またその質問か。
 茂比はボルテージが上がってきていることに満足しつつ答える。

「楽しいからに気まってんだろァ!
 テメエラ糞弱ぇゴミ蟲共があっけなく死ぬのが面白いんだよァ!
 悲鳴が心地良いんだよ! 怯える顔が笑えるんだよ! 
 糞蟲のくせに生き延びようと必死な抵抗が滑稽なんだよァ!」

 目の前の実装石は絶句している。
 自分の存在を玩具以下に貶められ、積み上げた常識が覆されたのがショックなのだろう。
 その表情がまた茂比の嗜虐心をくすぐる。

「……アナタが生きるために必要だからやってるんじゃ、ないんテチ?」
「ストレス解消って意味じゃ必要だなァ! 
 やんなくても生きてけるけど、どっちでもいいならとりあえず殺すァ! 楽しいからァ!」
「そんなことが、許されるテチ……?」
「許すも許されるもねえァ! 俺様はテメエラより強ぇからやれるんだァ! 弱肉強食ってやつだァ!」
「強い生き物が弱い生き物を食べるって理屈はわかるテチ! でも、あなたのそれは違うテチ!」
「同じだァ! 強い者が気持ちよくなって弱いやつが惨めに殺されるってだけだァ!」

 実装石はがくりと肩を落とした。
 頃合いだな。我慢して糞蟲と会話を続けたおかげでイライラは絶頂に達してる。
 ま、糞蟲の分際で死ぬ前に言いたいことを言えたんだから満足だろうよ。

「んじゃ、そろそろ死ねやァ」
「……勝手にするテチ」

 覚悟を決めたらしい実装石。
 茂比は一切の手心を加えず、その頭を打ち砕いた。



「テチ……テチテチ……」

 この間のニンゲンサンが今度はこの町を荒らしている。
 お家を壊して中から実装石を引きずり出して、殴ったり踏みつけたりして潰している。
 エメラルは血の涙を流して遠くからその光景を見ていた。

 あいつがどんな風に実装石を殺すのか、その有様を目に焼き付けるような。

「さあ、あなたも逃げるテチ……ミティアさんが稼いでくれた時間を無駄にしたくないテチ」

 エメラルの肩を叩くのはこの町の実装石。
 先ほど会議に出席していた成体のひとりだ。

 彼女たちの何体かは町の裏手に開けた穴から逃げ出そうとしている。
 我が身かわいさからではない。
 この事実をできるだけ多く他の町に伝え、次の被害を少しでも和らげるために。
 その証拠に、誰の顔にも悔しさと血涙が溢れている。

「いっぱい、いっぱい死んだテチ。悔しいテチ……」
「ギャクタイハ……許せないテチ……」
「ごめんテチ。みんな、見捨ててごめんなさいテチ……」
「絶対に仇はとってみせるテチ……」

 残された者へ謝罪の言葉を繰り返しながら、実装石たちは『ほしあきさんの町』を脱出する。
 幸いにもギャクタイハのニンゲンサンは彼女たちに気付かない。

「あー、殺った殺った!」

 町を半分ほど壊したところで、そいつは満足したのか破壊と殺戮の手を止めた。

「ママ、イモウトチャ、おきて、おきてレチィ」
「レェェェン、レェェェェン」
「なんでテチ、なんでワタシタチが、こんな目にあわなきゃいけないんテチ……」

 瓦礫となった町の至る所で、命からがら生き残った実装石たちが震え泣いている。
 幸いなことに、この町の実装石は『よしあきさんの町』のように皆殺しにされることはなかった。
 九〇体ほどいた数が、脱出した分を引いても二〇ほどに減ってしまったが……

 壊れた町を復興するのにはとてつもない時間が掛かる。
 大切な家族を殺された実装石たちの心の傷は決して癒えないだろう。

「♪このイカレた世界へようこそ〜、俺はたっぽいたっぽい……」

 邪神はそれに対してなんの感慨も持たぬまま、鼻歌を口ずさみながら帰っていった。



   5

「あなたは今日からレフィちゃんだよ。よろしくね」
「レフ? ウジチャお名前もらえたレフ? ウジチャ、レフィチャンレフ! ニンゲンサンありがとレフー」
「お利口さんのレフィちゃん。偉い仔、ぷにぷにしてあげる」
「ありがとレフ。プニフー、プニフー」
「ほら、ぷにぷにー、ぷにぷにー」
「レフッ、レフッ! きもちいいレフー♪」
「ああ、かわいい……♪ 大好きだよレフィちゃん……♪」 ちくっ
「レフィチャもニンゲンサン大好きレフッ。もっとプニプニ、プニ……レピッ!?」
「ほら、ぷにぷにっ、ぷにぷにっ」
「イタイレフ! いまチクッてしたレフ! 何レフ!?」
「ぷにぷに、ぷにぷに」
「レフー♪」
「ぷにー」 ちくちくっ
「レピャッ! なんレフ!? ニンゲンサン、なにしたレフっ!?」
「ほら、金平糖だよー」
「レフーン。アマアマの金平糖レフー♪」
「レフィちゃんは本当にかわいいなぁ♪」 ちく、ちく、ちく
「レッピィ! レフィチャいま見たレフ! ニンゲンサン、そのキラキラでレフィチャを刺したレフ!」
「大丈夫だよ。痛いことなんて何もないんだからね」
「嘘レフ! レフィチャ騙されないレフ! なんでレフィチャにイタイことしたレフ!?」
「ほら、ぷにぷにっ、ぷにぷにっ」
「レフー♪ キモチイイレフー♪」
「良い仔だねーかわいいねー」 ちくちくちくちく
「イタイレフ、やめるレフ! ニンゲンサン大嫌いレフッ!」
「金平糖のおかわりもあるよ!」
「レフーン、ニンゲンサン大好きレフー♪」

 テーブルに敷いた新聞紙の上で蛆実装と戯れている妹を桐野は引きつった顔で眺めていた。
 自称愛護派の桐野妹は、蛆の脳みそが二つ以上の連続した物事を結びつけられないほど脆弱なことを利用して、その二面性を楽しんでいる。
 愛されながらいたぶられる蛆は一体どんな気分なのだろうか。
 しばらく天国と地獄を同時に味わっていた蛆は、やがて処理能力と肉体が限界を迎えたらしく、とても嬉しそうな笑顔で怯えて丸まったままパキンした。

「妹ちゃーん。ちょっとこっち来て手伝ってー」
「あ、はーい。今行きまーす。じゃ、またねうじちゃん!」

 麗華に呼ばれた桐野妹は蛆の死骸をゴミ箱に捨て声のした方に駆けていく。
 今ごろ向こうの部屋では麗華が仔実装を虐めて楽しんでいるのだろう。

「ヂュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!」

 どこからか聞こえてくるのは圧倒的な絶望の声。
 太田が捉えた実装石で遊んでいる音だ。
 今ごろ彼の個人ルームは実装石たちにとっての地獄になっているはずだ。
 偽石を奪われ『死』すら許されない実装石たち。
 室内虐待派の残虐性は、ただ無差別に殺すだけの虐殺派を上回る。

「はぁ、まったくイカレたやつらだな」

 桐野も一応虐待派ではあるが、こいつらのレベルにはついて行けない。
 さすがに人間に害をなす糞蟲に感情移入することはないが、今の危機的状況を忘れて実装石遊びに熱中するほど趣味人でもない。

 遠方の調査は木下さんに任せ、桐野は今日の午前中を周辺の散策に費やした。
 基本的に周囲はどこまでも続く草原である。
 少し離れた場所に深い森を見つけたが、昼間でも薄暗くいため入っていくのは躊躇われた。
 草原の中を線路のように細い煉瓦敷きの街道がいくつも伸びており、それらはすべてどこかにある実装石の町に繋がっているようだ。
 これまでに発見しただけでも周囲に六つの町がある。
 うち一つは三人が完全に燃やし尽くし、もう一つは今ごろ茂比が午前中から単独ヒャッハーをしに行ってる。
 街道を見る限り、まだまだ実装石たちの町は無数にありそうだ。

「ヒャッハー! たっだいまァ!」
「……」

 日が暮れる前にやたらテンション高い茂比が、
 続けて暗くなってから静かに木下さんが帰って来た。

 さて、全員揃ったところで夕食は実装箱庭バーベキューだ。
  
                                      つづく

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1 Re: Name:匿名石 2016/03/15-23:04:45 No:00001993[申告]
>ありがとうキチガイ共。
この一言で死ぬほど笑ったwww

茂比の矛盾しまくった行動も最高だわ
読みながら完全に感情移入しきってヒャッハーできるもん
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