※人間と実装石の会話は全てリンガル使用済みとしてお読みください。 冬も近づいたある日の公園で、成体実装がコンビニ袋を腕にぶら下げて家路を急いでいた。 コンビニ袋に詰め込まれているのは、食料ではなく枯葉と古新聞である。 「ただいまデスー」 棲家としているダンボールハウスに成体実装が帰ると、それを見た仔実装たちがテチテチと騒ぎ出す。 「おかえりなさいテチ」 「ママ、たくさんゴハン見つかったテチィ?」 「今日拾ってきたのは枯葉や新聞紙デスー」 親実装が持ち帰ったのが食べられるものではないことを聞いた仔たちから落胆の声が上がる。 「テチー……ゴハンじゃないテチィ……」 「ゴハンならもう十分に蓄えてあるデス。それよりもこれから寒くなるデス。枯葉や新聞紙をたっぷり溜め込んでおかないと凍死しちゃうデス」 親実装もその親から教え込まれてきたきたことである。 冬の寒さは尋常ではない。 ゴキブリにも等しい生命力を持つ実装石も、体が凍りつくほどの低温に対してはさすがに死を免れないのだ。 秋の間に保存のきく食料を備蓄しておくことはもちろん、断熱のための枯葉や新聞紙、できればタオルなどを蓄えておくのは冬を越すために必須の作業である。 親実装は古新聞を器用に裂いて短冊状にした後、さらにほぐしてもっさりとした塊にする。 パリパリに乾燥した枯葉は肌触りが悪いので、ダンボールの壁面などの外側には枯葉を詰め込み、自分たちの肌に直接触れる内側にはほぐして柔らかくなった新聞紙を敷き詰めるのだ。 知識として知っているわけではないが、断熱性の高い枯葉と、保温性の高い新聞紙の使い方としては正解である。 そんな工夫を見せるあたり、平均的な実装石よりは少しばかり賢い個体といえた。 仔実装たちもその意味するところは分かっていないだろうが、紙を破くという行為そのものが楽しいのであろう、親実装の作業を懸命に手伝っていた。 それを見ながら親実装が目を細めて微笑む。 仔実装の2姉妹と末っ子の蛆。 自分にとって初めてのわが仔たち。 できることなら全員一人立ちできるまで健やかに育ててやりたい。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ その虐待派の男は特殊な嗜好を持っていた。 他の虐待派にありがちな、バールでの殴打などの直接的攻撃を好まない。 男が好むのは、実装石を火だるまにして、その踊り狂う様を楽しむことだった。 深夜の公園。 外をうろつく実装石はもちろん、訪れる人間もまずいないであろう時間帯に、一人の男が足音を殺して徘徊していた。 外灯の光もほとんど届かない茂みの影に、隠れるようにして置かれているダンボール。 それを中にいる住人に気づかれないよう、窓になっている穴や扉の隙間からそっと覗き込む。 いくつかのダンボールを見回って、男は今日のターゲットを定めた。 中に枯葉や新聞紙など、燃えやすいものをたっぷりと詰め込んだダンボールだ。 その中には、4匹の実装石が古新聞の切れ端で作った暖かな寝床で安らかな寝息を立てていた。 実装石の棲家としているダンボールは、基本的に横倒しの状態で使われる。 人間が使うときのように上が開くように置くと雨などが入るし、蓋を閉めても成体実装のサイズでは窮屈だ。 横倒しなら成体実装でも座れば十分な高さがあるし、蓋を扉代わりに使うこともできるので、ほとんどの実装石は自然とそのような使い方を選んでいた。 男は目当てのダンボールにそっと近づくと、閉められている蓋をそっと開けようと引っ張る。 だが開かない。 端に爪を立てて少し強めに引っ張るが、それでも何かが引っ掛かっている。 どうやら中から小枝か何かで閂がかけられているようだった。 男は中の実装石の知能の高さに苛立って舌打ちをするが、あまり力づくで開けると物音で気づかれかねない。 すぐに脇にある小窓へと視線を移し、攻め口を変更した。 このダンボールは野菜の出荷用で、横に持ち運ぶための指入れ穴が開いているのだ。 その穴に、男が懐から取り出したスプレー缶を近づけていく。 スプレー缶のラベルには『防錆用潤滑油 5○6』と書かれていた。 男は中にいる実装石たちに気づかれないよう、穴から少し離れた場所から潤滑用の油をスプレーする。 油は目に見えないほどの細かい霧状となり、ダンボールの中に流れ込んでいった。 あくまで着火しやすくするためであって、あまり大炎上させてボヤ騒ぎになっても困るので、吹き付けるのはほんの少量でいい。 潤滑油のスプレー缶を懐に戻すと、男は脇に落ちていた枯葉の1枚にライターで火をつけ、脇の穴から放り込んだ。 その瞬間、油の霧に引火し、瞬く間にダンボールの中が炎に包まれる。 「デッジャァァァァァァァァ!!!!!」 中から親実装の絶叫が聞こえた。 たった今まで自分たちを寒さから守っていてくれていた枯葉や新聞紙が、あっという間に炎の檻と化し、親仔の体を包み込んだのだ。 「テヂャァァァァァッ!!! アツイテチ! アツイテチィィィィ!!!!!」 「次女ぉぉぉぉぉ!!!」 「レッピィィィィィ!!!」 「う、蛆ちゃぁぁん!!!!!」 ダンボールの中はもはや阿鼻叫喚の灼熱地獄と化している。 だが声だけ聞こえて中が見れないのではいまいち面白くない。 それにこのままでは茂みの草などに燃え広がって騒ぎになる可能性がある。 男がダンボールハウスを砂地の地面に蹴り飛ばすと、蓋が開いて中から火だるまの親仔が転がり出てきた。 「デジャァァァッ!!!」 「テヂイィィィィッ!!!」 4匹全てが髪と服を炎上させ、頭を抱えて転げまわっている。 蛆などはすでに全身黒こげでピクリとも動かない。 絶叫したまま固まった顔は水分が抜けてしわしわに萎びている。 最も火の回りが大きかった次女は何かに助けを求めるかのように手を前に差し出し、のそのそと動いてはいるが、火がついた眼球が溶け出して何も見えないのか、その手は虚しく空を掻くのみだ。 そのうちばったりと倒れて動かなくなった。 親実装は自ら服を破って脱ぎ捨て、肉を削り取らんばかりに頭を地面に擦り付けて何とか自分の身体を覆った火を消すと、まだ転げまわっている長女の身体を必死に叩いて火を消し止めようとする。 だがあまりにも必死すぎたせいで、自分の仔を全力で殴打したのと同じ結果を招いてしまった。 身体を覆った火がようやく消えたとき、長女は髪と服を失い禿裸になっていただけでなく、母親の殴打によって全身の骨が砕け、もはや虫の息だった。 「テヒュ……アツイテチ…イタチテチ…ママ…ママ……」 とどめを刺したのはその母親に等しいのだが、長女は必死で親に助けを求めて折れた手を伸ばす。 だが親実装が手をとろうとしたときには、すでに長女は事切れていた。 「デ……デェェ……デジャァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 3匹の仔を失った親実装の悲痛な叫びが公園に響き渡る。 男はそれを歪んだ笑みを浮かべながら見下ろしていた。 その存在にようやく気づいた親実装は、この惨劇を招いたのが目の前にいる人間の仕業であるとすぐに悟った。 「お前の仕業デスかニンゲン……なぜデス? なぜこんなことをしたデス!? みんないい仔達だったデス! みんな冬を越えてシアワセになるはずだったデスゥゥゥ!!!」 手で地面をバンバンと叩きながら、親実装は血涙を流して抗議する。 「おいおい人のせいにするなよ。どうせお前の火の不始末だろう? 俺はダンボールに火がついてるのを見つけて、中にいるお前らを丸焼けから救ってやっただけだぜ」 「そんなワケないデスゥ! ワタシたちは火を使ったりしないデスゥゥ! オマエらニンゲンが何かしたに決まってるデスゥゥ!!!」 「いやぁ、自分で火を使わなくても、火種ってのは結構そこいらにあるもんだぜ? お前ダンボールの中にずいぶん枯葉やら新聞紙やら詰め込んでたみたいだけど、それに人間が焚き火に使った燃えカスなんかも混ざってたんじゃないか?」 焚き火の燃えカスに火種が残っていて、それが半日以上を経ていきなり激しく炎上するなど常識的にはありえないことなのだが、男は所詮実装石の知能と侮って適当なことをいう。 「それにしても……せっかく助けてやったのにその言い草はさすがにカチンとくるわー。助けてやるんじゃなかったわー」 棒読みの台詞を吐きながら、男は親実装の頭を掴んで持ち上げる。 「デェェッ!?」 「そんなに気に入らないなら助ける前の状態に戻してやるよ」 男はそう言い放つと、まだ中が燃え続けているダンボールを蓋が上になるように足で転がし、その中に親実装を放り込んだ。 「デァァァァァッ!?」 親実装は再び炎の中に放り込まれて暴れ回るが、男が箱の角を足で押さえているのでダンボールがひっくり返らない。 なんとかダンボールの縁を乗り越えて脱出しようと足掻くが、そのたびに男が足で親実装をダンボールの中に蹴り落とす。 「デギァ……ァァ…………」 親実装は生きたまま焼かれる苦しみを存分に味わい、ダンボールの中を転げ周り、のたうち回った挙句に息絶えた。 「ふう、昔『戸締り用心火の用心 水を大切にしよう 一日一善!』なんてCMがあったけど、火をつけて善行(実装駆除)ができるんだから最高だよな」 男は懐からペットボトルを取りし、中の水をダンボールに注いで消火すると足早に公園を後にした。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ 夜が明けた頃、公園の一角で、こんがりと焼けた実装親子の死体を貪りながらバーベキューパーティに興じる野良実装たちの姿があった。 -END- 初スクです。 習作ということで稚拙さはご容赦を……

| 1 Re: Name:匿名石 2016/03/08-02:07:09 No:00001947[申告] |
| 556って引火するのか・・・ |
| 2 Re: Name:匿名石 2016/03/08-04:13:37 No:00001948[申告] |
| これで初めてとはすごい、じっくり練られたいいスクだ
GJ |
| 3 Re: Name:匿名石 2016/03/08-08:54:18 No:00001949[申告] |
| ホッカホカ実装肉、大盤振る舞いですね!お見事。 |
| 4 Re: Name:匿名石 2016/03/26-14:50:15 No:00002070[申告] |
| こんだけ騒ぎになったら他の実装も騒ぎそうだけど朝まで気づかなかったのか
広い公園なんだろうか |