タイトル:【愛?】 非適合者
ファイル:非適合者.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3787 レス数:0
初投稿日時:2006/08/16-04:14:16修正日時:2006/08/16-04:14:16
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                              「非適合者」



僕は自家用車で、観光地の山道を走っている。
この山は自殺の名所としても、有名な場所だ。

そう、お察しの通り、僕はこの山に自分の死に場所を探しに来ている。

先月の事、僕は気に入らない上司と大喧嘩をした。
ついかっとなってしまい、上司を殴ってしまった、上司はその事を上に報告しなかったが、
僕自身がその会社に居ずらくなって、辞表を出して会社を辞めた。

どうせ上司も自分の立場が大事な為、上には上げなかったんだろう。

そんな訳で会社を辞めてから、家でごろごろしていた。
再就職や、何かをしようという気力も無く、金も残り少なくなってくる。

自暴自棄・・・うーん前々から思っていたんだけど、
僕は友達がいない訳じゃない、親友と言える奴は何人かいる。

少ない人数の時は良いのだが、ある程度の人数になると、僕はみんなから浮いてしまうのだ。

非適合者・・・会社でも仲の良い人間はいた、でも会社組織の中では、
やっぱり僕の存在は浮いてくるようになる、そして案の定、喧嘩をしてお決まりのコース。

僕は組織の中では必ず、何か目立つ訳じゃないのに、攻撃の的にされてしまう。

僕の存在自体がこの世の中に合っていないのだ、それならいっその事、消えてしまおう。
そんな事を思って、ここにやってきたのだが、中々良い場所が見つからない。

カッターナイフ、睡眠薬、首吊り用のロープ、練炭、目張り用のガムテープ。
これだけ有れば、まあ大概の自殺は出来るだろう。

『おっ・・いい脇道、発見』

僕は車を脇道に向けると、行ける所まで入っていった。
脇道はすぐに細くなってしまい、これから先は歩いて行くしかない。

手には睡眠薬とロープを持って、何処までも続いている小道を歩いていった。

かなり奥まで来ただろうか、こんな奥なら僕のことは、まず発見はされない。
僕は辺りに首が吊れそうな木を探した。

『おー・・これこれ、この位の太さなら手頃だろう』

手頃な木を見つけると、ロープを吊った。
台には石を積み上げて、足を滑らせれば、それであの世行きだ。

睡眠薬を飲んで、ロープに首を突っ込んだ。
この足を踏み外せば僕の人生は終わる、案外死ぬ前は恐怖も感じない物だな。

石を蹴飛ばすように、踏み外すとロープが僕の首を絞めてきた。
苦しい・・・・いやかなり苦しいと言うか痛みも相当な物だ、これが死ぬ痛みなのか。

待てよ・・・睡眠薬で朦朧となってから吊れば、こんな痛みも感じなかったんじゃ・・・
まあ、今更考えた所で仕方が無い、なんて事を思っていると目の前が真っ白になって行く・・・







          バキッ!!











気が付くと僕は崖の下に、落ちていた、首には僕をあの世へ連れて行ってくれるはずの、
ロープが巻きついたままだ。

ロープには折れた枝が付いている、良く見ると松の木の枝は、
松食い虫にやられ、ぼそぼそになっている。

『やれやれ・・・自殺一つ出来ないなんて、
 こんな事だから社会から、弾き出されてしまうんだな』

落ちてきた崖を見上げると、かなり急な崖だ、良く無傷でいられた物だ。
僕は崖を登る事をあきらめ、回りを見渡した。

目の前には鬱蒼とした森が、入ってくる事を拒むように茂っている。
人間の入った形跡が無い、僕は意を決して森に入っていった。






野垂れ死にも悪くない、第一苦しくないし痛くも無い。
どうせ死ぬんなら楽に死のう、首吊りはもうこりごりだ。

そんな事を考えながら、道なき道を進んで行くと、突然開けた場所に出た。

かなりの広さだ・・・ここは一体。

ガサ・・ガササ!

何かいる・・・目を音のする方へ向けると、一匹の実装石がいた。

『こいつは実装石って奴だな、何でこんな山の中に・・・』

僕の記憶の実装石は、公園とかに行けば普通に見られる。
虐待派とか言う奴らの標的され、良く虐殺されてニュースで流れいた。

最近はペットとして、ペットショップでも売られている。
テレビでも特番が組まれ、ペットとしての存在を確立している。

僕はと言うと、実装石どころかペット全般に興味が無く、
頭の隅に存在程度の認識があるだけで、全く未知な生物だ。


その実装石は僕の方を見つめ、何やら興味がありそうな素振りだ。
こんな所で会ったのも何かの縁だ、僕はそいつに近づいて行った。

『よう・・こんな所で何やってんの』

一瞬そいつは身構えたが、僕に向かって何かを話して来た。

「デス・・デスゥ」

何を話てんだこいつ、デスーじゃ意味が分からないって。

『そーだ・・・リンガルってやつがいるんだっけ』

思い出したが、実装石なんて興味の無い僕が、リンガルを持っている筈が無い。

さらに近づいて行くと、そいつは慌てて逃げ出してしまった。
追いかければ簡単に追いつけそうだが、別段興味も無いので、
あいつは無視して、奥の広がった場所へ、僕は歩いて行った。


広場の中央にやって来ると、たくさんの実装石がいる。
良く見ると、家族連れや、年老いてよぼよぼな奴、やたら元気に何かを話してる奴もいる。

そいつらは僕の存在に気づくと、始めは遠巻きに見ているだけだが、
危害を食わえない事が分かると、僕に近づいて来た。

そいつらの長老みたいな奴が、僕に話し掛けてくる。

「デス・・デスデス」

まただ・・・まったく実装語なんて僕に分かる訳が無い、
仮に学校で実装語の科目があっても、習う気も無いけどね。

長老は一通り話し終わると、みんなをまとめ何かを言っている。
実装石どもは何か納得した様子で、また同じ生活に戻っていった。

どうやら僕はこいつらに、受け入れられたらしい。

「テチィ・・テチー」

足元を見ると、いつの間にか子実装が一匹、僕を見ていた。

『なんだ可愛いなお前・・・』
『どっから来たかって』

仔実装がなんて言ってるか分からないが、適当に答えてやった。

『ほら、あの崖の向こう・・・』

僕は落ちてきた崖を指差して、仔実装に身振り手振りで教えてやる。

『あそこから落ちて来たんだ』
『お前・・・帰り道分かるか・・』

仔実装も身振り手振りで何か答えている。

「テチ、テッチィ」
「テチー!」

やっぱり分からんな、糞蟲って言われてるこいつらの事だ、
どうせ「バカ人間が金平糖をよこせ」とかって言ってるんだろうな。

話し終わると仔実装は、母親であろう成体実装の元へ帰った。

僕はこいつらに興味が沸いたので、暫く観察する事にする。
観察して分かった事は、こいつらには上下関係がある、
偉そうに何かを指図してる奴が、中間管理職かな。
あの気に入らない、糞上司みたいなもんか。

人間社会と同じように、こいつらにもヒエラルキーみたいなもんが、あるようだ。
何匹かの実装石が指示を出し、木の周りに落ちている、ドングリみたいな実を集めていた。

木の実を拾ってる大部分の実装石は、一心不乱に拾っている。
ノルマとかあったりしてな、ははは
数は200匹はいるなー、おっ・・さっきの仔実装も拾ってる、感心感心。

日が暮れる頃になると仕事が終わり、実装石達は一列に並んでいる。
どうやら拾った実を分配するらしい、やがて指示を出していた実装石達が配り始める。

分量は適当だが一様に平等なようだ、あの仔実装の親子も貰った、良かったな。

最後に並んでいるあの実装石は、最初に会った奴だな、ん・・あいつ拾ってたっけ?
あ〜あ、案の定チクリが入り、みんなに叩き出されてやんの。

その実装石は中間実装石に、激しく文句を言って泣きながら帰って行った。
笑っちゃ悪いが、その姿は何と無く僕の姿と重なって、笑ってしまった。

働かざる物食うべからずだ、ズルして餌を貰おうなんてあいつが悪い。

実装石達はちりじりになり、自分の巣に帰って行く。
僕の方にあの仔実装が、親を連れてやって来た。

その親子は盛んにこっちへ来いと、誘っている。
まあ断る理由も無いし、僕はその親子の後をついて行った。

ついて行くと親子は自分の巣へ、僕を招き入れた。
入りたいが、実装石サイズじゃ当然、僕は入る事が出来ない。
取りあえず頭だけ突っ込んで、お邪魔した。
頭だけ突っ込んで寝そべっている僕の姿は、他人が見たらどう思うだろうか。

入口の狭さに比べ中は結構広い、外敵から身を守る為入口を狭くしているのか。
小枝を何層にも組んで上から、硬く広い葉っぱを被せている。

テレビで見る、アフリカの部族とかが作ってる奴と似ているな。

親実装がさっき貰った木の実を半分ほど分けると、僕に持ってきた。
おいおい幾らなんでも貰えないよ、それは君たちの労働の対価だ。
僕は断ったのだが、親実装は半ば強引に押し付けてきた。
結局押し切られてしまい、僕はありがたく頂戴した・・

隣で仔実装がもじもじしながら、僕を見つめている。
おもむろに後ろに持っていた、あけびを差し出して来た。
断ったが、やっぱり押し付けて来た。

『何やってるんだ僕は・・・仔実装のオヤツまで』

僕はドングリとあけびを貰うと、隣で自分の家を作り始めた。
いつまでも世話になる訳には行かない、自分の事位は自分でやらなきゃな。
その様子を入口から仔実装が、頭を出して見ていた。

木の枝を組んで、不恰好だが一応家は完成した、初めてにしては悪くない。
中に入って寝転がると、親子に貰ったドングリを食べた・・・ドングリって食えるのか。
味は旨くないな青臭い、朝から何も食べてないが僕は2〜3個口にしてやめた。
あけびに関しては甘くて旨かった、良く考えたら初めて口にした。

次の日、僕は腹をこわしていた、やっぱりドングリかなぁ・・

今日は僕も何か食える物でも捜そう、毎日ドングリじゃ身が持たない。
ついでに色々と見てまわろう、とにかくここを出なければ。

30分程、回ってみて分かったんだが、周り全部を森に囲まれている。
森を抜ければ何とかなりそうだが、車までの方向が分からない。

のんびりと捜すか・・・あれ?そう言えば僕は自殺に来たんだよな。

歩いて行くと広場のはずれに来た、最初に迷い込んだ場所だ。
僕はあいつが気なってしょうがなかった、あいつは僕と同じ匂いがする、
集団の中では目立ってしまい、なぜか浮いてしまう奴。

『確かこっちへ逃げて行ったよな・・』

あいつの逃げた方角へ歩いて行くと、みすぼらしい巣を見つけた。
適当に小枝を組んだ為、いびつに組みあがり屋根すらない。

適当にも程がある、僕も不器用な方だが、これほどに下手な物は作らない。
あいつは少し離れた茂みから、僕を見ていた。

僕はしゃがんで、あいつを呼んだ、すると無警戒に走ってきて何かを話している。

「デスゥ、デスー」

顔が喜んでるから、歓迎されているようだ。
ポケットに入れていたドングリを差し出すと、あいつは大はしゃぎだ。
あの親子には悪いと思ったが、僕は食べないしこんなに喜んでるんだ、許してくれるだろう。

『お前いつも一匹だな・・・お前の事はハグレって言うよ』

嬉しそうなハグレを後にして、最初の森へ入っていった・・・ん、ハグレも付いて来る。
僕が気に入ったのかな意外と人懐っこい奴だ、それとも僕に同じ臭いでも感じたか。
森へ入ったのには訳がある、ここを通る時に果物がなっている木を確認したからだ。

『おっ・・・あった、あった』

果物は柿だな、形から渋柿じゃ無いようだが、一つもぎると傍らのハグレに与えた。
ハグレは柿を両手で持ち、頭の上に上げて踊っている・・・喜びの踊りなのか?



10個ほど取ると、僕は広場に向かった、ハグレはまだついて来る。
広場では相変わらず実装石達が、木の実を拾っている。

その時、実装石達の目がこっちへ向いた・・・・あぁ、僕の持っている柿を見てるんだ。
柿が珍しいのかな、まードングリよりは大分旨いはずだしな。

僕の後を着いて来たハグレが、働いてる奴らに自慢げに柿を見せびらかしている。
バカな奴だな、そんな事してるから嫌われてんだよ。

何だか居ずらいので僕は自分の巣へ帰った、ハグレも自分の巣へ帰って行った。
暫くすると親子も帰って来たので、僕は柿を持っていった、昨日のお返しってやつだ。

親実装はやたらと断ったが、そんな訳には行かない、僕は無理やり置いて来た。
自分の巣へ帰ると仔実装も着いて来た、どうやら僕はこの仔実装に気に入られたようだ。

「テチィ!テチ、テチィー」

相変わらず、何を言っているのか分からないが、僕は適当に相槌を打った。
仔実装も満足したのか、自分の巣へ帰って行った。





翌日、森に向かう途中で昨日のハグレが、血相を変えて僕を呼びに来た。
僕のズボンを引っ張って、こっちへ来いと言ってるみたいだ。
僕はハグレに着いて行く事にする、実装石に頼られる男か・・・何だかな。

あいつは広場へ僕を連れて来た、一体ここに何があるって言うんだ。
何だ・・・実装石が集まってる、ハグレも盛んに手を指して喚いている。

実装石の群れを押しのけ、真ん中まで行くと一匹の実装石がうずくまっていた。
その実装石を他の実装石が、棒や石でリンチをしている。

傍らでは仔実装が泣いている・・・あの仔実装だ!と言う事はリンチに、あってる実装石は・・

『何やってんだ!・・このっ!!」

僕は実装石の群れを蹴飛ばし、親実装を抱き起こした。
親実装は既に死んでいた・・・でもなんでリンチに・・・

蹴飛ばした実装石から、昨日の柿が転がって来た。

何でこいつらが柿を持ってるんだ・・・・周りを見ると実装石達が、僕に敵意の目を向けている。
泣いている仔実装を抱えると、僕はそこから逃げ出した。

走っていると、ハグレが呼んでいる、僕はハグレの後を着いて行った。
森の中入り、何処をどう行ったのか分からないが、とにかく奥へ奥へと入って行く。

抱えた子実装がチィーチィー泣いてうるさい、
気持ちは分かるが、死んじまった物はしょうがない。

何時間歩いたろう、いきなり森を抜けると、アスファルトの道路に出た。

ここは・・・何だか見覚えがある。
道路に沿って登って行くと、自殺の為に入って行った脇道があった。
脇道を暫く歩き、自分の車を見つける・・・・これで帰れる。






帰りの車中で、車に置きっぱなしの携帯電話が鳴った、発信先は友人からだった。
そいつは、いきなりでかい声で喚いて来た。

『お前か!・・・バッキャローッ!』

どうやら僕の事を心配してるらしい、自殺に行く前、僕は親しい友人にメールを出していた。
内容は「会社を辞めた、暫く一人で考える、心配するな」だった。

友人は自殺と勘違いして、何度も電話を掛けたらしい、まあ実際、自殺に来たんだが。
携帯を見ると、着信記録にはメールを送った友人全員から、着信がある。
友人には適当にごまかして、携帯を切った。

ははは・・僕は一人だと思ってたんだけど、そうでも無いみたいだ。

「チィー」

助手席に座る仔実装を見て、僕はなぜ親実装がリンチにあったのか考えた。
実装の社会は人間の社会と同じで秩序があった、それは平等と言う秩序だ。

実際、人間と同じで平等と言っても実は平等じゃ無い、必ず偉そうに上に立つ奴がいる。
その中でも、大多数の平等を共有する一番下の者達。

親実装は僕のあげた柿によって、一番下の者達を飛び越え、上の者より良い物を食べた。
嫉妬、妬み、同じ平等を得られない者は、弱い者へ攻撃をした。

ハグレの様に適当に生きて行けば、弾き出されるだけで終わりだったろうが、
親実装は真面目すぎたんだろう、何とか実装社会に戻ろうとして殺されたのか・・・

「デス!デスッ」

後ろで車の窓を見てハグレが興奮している、コイツはバカだが悪い奴じゃない。
こいつのお陰で、仔実装の命は救えたし森も脱出できた。


えっ・・自殺はどうしたって、痛いのはもう勘弁してくれ、
集団に馴染めないんなら、違う所でまたやって行くよ。

それにこいつら・・・扶養家族が増えたしな、親実装を殺したのは、僕みたいなもんだし。

良く考えたら上司も僕に殴られて、会社じゃ肩身が狭いかもしれない。
うーん・・悪い事したかな・・・せめて上司に謝りの電話でもしておこう。


『あれ?・・これが適合ってやつか・・・ハハハ』







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小さな光りの作者です。

こんな人って多いんじゃないでしょうか、僕も集団の中で浮いてしまう一人です。

少ない人数だと、自分の意見が通りやすいですが、多くなるとそうは行きません。

目立ちたがりの僕は、集団の中では落ち着く反面、
目立ちたいと心の中で、いつも思っています。

虐待分ほぼ無し、軽いノリで書きました。

















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