妖精の取替え子(チェンジリング) アイルランドは昔から妖精にまつわる寓話が数多く存在する。 しかし、アイルランドの人々にとって、これらの妖精は決して民間伝承(フォーク・ロア)などではなく、 我々が考えている以上に実生活の上で強い結びつきを持っている。 アイルランドの敬虔な人々は彼らを決して迷信などとないがしろにしたりせず、 「紳士たち(ジェントリー)」や「良い人たち(グッド・ピープル)」などと呼んで敬っている。 彼らは非常に気まぐれで、善人には善を持って報いるが、悪人には悪を以って報い、 非常に魅力的ではあるがただ良心—節操が無い。 さて、ここで紹介したいのはごく有名な「妖精の取替え子(チェンジリング)」についてである。 「グッドピープル」はしばしば神の庇護の元に生まれ両親の深い愛情に恵まれたきれいな人間の赤子を見つけると、 それを妬んで自分の醜い子供と無断で取り替えてしまったり、或いは木っ端などを代わりにベッドに寝かせ、 それを魔法でガリガリにやせ細り死にゆく人間の子に見せかけたりするのである。 気の毒な両親は愛する子供が死んでしまったと思い込み、涙にかきくれてまやかしの死体を丁重に埋葬するのだ。 しかしごく稀に赤ん坊だけではなく大人や若い娘などが対象になることもあるという。 さて、前置きが長くなったがこの話を聞いて我々は何かを思い出しはしないだろうか? そう「実装石の託児」である。 かの繁殖力が爆発的に強く環境に対する適応能力に優れたあのナマモノが日本の狭い国土にだけ存在するなどと誰が言い切れるだろう。 かのナマモノが古来より世界中に散らばっているとしたら? 時は18世紀後半。 「良い人たち(グッドピープル)」などと呼ばれながらもその姿を見ることや関わることをなるべくだったら倦厭されている、 とある緑の妖精が広い牧草地の只中にある質素な人間の家に食事を求めて侵入を試みようとしていた。 (無論、アイルランドにはこの緑の妖精のみならず、それは多種多様の妖精達—例を挙げるならば、バンシー、メロウ、レプラホーン、プーカなど—がいるがその性質は尽く異なっている、 恐らくこの緑の妖精は少なくともアイルランドの慎み深い人々にとっても「グッドピープル」では無かっただろうが) 開いたドアの隙間から家の中を注意深く見回した緑の妖精は彼(彼女)にとって幸運なことに家人が留守であることを知った。 「デププ…」と人々からどうも厭われているその下品な笑いを漏らした緑の妖精は早速人間たちが日用の糧と神に感謝しながら戴いている貴重な食料をなんの遠慮もなく食い荒らそうと家の中に踏み入った。 かまどには火が踊り、その上にかけられた鉄なべの中には大暴れするほどに沸き立つお湯が張られている、 時折、お湯の中から大きなジャガイモが数個、湯とともにダンスでも踊るかのように水面すれすれまで浮き上がっては沈み浮き上がっては沈みを繰り返していた。 この家の住民はある正直な若い夫婦であった。 この時間、夫は川に魚を取るための仕掛け網を見にいっていたし、妻は生まれたばかりのバラ色の頬をした可愛い赤子がベッドで安らかな眠に包まれているその間に夕食の為のジャガイモを煮、 栄養たっぷりの牛の濃い乳を搾りに出かけていたのだった。 緑の妖精がまず目をつけたのはこのジャガイモだった。 石を積み上げた簡素なマントルピースの上にその体躯に見合った不器用さでなんとかよじ登り、 沸き立つ鍋にジャガイモ目掛けて無造作に手を突っ込んで「デジャッ!!」と下品な悲鳴を上げて慌てて手を引っ込めた。 熱に弱いこの妖精でなくても熱湯に手を突っ込んだりなどとそんなことをすれば当然である。 その後緑の妖精はジャガイモが浮き上がってきた瞬間を小賢しく狙って何度か勇敢にも鍋に手を突っ込んでみたがジャガイモを手にすることはおろか、 自身の手がホクホクに茹で上がってしまっただけだった。 この緑の妖精がもう少し賢しければ側にある火かき棒を使って鍋を床にぶちまけるなりしてこの中身を手に入れることも出来たのだろうが惜しむらくはこの妖精はそこまで頭が良くなかった。 ただ腹立ち紛れに「デジャァァァァァ!デジャァァァァァ!」と熱湯に向かって威嚇の声をあげ地団駄を踏むだけだった。 その後、大して広くも無い質素な家の中を散々荒らしまわったが、目当ての食料は見付からなかった、 ちょっと上を見上げれば、干した羊の肉や魚が天井の梁近くにぶら下がっていたのだがまあそれを見つけられたところでどうあってもこの小さい妖精にそれを手に入れる術は思いつかなかっただろうが。 「チッ、しけた家デス!」 緑の妖精は悪態を吐きながら置き土産とばかりにその場で薄汚れたパンツを脱ぎ捨て腰を落とし、 あろうことか妻が毎日丁寧に生まれたばかりの子供の為に魚を持って帰ってくる夫の為に掃き掃除をしている床に糞をし始めたのだった。 誰もが顔をしかめたくなるような強い臭気のそれを大量に出し終わるとこの緑の妖精は気持ちよさげにため息を吐いた、更にあくどい事に、 パンツを穿き終え、床に出したそれを手に取ると先ほど格闘して敗れたあの忌々しい鍋の中にその緑の体と同じ色の糞を投げ入れてこの夫婦のささやかな夕食を台無しにしてしまおうと、掴み上げて大きくその短く太い腕を大きく振りかぶり、 どうにも人々を不快にさせるあの「デププ」という笑い声を上げながら投げようとしたその時だった。—神の祝福あれ—。 「ふああ」 と可愛らしい柔らかな声が聞こえ緑の妖精はギョッとしてその手を止めた。 先ほどまで緑の妖精が家の中を荒らしまわっていることを知らず優しい眠りに包まれていたこの家の可愛い赤子が、 気の毒に、部屋中を満たす悪臭にその眠りを妨げられてしまったのだ。 最初は人間が帰ってきたのかと驚いたこのあくどい緑の妖精だったが、 それがまだ生まれたばかりのふにゃふにゃのいかにも幸せに満ちた、だが彼らにとってはそれが気に食わない赤ん坊だと分った途端、 おどろきはすぐ安心に変わった。 そのとき妖精はとても意地の悪いことを思いついたようだった、今手にしているこの糞を、 忌々しい鍋ではなくこのなんの抵抗も出来ないであろう人間の赤子の顔に塗りたくってやろうと思い立ったのだ。 なんと意地の悪いことである。 彼ら(彼女ら)はどうもそうする事で相手の立場が自分より低くなり一生下僕として自分に仕えると信じているらしかった。 緑の悪臭を放つそれを手にしたまま、赤子が寝かされている木のベッドによじ登った妖精はこのベッドの中を見てふと首をかしげた。 その赤子は誰がみてもそれはそれは大切にされているのが分った。 ふわふわの白いシーツの上に母親の手編みのおくるみで優しく包まれ、 枕元には夫が我が子の為に作ったものであろう木彫りのおもちゃがそっと置かれ、 さらにはこの子が神の庇護を受けられますようにと十字架までもが置かれていたのだ。 無論、この緑の妖精に神の象徴など判るはずも無かったがとにかくこの赤子がとても可愛がられていることだけはよく解った。 そしてとても不満だった。 「なんでこんな役立たずのブサイクがこんなに大切にされて、 この美しいワタシや可愛いワタシの子供たちがひもじい思いをしなくてはいけないんデスゥ? こんなのおかしい話デスゥ!」 熱湯に突っ込んで真っ赤になった手よりもなお顔を赤くして緑の妖精は憤慨した。 しばらく湯気が上がらんばかりに怒りを露にしていた緑の妖精にふとそれは嫌味な笑みが浮かんだ。 「そうデス、こんなブサイクが大切にされているなら、ワタシの可愛い子供たちならもっともっと可愛がってもらえるはずデスゥ。」 そのときこの緑の妖精は本人が「最高のアイディア」と自負する人にとっては最低な思い付きを実行に移そうとしたのだ。 それから半刻ほど経って、妻が絞りたてのミルクがたっぷり入った桶を担いで帰ってきた。 ミルク桶を床に置いた時、なにか鼻を突く嫌な臭いを感じたように思った、 それは我が子のおしめから時折漏れる臭いに似ているようでそれよりもっとはるかに不快なものであったが、 よもや半刻ほど前に緑の「グッドピープル」が我が家に侵入し糞を漏らしていったことなど想像もつかなかった妻は 子供のおしめの臭いであろうと思い込んでしまった。 そして恐らくはそれによって不愉快な思いをしていたであろう可哀相な我が子の為に早速おしめを換えてやってから、 その愛らしい額に優しくキスしてあげようとベッドに近づいた。 だがベッドを覗き込んだ妻はその赤ん坊を見るなり悲鳴を上げて腰を抜かしてしまった。 ベッドにいたのは柔らかい手足を愛らしく動かすバラ色の頬をした我が子ではなく、 うんと小さな(それも一匹二匹ではない!4匹も!)そして非常に醜い緑色をした赤ん坊だったのだ。 その赤子達は一時も休む事無く「テチーテチー」といったようなおおよそ人間の子供の上げる声ではない声で泣き続けていたのだった。 この噂はあっという間に近所中に広まった。 そして誰もがこの夫婦の不幸を慰めた、そして口をそろえて言ったものだ「これはきっとグッドピープルのチェンジリング(取替え子)に違いない」と。 悲しみにくれた妻は村で一番の物知り(少なくとも妖精については驚くほどの知識を持っている)であるグレン・リーという老婆の元に出向いてこれまでのことを一切合切話した。 話を聞いたグレンはすぐに言った「それは間違いなくチェンジリングだね」と。 「あの緑のグッドピープルは大切にされている子供をみると、ねたましくなって自分の出来の悪い子供と取り替えてしまうのさ、 そうすれば代わりに自分の子供を可愛がってもらえるとあいつらは信じているんだ、そして彼らの思惑通り、 その子供たちにミルクの一滴でも与えてしまったら、 家が潰れて家畜がすべて死に絶えてしまうまで子供たちはわがままを言いありったけの食料を食べつくしてあっという間に大きくなり、 癇に障るうるさい声で一日中泣き喚くのさ、信じられないだろうが確かに彼らはあんたの子供をさらって変わりに自分の子供を置いていったんだよ」 「ああ、なんてこと神様、では私はどうすればいいのでしょうか?どうすれば私の子供は返してもらえるのでしょうか?」 「彼らの子供を追い払う方法はたくさんあるし私は幸いにもそれらをあんたに教えて上げられるだけの知識を持ってる、それについては安心するがいいよ。 でもねキティ、やさしい母親であるあんたにこんなことは出来れば言いたくないがね、あんたの本当の子供のことさ、ああ、 本当に出来ることなら今すぐ唖になっちまいたいくらいだ、あの緑のグッドピープルはとっても貪欲で何でも食べてしまうんだよ、 そう、なんでもね」 それを聞いた妻は今度こそ天を仰いで「ああ!神様あんまりです!」と嘆いて泣き伏してしまった。 物知りのグレン曰く、この緑の妖精は子供を取り替えてからしばらくしても子供がある方法で暖炉で焼かれたり酷く痛めつけられて追い出されたりしなければ人間に気に入られたものだと思い込み、 そしてどういうわけなのか、 親である自分も気に入ってくれるに違いないと信じ込んで堂々とやってきては子供もろとも居座るのだそうな。 一旦居座られたらそれこそ子供たちと一緒になってあっという間に一家の財産を食いつぶしてしまうほどの、 悪行の限りを尽くすのだそうな。 そうならない為にはとにかく、親がやってくるのをじっと待って、親共々捉えてしまう必要がある。 すみません、ここまでです。 というか虐待の才能がないんでアイディアください。 妖精の取替え子の追い払い方はたとえば妖精の子供の足の裏に油を塗って火の上に吊るすとかなんですけど…。

| 1 Re: Name:匿名石 2015/08/26-03:12:26 No:00001827[申告] |
| 生皮剥いで火であぶって塩たっぷりの箱に入れてたっぷり塩分をとれる歓びの声を出してもらうとか? |
| 2 Re: Name:匿名石 2015/08/26-09:59:22 No:00001828[申告] |
| 細かい切り傷を作って聖水(塩水)に漬け込むとか
サンザシの枝で作った籠に入れてドクダミと松葉で燻すとか? |
| 3 Re: Name:匿名石 2015/08/26-18:41:05 No:00001829[申告] |
| これは続きが楽しみだな
トマトみたいに湯剥きして塩かけて食っちまうとかどう?(←一応これでも童話っぽさをイメージした) |
| 4 Re: Name:匿名石 2015/08/27-02:56:53 No:00001831[申告] |
| ヨーロッパだし、同じヨーロッパのそるべさんとじぇらーとさんがされたみたいに互いが見ている前で足の先から少しずつ生きたまま輪切りにしていってやろう
あと、呂后とか凌遅刑とか東ローマ皇帝の末路とかでぐぐるとすごくいっぱいアイディアが見つかると思うよ それにつけてもちょn実装石のやることといったら下衆すぎる |
| 5 Re: Name:匿名石 2015/08/28-16:42:08 No:00001833[申告] |
| 実装石全てをぶっ殺せ。
この不快生物を絶滅に追い込め! と言ったところで仮想生物なのだが・・・ |
| 6 Re: Name:匿名石 2015/08/30-05:27:48 No:00001834[申告] |
| 18世紀後半という時代設定には何か意味があるんでしょうか
単におとぎ話ならもっと古い時代設定の方が自然だろうし この件をきっかけに実装石(緑の妖怪)根絶団体の歴史が始まるとか? 願望を言うとレアケースで赤ちゃんが生き残ってるといいなあ 滅多に生き残らないが生き残った場合は神の加護で醜い妖精の殲滅者になるとか何とかで |
| 7 Re: Name:匿名石 2015/11/07-21:13:52 No:00001858[申告] |
| 未完はよくない
続きが気になる |