服の色はなつめ色でなつめ装石と呼ばれていた実装石の一群がいた。 しかし、この名前には実は思わぬ裏があったのである。 20世紀も終わりのころ、その先祖である薄汚れた野良実装は一枚の紙切れを拾った。 その紙切れは1000円札、コンビニエンスストアの前にひらりと落ちてきたものだった。 その野良実装は実装石としてはかなり賢い個体だった。 それがものを買う対価として使えることをすでに理解していた。 「ニンゲンはこの紙切れがあれば何でもくれるようデスゥ。」 野良実装は素早く1000円札を拾って隠れた。 「あれ、今1000円を落としたような気がしたけど…気のせいか。」 戻ってきた男は周りを見渡した。 デプププ…野良実装は物陰から首を傾げている男を嘲笑した。 野良実装はこれに味を占めてたくさんの札を集めた。 もっとも、ほとんどは1000円札である。 5000円札や10000円札を落とした人間はもっとまじめに探すからあまり落ちていないのだった。 また硬貨は重く、その割には価値がないことも知っていた。 もっとも、実装石が実際に買い物をすることはなかった。 最初に1000円札を拾った野良実装は人間が落としたお札を横領することに歓喜を感じながらも、人間に対価を支払う気になることなどなかったのだ。 唯一、実験として二番目に賢い長女に1000円札で買い物させたことはあった。 その仔実装は店員にこの泥棒糞虫!と惨殺されて床のシミになったのだが、それを見て一番賢い次女には本当に窮地になった時以外には使わないようきつく言い渡した。 「オネチャみたいになりたくないテス。拾うだけで使わないテス。ニンゲンが困ってるのを見るのは面白いけど死にたくないテス。」 それ以来、その子孫においては一子相伝で横領した1000円札と横領する方法、そして迂闊に使ってはならないことが脈々と受け継がれていた。 2003年、突然変異でカーキ色の個体が生まれた。 それはその世代の中で、否、その血統の中でもっとも賢い仔であった。 カーキ色の仔は歴代もっともたくさんの1000円札を集めた。 そして、その仔はやはりカーキ色であった。 この系統は緑色でないことで目立つものの、貴重な個体として官公庁や駆除業者による一斉虐殺とを免れ、その後、実装石研究者の一部によるこの血統を「ナツメ装石」として通常種と区別する説が通説となり、保護種にも指定された。 そのために生存に不利にはならずに生き残った。 しかし、愛護派から餌をもらえたり、飼い実装になる者が多くなった結果、1000円札を受け継ぐ習慣は引き継がれた一方、拾得横領する習慣はなくなっていた。 2015年、日本のある火山が噴火した。 その結果、食糧難となってしまった。 日本では農作物が全く実らず、なぜか漁獲量も激減した。 世界中でも多くの人間が餓死しており、食料輸入量もほとんどなくなった。 いつしか、ナツメ装石に給餌したり、飼う愛護派もいなくなった。 そんな時、飢えた仔を抱えた一匹のナツメ装石が決断した。 「今こそ、これを使う時デスゥ!ニンゲンはこの紙切れには逆らえずに食べ物をくれるデスゥ。この紙切れがあればニンゲンをドレイに出来るデスゥ。」 愛護派に慣れたたせいか、この母実装には防衛心がやや不足していたようだ。 1000円札を何枚ももってよちよちと店内に入ってきたのだった。 長年のゴミあさりがたたってもはやカーキ色すら判別できぬほど薄汚れたナツメ装石だったが、悪臭を放ちながら札束を持って店の中をうろついているのが目立たないわけはない。 早速、店員に捕獲された。 「こいつ、札束持ってるぞ…レジから盗んだんじゃねえか?」 ナツメ装石が持っていたのはすべてD札だった…しかし5000円札はなく、10000円札でもE札でも福沢諭吉だった。 そして、ナツメ装石が持っていた大量の1000円札D札に描かれていた夏目漱石はE札の野口英世と似ていた。 このナツメ装石はその場でレジから現金を盗んだ悪辣な実装石として叩き殺された。 仔達は飢えて死んだ。 そして無関係な実装石達もついに金を盗む知能を得た人類の敵として殲滅されたのであった。

| 1 Re: Name:匿名石 2015/06/16-10:18:50 No:00001779[申告] |
| 最後の札のくだりがよくわからない |
| 2 Re: Name:匿名石 2015/06/19-15:08:14 No:00001790[申告] |
| 知識がないと分からんなこのオチ |
| 3 Re: Name:匿名石 2015/06/21-02:37:32 No:00001795[申告] |
| てっきり漱石が英世に代わったから使えなくなってしまったオチになるかと思ってたけど
印刷されなくなっただけで使えないわけじゃないから違うんだよなあ そして造幣知識がないからオチわかんね |