タイトル:も~っと!オムニバス5連発
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1114 レス数:8
初投稿日時:2015/06/02-01:43:16修正日時:2015/06/02-01:48:53
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も〜っと!オムニバス5連発




●PART-11「お見合い」:

 双葉としあきは、今年38歳になる無職童貞のニートである。
 しかし、彼には「実装石虐待派」という、(彼にとってだけの)誇るべきステイタスがあった。
 今日も公園から捕獲してきた仔実装達を甚振り、甲高い声で笑っている。
 そんな彼の将来を心配する母親(69)は、痛む頭を抱えながら、知り合い筋に電話をしまくった。

 翌日、母に呼ばれ、日課の仔実装虐待を無理矢理中断させられたとしあきは、一冊の薄いアルバム
を突きつけられ、こう言われた。

「あんた、お見合いしなさい」

「はぁ? なんで俺がそんな事しなきゃならねぇんだよババア!」

「うるさいよ! あんた、もう父ちゃんが死んで何年経つと思うんだい!
 あたしの年金とパート代だけで、あんたを養っていくのも限界なんだよ!
 とっとと結婚して、多少無理矢理でも独立して頂戴!!」

「冗談じゃねぇよ!
 嫌だね、俺はこの家から出る気も、独立する気も、まして結婚なんか絶対に——」

「おやそうかい。あんた好みの美人さんなんだけどねぇ、もったいない」

 母ががばっと開いたアルバムの写真を見て、としあきの表情が変わった。

「——絶対に独立して、お母様にこれ以上ご迷惑のかからないよう、全力で努力することを、
 ここに誓います」

「うむ、それで良し」

 そこからの展開は速かった。
 ろくな服を持っていないとしあきは、急遽衣装レンタル屋に引っ張り出され、数ヶ月切って
おらずろくにシャンプーもしないボサ髪は美容院で小綺麗にカットされた。
 不精髭も剃られ、なんとエステにまで引っ張って行かれ、加えてジムにまで放り込まれ、
可能な限りシェイプアップまでやらされた。
 たった一ヶ月の付け焼刃的な対策だったものの、双葉としあきは、黙ってさえいればそれなり
に見られる外観になった。
 尚、その間放置されていたハゲ裸の仔実装達は、とっくに飢え死にしていた。

「あんた、素はそんなに悪くないんだからさ、いつもキチンとしてればもっと——」

「おやかましいですよお母様」

 最後に残された問題は、実装虐待という特殊性癖の隠し方だった。
 母は、具体的に何をしているのかは知らなかったが、としあきが実装石に非人道的な行為を
行っているらしきことは知っていたし、それが彼の最大の生き甲斐だということも判っていた。
 大変嘆かわしい趣味ではあったが、こればかりは付け焼刃で矯正出来たり、よもや隠し通せる
ものではない。
 母の愛か、それとも対面を保とうとする女親のプライドか。
 二日間もの徹夜作業を経て、母は、一冊の「攻略本」を完成させた。

「いい? お見合い当日は、この通りに話すのよ?
 そうすれば絶対大丈夫だからね!」

「余計な事をしてくださりやがって、本当にありがとうございますクソババア」

「ほら、もう地金が出てる」

 そこから、としあきの涙ぐましい努力が始まった。
 まずは、母お手製の攻略本の内容を丸暗記すること、その後に、発声練習。
 何せ、ここ数年まともに会話したのは母親だけなのだから、練習しておかないと会話すら
成立させられないかもしれないのだ。
 生まれてこの方、ここまでの努力をした記憶がないというほど、としあきは頑張った。
 実装虐待も忘れて、とにかく本気を出した。
 超怠け者で面倒くさがりなとしあきをして、そうしなければと思わせるほど、見合いの相手は
としあきの好みにどストライクだったのだ。


 見合い当日。
 料亭の一室を借り、ついにとしあきにとっての大本番がやって来た。
 着物姿で現れたのは、写真の美しさと可愛らしさを、さらに数倍ブーストアップさせたような
美女……否、一歩間違えれば「美少女」でも通るくらい可愛い娘だった。
 ちょっとロリっぽい外観と、それなのに少し色気を感じさせる仕草が、としあきの股間に
ダイレクトヒット。
 しかし、としあきは必死で緊張感を煽り立て、頑張っていた。

 双方の挨拶も終わり、家族同士の紹介も済み、いよいよ「では、後は若い方々だけで」タイム
がやって来た。
 としあきの、一ヶ月を超える努力が、今こそ功を奏する……かもしれないのだ。

女「あの、ご趣味は……?」

 話題を切り出したのは、意外にも女性の方だった。
 しかし、対応策は万全である。
 死ぬ気で覚えた攻略本のおかげで、すらすらと返答が出てくる。

と「あ、はい。動物が好きなので、生態研究などを色々と」

女「学者さんのようなことをなさっておられるのですか?」

と「そこまで本格的ではありませんが、専門的な事もよくやっています。
  特に、小型生物の観察が多いですね」

女「小型生物ですか、どのようなものですか?」

と「ええまあ、数が多いので色々と……
 まあ、女性が気味悪く思うようなものではないですよ。
 ちなみに、そちらのご趣味は?」

女「子供っぽいかもしれませんが、私はマスコットが好きなんです」

と「そんなことないですよ、女性らしくて素敵だと思います。
 もしかして、ご自分で作られるのですか?」

女「そうですね……作るのとはちょっと違うんですけど。
 出来合いの物に手を加えたりして、自分好みに改良するといいますか」

と「なるほど、改良ですかぁ。それは面白そうですね」

女「結構楽しいんですよ。
 可愛いんですけど、扱いを間違えると凄くみっともない格好になっちゃうので。
 色々な素材のパーツを加えてみたり、不要な部分を切り落としてみたり、試行錯誤して自分
 好みに仕上げるといいますか」

と「なるほど、なんかわかる気がするなぁ」

女「他にも、複数を繋ぎ合わせてみたり、わざと一部だけパーツの数を増やしてみたりするん
 です。
 最初は失敗したかな? と思うんですけど、後から見ると意外と可愛く思えたりすることも
 あって♪」

と「そうですか、機会があったら是非見せて欲しいですね」

女「ええ、お気に召して頂ければいいのですけど(ポッ)」


 その後、見合いは予想外な程に理想的な展開を向かえ、二人は無事結婚までこぎつけることに
 成功した。


 END.




●PART-12「成り代わり」:

 綺麗なピンク色のフリフリ付きの服。
 肩から提げた、可愛らしいポシェット。
 丁寧にカールされた亜麻色の髪と、健康そうな顔。
 そして、視界に入った我々を、あからさまにあざ笑う態度!
 その存在全てが憎く、同時に羨ましい。
 ここ、ふたば公園に棲む野良実装達は、いつも夕方頃に飼い主と共に現れる飼い実装に嫉妬と
羨望の眼差しを送っていた。

「あいつより、絶対にワタシの方が美しく可愛らしいデス! なのに何故?!」

「馬鹿いうなデス。ワタシの方が、品格、優雅さ、全てにおいて最強なんデス。
 とにかく、あのどピンク豚には絶対に負けっこないデス!」

「はぁ、ワタシもあいつのように、素敵なご主人様に連れられて、飼い実装になってみたいもの
 デス」

「——だったら、なればいいのデス」

 いつものように、公園の植え込みの影から飼い実装の様子を見ていた三匹の野良実装は、
いきなり背後から声をかけられ、心臓が飛び出るくらい驚いた。

「な、な、何デス?! 脅かすなデス!!」

 それは、公園の実装石の中でも古株の実装石だった。
 彼女曰く、飼い主の中には結構いい加減に実装を飼う奴がいるという。
 そういう奴は、ペットの事をろくに確かめもしない放任主義で、この公園に来ているあの
 飼い主は、モロにそういうタイプにあてはまるのだそうな。

「それで、ワタシ達にどうしろというデス?」

「あの飼い実装をこっそりボコって、服やポシェットを奪い取って、自分が飼い実装に成り
 代わるんデス」

「そんな事が、本当に出来るんデス?」

「出来るんデス。
 ワタシが実際にその被害に遭って、飼いから野良に堕ちたんデス」

「な、なるほど……説得力あるデス」

 三匹の野良実装は、元・飼い実装の話に聞き入り、だんだんその気になって来た。

 数日後、三匹のうちの一匹は、夕方になるのを待ち、あの飼い実装の散歩ルートに身を隠した。
 飼い主の隙を突いて飼い実装をかっさらい、即座に息の根を止め、服や持ち物を奪うのだ。
 野良実装に襲われたところを逃げて来たといえば、たとえ着衣が乱れていても、アホな飼い主
にはわからない。
 元・飼い実装からのレクチャーを受け、野良実装は、本気でやっちゃるデェの精神に満ち
満ちていた。

 夕方になり、公園内の街灯が点る頃、いつものようにあの飼い主と、バカ面の飼い実装が
やって来た。
 飼い主は、公園内に設置されている自動販売機で、いつも飲み物を買って一息つくが、その際、
飼い実装はリードから解放され、自由に遊び回ることが許される。
 チャンスは、その時しかない!

 息を潜め、飼い主の注意が飼い実装から逸れた瞬間、野良実装は猛ダッシュで飛び出した。
 そのまま飼い実装にタックルし、反対側の植え込みに飛び込んで、後は引き摺っていくのだ。
 毎日過保護に育てられ、闘争など知らないアマちゃん飼い実装など、長い間厳しい経験を
積んだ野良に勝てるわけなどないのだ。
 案の定、飼い実装は、悲鳴を上げる間もなく、簡単にかっさらわれてしまった。

「このやろ! 神妙にしろデス」

「デギャー、襲われるデスー、ご主人様助けてデスー」

 妙に緊張感のない、棒読みのような悲鳴に戸惑いつつ、野良実装は飼い実装の顔面に渾身の
パンチを打ち込もうとした。

 だが、しかし——

 ドサッ!
 バキッ、ボカッ、グシャッ!!
 バキ、バキ、バキ、バキ、バキ、バキッ!!

「ぎ、ギャアァァァァァァ!!」

 なんと、ボコられて悲鳴を上げたのは、野良実装の方だった。

「グッフッフッフ、甘いデス。
 お前の攻撃パターンなど、とっくの昔からお見通しなんデス!」

「な、何ィ?! デス〜」

 飼い実装は、まるで何事もなかったかのように、野良実装の前に立つ。
 その姿勢には一切の隙がなく、強者の風格が満ち溢れている。
 殴られた顔を必死で庇っていた野良実装は、飼い実装の顔を改めて見て、ようやく全ての事態
を把握した。

「そ、そういうことだったデス?!
 ち、畜生! 詐欺デズァァァァ!!」

「全てを知られた以上、お前には生きていてもらうと困るデス。
 ワタシの幸せのために、ここで死ねデス♪」

 ぐわしゃ!

 飼い実装の鋭いパンチが、野良実装の顔面に炸裂した。


 END.




●PART-13「廃墟にて」:

 その廃墟は、新興住宅地の外れの山近くにあった。
 数十年前に何かしらの事情で放棄された戸建て住宅が現存しており、一部の子供達にとっての
遊び場となっていた。
 無論、危ないから近づくなと、子供達の親は厳しく躾けてはいるのだが、ここが実装石の住処で
あるという噂を聞いてしまっては、「はい、そうですか」と素直に従う子など居よう筈がない。

 その日の夕方も、小学校から帰って即やって来たと思しき、三人の男の子達が、実装石を捕まえる
ために、廃墟に侵入していた。

A「うぁ、蜘蛛の巣スゲェ!」

B「埃もすごいよココ。うへぇ、マスクあれば良かったな」

C「足下気をつけないとね、結構もろくなってる所あるから」

 子供達は、薄暗がりに怯えながらも、少しずつ屋内に侵入していく。
 廃墟の内部は、かろうじて差し込む夕陽に照らされているため、今はそれなりに見えはするが、
そう長くは持ちそうにない。
 子供達の一人Aは、せいぜいあと15分くらいで、ここを出なければと考えていた。
 
A「本当に、ここに実装石いるのかなあ?」

B「そりゃいるんじゃね? 結構見たって奴いるみたいだし」

C「実は実装石のユーレイだったりしてな!」

B「うっひゃ、そんなんいるならマジ見てぇ!!」

 楽しそうにはしゃぐBとCには目もくれず、Aは居間だったと思われる部屋を覗き、襖を開け、
隣の台所へと進む。
 途中、腐った畳に足をとられそうになったが、とりあえず怪我なく進むことが出来た。

B「おい、今あそこ、何か動いた?」

A「あれ?」

 Aは、微かな物音を感じ、Bが注目する方向に目を向ける。
 次の瞬間、キッチンシンクの下にある収納の隙間から、身長30センチくらいの仔実装が、ひょっこり
と顔を覗かせた。

A「うぉ、仔実装だ!
 よぉしよしよし、こっちおいで、おいでぇ〜」

B「やったぁ! すげぇ、仔実装にしては結構大きいな」

C「他にもいるんじゃね? その中にさ」

 飴玉で仔実装を釣ったAは、キッチンシンクの収納を開けて覗き込んだ。
 すると、更に小さい仔実装と、親指実装が一匹ずつ隠れていた。
 どうやら、子供達だけで隠れ住んでいるみたいだ。
 Aは、残りの仔達を保護すると、携帯で時間を確認してみた。

A「やべ、そろそろ帰らないと」

B「いや待てよ、きっともっと実装石いるぜ? この調子ならさぁ」

C「そうだよ、もっと奥の部屋も捜そうぜ?」

A「どうするかな……お前達の家族とか、兄弟とか、まだいるのか?」

 テチィィ……?

B「よし決まり! どんどん行こうぜ」

A「そうだなぁ……」

 小首を傾げて顔を覗く仔実装をよそに、Aはもう少し奥へ行ってみることにした。
 BとCも、後に続く。

 陽の光が届かない廊下の奥、良く見えないが、どうやら階段があるようだ。
 その階段は、廊下の大きさに大して妙に幅が狭く、大人の体格だとかなり昇降がきつそうな印象だ。
 しかも、家の奥の壁に沿って左に大きく曲がっている構造のため、少し階段を登らないと先がどう
なっているのか、全くわからない。

A「なんだここ……なんか、すげぇ、ヤバい気がする」

 テェェ……
 テチィ……
 レチ?

 階段に足をかけようとして、戻すA。
 何だか良くわからないが、この階段を登ったら最後、とんでもないことが起きてしまいそうな、
そんな悪い予感がする。
 いわば、本能が「これ以上進むな!」と警告しているような状態だ。
 Aだけでなく、バッグの中の仔実装達も、震えながら鳴き声を上げている。

B「どうしたんだよ? 登っちゃおうよ」

C「そうそう、早くはやく!」

 BとCが、背後でAを煽る。
 しかし、Aは足下と階段を交互に見返すだけで、なかなか先に進もうとしない。

A「ど、どうしよう……やばいよ、絶対ヤバいよここ!」

 テ、テチィ、テチィ
 テェェェ……
 レチ? レチィ

 時計を見ると、もう門限の時刻が近い。
 Aは、それを理由にして、今日の実装石の捜索を打ち切ろうと考えた。
 しかし——

B「おい、何帰ろうとしてんだよ、登れよ」

C「階段に足をかけて、ゆっくり、ゆっくり登ればいいだけさ……」

A「う、うう……」

 帰ろうと踵を返しかけたAの動きが、ふと止まった。
 その横で、BとCが顔を近づけて、Aに囁きかける。

B「ここまで来て帰るなんて、ないだろ……」

C「ホラ、おいでよ。階段……すぐそこだよ?」

 いつしか、BとCはニヤニヤと笑顔を浮かべていた。
 
A「うう、どうしようかな……やっぱり……行くかぁ?」

 考えを改めたのか、Aが再び階段の方へ向き直る。
 次の瞬間、Aの肩から提げたバッグにすっぽり収まった仔実装達が、突然顔を上げ、恐怖の表情を
浮かべた。

 テ……テェェッ?!?!
 テェ、テェ!
 レチレチ、レチレチ!!

 突然暴れだす仔実装達に、Aはハッとした。

A「え? おい、なんだ、どうした?」

 テチィ!! テチィ!!
 テェ、テェ!テェ、テェ!
 レピャアア、レェェン!!

B「こいつら、きっと怖がってるんだよ」

C「まあ、しょうがないなぁ」

B「さぁ、気にしないで、階段上ろうぜぇ」

C「俺達と一緒に、さぁ——」

 Aは、右腕にいきなり冷たい感触を覚えて、反射的に叫び声を上げた。

A「うわぁっ?!」

B「うわ、びっくりした!」

C「なんだよ、脅かすなよ!」

A「……帰る、絶対帰るっ!!」

B「え? マジで?」

C「おーい、待てよ!! 待てってば!」

 Aは、BとCを廃墟に置き去りにしたまま、急いで自宅に駆け戻った。
 バッグの中の仔実装達は、廃墟を出た頃には落ち着きを取り戻していた。
 空はすっかり、夜の帳が降りていた。

 門限を一時間以上も過ぎて自宅に帰ったAは、母親にさんざん叱られた。

母「——で、どうしてもその仔実装達を飼いたいわけ?」

A「うん……やっぱ、ダメ?」

母「そうねぇ、お父さんに相談してから決めようね。
 それより! もうあんな危険なところに、一人で行っちゃダメよ?
 何かあっても、パパやママが助けに行けないじゃない」

 頬を膨らませる母親に、Aはニターと笑って、応える。

A「うんわかった、じゃあ次は、誰か友達誘って行くよ」

母「コラ! そういうことじゃないでしょ!!」

 父親が戻るまで、まだ時間がある。
 Aは、夕食を素早く済ませ、仔実装達と遊ぶ時間を作ることにした。


 END.




●PART-14「実装石飼い方講座」:

男「実装石の飼い方ですが、とにかくしっかりと躾を身に付けさせることが重要です。
 全てはここから始まり、例外はありません」

女「はい、そうですね」

男「実装石は、基本的にとてもわがままな生き物です。
 飼い主が少しでも甘い顔をすると、それに付け込んですぐに自己中心的な態度で立ち振る舞い
 始めます」

女「はい……」

男「だからこそ、実装石には多少きつすぎると思えるくらいの躾が必要なんです。
 時には、腕を折るとか、足を潰すなどという、過激な行為もしなくてはなりません」

女「そ、それはそうですけど」

男「それでも実装石は、回復力が高いので、すぐに傷を治してしまいます。
 馬鹿な個体は、回復すればまた元のわがまま極まりない行動を繰り返します。
 そのためにも、躾の頻度を高めなければなりません」

女「それは、さすがに行き過ぎではないでしょうか?」

男「そんな事はありません。
 実装石は、自我と欲望の塊のような生物なのですよ?
 人間と同じ感覚で触れ合ってはいけません。
 どうしても言う事を聞かない悪質な個体の場合は、髪の毛を全部毟り取るとか、服を奪って目の前で
 燃やすなど、そいつのステイタスになるものを完全に奪い取る必要もあります」

女「ち、ちょっと待ってください!
 それは、いくらなんでもあんまりです!
 だって実装石は、髪と服は失ったら最後、もう——」

男「だからこそいいんですよ、全てを奪うことで主従関係を思い知らせる。
 これが実装飼いの醍醐味なんです」

女「そんな酷い目に遭わせた実装ちゃんを、その後どう飼うというのです?」

男「勿論、そんな目に遭わせた個体は、恥ずかしくて人様の目には晒せません。
 一生涯を、自宅の水槽や専用のケージの中で過ごさせるのです」

女「さ、散歩は? ストレス解消の運動などは?」

男「そんなものは必要ありません。
 こういう状態に堕ちた実装石を“ハゲ裸”と言うのですが、これにはもう、飼い実装としての扱いを
 する必要はありません」

女「で、では、何のために飼うのですか?」

男「そこが肝要です。
 ハゲ裸は、飼い主のストレス発散用にのみ存在します。
 苛立った時にぶん殴るとか、蹴飛ばすとか、カッターや錐で突き刺すなんていうのもいいですね」

女「か、可哀想だという気持ちはないのですか?!」

男「貴方は実装石の専門家ではありませんから、実態がよくわかっておられないだけです。
 実装石に触れてみれば、私の言うことが正義だと、すぐに気付ける筈ですよ?」

女「もし、もしもですよ?
 その実装石が、既に他の人が飼っているペットだったら、どうします?」

男「ん? おかしな事をおっしゃいますね。
 他人のペットであるかどうかと、ハゲ裸の扱いの話に、いったい何の関連が?」

女「わ、わかりました、もう結構です……
 すみません、ここまでにさせてください!」

 バタン!




女「——もしもし。
 あ、はい、鶴橋ジョセフィーヌ・ペット相談所の双葉敏子です。
 はい、はい、ええ……息子さんと、お話させて頂いたのですけど……
 大変申し訳ありませんが、私共では、息子さんへの説得は不可能と判断いたしました。
 ええ、はい、でも……これ以上は、弁護士事務所にご相談された方がいいかと……
 ええ、私共は、損害賠償のやりとりまでは専門外でして——」


 END.




●PART-15「困ったお客様」:

 飼い実装ジョセフィーヌが留守番をしていた時、突然、家の玄関が荒々しく開かれた。

『デェ? 何デス? お客様にしては乱暴デスゥ』

 リビングを抜け出して玄関に向かってみると、そこには全く見知らぬ男達が立っていた。
 ご主人のパパさんの会社の人でも、ママさんのご近所付き合いの人達でも、ましてご主人のお友達
でもないようだ。

「ここか……よし、入るぞ」

 男の一人がそう言うと、他の者達は、そのまま家に上がりこんで来た。
 当然「ごめんください」の一言もない。

『コラァ! 無断でオウチに入るなデス!
 お前達は何者デス?! ちゃんと挨拶をして上がりなさいデスッ!!』

 教育が行き届いている高級飼い実装のジョセフィーヌは、そう叫んで男達の前に立ちはだかった。
 だが、男達はそんな彼女を完全に無視して、どんどん家の中に入っていく。
 しかも、中で勝手にお喋りを始め、あまつさえ勝手に撮影まで始めている。
 
『ええーい! 何たる無礼な!!
 お前達は本当にニンゲンデス?!
 いったいどんな教育を、ママに受けて育って来たンデス——ッ!!』

 男達の後ろで、必死に飛び跳ねるジョセフィーヌだが、誰一人として彼女を構う者はいない。
 やがて、玄関にまた別な男達がやって来た。
 先の男達と同じように、挨拶もなく、勝手にどんどんリビングに入り込んで行く。
 そして、先の者達とお喋りに高じ、呑気に写真撮影を続けている。
 ジョセフィーヌは、家の外どんどん騒がしくなりつつある事に気付き、玄関を飛び出した。

『いったい、何でこんなに人が集まっているデス?
 うちは、ごく普通の平凡な家庭なのにデス?!
 いったい、この不躾なニンゲン達は、何がしたいんデスゥ?!』

 次々に家の中に入り込む男達、運び込まれるおかしな道具、変な服装の者達。
 その様子を敷地外から伺う、ご近所の皆さん。

 彼等が家に入り込んでから、どのくらいの時間が経過しただろうか。
 男達は、青色の大きなビニールシートに何かを包み、家から持ち出そうとした。
 さすがに、それにはジョセフィーヌもキレた。

『おんどりゃあ! 何勝手に持ち出しとるんかいデギャア!
 この泥棒! 盗人野郎! 返せ、置いてけ!
 パパさんやママさん達が大事にしている物を、勝手に持っていくなデギャア!!』

 それでも、青いビニールシートにくるまれたものは、家からどんどん持ち出されていく。
 こうなったら実力行使で! と考えたジョセフィーヌは、男達が持ち出そうとしたビニールシートの
中に潜り込み、運搬の邪魔をしてやろうと考えた。

『ワタシは、ご主人のご家族から、お留守番を言い付かったんデス!
 だから、このオウチを守る使命があるんデス!!』

 鼻をピスピスさせ、ジョセフィーヌは、男達が最後に運び出した小さなビニールシートの中にある
ものが何か、確かめようとした。


 ビニールシートの中には、ジョセフィーヌがいた。
 その表情は、カッと目を見開かれたまま、凍り付いていた——


 END.




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1 Re: Name:匿名石 2015/06/02-09:18:35 No:00001764[申告]
13わからん
2 Re: Name:匿名石 2015/06/03-21:23:56 No:00001765[申告]
よく読み返すとAと友達の会話が成立していないようにも読めるから
廃墟には最初からA1人だけしかいなかったという落ちじゃないかな
考えすぎだろうか?
3 Re: Name:匿名石 2015/06/03-22:15:48 No:00001766[申告]
多分それであってると思う
BとCは悪霊か何かだろうな
4 Re: Name:匿名石 2015/06/04-01:02:56 No:00001767[申告]
どんどん投稿してくれるのはいいけど、書き逃げってのもねえ。意味がわかると云々系の話は調整間違うと、読者がおいてけぼりになって筆者の自己慢になっちゃう。まあ何が言いたいかというと、必要に応じて解説してくださいなってこと。
5 Re: Name:匿名石 2015/06/04-06:47:11 No:00001769[申告]
意味怖のもっとも良い所は
判らなくても妙な雰囲気を醸し出すところだと思うが
答え合わせの爽快感はミステリに任せればいいじゃない
6 Re: Name:匿名石 2015/06/05-12:20:47 No:00001770[申告]
自分の書いた作品に作者自ら補足説明を入れるのは
ナンセンス以外の何物でもない気がする
7 Re: Name:匿名石 2015/06/08-17:37:01 No:00001774[申告]
15がどういう意味なのかよくわからない
どなたか教えて
8 Re: Name:匿名石 2015/06/08-18:11:12 No:00001775[申告]
※7
たぶんこの家の住人はジョセフィーヌ含めてすでに死亡。
文中のジョセフィーヌは自分が死んだことに気付いてない幽霊で
男たちは警察関係者だと思う。
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