「テ〜ステス〜♪」 実装石の子守唄が聞こえる。シリアルが子供を寝かしつけている。 もうすぐ実装石の成体になるのか、鳴き声が変わっている。 蛆だったこいつの子供達も手足が伸び、親指実装に形態を変えていた。 「よく食べてよく寝るんテス。ママみたいな素敵なレディになって幸せになるんテス」 子供相手に調子に乗ってるのが見て取れる。シリアルは自意識過剰で自惚れが強い。 実装石の中では醜悪な禿裸の癖に・・・・・・。 ——だがこいつに興味はない。 そんな事よりもう一匹の仔実装石、焦げパンだ。 「テッテレー」 先日、焦げパンはシリアルに目を赤く染められ妊娠し、苦しみながらようやく出産を終えた。 何匹産んだかは把握できないほど大量の蛆。 宙吊り状態でほとんど産み殺したシリアルとはえらい違いである。 しかし焦げパンは産んだ蛆達に母親らしく愛情を注ぐ行動みせなかった。 身重から立ち直るとよろめきながら動きだす。 そして、食料を貯めたりするときに使っていた空の箱に蛆達を詰め始めた。 手際よく、一匹、一匹、丁寧にそっと箱に詰めていく。 まさかこいつ・・・自分の仔を食料にするつもりか? 「テス—テス—」 俺を呼ぶ声がする。蛆を詰めた箱を差し出す焦げパン。俺は実装リンガルを焦げパンに当てみた。 「御主人様、お願いテス。ワタシにはこの子たちを育てられないテス。どうかこの子たちのことお願いしますテス」 託児といえば託児であるが・・・少し事情が違う。 俺に子供をどうするのか判断を仰いでるのだ。 水槽の中でこれだけの蛆をまともに育てる事は大変である。まず全員育つのは不可能だろう。 環境の限界を理解し、飼い主である俺に全て任せる。焦げパンは利口で従順な個体だった。 ただ餌を喰らい、子を産みまくる糞蟲とは違った。 わかったよ、お前の子はなんとかしてやるよ。 俺は箱の中に詰められた蛆を水槽から取り出した。 焦げパンの頭を撫でる。焦げパンは深々と頭を下げた後、フラフラと歩き、ベッドへ沈み込んだ。 「自分の子供を捨てるなんて信じられないテス!ひどいやつテス!」 シリアルは批難の言葉を焦げパンに浴びせかける。 俺はシリアルに向けて一発、エアガンの弾を撃ちこんでやった。今回はプラスチック弾だ。じっくり味わえ。 さて、焦げパンの子供達をどうするか。 受け取った蛆達をタッパーに移し替え、トートバッグに入れる。 我が家から一駅分ぐらい離れた場所に実装石専門のペットショップがある。 そこでは上質な個体に限りではあるが実装石の買い取りを行っている。そこに買い取ってもらおう。 さっそく身なりを整え、出かける準備をする。 外はすごくいい天気だ。 焦げパンの目には薄らと涙の筋が見える。お前は安心して休むといい。子供達は幸せになるようにしてやる。 トートバッグを手に、俺は実装石専門のペットショップ「にじうら」へ向かった。 ——「にじうら」までの道中、熱烈的な視線を感じたのは家からでて数分後だったろうか。 「デスデスデス〜(いい匂いデスゥ。ウマそうデスゥ。それよこすデスゥ。食べたいデスゥ)」 鼻息荒く、街路樹の木陰からブツブツと実装石の声がする。 野良実装石の群れ。どうやらタッパーに入った蛆が目当てらしい。 他の個体が産んだ蛆はこいつらにとって上等な食い物なんだっけ? 散れ。小石を蹴って野良実装石の顔面にぶつけてやった。 「痛いデスゥ!!絶対に許さんデスゥ!!バカニンゲン!!」 血塗れになった一匹が俺の足に飛びかかってポカポカと殴ってくる。 煩わしい。 野良の実装石なんてゴキブリみたいなもんだ。慈悲なんていらねえか。 俺はフットボールのキックオフのようにおもいっきり実装石を蹴りあげる。 実装石は放物線を描き、ポリバケツの中にカップイン。その中で水気のある生ごみになった。 「デギャアアアア!!!デスデス!!!(虐待派デスゥ!!!逃げるデスゥ!!!)」 残りの実装石は蜘蛛の子を散らすよう逃げ出した。 ——糞蟲の群れを撃退した。 RPGで雑魚を打ち倒したような爽快感があった。 さて「にじうら」への歩みを再開しよう。 スマホの地図アプリに視線を落とし、現在地を確かめる。到着まで予想はあと20分か。 地図の指示だと街路樹が植えてある歩道を沿って歩き、一度右に曲がってそのまま真っすぐ歩けば着くとある。 大雑把だが行く先に特徴のあるような建造物は見当たらない。閑静な住宅街。 ・・・だったはずなんだよな。 アプリの指示通りに曲がった先でまた実装石の群れに遭遇した。 「デスデス(あ、ニンゲンサンデスゥ。こんにちはデス)」 焦げパンの蛆はよほど美味しそうな匂いがするみたいだ。にこやかににじり寄ってくる実装石。 蹴り殺す。爪先を顔面にめり込ませてやった。 「テチィ!!テチィ!!(ひどいテチィ!ママは挨拶しただけテチィ!)」 足にすがり付いてきた野良の仔実装を踏み潰す。俺に触んな。 「テチィ〜テチィ(ニンゲンサン〜、そんなことより遊んでテチィ)」 指で目玉を繰り抜いた。手が汚れてしまったじゃねえか。 次から次と・・・、まるで繁華街、歓楽街のポン引きやキャッチセールのように湧いては絡んでくる。 「デスデス!デス〜(おい!ニンゲン!見るデス!今ならこんな美しいワタシを飼い実装にさせてやるデス)」 足を開いて股を見せつけてくる実装石。てめえなんのつもりだ? 寄ってくんじゃねえ!近寄られただけで鼻が曲がる。 枯れ木の枝を拾い、股座から串刺しにしてやる。 「テチテチ!(ニンゲンサンニンゲンサン!ワタシの妹の蛆ちゃんはお歌が歌えるんテチ)」 実装石から枝を引き抜き、蛆を抱く仔実装に振り下ろした。柔らかいこいつらはサクッと綺麗に真っ二つになる。 さっきからこいつらなんかいってるな、蛆を狙っているわけじゃないのか? 「デス!デスデスゥ(ワタシは良い実装石デス!ただ飼い実装にしてもらいたいだけデスゥ)」 「デスデス!(これだけは知ってもらいたいんデス!)」 ・・・まあ気にしない。スマホの地図アプリに割り込ませて、実装リンガルを起動させるのも面倒だ。 だからなんだって話だ。糞蟲の事などどうでもいい。 「デスウウウウウウウウウウ!!!!!」 絡んでくる実装石どもはすべて始末した。RPGだったらきっとレベルアップしていたことだろう。 そんなこんなで地図アプリが点滅し、現在地が目的地に着いた事を知らせる。 コンビニを改装したような外観、実装石のイラストと「にじうら」と書いた文字の立て看板。 そんなこんなでようやくペットショップ「にじうら」に到着した。 俺は「にじうら」の引き戸に手を伸ばした。

| 1 Re: Name:匿名石 2015/04/23-02:17:23 No:00001716[申告] |
| 何やら飼い主の家の外でも異常事態が発生しているようだな
これは恐ろしいことになりそうだ |