お仕置きの後も焦げパンが作ったバリケードはそのまま、水槽の中は二つに区分けされていた。 左側半分はシリアル、右側は焦げパン。 バリケードを作ることで干渉しないように、してこないように・・・・・・。 家族も増えたし、ある程度こういう事は必要かもしれない。 バリケードに関して俺は何も叱ったりせず、そのまま好きなようにさせていた。 ——そして、そのまま平穏に数日過ぎたある日の事。 水槽の中から怒声と悲鳴らしき喚き声が聞こえる。 焦げパンが箒を武器に激しくシリアルを叩きのめす。血塗れのシリアルが泣き叫ぶ。 前にもみた光景だ。 おい、何があった? 「助けてテチィ!!!アイツがワタシを殴ったんテチュ!」 全身血塗れの大号泣のシリアルが俺に助けを求める。 反論する仕草をみせる焦げパン。 「テチュ!テチュテチュ!」 おい、何があったんだ? 「テチィ!!テチィ!!テチィ!!」 ・・・うざったい。やったやってないと言い争ってるようだ。 仮にこいつらの言葉を翻訳したとしたらすごく面倒臭い口論を延々聞かされていただろう。 煩わしい。 が、しかし今回の騒動、どちらが原因か俺は知る事ができる。 なぜなら水槽に監視用ウェブカメラを設置しておいたからだ。 早速、カメラの動画データを巻き戻しで視聴する。 ここ数日が画面に映し出される。タイムケージが小気味良く減っていく。 そろそろだな。 ほう・・・・・・。 何があったのかすぐわかる。原因はシリアルだ。 俺は焦げパンとシリアルに1日1回、それぞれに5個のコンペイトウを餌としてやる。 だいたいコンペイトウが3個あれば仔実装は満足、蛆は半分で十分。 シリアルのところはシリアルに3個、蛆に2個。 この配分だと焦げパンには2個余分なわけだが利口な焦げパンは余剰分は食べ残して箱に保管し、取り置きしていた。 シリアルはこのコンペイトウを狙い、バリケードを越え、焦げパンのテリトリーを侵し、コンペイトウを盗み食いしたのだ。 重ねて、風呂嫌いで不潔なシリアルが触れた所は汚物がべっとりとついている。 綺麗好きの焦げパンが怒るのも無理なかった。 動画の視聴をやめて二匹に視線を移す。 ビクッと震える焦げパン。 前回のこともあり、またお仕置きされるのではないかと思っていたのか。 反対にシリアルは手で顔を覆い、大泣きしてる素振りを見せながらチラチラと焦げパンをみて笑みを漏らす。 こいつは俺に気に入られ、自分が特別扱いしてもらえる立場だと勘違いしてるみたいだ。 仮に俺が特別扱いしているとして、なぜお前は先に俺にもっと餌がほしいと要求せず、盗みを働く事を選んだんだ? 頭の悪さとクズっぷりに驚いたよ。頭を撫でてやる。お望み通り特別にしたやろう。 「テチュンテチュ♪」 シリアルが媚びた声を出す。 焦げパンの震えが一層増した。 俺はニッコリと焦げパンへ笑みを贈る。 その後、勢い良くシリアルの髪の毛を毟った。 「テチャアアアアアアアアアア!!!!??」 泣こうが喚こうが一向に構わない。俺はシリアルの頭髪を根こそぎ毟り取った。 この糞蟲め。 俺はお前を贔屓してたわけじゃねえよ、勘違いしやがって・・・気持ち悪い。 「ワタシの髪の毛が!!綺麗なワタシの髪の毛が失くなってしまったテチュウッ!!?」 頭を掻きむしるシリアル。お前の毛は地面に落ちてるよ。 抜けた毛を拾い上げ、頭に乗せて何とか植毛を試みるシリアル。 無駄なあがきだった。シリアルは泣き崩れた。 「テチュテチュ!!テチュテチュ!!」 シリアルが生意気に俺に何か抗議してくる。特別意識が強いから禿裸っていう特別なスタイルにしたやったんだよ。バーカ。 「テチュテチュ!!テチュテチュ!!」 まだ何言ってる。いっそ翻訳してみるか。 スマートホンのアプリ実装リンガルをダウンロードし、シリアルに当ててみる。 「なんでワタシがこんな目に遭うんテチ!!デキゴゴコロテチ!!わざとじゃないテチ!!ワタシが悪いわけじゃないんテチ!蛆ちゃんたちは食べ盛りなんだテチ!餌があれっぽっちじゃ足りなかったんテチ!!」 ほう、子供が食べる分が足りなくて隣に盗みに行ったというのか? 「アイツ一人の癖にたくさんもらってズルいテチ!!余ってるならワタシたちが食べたほうがいいテチ!!」 これは参ったな。 出来心で子供のために盗みに行ったと言ったな?でも盗んだコンペイトウは子供にやらないで自分だけ食べてたじゃないか。 たくさんもらってズルい?余ってるからワタシたちが食べた方がいい?開き直りか、この手癖の悪い下衆め。 ギッと眼力鋭くシリアルを睨む。ビクッとシリアルは縮み上がる。もうひとつお仕置きしてやるか。 俺は水槽の左端、シリアルのテリトリー眠りこけいる子供の蛆を一匹つまみ上げ、空のペットボトル(2リットル)の中に入れた。 「何をするテチュ!?ワタシの蛆ちゃんをどうするテチュ!?」 連帯責任だ。口減らしもできてお前には丁度良かろう。 泣きながらシリアルは水槽を叩いて抗議する。なるほど、意地汚いが子供に対する愛情は本物のようだ。 まあだからといってこの蛆はおまえのところには返さない。お前の代わりに俺がこの中で飼育してやるよ。 蛆の入ったペッドボトルを軽く振り回す。シリアルの蛆は中で嘔吐し、失神した。 「テーテーテチュゥゥゥ・・・・・・」 嘆き悲しむシリアル。 一方、焦げパンは一部始終を見ていながらまだ震えていた。焦げパンの場合、警戒心が強すぎた。 俺は焦げパンの頬をそっと撫で回す。安心していいぞ。 「テェ?」 利口な焦げパンは状況を察し、緊張を解いた。 ・・・といってもその後の行動如何で俺はまた焦げパンをお仕置きするつもりではいた。 俺は焦げパンのじっと様子を覗う。 フ〜っと一息つくと焦げパンは箒でシリアルの髪の毛を掃き集める。この騒動で汚れた自分のテリトリーを掃除するだけだった。 悪態をついたり、シリアルに罵声を浴びせたりもしなかった。 いい子だな、あとでかわいい洋服を用意してやろう。 俺は改めてもう一度焦げパンの頬を撫で回す。 焦げパンは少し戸惑い、照れくさそうな顔をした。 「テェェェェェ・・・・・・」 それをみたシリアルは悔し涙を流す。 血塗れ泣きっ面の禿裸。 実に無様。 「テチュテチュテチュ!!」 無様なシリアルは焦げパンに詰め寄る。因縁をつけようというのか。まるでチンピラだな。 だが焦げパンはこいつをまともに取り合わなかった。 そっぽを向き、背中からは関わりたくないという意思が感じられた。掃除の続きとばかりに汚れたバリケードを布巾で拭き取る。 「テチュテチュ!!」 威嚇行動をとって挑発するシリアル。 いい加減煩わしくなったのか焦げパンは箒を手に取り身構える。 またシリアルが返り討ちにされるのかと思ったが状況は意外だった。 シリアルは素早く動き、間合いを詰め、血塗れの手を焦げパンの左目に擦りつける。目潰しだ。 「テギャア!!」 焦げパンの左目が真っ赤に染まる。 「テエ?テテエエエエエエ!!?」 焦げパンの腹が急激に膨らみ始める。 ——受胎。 シリアルに左目を赤く塗り潰され、焦げパンは妊娠した。 「テチュ〜ンテチュ〜ン♪」 シリアルは自分の尻を叩いて罵声の歌を歌う。 その顔は勝ち誇ったかのように焦げパンを見下し、笑っていた・・・・・・。
