「こんにちは赤ちゃん」 ——ベシャア ここ数日、なにか吐瀉物が床に張り付く水っぽい音がするなあと思っていた。 雨漏りにしては少し質量のある音だ。 音は窓際からする。窓際にはてるてる坊主を務める仔実装シリアルがいる。 ここ数日、焦げパンにかかりきりだったので存在を忘れていた。焦げパンが楽し過ぎた。 丁度、いろいろと一段落したところでシリアルの事を思い出す。 晴れたら解放してやると約束してたかな、晴れても解放しなかったわ、悪い悪い。 窓際からする音の主はこいつだった。 シリアルの股からぼたぼたと緑色の物体が放り出し続ける。 これは蛆実装、実装石の赤ちゃん。 どうやらシリアルは妊娠したらしい。花粉か何かでも拾ったんだろうか? けっこうな期間、宙吊りの状態で放置していたはずなのだが餓死するどころか腹ぼて。 ・・・つくづく奇怪な生き物だと思った。 シリアルは糞を垂れ流すように我が子を産む。読んで字のごとく産み落とし続ける。 ——ベシャア 産み落とされた蛆は真下の床で水風船のように破裂し、積み重なる。 深緑と赤色が入り混じえい混濁した汚物の山だ 「テエエエエエエン!テエエエエエエン!」 実装石は蟲のように多産、産まれすぐに散りゆく我が子に嘆き悲しむが出産は終わらない。 暴れれば暴れるほど蛆は放り出し床で山になる。まあ、暴れなくても下痢のように蛆は放り出していくのだが・・・・・・。 ほんのちょっぴりだがシリアルを哀れに思った。 それにいつまでも床を汚されても困るし、何よりつまらない。 俺はシリアルを宙吊りから解放し、柔らかいタオルの上にそっと置いた。 さあさっさと産んでしまえ、終わらせろ。 安息のシリアルはすこやかに5匹ほどの蛆を産んだ。 「テチュテチュテチュ・・・・・・」 見てくださいニンゲンさん、ワタシの赤ちゃんテチュ。・・・ということだろうか? 思いがけず出産に立ち会った俺はシリアルの頭を撫でた。 シリアルはニッコリと微笑んだ。 不快さも感じられない微笑だった。 出産を経験してシリアルは大人になったのだろうか。さっきまで際限無く子供を産み潰していた癖に。 安堵感からか生まれた蛆達共々柔らかい眠りに落ちるシリアル。 しかしながら寄り添うその姿はなかなか愛らしい。 よく頑張ったな、シリアル。 まあ産後の肥立ちには栄養のあるものを食べさせてやるか。 初めて実装石のために何か凝った手料理を振る舞う気になった。 ともかくおめでとう、シリアル。 何を食べさせてやろうか、どうやって甚振ってやろうか。 その前にやることがあるな。 俺は寝ているシリアル親子を乗せたタオルをそっと水槽の中に入れた。 焦げパンの反応が楽しみだ。
