近所の公園が実装石が増えすぎて慢性的な飢餓状態に陥った。 そういう時にこそ、俺の狙い目の個体が現れる。 俺は休日を利用して実装石をスカウトしに行った。 賢く、愛情深い個体を手に入れるために。 「選択と決断」 色々あったが実装リンガルを片手に公園を隅々まで調べた。 そうして声をかけていき、良さそうな実装石を連れて来たわけだ。 ……良い仕事は地道な作業の繰り返しと言う。 そんな地道な作業は語っても面白くないのでばっさりカットさせていただく。 自宅。 目の前の水槽には成体実装石が一体、仔実装が一体。 何度か確認した結果、親子のようだった。 二人でお互いを庇いあうように抱き合いながらこちらを不安げに見ている。 俺はリンガルを起動させた。 「さて、君たちは食料が手に入らなくて限界だから俺に保護を求めた。ここまではOK?」 「デスゥ……このままじゃ餓えて死ぬか、同族を食う実装に襲われてしまうデス…」 「おなかすいたテチ……」 飼わせてやるから豪華な飯をよこせとか、奴隷にしてやるバカ人間と言った類の発言はしない。 なるほど、身の程を弁えている。 質問への受け答えもしっかりしているし、これから楽しくなりそうだ。 「俺のことについては明日話すよ、とりあえず今日は体を洗って綺麗にして、それからご飯にしよう」 「デデ!?」 「キレイキレイできるテチ?」 俺は穏やかに笑って見せる。 「そうそう、うちが臭くなったら大変だからね。野良にしては君たち綺麗なほうだけどさ」 「デスゥ……お願いしますデス」 それから俺は水槽を風呂に持って行き、実装服を綺麗に洗濯した後に親子の体を柔らかい歯ブラシで洗った。 「温かいデス、気持ち良いデス」 「テッチャー! 人間さんザバザバを直接はやめテチ!」 「ああ、ごめんごめん。シャワーをかけたら怖いよね、君たちのサイズだと」 一時間ほど洗ったところで彼女たちは相当お腹がすいたようだ。 実装フードを与える。 「おいしいテチ! おいしいテチ!!」 「こ、こらデス。がっついたらダメデス、ゆっくり落ち着いて食べるデスゥ……」 「ははは、ご飯は逃げないよ」 それでも今まで相当、公園での食糧争奪戦で疲弊していたのか。 親子共々、たくさんの実装フードを食べた。 それからは布を何枚か与え、二人で水槽の中で眠らせた。 俺? 俺はまだ寝ないよ? 何せ、ちょっとした作業があるからね。 俺はちょっとだけ夜更かしして二つのプラスチック容器を丁寧に洗った。 次の日。 俺が仕事から帰ってくるとつけっぱなしのテレビを見ていた親実装は頭を下げた。 仔実装も与えたスーパーボールを抱えたまま手を振ってくる。 「人間さん、お帰りなさいデスー」 「おかえりテチー!」 「ごめんね、帰りが遅くなって。それじゃ今日は色々話すことがあるんだ」 「デスー?」 話すこと、と聞いて小首を傾げる親実装。 「あ、人間さんの話を聞かせてくれるっていうことデスー」 記憶力もいいなんて、これは相当の当たりだったな。 俺は笑顔で実装石たちに言った。 いつものように、穏やかに。ゆっくりと。 「俺は虐待派だ」 「デ………」 「テチ?」 言葉の意味を理解した瞬間、青褪める親実装。 意味を理解しきれず、もしくは冗談かと思ったのか普通の表情の仔実装。 「デェェェェェェェェェェ!?」 親実装は仔実装を本能的に抱える。 「じょ、冗談デス? 本気デスゥ?」 「本気本気、君たちをいじめるために公園からさらってきたんだよ」 「デ、デデェ!?」 「ママァ………」 親実装は仔実装を抱えたまま、無駄だとわかりながらも威嚇を始める。 「ワタシたちを騙したデスー!! デッジャアアアアアアアアアアアァァ!!!」 「ママ……!」 その表情。今まで見た実装の中でも複雑だった。 親実装の、自分の無力さを知りながら、子供のために威嚇をする健気さ。 仔実装の、涙ながらに昨日までの温もりと、親の庇護に縋る儚さ。 最高だ。 この表情を見るために昨日は良い目を見させてやったと言っても過言ではない。 笑いが隠し切れない。だが良い加減に黙ってもらおう。 「黙れ、これ以上騒ぐと殺す。子供から殺す」 「デッ!?」 「テチャー!?」 静かになってくれた。 やはり良い子たちだなぁ、この実装親子は。 肩を震わせて、人間に自分と子供の命を預けた選択の浅はかさを嘆く親。 目の前に直面した死に、その場にへたり込む仔。 「さて、クイズでーす!」 俺は場違いに明るい声を出す。 「デ………」 「テチ?」 デデドン、と効果音を口で言いながら、二人の入っている水槽の中に 比較的小さい虫かごサイズのプラスチック容器を二つ入れた。 容器には一面だけ実装石が出入りできるサイズの穴が開いている。 「Aの箱とBの箱、片方は虐待で片方は愛護の札が入っています」 プラスチック容器の裏側、実装石たちにとって壁に見える位置に赤くAと書かれた紙と青でBと書かれた紙が見える。 「君たちが一匹ずつ箱に入って今夜のメニューを決めてもらいまーす」 「デェェ………」 親実装が不安げに仔実装を強く抱きしめる。 だが言っていることが理解できないという色は表情に見て取れない。 ある程度賢い実装でないとこの仕組みを理解してくれない。 つまり楽しみがないというものだ。 「同じ箱にこの子と一緒に入れないデスー……?」 「それはダメだ、どっちかが虐待を受けてどっちかが可愛がられる仕組みになってる」 「テッチィー………」 仔実装も事態の残酷さを理解したのか、項垂れている。 「二人とも決めなかった場合には罰ゲームがあります。死ぬ。親子揃って死ぬ」 「デェ!?」 「無惨に死ぬ、残酷に死ぬ、哀れに死ぬ、苦しんで死ぬ」 「テチャアアアァァ………」 ここまで脅されて糞便を漏らさないのはさすがだ。 この親子、普通の家庭に拾われていれば案外、幸せになれる素養があったのではないだろうか。 俺は感心しながら水槽の淵をトントンと叩いた。 「さて、今夜はAとB! どっちを選ぶ?」 二人はしばらく抱き合ったまま、小声でお互いを慰めあっていた。 だが割と高機能の実装リンガルを使っているので全部丸聞こえであった。 安物は集音性が悪く、彼女たちの感情の機微を表現してくれない。 こだわりというものは、趣味をもっと豊かにするのだ。 「デー……ワタシはAデス」 「B、テチ」 親子は涙ながらに別れて二つの容器に入っていった。 俺はニヤリと笑ってプラスチック容器に入った親子が出れないように木製の蓋をした。 そして透明なビニールの中にあるAの札とBの札を引き抜く。 親が入った容器には、愛護。 仔が入った容器には、虐待。 そう書いてある紙が現れたのだった。 「テッチャー!!」 「デデェ!?」 絶望に満ちた表情で壁を叩く仔実装。 親実装は涙ながらに仔実装と自分を隔てる二つの壁の間に行く。 「代わってくださいデスゥ!! この子はワタシの希望なのデスー!!」 親実装が叫びながら自分を虐待してくれという趣旨の発言をした。 「他の子はみんな死んだデス! 弱って死んだデス、カラスに襲われて死んだデス、同族に食われて死んだデスゥ!!」 仔実装は歯の根も噛み合わず震えているだけだ。 「その子だけは助けてくださいデスゥ!! ワタシを代わりに虐待してくださいデスゥゥゥゥ!!!」 その発言を吟味するフリをし、難しい表情をしながら親の水槽に近づく。 「ダメだ」 「デェス!?」 「テッチャー!!」 新品のハエ叩きをぺちぺちと掌で弄びながら笑う。 「初日は軽く、こいつでしばくとするか」 「テッチャー!!」 「デェェェェェ……」 水槽から取り出された仔実装はイゴイゴと泣きながら抵抗するが、 食用やスポーツ用に鍛えている仔実装でもあるまいし捕まえるのは何も難しくない。 「そーら」 俺は二人が今日一日を楽しく過ごした水槽の中で、仔実装に暴力を振るう。 ハエ叩きで何度も何度も叩く。 「テチャア!! テッチィ!! 痛いテチー!! ママ!! ママァー!!」 母親に助けを求めながら必死に頭を庇う仔実装。 ブリブリとクソを漏らし、昨日綺麗にしたばかりの服を汚していく。 「デッズゥゥゥゥゥ!! やめるデス、やめてデーーース!!!」 まるで自分が殴られているかのように騒ぎながら親実装は狭く透明な容器の中から虐待の一部始終を見ていた。 「テッチィー!! テチャー!! もう嫌テチィー!!」 殴られているうちに体のあちこちが切れ、腫れ上がる。 執拗な暴力に抵抗する力も失った仔実装はグッタリと仰向けに倒れこんだ。 「さて」 「デデェ!?」 涙を流しながら可愛がってきた我が子が虐待される様子を見ていた親実装に視線を向ける。 恐怖と怒りに満ちた表情が親の顔に張り付いていた。 「お前には暴れない限り、優しくする」 「デェ………」 「お前が暴れたら仔実装をもっと叩く」 そう言い含めておくと、すっかり大人しくなった親実装を手に持ってテーブルへ行く。 「本日のご褒美は照り焼きピザだ」 「デ!」 キッチンから持って来た、レンジで温めたばかりのピザ。 その強烈な肉の香りに親子共々目が離せない。 「火傷しないように落ち着いて食べるんだぞ」 俺も手を洗い、自分用のピザを手にビールを開封する。 「テッチィー………」 殴られてボロボロの仔実装が水槽の壁に張り付いて親実装を見ている。 「デェェェ……人間さん、子供にこの食べ物をあげたいデスゥ……」 自分も食いたいだろうに。 そんなに子供が大事かね。 「ダメだ、子実装は虐待の日だから飯抜きだ」 「テチャ………」 仔実装の目に涙が滲む。惨めで、ひもじくて、痛くて、苦しいだろう。 「持ち帰ったりしてもダメだ、この食べ物を隠して子供に食べさせようとしてもすぐバレる」 「デ、デェ」 「ルール違反は親子揃って虐待だからな、早く食べろ」 子供とピザの間を何度も何度も視線を往復させる親実装。 その時、仔実装がか細い声で言った。 「ママ……ワタシの分まで食べて欲しいテチ」 「デスー………」 「人間さんの言っていることに多分ウソはないテチ、できるだけ体力を温存するテチ」 「……ごめんなさいデスゥ」 仔実装に謝りながら、悲しげに……今までにないご馳走を頬張る親実装だった。 親子・愛の劇場を見ながら先にピザを食べ終わった俺はビールを一気に飲み干した。 まだまだ親子で遊ぶのは始まったばかりだ。 次の日。俺が帰ってくると親子は震え上がり、返り血の点々と付着した水槽の端に寄ってしまう。 オイオイ、親実装にはまだ酷いことしてないのにこのリアクションかよ。 ま、親子の愛情は本物みたいで何よりだ。 「ところで暇だったろ、テレビ見てた?」 「は、はいデスゥ……」 「それ、実は録画でさー。昨日からクイズ番組しか流れないだろ? 俺の趣旨も理解しやすいかと思って」 「テェェ……」 殴られた傷はほとんど治ってきたものの、空腹に身を縮めてる仔実装。 「さて、今日の選択と決断の時間でーす!」 「デー………」 俺は昨日と同じようにAの容器とBの容器をセットする。 二人はまるで、今まで話し合ってそう決めていたかのように向かい合う。 「ママがBの箱に入るデス。ママが虐待を受けて、お前はお腹一杯ご飯を食べるデス」 「ママァ………」 「さぁ、人間の気が変わらないうちに早くAの箱に入るデース!」 「ママー!!」 決死の覚悟でBの箱に入る親実装。 肩を落として泣きながらAの箱に入る仔実装。 まるで殉教者のように晴れやかな表情で親実装は裁定を待った。 「もうさん付けで呼んでくれないのかよ。まぁいい、さて!」 Aの箱とBの箱の裏にあるビニールの袋にそれぞれ手を掛ける。 「デデドン!」 口で効果音を言いながらAと書かれた紙とBと書かれた紙を引き抜く。 「デ………!!」 Aの箱の壁に現れる、虐待の文字。 「テッチャアアアアアァァァァ!!?」 「デェェェェ!? どうしてデスゥ!」 青褪める親子実装を前にコホンと咳払いをした。 「実はその日の気分でどっちの箱が虐待かを決めるんだ」 「デズァ!?」 「今日も仔実装ちゃんは虐待の上、飯抜き!」 「テヒィ!!」 抵抗する気力も奪われたのか、その場に膝をつく仔実装。 自分の浅はかさを呪いながらぺふぺふと自分の頭を叩く親実装。 「今日の虐待は切断だ」 そう言いながら大人しい仔実装をAの箱から追い出す。 「テチャー!! テッヂィィィィィィィィィィィ!!!」 幼いながらも必死に威嚇する仔実装。 だがその威勢も蛍光灯の光を反射するカッターナイフの刃を見ると消えうせてしまう。 「テヂャアー!!! ママー!! 助けテチ!! ママァー!!」 「デ、デスァー!!」 お互いを呼び合う親子実装。 仔実装を押さえつけると凄まじい悲鳴が上がる。 「テッヂャァァァァ!!!」 「うるせぇよ」 スパッと左足の膝から下を切り落とす。 「テチャアアアアアアアアアアアァァァァ!!! 痛゛いテチィー!!!」 Bの箱の中で娘が切り裂かれていく様を見ているしかない親実装。 「どうせ再生するからいいだろ?」 そう投げやりに伝えると右腕にカッターを当て、ノコギリでも使うかのように乱暴に刃を前後させる。 「テギィィィィィィィィィィ!!!」 激痛に泡を吹く仔実装。 「ま、これぐらいかぁ。罰ゲームお疲れ様でしたー」 「テ、チィィ…………」 切り取った腕と足をゴミ箱へシュート! と、その前に血の海の中に倒れている仔実装に切り取った左足から靴を取って放り投げてやる。 俺のスタイルの問題なのだが、俺は虐待する実装から髪や服を安易に奪ったりはしない。 それはいつかこの家から脱出できればまた公園で生活できる、という逃げ道を残してやるためだ。 その安心感は生への執着を強くするし、ルールを破れば禿裸にすることを伝えれば大人しくなる。 狂おしいほどの外へ出たいという渇望、そのギリギリの感情を見るのが俺の目的でもある。 「さて、ご褒美タイムだ」 「クソ人間デスゥ……!!」 とうとう親実装からの俺の評価がクソ人間までランクが下がった! 俺、ショーック!! 「そう言うなよ、今日一日子育てお疲れ様でーす」 「デデ……!!」 優しく抱き上げてテーブルにつかせると、実装用の餌皿に炊き込みご飯を盛った。 その匂いに反応して片手片足を切り取られた仔実装が身じろぎをする。 「テェェェェン、テェェェェェェェン」 空腹と苦痛と惨めさに泣き始める仔実装。 感情だけで人が死ぬのであれば致死量の怒りを持ってこちらを睨みつける親実装。 「早く食え」 「デ、デスゥ……」 「お前が飯を多めに食ったら乳が出るかもなー、そうしたら仔実装に栄養が行き渡るんだけどなー」 「本当デス!?」 「さてな。いいから飯を食え、おかわりも可」 そうしてガツガツと飯を食う親実装を尻目に明日の仕事の準備を済ませた。 その日は二日連続正解のご褒美と称して親実装を風呂に入れてやり、服を洗って水槽に戻した。 「大丈夫デスゥ!?」 「ママァ………」 あーあ、洗ってやったばっかりなのに血の海に入っていったよ。ばっちぃなオイ。 そうして自分が汚れるのも構わず親実装は仔実装を抱え上げた。 「ママ、良い匂いテチュ………」 「大丈夫デス、ママが守ってやるデスゥ」 そうして親実装は服をめくって仔実装に乳を口に含ませた。 空腹の余りちゅぱちゅぱと口を動かすが、当然乳離れも済んだ時期の仔実装がいる母親に母乳など出るわけない。 だが、二人は泣きながら。 かつて公園でそうしていた頃を思い出すかのように。 ……いつまでも、そうしていた。 また次の日。 俺が帰ってくると諦観の色の見える表情で親実装が見上げてくる。 仔実装は切り取られた右腕と左足の傷口こそ塞がっているものの、栄養不足と虐待のショックで死ぬ寸前だ。 虚ろな瞳で蚊の鳴くような声を上げる。 ワタシが死んでもママだけは助けて、と。 自分が死に瀕しているというのになんて親子愛! 俺は軽く感動しながら親子の水槽にプラスチックの容器を二つ入れた。 「さぁ、仔実装をどっちかの箱に入れて自分は別の容器に入るんだ」 「……呪われろ、デェス」 「何を言うんだ、仔実装が愛護の箱に入れば俺は手厚く看病してやる。栄養もやる。仔実装は助かるんだ」 口の端を持ち上げるような笑みと共に二つの箱を交互に指差した。 「さて、今夜はAとB! どっちを選ぶ?」 「デェェェェ……」 親実装は半ば以上諦めながらも仔実装をBの箱に入れ、自分はAの箱に入った。 仔実装は体を痙攣しながら母親に別れを告げた。 「さて! 今日はどっちかな! デデドン!」 俺がビニール袋から紙を引き抜くと、Aの箱には虐待の二文字がはっきりと見えた。 「デデ!? 娘は助かるデスゥ?」 「ああ! すぐに処置するよ、ご飯も食べさせる!」 「やったデスゥー!!」 喜色満面と言った様子で喜ぶ親実装。 しかし助けると決まった以上、そうまごついてはいられない。 今日は仔実装はじめての愛護の日なのだから。 「大丈夫か、ほら栄養ドリンクだ」 100円ショップで買ってきたものだが、糖分は実装石の体に抜群に効く。 溺れないようにゆっくりと甘露を含ませ、嚥下させる。 すると手足が徐々に生え揃い、血色が良くなってきた。 「ほら、靴を履かせてやる」 「テチィー……おなかすいたテッチュン」 「飯か、わかった」 仔実装をテーブルにつかせると、実装ショップで買ってきた仔実装用お子様ランチを開封した。 プラスチックのトレーのままだが、これはこれで可愛いのでよし。 「ごはんテチィ!!」 頭から飯に突っ込む勢いでがっつく仔実装。 それを見て幸せそうに頷く親実装。 「嬉しそうだな……だがお前は虐待だぞ」 「デヒィ!?」 「まずは服を脱げ、お前は火あぶりの刑だ……服を燃やされたくはないだろ?」 「デギィ……!!」 慌てて服を脱ぐ親実装。 ここ二日の豪勢な晩飯のおかげでここに来た当初は痩せていた腹にも少し肉がついている。 「まぁ髪を失いたくないだろうから足から腹くらいにしといてやらぁ」 ユーティリティライターの先端を足元に当てつつカチカチと着火を繰り返す。 「あつ、熱、やめるデス! デギャア!! デギャー!! やめろクソ人間デズァァァァァァ!!!」 「クソ人間で思いついた、お前がクソを漏らしたらクソを食わせる」 「デギィィィィッ!?」 必死に糞を漏らさないように我慢していた親実装だったが、 下腹をライターの火で炙られるとブリブリと盛大に漏らした。 「デッギャアアアアアアアアアアアス!!!」 これから起こること、それは残酷だ。 だが決して生きることを諦めてはいけないよ。 強く生きてほしい。そう願いながら俺は親実装に無理矢理クソを食わせた。 今まで散々、美味いものを食ってきた分……糞食は耐え難いものがあったろう。 もちろんそれも狙って愛護の時には美味いものを食わせてある。 親実装は俺から解放されると何度も何度も嘔吐し、長い時間をかけて食わされた糞を吐き出した。 そしてクソを手に取るとこちらに向けて投 「おい、クソを俺に投げたら即座に殺すからな」 「デジャア!?」 「それも親子揃って」 手に取ったクソの投げ場所を失った親実装は力なく肩を落とし、めそめそと泣き始めたのだった。 仔実装? デザートの小型プリンが物足りないようだったから金平糖を与えておきました。 その日の夜、トイレに起きるついでに親子実装が起きているようなので影で実装リンガルを起動させた。 「ごめんなさいデスゥ……ワタシが虐待派の人間の言葉に乗ったせいデスー…」 「ママは悪くないテチ。今は二人で助け合っていつかここから逃げ出すテチュー」 「…可愛い我が子デス。長女も、三女も、四女も…みんな死んでしまった今、お前だけがワタシの全てデス」 「ワタシもママ大好きテチ」 「デスー……明日も辛い選択があるデス、今日はもう休むデス………」 まだ親子の愛情は残っているようだな。 それもいつまで持つかな? 俺もトイレを済ませてとっとと眠ることにした。 「ウウッ……牛丼美味しいデスゥ…」 「痛いテチィ……おててとあんよが痛いテチィ…」 「デッギャァァァス!! ライターやめろデズゥゥゥゥゥ!!」 「ママー!!!」 「頑張るデェス! 諦めたら食われてしまうデース!!」 「仔実装カズラ嫌テッチィ!! 死んじゃうテチャー!!」 「お腹すいたデスゥー……」 「ママ……ごめんテチ…」 それからしばらくして。 俺が帰ってくると親子実装の瞳に暗い炎が宿るかのようだった。 お互い無言で、どちらの箱かにノロノロと入っていくのが今までの常だったが。 今日は少し違う。 Aの箱に二人で入ろうとして争い始めた。 「今日はワタシがAデス!!」 「ワタシがAって決めてたテチー!! ママずるいテチ、ずるいテチー!!」 大分、精神面で追い詰められているようだな。 それもそのはず、愛護も虐待も死なない程度にエスカレートさせてきた。 俺は偽石は抜かない。だがその心は絡め取らせてもらう。 ええと……確か、虐待の記録はっと… 今まで仔、仔、親、仔、親、親、仔、親、仔、仔の順番で虐待されてきたようだ。 その過程で情愛も磨り減ってきたようだな。 何せ、自分が苦しんでいる横で肉親がご馳走や風呂や娯楽をもらうのだ。 お互いにそろそろ憎悪の感情を抱いても無理はない。 そもそもAだろうがBだろうが正解がどっちかなんてわからないのに何で争うのかねぇ? 「デジャアアアアアァァァァァァ!!!」 「マ、ママ………?」 本気の威嚇をして仔実装を追い払い、Aの箱を占領する親実装。 すぐに体裁を取り繕うように、 「コ、コホン……今日のところはママにこの箱を譲るデスー」 「…………ママ…」 なんて苦しい言い訳だろう。 それに最近は反抗もしなくなってきたし、潮時かもな…… そう思いながら俺はAとBの紙を引き抜いた。 虐待は、A。 親実装は白目を剥いて膝をついた。 仔実装を裏切ってまで選択した箱でこれじゃねぇ。 その日から数えて、三連続で親実装は虐待を引いた。 切り刻まれ、炙られ、叩かれ。 一方で仔実装はピンクの実装服を与えられ、パックのサビ抜き寿司を食べ、髪を櫛で梳いてもらった。 親実装は苦しみながら水槽に寝転がった。 「何故デスー……何故ワタシが選ぶ箱は愛護じゃないのデスゥー………」 それを見て、綺麗な服を着た仔実装は思わずチププッと笑った。 「何が……何がおかしいデェェェェェェス!!!」 「テェ!?」 水槽の中で追いかけっこが始まる。 「殺してやるデース!! お前は親を笑う糞蟲デス!! 間引きデスァ!!!」 「チィィィィィィ!!」 必死に逃げる仔実装。 俺は親実装にデコピンをした。 「デギィ!!」 そのまま吹き飛んで壁際まで転がる親実装。 「今日は俺、仔実装の味方だから。あと俺がいつお前に子供殺していいって言った?」 「やったテチ、ママは哀れテチュー」 「デェェェェェェ……」 栄養が行き届かない親実装にそれ以上の行動を起こす体力はない。 「いいかい、仔実装ちゃん。明日、四回連続になる愛護を引いたら特別なプレゼントをあげるよ」 「特別なごほうびテチ!?」 「んで、親実装ちゃん。明日に四回連続になる虐待を引いたらお前は死ぬ」 「デヒィッ!!」 「それじゃー明日をお楽しみにー」 この言葉で二人の隔絶は決定的なものとなる。 …仔実装は今まで俺にされた虐待も忘れて期待に胸を膨らませている。 親実装は空腹と苦痛と恐怖に眠れない夜を過ごすだろう。 さて、明日はどうなるかな。 そして運命の日。 俺が二人の前に二つの容器を置くと、親実装はBの箱に駆け込んだ。 「ここデース!! これがワタシの決断デスー!!」 意地でもここは譲らないとばかりに歯を剥き出しにして唸る親実装。 どこにそんな体力が残ってたんだか。 一方、仔実装はそんな母親を嘲笑う。 「チププ、ワタシは残ったほうでいいテチ」 「本当にいいのか? 特別なプレゼントがかかってるんだぞ?」 「いいテチ」 ピンクの服を着た仔実装は真上に向けて右手を上げる。 「神様は可愛いワタシに愛護の札を引かせるに決まっているテチ。そういう運命テチ」 「……この糞蟲、後悔するがいいデース!!」 悠然とAの容器に入る仔実装。 それは本当に神に愛された子のようだった。 「それじゃー紙を引き抜くぞー、いいのか? 本当にいいのかー?」 二人を煽ると今にも心臓が口から飛び出そうなほど緊張している親実装と、 目を瞑って自然体で結果を待つ仔実装。 「変更はないようなのでいくぞー。それ!」 Aの紙とBの紙を引き抜くと…………… 「デッギャアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァス!!!」 憤懣やる方ないという様子でBの容器で暴れ出す親実装。 目を開いて後ろを振り向くと、自分の容器に『愛護』の二文字があることを確認する仔実装。 「やったテチ…………」 「おめでとう、仔実装ちゃん」 「ありがとうテチ!」 「それじゃ今日の愛護デーの前に君には選択を、そして決断をしてもらおう」 「テチュ?」 いつもの水槽に仔実装を優しく降ろす。 そして俺は二つの大きな金平糖を取り出した。 「右手の金平糖はただの金平糖、左手の金平糖はマラ実装の精液が微量だが含まれてる」 「テチー……」 両手を仔実装に向けて差し出す。 「君は母親になる権利を得たんだ。この栄養状態ならあと2、3日で声変わり…成体実装になれる」 「ワタシが母親テチ……?」 「どうする? 母親になるか、一人でいるか」 既に親実装は勘定に入れていない。 当然だ、死ぬ予定のヤツだもの。 「ワタシは……」 発狂寸前でリンガルですら拾えない言葉を壊れたラジオのように繰り返すBの容器の親実装。 それをまるで存在していないかのように無視して、仔実装は決断した。 「ワタシは母親になるテチ」 左手の金平糖を手に取り、それを食べた。 「いいんだな?」 「アマアマテチ……それがワタシの選択テチ」 と、その時。 親実装がBの容器に蓋をしていた木片を叩き割り、鬼の形相で仔実装に襲い掛かった。 マズい!! そう思ったが————間に合わない!! 次の瞬間、仔実装は親実装を殴り倒していた。 その両目は緑色、妊娠した仔実装はよく見れば体格も親実装と大差ない。 「もう……ママは要らないデス!!」 「デェェェ……」 驚いた。妊娠するとほぼ同時に声変わりとは。 ホルモンの関係だろうか? それとも母は強し的なアレ? まぁ、三日連続虐待された親実装に残された力も高が知れているが。 「さて」 「デヒィ!?」 俺は手早く親実装の服をカッターで切り裂いた。 「デッギャア!!? ワ、ワタシの服がぁぁぁ!!」 「俺、あんまり服と髪は奪わない主義なんだけど。お前、勝手な行動したからペナルティな」 そして手袋を嵌めるとブチブチと髪を強引に引き抜く。 「デヒィ! デヒィッ!! やめてデスゥ!! 禿裸は嫌デスゥー!!」 一方的な虐待……いや、これから行われる虐殺を遠巻きに眺めている妊娠仔実装。 「四回連続で虐待を引いた罰は……捻り潰しでーす。おめでとうございます」 「デギィィィィィ……ワ、ワタシは幸せにならなければならないのデス!!」 「ふむふむ」 「死んだ子達の分までデス!! あんな糞蟲よりも幸せにならなければならないデスゥー!!」 「それで?」 すっかり糞蟲化したな。単純な感情しか見えないこいつにもう用はない。 俺は手袋のまま親実装の両手を捻り、ねじ切った。 「デッギャアアアアアアアァァァァァァァ!!!」 次は両脚だ。 「デピィィィィィィ!!? 痛いデスゥ、死にたくないデスゥゥゥゥゥゥ!!!!」 腹から下、いっとこう。 両手を使って強引にねじ切る。 「デギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!! デジャア、デジャアアアアアァァ!!?」 首に右手を当てて親実装に聞いた。 「最後に言い残すことは?」 失血と激痛で朦朧とする親実装の意識に期待できるかはともかく、それを聞いた。 すると……… 「……なさい、デス」 「え?」 「ごめんなさいデスゥ……ママが虐待派の言葉に乗ったせいデスゥ…親子一緒に、公園に戻…………」 最後の最後に、親としての愛を思い出したか…… でも死ね。 「デギャ!」 首をねじ切ると親実装だったモノをゴミ箱に放り捨てた。 しばらく俯いていた仔実装だったが、両目とも緑になった眼差しで俺を見上げる。 「ワタシ、立派なママになるデス」 「……そうか」 「よろしくお願いしますデス、ご主人様!」 オイオイ、いつから俺がお前の飼い主になったんだ? でもいい。今日は愛護の日なのだから。 「さ、胎教の歌でも歌っとけよ。酸っぱいもの欲しいか? レモンキャンディならあるんだが」 「ありがとうございますデッスン! デッデロゲー♪ デッデロゲー♪」 こうして仔実装は成長し、母親になり、幸せの全てを手に入れましたとさ。 めでたし、めでたし。 次の日。 俺は妊娠した実装石の前に二つの容器を置いた。 「……デ?」 「さて、今夜はAとB! どっちを選ぶ?」 俺はにっこり笑って選択を求めた。 「な、なんでデェース!? ママはいなくなったのに、どうして選ぶ必要があるのデース!!」 「むしろなんで母親がいなくなっただけで選択と決断をしなくていいと思ったんだよ」 「デデェ!?」 そう、生きることとは選択の積み重ねで、決断の連続だ。 妊婦になったからと言って例外ではない。 「で、でもワタシは神に愛されているのデス! 絶対、絶対愛護の札を勝ち取って見せるデース!!」 「そうか、頑張れ!!」 「Aデスゥー!!」 Aの箱に入る実装石。 俺はAとBの札を引き抜く。 「残念、Aの箱は虐待でしたー」 「デッギャァァァァス!!!」 ちゃんちゃん。 え? まだ話すことがあるだろうって? そうだな、あの実装石の末路についてと……ちょっとしたネタバラシが残ってる。 実はあのAとBの紙の裏には、虐待と愛護、両方の札が入っている。 俺が両方一枚、紙を引き抜けばAが虐待。 両方二枚の紙を引き抜けばBが虐待になる。 実装石たちは選択の幻想を見ているだけだ。 いやー、悪いね。 全部俺の一存で決めてたんだ、実は。 賢く愛情深い親実装から賢く愛情深い子供が生まれるとは限らない。 だから俺は残った妊娠実装を、上げてから落とす。 落として、上げて、落として、上げて、落として、落として、落として、落とすことにしよう。

| 1 Re: Name:匿名石 2015/02/01-23:10:17 No:00001628[申告] |
| 良い心理戦だった!
できれば妊娠実装の結末までちゃんと描写してほしかったなー |
| 2 Re: Name:匿名石 2015/02/02-10:02:32 No:00001629[申告] |
| 続編希望! |
| 3 Re: Name:匿名石 2015/02/05-18:28:34 No:00001630[申告] |
| 衣服などへのスタンスも含め、実に好ましい仕上がりです
本当に必要なところだけをギュッと詰め込んだ良いスクでした |
| 4 Re: Name:匿名石 2015/02/11-00:26:14 No:00001633[申告] |
| 久しぶりに良質なスクを見たような気がする
黄金期の活気だった頃と比べても遜色ないと思う 別作品も楽しみにしてます |
| 5 Re: Name:匿名石 2015/02/21-17:56:42 No:00001646[申告] |
| 良い作品でしたありがとうございます
子供産ませて繰り返すのかと思ってたよ |