「ウジチャン、ウンチでるレフー」
蛆実装はケージの中を這いながらレフレフ鳴いていた。
短い尻尾をぴょこぴょこ、その軌跡には緑の筋が描かれる。
「ウジチャン、ウンチでたレフー」
レフレフ、レフレフ、蛆実装は這いまわる。
尻尾の付け根にある排泄孔からプリプリと緑色の絵の具のような
糞が絶えず漏れ出していた。
「ウジチャン、ウンチでまくりレフー」
ケージの床は幼児の落書きのように、意味をなさない緑色の線が
交錯している。
やがて、動き疲れたのか、蛆実装はその場に丸くなってすやすや
寝息をたてはじめた。寝ている間も、その小さな割れ目からプリプ
リと糞を垂れつづけていた。
「レフー、ウジチャン、ウンチとまらんレフー」
ケージの中で眠る蛆実装の元に、一匹の親指実装が降ろされる。
「レチ、ウンチいっぱいレチ、くちゃいレチ」
親指はケージを見回して、レェっとため息とも悲鳴ともつかない
声でひと鳴きした。
「ごはんはどこレチ、おみずはどこレチ、おふとんはどこレチ?」
自らを掴んでここに降ろした手に問おうと親指を頭上を見上げた
が、そこにはケージを閉じる蓋があるだけだった。ケージは全面曇
りガラスで、外に見えるのはぼんやりとした照明の光だけだった。
「レェェ、ニンゲンサン、どこいったレチ」
親指はあらためて周囲を見回すが、あるのは薄く延ばされた糞と、
ケージの中心あるひと山の糞ばかりだった。他になにもないので、
親指はレチレチとその糞山に近付いた。
レフフ、レフフ
よくみてみると、そこには自らの糞に埋もれて寝息を立てる蛆実
装がいることに親指は気づいた。
「ウジチャレチ」
親指はマッチの先ほどの小さな手で、眠る蛆実装の頬を突いた。
「レフレフ、くすぐったいレフ、ぷにぷにはおなかにほしいレフ」
蛆実装は身をよじらせて、プリュプリュと寝言と寝糞を漏らす。
親指は思わず一歩後ずさる。
「レチィ、このウジチャ、おまたゆるゆるレチィ」
親指は汚物でもみるように、糞まみれの蛆実装をながめる。蛆実
装はそれを知ってか知らずか、口元もだらしなく寝むりこけている。
親指はそれからしばらくケージの中を探索したが、やはりそこに
は糞と蛆があるばかりだった。何度かケージの中で人間を呼んでみ
たが、返ってくるのは蛆実装のレフレフという寝言ばかりだった。
歩きつかれ、鳴きつかれた親指はなるべく汚れていないケージの
隅に身を横たえると、飢えと渇きに苛まれながら、眠りに就いた。
***
『レチェェェン! いやいやレチュー!! ママとずっといっしょ
レチュー!!!』
親指実装は夢をみている。夢の中で、親指は大きな人間の手に掴
まれ母の腕の中から引き離されようとしていた。
『ママとイッショがいいレチー! イモウトチャもいっしょレチー
! オニクもコンペイトウもいらないレチー!! イッショじゃな
きゃどこにもいかないレチー!!!』
抵抗も空しく、親指はあっさりと母の柔らかく暖かな胸の中から、
ガサガサとヤスリのように荒く、ひんやりとした人間の手の中に捕
えられていた。視界を覆う人間の指越しに、泣き叫ぶ母と妹たちの
声が聞こえ、あっという間に遠ざかっていく・・・。
『レチュゥ・・・、ここはイヤレチ、さむいレチ、ひもじいレチ、
あったかなおむねにかえりたいレチュゥ・・・』
そして耳元で聞こえてくるのは、能天気な調子の蛆の声だった。
「おなかレフ、プニプニレフ、おなかプニプニしてレフ」
夢から覚めた親指が最初に目にしたのは、視界一杯に迫った蛆実
装の顔面だった。
「レヂィィ!?」
驚いた親指は悲鳴と共に跳ね起きて、ケージの壁に張り付いた。
「レフレフ、しらないオネチャン、おはようレフ」
蛆実装は親指の悲鳴を気にする様子もなく、尻尾をふりふり近付
いてくる。
「オネチャン、プニプニしてほしいレフ、おなかプニプニレフ」
「レチェェェ・・・」
親指は思わず飛びのいたものの、相手が無害な蛆実装がわかると
安堵の息をつき、そしてここが夢の続きであることに肩を落としな
がら、あらためて蛆実装を観察した。
糞に埋もれていたときにはわからなかったが、蛆実装と親指の体
格はほとんど変わらなかった。胴回りなどは蛆実装のほうがひとま
わり太いくらいだ。
親指は蛆を相手にするのは初めてではなかったが、その大きさに
は違和感を覚えた。だが、無防備に腹をさらして鼻をピスピスと鳴
らして愛撫を待つ蛆実装をみて、同属の肌恋しさに、その腹を押し
た。
プニプニ、プニプニ
「レフェー、プニプニきもちいいレフー」
とろけそうな顔をして、蛆実装は舌と尻尾をピョコピョコとふり
まわしながら親指の愛撫に身をまかせる。
「アタチにもウジチャのイモウトがいたレチ、プニプニはとくいレ
チ」
プニプニ、プニプニ
親指は愛撫をつづけるが、それが妹であった小さな蛆実装の腹に
比べて、ずいぶんと弾力があるように思われた。
親指の腕力でも力みすぎるとすぐに潰れてしまいそうな、妹の薄
皮に包まれたモチのような感触に比べて、この親指の腹はゴムマリ
みたいに硬く分厚い。硬い分、愛撫をする手にも力が入る。
空腹のまま続けるには、親指にとっては結構な重労働だった。
「レチャー、オネチャもうつかれたレチ」
「レフーン、もっとプニプニレフー」
蛆実装は身体をくねらせ愛撫を催促するが、親指は額に汗をうか
べて、チーフーと息をついている。
「レフーン、レフーン、プニプニほしいレフー」
涙さえ浮かべながら、蛆実装は執拗に愛撫をねだる。
「オネチャはのどがカラカラでおなかぺこぺこレチ、ごはんとおみ
ずがあればもっとプニプニしてあげるレチ」
やっと息を整えた親指は、あらためて空腹と渇きを思い知り、そ
う問うた。
「ごはんないレフー、おみずないレフー、ウジチャンはプニプニほ
しいレフー」
「そんなはずないレチ、おみずもごはんもないと、ウジチャンはお
なかぺこぺこでウンチもでないレチ」
「ウジチャンのおなかはプニプニレフー、ウンチはブリブリでるレ
フー、いまもでてるレフー、ずっとでてるレフー、プニプニするレ
フー」
そう言いながらも蛆実装は糞をひり散らして、ひたすら愛撫を求
め続けた。
※※※
何時間経ったのだろう、あるいは何日が過ぎたのだろう。ケージ
の中はずっと明るく、親指には今が昼か夜かもわからない。ただ、
身体を苛むような渇きと飢えだけを感じていた。
息をするのも苦痛で、寝転がって目をつぶってみてもまぶたの裏
にはごちそうとたっぷりの水が浮かび上がるばかりだ。かといって、
動き回る気力もおきない。
「レチュアー・・・」
意味もなくため息ばかりが口をつく。目の前にあるのは元気に這
いまわる蛆実装と、その糞ばかりだった。蛆実装は這いまわるのに
飽きると、親指実装の元にやってきては愛撫を要求した。
「レフレフ、プニプニレフー」
親指にはそれに応える気力すらない。
蛆実装はひとしきり愛撫を乞うたが、反応がないのをみるとそれ
にも飽きて、やがて再び這いまわり糞を撒き散らす日課に戻った。
親指の目の前には、蛆実装のひり立ての糞の塊だけが残った。
「だめレチ・・・」
親指は、その糞塊から目を反らせずにいる自分に気付いた。
「レチ・・・、これはウンチレチ・・・、たべものじゃないレチ・
・・」
言葉とは裏腹に、乾いた口腔から唾液が染みだし、腹がキュルル
と鳴って目の前のそれを食べ物だと認識しはじめたことに親指はう
ろたえた。糞のすえた臭いすら、どこか芳しい。
「ちがうレチ、ワタチはクソムシじゃないレチ、ウンチなんてしん
でもたべないレチ、これはウンチレチ、レベベ、ウンチ、ウンチ、
ウンチレチ・・・」
気がつけば親指は顔から糞に突っ伏し、床に広がる水っぽい糞を
貪っていた。
ピチャ、ピチャピチャ、ブチュル、ピチャビチャビチャ・・・
能天気なレフレフという鳴き声と、糞をすする音がガランとした
ケージのなかに響く。
「ウンチー、ウンチレチー、ウンチうまうまレチー」
顔中糞にまみれて、親指は虚ろな目をして糞を咀嚼し、飲み込む。
その味も風味も感じる暇はなく、ただ水っぽい糞が渇きと飢えを満
たす快感に酔いしれる。
「ウンチうまー、オイチー、ウンチ—、ゲボッゲボッ、ブボァ」
腹が満たされたと思うと、それまで感じる暇もなかった猛烈な悪
臭と苦みが口一杯にひろがり、含んだ糞を吐き戻す。一度嚥下して
体内に染みついた糞の臭いから逃れるには、吐いても吐いても追い
つかない、体をひっくり返して大量の水で洗いながしてしまいたい、
涙と吐瀉物がとめどなく溢れてくる。
蛆実装はなにやら賑やかな様子の親指に気がつき、レフレフと這
い寄る。
「レフー、オネチャン、ウンチたべたレフー? ウンチたべるのは
クソムシレフー、ウジチャンかしこいからしってるレフー、かしこ
いウジチャンにごほうびのプニプニをするレフー」
蛆実装は吐き散らしのたうちまわる親指のまわりをくるくると這
いまわりながら、プニフープニフーと呪文のように繰り返す。
そんな中、自分の中の理性と何かがパリパリと音を立てていくの
を親指は感じたが、やがて何も気にならなくなった。
※※※
「レチー、まつレチー、ウジチャーまつレチー」
「レフレフー、ウンチでるレフー、ウンチがくるレフー、ウンチた
べるウンチがくるレフー、クソムシオネチャンレフー」
蛆実装と親指実装、二匹は追っかけっこでもするようにケージ中
を這いまわっていた。相変わらず蛆実装は糞を垂れ流しにしている。
親指はその糞を這いつくばって舌と唇で丁寧に舐めとりながら、蛆
実装を追いかける。
ここ数日、ケージ内で繰り返される光景だった。おかげで、水槽
の中はすっかりきれいになっていた。
親指実装は一度も洗われることもなく汚物を拭きとった雑巾のよ
うに、糞にまみれていた。その髪も、その衣服も、その肌も、べっ
とりと厚い糞の膜に覆われている。もはやどこまでが髪で、どこま
でが衣服で、どこまでが顔かも見分けがつかないほどだ。
「レチレチー、ウジチャつかまえたレチー」
ついに親指は蛆に追いつき、そのピコピコとせわしなく尻尾を捕
まえる。
「レフェー、つかまっちゃったレフー、クソムシオネチャンレフー、
ウンチまみれでコウキなウジチャンにタッチしたらエンガチョレフ
ー!」
蛆実装はいやがるように身をくねらせるが、プピプピを糞を漏ら
す排泄孔と、愛撫への期待に波打つ腹を、自ら親指の前に曝けだす。
親指は全身を覆う糞の飛沫を振りまきながら、手足をひろげてジャ
ンプし、蛆実装に飛び乗る。親指の全体重を、ぷっくりと膨らんだ
蛆実装の腹が受け止め、跳ねあげる。
「レフェフェー! レフェパー!! たまらぬプニプニレフー!!
!」
ブチュ、ブチチ、ビチチチチと排泄孔から糞が噴出する。親指は
蛆実装の腹の上で体位を変えて、すかさず、糞の噴出孔に向かう。
ビチビチと容赦なく親指の顔に噴射される糞に、親指はあんぐりと
大口をあけて、咀嚼もせずに飲み込む。そしてついにはぴったりと
排泄孔に直に口を着け、噴き出す糞を余さずごくごくと飲み込む。
その間も、親指は足と腰とで蛆実装の腹に圧迫と刺激を与えるのを
忘れない。
「レフェー! ウジチャンおかしくなりそうレフー!! オネチャ
ンはたまらぬテクニシャンレフー!!! ウンチとまらないレフー
!!!」
二匹はケージの中、糞にまみれて、ベチャベチャと湿った音を立
てて蠢いていた。やがて、蛆実装の糞もつきて、ただペチャペチャ
と名残惜しそうに排泄孔をなめまわす親指の舌づかいの音だけにな
った。
「ウンチー、ウンチ—、ウジチャのオイチーウンチー、もっとほし
いレフー、まだまだたりないレフー」
排泄孔に残るわずかなカスさえすっかり舐めとり、親指は抑揚も
なくぶつぶつと呟く。蛆実装は浅く息をつきながら放心の体だ。
「レフーン、もうウンチでないレフー、プニプニいっぱい、おなか
からっぽレフー」
「ウンチ—、ウンチー、レチレチウンチー」
「ごはんがないとウンチでないレフー」
「ウンチ—ごはんー、ごはんチー、レチー」
「ここにはごはんないレフー、だからウンチできないレフー、ウン
チでないとおなかぺこぺこレフー」
「ウンチー、レチー」
「ごはんないからウンチたべるレフー、ウジチャンもクソムシレフ
ー、オネチャといっしょレフー」
そう言うと、蛆実装はカパッと大きく口をひらいて、自分の腹に
しがみついた、糞の塊に鎌首をあげた。
***
『レチューン、もうたべられないレチュー』
親指実装は夢をみている。夢の中で、親指は母の大きくてやわら
かな胸と腕の間で、微睡んでいる。そこにはなにひとつ苦痛はなく、
すべてが満たされていた。
目の前に並ぶのはとても食べ切れないほどのご馳走、やさしく身
体を包みこむ母、見上げれば、微笑を浮かべる主人。そして、母の
足元ではしゃぎまわる、小さな小さな、かわいい妹たち・・・。
『ゴシュジンサマ、わらってるレチ、ママもわらってるレチ、イモト
チャもよろこんでるレチ、ワタチもうれしいレチ、しあわせレチ』
母の手と人の手が親指をやさしく、くすぐるように撫でる。妹の
たのしそうな鳴き声が耳をくすぐる。そのたびに、親指はその小さ
な胸がはちきれそうなほどの幸福を感じる。
『レッチューン♪』
喉を絞るような、恍惚の鳴き声を押さえることができない。
そんなあたたかで幸福な光景に、親指の意識は溶けていく。溶け
て、溶けて、蕩けた先で、親指は磨りガラスごしのぼやけた光を見
上げていた。
「レチ」
親指は夢から覚めていた。
「レチ」
応える声はない。
「レ、レ、レ、レチェーーーーーーーーン!!!」
親指の覚醒は急速だった。生ぬるく湿っぽいぬるぬるとしたもの
が身体中を這いまわり、締め付けていて身体はピクリとも動かない。
足先の感覚はなく、ただ強烈な悪臭ばかりが鼻につく。
「レベェ、ゴベェ、ゲボゲボ、ゴフェーーーーーーーーーー!!」
糞の臭いと身体を覆う感触の悍ましさに、吐き気が喉を突き上げ
る。親指はとろけた糞の混じりの吐瀉を繰り返す。吐きだすものが
尽きても、逃れない感触と臭いに、自らの喉の奥からの臭気で嗚咽
を繰り返す。喉が擦り切れ、血さえ吐きだす。
「ゲビィ、ゴブヂャアッ、ゴエ、グガガェ、ゴベェ」
傷ついた喉からは親指のものとは思われない、掠れた悲鳴が漏れ
る。
「ウゴ、ウゴガナイゲヒィ、グゥジィゲビュウ、ダヂケ、ヴァ、マ
マ、グボ、ゴジュジンヂャマ」
声にならない声は助けを求めるが、仔実装の耳に届くのは自らの
悲鳴とも唸りともつかない、耳を塞ぎたくなるような声だけだった。
身体は依然、ピクリとも動かない、首さえ生ぬるい粘膜にとらわ
れて、左右を見回すのがやっとで、自分の身体がどうなっているの
か窺うことすらできない。ずるずると体中を少しずつ引き寄せられ
る感触と共に、その生ぬるい粘膜が全身を覆うとゆっくりとせりあ
がってくるのを感じる。
「ダヂケ、ダヂケ、ヤ、イヤイヤ、イヤレヂ」
それが親指にとって、死であることを自覚していた。なにもわか
らず、ただ身体の内からも外からも絶え間ない苦痛のなかで、自分
の存在が消えてしまうのを感じていた。
「ヤ、マ、ヂニタクナイ、ヤ、ヤ、ヤ、ヤ」
抗う術もなく、親指実装はゆっくりと時間をかけて、口を塞がれ、
鼻を覆われ、苦悶に見開かれた瞳さえも呑まれ、蛆実装の腹の中で、
少しずつ肉体を失い、失った分だけ糞に換わっていく。
***
ケージの中とは対照的に、白を基調としたチリひとつない清潔な
部屋。低い空調の音だけが響いている。輝くクロムメッキの棚には、
曇りガラスに覆われたケージが隙間なく並んでいる。
部屋の中で動くのは、白衣に帽子、マスクという白一緒の装いを
した人々。並んだケージの蓋を持ち上げ覗いては、手元の端末に何
かを打ち込んでいる。
ひとりが、曇りガラス越しでもはっきりと緑のラインを透かした
ケージを覗く。そして、そこでしばらく考え込むように立ち止まる。
他の白衣のひとりを手招きする。二人は小さく囁きあう。
ケージは棚から持ち上げられて、白い部屋のドアを抜け、ステン
レスの解剖台と流し、ガラス戸のついた棚の並んだ部屋へと移され
た。ひとりがピッタリとしたゴム手袋をはめた手でケージの中から
蛆実装を取り出した。
蛆実装の腹は卵を飲み込んだ蛇のように、不自然に膨らんでいた。
「レフン、レフレフ?」
蛆実装はそっとアルミ盆におろされて、仰向けにされた。
「レフ、レフレフ、レッフーン♪」
ピコピコと小さな尻尾をふりふり、ピュルピュルと緑の糞を撒き
散らす。磨きあげられステンレスと白衣の上に、緑の飛沫が点々と
染みをつける。白衣の人物があわてて手をかざし、糞の飛散をおさ
える。もうひとりが、素早く麻酔薬を染み込ませた脱脂綿を蛆実装
の顔にあてがう。すると、ぴたりと尻尾の動きがとまり、糞の噴出
も止まる。
麻酔を嗅がせた方の白衣が、もうひとりの白衣に頷く。彼は汚れ
たゴム手袋を取り換え、ガラス戸からアルミ盆を持ち出した。盆の
中にはメスや鉗子といった解剖器具が並んでいる。
一本のメスを持ち上げ、慣れた手つきで蛆実装の膨らんだ腹を縦
に一線する。すると、皮膚はブドウを剥くように左右にズルリと割
れ、膨張した糞袋を露出させる。メスを握った白衣は、どうだとば
かりに両手をもちあげ、助手の白衣に目配せをする。助手は取り合
わず、薄く緑がかった実装活性液で開口部を洗った。体液が流れる
と、糞袋はあざやかなピンク色をしていた。
再び、メスが振るわれる。今度はゆっくりと糞袋の表面にメスの
先端があてがわれ、慎重に切開が進められる。メスの先の感触で対
象の厚みを探り、内容物を傷つけないよう、メスを埋めていく。プ
ツっというかすかな感触と共に、ピンクの糞袋の表面に濃緑色の粘
液があふれ出す。助手は吸引機であふれる汚物を取り除く。ジュル
ジュルという耳触りの悪い音と、空調が追いつかないほどの悪臭の
中、メスで糞袋に切れ目を入れて、弾力の強い糞袋の組織を鉗子拡
げた。
糞袋の中には親指実装の形そのままの、糞が収まっていた。
頭巾や衣服は失われていたが、その亜麻色の毛髪や見開かれたオ
ッドアイはそのままだった。その瞳は光を受けて輝き、自分を覗き
こむ二人の白衣の姿を映した。
身をよじって、自らを縛めていた蛆実装の体内から抜けだし、ふ
たりに向かって両手を掲げる。
「レッチュルーン♪」
ずるりと後ろ髪が抜け落ちた。
「レチレチ、レッチューン♪」
右腕を形作っていた糞がこぼれ、棒状の骨格が露出した。
「レチ、レチレチ、レチュー♪」
赤い方の瞳が顔の半分ごとこぼれ落ち、頭蓋を露出させる。
「レチ・・・、レチュ、レチレチレッチューン!」
足を覆っていた糞が剥がれると、雪崩のように全身の糞が脱落し
て、台の上には一握りの糞の塊だけが残っていた。

| 1 Re: Name:匿名石 2015/01/26-11:42:33 No:00001624[申告] |
| 内容が理解できない
誰かおせーて |
| 2 Re: Name:匿名石 2015/01/26-18:41:52 No:00001625[申告] |
| 蛆が糞まみれの親指を食べて消化しちゃったらしいことは解る
でもこれが何の実験だったのかが解らない |
| 3 Re: Name:匿名石 2015/01/27-09:12:55 No:00001626[申告] |
| 生きてようが死んでようが実装は糞であることに
違いはないというメタファーでは。結局何の実験かはわからないが |
| 4 Re: Name:匿名石 2015/01/27-20:42:04 No:00001627[申告] |
| 実験派が何のデータを取って統計を出しているのかはあまり興味がない。
この作品のテーマはおそらく、 実装石 = 糞蟲 という誰もが当たり前のように知っている事実をありのままに発表したことだ! |