タイトル:【観察虐】 庭で放し飼いになっていた仔実装のジソミが、野良と出会って…
ファイル:ジソミの大冒険.txt
作者:賞金首 総投稿数:41 総ダウンロード数:2238 レス数:4
初投稿日時:2014/10/16-00:08:52修正日時:2014/10/16-00:08:52
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「あっ、ま、またジソミ脱走してるよ」
「飽きたら帰ってくるでしょ、そんなことより、夕飯のお買い物行って来て」

そんな会話の窓ガラス越しには一匹の仔実装が蝶を追いかけて
よちよちテチテチと真上を見上げながら歩いていた

半分放し飼いになっているこの仔実装はジソミ、この家の飼い実装だ
庭には小さなぼろ小屋があり、そこに一匹で飼われているのだが
隙間だらけのぼろ小屋なために簡単に脱走できてしまうのだ

しかし、飼い主がしたいようにさせているのにも一応、理にかなった理由がある
第一に、この家がブロック塀に四方を囲まれ、門もあるため
仔実装では中からも外からも出入りが困難であること

第二に、隙間だらけのぼろ小屋とはいえそれなりにしっかりしたつくりなので
もし野良の成体実装が庭に侵入したとしてもジソミが小屋に避難すれば済むこと

ジソミは生まれてこの方この庭しか知らず、自分以外の実装石も見たことがないため
まるきり無警戒に勝手気ままに暮らしていた
それはともあれ、真上をひらひらと飛ぶ蝶を追って庭の隅へ隅へとよちよちテチテチと
歩き続け、気がつけば普段来ないような庭の端まで来てしまっていた

そこの地面にはブロック塀によってつけられた影に光の丸が並んでいた
それはブロック塀に開けられた等間隔の丸穴から光が差し込んだものだ
ジソミは初めて見るそれを不思議そうにぼーっと眺めていた

光の丸が左から順にひとつ消え、また光が戻る
隣の丸がひとつ消え、また光が戻るという現象が起こった
これは塀の前を何かが通ったことで、穴がふさがっただけだが
ジソミは初めて見るその変化に対して驚きの声をあげた

「テェェーッ?」

ジソミのその声に反応したかのように、ぴたり、と影が止まる
そして、壁の丸穴からテラテラと光る赤緑の目がジソミを見つめていた

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野良親仔はゴミを漁りに人家の間を縫って慎重に歩いていた
それはいつもの光景のようだが、今回は少し違っていた
仔実装を連れて歩いていたのだ

それは来たる厳しい冬のさなかに餌場を教えるため…だけではない
食料の少なくなってきた公園ではいつ同属食いの餌食になるかわからない
姉妹の中で一番希望のある三女の越冬を無事に過ごさせるため餌場を教えることと
常に目を離さないことを両立しようとした結果
こういう不自然な餌狩りという形になってしまったのだ

その時、突然予想だにしないことが起きた

「テェェーッ?」

突然の仔実装の大声に親実装は警戒する
賢い三女に限って、こんな人家の真ん中で大声をあげるような失敗なんて
と三女の方を見るが、三女も声の主を探していた

すると、この近くに別の仔実装が…
きょろきょろと辺りを見回すと、すぐ真横のブロック塀の丸穴から
こちらを除く仔実装の顔が見えた

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「アテチはこのオウチのカイジッソウなんテチ
ニンゲンサンが毎日ゴハンをくれるけど、ここから出してくれないテチ」
警戒心、という言葉を知らないジソミはすぐさま野良親実装と打ち解けた

親実装はというとジソミのどうでもいい話にウンウンと相槌をうち
野良仔実装は親実装のうしろに隠れている

野良実装にとって、飼い実装と会話をする状況と言うのは実は危険きわまる
まして、野良の成体と飼い仔実装の組み合わせは最悪だ
通りがかった正義感溢れる通行人によってその場で駆除される危険もある


つまり、野良親子にとってはこの1秒1秒が命の危険に身を晒している状況なのだ
それを知っている三女は早く行こうと親実装の袖を引くが
なぜか親実装はその場を動こうとせず、ジソミの話に真剣に聞き入っているように見える

やがて、ジソミの話の切れ目に流れ込むように
親実装が重い口を開く
「そうデスか…かわいそうに、デス」

「かわいそう、テチ?アテチがテチ?」
予想外の言葉にジソミは不思議そうに首を傾いだ
この生活しか知らないジソミにはその親実装の言葉が理解できない
親実装の意図も理解できない

その時突然、親実装は感極まったかのように声を押し殺してゆっくりと泣き出した
「おばちゃん、どうしたテチ?オナカでもイタイイタイテチ?」
ジソミは心配そうにブロック塀ギリギリに近寄る

親実装はそんなジソミをチラリと見やると、やがてゆっくり言葉を続けた
「オロローン、オロローン、外にはお友達が一杯いるデス、ゴハンも好きな時に食べられるデス
幸せも知らずに毎日窮屈な暮らしをしている、そんなジソミちゃんがかわいそうに思ったデス」
そう言うと親実装は透明な涙をぽたぽたと流しながら、ちらりちらりとジソミの顔を伺う

不幸??アテチが!?
全く予想外の反応にショックを受けるジソミ
面食らったのも無理はない、ここでの生活しか知らないジソミにとって
幸福・不幸という基準そのものがない
知らないオバチャンにわが身を哀れまれたという現実だけがそこにある

そこに、畳み掛けるように親実装は続ける
「そうデッスー!ジソミちゃんがウチの仔になればいいデッスー!
 そうすれば、ジソミちゃんはオソトで楽しく暮らせるデス!!」

突然の提案に混乱するジソミ
「で、でも、アテチがいなくなったらオウチのニンゲンサンが心配するテチ」

それを聞いて親実装の目が不敵にキラリと光る
その様子を見て全てを察した三女もすかさず加勢する
「大丈夫テチ、かわりにワタチがジソミちゃんの代わりになれば良いテチ」

親実装もわざとらしく泣き声をあげる
「オロローン、三女ちゃんはなんと優しいデス
 かわいそうなジソミちゃんに代わって
ニンゲンサンとの窮屈な暮らしを替わってあげると言うのデス!
ジソミちゃん、ニンゲンサンから逃げるなら今しかないデス!!」

「テ?テ!テ…テェ…テ!テ?」
二石がかりの畳み掛ける説得に
ジソミの頭はすっかりパンクしてしまった

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「三女チャ、達者に暮らすデス…」
親実装はジソミの手を引きながら、最後に一度だけ振り返り
ブロック塀の隙間からこちらを見る”新”ジソミの顔を見た
”新”ジソミのほうもじっと親実装の顔をじとりと見ている

ブロック塀のわずかな丸穴は、親実装が無理やり手を差し入れれば
ぎりぎり仔実装をやりとりするに十分な隙間だった
この隙間を利用してジソミと三女を交換し、服と首輪も着替えた
今、塀の向こうにいるのは元三女・新ジソミ
こちら側にいるのはジソミと親実装だ

三女こと新ジソミのなりかわりは成功した
これでもう、親実装と新ジソミは赤の他人…他石だ
束の間の今生の別れ、親実装と新ジソミは互いに見つめあう
その時間は永遠にも思われた

叶うならもっとも実装生で成功したこの瞬間で時が止まってほしかった
ずっとこのままでいたかった
だが、長居すればするだけ危険、それは親実装にもわかっていた

「ざあ、行くデズ」
親実装はジソミに、というよりは自分に言い聞かせるように言う
その声はわずかに鼻声となり、赤緑色の涙が一筋頬を伝った

そして大きくかぶりを振ると、親実装はもう後ろを振り向かず
ジソミの手を引いて歩いていった

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(訳注)

野良実装の過酷な生活をご存知の読者諸兄にとっては
この一方的かつ不利なやりとりにジソミが応じたことを不自然に感じる方もいるだろう
だが、ちょっと待って欲しい
ジソミは知らないのだ、外の野良実装の生活を、そして飼い実装のありかたというものを

そして、当然ながら”新”ジソミも知らないのだ
ジソミが飼われていた本当の理由を…

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「テッチューン♪」
ジソミ、いや新ジソミは窓ガラスに向かって、元気よく鳴いた
新しい生活、新しい家族、新しいオウチ!
これからはジソミとしてここで生きていく

ニンゲンサンに少しでも良く思われて良い暮らしをする
それがママとの約束、自分にできること
そのためには目一杯ニンゲンサンに気に入られて可愛がられる
うまくいけば、ママや姉妹を呼び寄せて一緒に暮らせるかも…


様々な思いを胸に秘めて、窓ガラス越しにニンゲンサンに精一杯の媚びを売る
これまでにない最高のキレで頬に手を当て、高音でテチュンと鳴く
公園ではママに禁止されていた媚び、外敵を呼びよせ、ギャクタイハニンゲンを怒らせる行為

実際に新ジソミの姉妹の長女はかつて公園で通りかかった虐待派の若者にこれをやったため
禿裸達磨実装に改造されて公園の時計台のてっぺんに吊るされた
身動きできない状態で昼夜問わず泣き喚く長女に、しかし場所が高すぎるため
公園の管理人ですら引き降ろすに適わず、ようやく業者が入って
干からびた長女の残骸を引きおろしたのは三日三晩鳴き続けた長女の絶命よりさらに一週間先であった
新ジソミの耳には今でも遠くから響く長女のデェェェンデェェェンという悲鳴が耳に焼きついている

しかし、今は飼い実装、媚びも立派な仕事のひとつ
ニンゲンサンに気に入られる、そのために必要な行為

窓ガラス越しにニンゲンサンと目が合う、キマった!
これでこのニンゲンサンもメロメロテチ!!

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一家団欒の夕暮れ時に
窓ガラスの向こうでチィー チィーと騒ぐ声

早い晩酌にすっかり頬を赤らめたおやじさんが窓ガラスの外の新ジソミを見て言う
「おー、気がつけばジソミもずいぶん大きくなったな」

サッシを開けると、おやじさんは新ジソミを膝の上にのせて頭を撫でる

新ジソミは気持ち良さそうに目を細めつつも
期待するように両手を挙げて何かをせがむ
これは野良実装が人間に物をねだる格好なのだが
家人はみんなこの仔実装をジソミだと思っているので、そんなこととは気づかない

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「おおー?そんなに気持ちがいいんか?もっと撫でてやろうか」
おやじさんは新ジソミを撫でつつも裏側にひっくり返したり
片手で支えて手で目方を測ったりしている

その様子を見て息子も口を挟む
「お、おやじの言う通り、だだ、だいぶデカくなっているな
こ、これなら、もういい、もういいんじゃないか?」

父子の会話を聞いて、台所から母親も来る
「あら、そろそろ頃合なの?」

おやじさんはちょっと考え込んでから、新ジソミの腹の肉を掴む
野良特有の冬に備え脂肪を溜め込み、悪食で肉の硬くなりつつある触感
と言っても、おやじさんは野良実装を触ったことがないのでそんなことは知る由もない

「テヂョッ!」
突然の蛮行に新ジソミは抗議の声をあげるが
おやじさんはそんなことは意に介さず、妻と子に答えた
「少し育ちすぎて肉が硬くなったかもしれないな
やるなら早いほうがいい、明日あたりが頃合かもしれんぞ」

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ところ変わってこちらは公園のダンボールハウス
先ほどの親実装のオウチ、ジソミにとっての新生活の場所でもある
それは一夜が明ける直前の、まだ空が白みかかった時間のこと…

「これで冬が越せるデッスー」
「テヂィィィイ!ヂィィィ!」
泣き喚くジソミを尻目に成体実装は夕食の支度中だ
ジソミのことは仔たちに任せ、自分は木の実を石で磨り潰している

そしてその後ろでは野良一家の次女である中実装がジソミに馬乗りになって
髪を抜きにかかっている
この中実装はなかなかよくできた仔で
親実装の手伝いにジソミの下ごしらえを自ら名乗り出てきたのだ

この中実装、性格が糞蟲でさえなければ
元々は三女こと新ジソミに代わってこちらが越冬第一候補だったのだ
だが、それも新ジソミがジソミに成り代わったことで越冬第一候補に返り咲いた

「テプププ、叫んでも無駄テッスー!
オマエはこれからワテチたちの夕ゴハンになるテス!」
中実装は泣き喚くジソミに罵声を浴びせると、ぐいぐいと後ろ髪を抜く
「やめテチ!やめテチ!オトモダチになるテチィ!」
ジソミは哀れっぽく泣き叫ぶが、そんなもの中実装にはどこ吹く風

「チプププ、哀れテチ、みすぼらしいテチ」
「ワタチも手伝うテチュウン」
「そいつのクックとおリボンはワタチが貰うテチィ」
更に3匹の仔実装が次女に加勢し、ジソミを殴りつけたり
靴を、前掛けを、リボンを剥ぎ取り、顔に糞をなすりつける

「オネチャ、そいつをもっとボコボコにするレチ!」
「リンチはウンチより楽しいレフ!」
ハウス内の親指や蛆までももけしかける
…ジソミが来なければ、今頃は姉中実装に調理されているのは自分達だったろうに…

そんなダンボールハウスの喧騒も親実装には心地よい
ああ、自分の仔達はこんなにもたくましく育ってくれた
これで冬を越せば、来年の春先には独り立ちできるようになろう

親実装は思わず目を細めて家族の団欒こと、ジソミへのリンチに和む
本当に、これでよかったんデスウ…
三女ちゃん…新ジソミは賢いけれど少し優し過ぎた
次女くらい元気なほうが野良として生きていくのに向いている

親実装はデフー、とため息をついて有望なこれからの生活に思いを馳せた…

その時、突然一条の光がダンボールハウスに差し込んだ
ハウスは梱包用のダンボールをそのまま転用しているので取っ手用に細長い穴が開いている
そこから外の光が差し込んだらしい
一体なんだろう?親実装は不思議に思った

調理に夢中の仔達に心配をかけまいと、そっと親実装は細長い穴から外を見た
公園の入り口にニンゲンのクルマが止まっており、そのクルマの光らしい

どうせ自分たちには関係ない
親実装はそう思うと、再び木の実を磨り潰す仕事に戻った

公園の夜が明け、朝が始まる…
それはまさに、終わりの始まりでもあった

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本日未明、実色市内の二橋明人さん(52歳)宅で庭で放し飼いをしていた食用石を食べたところ
二橋さん一家が実装食中毒を発症、1人が重症で3人が軽症となりました

実装食中毒は不潔な野良実装石と食用実装石の接触によってジソモネラ菌が伝染し
ジソモネラ菌を人間が摂取することで食中毒の原因になりますが

ジソモネラ菌は実装石同士であってもなかなか伝染しにくい病原菌であることと
庭のみで管理していた食用実装石が原因となっているところから
実色市地域一帯の重度のジソモネラ菌汚染が心配されます

実色市保健所としては防疫のために地域の野良実装の徹底駆除に努めるとともに
実色市内での食用石の処分および、飼い実装への精密検査を薦めています








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糞蟲一家のせいで公園どころか地域の実装石全部駆除だね、やったぜ!
もしかしたら続編を作るかもしれないのでスレ投下時よりラストを少しだけ変えました
一応、構想はあるんですが話が壮大になりすぎちゃってちょっと…

…まあ、もし作るとしても、幼稚園スクの完走が先ですね

幼稚園スクも、どれくらいの内容でやったらいいのかよくわからないので
ドドリ(05で犠牲になった中実装)を痛めつけるのはさすがにやりすぎた感があって
よかったら感想いただけるとありがたいです、というか感想ありがたいです
挿絵なんかもらった日には泣いちゃいますね

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1 Re: Name:匿名石 2014/10/16-00:19:55 No:00001480[申告]
大規模駆除の幕開けだ。やったぜ。
2 Re: Name:匿名石 2014/10/16-17:10:28 No:00001481[申告]
何をしても決して報われない実装くぉりてぃ
3 Re: Name:匿名石 2014/10/18-00:58:48 No:00001483[申告]
飼い実装と入れ替わりが悲劇を生むのはお決まりパターンではあるけど、飼いでなく食実装と入れ替わったのは新しい
しかし自宅で家畜を飼う家ってのも現代では珍しいね
昔は日本の一般家庭でもチャボとかウサギとか飼ってたらしいけど
4 Re: Name:匿名石 2014/10/23-20:45:13 No:00001493[申告]
悪意の行為は悪意で帰ってくる
しかし、ジソミは食用だし、元三女は野良にしては甘いところがあったみたいだしでそのまま行っても結局不幸になりそうだな
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