この公園に一匹の実装石が渡ってきた。 身長65cmの大柄な個体で、元々家族はいないようだった。 そしてこのデカブツは来るや否や挨拶回り。 ドングリだのビー玉だのを近所に配って回っていた。 公園内の糞蟲一家からダンボールハウスを奪いたい。 長老からの許しはすぐに貰えた。 デカブツは早くも群れに溶け込んでいた。 さて一週間後、 デカブツは新天地での身の振り方を決定した。 総合判断—— (ここには私の敵はいないデスゥ) デカブツは行動を開始した。 「返してデスゥ! 長女ちゃんを返してデス!!」 共用トイレの周りに集まって懇願する公園の親実装達。 深さ2m以上もある大きな窪み。 虐待業界ではお馴染みの設備。 このトイレは以前、市の方針で作られた遺物である。 数日前までは禿裸の奴隷達が放り込まれていたのだが、 今そこには髪と服の残った仔実装達が集められていた。 「デップップップップ! 子供が欲しければ自分で取りに来るがいいデス!」 デカブツは共用トイレの底のど真ん中で笑っていた。 「ふざけるなデス! 降りたら奴隷になっちゃうデス!」 「そうデス!そうデス! お前もトイレの奴隷デス!!」 「早く娘を投げてこっちに返すデス!!」 どうやらデカブツが公園の子供達を共用トイレの底に連れ込んだようだ。 「デププ……まったく不憫な奴らデス」 そう言うとデカブツはゆっくりとハシゴを上りだした。 この共用トイレは元々は愛護用。 食用秋仔をコロニー全体で育てるための便利施設のはずだった。 大人実装達がハシゴで上り下りして奴隷や秋仔を管理できるはずだった。 しかし、この公園の実装達(主に捨てられた愛玩用の血筋)は品種のせいか 成体でも40cmいくかいかないかの大きさなので、 大人実装用のハシゴを上り下りできなかった。 「お前たちは軟弱者デス!! だから代わりに私が子供達のお世話をしてやるデス」 ハシゴを上りきり、見下ろすデカブツ68cm。 見上げる親達、平均33cm。 一週間後、 親達はデカブツに餌を献上するようになっていた。 「ハシゴを上ると体力を使うデスゥ」 「娘に会いたいんデスか? 子供を運ぶのは疲れるデスからねぇ」 事あるごとにデカブツは餌を要求した。 愛情深く、仔を割り切れない親は餌を渡すしかなかった。 というより、子育てを諦めた実装以外はデカブツに従った。 新しく仔を産んでもトイレの底に持っていかれてしまうからだ。 仔を取り返そうにも、トイレの底はデカブツ以外立ち入り不能の聖域。 一度入れば二度と出られない。 仔を目の前で人質に取られた親達の悔しさは凄まじいもので、 賢い親達は徒党を組んで武装してデカブツを襲う計画さえ立てた。 しかし、この計画もトイレに逃げ込まれればどうしようもないのですぐに立ち消えになる。 結果、賢い親は歯向かえず、歯向かう馬鹿は無理やりトイレに引き込まれる。 反逆者の見世物達磨が仔実装の餌になっているのは誰にもわかった。 常にオープンな共用トイレのこの性質が公園を恐怖で支配していた。 「でも、餌さえ渡せば仔のお世話をしてもらえるデス」 「これはリーズナブルデス」 「私達は餌取りに専念できるし、これはお得デス」 あまりにも救いが無いので、 親達は現状を肯定することで正気を保っていた。 「あの、これをうちの娘達に届けて欲しいデスゥ」 ある親実装は板チョコの大きな欠片を渡した。 「任せるデスゥ」 贈り物の大半はデカブツが隠れて食べる。 残ったカスだけが子供に届く。 それがさも元々のプレゼントかのように装って。 「テチィィーーー!! 甘いテチ!」 「ママァー!! アマアマおいしいテチ!」 「ママ大好きテチィ! テチューン!」 喜びの声はひときわ大きく上げさせた。 そしてそれ以上に羨望の声を上げさせていた。 「テチャアアア!! ワタチも食べたいテチィィ!」 「隣の仔は今日もおやつ食べてるテチ! エコヒイキテチィ!!」 「テェェーーーン!!! 私も優しいママが欲しいテチューー!」 愛情深い親達にとって、自分の娘の歓声を聞くのがなによりの安心だった。 そして他所の仔の悲鳴は「自分はちゃんと親の役目を果たせてる」という安心にも繋がった。 「お前は親の鑑デス。娘ちゃん達はいつもママに感謝してるデス お前の娘はきっといいママに育つデスよ」 「お前の娘は寿司が食いたいと行っていたデス。 もし見つけたら持ってくるのが親の務めデス」 「お前があんまりお土産を持ってこないせいで、お前の娘は他の仔にいじめられてるんデスよ。 かわいそうだからちゃんとお菓子を持って来いデス!」 デカブツの言葉は娘達の言葉として受け取らなければならない。 そうしなければ、群れの間で薄情な親としてママ友から苛められる。 異端者を許さない実装だけに、そんなルールができるのは人間以上に早かった。 そして二ヶ月後、 「あの、娘はちゃんと生きているんデス?」 あまり賢くない親の一匹がついデカブツに質問してしまった。 「なぜそんなこと聞くデス」 「私は四回も出産して全部あなたに託児したデス。 数はわからないけど、いっぱいのいっぱいのはずデス。 それに他のお家の仔もいるデス。 あなたはどうやって仔達を見分けてるんデス?」 その親は仔が恋しくて、何度も共用トイレの底を覗き見ていた。 空き容器にギュウギュウ詰めにされた仔実装達。 そんな容器がぎっしりと置かれていた。 (これじゃあ誰が誰だかわからないデス……) そんなことを思い始めたこの親には、トイレの底から聞こえてくる声が どれも自分の仔のもののようにも、他所の仔のもののようにも聞こえる気がしていた。 賢くないが変に勘が良かった親実装。 気になったことで頭がいっぱいになって、今日ついに質問してしまった。 「私はお前たちより倍デカイデス。脳みそは8倍デカイデス そんなの簡単に見分けられるんデス」 「なんでデス! なんで大きかったら頭よくなるデス! そんなのおかしいデス!」 精神状態が非常に悪くなっていた親実装。 何かが切れてしまったのか、 顔を真っ赤にして鼻をピスピスしながら騒ぎ立てた。 「私は前からおかしいと思ってたデス! お前やっぱり私たちを騙してるデス! 子供達なんてとっくにお前が殺しちゃったに決まってるデスゥ!!」 デカブツ75cmと親実装36cm。 親実装はデカブツの涎掛けを引っ張り、歯を剥き出しにして抗議の罵声。 一方、デカブツは予想外の反撃に行動を決めかねていた。 そうこうしている間に、わらわらと集まってくる野次馬。 夕方の公園、共用トイレの周りに集まった実装石は優に60匹以上。 発言次第ではデカブツも数の暴力に負けかねなかった。 「デスゥ、そこまで言うなら私が折れるデス。 次にお前たちが産んだ仔達はお前らが育ててもいいデス お前たちは今日から自由デス……」 元々の質問の答えになっていない回答だった。 しかし、出産と自由というキーワードが親実装達をどっと沸かせていた。 第一次育児革命成る。 その日は夜明けまで歌って踊り、マラとのセックスに皆が勤しんだ。 そして支配者たるデカブツはというと、 群集の熱気に押されてあたふたとトイレの底に逃げていた。 「私達は自由デスゥ! ええじゃないかええじゃないかデス!」 三ヶ月後、 そこには以前のような生活があった。 「テスゥ♪」 「デスン」 一緒に餌取りに行けるほど大きくなった仔が、親と一緒に早朝家を出る。 「チュー」 小さい妹ちゃんはお家でネンネしてお留守番。 「レフ」 そして、かわいいペット兼非常食の蛆ちゃん。 当たり前の日常が帰ってきていた。 そして一年後、 「マァマ、トイレ行きたいテチ」 親実装にトイレをねだる仔実装。 共用トイレのある公園の実装石はトイレを覚えやすい。 {トイレでウンチ→奴隷でチププ} の方程式があるからだ。 「ミーちゃん一人でいったら駄目デスよ ママと一緒に行くんデス」 足元のおぼつかない仔実装だけだと風に吹かれてトイレに落ちることもある。 だから共用トイレは大人と一緒に行くのが群れでの決まりとなっていた。 「チィィ! おしりムズムズテチ! 我慢できないテチィィ!」 内股でプルプルしながらお尻を振る仔実装。 本当は我慢できるのだが、親に甘えたくて無理を言っている。 「はいはいわかったデス、トイレに連れてってあげるデス」 家の戸締りを終えた親実装はさっと仔実装を抱え挙げると、 えっちらほっちらと走ってトイレに向かった。 共用トイレにつくと、親実装は備え付けのカップを引っ張り出す。 「チャァァァ……ウンチきもちいテチュ……」 半目のトロンとした顔で体がプルプル。 耳も垂れ下がっていて本当に気持ちよさそうに仔実装は排便していた。 「デププ、かわいい子デス。 さぁウンチは底の奴隷に食べさせましょうデスン」 両手で掴んだカップを大きく振るってドパァと軟便を撒き散らすと、 底にいる禿裸の仔実装達が落ちてきた糞に群がるのが見えた。 「チププ、あいつらウンチ食べて喜んでるテチ」 「ミーちゃんもママもああいう糞蟲に生まれなくて本当によかったデスねぇ」 この能天気な親は新世代。 革命後に生まれた世代だ。 今では不気味な実装さんの姿は影も形も無くなっている。 ただ、群れの間ではトイレに勝手に行こうとする仔実装を脅かすために、 「トイレにはそれはそれは恐ろしい化け物が住んでいるんデスゥ。 子供だけで奴隷を見に行ったら連れてかれちゃうデスよ」 という寓話が孫の代まで語り継がれていた。 このように何気ない話であっても、 物覚えの悪い実装石の群れで何かしらの逸話が定着している場合は 裏に壮絶なエピソードが隠れているケースが多い。 ------------- by 赤いサクブス

| 1 Re: Name:匿名石 2014/09/29-23:28:52 No:00001401[申告] |
| デカブツの知性はなかなかすごい
どこへ消えてしまったか気になりますね |
| 2 Re: Name:匿名石 2014/09/30-02:24:36 No:00001403[申告] |
| あれ?いつのまにかデカブツが物語からフェードアウトしてしまった! |
| 3 Re: Name:匿名石 2014/10/01-20:55:31 No:00001408[申告] |
| これ、結局のところ下に連れてかれた時代の仔蟲は死ぬかうんこ奴隷なんだよな
もはや識別不能とはいえ自分の家族かもしれない存在をうんこ奴隷にしたままなあたりが実装石だなあ そしてデカブツはどこに消えたのか 糞蟲リンチにあったわけでもなさそうだが 公園に残っているわけでもないようだし どこか別の公園で同じようなことを繰り返してるのやら 実装石としては大柄なだけで人間には敵わないからどこかで駆除されたのやら |
| 4 Re: Name:匿名石 2014/10/01-21:21:02 No:00001410[申告] |
| 珍しい2,3mになる前の小柄な実装さんのお話 |