妖怪実超デブ 「ゴミ屋敷の鋏(前編)」 深夜。 町を彷徨う三匹の実超石。 巨大な70cm、成体デブ。 痩せた50cm、成体ガリ。 小柄な20cm、仔実超チビ。 三匹はいつか人化できる日を夢見て、日々人間のために戦っているのだった。 三匹は一緒に渡り歩いて町に着くと、次の町に行くまで大体別行動をしていた。 (野良実装駆除) これは実超石達が公園に来る数日前の話である。 「やめテチィーー! イタイのやめテチィーー!!」 「テェェェン! テェェェン!」 霧状コロリを散布する市職員。 この町では珍しくない光景だ。 野良実装による飼い実装殺しが相次ぐため、 幾度となく駆除が繰り返されてきた。 月に数度の駆除も初めてではない。 「デェェップ! ゲェェェ!」 遅効性のコロリの効き目が出るのは数時間後。 散布直後はゲロリの効果で激しい吐き気と眩暈に襲われる。 唐辛子成分込みなので涙も出るし肌もただれる。 スプレーは広場だけでなく茂みや自販機の裏まで隅々に撒かれていた。 ここまで徹底して残酷な駆除をするのは見せしめのため。 この町の実装石による実害はどういうわけか世代がかわっても続く。 そのため、実装石に対する制裁という意味でも、 市民への顔向けという意味でも、この町では派手な駆除が求められていた。 「テチュン……」 耳にピンクのリボンをつけた飼い実装のミドリ。 ミドリは一軒家のリビングで放し飼いされている。 しかし、その代わりに一切の外出が許されていなかった。 「ご主人様のお家は広いテチ だけどお外も出れたらもっと広いテチ 塀さんの外ならもっと広い広いテチ」 窓に顔を貼り付けて鼻息で霜を作りながらミドリはボーっと外を眺めている。 賢い仔実装なので外の危険はそこそこわかっていた。 しかし、それでも散歩はしたいのだった。 一度外の世界を思い描いたら子供はそこに行ってみたくなるもの。 実装石ならなおさらなのだ。 「チュー」 外を見るのとコロコロ遊びを繰り返して疲れたら、ご飯を食べて昼寝をする。 これがミドリの生活であり一生なのである。 そして夜に帰って来る主人に甘えれば甘えるほど、ひとりの時間が寂しくなるのだった。 「テチィー」 「テチュ!?」 フードを食べていたミドリはベランダに見知らぬ仔実装がいるのに驚いた。 「誰テチ?」 「ワタシ、チビテチ」 「チビちゃんは野良実装テチ?」 「チュゥ、野良みたいだけど野良じゃないテチ」 「じゃあチビちゃんもお外のことは知らないテチね」 外の世界について聞こうと思っていたミドリは落胆。 賢いと行ってもやはり仔実装である。 「テチ! お外ならいつもいるテチ」 「テチュ♪ テチュー!」 ミドリは頬を赤らめて窓に張り付いた。 そして、塀の外のことや野良の仲間について、 いくつもいくつも気になることをチビに聞いた。 チビも遊び盛りの仔実装なので同世代のミドリの質問に快く答えていた。 「おいお前!」 「デスッ!?」 ハウスで荷造り中の野良実装は突如呼びかけられて驚く。 呼びかけたのはガリだ。 「どうしてこの公園はこんなに実装石が少ないデス?」 「あ、あなたも渡って来たデス?」 「そんなことはどうでもいいデス。何があったデスか?」 「ずっと前に駆除があったデス。そしてまた駆除されるデス」 野良実装はプイと振り返って作業に戻る。 襲われるのを心配しないほど急いでいた。 「なんだってお前にそんなことがわかるデス」 ガリの疑問は尽きない。 「アイツはここにもやってくるんデス! アイツが来たらアイツの意地悪が全部私たちのせいになるんデス!」 この野良実装、アドゴニーという元飼い実装だ。 別の公園に捨てられたのだが、ある危機を前にしてこの公園に渡り逃げてきた。 しかし、この公園も安住の地ではなかった。 アドゴニーは今、再度の渡りの準備をしている最中だった。 「アイツっていうのは一体誰デス!」 「化け物デス! あそこのゴミ屋敷に住んでる化け物デスゥ!」 アドゴニーは公園から少し離れたボロ小屋を指差した。 「「チププププ!」」 ミドリとチビは窓を隔てて遊んでいた。 逆立ちやバク転といった実装石らしからぬ技を披露するチビ。 「チビちゃんは凄いテチ。ワタシなんて後ろ向いたら転んじゃうテチ」 「チププ! ワタシは特別なんテチィ!」 片手逆立ちで自慢げにホッピングするチビ。 「チビちゃんにお菓子あげたいけどワタシじゃ窓開けられないテチ……」 「残念テチィ」 そんな愛護派好みの仲良しな光景に目を緩ませる石影が隣のアパートにあった。 アパートの手すりに寄りかかってチビ達を覗き見るのは何者か。 緑色のボロキレを着た実装石。 いや、近くでよく見れば目の色から実蒼石だとわかる。 「ボキャアアアァ!」 手すりを蹴って実蒼石はベランダに向かって飛び降りた。 「ヂィイイ!」 ドンッと砂埃を巻き上げて現れた実蒼石を見て盛大にパンコンするミドリ。 「デチ! なんテチお前……」 チビは言い終わる前に気絶してしまう。 実蒼石に鋏で切られたのだ。 「ボキュキュ、汚い野良に用はないボク」 チビの胴体を蹴り飛ばすと、実蒼石はミドリのいるリビングを睨んだ。 「ボキャキャキャキャ!!」 大きな鋏を両手で振り回して滅茶苦茶に窓ガラスを叩く。 ガンガンと音をたてているうちにヒビが入ると、崩れるように穴が開いた。 「チャァァァ!!」 ミドリは血涙を流しながらリビングから逃げる。 しかし、階段を上って二階に行くこともできず、 ドアを開けて玄関から外に行くこともできない。 ただただ廊下でくるくると回って右往左往するしかなかった。 「ママァーー!! ご主人様ァーー!! テピィィィ!!」 ミドリは腰を振ってピョンピョンと跳ねながら助けを求める。 そうしていると足が滑って転び、尻餅したパンコンパンツから緑の糞が溢れ出た。 「おっとっとボク」 さらに転んで全身糞まみれになりそうなミドリを実蒼石が捕らえる。 「綺麗な上半身だけ食べるボク。 汚い所は後で洗ってお土産にするボク」 実蒼石はニンマリと笑うとミドリの服を破き始めた。 「ダメテチィ! ワタシのお洋服破いちゃダメテチー!」 「もっと泣くボクー!」 首を振って涙を散らすミドリ。 裸にされると次は後ろ髪をガッシリ掴まれ思い切り引っ張られた。 「ヂィィィ!! 抜けちゃうテチィ!!」 ミドリは実蒼石の腕に抱かれて下向きになっている。 後ろ髪は根元から掴まれて上向きに引っ張られている。 毛の生える方向と逆向きに引っ張られたせいで髪は肉片ごと削げ落ちた。 「チャアアアアン!! なくなっちゃったテチー! ワタシの髪返してテチー!」 必死で実蒼石の腕を噛んだり叩いたが、布越しなので効き目が無い。 このボロキレには何匹もの飼い実装の血と唾液が染み込んでいた。 ---- by 赤いサクブス

| 1 Re: Name:匿名石 2014/09/10-21:30:40 No:00001315[申告] |
| 実際、妖怪人間にありそうな話だなぁ
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| 2 Re: Name:匿名石 2014/09/25-22:45:15 No:00001381[申告] |
| >三匹はいつか人化できる日を夢見て
ここで笑ってしまった ネタバラシは最後にしてくれ |