タイトル:【カオス/エ】実装息仔 2/3
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:573 レス数:0
初投稿日時:2014/08/15-16:44:23修正日時:2014/08/16-09:50:13
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実装息仔 2


 第五区分実験用仔実装……「個体識別ID:M14381」は、実装石特殊研究所・三戸班
による実験を経て、人間と良く似た外観を持つ存在「人化実装」へと変態した。

 しかし、M14381の姿は同研究班主任・ローザ三隅の外観を写し取ったもので、
その上なぜか男性器まで備えていた。

 所内最高の美貌と呼ばれるローザの姿を手に入れたM14381は、とても不思議な魅力
で人間を魅了する。
 「彼」にモカという愛称を付けた一般研究所員・稔明は、その妖艶な魅力に惹き
つけられそうになった——
 四谷所長の説明は、稔明にとって理解し難いものだった。
 説明を受けている最中、何度もモカの収まっている籠状透明ケースに視線を泳がせて
しまう。
 目線が会う度に、モカは柵の向こうから微笑んで手を振ってくる。
 その度に、稔明の口元は無意識に歪んでしまう。


 モカが特殊器官付実装個体の幼生、すなわち「マラ実装」だと判明したのは、実験
開始の数時間後だった。
 本来であれば大変凶暴・攻撃的な性質を持つマラ実装は、ごく稀に大変高い知性と
理性を備えていることがあり、通常個体の数十倍ともいわれる性欲をきちんと制御
できる。
 一説には、コミュニティ内での排他対象とならぬよう、生活に則するための適応
能力の一つとされているが、モカもそれと同様の存在だった可能性が高い。
 実験開始前は男性器状器官が異常なほど小さく、ほとんど視認不可能な状態だった
ため、実際は機能不全だったとも考えられた。
 しかし、実験を経て人間の外観になった際、この男性器状器官は成熟し、普通の
男性並の大きさと機能を得るに至ったという。
 しかも、実装石なら必ず持つ総排泄孔に相当する器官がなくなり、現在は肛門のみ
が付属している。
 つまりモカは、その中身こそ実装石だが、見た目は「限りなく女性に近い容姿を
持つ美少年」として生まれ変わったのである。


「——というわけだ。
 だがM14381は、さっき君がされたように、何人もの研究員を誘惑しようとしている」

「ゆうわ……そ、それって?」

 所長の言葉に、稔明は反射的に質問を返す。
 なんとなく、次に続く言葉の予想はついたが、それを信じたくはない。
 稔明は、先ほどあと僅かでモカとくちづけを交わしそうになった事を思い返し、
身震いした。

「わからん。
 ただ、M14381に見つめられると、なぜかフラフラと引き寄せられるようだ」

「ひょっとして、他にも誰か……」

 稔明の呟きに、所長は無言で頷く。
 横目でケースを見ると、モカはじっと稔明の横顔を見詰めている。
 その股間は、相変わらず大きく膨らんだままだ。

「てちぃ〜、てっちぃ〜♪」

 つまらなそうにペタンと座り込んだモカは、しばらく小首を傾げて稔明を見つめて
いたが、やがてゆっくりと両足を開き始める。
 剥き出しになったペニスをそっと右手で包み、指先できゅっと摘む。
 そして、わざと見せ付けるように、ゆっくりと、ゆっくりと性器全体をさすり始めた。

「んんっ……んっ、は、あぁん♪」

 艶かしい声と吐息が、稔明の視線を再び釘付けにする。
 
「んんんっ……あんっ、あぁ……て、ちぃぃ……!」

 頬を赤らめ、激しく身をよじりながら、モカは自分自身を愛撫し続ける。
 明らかに、稔明に見せるために。
 後方に上体を倒し、更に大きく股を開いて、玉袋から蟻の戸渡り、アヌスまで
露出させて誘惑する。
 細く、白く柔らかで美しい身体は、それが男の子のものであるなしに関係なく、
問答無用で稔明の視線を惹き付けてしまう。
 いつしか、所長すらも言葉を止め、喉を鳴らしながら見入っていた。

「んっ、んんっ……うんっっ! は、あぁん♪」

 竿をいやらしくしごき上げる指先には、大量の先走り汁が絡み付いている。
 ローションを塗ったかのようにぬめるになった無毛のペニスは、まるで陶器で
形作られた芸術品のようにすら感じられる。
 稔明は無意識にケースへと歩み寄り、モカの隠微なオナニーを鑑賞し始める。
 背後で、誰かが何か呼びかけているようだったが、稔明の耳には届いていない。

 気がつくと、モカは立ち上がり、柵の隙間から勃起したペニスを突き出し、稔明
の眼前に晒していた。

「てちぃ♪」

 ぬめぬめと妖しい輝きを放つ小さな亀頭を間近で見せつけられ、稔明はなぜか
ゴクリと喉を鳴らした。
 いくら絶世の美少年とはいえ、他人の男性器を間近で見て欲情してしまうなんて、
ノーマルな稔明にとってありえないことだった。
 だが、モカの放つ何とも表現し難い雰囲気や色気、そしてどことなく甘い香りが、
そういった正常な感覚をどんどん狂わせて行く。
 稔明は、自分が異常な行動に出ようとしている事を理解しつつも、それをまったく
抑制出来なくなっていた。
 少し皮を被った子供のようなそれは、鈴口から大量の涎を垂らし、柵の一部を
トロトロに濡らしている。
 静かに指で摘んでみると、一瞬ピクンと痙攣した。
 熱く、柔らかく、それでいて芯は固い。
 稔明は、指で先端の皮を少し捲ると、指先でクリクリと先っぽをしごいてみる。
 すると、みるみるうちにカウパー液が零れ始めた。

「んぅぅっ! んあっ、あっ! あ……ああぁぁぁ……」

 薄目を開けながら、モカは懇願するような態度で稔明を見下ろす。
 稔明のささやかな愛撫に、達しそうになっているようだ。
 身体全体がぶるぶる震え、膝がカクカク小刻みに動いている。
 稔明の手の平全体を濡らすほど「お漏らし」してしまったそれは、ひときわ大きく
膨らみ、まるで指を跳ね除けるように弾む。
 再び唾を呑み込んだ稔明は、顔を寄せ、口を開いて「それ」に舌を伸ばそうとした——

「そこまでだ!」

 と突然、再びぐいっと大きく後方に引かれる。
 ハッと意識が戻った次の瞬間、先ほどまで稔明が屈んでいた位置に……

「んああぁぁっ!!」

 どくんっ! どくっ、どくっ……ぽたたっ

 モカの吹き出した大量の白濁液が降りかかった。
 その一部は、後退した稔明のズボンの裾にまで届く。
 妙に記憶に引っかかる独特のカルキ臭が、周囲に漂う。
 両肩をガクガク揺さぶられ、稔明は、再び正常な思考を取り戻した。

「あ、お、俺は何を…?!」

「言ってる傍から、魅了されたな。
 そう、あれが我々を悩ませている問題なのだよ」

「あ、あいつって、いったい?」

「どうやら、マラ実装の異常性欲を発揮しているようだ。
 だが、半女性化しているせいなのか、若干方向性が違うらしい」

「方向性と、いうと?」

「あいつはどういうわけか、人間の男性の精液を求めるのだ。マラ実装の癖にな」

「精え……えぇぇっ?!」

 所長によると、既に監視中に「ヌかれた」者が数名いるらしい。
 しかも、本人の性嗜好に関わらず、モカは誰でも引き寄せてしまうのだ。
 不思議なことに、その効果は女性には向けられず、必ず男性のみがターゲットと
される。
 先ほどこの部屋に居た生気の失せた者達や、なんとなく漂っていた独特の臭いの
意味が、これでようやく繋がった。
 稔明も、彼等と同じような目に遭わされるところだったのだ。
 もし、所長がいなかったら——と考えた途端、背筋がゾクッとした。

「あれの誘惑は、もはや魔性だ。
 同性愛に関心がないものでも、問答無用に引き寄せる力がある。
 長時間同じ所にいるのは危険だ」

「な、なんとかならないのですか? 薬品か何かで性欲を減退させるとか、去勢
手術するとか」

「そ、それはな……ちょっと色々あって、難しいのだ」

 確かに危険ではあるが、大変貴重な実験例のためなるべく今の生態を維持させたい…
と、所長は説明を加える。
 その意見に一応の理解を示す稔明だったが、どこかすっきりしないものが残った。
 とはいえ、所長や三戸班が困惑する事情は心底納得出来たので、稔明はしばらく
考えた後、諦めてモカを巡るすべての出来事を告白することにした。
 規約違反の処分が怖くはあったが、それどころじゃないという正義感の方が勝った
のだ。
 モカの名前を付けたこと、それまで特別に親しくしていたこと、洗いざらい……
 だが意外にも、所長は怒りはせず、むしろ深く頷き「なるほどなぁ」と呟いた。

「それだけではあの姿になった理由には足りないだろうが、興味深いポイントでは
あるな」

「そういうものなんでしょうか?」

「実装石の変態は、いまだ未知数な部分が多い。他にも私達が気付いてない要因が
あるのかもしれんよ」

「はあ…」

 どうやら厳罰処分はないだと安心する稔明を、所長はじっと見つめ、どこか申し訳
なさそうに呟き出した。

「すまんが、君を明日付けで、三戸班に異動させたいと思う」

「は、はぁ?!」

「何、業務は単純だ。ここでM14381…いや、もうモカで良いかな。彼の管理をして
くれれば良い」

「お…わ、私がですか?!」

「そう。適任だと思うが」

「って、さっき“傍にいたら危険だ”っておっしゃいませんでしたか?」

「一応昇格扱いだから、給与は上がる。悪い条件じゃないと思うがね?」

「ぐぅ……」

 横目でモカを見ながら、稔明はしばし考えた。
 モカは、相変わらずケースの中でオナニーを続けているようだ。
 甘ったるい喘ぎ声が、途切れなく耳を刺激する。
 こんな特殊な実装石をどうやって管理するのか、仔実装しか面倒を見たことがない
自分に勤まるのかと、様々な不安が交錯する。

「モカは、君を特に気に入ってるだろう? ならば他の者よりも被害は少なく
済むんじゃないかな」

「さっき、思い切り誘惑されてしまいましたが」

「君はモカを躾けていたんだろう? 構わないから改めてしっかり躾けてくれたまえ」

「はあ、ですが……」

「技術的なことなら何も心配ない。ただここでアレを見ていればいい。
 異常が起きたら内線で誰かを呼べばそれで良い。
 要は、三戸班の研究の邪魔さえせず、モカが必要になるまでここに隔離していれば
いいのだよ。
 ——簡単だろう?」

「はあ」

 “モカが必要になるまで”という件に、何か妙に引っかかるものを感じる。
 それが顔に出てしまったのか、所長の言葉がやや高圧的な口調に変化した。

「それとも、実験用個体をあのようにしてしまった責任を取るつもりかね?」

 明らかに即決を求める態度に、気圧された稔明はつい頷きを返してしまった。
 つい無意識に、反射的に——
 すぐに「しまった!」と思い返したが、時既に遅し。
 所長は、笑顔で手を打った。

「そうかわかった。ありがとう、君なら引き受けてくれると思ったよ!」

「え、えっ?!」

「よし、今日はもう戻りたまえ。明日は直接私のところへ来るようにな。引継ぎ
頼んだぞ」

「え、あ! ち、ちょっ……引継ぎって、待ってくださいぃっ!!」

 なし崩しに新しい業務を与えられ、呆然とその場に立ち尽くす。
 まるで逃げるように部屋を出て行く所長の背を見送った後、稔明は不安げに
モカへと振り返った。
 いつの間にかオナニーを止めていたモカは、二人きりになったのを確認すると、
嬉しそうに柵から指を伸ばした。
 勃起は、まだ収まっていない。

「てちぃっ♪ てちぃ、てちぃ!」

 満面の笑みを浮かべ、モカはまるで抱っこをせがむように両手を広げる。
 柵の隙間から覗く白い肌が、妙に艶かしい。
 稔明は、途方に暮れながら周囲を見回し、明日からの立ち回り方を脳内で模索する。
 ふと、自分自身もズボンの中で怒張していることに、今更ながら気付いた。

「な、な…!」

「てちぃ♪ クスクス…」

 前屈みになる稔明の仕草に、モカが嘲笑を漏らす。

「わ、笑うなよっ! って、えっ?」

 赤面しながらケースの方を睨むと、何やらモカが手招きしている。
 『ちょっと来て』という感じの、特に他意の感じられない仕草だ。
 そのあまりにも自然なジャスチャーに、稔明はつい警戒心を解きケースへと近づいて
しまった。

 稔明がケースの脇に来ると、モカは膝立ち姿勢になり、柵の隙間に顔を近づける。
 そして、指で稔明の股間を指し示した。
 大きく開かれた口から、べろんと舌が伸ばされる。

「ん———…♪」

「んな?! お、おま…!!」

「てちー」

「ま、まさか」

「んー、んー、てっちぃ…」

 『早くしてよ』とでも言いたげな表情で、モカが稔明を見上げる。
 明らかに、フェラチオによる奉仕を懇願している仕草だ。
 見たところ、この柵の隙間ならナニは余裕で通り抜けられそうだ。
 柵の向こうでは、飽きもせず股間を膨らませたモカが、稔明の「来訪」を待ち続けて
いた。
 稔明の脳内に、所長との会話がリフレインする……

「ん〜…」

 伸ばした舌が、いやらしくうねる。
 まるで、見えないペニスをしゃぶっているかのように、巧みに、淫靡に。
 それは、見ているだけで背筋がぞくぞくする蠢きだ。
 もし、そこに自分自身を押し込んだら、さぞや凄い快感が味わえるだろう。
 そんな確信が芽生える。
 稔明は、ベルトのバックルを外しチャックを下ろすと、ズボンの端に手をかけた。

 そうだ、さっきこの部屋に居た奴らも、こいつにタップリ抜いてもらったんだ……
 だったら、俺がしてもらったって大差ないだろう……

 だんだん理性が麻痺してきた稔明は、既に限界まで張り詰めている自分自身を露出
させ、柵に歩み寄る。
 それを見たモカが、頬を赤らめ『キャッ♪』と声を上げて喜んだ。
 柵の隙間に、充血したペニスを差し込む。
 と同時に、モカの温かな舌と唇が、先端部に絡みつく。
 ちゅぅぅっ……と音を立て、モカはいきなりカウパー液の吸出しにかかった。
 鈍痒いような独特の感覚が、ぞわぞわと背筋を這い上がっていく。

 とその時、稔明の脳裏に、なぜか仔実装時代のモカの姿が浮かび上がった。



 テチィィ……



「うわわっ!!」

 慌てて身を引き、ズボンを上げる。
 額に大汗を垂らしながら、稔明は必死の思いで柵から遠ざかった。
 これから本格的にペニスを呑み込もうとしていたモカは、何が起きたのか理解
出来ず、口をあんぐり開けたまま硬直していた。 

「てぇぇ?」

「あ、あ、危なかった! こ、こらモカ! いい加減にしなさいっ!!」

 初めて、モカを怒鳴りつける。
 あまり他者に向かって怒った経験がないため、今ひとつ迫力不足ではあったが、
それでもモカはびくっと身を縮め恐れの表情を浮かべた。

「いいかい、こんな事はしちゃだめなんだぞ。もっと自分を大切に……って、
なんか違うな」

「てぇぇ?」

「えっとな、若い頃にこういう事ばかりしていると、やがて価値観が狂ってな、
結婚した後に……ってこれも違うか」

「?」

「と、とにかくな。もう少し自制しなさい! って自制ってわかるか?」

「フルフル」

「我慢しなさい、お預けってこと」

「て、てちゃぁぁぁっ!!」

「じゃないと、もう遊んでやらないぞ!」

「んー? んふふ♪ てちぃー?」

「え、あ、遊ぶって、そういう意味じゃなくて……」

 小首を傾げ、指を口元に当てながら上目遣いで見つめてくる。
 その仕草が妙に色っぽく、可愛らしく、再び稔明のリビドーを刺激する。
 ややネコ目気味のモカの眼差しは、まるで「その気になったら、いつでも遊んでね♪」
と言いたげな雰囲気を湛えている。
 稔明は、ゴクリと生唾を飲み込んだ後、激しい罪悪感に包まれた。


            ※          ※         ※


 翌日から、稔明の仕事はがらりと変わり、とても退屈なものとなった。
 だが代わりに、相当の忍耐力を求められるようになり、結果的に精神的負担は増加
した。

 主な業務は、ケース内のモカの体調管理と生活維持、そして監視。
 日に二回ケースから出してやり、一度は貸し与えられた機器を用いた身体検査、
もう一度は入浴による身体洗浄。
 勿論、後者は稔明がしてやらなければならない。
 頭巾以外の衣服を持たないモカは常に全裸で、そのため大変に目の毒となる。
 なまじ女性的なラインが多い上、顔がローザそのものだから、直視していると
大変精神衛生上よろしくない。
 また、稔明の傍に居るとモカのペニスは常時臨戦態勢で、時には大量のカウパー
を吹き出す。
 更に、下半身を洗ってやっていると、勃起したものを口元に近づけようとしたり、
どさくさ紛れに腕や脚にこすりつけようとする。
 三日に一度くらいのペースで、稔明の白衣はモカに汚された。
 
 しかし、モカは基本的には稔明に大変従順で、身体検査の時は素直に指示に従い、
特にこれといった揉め事は起こさない。
 CTスキャンの台に寝かせたり、脈拍を測定したり、数回に一度レントゲンを
撮ったり、その間は実におとなしい。
 当然、この間はおかしな誘惑はまったくなく、稔明も冷静に業務に当たることが
出来た。

 稔明が業務を終え、帰宅しようとし始めると、モカはその気配を悟るのか不機嫌
そうな態度を取り始める。
 そして、この時は露骨な誘惑を行ってくるようになった。
 とても甘えた声で稔明を呼び止め、身体を開いて注目させる。
 妖艶な流し目で視線を絡め、ケースの柵越しに性器を触らせようとする。
 それでも応じないと、頬をいっぱいに膨らませて子供のようにダダをこねる。
 色々と気を遣って疲労し切っている稔明は、そんなモカの頭を軽く撫で、
「また明日会えるよ」と慰めてやる。
 こうして落ち着いた頃合を見計らい、逃げるように退出・帰宅する。
 
 そんな日々が一週間も続いた頃、稔明は再び所長に呼び出された。


 所長室に招かれた稔明は、あの日同様緊張した面持ちで、所長の言葉を待った。

「どうかね、モカの様子は?」

「は、はい。ご報告の通り、これといって問題は出ていません」

「そうかね。
 君の送ってくるデータを確認したんだが、どうやら身体構造的にはほぼ完全に
人間の少年期で固定しているようだ。
 変態後の身体組織の崩壊や精神異常はないみたいだし、まさに理想的だ」

「はい、それでいつまでモカをあのままに?」

 稔明の何気ない質問に、所長は一瞬眉をひそめる。

「うむ、それなんだが。
 少し事情が変わってね」

「と、いいますと?」

「今日から、モカを檻のケースから出して、個室を与える」

 所長の言葉に、今度は稔明の眉が動いた。

「はあ? あのおてんばを開放するんですか?」

「そうだ、勿論これまで通り監視はするがね」

「ご指示であればそうしますが、しかしどうして?」

「君は知らなくても良いことだ。ただ、これも実験の一環なんだよ」

 所長にそう言われてしまっては、どうしようもない。
 稔明は不安と疑問を抱きながらも話を受け入れ、以後はモカ専属の世話係として
この“新しい実験”とやらに付き合うこととなった。


            ※          ※         ※


 その日の午後には、モカは住み慣れたケースから出され、別エリアに作られた個室
へと移された。
 そこは、ちょっとした人間用の小部屋そのもので、八畳程度の広さのフローリング
に白い壁紙が張られ、本が沢山詰められた本棚や小さなテーブルが備えられ、部屋の
角には狭いながらもしっかりとしたユニットバスまで設けられている。
 だが一番目を引くのは、中央に置かれた大きな天蓋付きベッドだ。
 所謂、どこかのお嬢様が使用するような、かなり高価そうなシロモノ。
 それが、どこか殺風景な個室の中でひときわ異彩を放っている。
 しかも、それはどう見てもダブルサイズほどはあり、一人で使用するには大きすぎる。
 その気になれば、四人くらい中に入れそうに見える。

 そんな部屋にモカを放ち、稔明は外の部屋から中を監視する業務を命じられた。
 室内の監視カメラは本棚の一角に一つ備え付けられているだけで、しかも切り替え
がない。
 この角度からだと、ベッドのカーテンを閉められたら中の様子はわからない難点も
あった。
 加えて、音声はまったく伝わらない。
 これでは、中でトラブルがあっても対応し切れないではないか。
 稔明は、そんなせこい設備から映し出されるモカの様子を、じっと見ているだけだ。
 これなら、以前の方がまだ仕事をしている実感があると、稔明は憂鬱なため息を
吐いた。

 別な所員が、室内にモカを案内する。
 だが、その姿をモニター越しに見た稔明は、壮絶に吹いた。
 嬉しそうにクルクル回るモカが身に纏っているのは、明らかにベビードールだった。
 すなわち、薄地で露出過多な就寝着。
 倦怠期に入った夫婦が、その気を出すために利用する、所謂エロ着だ。
 薄いグリーンで、前面部が大きく開かれ下着とそこからはみ出したペニスが丸見え
になった実に恥ずかしい格好だが、なぜかモカはとても気に入っているようで、案内
した所員を抱きしめると、ぶちゅうと一発かました。
 そのままベッドへ誘導し、二人で倒れこむ。
 馬乗りにされ“襲われ始めた”所員を見て、稔明は慌てて部屋を飛び出した。

 個室のドアの前に行くと、なぜか見知らぬ所員が二人立っており、稔明を睨みつけて
きた。

「あー、ご苦労さん。戻っていいぞ」

「はあ? あの、今中で……」

「いいんだよ、わかってるから」

「し、しかし! あいつに誘惑されたら……」

「だからあ、わかってるんだって。いいから持ち場に戻れよ」

 所員達は、稔明の行く手を塞ぐように立ちはだかり、部屋に入れようとしない。
 室内からは何の音も声もしてこないが、どのような展開になっているか想像に難く
ない。
 稔明は所員達に軽く頭を下げると、再び待機場所に戻った。

 ——カメラの向こうでは、さっきの所員がベッドの上でモカを背後から犯していた。

「ど、どうなってるんだ、これ?」

 驚いて画面を凝視していると、今度はさっきの所員達が入り込んできた。
 ベッドの脇に立ち、しばらくニヤニヤ笑いながら二人のプレイを見つめていたが、
やがて全員服を脱ぎ出してベッドに上がった。
 カーテンを閉められたため、もう中の様子はわからない。
 だが、所員三人がモカを輪姦しているだろうことは明白だ。
 カーテンの向こうでうっすらと写る影は、複数が折り重なりよくわからなくなった。

「なんなんだこれ? まさかあいつら、最初からモカを?」

 もう一度部屋に向かってみるが、防音設備が完璧なのか、中からの音は一切漏れて
こない。
 ドアには内側からしっかり鍵が掛けられている為、入り込む事は出来そうにない。
 なぜか焦りを覚え始めた稔明は、所員達が出てくるまでドアの脇で待機することに
した。

 小一時間ほど経ってから、三人の所員達はすっきりした顔でぞろぞろと部屋から
出てきた。
 彼らは稔明の姿を見て一瞬ギョッとしたが、すぐに笑顔を浮かべた。

「よぉ、順番待ってたのか? いいぞ代わってやるよ」

「あいつ、まだ物足りなさそうだったから、もう少し飲ませてやれよ。ケヒヒ」

「しっかし、あの子すげぇなあ。ヘタな女よりよっぽど遊べるよ♪」

「また明日ヤりに来ようぜ」

 所員達が出てくるまでは言ってやりたいことが沢山あったが、稔明はなぜか何も
言えずに三人の背中を見送った。
 部屋の中に入ると、少し強い芳香剤の香りが飛び込んでくる。
 ベッドの中央では、色っぽいベビードールを身に纏ったモカが、うっとりした表情
で寝転がっていた。
 あの美しい髪は乱れ、白い肌は熱っぽく高揚し、開かれた胸では乳首が痛々しい
ほどに大きく腫れている。
 全身は汗と多量の精液にまみれ、一部は顔や髪にまでかかっている。
 特に、口元には濃厚なザーメンがぶっかけられており、モカは舌を伸ばしてそれを
舐め取ろうとしている。
 徹底的に汚されているにも関わらず、ペニスはいまだに固さを維持しており、
先端は大量のカウパーで濡れている。
 腹の辺りにも大量の白濁液が零れているところから、モカ自身相当の回数射精した
ことがわかる。
 そして、尻の周りのカバーは大きく濡れており、明らかに精液とわかる粘着物も
確認出来た。
 モカが三人がかりで好き勝手に輪姦されたのは、明白だ。

 ぴちゃ…ぺちゃ……

「てぇ……てちゅうぅん……♪」

 疲労しきってはいたが、モカは明らかに悦楽の表情を浮かべていた。
 目を閉じ、頬を真っ赤に染めながら、しきりに舌を伸ばして顔に付いた精液を舐めて
いる。
 稔明にはまだ気付いてないようで、完全に自己陶酔状態のようだ。
 そのあまりにも酷い状態に焦燥感を覚え始めた稔明は、まずモカを抱き起こし、
身体を洗い流すことにした。

「——おいおい、どこ連れていくんだよ」

 背後から、聞き覚えのない声が響いてきたのは、ユニットバスの扉を開こうとした
時だった。
 部屋の入り口には、先ほどとは違う年配の所員が三人佇んで、こちらを睨みつけて
いた。

「あ、貴方達も、まさか?」

 恐る恐る尋ねると、年配の所員達は何かに気付いた様子で、頭を掻いた。

「あー、そうかあんたそいつを洗おうとしてたのか、こりゃすまんね」

「?」

「でも、いいよ面倒だろう。こっちも時間がないから、そのままにしといてくれ」

「は、はぁ?!」

「ほらほら、監視係は出て行った」

 一人がモカを奪い取り、もう一人が稔明の背を押して部屋から追い出した。
 振り返ろうとしたその鼻先で、ドアが強く閉じられ鍵がかけられる。
 何がなんだかわからない稔明は、再び監視モニターの画面を覗いた。

 ——そこでは、さっきと同じく、モカを中心としたおぞましい4Pが展開していた。

 今度は、カーテンが閉じられていないので様子がよくわかる。
 禿頭の所員がモカの顔の上に乗り、股間を押し付けている。
 ビール腹の所員が、モカの足を持ち上げ尻中に滑り込む。
 もう一人のバーコード頭の痩せた所員は、モカの手に一物を握らせ、恍惚の表情を
浮かべている。
 口、肛門、手で同時に三人への奉仕を強要されながらも、モカは暴れる様子も逃れる
様子もなく、なすがままにされていた。
 顔の上に乗った禿頭は、すぐに場を開けてベッドから降りる。
 大きく口を開けたままのモカの顔には、先ほど以上にべっとりとまとわり付いた
白濁液が確認出来る。
 やがて、バーコード頭の男性が達し、モカの顔に精液をぶっかけた。
 とほぼ同時に、尻穴を犯していたビール腹が、全身を激しく痙攣させる。
 十分も経たないうちに終わってしまった三人は、いまだ立ち上がろうとしないモカを
ジロジロ眺め回し、今度は無理矢理立ち上がらせて四つんばいの姿勢にさせた。
 バーコード頭の男が、モカのアヌスに挿入し、見た目からは想像もできないほど
激しく腰を振る。
 先ほど口に射精した禿頭は、再びモカの顔の前に股間を晒し、更なるフェラチオを
強要する。
 もう一人のビール腹はユニットバスへと向かい、戻ってきてからはバーコード頭と
交代して再び尻を犯す。
 そんな流れで三十分ほど狂宴を堪能した三人は、最後にモカの口を開かせ、その中
に次々に精液を注ぎこんだ。
 もはや、表情すらまともに見えなくなったモカは、射精し終えた男達のペニスを
順番に頬張り、お掃除フェラを丁寧に行なう。
 男達は、全身を震わせ快感に酔っているようだった。

 しばらく時間を置いた後、禿頭の男が意識を取り戻したモカを連れてユニットバス
へと向かった。
 残った二人は何やら楽しげに談笑していたが、身体を流して戻って来ると、再び
ポジションを決める相談をし始めた。

 モカをベッドに横たわらせ、禿頭が背後から乳首を弄ぶ。
 ビール腹はモカの両足を大きく開かせ、股間に顔を埋めている。
 バーコード頭は、その脇からモカの脚を舐めているようだ。
 三人から敏感な部分を集中的に攻め立てられ、モカは何度も身体をビクビク震わせた。
 たまに、ビール腹の顔の脇を飛沫らしきものが飛び散っていったが、男は慌てて口に
含み直した。

 二回ほどポジションを交代した三人は、隅々までモカの身体を堪能し、嬉しそうに
部屋を退出していった。
 一部始終を見ていた稔明は、なぜかとても腹立たしい思いに駆られながらも、
無意識に股間を手で愛撫していた。
 ズボンの中で、大量に先走り汁が零れている実感がある。
 だが稔明は、最後の一線を必死で守り通し、オナニーだけはしなかった。


 その日は更に二組の所員が部屋を訪れ、まるで決まり事であるかのようにモカを
輪姦し、精液を搾り出し、搾り取って退出していった。
 相当な身体酷使を強いられたモカだったが、さすがに疲れを見せてはいたものの
最後までプレイを続け、参加者全員を満足させた。
 何も事情を伝えられていない稔明は、もはや研究員と話すことすらなく、ただ
ひたすら監視室に閉じこもり続けた。
 プレイ内容が監視出来たのは、結局あの年配所員達の時だけで、それ以外は天蓋の
向こうで揺れる影から様子を想像するしかなかった。
 
 結局、ただモニターを眺めているだけで何もしなかった稔明は、退出時間になった
ので、せめて最後にモカの様子を見に行こうとした。
 部屋の扉を開けて中に入ろうとしたところで、敏明は背後から所長に呼び止められた。

「お疲れ様。どうだったかね新部署は?」

「よくわかりません。なんなんですかアレは?」

「彼らは、ああ見えても仕事でやっているんだ。明日もまた来るよ」

「仕事?! 明日もって……それじゃあ、モカの身体が持ちませんよ!」

「それは問題ない。
 とにかく君は、監視を続けてくれたまえ。
 もし、ここに来る所員達が最中に異常を起こしたら、その時は頼むよ」

「か、監視って、モカのためにしているんじゃなかったんですか?!」

 稔明の質問に、所長は答えない。
 「とにかく今日は帰りたまえ」とだけ言い放つと、さっさと背を向けて遠ざかって
いく。
 取り残された稔明は室内に立ち入ろうとしたが、なぜか強い抵抗感を覚え、
そのまま扉を閉めてしまった。


            ※          ※         ※


 それから、更に一週間。
 来る日も来る日も、所員達によるモカの輪姦は続いた。
 しかも、日を追うごとに参加者が増えている。
 初日は4組だったが、今では日に7組以上に達する。
 しかも、中には一人だけで参加する者もいる。
 どこからこれだけ物好きな所員が集まってくるのか不思議でならなかったが、
かつて稔明に所長呼び出しを伝えた知人が参加したのを見て、妙に納得した。
 どうやら、自分の知らないところで大規模な募集が行なわれているようだ。
 稔明は、昼休みを利用して知人を捕まえ、追求した。

「お前、なんでモカにあんなことをしているんだ?!」

「な、なんだよ稔明! お前、顔が怖いぞ?!」

「いいから説明しろよ! 俺は何も聞かされてないんだ」

「え? あ、ああそうなのか? なんか無造作に選ばれてるらしいからな、
お前外れただけだろ?」

「無造作って……つうか、なんであんな事する必要があるんだよ!
 あんなに続けたら、あいつ死んじまうぞ?!」

「お、落ち着けって!」

 いつの間にか、稔明は知人の胸倉を掴み上げ、額に青筋を浮かべて迫っていた。
 諌められてようやく冷静さを取り戻した稔明に、知人は少し困った顔で告げた。

「俺が聞いた話だけどさ、あの子をレイプしろってのは三戸班のお偉いさんの指示
らしいんだよ。
 俺は、とにかく問答無用でヤってくれって言われたよ」

「!」

「お前も、やりたいんなら申請してみたらどうだ?
 噂だと、あぶれた何人かは自己申告してメンツに加えてもらったらしいぞ。
 あのすげー美人さんとそっくりな子とヤレるってんで、すごい人気あるみたいだな」

 そこまで聞いて、稔明は何も言わずその場から走り出した。
 背後で知人が何か呼びかけていたが、耳には入らない。
 所長室にたどり着くと、少し強めにノックをして、許可を得る前に入り込む。
 室内では、何かの書類を持った所長が驚いた顔でこちらを見つめていた。

「所長! モカへの虐待を止めるようにしてください!」

「やぶから棒になんだね?」

「あのまま続けられたら、モカは死んでしまいます!
 私は監視役なのに、あの子を助けてやることが出来ません!
 お願いします!!」

 深々と頭を下げて懇願する稔明を、所長はまるで奇異な物を見るような目で見つめた。

「助けるとは……君は、何か勘違いしてはいないか?」

「は?」

「あの行程は、様々な実験を兼ねて行なっているものだ。
 君の考えているようなものではない。
 心配しなくても良いんだよ」

「し、しかし! 一日中虐待されているだけでは……」

「では聞くが、当のモカはアレを嫌がっていたかね?」

「そ、それは」

 あれだけ輪姦されながらも、恍惚の表情を浮かべているモカを思い出し、稔明は
言葉に詰まった。
 所長は一度咳払いをすると、稔明にソファを勧めて落ち着くように促した。

「ところで、不思議に思わんかね。モカについて」

「もう、不思議なことばかりで何がなんだか」

「いや行動の事ではない、もっと根本的な……そう、物理的な疑問と言ってもいい」

「物理? どういうことですか?」

 所長の言葉を理解出来ず、稔明は首を傾げる。
 やっぱり、といった顔つきの所長は、片手で何かの大きさを示すようなサインを作る。

「君も知っての通り、仔実装時代のモカはせいぜい身長21センチ程度。
 私の親指の先から、真っ直ぐ伸ばした小指の先くらいの大きさだ」

「そうですが、それが何か?」

「だが今のモカは、やや小柄だが人間とほぼ同じ大きさになっている」

「はあ」

「その質量差は、いったい何でまかなったのかな?」

「まかな……って、えっ?!」

 所長の言葉で、稔明はようやく疑問点に気付いた。
 一瞬、背筋がぞくりとする。

「そ、そうだ。それじゃあおかしいですよ!」

「今のモカは、身長約150センチ。
 体型差を考慮しなければ、人間化により約343倍も大きくなったことになる。
 繭を構成する繊維や粘膜の質量まで加えれば実に約1000倍以上だ。
 とてもじゃないが、21センチ程度の身体が生み出せるような質量ではない」

「……」

 そこまで説明されて、稔明はようやく思い出した。
 かつてWEB上で実装石の人間化の噂が流れた際、真っ先に否定要素として挙げられた
のが「質量保存の法則に反する」という意見だった。
 物理法則上、たとえどんなことがあってもエネルギーは増減せず必ず残留する。
 水が液体から気体になっても、それは形状が変わっただけで質量自体は変化しない
のと同様、実装石も自身の体格・体重を超える膨張・巨大化は「餌などによって
更なるエネルギーを追加されない限り」起こりえない。
 しかし、現にモカは巨大化を成し遂げている。
 オリジナルの300倍以上に及ぶ質量を構成するエネルギーが必要な筈なのに、
それをまったく得ることなく……
 それは、この世界では絶対にありえない筈の事だ。
 あってはいけないのだ。
 稔明の背筋がぞっとしたのも、当然だった。

「残念ながら、今のモカの身体を形成する材料がどこから調達されたのかは、
我々にもわからない」

「そ、そうなんですか…」

「ただ、いくつかわかってることもあってな。それは——」

 所長は、更に説明を続ける。

 モカは、現在の身体に変態してから、偽石の活動が異常活発化していることが
検査により判明した。
 偽石の機能や存在意義は、未だに充分な結論が導き出されていないが、少なくとも
生命活動と緻密な関連を持っている事だけはわかっている。
 生命活動を続ける限り、偽石は特殊な信号と電波を発信し続けるが、現在のモカは
それらがいずれもかなり強力になっている。
 身体の肥大化に伴い、各部が成長したにも関わらず、モカの偽石は仔実装の時の
ままだ。
 いわば、軽自動車のエンジンでトラックを無理矢理動かしているようなものだという。

「そんな状態、まずいじゃないですか!」

「そうだ。
 これは我々の仮説だが、人化した実装石は、その身体を維持させるため、偽石に
相当な負担をかけていると考えられる。
 そのため、従来以上の活動エネルギーが必要になるはずだ」
 
 活動エネルギー、というところで、稔明の動きがはたと止まる。

「あれ? それってまさか」

「そのまさかだ——」

「マジですか?」

「マジだ」


            ※          ※         ※


 一時間後、稔明はまたいつもの部署に座り、モニター越しに部屋を監視していた。
 カーテンの向こうでは、モカが二人の若い所員に犯され続けている。
 今日は光の加減でカーテンが若干透け、影の動きが見て取れる。
 どうやら、一人が背後から、もう一人が口を犯しているらしい。
 時折組み合わせが分かり辛く、ともすればアクロバティックな形になることもあるが、
影は止まることなく激しく動き続けている。
 稔明は、ぼうっとした顔つきで、ただそれをじっと眺め続けているだけだ。

 モカが、何故あそこまで貪欲に男達を求めるのか、その理由は理解出来た。
 しかし、どうしても納得出来ないことがある。
 恐らく、それはもう二度と知る由はないだろうし、知ったところで稔明には何の関係
もない。
 だからこそ、稔明は自分がどうしたいのか、何をするべきなのかが分からず、ただ
呆然とし続けるしかなく、それがたまらなく歯がゆかった。

 何気なく開いた右手の平を眺め、稔明は、かつて可愛がっていた仔実装時代のモカ
の笑顔を思い浮かべた。


 人化したモカは、活発化した偽石のエネルギーを補うため、男性の精液を求める。
 つまり、本当の意味で吸精鬼——サキュバスとなってしまったのだ。
 否、この場合は「インキュバス」だろうか?

 モカは、口腔・肛門粘膜・直腸粘膜などから精液を吸収する能力を持ち、これに
より生命維持を行っていることは、人化を確認した翌日には判明していた。
 つまりモカは、何者かの精液を体内に取り入れたことで、これを栄養源と解釈して
しまった事になる。

 要するに、誰かが孵化直後にモカにイタズラをしたのだ。

 モカ本人が知覚で理解したのか、それとも身体が勝手にそう反応したのかは
わからないが、インプリンティング効果により、彼はもはや精液以外受け付けない
体質となった。
 モカを活かし続け、研究を継続させるためには、連日大量の精液を与えなければ
ならない。
 そうしなければ、異常な身体肥大を支える偽石が耐えられなくなり、彼は衰弱死
してしまうと所長は説明した。
 もし、モカが人化した直後、適切な栄養フードや食料が与えられていれば、
こんなことにはならなかった。
 だがこうなってしまった以上、モカが今後生き続けていくためには、延々と男性達
の玩具になり続けるしかない。

 稔明は、理屈では理解しているものの、それがどうしても納得出来なかった。
 たとえ見た目がローザ三隅と同じであっても、やはりあれは自分と仲が良かった
モカに違いない。


 更に数時間後、所員がいなくなった乱交部屋に立ち入った稔明は、ベッドの上で
ぐったりしているモカの身体を洗うため、バスルームへ運ぼうとした。
 ねっとりとした何かが、手や腕にまとわりつき、同時にすえた臭いが鼻を突き、
大変に気分が悪い。
 それでも仕事だから、やらなければならないのだが……

 稔明に上体を抱き起こされ、お姫様抱っこ状態にされたモカは、僅かに肩を上下
させている。
 容赦なく全身に降りかけられた白濁液と、それに汚されているモカの美肌が、妙に
痛々しく感じられた。
 身体を持ち上げようと力を込めた瞬間、突然、稔明はモカに抱きつかれた。
 そのまま、ベッドに引き倒される。

「うわっ! こ、こらぁっ!!」

「んふ♪ うふふふっ☆」

「モカ、やめなさい! ほら、早く身体を洗っ………っっ!!」

 稔明の唇が塞がれる。
 と同時に、熱い舌が捻じ込まれ、口腔内を滑るように動き回る。
 伸ばされた舌先は稔明の舌を即座に捕らえ、まるで蛇のように絡み付いていく。
 稔明の首に巻きついた細い腕は、離れない。

「……!! ……?!?!」

「——んっ♪」

「んぐ……っ?!」

「んふふふっ♪」

 妖艶な含み笑いが耳に届き、恥ずかしさと怒りがごちゃ混ぜになる。
 稔明は、いつの間にかモカに回り込まれ、上から押さえつけられる形になっていた。
 それだけ激しく動いたにも関わらず、二人の唇はまるで溶接されたかのように離れない。
 生まれて初めて体感する濃厚なキスに戸惑いながら、稔明は、自分が何をしようと
していたのか、少しずつ忘れ始めていた。

 モカの手がするすると伸び、稔明のパンツのファスナーを下ろす。
 次の瞬間、白い指先は隙間へと滑り込み、奥で硬直し始めている物を摘み上げた。

 きゅっ……

「んんんっ?!」

 ぞくっ、と鈍い快感が背筋を走り抜け、稔明は身を硬直させる。
 ディープキスを続けながら、モカは右手を巧みに動かし、稔明の竿、玉袋を指の腹で
撫ぜ上げていく。
 決して強くは握らず、あくまで表面をさするように。
 絶妙な加減が、稔明の身体に電流が流れるような刺激を加え続ける。
 稔明の鼻息が、どんどん荒くなっていった。

「ハア、ハア、ハア……あああっ?!」

「ウフフ♪」

 数分間たっぷりとキスを堪能したモカは、満足そうに顔を離すと、その視線を稔明の
下半身へと向ける。
 既に限界まで怒張した稔明のそれは、パンツの中で窮屈そうに脈動している。
 ペロリと舌なめずりをすると、モカは稔明にまたがり、股間へと顔を埋める。
 慣れた手つきで衣服からそれを解放すると、ためらうことなく口に含む。
 軽い呼吸困難で意識が朦朧としていた稔明は、突然股間を包み込んだ熱さと気持ち
よさに、ビクンと身体を痙攣させる。
 ふと気付くと、稔明の眼前には、美しく形の整ったモカのヒップと、その下から
ぶら下がる小振りなタマタマが晒されていた。
 見上げると、半開きになった薄ピンク色のアヌスが、身体の動きに連動するように
ピクピクと震えている。
 ぬめぬめとした液体に程よく濡れたそれら性器は、まるで稔明を魅了するように
艶かしく色付き、火照っている。
 無意識に舌を伸ばし、ぷくっと膨れた玉袋を含もうとした途端、稔明は強烈な刺激
を受け、悲鳴を上げた。

「んあっ!! が、は、あぁ……っっ?!」

 ぢゅぅっ………ちゅうぅぅぅぅっ!!

 始めは何かわからなかったが、すぐに刺激の原因が理解出来た。
 モカが、稔明のペニスを強く吸い、漏れていたカウパー液を搾り取っていたのだ。
 
 と同時に、稔明の喉元に温かなものが滴ってくる。
 稔明のペニスを頬張りながら、モカ自身も感じているようだった。
 
「んふっ、ふぅっ……てちゅ……んんっ……」

 じゅぷっ、ちゅぷっ、にゅぷっ、じゅぷっ……

 本格的なディープスロートに移行し、モカの上半身が小刻みに揺れる。
 その度に、稔明のペニスに未知の快楽が止め処なく押し寄せてくる。
 モカの口は、舌の動きだけでなく、上唇、舌唇、口腔全体、喉、扁桃腺すべてが
総動員で稔明自身を攻め立てる。
 時にはふんわりと包み込むように、時には強く締め付けるように、それでいて常に
舌先は最も感じる部分をピンポイントで突付き続けている。
 それは、これまで自分の手によるオナニーしか経験していなかった稔明にとって、
理解を遥かに超越したものだ。
 ネット上で、セックスの初心者が「フェラチオは思ったより気持ちよくない」と
感想を述べているのをよく目にするが、それは明らかな間違いなんだと確信する。
 モカの口は、舌は、喉は、気持ちよさの大小・強弱などという概念を遥かに超越した、
もはや例えようのないレベルの「領域」だった。
 稔明は、ようやくすべてを理解した。
 男達が、連日飽きることなくモカを求める理由は——これだ、と。

「ぅあぁ……だ、駄目……ダメだよ、も、モカ……っっ!!」

 ぢゅぷ………ぐぐっ……ずぽっ


 亀頭が狭い部分を通り抜け、壁のようなものに突き当たる。
 同時に根元が唇できゅっと締め付けられ、ぞわぞわした感覚が瞬時に身体の奥から
こみ上げてくる。
 それを察するかのように、モカの口全体がすぼまって、稔明のペニスと密着する。
 再び強いバキュームが行なわれたのと同時に、稔明は、限界に達した。


「で、出……は、はあぁぁぁぁぁぁぁぁあああっっ!!!!」

 ぢゅうぅぅぅぅ……っっ

 どくん! どくん、どくっ、どく、どくっ………

「んっ……♪」


 ごくっ、ごきゅっ…


 大量の精液を放出し、それを全て吸い尽くされながら、稔明は眩暈にも似た衝撃を
感じていた。
 瞼の裏が、激しく閃光を放っているようにすら感じられる。


 稔明の胸中には、今まで感じたことのない、ドス黒い感情がくすぶり始めていた。


            ※          ※         ※


【実装石の人化プロセスについて 最終まとめ 2】
               実装石特殊研究所・第十二科学生態研究班三戸班

 
 
3.身体変化2(変化の特徴)

変態を終えた実装石(以下、変化実装と仮呼称)最大の疑問点として、

 ・外観決定の経緯と要因
 ・身体形成の素材とエネルギーの確保
 ・新しい身体情報の把握性能

が挙げられる。
また同時に、これらは未だに解明されない謎が多く含まれている。


・外観決定の経緯と要因
変化実装のほとんどが人間型を取るが、何故人間のスタイルを模倣するのか、また
何故正確に人間の身体情報を得られるのか、具体的な理屈はわかっていない。
ただし、人間への依存度が高いとされる実装石が、それまでの育成段階で関わった
研究員やブリーダー等を、身体構造的・存在感的な意味で理想像と捉え、これを
参照し記憶している可能性は大変に高い。
これを裏付けるものとして、誕生直後から蛆実装を理想的な存在として誤認識させた
個体をコロニー化させるという実験を行ない、その結果、巨大な蛆実装に変態した
元・成体実装という変種も誕生させた。
同様の理屈で「親指実装化」「仔実装化」「巨大化(身体特徴は変わらず)」
「他の哺乳類動物化」等のサンプル例作成にも成功している。
一部実験には更なる追試が必要だが、現時点の理論としては、このように刷り込み
を行なうことで、ある程度の身体変化の調整が可能である。 

ただし不確定要素として、個体そのものの強い自我が影響を及ぼす例も報告されて
いる。
例えば、意図的に過度な虐待経験を与えた個体をコロニー化に導き、その際に
「ウサギ」を刷り込みに利用したところ、身長約2メートル・スチール製の扉を
蹴破り、拳銃の弾でも殺傷不可能なほど頑強な筋肉を持ち、大型狩猟犬をも噛み殺す
ほど強力な巨大兎型実装が誕生してしまい、研究設備に大きな損傷を与えた例がある
(2008年アメリカ・シドニー研究支部レポートより。同個体は塩酸ガス噴霧により屠殺)。
また、育成管理ケース内で実験直前まで別個体と激しい諍いを起こしていた個体が
変態したところ、生物ではなく大きなペンチ状の機器(仔実装個体を処分する時
ケースから取り除く際に用いる器具)を模した形状の生体になった例もある
(2007年三戸班内で確認。変化実装は孵化直後に自然死)。
このように、変態前の個体に強く刷り込まれたものが、感情や性質によって歪められ
具現化する可能性も示唆される。


もう一つの疑問として、「(変態後の)モデルの情報をどうやって把握するか」という
点がある。
実装石は、その身長・体格から受け取れる外部情報が大変限られ、例えば仔実装で
あれば手前で直立する成人男性の頭部はほとんど視認不可能となる筈で、全体形状の
把握すら困難となる。
にも関わらず、そのような状態下でも実装石は正しくモデルの外観情報を把握する
能力を持っている。
ほぼ同様の環境で育ち、同様の性質を持つ三体の個体を用意し、それぞれに人間を
理想像として刷り込みつつ「人間と直接顔を合わせない」「写真・雑誌でしか人間の
姿を見せない」「動画・映像でのみ人間の姿を見せる」という特殊な情報制限を
施したが、三体とも人間に酷似した外観への変態を遂げることに成功した。
また、特定の成人女性の外観をモデル像として刷り込み変態させた個体が、身長・
体重をはじめ胸囲・腹周り・腰周りサイズまで正確に再現したばかりでなく、モデル
の癖や個体の前では行なわなかった細かな癖、衣服下にのみ存在するシミの位置と
大きさまで正確に再現したという驚異的な例も確認されている
(2008年ドイツ・ハンブルグ研究支部レポートより)。

このように、実装石からは本来確認・視認出来ない筈の情報まで的確に収集し、それ
を高精度で再現する能力の存在は、疑いようのない事実であるといえる。


4.身体変化3(質量確保と維持)

変化実装は変態を遂げることにより大型化が可能だが、それらは明らかに本来の身体
の数倍〜数百倍もの質量を持っており、これら膨大な身体組織をどこから調達・構成
しているのかは現時点でも全く解明されていない。
しかし、変化実装はその形状・大きさに関係なく、身体内の偽石が従来以上の活発化
を促していることが確認されており、これらは膨張した身体維持による影響だと
考えられている。
偽石の機能・性能と実装石の身体に及ぼす影響範囲は未だ研究段階であり多くの謎を
秘めているが、変態後の実装石の身体は、偽石の過剰とも云える活動によって
支えられている可能性はかなり高い。
変態後の実装石の偽石は、生命維持信号と仮定されている第三種特殊電波の発信間隔
と強度が平均12倍、第七種特殊電波が平均35倍に及び、更に信号発信時の微振動数は
平均七百倍と、予想を遥かに上回る負荷がかかっている。


5.身体変化による影響 -身体維持-

変化実装は、身体維持及び偽石活動を持続させるため、実装石時代とは異なる栄養
補給を行なう必要があり、そのスタイルは千差万別である。
実装石の時は雑食性でも、変態後は普通の人間と同じ食物を摂りそれ以外を受け付け
なくなったり、また逆に従来通り実装フードを食べるがそれ以外極端に受け入れなく
なったりする例などが報告されている。
また逆に、生肉や野菜、特定の飲料などそれまで口にしたことのない物を摂取する
ようになる例も見られる。
奇妙なことに、どのパターンでも極端な偏食傾向が発生するケースが大変多く、特に
変態・孵化直後に与えられた食物・飲料により嗜好が定められてしまう傾向が強い。
これは恐らく、変態後の身体は味雷細胞やそれによる信号伝達が初期化するため、
最初に美味と感じた物に強い執着を覚えてしまうのではないかと推測される。
非変化実装でもこの例は多く観察・確認されており、生誕直後の実装石に味の強い
食物を与えるとそれ以外を一切求めなくなることから、これが変態後に再び発生して
いるものと見てほぼ間違いないだろうと思われる。
ただし、孵化直後の実装石が自身を覆っていた粘膜や排泄物を口に含んだため、
同族食いまたは排泄物食のみを行なうようになってしまう場合もあるため、実験内容
に応じて充分な観察と警戒を行なう必要性が求められる。
(食嗜好の確定結果によっては、生命活動維持に充分なエネルギーが得られず、
寿命が極端に減少してしまう可能性も考慮されるため、このポイントは特に重要である)


6.身体変化による影響 -寿命-

変化実装石が身体維持及び生命活動により偽石に受ける負荷は膨大であり、そのため
長期間生命活動を維持するのは極めて困難である。
偽石への負荷は、変態後の身体形状・質量の増大化とある程度比例しており、さほど
大きくなければ長期間、極端に大きくなれば短期間しか生命維持が出来ない。
また、身体が小型でも運動性能が極めて高かった場合は例外となり、やはり短期間で
自然死に至る。
当班の研究サンプルの育成結果によると、オリジナルの数倍〜十数倍程度の肥大化の
場合は平均半年、二十倍〜数十倍程度で約四〜三ヶ月、百倍以上で二ヶ月未満と
なっているが、これらはいずれも同条件下に置かれた個体の測定のため、育成環境や
栄養補給頻度、精神的負担度が変化すればこの限りではないと考えられる。


現在確認されている「人間化実装石の最大寿命」は48日と3時間15分
(孵化直後より測定)である。


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