天国 先日、初夏の心地よい日差しを浴びながら家から少しの所にある橋を歩いていた。 なんて事はないドブ川に架かっているコンクリ製の橋だ。 ふと、橋下へ目をやると流れ着いて固まったゴミの中州がドブ川に出来ていた。 壊れた幼児用自転車や朽ちた木材の切れっ端、そして雑草や泥の塊が積み上がっている風だ。 「デェェ…」 その小さなゴミ中州に泥まみれの小汚い実装親子が住み着いていた。 誰かが悪戯で投げ込んだのか、大雨で公園から流され運良く辿り着いたのか。 水流で阻まれ野良猫は寄りつけず、堆積したゴミが天然の要塞と化し野鳥を阻むのか、 痩せ細ってはいるものの確かにそこで実装親子は生きていた。 数日後、同じ橋を通りかかり下を覗いてみると、まだ実装親子はそこに居た。 餓死でもしているかと思ったが、意外な事に以前見た時よりふっくらとしている。 餌など無いハズの、そんな中州でどうやって生活しているのか? 疑問はすぐに晴れた。 通学途中の小学生達が、給食の残りモノのパン屑や菓子を中州へ放り投げていたのだ。 「テチュ〜ン♪」 実装達も己の立場を良く理解しているのか、懸命に小学生達に媚びを売っている。 外敵から守られ同族とも隔離された中州は、意外に奴等にとって天国だったようだ。 帰宅しTVを点けると、明日から週末にかけ季節外れの戻り寒気が訪れると天気予報が告げていた。 大雨、強風……次々と告げられる予報情報はどれも季節外れ過ぎて俄に信じられない。 とは言え準備しておくに超したことは無い。すぐさま食材の買い込みや諸々の準備に取りかかる。 忙しく動き回る頃には、実装の事などとうに頭から消え失せていた。 随分経ってあの橋下を覗いたが、中州は跡形も無く消え失せていた。 あの実装親子がどうなったかは知らない。
