タイトル:【虐】 ニンゲンの幼稚園に実装ちゃんが入園するスク、第二話
ファイル:体験入園02.txt
作者:賞金首 総投稿数:41 総ダウンロード数:2007 レス数:1
初投稿日時:2013/09/19-22:02:00修正日時:2013/09/22-08:07:18
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前回までのあらすじ

幼稚園に体験入園したミドリ、ドドリ、ドドリア、ドリアン、リアン、リアンカ、アンカーの7匹の実装家族
新人保育士の黒裏アキコの必死の抗議むなしく、アキコのクラスに入ることになる

そんな中、次女で中実装かつ糞蟲のドドリアはニンゲンドレイを作るべく
妹のアンカーを故意に人間に潰させ弱みを握ろうと図るが
すんでのところで自爆してしまい、焼却炉で炎上してしまうのであった


ミドリ(親) 成体実装  60センチ
ドドリ    中実装   40センチ強
ドドリア   中実装   40センチ弱  焼却炉に入っちゃった
ドリアン   仔実装   20センチ
リアン    仔実装   15センチ
リアンカ   仔実装   10センチ
アンカー   親指実装  5センチ   椅子とりゲーム中に尻で圧殺




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保育士の黒裏アキコは焦っていた
休憩時間が終わったのにドドリアとドリアンとアンカーが戻らない
早速起こったトラブルにアキコはめまいに見舞われる

ミドリ一家も自分でトイレくらいのことはできると聞いていて
安全な園内だからと目を離してしまったといえ、油断していたことを後悔していた
仕方がないので親実装のミドリに直接聞くしかない
「ミドリちゃん、ドドリアちゃんたちがどこに行ったか知らない?」

「クッチャクッチャ…知らないデスゥン…クッチャクッチャ」
ミドリは答えながらも何か口をモゴモゴさせている
そして、なにやら甘い匂いがぷうんと漂ってきている
ミドリだけではなく、その仔の中実装ドドリ、仔実装リアン、仔実装リアンカも…
そういえば、園児と同じに扱う、という条件だったのでおやつの持ち込みはさせなかったはずだ

「ミドリちゃん、あなたたち、何を食べているの?」
アキコはミドリの目をまっすぐ見ながら聞く

ミドリは目を逸らして答える
「デデェッ?な、何も食べてないデスゥ!そうデスゥ?オマエたち」
「テッチ、テテチィ!」「テッチュ、テッチュウン!」
リアンとリアンカが口から何かをこぼしながらも答える
リンガルを確認すると、「知らないテチ」「わからないテチ」の文字

アキコの手持ちのものはあまり高価なリンガルではないので細かいニュアンスは翻訳できない
さすがにミドリは成体の飼い実装なのでこういうことを誤魔化すことは慣れている模様
ならば仔のリアンとリアンカをと思ったがそうもいかないようだ
となれば、高価なリンガルをつけていて、ミドリ以外の実装石から聞くしかない

「ドドリちゃん、ドドリちゃんの口には何が入っているのかな?」
「テテェッ?ワタチテスゥ!?」
突然話を振られて焦るドドリ、やはりミドリほどは肝が据わっていないようだ

「ねえ、ドドリちゃんのお口の中のアマアマが何か、見せてもらえるかな?」
「ゲプゥ、な、ないテス!ワタチのオクチにプリンなんか入ってないテス」
なるほど、甘い匂いからカマをかけたが、プリンだったか…
あれ?プリンといえば、今日の園の三時のおやつは———

「キャーーーーッ!」
突然、絹を裂くような悲鳴が上がる
あれは…給食室のほうだ!

この幼稚園では昼食はお弁当だが、三時のおやつと職員の昼食は給食室で配膳される
消えた実装石、食べられているおやつのプリン、台所からの悲鳴…嫌な予感が頭をよぎる

給食室にたどりついたアキコが見たものは
散らばったおやつのプリンの容器と、ブリブリと音を立ててパンコンするドリアン
そしてドリアンの頭巾を掴んで今まさに熱湯に放り込まんとする給食のお姉さんだった
「どこから入り込んだのよ!?こんなに荒して、この糞蟲!!」
「テッチィィィ!!」

今まさにドリアンが煮えたぎる鍋の真上に差し掛かった時
間一髪で間に合ったアキコが割って入る
「待ってください!その仔は園で預かっているんです!」

すんでのところでドリアンの熱湯入りは避けられたものの
給食室の惨状はそれは惨憺たるものだった

床にはプリンの箱が乱暴に倒され、中身が周囲に散乱
その上に実装石の緑色の糞が撒き散らされ、大小様々な実装靴の足跡があり
めちゃくちゃな有様になっている

アキコに遅れて園児たちも追い付いて来た
悪臭と惨状に気づいて吐き出す子もいる
とにかく給食室の扉を閉め、園児たちに教室に戻るように言う

「あっ!」
そうしている隙に、ドリアンが園児の足と足の間を縫うようにテッチテッチと駆け出す
仔実装の足など大した早さではないものの、これだけの騒ぎの中で見失っては
もう見つけることなど出来ない
結局、ドドリア、ドリアン、アンカーの三匹はどこかへ消えてしまった


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「園長先生、ドドリアちゃんとドリアンちゃんとアンカーちゃんがいなくなりました
すぐに今回の体験入園は中止して、あの仔たちを探しましょう」
アキコは怒りと無力感を同時に感じていた
いくらなんでもアレは酷すぎる、躾られていない動物以下じゃないか
とてもじゃないが面倒見切れるものではない

目を離した自分の責任は確かに大きいが
だからと言ってあのバカ親仔にこれ以上振り回されるのはごめんだと思った

「まあまあ、話は給食室から聞いたよ
おやつのつまみ食いなんてかわいいもんじゃないか
それくらいでいちいち目くじら立てないで、うまくやってくれよ」
園長先生は楽観的に答えた

「うまくも何も…給食室を荒していまだに逃げているんですよ!
とにかく消えた三匹を見つけるのが先で…」
アキコが最後まで喋る前に、園長は机をこぶしで激しく殴打した

「キミィ!途中で放り投げるのか!ミドリちゃんがいま、そこにいるんだぞ!
いきなり仔を三石も見失って、不安になっているところで追い出すのか!
そんなことでは私たちを信頼してあの子たちを預けた方にも顔向けできんだろうがっ!
そんなことは絶対に許されん、体験入園を続行したまえ!」
顔を真っ赤にして激高する園長、さすがに戸惑うアキコ

そこですかさず園長は笑顔でアキコの手を取り、まくしたてる
「消えたドドリアちゃん、ドリアンちゃん、アンカーちゃんに関しては私とほかの先生方でどうにか探し出す
だからせめて、せめてミドリちゃんだけは最初の約束通り、君が見ていてくれ
ミドリちゃん以外の子たちの散歩については他の先生のクラスでの同行をお願いしておく
君はクラスのみんなと一緒にミドリちゃんの面倒を頼むよ、しっかり頼むぞ!」

ぽん、とアキコの背中を叩くや、園長はすたすたと行ってしまった

取り残されたアキコ、その頭の中では園長の言葉がレコーダーのように再生される
『君はクラスのみんなと一緒にミドリちゃんの面倒を頼むよ』

…この園の風土は実装生物との触れ合いを通じて心を育むことじゃなかったのか?
面倒ごとを園児たちに押し付けて、何が育まれるというのであろうか?
主旨がおかしくなっていることに気づいたが、いまのアキコにはもうどうでもいい気がした

乾いた笑いを小さく上げると、アキコは自分のクラスへと戻っていった


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それからどれだけ待っただろうか?
ミドリ一家を教室の隅に寄せて、アキコは正面に仁王立ちで立っていた
ものものしい雰囲気に萎縮したか、ミドリ一家はおどおどと一箇所に固まっていた

しばらくすると園児を引き連れた別の先生が来たので、ドドリだけ連れてひとまず教室の外に出て
厳重に言い含めてドドリを引き渡した
仔実装のリアン、リアンカたちも散歩には行くと聞いていたので
教室にいたたまれなくなったこともあってかドアの隙間から抜け出すと
すぐにその先生の引率する園児たちの中へテッチテッチと消えていく

ついでにミドリも抜き足差し足で教室から抜けようとしたが
ドドリを引き渡し、戻ってきたアキコと鉢合わせしたため、再び教室の隅に連れ戻された

アキコはミドリを教室の隅に移動させると、園児たちには自由時間と伝え
ミドリだけをじっと見ることにした
無論、そんなことをすれば例の愛護派の中年女性の耳に入った時に面倒事になるのはわかっていた、が

園児たちに面倒は見させられない、その覚悟の上のことだった
ミドリも園児たちもその異様な空気を感じ取り
わんぱく盛りが一室に集まっているというのに教室がにぎやかになることはなかった


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園内では、行方不明になったドドリア、ドリアン、アンカーを探して大騒ぎになっていた
ドドリアとアンカーは焼却炉の中にいるのだが…
さて、ドリアンはどこに行ってしまったのか?

ドリアンは身長約20センチ程度の仔実装である
この半端な大きさが災いして、血眼になって捜索を続ける幼稚園の大人たちから逃れ、隠れ
幼稚園の中をいまだにうろうろしていた

まがりなりにも飼い実装である以上、あまり無茶なことはしないだろう
と普通の人は考えるだろうが、実はそこが落とし穴なのだ

ミドリ一家の飼い主の中年女性は、いわゆる”愛誤派”
実装石を溺愛するあまり、実装石のすることは何でも見逃し
文句を言う人間には相手が黙るまで叫び、暴れる

そんな飼い主を陰でドレイニンゲンママ、と呼び
良いように自分の要求を通す親実装のミドリ
そんなニンゲンとの距離感を肌で感じで育ったため、ミドリ一家は漏れなくニンゲンを見下していた
そんなドリアンを探して右往左往するニンゲンを陰でチププと嘲笑うのはドリアンにとって娯楽でしかない

まだ人間にその死体が見つかっていないアンカーが親指実装であることもドリアンにとってプラスに作用した
園児が誤って踏み殺したりしないよう、園児の移動を厳しく制限したため
広大な幼稚園内を少数の職員が探す、という状況になったため
中途半端な大きさであるドリアンはかえって目立たなくなる、という結果を導いたのだ

ドリアンはその小さな身体を利用して、棚の陰に隠れ、隙間に隠れ
時には大胆に階段を昇り、通風孔を通り、ニンゲンに見つかることなく移動していた
そして、道すがらキレイなものやオモチャを見つけてはカバンに詰め込み
持ち運べない大きさのものにはウンチを塗りたくって所有権を主張した

「チプププ、この幼稚園のオモチャはぜーんぶワタチのものテチ」
ニンゲンに見つからないことに自信がついたか
移動教室、クラス単位でのトイレ、そういった集団行動の隙を突いて無人の教室から教室へと移動しては
お気に入りのオモチャを盗み、ウンチをなすりつけることに目的が変わっていた
小さな物でも、カバンに入らないものは踏みつけて壊し、新しいお気に入りをカバンに詰め替えた

ドリアンの通った後にはペンペン草も残らなかったか?

…いや

ドリアンの通った後に残ったものは悲鳴と怒声、そして…
園児たちの実装石への憎悪が残った


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同時刻、双葉市立林間公園

この公園は「向」という字のような形になっており
真ん中の四角形がフェンスで囲まれた公園、周囲には遊歩道がある

公園は近所の幼稚園、保育園、小学生なども多く利用するため
フェンスや段差を利用して実装石の進入は妨害されている
(もっとも、腕白盛りの小学生がわんさかいる公園に侵入した実装石の運命は想像に難くない)

周囲をめぐる遊歩道に関しては多少の野良は住み着いているようであり
人間の目を盗んで公園内の実のなる木や水場を利用しているようだ


「はーい、着きましたよぉ
みなさん、公園からはくれぐれも出ちゃだめよぉ〜!」
「「「「「はーい!!」」」」」
先生に元気よく返事をすると蜘蛛の子を散らすように園内に散る園児たち
さっそく中実装のドドリも公園に出ようとするが、引率の先生にぐいと肩を掴まれる

「汚れちゃうからダメよぉ〜」
「離すテス!ワタチも遊ぶテスゥ!」
「大丈夫よぉ〜、ミドリちゃんは先生と一緒に遊びましょ〜」

代理の先生は実装石の面倒さを熟知していた
だからこそ、自分に白羽の矢が立たないように伏せていたのだが…

ともかく、面倒ごとを避けるには誤魔化して無理やり身動きできなくさせるのが一番
確かに、それは間違っていなかったのだが、それは目の届く範囲に実装石がいる場合の話

「何するテス!離すテスゥ!」
「ダメよぉ〜、コウキで賢いドドリちゃんは私と遊ぶのよぉ〜」
「テェッ!コウキでカシコイワタチから手を離すテスゥ!」
「ううん、コウキで賢いから手を離しちゃいけないのよぉ〜」
会話になっていない会話が続くが、当然ドドリから手を離すわけがない

このまま時間一杯まですごせばそれで終わりだ、と先生は思っていたのだが…

代理の先生はミドリのことしか知らなかった、6匹の仔実装を引き連れてきたことも…
従ってドドリをミドリだと思いこんでいたし、紛らわしい名前がそれに拍車をかけていた
ドドリア達を探すために園がまともな引継ぎをしなかったことも付け加えねばならない
つまり、この引率の先生はリアンとリアンカ、二匹の仔実装が含まれていることにも気づいていなかった

園児たちが親切心でこの二匹の仔実装を持ち上げて運んだことも
余計に引率の先生の視界から二匹を隠してしまうことなってしまったのだ

リアンとリアンカは仔実装である
この6姉妹の中では小さい、つまり立場が弱いことを意味する
飼い実装にとっての世界は家の中だけ、姉妹との関係を崩すことは死を意味する

ママの機嫌が悪ければ姉妹に当たる
上の姉妹の機嫌が悪ければ、下の姉妹に当たる。その次の…といった具合に
立場が弱ければ弱いほど、そのしわ寄せが次々と押し寄せて来るのだ
それは普段の生活から食事や散歩、全てに至るまでがそうだった

アマアマは上の姉妹に取り上げられ、余った場合のみおこぼれに預かった
散歩も、ミドリの歩調に合わせて置き去りにされないように必死で走った
ミドリや上の姉妹が立ち止まったり、休憩している間に必死で追いついた

実は、リアンカとアンカーの間にはもう一匹、姉妹がいた
その姉妹は利発で賢く、ドレイニンゲンママの受けもよかった
それが上の姉妹の反感を買っていた

ある日、ミドリの引率で散歩に出た折に公園に置き去りにされたのだ
ミドリはじめ、ドドリ、ドドリアは入念に口裏を合わせ
下の姉妹に対しては脅迫で口を封じた

その甲斐あって、ドレイニンゲンママはいまだにその消えた姉妹は
真昼の公園を散歩中にバールを持った100人以上の虐待派の集団に襲われて
ミドリ達を一切傷つけることなく、ミドリの抵抗むなしく攫っていった、ということになっている

従って、散歩中といえどわがままは言えず
常に監視されているような状態だった

しかし、今回ばかりは違う、引率はドレイニンゲン
ママも上の姉妹の誰もいない!
そして、周囲のニンゲンはみんなドレイニンゲン!
やりたいことをしたいだけしていい!

ここに来て園児たちの親切な行動が仇になった
公園まで運んでやったことで、仔実装たちは自分たちのほうが格上だと思い上がってしまったのだ
自分を格上だと勘違いした仔実装の遊びといえば、それはもう思い上がった物である
この二匹も例外には漏れなかった

3人の園児が砂山を作っているところにリアンとリアンカが駆け寄ってくる
「あれ?どうしたのかな?」
「この仔たちの言葉はわからないよね」
「きっと、仲間に入れて欲しいんだよ!」

まず、仔実装のリアンがテッチテッチと砂山に駆け上る
園児たちはそのヨチヨチと山を登る姿を見て、おお!と歓声を上げる
が、次の瞬間

「テププププププ」
リアンが短くいやらしく笑うと、砂山の頂上でポフポフと地団駄を踏むような格好をした
すると、砂山はひびが入り、ぐずぐずと崩れて行く

突然のことにあっけにとられる3人の園児を尻目に、リアンはテププと一笑いすると
園児と園児の間を抜け、次の砂山へと向かって行った
そして妹のリアンカは残念そうな3人の園児を見てチプププと嫌らしく笑うと、姉の後を追って走った

次の砂山は2人の園児が作っている途中だったが、こちらは先ほどより一回り小さかった
リアンは砂山を腕で示すと、一回り小さい仔実装のリアンカに何事がテェテェ鳴いた
今度はリアンカがテッチテッチと砂山に駆け上って行く

事情を知らない2人の園児は先ほどと同じように歓迎するものの
リアンカは姉のリアンの真似をして同じく砂山を突き崩し
チププと一笑いするとすばやく逃げて行った
姉のリアンも、泣きそうになっている2人の園児を見て腹を抱えてテプププと笑うと
次の砂山を探しに走って行った

すっかり園児の築いた山を崩して遊びだした仔実装のリアンとリアンカの二匹は
今度は園児の誰もいない大きな砂山に行き着く

「テェェェ…」「テッチィィ!!」
目の前に広がった大きな砂山は先ほどまでの砂山の比ではなかった
横幅は先ほどと同じくらいだが、長さが5倍以上もある

リアンとリアンカは目を輝かせ、顔を見合わせてテチィテチィと声を掛け合うと
競うようにその大きな砂山を登っていった
ほぼ同時に頂上に駆け上ると
テッチ!テッチ!と声を上げながら一生懸命に地団太を踏むが
今度の砂山は丈夫にできているためかなかなか崩れない

「チィィッ!?」
突然、リアンが悲鳴を上げ、何事かとリアンカが周囲を見回すも、姉のリアンの姿が見えない
「テェ?テェェェ?」
リアンカが呼びかける声を上げるが、姉の反応は全くない

その時突然、リアンカの体が宙に浮いた
園児の一人がリアンカの頭巾のすそをつまみあげたのだ

バケツを抱えたほかの園児たちが砂山を見て大声をあげる
「あーっ!こいつ山に穴開けてるぞ!」
「せっかく作ったのに何してんだよ!」
次々にリアンカへの非難の声が上がって行く

「お前、邪魔だよ」
リアンカをつまみあげた園児はぶっきらぼうに言うと、ぽいとゴミのように投げ捨て
バケツを抱えた園児に言った
「水流す前に穴ふさいどけよ、トンネルなんだから」


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その頃、姉仔実装のリアンは砂山…いや、トンネルの中で頭から砂に突っ込んで
足をイゴイゴジタバタさせていた

仔実装のリアンとリアンカ、この二匹がトンネルの上で暴れたものの
リアンのほうが一回り大きかったためにリアンの下だけに穴が開き
そのままトンネルの中に落ちてしまったらしい

ズボッ!と埋まった顔をようやく地面から引き抜くと
テヒィ、テヒィと肩で息をしながら上を見る
天井にぽっかり開いた穴からうっすら日が差し込むが
とても上れる高さではない

悲鳴を上げて助けを呼ぼうかとも考えたが
そこは悪知恵は多少回る仔実装
先ほどから砂山を崩して回っているのでここで助けを求めるのは分が悪いことはわかっていた

そんなことを考えながら上をぼんやり眺めていると、突然その穴から砂がどさどさと降ってくる
「テヒィ!?」
思わず身体を引くと、自分が落ちてきた穴がみるみる砂で塞がっていく

慌てて穴に身を寄せるが、次々に降ってくる砂が邪魔で穴に近づけず
かえって降ってくる砂を崩して身動きが取れなくなるばかり

「テェェェ…」
真っ暗なトンネルの中で急に心細くなるが
ふと、自分にはドレイニンゲンがいることに思い当たった

「テェッチィィィイイ!テッチィ!テェッチィ!」
リアンは力の限り叫んだ、ドレイニンゲン何とかしろ!ゴシュジンサマを助けろ!
だが、仔実装程度が叫んでも地中では声が響くばかり

だが…
ゴゴゴゴボボボボ…
「テェ?」
遠くから響くような音が聞こえてくる

「テァァ!?」
突然、殴られたような衝撃で引き倒され
そのまま体をずるずると引きずられていく
水だ、それも大量の水!

それが狭いトンネル内に一気に流し込まれたのだ
トンネルそのものは全く頑丈ではないため、暴れるリアンの手足と
水の勢いでぼこぼこと天井に穴が開き、光が漏れる
リアンはその穴のひとつに向かって必死で泳いだ

「テェッホ、テェホッ!!」
すっかり砂と泥まみれになったリアンはずぶ濡れになりながらも
どうにか穴のふちに手をかけ、辛うじて息をしていた
トンネルは崩壊してあちこちに地上に向けての穴ができ、そのひとつから何とか顔を出せたのだ

助かった!リアンは必死でテチィ、テチィと助けを求めるが
その時、手元の砂が崩れて水中に潜ってしまう
「テェボッ…!?」

そのまま地中のトンネルに流されながらイゴイゴ暴れていると、また穴が開いていた
またしても穴に手をかけ、顔を出すことが出来た
顔を出したリアンの元にまた園児たちが集まってくる

「テッテェェー!テェッチ!!」
集まってきた園児たちにリアンは鳴きかける、早くしろ、ノロマ!コウキなワタチを助けろ!
そう言ったつもりだった、しかし、ニンゲンたちの反応は全く異なるものだった

「こいつスゲェ!トンネルを泳いで隣の穴から出てきたぞ!」
「自分で穴を塞いだよね!すごい!」
「ねえ、これ私たちが穴を塞いだらどうするかな?」

園児たちは続々と砂を持って集まり、リアンの上にどさどさと載せた
リアンはまた地中のトンネルに落ち、水で流され、隣の穴になんとか這い出ることができた
しかし、そこでもまた砂をかけられ、再びトンネルへと落ちていった

段々とトンネルの水流は収まりだし、流されることはなくなってきた
胸まで水に浸かりながらもどうにか自力で穴まで辿り着くも
やはり穴から顔を出すと砂をかけられ、埋められてしまう
リアンは歯軋りをして悔しがるが、どうにかなるものでもない

いつの間にか水流はほぼ収まっていた、しかし水位が首のすぐ真下まで上がっている
そして…明かりがほとんどなくなっていることに気づいた
そう、ほとんどの穴が塞がれてしまったことで、水の流れが止まり
明かりが差し込まなくなってきたのだ

助けを求めるのは無意味だ、鳴けば鳴くほどニンゲンが集まってきて
頭に砂をかけられるのは何度も何度も経験した
リアンはそっと穴に近づくと、下から上の様子を伺った

「あー、終わっちゃったかー」
「いなくなっちゃったね」
「あーあ、つまんねぇの、もうおしまいかぁ!」

しめしめ、リアンはほくそ笑むと同時に、怒りが込み上げて来た
その怒りは巷で言うところのおこでも激おこでもなく、激おこパンコン丸だった
頭が破裂しそうな怒りを下半身に回してブリョブリョと音を鳴らしてパンツを膨らませ
これまでニンゲンに受けたことのない酷い扱いに激しく怒り狂っていた

あとでドレイニンゲンママにいいつけてオマエたちをやっつけてもらうテチ!
いままでワタチたちが気に入らなかったヤツはドレイニンゲンママにやっつけてもらったテチィ!
オマエたちはもうオシマイテチィ!!ワタチはオツムの作りが違うテチ、チプププププ…
リアンがかつて会ったことのあるニンゲンはドレイニンゲンかその同類の愛誤派ばかり
もしくはサービス業従事者などの『ドレイニンゲンママの権力』で言い成りになるニンゲンのみ

このようにリアンを含めたミドリ一家全員が思い上がるのも無理からぬことであった
しかし、このパンコンが運命を決定づけてしまったことにリアンは気づいていない

それからリアンは息を殺してじっと待ち
園児たちの気配が周囲から完全になくなったのを見計らってから
こっそりと穴から抜け…られない

「テェェ?」
おかしい、さっきまでは簡単に穴まで登れたのに…?
足元を見ると足が湿った砂地に膝の上まで沈み、水に溶けたウンチが粘土のように足にまとわりついている

「テェェェッ!!」
力いっぱい右足を引き抜くと、靴が脱げ、左足が沈みこむ
クックをなくすとママに怒られるテチ!
慌てて屈み込もうとすると、右足、左足ともに一層沈む
塗れた服や髪は重量が増し、水分を含んだ砂は体にこびりつき、ウンチで膨らんだパンツは地中へ突き進む
そして、水を含んだ足場の砂地は…

気付いた時にはもう手遅れだった
もがけばもがくほど、底なし沼のようにずぶずぶと身体が沈んでいく

「テヒィッ、テヒィッ…ティェェェ…」
精一杯、声を振り絞るが、喉が冷えて声が出ない
先ほどパンコンした際に、そちらに熱を取られてしまい、急激に体温が下がったのだが
愛誤派の飼い主の下ぬくぬく育ったリアンにはそれが自分の身体どう影響するのかを知らなかった

焦ってもがけばもがくほど、逆に身体に砂がつき、動きが鈍る
しかし、疲れてたった一息休む、その間も刻々と身体は沈む

リアンは焦って、怒って、暴れた、しかし無常にも砂はじわじわとリアンの身体を飲み込んでいく
そしてとうとう、頭巾の頭頂部まで砂の下に消えた
その後には、リアンがそこにいた形跡はなにも残っていなかった


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妹仔実装のリアンカは園児に乱暴に放り投げられ、全身を地面に打ち付けていた

「テェェェェェェン、テェェェェェェン」
リアンカが大声で鳴く

すぐに園児が一人駆け寄ってくる
「ちょっとー!男子なにやってんのよ!泣いているじゃない!」
駆け寄った園児はリアンカを胸に抱くと、放り投げた園児に食って掛かった

「うっせーブス!そいつは俺たちの砂山壊してたんだよ!」
放り投げた園児は俺は悪くない、といった面持ちでリアンカを睨みつけた

「仔実装はそんなこともわかんないのに、投げたり怒鳴ったりしちゃかわいそうなのに、ねーっ」
リアンカを抱き締めた園児は一方的に会話を打ち切ると
そのまま自分たちのグループのほうへ戻って行った

リアンカを連れて行ったグループは泥団子をこねているところだった
「テチィ?」
リアンは首をかしいで園児に問いかける

「とってもおいしいんだよ!」
「食べていってよ!」

泥団子をリアンカの前に置く
仔実装であるリアンカにとっては初めて見る物である
食べ物なのかどうなのかもわからない

「テチィ?」
リアンカはもう一度首をかしいで問いかけてみる

「おいしいよねー」
「ねー」

園児たちは泥団子を自分の口にあてがうと食べるマネをしながら親指で泥団子をこさいだ
こうすると、正面から見ると不自然にぼろぼろとこぼしているように見えるのだが
仔実装のリアンカにとっては食べる時にこぼして撒き散らすのは当たり前
ママも姉妹もそうやって食べているので、別におかしなことじゃない

それに、おいしい、という単語はわかる、これは食べ物ということだ
ドレイニンゲン以外からもらう、初めての食事
オイシソウなものがあっても、だいたい上のオネチャたちに取られてしまうので
初めて自分だけで独り占めできるゴチソウ…

リアンカはささっと周囲を見回し、オネチャが誰も見ていないのを確認すると
すばやく泥団子を口に運んだ

ザリッ

ざらざらした食感と口に泥の味が広がる、マズイ!!
思い切りかじってしまって、のどに張り付いてしまった、うまく声が出ない

「〜テッ〜〜〜チ〜チュワ〜〜〜」
リアンカは手足をパタパタイゴイゴ振り回して抗議する、が

「すっごい!本当に食べた!」
「実装石が何でも食べるって本当なんだね!」
「見てよ、あんなに喜んでくれてる!おかわりもあるよ!」

リアンカの前に次々に泥団子が並べられる
山盛りになる泥団子は既にリアンカの体積を優に超えている
リアンカはイヤイヤするが、園児たちにはわかっていない

「…どうして食べないんだろ」
「あ、前掛け、前掛け!」
見ると、先ほど泥団子を齧った時に泥が前掛けについてしまっている
純白の前掛けに泥のシミはかなり目立つのだ

「そっか、きっと汚すと怒られるんだね」
「大事にされてそうだったもんね」
ニンゲンたちはやっとあのニガニガを食べさせるのを諦めた
助かった、とリアンカは思ったのだ、が…

「じゃあ、私たちが食べさせてあげようよ!」
「そうだよ!それなら服を汚さないで食べさせてあげられるよ!」

リアンカは逃げようとしたがもう遅い
二人の園児がしっかりと身体と掴み、一人の園児が泥団子を手に正面に座る
「はい、あーんしてね♪」


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「テプー…テプー…」
「おなか一杯になったら寝ちゃったんだね」
「そっとしておいてあげようよ」
「あんなに気持良さそうに寝ているもんね!」

リアンカは寝ているわけではない
腹には泥をみっちり詰めて、喉には砂がへばりついて半死半生の状態なだけだ
三人がかりでリアンカが動けなくなるまでたらふく泥団子をご馳走してくれたおかげで
すっかり腹が風船のように膨れ、動けなくなっていた

その時、笛が鳴った
「はーい!それじゃあ幼稚園に戻りますよー!みんな集まってー!」

その声に合わせてそれまでてんでバラバラだった園児たちが
引率の先生の元へ集まって行く
その中には実装姉妹の長女のドドリの姿も見える

「テ…テェ…」
必死で声を上げるも、喉が詰まって声が出ない
リアンカにとって不運なことに、泥団子は表面を固めるために砂が貼ってあった
これが喉に貼りついたことで完全に喉がかすれ、声が出ないのだ

おまけに、糞袋の中には満タンの泥
その重量は仔実装の足で支えられる限界に達しており
この状態で立つだけで右へ左へとふらふら歩いてしまうのだ

必死で追いすがるも、あっちへふらふら、こっちへふらふら
歩けば歩くほど、かえって目的地から遠ざかるような有様である

ようやくリアンカが公園の中ほどまでたどり着いた時
既に日は暮れようとしていた、そして…

公園のフェンス越しの遊歩道から無数の赤緑の目がリアンカを見つめていた………


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第二話です
感想や挿絵は作品の原動力、いつも皆さん、ありがとうございます

一週に一話、週末にアップするペースでやる予定でしたが
今週末、来週末の予定が立たなかったので前倒ししてアップしました
前倒しなので、次は少しだけ間が空いてしまうことをご了承くださいませ

全体の長さから行って、全3話の予定ですが
思ったより長い話になっている感じがします
というか、今回は単品で今までにアップしたどの読みきりよりも長い!

保管庫ももっとにぎわうと嬉しいな、と思う次第であります
保管庫管理人様へのお礼も併わせて申し上げます。





現状


ミドリ(親) 成体実装  60センチ   教室に軟禁
ドドリ    中実装   40センチ強  散歩中(厳重な監視つき)
ドドリア   中実装   40センチ弱  焼却炉に入っちゃった
ドリアン   仔実装   20センチ   幼稚園内で略奪行為
リアン    仔実装   15センチ   砂場に沈む
リアンカ   仔実装   10センチ   砂場に置き去り
アンカー   親指実装  5センチ   椅子とりゲーム中に尻で圧殺


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1 Re: Name:匿名石 2023/07/20-21:45:21 No:00007588[申告]
死んで当然の糞蟲がきっちり死んでくれてたすかる
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