タイトル:【愛馬】 翠星石になれ
ファイル:翠星石になれ.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4307 レス数:0
初投稿日時:2006/08/12-03:05:53修正日時:2006/08/12-03:05:53
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週末の夜、夕食を終えて部屋の隅で妙な姿勢で寝ている実装石を揺り起こす。

「おい、起きろ」
『むぅ〜なんデスゥ?食べてからすぐ寝るとウシになるデスゥ…』

そりゃお前だ。更に強く揺すって目を覚まさせる。

『デデデッ!何をするデス!?』
「お前を飼い始めたときから考えていたことなんだが、お前に美しくなってもらおうと思ってな」
『ワタシは十分美しいデスゥ』

そう言って再び眠りにつこうとする実装石。とりあえず殴る。

『デギッ!ひどいデス。今日は厳しいデスゥ』
「俺はお前にこういう美しさを求めているんだ」

プリントアウトした翠星石の画像を見せる。そして鏡で実装石の姿を映して見比べさせる。
実装石はしばらく画像と鏡に写る自分を交互に見つめ、胸を張って口を開く。

『そっくりデスゥ!』

とりあえず殴る。今コイツはすごく沢山の人を敵に回した。だから少しでも贖わせるためだ。

「どこがそっくりなんだよ!特にこの腹!腹!腹!」

野良の時から栄養状態が良くなり、拾ってきたときから較べはるかに弛んだ腹肉をつまむ。

『デギデデデ!!痛いデス!痛いデス!』
『そ、そのシャシンだってオナカが服に隠れてるデス!ソイツも脱げばタルンタルンデス!!』

贖わせるため殴る。そして今日届いた荷物を実装石の前で広げる。
殴られた箇所をさすりながら起きあがった実装石は荷物の中をのぞき込む。

『シャシンのヤツデスゥ…』

そう、これは1/1スケールで造らせた翠星石のボディフレームだ。

『ワタシにそっく…ギッ!』

言い切る前に殴る。

「現実を直視しろ!俺はお前にこうなって欲しかったんだ」
「なのにお前ときたらどうだ?毎日、喰っちゃ寝、喰っちゃ寝でこのザマだ!!」

再び腹肉をつまむ。
元が実装石なので自分の要求が無理なことは解っているが、とりあえず容姿に関する不満をぶつけてみる。
だが実装石なりにショックを受けたらしい。涙を流しうなだれている。

『デェェェ…ワタシが間違っていたデス。ご主人様の親切に甘えていたデス』
「…美しく…なりたいか?」
『なりたいデス!コイツのように美しくなりたいデス!』
「コイツとか言うな。翠星石と呼べ!いずれは完全なる少女、アリスになる存在だぞ!!」
『デェッ!?』

実装石の脳内を電撃が走った。ような気がする。

「アリスになれば皆が愛してくれる。皆が賞賛してくれる」
『デェェェ…』
「今一度問う。なりたいか?美しく…そして、なりたいか?アリスに!!」
『なりたいデス!アリスになるデス!!ライラ、ライラ、ライララ〜イデス!!』

若年層にはわかりにくいギャグを使ったので殴る。気絶したようだが好都合。
さっそく作業に取りかかることにする。
さて、先ほどの荷物だが1/1スケールで造られた翠星石の「ボディフレーム」と紹介した。
要はハリボテの人形で中身がない。
ここまで言えば諸兄はお解りだと思うが、この中に実装石を組み込み翠星石にしてしまおうという計画だ。
…今俺はすごく沢山の人を敵に回した気がする。




実装石の頭部及び四肢を胴体より分離する。

四肢の皮膚を剥がし筋組織をボディフレームに貼付ける。貼付位置は人体模型等参照のこと。
足りない分は豚肉などで補う。

実装石胴体をボディフレーム胴体に埋め込む。隙間があるがすぐに埋まるので気にしない。

頭部口内より切開し顔面骨格フレームを挿入。アイレンズ埋め込み。毛髪植毛。

分離した各部分より神経(太い)を引っ張り胴体と結ぶ。
足りない分は絹糸で補う。木綿糸不可。

四肢に剥がした皮膚を貼付ける。良く延びるが足りない場合はメッシュ状に切り込みを入れて伸ばす。




グロい作業を終える頃には空が白んでいた。切り張りした部分が既に再生している。
さすがに全裸の少女アリスはアレなので、血を拭いドレスを着せておく。
後はコイツが目覚めるのを待つばかりだ。

『むぅ〜オナカがすいたデスゥ…』

開口一番それか。まぁいい、鏡でも見せて驚かせてやろう。

「起きたか…見てみるといい。自分の姿を」
『デェッ!?翠星石デス!アリスがいるデス!!』
『アリスがワタシで、ワタシがアリスデスゥ!』

やや混乱しているご様子。
アリスは…いや、自分がやったこととはいえ、俺自身も気持ちの整理がついていない。
しばらくは実装石のまま呼ぶことにしよう。
実装石は自分の顔をなで回し表情があることに驚く。
指のある手を眺め、豊かになった髪を手で梳いた。その指どうなってるんだ?

『ワタシはご主人様の望む姿になったのデスゥ?』
「あぁ、可愛いぞ」
『ご主人様…』
「なんだ?」
『オナカがすいたデス』

ぶちこわしである。だが中身が実装石なので致し方ない。
いつもの小皿に実装フードを盛りテーブルの上に置く。

「これからは椅子に座って食事するんだ」
『わかったデス』

うなづいた実装石は椅子に座るが早いか、小皿を片手で持ち上げフードを口中にかき込む。

『口が小さくて食べづらいデス〜』

フードで頬を膨らませながら不満を漏らす。翠星石なんだからそういうのはやめて欲しい。

「がっつくな。上品に喰わんか」
『全然、足りないデス』
「聞いてないし」

そうか、ボディフレーム胴体の隙間が胃袋で埋まってるのか。
胃が拡張したぶん今までの食事量では足りないと言うワケだ。
とはいえコイツに望むまま喰わすとぶくぶく太るしなぁ…

『おかわり欲しいデス』
「ダメだダメだ!太ったアリスなどありえん!」
『デェェェェ…』

徹夜明けなせいもあって食事をしたら眠くなってきた。
少し眠るか。休日だしな。

「俺は少し寝る。家の中で静かに遊んでろ」
『オナカすいたデスゥ…』

空腹感がよほど気になるようで俺の話はまったく聞いていない。
まぁいい。そういうのは全部後だ後。
俺は心地よい疲労感を身にまとってベッドに潜り込んだ。




目を覚ましリビングへ向かう。実装石がいない。
空腹に耐えかねて冷蔵庫を荒らし、そのまま中に閉じこめられたのでは?とも考えたが
あのボディサイズでそれはない。でも冷蔵庫は荒らされていた。後で殴ることにする。

その後1時間にわたって家中を探したが実装石はいなかった。
まさか本当にアリスになってお父様の許に行ってしまったのだろうか?
とはいえお父様って誰だ?俺じゃないのか?

日も沈み、暗くなりゆくリビングに立ちつくしていると玄関から物音がする。

『ただいまデス〜ゥ』

玄関から普通に帰ってきた。

「お前…どこに行って…?」
『レイゾウコのモノ食べてオナカもいっぱいになったから公園に行ってたデス』

そうか、すっかり忘れていた。身長も伸び、指のある手を備えた実装石にとって
玄関の鍵を開けてドアから外出することなど造作もないのだ。

『公園で野良共を見下して遊んでたデス。愉快だったデス』
『そしたらご主人様に似た人が来てステーキやオスシを食べさせてくれたデスゥ』

野良共を見下すって嫌なヤツだなコイツ。それよりも俺に似たヤツって…
コイツの中身が実装石なのは言動ですぐに解るはずだ。その上で食事をさせてたって事は
虐待紳士ではなく「」系か。

「馬鹿野郎!!」

思わず怒鳴りつける。公園で出会ったのが虐待紳士ならタダでは済まない。
今回は運が良かったとしか言いようがない。俺の怒りの半分は実装石が
家を出てしまうことを予想できなかった自分に向いていた。

『ごめんデスゥ。許してほしいデスゥ〜』

俺の怒りなど気にも留めず実装石お得意の媚びのポーズを取る。
普段の実装石なら殴るところだが、翠星石の容姿でコレをやられると弱い。
一気に脱力した俺はその場にへたり込む。

『デププププゥ〜この姿でこうやればみんなワタシの魅力にメロメロデスゥ』
『美しいワタシ万歳デスゥ。アリスになれば皆が愛してくれるっていうのは本当だったデス』

ズカズカとリビングに向かう実装石。靴を脱げ。
そしてリビングの隅にある、普段はトイレに使っている容器を持ち出すとスカートをまくり
下着に手をかけ…

『たくさん食べたら、たくさん出るデス〜』
「待て、待て、待て、待て!」
『なんデスゥ?ちゃんとトイレでするデス。じゃましないで欲しいデス』
「そのなんだ…翠星石がリビングの真ん中で脱糞とかありえないだろ」
『言ってる意味が解らないデス。デェェェェ…』

力み始めた実装石をあわててトイレに押し込む。

『デェェェェン!デェェェェン!せまいデス!こわいデスゥ』
『何も悪いコトしてないのに、なぜ閉じこめるデス!?』

泣きながらドアを叩く実装石にも聞こえるように大声で説明する。

「ソコで用を足せたら出してやる。終わったらちゃんと流せよ!」
『デェェェ…』

ベソをかく声とぶりりと排泄音が聞こえる。想像するな。想像するな俺。

『で、出たデス…』
「流せよ!!」

ドジャ〜流水音。そして悲鳴。

『デェェェェ!!ドジャーっての怖いデス!流されちゃうデス!!』

ドアを開けてやると翠星石こと実装石が俺の胸に飛び込んできた。
よほど怖かったのだろう。強く抱きしめてやることにする。いいね、こういうの。
ん?なんか臭くないか?

「お前…ちゃんと拭いたか?」
『あ、忘れてたデス』

エヘッと言う仕草をする。可愛いが使いどころ間違ってる気がする。
スカートをまくると下着は緑に染まっていた。

「洗濯するから脱げ。ついでに風呂だ」
『お風呂デスゥ』

実装石は目を輝かせて喜ぶと、俺の前で景気よく服を脱ぎだした。

「待て、待て、待て、待て!脱衣所で脱がんか」
『デェェ?いつもこうしてるデスゥ…』
「今のお前は翠星石なの!あと風呂は1人で入れよ」
『デェッ!?ご主人様はいっしょじゃないデス?』
「手も長くなったし1人で全身洗えるだろう」
『いやデスゥ。ご主人様といっしょがいいんデスゥ』

俺にしがみつきグズる実装石。
仕方ないので一緒に入ったが、実装石が大きくなった為いかんせん狭く
妙に恥ずかしかった俺は実装石の体を洗ってやることが出来なかった。
実装石は風呂が狭く感じるのと俺の態度のよそよそしさが不満のようだ。

夜も更けて、色々ありすぎて疲れた俺は早めに寝ることにする。
しまった、大きくなったコイツ用のベッドがないな。
悪いが今夜はリビングのソファーでも使ってくれ。

実装石は俺と一緒に寝たがったが断固拒否した。
一緒のベッドじゃ俺が意識しちゃって眠れないからな。
最後までグズった実装石をなだめてソファーに寝かしつける。ヤレヤレだ…
そういえば最近はなかったが以前はよくベッドに入れてやったもんだ。
少し寂しがりなところがあるからな。




「…まだ2時か」

早めに寝たが眠りが浅かったようだ。夜中に目覚める。
喉を潤しにリビングに向かうと、実装石がリビングの真ん中でカーテンを少しだけ開け
月明かりを浴びてすすり泣いていた。
大声で泣き喚くのは何度も見たが、すすり泣くのを見るのは初めてだ。
どうしたのかと声をかける。

『デスンスン…ご主人様はきっとワタシがキライになったんデス』
「なにを馬鹿な…」
『カラダも洗ってくれないし、ベッドにも入れてくれないデス』
「それは…」
『ご主人様の望む姿になったのに、ご主人様に嫌われてしまったデス』
『コレがアリスだというのなら、ワタシはアリスになんかなれなくてもいいデスゥ』

胸が痛んだ。
コイツはコイツなりに俺を慕い、俺と暮らす上でのルールに従ってきた。
比較的自由にやらせていたつもりだが、少なからず不満はあったはずだ。
その不満を露わにすることなく、自分の理想と引き替えに俺との生活を望んでいた。

俺はその気持ちに気付かず勝手な理想をコイツに求めていた自分を恥じた。

「……元に戻そうか?」
『デェッ?』
「元に戻すかと聞いているんだ。お前が昼間見下して遊んだあの生き物のように」

わざと意地悪く聞いてみる。実装石は少し視線を落とし何かを考えているようだ。
今のコイツの容姿は彼女たちの社会では大変なアドバンテージとなる。
それを手放すというのだから悩んで当然だ。
すぐに答えは出ないかと思い始めた矢先、実装石が口を開いた。

『モトにもどるデス』
『アイツラといっしょでいいデス』
『背なんて低くていいデス、指だってこんなにあってもじゃまなだけデス』
『手が短くたっていいデス、ジブンで洗えないなら髪だってこんなにいらないデス』

決意の強さなのか実装石は言葉を重ね、最後に俺の目を見て言う。

『ご主人様がいっしょにいてくれればソレでいいデス』

実装石の俺に対する想いを意外な形で聞いてしまった俺は
なんだか気恥ずかしくなり思わず茶化してしまう。

「腹の肉も元に戻るぞ?」
『デェッ!?そ、それはアトでドリョクするデス』

ホッとした。いつもの雰囲気だ。お互い似合わないなこういうの。

薬箱から鎮痛剤を出してジュースで飲み込ませる。簡単な麻酔兼睡眠薬だ。
作業の準備を始める俺に、薬が効いて朦朧とした実装石が話しかける。

『モトにもどったらオフロで洗いっこするデス』
「あぁ」
『モトにもどったらいっしょに寝るデス』
「あぁ」
『モトにもどったら部屋の真ん中でウンチするデス』
「…さっさと眠れ」




グロい作業を終える頃には空が白んでいた。後はコイツが目覚めるのを待つばかりだ。

『むぅ〜オナカがすいたデスゥ…』

開口一番それか。だまって鏡を見せる。
実装石は自分の顔をなで回し、表情の無くなった顔、焦点の合わない目、開きっぱなしの口を確認する。
指の無くなった手を眺め、前と後ろだけの髪を手で揺らした。

『デッス』

どういう意味か解らないが一言発すると、小皿を抱えて俺の足下までやってきた。
いつものように実装フードを盛りつけてやる。
実装石はそれを一つ摘み上げ口に運ぶ。

『デェェなんかおいしくないデスゥ。やすいゴハンなのデスゥ?』

そんなことはない。いつもと同じ実装フードだ…ってそうか
コイツは昨日、ステーキやら寿司を食ったんだっけな。
一度贅沢を覚えた舌には実装フードは不味かろう。
フードの入った皿を下げ、かわりに俺の朝食のシリアルを与える。牛乳もかけてやる。

液体の入った食事をどう食べるか困惑する実装石に、木で出来たスプーンを渡してやる。
指の無い手で不器用にスプーンを掴み、こぼさないように慎重に口に運び一口すする。

『ウ、ウマイデス!』
「そうか?」
『コレならマイニチでもいいデス!!』

…徐々に慣らしてフードに戻そう。
スプーンを使うコツを得たようで、どんどん口に運ぶ。

『ウマイデスー』
『ウマイデスー』
『ウマイデスー』
『ウマイデスー』
「黙って食え!」

盛大に食い散らかしている。初めて使うスプーンがそれを助長する。

『ウマイデスー』

そう言って俺にシリアルを掬ったスプーンを向ける実装石。
コイツが一度口に含んだスプーンに口を付けることが躊躇われたが
不思議と嫌悪感はなかった。
俺がスプーンを口に含むと実装石が笑った気がした。もう表情なんて無いのにな。
カラになったスプーンをしばらく見つめ、実装石は再びシリアルをがっつき始めた。

『ウマイデスー』
『ウマイデスー』
『ウマイデスー』
『ウマイデスー』
「だから黙って食えって!」

食い散らかす実装石。とりあえず…叩いた。

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