あらすじ 友人宅を転々としていた敏明は、不動産屋を回りフリーターの自分でも住めそうな家を見つけてさっそく契約して家の中に入った。 出来たばかりのその家が破格の値段で住人を募集していたのには訳があった。 侵入した実装石によって『マーキング』をされていたのだ。 実装石によるマーキングを受けた家は実装石からたびたび襲撃を受けることになる。 敏明と実装石の戦が始まった、新しくアルバイトを始める前に、何とかして野良実装の襲撃を食い止める策を練らねばならない。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 月曜日。 朝、早速窓を開ける。 実装石による襲撃があるため、出かけている間は閉めなければならないが、家にいる間は開けずにはいられない。 実装石の糞の匂いは、一晩その中で暮らしたかといって到底なれるようなものではない。 敏明は朝食を、家の中を漂う臭いをなるべく気にしないようにしながら食べた。 昼まで、新しい生活に必要なものは何か考えながら過ごした。 勿論その間侵入してきた実装石の相手もした。 「テギャアア!」 「テチャアア!」 「テジャアアアア!」 「テエエエエ!」 成体実装二匹 仔実装二匹 運よく金平糖だけで死んでくれたので、敏明はゴミ袋の中に入れるだけで済んだ。 「デ、デエエエ!」 「テ、テチ!」 「テチチ」 「テチィ?」 敏明は生き残った仔実装にスプレーを吹きかけた。 「「「テチャアアアア!」」」 一日目の経験から何となくわかっていたが、親子ずれだと親過去のどちらかが生き残る確率が高い。 好物の形をしているコロリを食べた親か仔が泡を吹いて死ぬのを見て、さすがに口にするのをためらうからだ。 単にいきなり死んだ家族におどろいているだけで、しばらくほおっておけば、コロリを食べて生き残った方も死ぬかもしれないが、敏明は庭に出た時に生きている野良実装がいたら問答無用でコロリスプレーを吹きかけて殺していたので、それを知る機会はなかった。 成体三匹 仔五匹。 昼、家の窓をしっかりと閉めてから、敏明は買い物に出かけた。 何しろ新しい家での生活で、必要なものは多い。 初日である昨日と、二日目である今日の朝の襲撃を見る限り、庭に撒くコロリも、もう少し買っておく必要がありそうだった。 食事も外で済ませる、 やはり異臭漂う自宅で食べるよりも外で食べる食事の方がおいしく感じた。 家に帰ってみると成体一匹が死んでいた。 マーキングの匂いが漏れないせいで、朝ほど集まってはこないようだった。 とは言え、もし来たのが家族連れだった場合、何匹かは生き残っているかもしれない。 コロリを撒いておけば安心だが、それですべてがかかるわけでは無い。 一応の対策はしたとは言え、長期間開けるのはやはり危険だった。 成体一 夕方、昼に注文した押し車が運ばれてきた。 これで今度からの死体運搬作業が楽になる。 敏明は思わず満面の笑みを浮かべた。 帰ったら窓を開ける、そうせずにはいられないが、そうすることで野良も寄ってくる。 「デギャアアア!」 「テ、テエエ?」 「テチチ?」 「テエ〜?」 「テエ、テエエ!」 「チャアア!」 親子連れはやはり直接スプレーを使うことが多いようだ。 親がコロリを食べ、仔実装がコロリを食べる前に敏明がやってきて、あるいは警戒して食べなかった個体に敏明がスプレーをかけて、止めを刺す事が多い。 「「「「「テチャアアア!」」」」」 ほぼ同時に悲鳴を上げて、仔実装たちは死んだ。 敏明が来るまでにコロリを口にして死んだ個体がいなかったから、もしかしたら賢い、あるいは愛情深い個体だったのかもしれない。 口に運ぶまもなく敏明にスプレーをかけられただけかも知れないが。 「デギャアアアア!」 夕方は短い。 窓を開けていても家族と成体が一匹来ただけで、夜になった。 成体二匹 仔五匹 夜、眠くなるまで、つまり自動的に深夜まで起きていることになるが、初日の経験を踏まえ、ゲームや漫画などを買ってきていたので暇つぶしには困らない。 テレビは無いためゲームはまだ出来ないのだが。 実装石の親子が二組現れた。 「テギャアアア!」 そのうち一匹の仔実装が地面に落ちたコロリを食べて死んだを見てか、仔実装以外は生きていたので、敏明は直接スプレーをかけて駆除した。 「デギャアア!」 「「「「テチャアアア!」」」 「テチャァァァァ!」 「デェェェ!」 「「「テェェェェ!」」」 「「チュアアアア!」」 その後、禿裸と成体が一匹ずつ来た。 「デエエエエ!」 「デズゥゥゥゥ!」 コロリで死んでくれたので、ゴミ袋に詰めるだけでよかった。 成体四 仔十一 敏明が眠るまでに来たのはこれだけである。 昨日より夜間の襲撃が少なかったことに敏明は安堵した。 深夜。 「デギャアア!」 「デズアアアアアァ!」 「デズウウウウウ!」 敏明が寝ている間に成体の禿裸一匹、野良二匹。 玄関の明かりに照らされたコロリを食べ、死んだ。 この日の合計 成体十五 仔二十三 総重量七十五キロ以上。 火曜日。 この日は昼に電子レンジを買ったくらいで、後は一日中部屋の換気と、実装石の相手をして過ごした。 朝。 「デギャアアア」 「デ、デボォ!」 「「「テチャアア!」」」 「テエエエ!」 「テジュ!」 「テウウウゥゥ!」 「デズゥアァ!」 「デ!デジャアア!」 成体五匹 中二体 昼。 成体一 帰ってきたときには死んでいたので声は無い。 夕方。 「デギャアアア!」 「デギャアアア!」 「テチュアア!」 「デギャアアア!」 「テズウウ!」 成体三匹 中一匹 仔一匹 夜。 大勢でぞろぞろやってきた。 家族ぐるみで仲の良かった実装石の家族で、大勢で来れば、危険は少なくなると、少なくとも何匹かは逃げ出せると考えたのだ。 楽園、実装にマーキングされた敏明の家に向かった実装石が帰って来ないことは、実装石たちの住む公園では噂になっていた。 この家族は比較的賢かったが、もしかしたら飼ってもらえるかもしれないという希望と、あるいはたとえ危険でも大勢いれば逃げ出せるとという判断から、比較的仲のいい者同士集まってやってきたのだ。 実装石の行動範囲は狭く、公園の周辺と、餌をあさるためのゴミ捨て場しか知らない。 もしかしたら、本当に楽園がどこかにあり、仲間たちが帰ってこないのも、楽園にたどり着いたからだと考もあった。 「テギャアアア!」 「テチャアア!」 「テビャアア! 賢かったので親は食べず、仔が先に食べてしまった。 数が多く騒がしかったので、この家族が庭に着く前から敏明は気づいていた。 スプレーと袋を用意して、悲鳴が聞こえた瞬間にスプレーを噴射しようと待ち構えていたのだ。 すぐに飛び出した敏明は、実装石が糞をした構えるたり、逃げたりする前に近寄って一気にスプレーを噴射した。 何匹か逃げようとしたのもいたが、敏明の行動が早かったのでとても間に合わなかった。 「デギャアアア!」 「「デズウウ!」」 「「「「「「テチャアァァァァァァ!」」」」」」 「「「チャアア!」」」 「「「テジョアアア!」」」 「チュバア!」 「チュブウ!」 「「レエエ・・・」」 「レジュ!」 成体三匹 仔実装十四 親指三匹 この夜は敏明が眠るまでそれ以上の襲撃はなかった。 「レ、レピィ・・・」 というかすかな声が庭から聞こえたが、敏明は気が付かなかった。 朝、敏明が庭を見ると、蛆実装が五匹死んでいた。 蛆がどこかからやって来たのではなく、昨日の家族とやって来たのを見落としてたのだ。 「レフー」 「レフ?」 などと鳴いていたのだが、成体や仔実装石の声が大きすぎて気が付かなかったのだ、その数五匹。 死体の陰に居たり、家族の悲鳴を聞いて、声を出さずに震えていたので、敏明は蛆たちを見落としたのだ。 そのうち蛆たちは周りの状況もわからないまま、落ちているコロリを食べて死でしまった。 敏明は蛆を割り箸で挟んでから、家族と同じごみ袋へ入れた。 成体十二 中三 仔十五 親指三 蛆五匹 初日と同じ六十キロ越え。 水曜。 昼に中古品のテレビを購入。 これ以降敏明は家の中で暇に悩まされることはなくなった。 どれだけ熱中していようと実装石の悲鳴に呼ばれるのは変わらないが。 朝。 「「デギャアア!」」 「「「チュアア!」」」 成体二匹 仔三匹 昼。 禿裸一匹 成体二匹。 敏明が買い物から帰ってきたとき、今までなかった事が起きた。 実装石が窓を割って侵入しようとしていたのだ。 こんな時のために、敏明は初日に窓ガラスをダンボールで覆っていたが、そのダンボールの覆いめがけて石を投げつけている成体がいたのだ。 敏明に気が付くと 「デシャアアア!」 と威嚇してきた。 周りの死体を見て地面のコロリには手を出さず、素手でなく石を使って窓を割ろうとした比較的賢い個体だったが、人間の強さを知らなかった。 敏明は玄関に置いてあったスプレーをつかむと、威嚇した実装石に近寄って噴射した。 「デシャアアアア!デシャアアアアアア!!」 近よってくる敏明を大きな声で威嚇していたが、敏明がスプレーをかけると 「デズゥゥゥウウウウウウ!」 と悲鳴を上げて死んだ。 幸いにもガラスにヒビは入っていなかった。 夕方。 「「デギャアア!」」 「「デチュァァ!」」 「「「デッチイィィ!」」」 成体二匹 仔五匹 夜。 「「「デッギャアアア!」」」 「「「デッチュウウゥゥゥ!」」」 「テッシャアアア!」 「テエェェェェエ!」 成体三匹 中一匹 仔四匹 深夜、寝ている間に一匹。 成体一匹 合計 成体十一 中一 仔十二 初めて六十キロ以下である。 木曜日。 朝。 「「「「デギャアア」」」」 「「「チャアア!」」」 「「レピィ!」」 成体四匹 仔三匹 蛆二匹 昼。 この日敏明は出かけなかったので、初めて昼間、実装石の悲鳴を聞くことになった。 敏明は、昼に活動する実装石の多さを実感した。 「「「「「デギャアアアア!」」」」」 「「「テスウゥゥゥゥ!」」」 「「「「「「テチャアアアァァァァァ!」」」」」」 「「「デギャァァァァ!」」」 「「テジュゥゥゥ!」」 「「「レ、レピイィィィ!」」」 成体八匹 中三匹 仔八匹 蛆三匹。 夕方。 「「「デギャアア!」」」 「「テッチャアア!」」 成体三匹 仔二匹 夜 「「「「デギャアアア!」」」」 「「「「デッチャアアア!」」」」 「「レピー・・・」」 成体四匹 仔四匹 蛆二匹 深夜。 成体二匹 合計 成体二十一 中三 仔十七 蛆七匹 金曜日。 朝。 成体六 仔二 昼。 成体九 中六 仔八 蛆三 夕方 成体三 中二 仔四 夜 成体七 仔八 深夜 成体二 合計 成体二十七 中八 仔二十二 蛆三 成体だけで百三十五キロ。 押し車にぎりぎり入るくらいであり、押し車を使っても重い重量である。 土曜 朝 成体三 中二 仔三 昼 成体 六 中一 仔二 夕方 成体二 仔一 夜 成体七 仔三 深夜 成体一 中一 仔四 合計 成体 十九 中四 仔十三。 百キロにぎりぎり届くかどうか。 日曜 朝、昼、夕、夜そして深夜を含む一日の合計 成体十五 中七 仔 六 蛆 八 七十五キロ以上。 一週間に敏明が殺した実装石の数 成体実装石 129 中実装 26 仔実装108 親指実装 3 蛆実装 23 総重量 530キロ。 月曜 「虹裏さん、あなたは懸命だった・・・」 リビングのソファに座り頭を抱える敏明。 正直なところ、敏明は虹裏氏を内心馬鹿にしていた。 たかが実装石ごときのために家を捨てるなんて、と思っていたのだ。 そんな家に住める自分はとても運がいいのだと思っていた。 マーキングの匂いなんてすぐに取れるだろうし、一月もすればすっかり普通の家になっているだろうと思っていた。 まだ一週間なので、臭いについては分からないが、その間の苦労については完全に見誤っていた。 格安の家賃の理由も今ではよく分かる。 もしこの家に敏明が来なかったなら、今頃ここは野良実装のたまり場になっていたことだろう。 もし敏明が禿裸にして公園にリリースするなり、あるいは逃げ出した実装石を殺さず逃がしていれば、ここまで大挙してくることは無かっただろう。 敏明は実装石の成体についてあまり詳しくなかった。 敏明は一週間前に比べずいぶんとやつれていた。 家の中を漂う実装石の糞の匂いのせいで、食欲がわかなかったのだ。 風呂に入ってさっぱりしようにも、洗濯物は外には干せない。 家の中に干しても、どうしても家の中に漂う糞の匂いが付いてしまう。 家を空けるわけにはいかないので、友達と遊ぶけにもいかない。 敏明は立ち上がって窓の傍へ行き、カーテンを開けて庭を見る。 死ぬ間際に実装石が漏らした僅かな糞のせいで、庭はすっかり汚れていた、すっかり野良実装の住処になった公園のようになっていた。 敏明の住んでいる地域では、燃えるごみ、つまり実装石を捨てるのは、火曜日と木曜日。 木曜日の昼から死んだ実装石の死体は、実装用ごみ袋へ入れて家の壁際に並べてある。 それだけで三百キロ近くある。 ゴミ捨て場がやや遠いということもあって、それだけでひと苦労だった。 頭を抱えていても、実装石はやってくる、それくらいは分かっていた。 敏明は、家の戸締りをしっかりと確認し手から家を出た。 まず、町へ行き、ネットカフェで公園の場所を調べた。 この辺りにある実装石が多く済む公園は フタバ第一、第二公園、愛護派に解放された実装石愛護公園の三つだ。 それぞれ、敏明の家から、二キロ、三キロ、四キロ離れていた。 この近くに他に大きな公園は無いようだし、これ以上の距離になると実装石の活動圏から外れる。 基本的に実装石は、公園内と、その周辺にあるゴミ捨て場でしか活動しない。 この敏明は虐待派ではない、だから実装石の住む公園だからといっていきなりバールのようなものを持っていったりはしない。 実装石にとっては大した違いわないが。 まずは下調べのために、公園に向かった。 フタバ第一公園。 明らかに実装石の縄張りと化しており、人の気配は全くない。 入口から中を確認すると、後は公園の周りをぐるっと一周回ってみた。 公園内からは「デスデス」「テチテチ」と実装石達の声がしていた。 半周回って公園の出口へ出た、そこからもう一度中の様子を見る。 敏明は今まで実装石に興味を持ったことがなく、実装石の住処になっている公園をじっくり見るのはこれが初めてだった。 かといって何の感慨もわかない、敏明にとって実装石はすでに見慣れたものになっていた。 その殆どが死体というのは、虐待派といえども滅多には無いことだったが。 「デス?デスー」 敏明に気付いた実装石が敏明に近づいてくる。 敏明は大急ぎで逃げだした。 実装石に興味がないのは今も変わっていない、殺すのでなければ近寄るのはごめんだった。 第二公園。 稀に人間の姿が見える、何となくだが仔実装の数を多く見かけるような気がする。 中に入ってよく見ようかと思ったが、やはりこちらに気付いた実装が寄ってきたので逃げる。 ここの公園にはリーダーがいたので、第一公園よりも統制がとれていたのだ。 仔実装が一匹でいても、他の尾らに食われるということは無いので、仔実装が良く歩いている。 そんな仔実装に人間が餌をやるのを、リーダーは知っていたのだ。 愛護公園。 園内は今までの公園と比べると、ずいぶんと綺麗だった。 それでも時折実装石の糞が落ちていたりはするが、糞や死体があちこちにあるといったことはなかった。 人間が実装石に餌をやり、実装石は嬉しそうに、あるいは必死で人間の撒いた餌を食べていた。 あちこちに段ボールがあり、人間が手入れをしたのかどれも綺麗だった。 同族同士で争うことも多い野良が、楽しそうに走り回ったり転がって遊んだりしていた。 内心ここが一番厄介だななどと思いながら、敏明は中に入る。 公園内が比較的清潔で、人も多いせいかすんなり入ることができた。 「デスー、デスー」 などと言いながら実装石が近寄ってきた。 今までの公園にいた野良よりも、ここの野良は比較的きれいだった。 注意深く見ていれば、今まで敏明が手にかけた実装石の中に、比較的きれいな個体もいたのだが、生きて動いているものは見つけ次第即スプレーをかけて殺し、ごみ袋へ入れていたので気が付かなかった。 「デスー」 「デスデス」 人間に対する警戒心がないのか、あるいは餌が欲しいのか、とても友好的とは言い難い敏明の周りに集まってくる。 愛護公園にいる野良は、人間は餌をくれる安全なものだと思っているものが多い。 勿論その中にも糞蟲的性質の個体がいるが、腹いっぱいに食べられ、かまってもらえるうちはおとなしくしてる場合が多い。 そうでないのももちろんいる。 それ以上集まってこないうちに敏明は逃げ出した。 愛護公園の空気は、無関心派の一般人を自認する敏明にとっても悪くなかったが、家の庭とゴミ捨て場まで大量の死体を運ぶ手間を考えれば、今からやる事に変わりはなかった。 幸いにもここは敏明の家から四キロも離れている。 実装石の足では実際そうそう家まで来ることはないだろう。 勿論家に来た時には即殺である。 敏明は気づいていないが、実はもう何回か来ている、そしてゴミに出している。 気づいたところで何も変わらなかっただろうが。 それから店に行って、必要なものを購入した。 家に帰った時は昼過ぎで、庭で実装石が死んでいた。 普通の成体と禿裸である。 「デス?デスー!」 一匹侵入を試みていた実装石がいた、敏明に気付いて逃げようとしている。 玄関からスプレーを取り出し、吹きかける。 「デギャアアアア!」 実装石の声も自分の動作も、もはや日常である。 新しい袋を取り出して死体を入れるのも、もういつもの事だった。 好き好んでやっているわけではないし、これ以上続けるつもりもなかった。 窓を開けずに、敏明は少し休むことにした。 夕方になると、敏明はコンビニ弁当を食べた。 気になって仕方なかった家の匂いも、出来るだけ窓を開けるようにしていたので多少は薄くなっており、敏明自身の慣れもあって、それなりに食べることができた。 それでも顔をしかめそうになったりはしたが。 実装石の糞をくらっても良いように敏明は合羽を着た、雨が降った時に着るあれである。 すぐに捨てられるよう百円の物を、上は二重にして羽織る。 下は長靴、歩きにくいが、靴が履けなくなってしまうよりはいい。 敏明は、コロリ、コロリスプレー、実装ごみ袋、折り畳み式シャベルを持って、押し車を押しながらフタバ第一公園へ向かった。 何故折りたたみ式シャベルかというと、普通のシャベルだとさすがに目立つし、何よりスクーターに乗せられないからだ。 押し車を押している時点で、すでにかなり目立つかもしれないが。 さて。 ついた頃には夕日はすでに落ちかけており、実装石も餌集めを終えて家に帰るころだ。 実装石に対する知識は相変わらずなので、敏明はただ運よく周りに集まってくれたなとだけ思った。 「デス」 「デスデス」 「デスデスデス」 「デスー?」 「デスー、デスー」 敏明の周りに集まっているのは、餌をよこせ、自分を飼え、と言っている実装石達だ。 愛護公園のように遊んでくれなどとのんきなことを言う実装石はこの公園には居ない。 集まった実装石達は、人間がしばらく無反応でいると、文句を言ったり、時に糞を投げたりしてくるのだが、敏明には分からなかった。 コロリスプレーを噴射して一掃してしまったからである。 「「「「デギャアアア!」」」」」 一瞬、家にいるのかと錯覚してしまいそうなほど聞きなれた声だった。 「デ、デス!?」 公園に帰ろうとしていた実装石の一匹が、敏明の仕業を見て、あわてて町へ逃げ出した。 流石に野良で、今まで生き残ってきただけあって反応は早かった。 敏明は追いかけようかと思ったが、敵の数は多い、先に他の実装石を仕留めることにした。 死体をシャベルで掬って押し車に乗せる。 押し車を押しながら、敏明は公園を散策する。 歩いていればそのうち野良がまた寄ってくるだろうと軽く考えていたが、裏口までついてしまった。 流石に野良は警戒心が強く、実装石の悲鳴のした方から来た人間を警戒していた。 流石に考えが甘かったと反省した敏明は、裏口にコロリを撒いてから、押し車を置いて、こちらを見ている実装石達の方へ早歩きで向かった。 実装石の走る速度は人間の歩行速度と同じ。 早歩きなら十分捕まえられると、敏明は逃げる実装石を追いかけた経験から知っていた。 「デ、デスー!」 勿論全力で逃げようとするが、追いつかれてしまう。 「デジャアアア!」 スプレーをかけられて死んだ。 「デエ!」 敏明は何も考えずにひたすら見つけた端から追いかけていく。 そして追いついたらスプレーをかける。 「デギャアア!」 追いかける 「デエ、デエエ!」 スプレーをかける 「デギャアア!」 追いかける 「デズウウ!」 スプレーをかける 「デギャアアア!」 何度かそんな事を繰り返していると、そのうち一匹が段ボールの中に入っていった。 何故こんな所にダンボールが、と不思議そうにしていると中から。 「デエ、デエ、デス!デスデース」 「テチ、テチィ?」 「テチ、テチ」 などと声が聞こえてきた。 実装石達は 「ふう、ここまで来たら安心デス、お前たち!ニンゲンが来たデス!侵入されないように家のドアを塞ぐデス」 「ニンゲンが来たテチィ?」 「家の中なら安心テチ、ママ怖がりテチ」 と言っていた。 実装リンガルを持たない敏明にはわからない。 とりあえず中に仔実装がいるらしいことは分かった、敏明は実装石が段ボールを家にすることを知らなかった、一先ず観察して様子をうかがうことにした。 五分ほどたった。 「デデ、何も聞こえないデス、ニンゲンはもう帰ったデス?」 「ニンゲンいなくなったテチ?」 「おうちが壊れるわけないテチ、ニンゲンはもうあきらめて帰ったテチ」 「だったらゴハンにするテチ!おなかすいたテチ」 「お腹すいたレチ、ママゴハンにするレチ」 「レフ?ごはんレフ?」 「蛆ちゃんゴハン食べるレフ〜終わったらプニプニレフ〜」 敏明には何を話しているのかは分からなかったが、ダンボールの中から 「デスデス」「テチテチ」時折 「レチレチ」「レフレフ」 といった声が聞こえてくる。 ダンボールの中から実装石の声が聞こえてくるというのが珍しかったので、さらに五分ほど待った。 公園に住む野良実装が、ダンボールに住み、その中に家族を作るのは珍しいことでもなんでもなかったのだが、初めて実装石の暮らす公園に入った敏明には新鮮に感じた。 親が入ってから十分ほどたった。 いい加減しびれを切らした敏明は、シャベルでダンボールを突いた。 中がどうなってるかわから無かったので、とりあえず突いてみたのである。 のんきに食事を始めていた一家は大騒ぎした。 「デスー!」 親が飛び出してくる。 「デ?」 居なくなったと思ていた敏明がいたので目を丸くする。 「デジャアア!」 大急ぎでまたダンボールの中に入った。 「デスデス」 「テチテチ」 とまた声が聞こえてきたが、そろそろ置いてきた押し車の事も心配になってきたので、今度は待たずに突く。 「デズー!」 親の怒鳴り声が聞こえるが、いつもの事である。 シャベルの先でふたを開ける。 「デエエ!」 中には驚いた顔をした親実装と、仔実装や親指、蛆実装がいた。 中にペットボトルやタオルなども見えたが、それだけである。 敏明は中にスプレーを噴射した。 「デズアアア!」 「「テチャアア!」」 「レチイイイ!」 ダンボールをひっくり返すと中から実装の死体やペットボトルやピンポン玉、タオルなどが出てきた。 敏明は少し考えた。 公園で野良の実装石を殺したら、その死体を始末するのはマナーかもしれない。 しかし実装石の集めたごみやガラクタも片づければならないのだろうか。 自分の良心に聞いてみたが、答えはONだった。 一応ダンボールは畳んで明日の燃えるごみに出すが、それ以上は知らない。 敏明は死体をゴミ袋の中へ入れ、畳んだダンボールを持って押し車の方へ向かった。 乗せた死体を食おうと野良が集まっていた。 早歩きで接近してスプレーをかける。 「「「デギャアアア!」」」 押し車を押して放置した死体のある方へ向かう。 「「「デギャアア!」」」 その死体を食っていた野良にもスプレーをかける、食べるのに夢中でこちらに気が付かなかったから楽だった。 押し車がいっぱいになったので、一旦家に帰る。 夕日はすでに沈み完全な夜になっていた。 夜、敏明はまたこのフタバ第一公園に来ていた。 何のためかといえば実装石を全滅するためである。 度重なる襲撃を受けた敏明は、もはや野良の襲撃をやめさせるためには公園に住む実装石を直接葬るしかないと思い至ったのである。 街頭の明かりがあるとはいえ、夜はやはり暗い。 今はじめれば何匹か見落としてしまうものもいるかもしれない。 だが、それは実装石も同じである。 さっき公園に来て知ったのだが、どうやら公園の野良はダンボールの中で眠るらしい。 つまり今ならば気づかれずに近寄って、ダンボールにコロリスプレーを直接噴射できるということである。 全滅させるなら、帰って今の方がいいかもしれない。 ねらって夜に来たわけではなく、一週間続いた野良の襲撃に心底うんざりして、あたりの公園を調査してから少し休んだら、この時間になったというだけだが。 敏明が公園に入っても、夕方の時のように寄ってくる野良はいない、実装石の姿も、ぽつぽつと何匹か見えるだけだ。 コンビニでの託児から帰って来たもの、この時間まで餌を探していたもの、あるいはただふらふらと歩く禿裸、事情は様々。 とりあえず見かけた端からスプレーをかける。 「「「「「デギャアアア!」」」」」 少ないと思っていたが、五匹も仕留められた。 「デス?」 「デスデス」 仲間の悲鳴を聞いて、まだ眠っていなかった野良たちがざわめきだす。 敏明が今使っているスプレーは、実装石に死ぬ前に悲鳴を上げる時間を与えてしまう。 吹きかけた瞬間に音もなく倒れるという訳にはいかないので、どうしても気づかれてしまう。 押し車を置いて、敏明は公園を歩きだす。 騒ぎに気づかず、寝ている野良に吹きかける。 「デギャアアア!」 「「「「「テチャアアア!」」」」」 この野良は木の幹によりかかるようにして寝ており、周りに仔実装が五匹いた。 まとめて全滅した。 ダンボールを見かけると、その中に噴射した。 「テギャアアア!」 「「「テチャァァァ!」」」 「「「レ、レピィィィ!」」」 直接かからなかったためか、蛆の悲鳴も聞こえた。 ダンボールをひっくり返す。 実装親子の死体と、車のおもちゃ、ペットボトルが出てきた。 どうやら段ボールの中には、ペットボトルが常備してあるらしいと敏明は知った。 中身を空にしたダンボールを平らにして、潰したのを分かりやすくする。 それから念のため、実装親子の死体にもう一度スプレーをかける。 「テチャアアア!」 どうやらスプレーの噴射を逃れた仔が一匹いたらしい。 念のためにさらにもう一度吹きかけるが、今度は反応がなかった。 周りを見ると、さっきまで歩いている実装を見なかったのに、今では昼のように実装たちが歩き回っている。 「デスデス」「デスデス」 何やら話し合っている用だ。 虐待派という実装石をいじめて楽しむ人間や、ストレス発散のために実装に当たりに来る人間が、この公園に時折やってくる。 実装石達は、人間がやってきて仲間がやられたらしいが、人間は帰ったのか、居るならどこにいるのかと、話し合っていた。 虐待派やあたりに来る人は、大抵何か喋っている、時に叫ぶ。 虐待派なら 「ヒャッハー!」 「糞蟲は消毒だー!」 あたりに来た人なら 「上司のバカヤロー!」 「この不景気でどうしろってんだよー!」 など 声を出さずに実装石を殺す人間は珍しいのだ。 黙ってバールを振り回す虐待派もいるが、その場合実装石の悲鳴が一定の場所から聞こえる。 という訳で、実装石達はこれからどうすればいいか話していた。 もう居ないのなら帰って眠らなければならないし、居るなら逃げなければならない。 実装石達が話している間、敏明は目に見える範囲にいる実装石をどうやって一掃しようか考えていた。 結局今までどうり一番近いやつからスプレーをかけて行くことにした。 「デデ!」 敏明の姿を見て驚く野良、反応の早いものは出来るだけ敏明から当遠ざかろうとした。 仲間の悲鳴、現れた人間、危機感の強い野良ならさっさと逃げようとする。 敏明に逃がすつもりはなかった。 「デギャアア!」 「デビイィィィ!」 「デギャアア!」 「デアアアア!」 「デズゥアァァアァ!」 敏明に驚いて固まっていたり、仲間が殺されるのを見てようやく逃げようとした実装石は、ほとんどその場から動けずにスプレーを浴びた。 危機感が強く、見るなり逃げ出そうとした個体も追いかけてスプレーをかける。 「デギャアア!」 「デジャアア!」 「デギャアア!」 そんな敏明の姿を見ていた野良が、一斉に逃げ出す。 別々の方向に一斉に逃げられては、さすがに追いかけようがなかった。 ので、園内を歩き回ることにした。 フェンスで囲まれた壁の部分にダンボールが置いてあることが多いらしいので、そちらから回っていく。 歩いて回ると、普通に歩いている分には見つけにくいような場所に置いてあるようだった。 木の陰や茂みの中、そういった所にダンボールはあった。 普段公園になど行かない敏明は、新鮮な気持ちでダンボール探しをした。 子供が宝探しをするような心境だった。 見つけたダンボールは片っ端からスプレーを吹きかけ、中にいる実装を葬り去ってゆく。 「「「「「「「「「「テチャァァァァァァ!チュァァァァァァァァ!!」」」」」」」」」」 時には十匹近い仔実装が中にいて、それが一斉にあげる悲鳴で思わずスプレーやスコップを放り出して耳をふさいだりした。 スプレーを吹きかけた後はダンボールをひっくり返して中身をだし、残らず平らにしていく。 中には糞まみれで思わず顔をそむけるようなものや、木の実やドングリなどが入ったダンボールもあった。 中にはダンボールの前であたりを見渡し、敏明を見つけると 「デシャアアア!」 と威嚇してくるものもいた。 スプレーを噴射して止めを刺した後、ダンボール中にスプレーを噴射してから、ひっくり返した。 要するに敏明の対応は全く変わらなかった。 中身が空っぽの段ボールもあったが、それも見かけ次第平らにした。 この辺りまで来るとさすがに数が少なくなってきたのか、木の陰からこちらを見ていたり、逃げ出そうとするのが二匹。 ここからは注意深く探さないと、実装石を見つけられないかもしれない。 危険を感じて町中へ逃げてしまった野良に関しては、さすがに探しようがない。 一旦かえって公園に戻ってくるのを待とう。 「デスデス」 「デスゥ♪」 押し車を押して、死体やダンボールを回収していると、一回目と同じく、仲間の死体をかじっている実装石がいた。 もちろんスプレー。 「「デギャアアア!」」 「テチュウン」 帰ってこない親を探しに来たか、他の野良に食われそうになって逃げ出したか、この公園ではダンボールの中や親の周り以外で見かけなかった仔実装たちを見かけるようになった。 かまわずスプレー 「「「テチャァァァァァ!」」」 押し車が満載になったので、敏明は家に帰った。 公園内からは 「デスデス」「テチテチ」 と声が聞こえてくる、声だけ聴くとあまり減ったようには感じない。 思わずくじけそうになるが、何とか気を取り直して家路を急いだ。 多め多めに買うようにはしていたが、このペースで行くと袋が足りなくなるかもしれない。 二回公園に足を運んだわけだが、そのたびに約30体の実装石を積み込んでいる、それが二回で60。 一回の往復で150キロ、二回で300. 敏明はぐったりとした、これを後何回繰り返すのかと思うとうんざりするが、帰ってきたときに庭に転がっている実装石の死体を見れば他に選択肢はなさそうだった。 幸いにして糞を投げつけられることがなかったので、服は比較的きれいなままだ、服は脱がずに敏明は家の中へ入った。 慣れ始め、薄くなったとは言っても家の中も実装石の糞の匂いがしていた。 敏明は三度公園へ向かった、公園の野良を根絶やしにするまで安息は無いと思いだしたのである。 三度目のフタバ第一公園。 騒がしかったのがすっかりおとなしくなっている。 この時間になるとほとんどの実装石はダンボールの中で眠っている。 ダンボールが無い者は、ベンチの下や、木の幹の近く、茂みの中に眠る。 その中には敏明にダンボールを破壊されたものや、敏明が持ち帰り忘れたダンボールを改めて組み立てて使うものもいた。 木の幹の近くに眠っていた実装石の家族にスプレーをかける。 「デギャアア!」 「「「「「テ、テチャアアアア」」」」」 「「レピ〜!」」 その木の近くにいた寝ぼけた一匹にも吹きかける。 「デギャアア!」 悲鳴が上がればさすがの実装石も起き始める、それまでの間にできるだけ仕留めておこうと、木の幹の周りに視線をやり、見つけた端からスプレー。 「デギャアアア!」 「「「テチャアアアア!」」」 「デギャアアア!」 「デギャアアア!」 「デギャアアアア!」 「「「「テチャァァァァ!」」」」 この辺りには見つからないので、他の場所へ向かう。 フェンスの周りに行くと、まだ倒していなかったダンボールから親や仔実装が出てきた。 連続して上がる悲鳴に危機感を覚えた親や、前二回の襲撃で親が死んだ子が出てきたのだ。 出てきた親にスプレー 「デギャアアアアア」 ダンボールの中にもスプレー 「「「「「「テチャアアアアアァァァ!」」」」」」 「テ、テエ!」 こちらを見て腰を抜かした仔実装にもスプレー 「テチャアアア!」 その仔実装が出てきたダンボールにもスプレー 「「「「テ、テチャアア!」」」」 勿論ダンボールはすべてたたみ、段ボールから出てきた死体にもスプレー 「テッチャア!」 勿論ぐっすり眠っているのんきな実装石もスプレー 「デギャアアア!」 のんきな一家もスプレー 「デギャアアア」 「テチャァァァァ!チュアァァァ!」 西に出口、東に裏口、北と南はフェンス。 北側のフェンスは、二回目の襲撃の時に回ってダンボール一家を全滅させた。 今回南側を制圧したので、残るダンボールは、木の間に隠れているものと、出入り口の壁側だけである。 ふと、公園のトイレを見かけると、敏明はその中へ入っていった。 どこにでもいる実装石だからもしかしたらトイレにも居るかもしれないと思ったのだ。 「デスデス」 「デスデス」 「デスデスデスウ」 入ってすぐ三匹の野良がいた。 日に何度も続く襲撃に不安になり、灯りのあるここへやって来たのだ。 「デ、デエ!」 こちらを見て驚いた声を上げる。 スプレー 「「「デギャアアアアア!」」」 個室の方も見ておく。 洋式トイレに成体一匹仔が二匹 こちらを見ておびえているようだがスプレー 「デギャアアア」「テチャアア!」 隣の和式には・・・両目を赤くしてトイレを跨いだ成体がいた、。 目が合うと成体は 「デス!デスデス!」 どうやら文句を言っているらしかった。 実装石は個体差が激しいと言われるが、特に顕著なのが出産と成長過程である。 仔実装を二匹から五匹生むもの。 蛆実装を十匹前後産み、それが親指、仔、中、成体になるもの その中でも繭を作って変態するものと、そのまま成長するもの 出産時に仔についている粘膜にもさまざまな説があり 単にべたべたするから親がなめとっており、そのままでも問題ないもの。 そのままにしておくと生まれた仔が窒息してしまうのでなめとっている 固まって、生まれた仔が蛆実装になってしまうからなめとている など様々な説がある。 小さい仔実装を親指と呼んだり、鳴き声で判断したりと、人間側の混乱もある。 中には蛆のまま何年も生きたり、巨大な蛆になったり、仔実装が中を通り越して成体になったり。 都市伝説じみた話の中には、人間になる実装石や、六メートルを変える巨大実装、人間と交配して黒髪の実装が生まれてくるなどもある。 実装石は両目が緑で妊娠し、赤だと出産する。 敏明はそんなことは知らないので、両目の赤い実装石が何をしているのか気になった。 公園には両目が緑になった実装石もいたのだが、倒すのに夢中で敏明は気づかなかった。 気づいても変わった実装石だなとしか思わなかっただろうが。 家で始末した実装石には両目が緑の者はいなかった。 公園の外に出るのは実装石にとって危険であり。 行くなら子を産んでからと考えたからである。 「デエ!、デスススス・・・」 幾ら抗議しても敏明がいなくなる様子がないので、実装石はかまわず仔を生むことにした。 襲ってくる様子がないので安全と判断したせいもある。 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」 総排泄口から蛆実装が出てくる、敏明は興味深そうにそれを見ていた。 「テッテレー」というのは蛆実装が生まれてくるときにする鳴き声である、この世に生を受けた喜びを表している。 親は便器に落ちた蛆実装を拾い上げ、粘膜をなめ始める、間に合わないときには近くの親指の方へ置いて新しい子を取る。 親指実装は親が側に置いた蛆実装の粘膜をなめている。 「レッチュ〜ン♪」 粘膜をなめとられた蛆実装は、親指になった。 親指に粘膜をなめとられた蛆実装も、親指になった。 「レッチュ〜ン」 どうやらこの実装石は、粘膜が固まるの遅くするためにトイレで出産するタイプの実装石だったらしい。 親の目が元に戻るころには、全部で十匹の親指がいた。 「デエ?デッス〜ン♪」 その様子を黙ってみていた敏明に不思議そうな声を上げた後、お愛想をした。 残念だが何の効果もない。 へえ、実装石ってこんな風に生まれるんだな、と感心した敏明は、それを教えてくれた親実装と、生まれたばかりの親指にスプレーをかけた。 「デギャアアア!」 「「「「「「「「「「レッチャアアア!レッチイイイィィィィ!」」」」」」」」」」 親実装はなぜ、と敏明を見たが、その時敏明はすでにトイレを出ていた。 「「「「「「デッギャアアアアアァァァ!」」」」」」 それからもスプレーを噴射して回った敏明だが、さすがにもう実装石の姿は見えなくなっていた。 夜にこれ以上さがしても見つからないだろうと、敏明は家に帰ることにした。 敏明が公園を去るころには、実装石の声はほとんど聞こえなくなっていた。 だがこれで終わりではない、まだ見落とした実装石が何匹かいるだろうし、一度に仔を十匹近く産む実装石なら、ほんの数匹で公園をもとどうりにしてしまうだろう。 そもそもまだ二つも大きな公園が残っていた。 火曜日 早朝、敏明はまた公園に来ていた。 この時間に来たのは、今日がごみの回収日だからだ。 あたりはまだ暗く、実装石達はまだ起きだして無かった。 流石に敏明も疲れていたが、ここで手を抜いてしまっては今までの苦労が水の泡である。 敏明は仔実装一匹漏らさぬよう、うっすらと明るくなり始めた公園内を歩きだした。 夜間に比べて格段に回りが良く見える、巧妙に隠されたダンボールや、持ち帰り損ねた死体など。 木と木の間に隠されたダンボールにスプレーをかける。 「デギャアアアア!」 「「「「「テチャアア!」」」」」 巧妙に家を隠したからには賢い個体だったのだろうが、寝ている間にスプレーを噴射されてはどうしようもない。 木の根元で寝ていた実装石にも吹きかける、夜に来た時に見落としたか、逃げ回ってここで寝たのか。 「デシャアアア!」 悲鳴に起きだした実装石、まだ寝ている実装石、あれだけ始末したというのに、まだ残って居たのだ。 流石に見つける間隔はあいてきたが、動き回っているのもいた。 スプレー 「デギャアア!」 ダンボールに草を張り付けてカモフラージュしたダンボールも見つけた。 スプレー 「「テチャアアア!」」 それから公園を隅々まで探したが見つかったのは野良が二匹 「デギャアア!」「デギャギャアア!」 小さくて見えにくい仔実装五匹 「テチャー!」「テチャアア!」「「テチャァァァァ!」」「テエエ!」 公園を隅から隅まで何度も見渡したが、これ以上は見つからなかった。 それでも油断はできないが、後は時折公園を訪れ、見かけたものを始末すれば大丈夫だろう。 一仕事終え、晴れやかな顔で敏明は公園を後にした。 家に帰れば、実装石の入ったごみ袋の山を何度も往復してゴミ捨て場まで持っていくことになる。 こうして、フタバ第二公園の実装石駆除は完了した。
