何を思ったやら続きが脳内で出来てしまったので書いてみた。 「固められた親仔」続編・番外編になります。 ちょっと視点がおかしいところもありますが、 無理矢理設定を作ってしまっています。 他スクのネタを引用している面もあります。 【期間限定の御品書き】 「すいません、お願いがあるんだけど、いいですか?」 敬語になっていない問いかけを受けたのは職場での休憩時間。 声をかけて来たのは、この社内でも有数の実装石虐待派で有名な男だった。 「何? 内容にもよるけど手短にお願いします」 仏頂面を隠すことなく、弁当のおかずをぱくつきながら返答する。 「実はですね、協力してほしい事があるんです。 この写真、見覚えありますよね?」 と、男が私の机の上に一枚の写真を置いた。 私はその写真に見覚えがあった。 以前私の部屋に空き巣行為した挙句に漁りまくりの汚しまくりにしたため、 私のおしおきとして透明オブジェになった実装石の写真だった。 「何、コレ。まぁ覚えあるっちゃ、あるけど」 「実は今、このオブジェ、俺の家にあるんですよ」 「・・・はぁ?」 まぁ虐待派だろうし、どうせ親が死んだか殺したかで回収したのだろう。 そのあたりは想像つくし、たいして興味もない。 「だから何?」 「実はですね、この仔蟲、全く反応しないんですよ。 で、コレを作った貴女なら反応するかなって思って、協力して欲しいんです」 「私虐待派じゃないし。何で私がそんな事しなきゃいけないわけ?」 「お礼はしますよ。 こいつらから発生した被害額、俺が負担します」 「何で知ってる訳」 「小耳に挟んだんですよ。で、この写真のようなおしおきしたって話も。 なのでコレを手に入れた時、貴女だろうって分かったんです」 「へぇ・・・。かなりの金額だけどいいの? それはそれで有難いけど、そこまでするもんなの?」 「そこまでするもんです。というかそれを補えるからお願いするんです」 男の言葉は意味深だった。 「ねぇねぇ、何アイツ? 何話しかけてきたの?」 隣の席で仕事する同僚が話しかけてきた。 「なーんか、お楽しみの為に協力しろってさ。 まぁ、こないだの実装石の空き巣被害のお金出してくれるって言ってたから、 引き受けたけどさ」 「てことは実装石関係? 嫌だなぁ、あたし。 あいつらって、臭いじゃん?」 「うん、私も大っ嫌い。 正直、あれらを飼ってる連中の考えもわからないから」 「だよねぇ。あたしなんか彼氏が飼ってるからさ、 あたしと実装石どっちが大事なんだって問い詰めた事あるよ」 「やるねぇ」 「お陰であたしが遊びに行ってる時はケージに閉じ込めてくれてるから、すっごい優越感」 「いい彼氏持ったじゃん」 「でしょでしょ」 大抵の愛護派は恋人すら気にしないか、とんでもない事になるまで気付いていない。 そのとんでもない事とはまぁ話すに及ばず、実装石の身勝手な歪んだ独占愛が原因だが。 そもそも実装石に子孫を残すための遺伝子交配構造(要は異性別)をもっていないのも おかしな話だがまぁそれはどうでもいい。 聞いた話ではマラは遺伝子異常らしいが。 そう考えると連中の増殖が単細胞にしか見えず、更に嫌悪を増幅させる。 ま、実際はクローン増殖とか言うらしいので間違ってはいないだろうが。 ・・・親戚が実装石関連の仕事してるから知ってるとはいえ、腹立だしい。 「で、いつ行くの?」 「明日」 「早いね」 「面倒事はさっさと終わらせたいじゃん」 「あ、そういうことね」 その後も他愛もない会話をしながら、私はその日を終えた。 次の日。仕事休み。 私は言われた宅の前で引き受けた事を少しだけ後悔した。 なにこのでっかい屋敷。 そこには少し昔のアパートすら簡単に建てれるだろうと思えるくらい広い敷地。 そしてそれに見合ったでかい宅が建っていた。 あの虐待派の男、こんな立派な家持ってたんかい。 だが逆に、これだけ広い敷地を持っていれば、どこかで分岐する形にして、 自分の住まいと実装石の保管環境を分けて作れるだろう。 大抵、実装石を飼っている人間の殆どが独特の匂いを持っているが、 あの男にそれがあまり感じられないのは、常に接触する訳ではない為なのだろう。 何故か私は妙に納得してしまった。 そして、なんかとんでもない事を引き受けたような気がしてきた。 「お客様デス?」 「ひっ!?」 唐突に。 正門の脇の小さな扉から実装石が姿を見せ、私は思わず声を出してしまった。 「驚かしてすみませんデス。お客さまデスね。どうぞお通りくださいデス」 「しゃ・・・喋った!?」 「ニンゲンの言葉を喋るワタシタチは珍しいデスか?」 私の驚きに対し、実装石は冷静に問いかけてくる。 大抵、人間の引いた反応に対してすぐ増長してくる連中だが、こいつは何故か大人しい。 「ああ、ワタシタチはニンゲンサマの言葉を教えられた個体デス。 ココで仕事しているワタシタチは皆言葉が喋れますデス。 何かあれば申しつけ下さいデス」 敷地内の方から何やら棒を取り出し、器用に正門の扉をあける実装石。 「どうぞお入りくださいデス」 ぺこりとお辞儀をする。 しかもその姿勢のまま静止しており、私が入るまで動かない様子だ。 なんて奴だ。 思わず声に出そうになるが、その言葉を飲み込んで私は門をくぐる。 その実装石は私が門をくぐったのを確認してから姿勢を戻し、また器用に門を閉める。 私にまた一礼をして、 「ついてきてくださいデス。案内しますデス」 キックボードを改造したような機械に乗り、促してきた。 実装石は足が短い分非常に遅い。人間の足の速さに合わせた設計なのか、 機械のスピードは人間の歩く速さそのものだ。 その光景は異常であるが、それを省けばまるで使用人のように案内人を務めている。 しかし、奴は「仕事」と言った。つまりは使用人扱いなのだろうか。 「失礼しますデス」 奴は屋敷の玄関をこれまた器用に開けると、慣れた手つきで私を促してきた。 何だこいつ。マジで。 行動がどっかの高級ホテルのホテルマン並みの動きするじゃないか。 機械から降りて玄関の脇にある設置場所だろう金具に引っ掛け、 手を差しのべながら上がるよう促す。 マジックハンドみたいな棒を両手で操ってスリッパを私の前にさしだす。 私が靴を脱いで上がると今度はまた違う色の棒を持って靴を直している。 私がスリッパを履いたのを確認し、自分も靴を脱いで実装石サイズの段を上がって これまた実装石サイズのスリッパに履き替える。 今度は屋敷内専用なのだろう、また機械に乗って、部屋を案内する。 「お手間をおかけして申し訳ありませんデス。 ご主人サマをお呼びいたしますので、暫くお待ちくださいデス」 短すぎる足で器用に正座しながら、深々とお辞儀をして襖を閉める。 私は実装石の違和感に眩暈を覚えそうになった。 公園の野生やそこらで歩いている飼い実装石とは全く違う。 何なんだこいつら。 違和感はあれど、接客業並みの対応するとかどんな性格しているんだ。 糞蟲な兆候もなく、寧ろ機械的に人間に近い行動をこなしているとか何なんだ。 というかあれが実装石とかおかしすぎる。 一体どんな事をしたらあそこまでできるようになるんだ? そんな事を考えつつ悶々としていると。 「失礼いたします」 向こうから女性の声がし、実装石が襖を開ければ。 そこには正座して深々と礼をする一人の女性。 「わざわざお越し頂きありがとうございます。ここの妻でございます」 え。 妻帯者だったんかい!! 心の奥で思わず突っ込む。 「・・・とまぁ、形式で堅苦しいと思いますので、気楽にどうぞ」 と女性は顔をあげてほほ笑んだ。 なんじゃこの美女は。 ていうか虐待派で妻帯者で奥さん美人とか揃い過ぎ。 「夫は今アレを取りに行ってますので、少々お待ちくださいな。 というか私もアレを見てついつい楽しくなりまして」 奥さんも虐待派なのかい。 突っ込みたい衝動があるが行動する気力も起きない。 確かに同じ虐待派なら結婚していても衝突する事は少ないだろう。 寧ろ嬉々として一緒に行動する気がする。 「私自身凄く気になって仕方がないんですけど、一体どうやって固めたんですか?」 奥さんが話しかけてくる。 「いや、アレらは一晩じっとできたら解放するって話で固められただけだし」 私は敬語の対応すら忘れて地で話してしまった。 しかし奥さんは全く気にしていないようだ。 「でも糞蟲って、意外に人間の指示聞かないんですよ。 それをどうやって言う事聞かせたのか不思議で」 「あー・・・。目の前で親を叩いたり熱湯攻めにしたり氷埋めしたりしたからかなぁ」 「それだけですか?」 「いや、動いたら殺すって脅しもかけた」 「うーーん、それだけであそこまで綺麗に固められるって不思議ですよ。 私も試してみたんですけど全くできなくて」 試したって・・・真似したんかい! 更に心で突っ込み。 「何で試したわけ・・・?」 唖然として思わず問いかける。 「可愛いじゃないですか。動けなくなって庇護を求める様が。 糞蟲が自分の置かれている状況を理解できないのとか、 状況を理解した時の絶望の様とか、 その卑しい思考を隠さない顔で、媚びようとしてもできないあの無様な姿とか。 糞蟲ほど面白い物はないと私は思っているんです」 すげぇ。 生粋の虐待派じゃんこの奥さん。糞蟲限定っぽいけど。 虐待派の男にゃうってつけの理解者だろうなぁ。 と、その時。 「ご主人サマがいらっしゃいましたデス」 実装石が襖を開ければ。 「お待たせ。すみません、わざわざ」 昨日の男の姿。その手には小さな箱を持っている。 「いいけど、私に何頼もうとしてる訳?」 「こいつ覚えてます?」 箱を開ければ、完全に放心した状態の仔蟲の姿。しかし固められた状態ではない。 「いや、実装石なんて皆同じにしか見えんから」 私の声に仔蟲がはっと私を見た。直後。 「テギャアアアアアァァァァァ!!!!!」 唐突に叫び、箱の中で蹲ってぷるぷると震えだす。どうやら私を覚えているらしい。 「おー、いい反応した」 「あら本当、可愛い」 可愛いんかい。 私には五月蠅いだけにしか思えないのだが。 そんな仔蟲の絶叫を意にすることなく、 「お茶デス」 と机にお茶を乗せる実装石。 直後、 「テチャ!! テチテチ! テチャアアアアアア!!!」 成体の声に反応したようで、仔蟲が叫び出す。恐らく庇護を求めているのだろう。 声に視線だけ向けるが。 「・・・・・・」 ふいっと完全に興味のない様子でそっぽを向き、 「失礼しましたデス」 と部屋を出て行った。 「テチャアアアアアアアア!!」 見捨てられたと思ったのだろうか。これ以上にない絶叫を上げる仔蟲。 「五月蠅いなぁ・・・」 思わずぼやいた声に対し、 「まぁ一般人からしたらこいつらの叫びって不快感しかないからなぁ」 反論するかと思いきや、冷静な夫婦。 そういえばこの男、虐待派としては有名だが悪評は聞かない。 一般人への理解があるのも巧くやっていけている証なのだろう。妙に納得してしまった。 「悲鳴とか絶叫って、虐待派が好むくらいですものねぇ。 あとは鍋派かしら?」 「そういえば今年の秋仔って食いに行ったっけ?」 「いえ、まだですよ」 「じゃあ今度の休み行くか」 「あら、嬉しい」 「昨年にキープしといた皮の漬物とじそ酒があったはずだからそれ出して貰おうか」 「そういえばそうね、楽しみだわ」 虐待派だけではなく鍋派でもあるんかいこの夫婦。 「今年は結構流されてるらしいからまだ間に合うと思う。 まぁ冷凍保存モノが多いかもだけど聞いてみる」 「生きたままも楽しいけど、徐々に生き返りながら食べられてる様も楽しいわ。 あの悲鳴、堪らないもの」 「今年はどんな声が聞けるか見物だけどな」 おーい、そこの夫婦、帰ってこーい・・・。 ともあれ。 私は夫婦に案内され、とある区画に入る。 「コレ着てね」 男に差し出されたのは緑色の上着と下衣、帽子。まるでどっかの衛生管理化環境だ。 実装石のコスプレと思われそうな緑色だけは頂けないが。 「慣れない人には結構きついから、マスクも忘れずに。 あと、体液飛び散ったり、糞投げとかで顔かからないように気をつけてね」 成程、匂いと汚れ対策か。 確かにこれなら匂いが染みつく率は低い。 色は体液の色と混合して気持ち悪さを軽減しているのか。 ここには自由に動いている実装石の姿はない。近づく事すらないのだとか。 「あとは、この姿イコール虐待派って思われるので、凄く効果的なのよ」 それって、姿の地点で虐待開始って事ですかい、奥さん。 私まで虐待派の仲間入り状態とか・・・。まぁいいや。 ともあれ、厚い扉を男が開ける。 直後 「「「「「デギャアアアアアアアアアア!!!」」」」」 とんでもない音量の悲鳴が湧きおこる。 一体何匹いるんだ、この空間。 開けた先には、床から天井まで続く檻、檻、檻。 一定の高さで区切られ、一段にいくつもの檻が連なっている。 まるで実験室の保管所のような光景だ。 一番下の空間を除けばその檻の全てに、実装石が入っている。 先ほどまでの高級な屋敷の印象が一転してしまっている。 「いらっしゃいナノダワ」 段と檻の間には通路のような足場があり、その一か所に赤い物体が立っていた。 「紹介するよ。この区画の管理石をしてもらってる実装紅だ」 「実装紅?」 「ワタシを見るのは初めてダワ?」 この屋敷の地点で人間の言葉を喋る連中には慣れた。 「いや寧ろ実装石に他の種族がいるとか自体知らんのだけど」 取り敢えず思ったまま返答する。 「実蒼石くらいは知ってるダワ?」 「あー・・・何か聞いたことはあるかも。見た事はないけど」 「それと同じと思って貰えればいいのダワ」 「分からんけど言いたい事はわかった」 「ダワ」 私の言葉に彼女(?)は満足したようにまた檻の確認作業に入って行った。 「やかましいけど、ここは実装石の生産所。 ここから生まれた連中から、賢い奴と糞蟲を分別するんだ」 「で、賢い奴はブリーダーに送ったり躾てここの使用人にしたりします」 つまり、さっきまで働いていた連中はここから生まれたということか。 近寄らないと言うのもわからなくもない。 どうやって躾たのか気になるが、別に自分がやりたい訳でもないので黙っておく。 「養鶏場じゃあるまいし」 「いや、もうそれで表現は間違っちゃいないよ」 「はぁ!?」 私のぼやきに軽やかに返答され、思わず叫んでしまった。 瞬時だけ、やかましかった連中が静かになった。 「そもそも俺、野良拾うなんて滅多にしないから」 公園などでの虐待行為はよくある事らしいが、拾う事はまずしないとか。 確かに自宅にこれだけいれば普通拾うまでもない。 「じゃあ何で今回の奴は拾ったのよ?」 「実際に拾ったのは私」 私の突っ込みに奥さんがにこにことフォローを入れた。 「公園で糞蟲観察が好きなんで、時々見に行くんですよ。 で、偶然リンチにあってる禿裸を見つけまして。 リンチしてる連中が食おうとしているのに食えない仔らに癇癪起こしてるのを見て、 どっかでおしおきされた連中だなって気付いたの。 で、糞蟲をイビリ倒してみれば、座った姿勢で硬直してる子蟲がいるでしょう? 興味湧かずにはいられませんよ」 成程今回の発端は奥さんだったのか。 というか公園でイビリ倒すとか。 美人人妻が公園で爽やかに実装石を殺していく様を想像すると非常に恐ろしい。 「それで、持ちかえって夫に見せたら夫も興味を持ちまして」 「で、俺が会社でそういうおしおきしたって話を聞いたもんで、今回に至ると」 理解はしたが何か納得したくない気持ちの方が強いんだけど。 ・・・・・・諦めた。 養鶏場もどきの隅っこに、ソレはあった。 「一応、死んでた奴もこれで保管してます」 「見せなくていい見せなくていい」 でかい冷蔵庫を開けようとしているのを制する。 自分がおしおきしてできた実装石の死体など、どの一般人が見たいんだ。 「いえ、実は何を使ったのか教えて欲しいの。 それぞれ違う物で固めているみたいなので、参考にしたいの」 「参考にするまでのモノじゃないんだけどなぁ・・・」 思いっきり困る事言ってくれる奥さんにどうしたものかと考えてしまう。 正直、死んだ実装石を見るなどごめん被る。 「私の知ってる限りで話するから、それでも構わない?」 「いえ、できれば実際に見せて欲しいの。 どうやってあそこまで綺麗に固めたのかが、どうしても気になるの」 何か面倒な事になってきた・・・。 嫌な予感はコレか。 「実はこいつ、自分でどうやったのか、齧って脱出したんだ。 だからこいつに使われてたのが何なのかも気になって」 「ボンドだけど、そいつ」 私はさらりといってやった。 「見ただけで分かるんですか!?」 驚く奥さん。 そこまで驚くほどの事なのだろうか。 「いや、齧って脱出できるようなのは其れしか思いつかないから。 あとの残りの連中は迂闊に食ったら死ぬ有機溶剤だし」 「ああ、だから拾った時生きてたのに次の日に死んでたのね」 となると。 「てことは一匹残ってたと思うんだけど」 「そいつは売れたんですよね」 「・・・・・は?」 今、何と? 売れた? 「作り方が知りたくて虐待派専用サイトで動画を作って情報を募ったら、 こいつが欲しいって人が出てきてねー。 冗談でオークション形式にしたらとんでもない金額で売れてしまったんだ」 「いくらよ?」 「5万」 「はぁ!?」 「凄いでしょう? 私たちの実装石商業よりは少ないけど、 たった一個の生きたオブジェにこんな金額がついたんですよ。 因みに自分も作って欲しいって人もでてきてます。まぁ強制じゃないですが。 なので、もしよければ手伝って欲しくて」 「ちょーっと待ってくれない? 私そこまで話聞いてない」 「ええ、だってこの話はおまけみたいなものなので」 私は困った。 正直、違う面での収入は非常においしい。 しかし嫌いな実装石関係とかそれはそれで嫌だ。 「手順の説明だけじゃダメ?」 「先ほども言ったように、私たちで試したけれどうまくいかなかったんです」 「選んだ奴が悪かったんじゃ?」 「それはないと思います。糞蟲も賢い奴も馬鹿も既に試しましたから。 貴女の協力が欲しいんです。 もちろん、強制じゃないですし、売上の殆どを提供します」 何だ今の爆弾発言。 「殆どってどゆこと」 「先ほども話したように、私たち夫婦は実装石商業を行っています。 需要の割に結構収入あるんですよ。この家見て頂ければわかるかもですが。 今回の件は収入の為ではなく、虐待派の趣向の一部。 少しやりとりの出費は補う必要がありますが、 それ以外の収入は全くなくても問題ないのです」 「寧ろ出費になっても構わない、くらいの遊び心だと思って貰えれば。 だから補えると話したんですよ」 あー、そういうことか。 つまりは修理代はこの件で得た収入から渡しますということか。 まぁこの件を拒否しても出してくれるらしいが。 しかしその後の収入もこちらに渡すとかマジどういう神経しているんだろう。 夫婦の実装石商業の収入がどんなものかは分からないが、家を見ればまぁ想像に難くない。 「正直、実装石なんかとは関わりたくないんだけどなぁ・・・」 「あ、直接触るとかは極力避けるようにしますので。 使用人たちにやらせます」 「できんの!?」 言いかえれば自分の同族を自分たちの手で虐待するという事になるのだが。 「何のための使用人だと思ってるんでしょうか? お手伝いさん的な事だけでなく、実装石そのものの汚い作業もさせてますよ。 同族だからこそ糞蟲もいい反応するんで楽しいし」 「なのでやって欲しいのはオブジェ作りの作業だけになるかと。 有機溶剤って話してましたから、扱いにも慣れてますよね?」 「まぁ慣れてるっていうか趣味の一部で持ってるってだけだけどねぇ・・・。 つか、虐待もできる実装石って何。糞蟲がベース?」 「いえ、糞蟲は人間に従う事自体しませんよ。無論賢くて情愛に強い奴がベースです。 ただ、それが出来るほどの躾と訓練を受けているという事です」 「愛情ある個体が虐待できるとかどんな躾なんだか」 「知りたい?」 「いや結構。関わりたくないから」 「それが賢明です」 奥さんが苦笑する。 「話を戻しますね。協力お願いできますか?」 私は考えた。 正直、収入の面ではおいしい。非常においしい。 だが実装石というのが待ったをかけている。 実際に触るのは同族で私が直接触る事はないようだが、見るのもあまり好きではない。 だがあの空き巣被害を受けてから、 もう少し周囲へのセキュリティ面が強い地域へ引っ越したい気持ちがあった。 引っ越しも楽ではない。 その出費も考えれば、今後も収入がある可能性がある方に賭けてみるか否か。 「何か気になる事でも?」 「いや迷ってるだけ」 「出来る限りのフォローはしますよ。 俺ができる事は限られてるけど、妻がフォロー入りますから」 「というと?」 「俺に関わりすぎていると貴女も虐待派と思われてしまうかもしれません。 妻は実装石虐待派ですが、実は知ってる人は殆どいないんです。 ブリーダーだとは思われてるでしょうが。 妻は他にも色々な趣味を持っているので、その関連の付き合いを表にして頂いて、 この件は裏作業的な関わりでいて頂ければ」 考えてもいなかった。 そう言われてみれば、誤解を招かれる危険性が高い。 「私の趣味って、結構マニアックなんだけど」 日曜大工だとか小物つくりだとかかなり全般的に広いマニアックさがあるのだが。 そもそも有機溶剤はその仕上げ剤としたり、試したりする為に集めたものだ。 それを使ったのも、共通点「透過性」があったことだけで使っただけなのだが。 「有機溶剤って地点でそれは把握してます」 苦笑する男。 ある意味、私よりも男の方が状況やらこちらの気分的なものを把握している。 男の悪評が聞かれないのもこの気配りがあるからなのかもしれない。 逆に実装石に対して一体どんな虐待行動しているのか謎だが。 「わかりましたよ・・・強力します」 「ありがとう!」 手を取って喜ぶ奥さん。 待って、生物虐待で喜ぶって何。 ・・・いや、虐待派なんだしそこは当たり前なんだろう。 私は溜息をこっそり吐きつつ。 早速ボンドオブジェから脱出した子蟲のオブジェ作りの依頼を受けたのだった。 その後。 私は奥さんとはメールのやりとりで依頼内容の確認をし、準備をする。 後日準備ができたところで、あのでかい屋敷に赴き、オブジェ作りに取り掛かる。 幸い、その準備が私自身の趣味に一致する面があったため、 意外にも周囲には「実装石サイズの小物作りを依頼された」程度に思われているようだ。 直接関わっているのが男ではなく奥さんである事も幸いしたらしい。 「すいません、妻が今度イベントで作りたいみたいなので、 今度の休みお願いできますか?」 「あー、聞いてる。大丈夫、準備できてるから」 「お手数かけます」 短い会話で男が立ち去れば。 「何? 結局あの時何しに行ったのよ?」 ひそひそと問いかけられる。 私はこそこそしないほうが得策と考え、堂々と返答することにした。 「あの時はアレの関連。 で、その後奥さんと話噛み合っちゃってさ。それから付き合いがあるんだよね」 「何なに、また何か作ってるの?」 間違っちゃいない。 「うん、色々ね。奥さんも楽しんでるから、それなりに結構楽しいかも」 実際、本当に小道具作ったりしているので嘘はついていない。 「へー。 っていうかまさか奥さんと仲良しになると思わなかったよ、あたし。 そもそも奥さんいた事自体知らなかったけどね」 「だって実装石虐待派だって情報が勝手に一方通行してるからねぇ。 私だって実際家行くまで奥さんいた事すら知らなかったし」 「ね、ね、奥さんどんな人?」 「めっちゃ美人」 「えー!!」 勿体ない!! と叫んで五月蠅いのを耳を塞いで音量防御しつつ。 私は次のオブジェ引き渡し日までに小道具を完成させる事を考えるのだった。 「こんにちは」 「よろしくお願いいたします」 訪問してきたのは10代後半くらいの少年。 少年で虐待派とかどうなんだろうとか思ったりもする。 尚、私はモニター越しにその様子を眺めている。 虐待派関係で顔が知れるのも問題だろうと言う、男の計らいからだ。 まぁオブジェの確認にわざわざ顔を出すまでもないが、気になるのは確かだ。 「注文のものはこちらですね」 男は少し大きめの箱から、一回り小さな、透明な箱を取り出す。 それは箱状の形をしたオブジェだった。 「テチィ! テッチィ!」 箱状のオブジェの中で嬉しそうに叫ぶ子実装。 箱状の透明なオブジェの中で、まるで実際に飼われているかのような作り。 餌皿も、トイレも、水受けも、更には玩具までそこにはあった。 しかしそのオブジェには、天井の小さな空気穴と、それと共に繋がる餌と水入れの穴、 設置された小さなトイレから繋がる排泄口しか外に繋がるものがない。 「すっげぇ!! ・・・あ、すいません。つい」 「いえいえ。大抵の方はそんな反応されますから。 如何ですか?」 「いや、本当にすっげぇっス。こんなものも出来るんですね」 「そうですね。ただ、最初にお伝えした通り、時期が来たら破棄してくださいね」 「そりゃ分かってますって。そのために依頼したんです。 でかくなって自分の体で押しつぶされる・・・。 想像するだけでワクワクしますよ」 この少年の依頼内容は、 ”今過ごすには快適だが成長するにつれて苦しくなって最後には自分の体で潰れる構造” であった。 上げ落としという虐待に該当するらしい。 虐待にも種類があるんかい。と思ったが、知ろうとする気もないので放置。 尚、中身の実装石は持ちこみも、こちらで用意する事もオプションで可となっている。 自ら手塩にかけて上げまくった仔を今回の様にしたり、 敢えて糞蟲を固めて欲求不満でパキンするまで言葉攻めにしてみたり、 わざと空気穴のみにして糞で押し潰れて自滅する様を観察したり、 蛆を円形の空間のオブジェに入れて、よじ登っては落ちる様を眺めたり。 虐待派にもそれぞれ楽しみ方があるようだ。 「今度の依頼は成体みたいですよ」 奥さんがパソコンのメールを確認しながら私に話しかけてきた。 実装石商業の裏方全ては奥さんの業務で、表にでるのは男の業務とのこと。 奥さんが表に出るのはブリーダーとのやりとりで集まる時くらいだそうだ。 成程それなら奥さんも虐待派だと知る人間は少ない。 「随分でかくなるんだけど」 「いいじゃないですか。 で、内容は小道具も用意して欲しいみたい。作る時間がいりますね」 「あいよー」 最近では慣れたものだ。 直接実装石に触るわけではないので、それもあるだろう。 「テチ! テチ! テッチュゥゥゥゥゥゥン!!」 また今日も一匹の仔蟲が使用人実装石によってオブジェの中に放り込まれる。 時々性格も指定されるので、それの判別も連中がやるので非常に楽だ。 「テチャ!? テッチュ!? テチューーーーーン!!」 プシューーーー 実装ネムリによって瞬時に眠らされる子蟲。 次に目覚めた時には二度と外に出る事はできない世界があるだろう。 それ以前に子蟲がそれに気付く事ができるのか自体が謎だが。 生きて、死ぬまで芸術品の様にその世界に閉じ込められたまま。 死んでも、その世界から出る事はできないのだ。 あとがき。 まさか続編できちゃうとは思いもしませんでした。 殆ど人間中心で実装石が殆どいませんが、違う意味で結構楽しかったです。 因みに、勿体ない感があったので、実装石視点で書けないか模索中です。 もしオブジェ(もどき)のネタがありましたら、 掲示板でご意見や情報くださると嬉しいです。 ここまで御目を通して頂き、ありがとうございました。
