思いつきでできたネタではありますが、 既出でしたら申し訳ありません。 尚、急いだ面もあるため、誤字脱字が目立つかと思います。 * * * * * * * * * * * * * * * 再現を目指す:導入編 * * * * * * * * * * * * * * * 部屋の整理をしていたら、懐かしいものを見つけた。 ついついそれにのめりこんでいたら、ふと、ある事に気付いた。 ・・・これ、実装石で再現できるんじゃないか? そのためには先ず予備知識と情報収集から。 僕は庭の一画にある蔵へ向かい、呼びベルを鳴らす。 『はい?』 インターホン越しに返答が返ってくる。 「母さん? 僕だけどさ、時間がある時でいいから教えてほしい事があるんだけど、 いいかな?」 『いいわよ。夜になるけどいい?』 声の後ろでは雑音を超えた悲鳴が聞こえている。 「うん、わかった」 悲鳴の種類は分かっている。出せとか、助けてとか、そんなものだろう。 僕の母はメンテナンス専属のトレーナーだ。 さっきの声の後ろの悲鳴は増長した『飼い実装石』の悲鳴である。 飼い実装石と住み始めたはいいが躾がうまくいかず糞蟲化した実装石や、 甘やかし過ぎて増長した彼らを一から躾直し。 当初の躾済みまで戻すだけでなく、調教している中で効率的な躾を見つけ、 飼い主に指導する役目もある。 とはいえ本業は専業主婦。普段は普通の主婦である。 今はメンテナンスという「再教育」の依頼がきた為、 こうして蔵に籠っている状況なだけである。 母は夜まで籠るようなので、僕はそのまま家に戻り、リビングでテレビをつけて時間をつぶすことにした。 「デス、デス」 その脇を小さな箒を持った一匹の実装石がせっせと掃除している。 こいつもメンテナンスの最終段階のテスト中の一匹である。その証拠は首に巻かれた黄色のリング。 このリングは取りだされた偽石の番号を示しており、 粗相があれば即座に該当する偽石のスイッチを押して電流を与えるものである。 こいつだけでなく、家の中には数匹がうろうろと家事をこなす姿があり、 粗相や糞蟲様の反応があれば即座に電流というおしおきが起きるという仕組みである。 因みに本人たちは気付いていないが、スイッチは僕や母率いる家族全員が持つ、 手首にしているブレスレットから操作している。 袖を捲ったり伸びをする動作をしながら番号を設定し、発信ボタンを押すだけである。 当の本人たちは一体誰が偽石に電流を与えているのか、 いつも見られているという恐怖心とで板挟みになっているかと思いきや、 そこはそれ最初は躾を受けたモノ。 感覚を取り戻せば殆どの連中は失敗しないよう注意している程度にすぎない。 ・・・成体に限り、ではあるが。 「テッチューテチュー」 (イモウトチャ、こっちに置くテチュ) タオルを抱えた仔実装が、畳んだハンドタオルを運ぶ親指を指示して置く場所を教えている。 とはいえ指示の仕方がなっておらず、親指はしどろもどろに僕の前を通過。 終いには僕の足に引っ掛かって転倒してしまった。 「チュアアアア!」 (痛いテチュー!) 即座に広がる悲鳴。 「テチューーー!」 (イモウトチャー!) 仔実装は慌てて自分が持つタオルを机に置き、親指に駆けつける。 首のリングの色は赤。野良か。 赤色は飼い実装の為の訓練中の野良を示す。ということは近くに親もいるだろう。 正直なところ、野良を捕まえて躾を依頼し飼い実装にして何の意味があるのか、 僕には謎だが。 とはいえ自分の仕事を放り投げる(床などに投げ捨てる)事なく机に置くあたり、 ある程度の賢さと冷静さはあるようだ。 ちらと周囲を見回せば、赤いリングをした成体実装石が遠くからふるふると 様子を見ているのが見えた。 下手に手を出すことは許されない。見守る事しかできない事は理解できているらしい。 「テチュ?」 (大丈夫テチュか?) 「テチー・・・テチュ」 (あんよが痛いデチュ・・・よそ見してたテチュ) 畳んだとはいえ自分よりでかいハンドタオルじゃ視界が埋もれる。 基本的に彼らに直接関わる事のない僕は、彼らからしてみれば「観察者」であり 「保護者」ではない。 「テチュ! テチュー!」 (ニンゲンさんごめんなさいテチュー!」 「テチ・・・」 (ごめんなさいテチ・・・) こけた親指を立たせ、すぐに僕に謝る仔実装。即座に親指もそれに倣う。 「次は気をつけなよ」 「「テチュ!」」 ((はいテチュ!)) 僕の言葉に彼らはビシッと敬礼のような姿勢を見せ、ぐしゃぐしゃになったハンドタオルを協力して直し始めた。 その時。 「チププ・・・」 (失敗してやがるテチュ・・・) 後ろから湧いた嘲りの笑い。 僕は座っていたソファのクッションをさりげなく掴み。 ヒュッ。 視点を変えることなく声のした方向・・・背凭れの反対側へ思いっきり投げつけた 「チュブバッ!」 唐突に与えられた衝撃に、声の主が言葉にならない悲鳴を上げる。 それを見て先ほどの箒を持った成体実装石がふるふると震えだした。恐らく親だろう。 僕はクッションを元の位置に直し、立ち上がって背凭れの反対側へ赴く。 そこにはクッションの衝撃で潰れかけた仔実装がいた。 うーん、気絶してないな。パンコンもしてない。よし。 「お前、今笑ったよな?」 仔実装の首根っこを掴んで持ち上げ、問いかける。 「テチュ! テッチュー!」 (親指チャの指導がなってないテチュ! ワタシならあんなことにならないテチュ!) ああ、糞蟲の思考が湧きはじめてる。駄目だなこりゃ。 これで今までよく兆候を隠し続けてこれたもんだ。賢い糞蟲ってところだろうか。 まぁその兆候を炙り出す目的もあるんだが、このテスト。 「緑7番、黒箱行きだ。いいな」 緑色なので本来は名前があるだろうが、敢えて通し番号で呼ぶ。 ここでは名前など存在しない。 因みに黒箱とは蔵にあるお仕置き部屋へ送られる事を差す。 その言葉に仔実装の顔色が一気に青くなった。 「テチュ!? テチー!」 (どういうことテチュ!? ワタシ何もしてないテチー!) 「他者の仕事に対していちいち自分の価値観を貼り付けるな。 でもってお前仕事してないだろう」 「テチュー! テッチュ!」 (何でワタシが仕事するテチュ! 仕事はママがするものテッチュ!) 早々と矛盾を言い放つ。箒を持った親が溜息を吐くのがわかった。 「五月蠅い糞蟲」 ビシッとデコピンを与える。そのまま窓際の棚から約15センチ四方の黒い箱を取り出す。 デチュデチュと五月蠅い仔実装に、親が近寄ってきた。 「テチュアアアア!!」 (ママ助けテチュ!!) 「デスゥ。デスデスゥ」 (お前は悪い事をしたんデスゥ。何がいけなかったのかちゃんと理解して戻ってくるデス) ぴしゃりと。冷たく突き放す親実装。 しかしその目には涙が流れているあたり、辛いのだろう。 しかし糞蟲の兆候があれば。 徹底的にそれを制御できなければ。 ここから出る事も、飼い主の所へ戻る事も出来ない事は理解している。 だからこそ敢えて突き放さなければならないのだ。 「テチュアアアアアア!! テチュアアアア!!」 (ママは嘘つきテチュ!! 何が頑張ればおうちに帰れるテチュ!!) あ、糞蟲全開になってきた。こりゃ制御意識ぶっとんだな。 もしかしたらこいつもう二度と蔵から出れないかもな。 メンテナンスの依頼の時に、飼い主には説明はしてある。 糞蟲の兆候やその制御が全くできないようであれば処分の方向にあると言う事を、 こいつは理解してないようだ。 まぁ仔実装だから糞蟲だと理解する努力も意識も弱いから難しいだろうが。 大抵の飼い実装石は虐待と紙一重の躾に耐えて覚えてきた連中だ。 それに耐えられない奴はすぐに処分される。 逆に飼い実装から生まれた仔なら尚更処分される率は高くなる。 そもそも飼い実装から仔が生まれていい事なんか微塵にもないんだが。 僕はつまんだ仔実装を黒い箱に放り込み、蓋を閉めた。 「テチュアアア!! テ・・・!!」 (このクソニンゲン放すテチュ! 今なら・・・!) 蓋が閉まると声は一切聞こえなくなる。仔実装からはこちらの声も光も一切入らない。 まずはこの箱で丸一日総ての刺激となるものから完全にシャットアウトする。 無論食事も水分摂取も一切なし。 そしてこの箱で排泄するなりなんなりの行動があれば即処分決定でもある。 例え我慢できたとしても、それから蔵のお仕置き部屋で、 母の拷問なるお仕置きが待ち構えているのだ。 母は糞蟲に容赦ないからなぁ・・・父も酷いもんだが。 因みに僕の両親は元虐待派である。 母は糞蟲専門の虐待派、父は無差別型虐待派だったらしい。 傍目にはそんな風には見えないのだが、どうきっかけで二人が知り合ったかなど興味もない。 そんな二人が副業でメンテナンス専門トレーナーを始めたとなれば、 そりゃ知名度もあるだろう。 虐待派はそこらの愛護派や愛誤派以上の知識がある。 それこそ実験派とされる専門家並みに。 死なない程度の体罰をはじめとして、 精神的に追い込む方法を利用した躾などお手のものらしい。 この地域の人たちはそれを理解している人が多く(愛誤派除く)、 時々依頼がくるのである。 そんな二人を小さなころから見てきたし、訓練中の彼らを観察するのも日常だった。 僕が虐待に興味があるかどうかときかれると、どっちでもない。というのが本音である。 アレが醜いとも可愛いなども思う事もないからだ。 自宅で訓練する実装石の粗相や糞蟲兆候を見つけたらすぐに今のような対応するのは、 両親がしていたのを自然と行っているだけである。 そういう意味では僕は観察派だろうと思っている。 因みに僕はリンガルを使用していない。この環境だったので、 知らず知らずのうちに彼らの言葉はある程度分かるのである。 ・・・個人的にあまり喜ばしくはないのだが。 * * * * * * * * * * 「で。用件は何?」 夕食を終え、母が問いかけてくる。 「うん、実はね、実装石でコレが再現できるんじゃないかなーって思って」 と僕は持ってきていたノートパソコンを立ち上げてとある映像を見せた。 それはとあるワンシーンから抜粋した映像。音声もある。 その音声に、片付け係の実装石がぴくりと反応したのが見えた。 「ほー、お前って実験派の素質あるかもな」 脇から父も覗き込んできている。 「あら面白そうね。協力するわ。準備が必要ね。場所とか考えなきゃ」 「材料になる奴らは父さんも協力しよう。 あと必要道具とかだな。あの人に話して協力仰いでみよう」 実装石が関わる話になると両親は楽しそうだ。 「とりあえずコレには親指くらいの大きさ以下じゃないと厳しいだろうな。 近場の公園だけでなく少し範囲広げて集める必要がありそうだ。 父さんの友人にも声かけとくから、お前も近場で集めておきなさい」 「わかった。ありがとう」 ・・・流石は元虐待派の両親だ。準備への視点の切り替えもさながら、 現役時代の知人の繋がりも今もあるようだ。 聞いた話だが虐待派のリストから外れる(引退)しても、人との繋がりは健在のようだ。 父のいう「あの人」はきっとそのリーダー格だと思うが、僕は誰なのかは知らない。 まぁ知ったところで何がどうこうするわけでもないのだが・・・。 ともあれ、まずは調達からである。 * * * * * * * * * * 次の学校休み。 僕は野良実装が屯する公園に来ていた。 「で、親指以下のちっこい奴を集めればいいんだよな?」 一緒に来てもらった友人、 ・・・正確には両親に憧れているから付き合いになっているだけと思うのだが。 ともあれ僕に確認をとる。 「うん。このケースに回収してきて。分け方は打ち合わせ通りに。 最初にも言ったけど、あくまで『協力的な姿勢で受け渡してくれる親から貰う』 んだからね? 前みたいに無理矢理かき集めるのは無しだよ。 回収した仔が暴れて使いものにならなくなるのが出るから」 「あー、わーってるってばそれくらい俺でも学習するっての」 面倒そうに手を振りながら応じる彼。 以前両親の手伝いで野良の仔を一時的に集める必要があったのだが、 その際に彼は親を殴る蹴る等して無理矢理回収し、仔は親を求めて暴れ、 ケースの中が大惨事になったことがあった。 ・・・一時的な回収だったので無論返却に困ったもんだったが。 「で、さっさと譲ってくれる奴にはコンペイトウで、 迷ってる様子の奴はお前に回せばいいんだよな?」 「うん。迷ってる奴は賢い奴の可能性が高いから、話をしてみてから決める。 今回は返却できない場合も考えられるからね」 きっと、ではなく二度と帰ってこれないが。 それは当の実装石たちの耳には入らないようにする。 「おっしゃ、んじゃ行ってくるぞー」 「よろしくー」 鼻歌交じりに公園の反対側へ向かっていく彼を見届け、 僕は近くのベンチに座り、リンガルを起動する。 これは人間の言葉を理解できない実装石の為でもある。 言葉が通じるなら正直僕にはいらないので面倒なものだが、こればかりは仕方がない。 リンガルを通してそこらで様子見していた実装石たちに話しかける。 「僕らの会話が理解できるならもうわかると思うけど、君らの仔を借りたい。 お礼は一匹につきコンペイコウ一個と交換。 ただし、仔は僕の指サイズから小さい仔じゃないとダメだからね」 既に準備していたのか、物陰からぞろぞろと仔を連れた実装石たちが湧いてきた。 その緑々した光景には違和感しかない。 ・・・うっわ、気持ち悪い。 細かい点などが密集している様子が苦手な人は絶対見てはいけない光景だ。 我先にとデスデス五月蠅い様は先発が糞蟲だと明らかに見てわかる。 僕は敢えてもう一度言う。 「言っとくけど、仔のサイズは決まってるからね。 それより大きい仔はダメだ。 あと、コンペイトウと交換だからね、こ・う・か・ん」 この強調は賢い個体に向けてのものである。 賢い個体ならばこの言い回しで気づくだろう。 渡した仔は二度と戻ってこない、もしくは殺されるだろう、ということに。 『ワタシの仔を飼うデス! さっさとコンペイトウよこすデス!』 おお素晴らしいまでの糞蟲っぷり。 誰も飼うなど一言も言ってないんだが。 思い込みと自分の思うが儘な思考は殺意すら湧く。 虐待派の気持ちがよくわかる瞬間だ。 だが今回は回収だ。いちいち殺意を湧かせてては作業が滞る。 「はい、サイズは・・・いいね。はい一匹につき一個」 『ワタシにも寄こすデス!』 僕の周囲にわらわらと群がり、我先にと群がる様は本当に周囲への迷惑になる。 「順番にいこうか。僕の前に向かって横並びに並んで。 順番を守れない奴は交換しないよ。はい、一列に」 僕が向きを示すとデスデス文句を言いながらも順番に並び始める。 それでも横やりする奴は列に並ぶ実装石が殴り飛ばして順番を守らせようとするあたり、自己欲の為の行動は方向を示すと一定の効果があるんだなぁと考えてしまう。 『ワタシの仔デスゥ。コンペイトウ寄こすデスゥ』 僕は仔を持ちあげ、そのまま仔を返却した。 『デデッ!? なんでデス!?』 「この仔は大きい。こんな大きさの仔は引き取れない。 僕はちゃんと大きさを指定したよね? それより大きい仔は引き取れない。 はい、さっさと行って。はい次」 指サイズだと言ったのに掌サイズの仔を持ってくる奴があるか。 列に並んでる地点で異常が丸わかりなんだけどなぁ。 流石、知能が弱い奴は典型だ。 拒否された事に腹を立てたのかデスデス五月蠅いので、 「いい加減にしないと親仔諸共潰すよ。消えろ」 使うつもりはないが、持ってきたハンマーを構えて見せる。 途端に文句を叫んでいた親はパンコンしながら逃げて行った。 仔は理解できないままその後ろを追っていく。 なんて呆気ない。まぁいいけど。 『お前はこれからニンゲンのとこへ行くデス。いい仔にするデスよ』 順番が近づいてきた親が仔に話している。この作業はこれが目的でもある。 親の説得で回収された仔は基本的に暴れる事がなくなる。 それは親が仔にこれから親と離れ離れになるという事の説明をするからだ。 説明を受ければ大抵の仔は納得し、親を求めて暴れない。 拒否すれば大抵は親からの折檻という暴力で無理矢理納得させられる。 糞蟲は納得するしない以前に己の欲求で暴れるので話が別だが。 『オイニンゲン! さっさとワタチにコンペイトウ食わせろデチュ!』 あ、何か湧いてる。我慢できなかったか。 回収ケースの中から早速糞蟲が湧いてきた。 親指を回収しているケースにはケース専用にリンガルをセットしている。 「ちょっと待ってね」 順番待ちしている親仔に待ったをかけ、僕はケースから湧いた糞蟲を探す。 「はい、言う事聞かないでちゃんと待つ事ができない糞蟲は誰かな?」 本当は特定できているが、敢えて笑顔でケースの仔達に話しかける。 『オマエは高貴なワタチの事も見えないデチュか! まったくとんだドレイデチュ!』 「はいはい、五月蠅いデチュねー。そんな言う事聞けない仔にはお仕置きだよー」 カバンから用意しておいたテープを取り出し、糞蟲の仔を摘み上げると、その口にテープをぺたっと貼り付けた。 『・・・! ・・・!』 その様子を見てケースの仔達が一斉に震えだす。 ケースはそこそこの大きさがあるので、順番待ちしている実装石たちには何が起きているのか見えていない。 口が塞がったことで静かになった糞蟲の手の片方にテープを貼り、ぐるぐる巻きにする。 続けて両足は体までテープでぐるぐると巻いて脱糞防止のテープ巻き完成。 糞漏らされるのは後で掃除が面倒だからという面が大きいが、逆に見せしめにもなる。 「これでよしっと。みんな、静かに待っててねー」 そう言ってケースの隅っこに自由を奪われた糞蟲を転がせば、 それだけで大抵の仔は静かになる。 五月蠅いのも面倒だし、かといって口を塞いだだけでは周囲の仔への暴力も考えられる。 そのための対応が、身体拘束である。無論これだけでも効果は高い。 「静かに待ってられない仔はお仕置きするからねー?」 にこにこと笑顔で言われては仔たちも従うしかない。 何匹かパンコンしているがどうせ一緒くたに洗浄するんだ。今はどうでもいい。 「はいお待たせ。君は2匹だね。じゃあ2個」 何も知らずコンペイトウを貰う親、期待膨らむ仔。 うーん、わかってはいるけど本当にこいつらって・・・バカだよなぁ・・・。 そんな事を考えながら作業を繰り返していった。 * * * * * * * * * * 「おーい、終わったぞー」 友人が台車にケースを乗せて運んでくる。 そのケースの上には同じような大きさの箱が乗っていた。 ケースは透過しない防音素材なので外からは見えないし聞こえないが、 ケースの中では仔がテチテチとやかましいだろうなぁと一瞬考えてしまった。 「あれ、そっちに出てきたのか」 「おう。5組だ。2組が仔3匹と仔1匹、あとは2匹だ」 合計親が5匹と仔10匹か。 蓋のない箱を覗きこめば。 抱き合うようにして陣地の様に硬直している5組の親仔が僕を見てびくっと反応した。 警戒する様子は確かに多少賢いようだ。 「僕の言葉は分かるかな?」 『は・・はいデスゥ』 一組の親がふるふると返答する。 リンガルを使わず言葉を理解する賢さがあるので確かに理解力はあるだろう。 「じゃあ聞くよ。何で迷ってるかな?」 『だって、あのニンゲンさんは交換と言ったデス・・・ この仔が幸せになるとは限らないって事デスね?』 言葉からの推測能力はある。賢い個体に間違いない。 「こいつら、車まで持ってっていいよな?」 友人が僕の回収したケースを示す。 僕のケースの中にはその後も湧いた仔蟲が数匹転がされている以外は、 ぷるぷると震えて静かに待っていた。 ・・・とはいえ恐怖でテチテチ声出している奴もいるが。 「ああ、頼むよ。そっちのケースとひとまとめにして、 糞蟲は別のケースに分けておいて」 「あいよ」 僕が親仔の入った箱をベンチに置き、友人が僕の担当したケースを乗せ、 ガラガラと車へ向かう。 「さて。話を戻そうか。確かにその通り、幸せが云々は保証しない。 仔らには手伝ってほしい事があるから”交換”で話を持ってきたんだ。 もう一個質問するよ? 迷うなら何で来たの?」 これが話をする本来の目的。この会話でこの公園の傾向が分かる。 『ワタシの仔は糞蟲デスゥ・・・でも間引きはワタシには出来ないデス・・・。 なら、ニンゲンさんに引き取ってもらえばと思ったデス・・・』 「随分他力本願だね。自分の仔なら自分で管理するべきだろう?」 やはり。 賢いのと情がありすぎて比例するかのように、 野生として生き残るには必要不可欠な判断能力に待ったがかかっている。 野生でできるだけ静かに安全に生きるには糞蟲は非常に厄介。 『誰が糞蟲デチュ! ワタチの為に尽くすのがママの役割デチュ!』 『ニンゲンアマアマ持ってこいデチュ!』 『・・・オネチャ、ママとニンゲンさんは話してるデチュ・・・』 抱えた3匹のうちの2匹がテチテチと五月蠅い。1匹は状況が理解できているようだ。 『デスゥ・・・他力本願と言われても仕方がないデス。 ワタシにはこの仔だちを間引きできないデス・・・』 僕はちょっと考える様子をみせ、テープを取り出して仔蟲を1匹ひっつかむ。 『何するデチュ! 高貴なワタチに何するデチュかニンゲ・・・』 ぺたっ。ぴー。ぺたり。 先ほどの仔蟲と同じように拘束し、箱に転がす。 ただし、口を塞いで手足を巻いただけの簡単な拘束だ。 無論、親には転がした仔に触らないように説明する。 続けてもう1匹も同じように。それを見た他の親仔から糞蟲反応が出るかを見れば、 3匹のうち1匹と、2匹が2匹共。1匹の方は1組だけ反応が見られた。 取り敢えず全部の糞蟲を拘束して転がす。 「こんなもんかな。取り敢えず君にはもうちょっと考えて貰おう。 で、どうやら糞蟲じゃない仔みたいだけど、君は何で来たの?」 先ほど会話した親に時間を与え。唯一糞蟲反応が見られなかった親仔に質問する。 『ワタシは姉妹にオマエの仔ならコンペイトウが貰えるから行けと命令されて来たデス ・・・本当は来たくなかったデス・・・』 「あー、そっちの方か」 こういうパターンもあったか。 糞蟲でも賢い糞蟲は他者を利用する事が多い。 今回は仔の大きさに指定があったため、交換するつもりのない姉妹に命令して交換し、 それを奪って自分のモノにする寸法だったのだろう。 まぁそれはそれ。僕の場合は仔の実の親の意思に準ずる。 「じゃあ帰って貰った方がいいね。 でもそのまま帰ったらいじめられるだろうから引越しが必要かな・・・」 『デスが知らないところへ行けばきっと慣れる前に同族に殺されるデス・・・ ワタシは禿裸ではないデスが、姉妹のおもちゃみたいなものデス』 集団意識の強い場所に行けば間違いなく新人は差別の対象である。 かといって単独で生活できる程の実力はない。 この親は安易に姉妹によって生かされているという意味合いを話しているようだ。 「なんで公園で生活しようとする訳?」 『デス?』 「何で山とかそういうとこへ行きたいと思わないの? 自分で離れたいと思うなら普通行動するよね? でもしてないってことは、君は今の環境に甘んじている訳じゃなく、 生かされている環境に甘えてるって事だよね」 『デス・・・』 ちょっと矛盾した言い回しになってしまった。 言いたい事が伝わっているかは謎だが。 『まだこの仔の大きさでは外へ出ても死んでしまうデス。 だからこの仔が大きくなったら出ようと考えてるデス・・・』 「そうなの?」 敢えて質問するのは親にへばりついて離れようとしない仔へ。 『テチィ・・・。ワタチはまだ小さくてママについてくのも大変テチ・・・ ママがここを出るって言うまで耐えるよう言われてるテチ』 なるほど。機が熟するのを待つという訳か。 しかしそれまで生きているかも定かではなかろうに。 『ニンゲンさんはワタチタチを飼いジッソウにしてくれないテチ?』 唐突に仔が問いかけてきた。 ぺしっ。 仔の言葉に親がその頬を叩いた。 『何を言うデスか! ワタシたちはあくまで野良デス! 野良がニンゲンさんに要求する事自体が媚びであり糞蟲デスゥ!』 おおう。なんだこの親実装。賢いというか凄い警戒心強いぞ。 姉妹の命令には逆らえないようだが。 『テエェェェェェ』 親の叱責に仔が泣きだす。 しかしこういう欲求は普通の実装石なら当たり前である。 『オマエも見てきた筈デス! 媚びたナカマがどうなったのかを、見てる筈デス! それが自分に降りかかると言う事を考える事が必要デス!』 他人はああなったが、自分は大丈夫だろう。 そんな思考はその辺の実装石には当たり前にある。 しかしこの親は非常に警戒が強い。 となれば先ほど話していた公園を出るというのは本気だろう。 『テエェェェェ・・・ワタチは幸せになれないデチュアアアア!』 更に大泣きする仔に親は更に反対側の頬を叩いた。 『そういう考え方が糞蟲に繋がるデス! ワタシたちはワタシたち以上に強い存在が居る事を忘れてはならないデス! 特にニンゲンさんはワタシたちの何倍も、何倍も強いデス! それを忘れて媚びたり要求するから不幸になるデス!』 この親実装、もしかして元飼い実装だろうか。聞くつもりもないが。 『ワタシたちは自分で掴める幸せを選ぶべきなのデス! ニンゲンさんに幸せを求める事が間違っているデス!』 前言撤回。 この親実装、姉妹に命令されて生かされているのはわざとっぽい気がしてきた。 本当に外に出るための布石を選んでいるようだ。 だが逆にここまで賢いと・・・使える。 「君、後でもう少し話しようか」 『・・・デス?』 びくっと反応するあたり、僕が虐待派に見えたのかもしれない。 取り敢えず糞蟲の仔を持つ親仔を箱から出して地面に下ろす。 「君らの仔は糞蟲いたけど、自分の仔を間引きできないんだよね?」 『『デスゥ・・・』』 転がされた仔を見つめ力なく声を発する親たち。 そんな親に僕は冷たく言い放つ。 「じゃあ僕がきっかけをあげるよ。 今ここでその転がした仔を食いなよ」 『『デ・・・デス!?』』 転がされた仔たちがもがもがと蠢く。 親のその反応は明らかに無理とひしひし訴えているが、僕は表情を変えず、 「でなければ君らは今後生きてくのが難しいだろう? 僕が虐待派だと思って従え。 それくらいの勢いとふんぎりがつけばできるだろう?」 そう言って僕はハンマーを親にちらつかせた。 実はこれ、両親が公園清掃でよく使う手でもある。 自らの手を汚さずに数を減らす方法。共食いへ持ってくことだ。 『『デ・・・・デデデ・・・』』 涙をぼろぼろ流しながら戸惑っている。 ここで糞蟲の間引きを自分がやってしまえば、 彼女らは二度と間引きができないままだろう。 別に生き抜くための教育とか躾というつもりはない。 ただ、賢さと情の為にするべき事ができなければ以降も糞蟲は増えていく。 そうなれば糞蟲の無法地帯はより広がるだろう。 母はあまり話そうとしないが、糞蟲が如何に厄介なのかは見ているだけでわかる。 ただ、賢い奴は周囲に害を及ぼさないから放置するといった印象だ。 この地方では実装石への対応は至極単純であり、 始末さえちゃんとすれば虐待派は堂々と糞蟲を甚振れる。 言いかえれば糞蟲被害が決定した地点で虐待が容認されるのだ。 賢い奴は人間に近付く事自体しないので通常干渉しない。そんな地域だ。 逆に乱獲は禁止されており、 公園等の糞蟲清掃は基本ブリーダーや元虐待派によってなされている。 熟練者であれば糞蟲の判別も容易であるし、無駄に賢い連中を殺す必要もない。 その為どんな傾向であれども現役虐待派の清掃参加は禁止なのだ。 野良の犬猫と同じように、他種族との距離をもっていればいい。 賢い実装石はそれが出来る為、駆除時に隠れ、対象から外れやすいのだ。 基準がはっきりしている分、一般市民と虐待派・愛護派は良い関係を持っている。 半面、愛誤派は嫌われている。 尤も、愛誤派自体が嫌われている事に気づいてないのだが。 ともあれ。 『デス・・・デスううううう』 涙をぼろぼろ零しながら一匹が拘束された仔を持ち、口のテープを外した。 『ママ・・・ワタチイイ仔になるデチュ、殺さないでチュ・・・』 親が僕を見上げた。僕は表情を変えることなく、食え。と言いきる。 糞蟲は一度発生してしまえば基本的にほぼ修正不可能だ。特に仔ともなれば。 賢い親であっても増長してしまえばなかなか戻れない。 だからこそ飼い実装は生まれてすぐに躾を受けるのである。 ここで見逃したところで、ほぼ間違いなくこの糞蟲仔はすぐに糞蟲を発揮する。 ”いらない仔”を捨てるのではなく、自ら処分する。 これができなければこの親の未来はないだろう。 正直、別に引き取ってもいいが、僕自身が気に食わなかっただけという点もある。 『デスううううう』 『・・・・・・!』 がぶり。 先に実の仔を食ったのは2匹総てが糞蟲仔の親だった。 テープで口を塞がれたまま、ぐぐもった声が親の口で消えていく。 それを見てたった1匹の糞仔蟲の親も意を決したのかぐちゃぐちゃと食い始める。 『デス・・・』 戸惑っていたが、3匹のうち1匹の糞蟲を持つ親も涙ながらに丸飲みした。 糞蟲2匹を食い終えた親は放心したようにぺたんと地面に座り込む。 そのままデスデスと泣きだした。だが僕はそれを気にすることなく、 「ほら、君も食わないと先に進めないよ」 未だ食おうとしない親に促した。 ぼろぼろと涙を零し、賢い1匹の仔が親の様子を不安そうに見つめている。 『ニンゲンさん、オネチャ、何で食べられないとダメデチュ?』 僕はリンガルを起動して話しかける。 「君はこの糞蟲に酷い目に遭った事はないのかい?」 『・・・・・・』 『ワタチはイモウトチャを可愛がってるデチュ! いじめてないテチュ!』 じたばたもがく糞蟲を見つめたまま沈黙する仔。 「糞蟲ってのはね、君たち同族だけじゃなく僕ら人間にも被害をもたらす。 被害が出れば、否応なしに僕らは君ら全員を殺さなくてはならなくなる。 言っとくけど、糞蟲はきみらをいじめたり、殺したりするんだよ。 多分わかってるだろうけど」 『ニンゲン勝手な事言うなテチュ! ワタチたちは皆幸せに生きるデチュ!』 「五月蠅いよ糞蟲」 しかし賢い仔は僕の言いたい事がわかったのか、 親が抱えていないもう1匹の姉妹の方へ向かい、 『ママのママが言ってた”悲しい事”は、 ワタチたちが静かに暮らすには必要なのデチュね?』 ころん、と転がった仔をうつ伏せにし、膝立ちになるように背中側から持ちあげた。 拘束されているので動けないままの仔が恐怖の表情で僕を見つめている。 「そういう事。君は賢いね」 『テチュ・・・』 仔は戸惑った様子を見せたが、賢い仔は持ちあげた糞蟲の頭巾を脱がし。 『ママができないなら、ワタチがやるデチュ・・・』 はぐ。 拘束された仔の首元に噛みついた。 言葉になっていない絶叫が周囲に広がった。 それを見ていた2匹の仔がその食っている仔の傍へ向かい、 『ワタチたちも手伝うテチュ』 あぐ。 がぷ。 3匹の涙を零す仔に3方向から齧られ、恐怖と痛みで暴れだす糞蟲。 しかし同じ体躯の仔3匹に敵う訳もなく。 『・・・・・・!!』 テープで言葉を封じられたまま、その糞蟲は3匹によって跡形もなく消えた。 残ったのは仔3匹の口元の緑と赤の体液と地面に残された髪と服、テープだけ。 その一部始終を見せつけられた残された糞蟲が親の腕の中でガタガタと震える。 『ママ、ママができないならワタチがオネチャを食べるデチュ』 涙をぼろぼろ零しながら仔が親に言った。 本当は辛い。でも親ができなければ自分がやるしかない。 仔ながらになんという理解力の高さか。 こういう仔が親になれば本当に糞蟲の増殖も減るだろうなと感じてしまう。 ・・・まぁ糞蟲の理不尽さに賢い奴が殺されている現実もあるのだが。 『イモウトチャやめるデチュワタチもういじめないから食べないでデチュ』 「なんだ、さっきいじめてないって言わなかったか糞蟲?」 僕の指摘に引きつる糞蟲を横目に、 血まみれの口元のまま仔が親から姉妹を引っ張り落とす。 『チベッ』 べちっ。と地面に落され、見下ろされる糞蟲。 命乞いの媚びすらできないまま、何度も謝っているが無駄だろう。 『ワタチは忘れてないデチュ オネチャはママが集めてくれた保存のゴハンを勝手に食べたデチュ ママの約束守らずにトイレにウンチしないでワタチに投げつけてきたデチュ オネチャ二人でお腹すいたからって言ってワタチのあんよ齧ってきたデチュ 全部ワタチの所為にしたデチュ ママは凄く、凄く優しいからワタチは黙ってたデチュ でもやっぱりワタチはオネチャのやってることがわからなかったデチュ だからニンゲンさんの話でワタチはわかったデチュ』 今までの積もり積もった分を吐きだすかの様に。仔は糞蟲の前髪を掴み、 『ワタチたちが静かに暮らす為には、オネチャみたいな仲間は厄介テチュ ワタチはママの言ってた通りに静かに暮らしたいテチュ オネチャたちはママの言葉を無視していつもママにワガママしてたテチュ ママが怒っても全く反省してなかったテチュ ニンゲンさんに向かっていつも悪口言ってたテチュ なのにニンゲンさんの前になると媚びるテチュ ママのママが酷い目に遭っても笑ってるだけだったテチュ ワタチはそんなオネチャたちが理解できなかったテチュ』 涙を零していた目が怒りに染まり始めている。 静かにしてただけに分からなかったが、この仔にも糞蟲の傾向があるかも知れない。 ただし、制御はできているようだ。 『オネチャがいたら、ママはいつかママのママみたいになっちゃうテチュ そんなのワタチは嫌テチュ だから、ワタチはママの為に、オネチャを食べるテチュ』 がぼっ。と糞蟲の口に石が突っ込まれた。 3匹の仔が頷きあい、それぞれが髪を引っ張って引きちぎった。 続いて服、そして四肢から齧られる。 親は地面に膝をつき、その様子をただ見ているだけしか出来なかった。 『終わったテチュ。帰るテチュ・・・』 やはり家族がいなくなること、しかも自らの手で消す事はそれなりに辛いのだろう。 仔が小さく呟いて母の服を引っ張った。 「デ、デス・・・」 半ば放心気味に親は反応する。 「帰っていいよ。君らの仔を貰おうとは思わないから」 「デスゥ・・・」 とぼとぼと残った親も木々の中へと帰っていくのを見届け、 「さて、君らの方だけど」 箱に残された1組に話しかけると、親がびくっと反応した。 「仔は、まぁ君に任せるとして、君に仕事を頼もうと思うんだけど」 「・・・デス?」 不安そうに見つめる親。 「ああ、大丈夫、別に虐待するとかそういうのじゃないから。 ただ、違う意味で辛いかもしれないけどね」 理解力だけでなく状況判断もあれば、使いどころがある。 僕は親仔を持ちかえることにした。 * * * * * * * * * * 『イモウトが戻ってこないデス!』 連れていかれた親仔をけしかけた糞蟲が憤る。 いつまで経っても戻ってこないのでベンチへ行ってみれば、蛻の殻だったのだ。 即ち、当の親仔は既に居ないといえる。 『アイツ、仔は大切と言っていながらコンペイトウを自分のモノにしたデス!』 実際はコンペイトウなど一切貰うことなく連れて行かれたのだが、 そんな事当の糞蟲は知る由もない。 『帰ってきたらブッ殺すデス! 折角服も髪もそのままにドレイにしてやったワタシの恩を忘れているデス!』 デギャアアアアアア! と叫びながらベンチに糞投しているが、誰もいないので無意味だ。 しかし違うモノを呼び寄せてしまっていた。 「んだよ、人が休憩しようとしてたのに、何汚してんだよゴルァァァ!!」 ガスッ! と脳天に鋭い一撃が入る。 「デギャッ!?」 そこには畳んだ傘を持った仕事帰りの男性。 「どうせお前糞蟲だろ! 俺の怒り受け止めろゴラァァァァ!!」 呼び寄せてしまった人間の怒りは収まりがつかないらしい。 連続して突き刺さる傘の打突に糞蟲の反応が命乞いに変わる。 『やめるデス! ワタシが欲しいなら好きにするデス! 殺すのだけはやめて欲しいデスゥゥゥウ!』 「うっわ汚ったねぇえぇぇぇ! 媚びてんじゃねぇよ!!」 パンツを脱いで見せつけた総排泄口に傘の先を突っ込んだ。 「デフギャアッ!」 内臓の中途半端な位置まで刺さり、ぴくぴくと痙攣する糞蟲。 「そのまま死ね! お前みたいなのが居るから公園が汚れるんだよ!」 そのまま持ちあげると巧く刺さったのか傘と一緒に持ちあがる。 傘を垂直に持ち替え、地面に向かって叩きつける。 「テジュァッ! ジュアッ! テブァァァッ!」 頭から落とされる痛みと、内臓から押し込まれる痛みとで悲鳴があがるが、 パキッ と小さな音がした瞬間、声が止まった。 「あー、ようやく死んだか。くっそ、傘汚れちまったし。 こんな連中が野良の犬猫も襲ってるとかマジ冗談じゃねぇ」 この男性は昔野良の犬猫の仔を引き取って庭で飼っていた。 しかしある時実装石に集団で襲われ、食われてしまったのだ。 ある程度実装石の存在やその習性の知識はあったが、糞蟲の残虐性に一時は心が折れた。 それ以降、糞蟲を見つけると殺さずにはいられなくなったのだ。 幸い、糞蟲の傾向、そのパターンが分かっているだけに賢い奴への攻撃心はない。 「この傘もう捨てるかな。回収袋は・・・っと」 鞄から実装石回収袋を取り出し、傘ごと袋に一度入れてから振り落として口を縛る。 公園を出て回収袋の回収箱へ入れれば終わりである。 この公園では生ゴミ被害を減らすため、ゴミ回収はプラスチック製の巨大な箱である。 無論投入口は実装石では届かない高さであるし、投下されたとしても蓋は開けられない。 傘は力ずくで折って燃えないゴミの箱へ。 「電話しとこう。うざいし」 男性は虐待派というよりも駆除派に近いが否定・嫌悪派であるため、 駆除は駆除専門にしてもらうべきという考えを持っていた。 「もしもし? お久しぶりです。今日公園で糞蟲見つけたので、 そろそろ駆除対策お願いします・・・はい、お願いします。では」 携帯で何処かへ電話した後、男性は公園を後にした。 * * * * * * * * * * 集められた仔たちは、明らかな糞蟲を覗いて一か所に集められ、 実装ネムリにて眠らされて運ばれていく。 その場所はとある施設の実験室だった。 「こんにちは。よろしくお願いします」 「ああ、よろしくね」 僕は白衣を着た男性に挨拶する。 彼は父の知人らしいが、虐待派というより実験派という印象が強い。 「いやぁまさかの意外すぎる依頼にちょっとびっくりしたけどね。 準備に熱中し過ぎてついつい用意した蛆ちゃん全滅させちゃったよ。 やりだすと止まらないから気付かなくて焦って野良捕獲に行っちゃった」 「何してるんだよお前は」 「いやぁ、まさか野良にまで手を出すとは、我ながらやらかしたなぁとか思ったけど」 「当り前だろう。一体どんだけ実装石潰したんだ」 「えーっとね、近所の公園はもう老体しかいないってくらい?」 「おいおい随分やらかしたな」 「だって、仔を強制出産しないと蛆ちゃん確保できないじゃん? だからまず捕まえられるだけ捕まえて、成体には無理矢理仔産ませるでしょ。 そのまま蛆ちゃんならいいけどあっさり仔になる奴もいてさぁ。 その仔をまた強制出産させて蛆ちゃん確保するけどやっぱ強制出産ってきついね。 10回もしないで死んじゃうんだもん」 「お前一人で公園全滅しそうな勢いだなおい」 「いやぁそれほどでも」 「褒めてない褒めてない」 白衣の男性と父が笑いながら話しているが、 聞いている内容の陰には脅威的な数字が並んでいるだろう。 「まぁともあれ、頼まれたものは完成してるよ」 机に小さな粒を数個転がす。 「へぇ。種の生産までいけたのか?」 「まっさか。蛆ちゃんの体から精製したのに決まってるだろう。 蛆ちゃんは仔なんかより貧弱だから逆にやり甲斐があったよ」 「誰も蛆実装の事聞いてないって」 「とは言うけどな? 蛆ちゃんは非常に使い勝手がいいんだよ? そもそも蛆ちゃんって・・・」 「すいませーん、本題に入ってくれませんかー?」 ついてきた友人の言葉に父と白衣の男性がはたと我に帰る。 「ああ、すまないね。蛆実装の実験が大好きなもので、 一度スイッチ入るとなかなか止まらないんだよ」 「なんだよその傍迷惑なスイッチ・・・」 「まぁそれはさておき。頼まれモノはコレね。 君たちがメンテナンスの際に実装石の偽石に仕掛けているパターンを応用してるよ」 と、友人の突っ込みに少々困りながら机の隅っこにあったケースを開く。 そこには頭から何かを生やした蛆実装石がレフレフと動いていた。 頭から生えているのは葉っぱだった。茎が少しだけ伸び、幼葉が一枚生えている。 「コレは元々実装石の偽石に取りついて養分とかを吸い取る寄生種を改造したもので、 養分は吸い取るが一気には吸われないように調整してある。 で、ここからが本番。見ててね」 白衣の男性はケースから離れた位置にコンペイトウを転がす。 するとコンペイトウを見つけた蛆実装がレフレフとコンペイトウ目指して這いずって行く。 「レッフー」 コンペイトウに辿り着いた蛆実装が嬉しそうに舐めようと舌を出し、舐めたその瞬間。 「レッピャアァァァァァァァ!!!」 その小さな体の何処から発生するのだろうかという疑問を抱く大音量の絶叫。 絶叫の後、蛆実装はぴくぴくとひきつっている。気絶でもしたようだ。 その反応に僕は覚えがあった。 メンテナンスで使用している偽石の仕掛けが発動した際の反応だ。 「わかった?」 白衣の男性は僕の反応に嬉しそうに話し始める。 「実はね、ケースから離れるとこの植物のある物質が働きだして、 こうやって何かを摂食しようと舐めたり噛んだりした時、 こんな風に瞬時にして強烈な刺激が直接偽石に通る仕掛けなんだ。 因みにケースにはその物質の発生を抑える装置が組み込まれててね」 と、もう一個のケースを取り出し、先ほどと同じようにする。 「レフレフ、レフレフッ!」 次の蛆実装はコンペイトウに辿り着くと、中継点のように回り込む。 すると今度は必死に頭と体を動かしてケースの方へと転がし始めた。 無事ケースにコンペイトウを押しこむと、 「レッフー」 蛆実装は嬉しそうにコンペイトウを舐め始めた。 「この蛆ちゃんは何度も何度も失敗を繰り返してようやくこの原理を覚えた仔でね。 つまり、このケースの中でなら、安全に摂食が出来ると言う事を覚えたんだよ。 これなら、危惧している『その場で食い漁る』現象は食い止めれると思うよ」 「同時に、『運ぶ』っていう条件も自然と発生するって訳か。 流石マッドサイエンティスト」 「いやぁそれほどでも」 「褒めたくはないが今回限り褒める」 「今回限りって何!?」 「いや、あの、漫才はいいから話進めてくれませんか」 その光景に呆れて言葉のない僕の代わりに友人が困ったように突っ込みを入れ、 「あ、すまない。ついついいつもの癖が」 とまた我に帰る。 何の癖なのだろう。まさか漫才することが癖なのだろうか。 それはさておき、土台となる準備はできた。 次は場所の準備である。 が。 「場所なら「」さんが用意してくれたって。 さすがだよねぇ。土地丸々借りうけて、傍目にはわからないようになってるらしいよ」 「え・・・?」 白衣の男性の一言に思わず声がでてしまった。 「ああ、やっぱ「」さんやってくれたかぁ。本当、助かるよね、あの人がいると」 「そうそう。虐待派と愛護派の間もとってくれるし、本当凄い人だと思うよ」 土地を確保すると言うのは、環境作りの為のスペース確保よりも困難である。 それをこの短期間でいともたやすくやってのけるとは、一体何者なのだろうか。 「場所はメールで連絡くれたから、印刷した奴渡しておくよ。 この印をつけた場所の、入口でこのカードを通せばおっけーだから」 と、父と僕、友人にテレカのようなカードを渡す。 「じゃあ指っ仔受け取るね。全部に寄生させるには少し時間かかるから、 先に場所に行って確認してきてね〜」 「じゃあ、先に場所見に行くか?」 「そうだね。行こっか。待ってるだけも暇になるだろうから」 「俺も行きまっす!」 そんなこんなで。 僕たちは地図の場所へ向かう事となった。 * * * * * * * * * * あとがき。 正直、まとまってない気がしています。 ですが、出さずにはいられない感が湧いてきてしまい、 勢いだけで出してしまいました。 きっかけば某掲示板のとあるレスですが。 ここでこの言葉が来てしまっては この機会に出さねばああああ!!! というアホな思考ですが申し訳ありません。 因みに容量の問題で分けてデータを作っております。 (一度メモリがおかしくなりデータが吹っ飛んでヘコんだのはココだけの話) 取り敢えず続きは正月が終わるまでには出せるように頑張りたいと思います。 稚拙な文面ですが、目を通して頂きありがとうございました。
