タイトル:【虐】 【名詞】芸当、たくらみ、卑劣なやり方 【秋祭り】
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作者:中将 総投稿数:51 総ダウンロード数:3217 レス数:0
初投稿日時:2011/11/07-03:20:39修正日時:2011/11/07-03:23:43
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数匹ばかりの仔実装だけの空間。
それだけでも異常な光景なのに、それぞれが一心不乱に何らかの動作に集中している。
それぞれに笑いはない。
いや、笑っている個体もいるが、それは必死の演技で絞り出したもの。
仔実装たちにあるのは恐怖

そして僅かな希望だった。



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            【名詞】芸当、たくらみ、卑劣なやり方


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誰が思い立ったか知らないが、愛護派の一部は本当に突拍子もないことをする。

野良実装によるハロウィン大作戦。
何をするかと言えば、実装の親子に仮装を施し、近隣を回らせる。
お決まりの文句、トリックオアトリートをかませば、間違いなくお菓子がもらえる……という
まさに糞虫の思考を人間がトレースしたおめでたい企画だった。

少々の演技指導となかなかに凝った仮装、意気揚々と旅立った実装親子の団体は

とうとう一家族も公園に戻っては来なかった。


        *        *        *


「「「「トリックオアトリートデス(テチィ)!」」」」
「ほう」

おどける親実装。ノックで呼び出された男はそれを見下ろした。
その親実装の周りには、ポーズと踊りを披露する仔実装たち。
すでにこの作戦で数回戦果をあげている家族にとって、この一連の動作に一切の迷いはなかった。
それゆえに男の次の反応に戸惑いを禁じえない。

「お菓子はやらん。trickとやらをやってみろ」
「デ?」「テチィ?」

何を言われているのかわからない。
そもそも「トリックオアトリート」が何を意味するのかすら実装たちはわかっていない。

親実装は思った。
このままでは不味い。
なんとかしてこの目の前の男のご機嫌を取らねば。
お祭りモードで茹だっていた実装脳に、野良として長らえてきた野生の勘が戻ってくる。
そうして親実装が選んだ行動は


「デッスーン」


媚びだった。


刹那

「ボギョッ!」

親実装は蹴り上げられて宙を舞った。
秋の空にキラキラと実装体液が煌めく。
ぽかんとする仔実装の達の前でゆっくりゆっくりと放物線を描いて落ちてきた親実装は

「ジッ!」

空中にあるうちにカットするような横凪の蹴りでクルクルと回転した。

「ジュベッ」「デシャッ」

トドメは叩きつけるような踵落とし。

ベシィッ

湿った音と共に地面に赤緑のシミを広げた親実装は
破けたバスケットボールのように力なく地面でバウンドすると
最後は首で逆立ちをするような体勢で絶命した。

「テェ」

それを目で追ったまま固まる仔実装達。
ひょいと捕まえ植木鉢の中に回収する男。

「テェ」

男に摘み上げられながらも、脳がパンクして動けない仔実装達。

「テェエ」

「テェェェェェェ!」

「テェェン テェェン テェェン」

やっと、おのれらに起こったことが悲劇だと理解する頃には、
仔実装達は全て禿裸にされ男の家の中に連れ去られていた。


同じようなことが何度か起こった後、生き残ったハロウィン仔実装は全て男の虜囚と化したのである。


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「さて」

横一列に並べられた禿裸の仔実装たち。
一匹だけが一歩前に立たされる。

「trickを見せろ」
「ト、トリックテチィ……?」

前に出た仔実装は必死に聞き返す。
ここで間違ったことをしたらママの二の舞だ。
なんとかして男から情報を引き出さないといけない。

「trickはtrickだ。やるんだろう?」
「何をしていいかわかんないテチィ……」

怯えながらも必死で食い下がる仔実装。
しかし男は無情にもこう言った。

「わからん」
「「「「テェェェェ!?」」」」

仔実装たちの悲鳴が重なる。

「推理小説とか、某飛行靴漫画とかを見るに、なにか驚きのある素晴らしいものなのだろう」
「テェ」
「でもよくわからん。ゆえに、お前らが俺に見せろ」
「とんでもないムチャ振りテチィ!」

仔実装の反論は実にもっともだったが、意にも介さず男は言う。

「だって、見せてくれると来たのはそっちじゃないか」

これまた非の打ち所がない屁理屈に仔実装たちは黙り込む。

要は、男はヒマなのだった。

カッチ、カッチ、カッチと、
暇な男の手の中で、レバー付きのワインオープナーが金属音を立てる。


        *        *        *


勇敢な仔実装は、恐る恐る踊りを始めた。
ママに教わった、可愛らしい仕草満点の踊り。
公園では、一番ニンゲン達に喜ばれた踊り。

ステップ、跳躍、くるっと回って振り返る。
ここで後ろ髪がふわっと舞うはずが、禿裸の仔実装でそれは叶わない。
だけど仔実装は負けない。ちょっとドジっこめいた仕草から首を小さくかしげ

そのまま空中に吊り下げられた。

「No trick」
「テチャァァァ!」

仔実装の頭に螺旋の針がねじ込まれる。
コルク抜きをねじ込む男の手の動きに合わせて、仔実装の四肢は狂ったように痙攣した。

「カカカカカカコケケケケキキキ」

頬が引き攣るも、押さえようとする手は肩の後ろにねじれてしまった。
右足はまっすぐ前に突き出されるも、感覚は全然感じない。
左の目がぐるんと反転し、他の仔実装の姿を一瞬捉え、暗転する。

なんでテチ?
なんでこんなことになっているテチ?

最後の意識を振り絞って男を見上げるも、男は何の躊躇もなくオープナーのレバーを下げた。

カキン

ズルン

レバーの動きと共に脳を引き抜かれ倒れた仔実装を見ながら、男は言う。

「おお、最後の動きはなんかtrickぽかったかもしれん。
 お前たちも参考にしなさい」

「「「「……」」」」

絶句する仔実装達。

この男を満足させなければ、自分たちに明日はない。
それがわかってしまったのだ。


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男は定期的に仔実装達のいる箱を訪れた。
そのたびに「trick審査」は行われる。

基本的に誰か一匹が任意で選ばれるのだが、希望者がいれば男はその個体を優先した。
審査のたびに男は何らかの道具を片手に現れる。

「ヂベエエエエエ! ヂベェェェェェ!」

何を思ったか、男に向かって糞投げをしようとした個体は足からおろし金ですりおろされた。

「テァァ テァァ テァァ」

無謀にもニンゲンさんを説得しようとした親指実装は四肢を鉛筆削りでシェイプされた。


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男は狡猾だった。

「よし、合格だ」
「テェェ!?」

4匹目の挑戦者、創作ズンポッポ踊り〜秋の情熱編〜を踊った仔実装に合格を出した。
どよめく仔実装達。
何をやっても無駄なのではないか、と諦めムードが漂うその前のことだった。
むしろぽかんとしているズンポッポ実装が、上等なエサの入った水槽に移し変えられるのを見て、色めきだつ仔実装達。

ちなみにズンポッポ踊りを丸々パクった5匹目の仔実装は、
レモン絞りに頭からかけられて皮だけの残骸になった。


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「作戦がいるテチィ」
「「「「テェ」」」」

残った仲間の数が一桁になった頃、初めてある仔実装が提案をした。
あのズンポッポ以降、合格者は出ていない。

「結局、トリックってなんなんテチ」
「きっとあのニンゲンが予想もつかないことをすればいいんテチ」
「テェ……」

仔実装たちは顔を見合わせる。
なんとなく各々が感じていたことだが、言葉にされることでそれは確信に変わる。

「でも、それはどうすればいいんテチ?」
「それをみんなで考えるテチ」
「きっとただ綺麗なダンスとか素敵なお歌を歌ってもダメなんテチ」
「それは大問題テチ」
「ウツクシサがわからない相手には困らされるテチ」

テチテチテチと仔実装がうなづきあう。

「でも糞虫なことをしてもやっぱりダメなんテチ」
「ワタシタチみたいにイイ仔が糞虫のフリをしたら普通びっくりするテチ?」
「残念なことにダメっぽいテチ」
「テチ……」

黙り込む禿頭、計9つ。
オツムの具合は残念だが、目の前で同胞が殺されるのを何度も見れば、
多少はショックで論理も身に付いているらしい。

しかし、沈黙を破ったのは、やっぱり最初の仔実装。

「もしかしたら、上手くいくかもしれないテチ」
「「「「テェェ」」」」
「そのためにはみんなの協力が必要テチ」

是非もなし。
9匹は頭を揃えて相談を始めた。


        *        *        *


音頭を取った仔実装……リーダー仔の考え方はこうだった。
男はすでに何かを予想して自分たちのところに来る。
それを驚かせるのは並大抵ではない。
だから、今までの犠牲者がやらなかったことをする。
すなわち、チームプレイ。

それもただ全員が同じことをするのではなく、「全員がかりで男をひっかける」
つまり、壮大な演技の中に引き込み、男の意表を突き、一本を取る。

「みんなで助かるには、これしかないと思うテチ」
「ナルホドテチ……」

リスクは、意表を突く前に男が失格判定を出し、全部が潰れること。
それを防ぐためには、事前の打ち合わせと、それを支える練習が必須だ。

「じゃあやることを説明するテチ」
「「「「テ!」」」」


        *        *        *


リーダー仔が立てたのは、ダンスを元にした一席だった。
9匹でダンスを始めるも、1匹がだんだんリズムを崩していく。
周りははじめそれに気付かないが、やがて1匹がその仔のフォローに向かう。
くじけそうになる1匹を励ます仔実装、やがてそれに気がついた体の他の仔実装達も少しずつ二匹のフォローに回っていく。
やがてありふれたただの集団ダンスは、お互いの動きが絡み合ったより高度な演技と化し、
最後は全員揃ってフィニッシュを決める……!


        *        *        *


「完璧テチ」
「「「「テ!」」」」

熟練は必要だろう。だが仔実装達には命がかかっている。
時間もない。だが目標が一つに定まった今、それは対して問題ではない。
作戦が浸透したのを見計らって、リーダー仔が宣言する。

「この作戦に一番大事なのは、はじめに助けに行く役テチ」
「たしかにニンゲンがプッツン来る前に動かなくちゃいけないテチ」
「だから、これは発案者であるワタチがやるテチ」
「「「「テェェ?」」」」
「ここはひとつ、ワタチを信じてほしいテチ」

8匹は顔を見合わせるも、特に反対する理由はない。

「任せるテチ」

代表した1匹にうなづく他の仔達。
ほどなく他の配役も決まり、猛特訓が始まった。


        *        *        *


リーダー仔は脱落役の仔と組んだ。
この演目では一番責任重大な役回りである。

「大丈夫テチ?」
「わざとテンポずらすのが結構難しいけど、がんばるテチ」
「普通に踊るより難しいテチ、頑張るテチ。成功はワタシたちにかかってるテチ」
「テチ!」

いかに自然に演じ分けるか。
ここさえ乗り切ればあとはミュージカルのように流れでつなげて行ける。
完璧に息が合うまで、二匹はろくに休憩もとらずに練習に没頭した。


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「さて、今日は誰がtrickを見せてくれる?」
「「「「ワタシタチ全員でダンスを踊るテチ!」」」」
「ほう?」

仔実装たちの揃った声に、男は多少なりとも興味を引かれたようだった。

「いいだろう。だが、審査は厳しくいくぞ」
「「「「望むところテチ」」」」
「よし、じゃあ”ミスった瞬間にそいつはアウト”ということにしよう」
「「「「テ?」」」」

計算外だった。
この演技のキモは、ミスった仲間を助けるというお涙頂戴。
それができないとなれば、演目そのものが破綻してしまう!

リーダー仔がちらっと脱落役の仔を見ると、はたから見てもわかるくらいに脂汗を流している。

(大丈夫テチ! あんなに練習したテチ!)
(ワタシを信じるテチ! すぐにフォローにいくテチ!)

必死で送るアイコンタクト。でも恐怖に揺れる仔実装の視界にそれは入らない。

(大丈夫テチ! ワタシを信じるテチ!)

「さあtrick開始だ」

男の声が無情にも開幕を告げる。


        *        *        *


揃って滑り出すステップ。ターン。位置の入れ替え。
予定通り。
しかし、リーダー仔は気が気じゃない。
今のところ、全員いい動きだ。しかしどうしても視線が脱落役の仔に向かってしまう。

ダンスは続く。

左右に別れて対照の動きをする仔。
本来ここで脱落役がワンテンポ遅れるはず。

しかし、きれいに揃って動きを終了。

(なんでテチ? 打ち合わせと違うテチ!)

脱落役は真っ青になって、他の仔らに遅れまいとしている。
他の仔は他の仔でダンスに集中していて気がつかない。

(マズイテチ……マズイテチ!)

なんとか脱落仔の視界に入るように動いてリーダー仔は目で訴える。

(任せるテチ、大丈夫テチ、絶対助けるテチ!)

しかし返ってくるのは恐怖に怯えた拒絶の視線。
一瞬だけ交わった視線も、ダンスの中で再び引き離される。

だんだん周りの空気がおかしくなってくる。

(どうなってるテチ? そろそろ出番じゃないテチ?)
(なんでまだリーダー動かないテチ?)
(おかしいテチ)

他の仔も異常に気がつき始めた。
見上げれば男も少々退屈そうにしている。


(しょうがないテチ……!)


リーダー仔は決心した。こうなったら自分が脱落役をやるしかない!
そうすれば意を組んでくれた他の仲間がフォローに回ってくれるだろう。
自分の手で演技を取り戻す!

リーダー仔の足が半歩遅れる。
男が何かに気がついたようだった。

リーダー仔の背中にチリっと焦りが走る。
だが、もう修正は効かない。
半拍、半歩、半挙動。
少しずつ、確実に自らを脱落させていく。




(さあ、みんなフォローに入るテチ!)




脱落役の仔を見るリーダー。
相手はそっと目をそらした。

他の仔を見るリーダー。
誰ひとりとして反応できない。


リーダー仔は失念していた。
すぐそばで脱落役を見ていたリーダー仔なら、脱落役の演技もある程度コピーできる。
しかし、リーダー仔の動きができるのは、リーダー仔しかいない。
可能性があるとするなら、完全に戦力外となった脱落役だけ……



ぬっと突き出される男の手。
それは演技終了の合図。


恐怖、後悔、疑念
そして焦り。


リーダーの中で、何かがキレた。


        *        *        *


「違うんテチ!」

思いの外大きな声が出た。
男の手が止まる。
リーダーは大きな声でがなりたてた。

「ワタシは別にミスをしたわけじゃないテチ!」

他の仔らに動揺が走る。

「コレは演技なんテチ! ニンゲンさんをびっくりさせる演技なんテチ!」

ダンスをしていた他の仔が足を止める。

「わざとダンスに遅れる仔が出るんテチ! それをみんなで少しずつ助ける演技なんテチ!」

一匹が慌てて話すのを止めさせようとするが、リーダー仔は力の限り叫んだ。



「だからワタシは間違ってないんテチ! 全部 ニンゲンさんへの 演技なんテチィィィィィィ!!」



声を振り絞ったリーダー仔、それを取り囲む他の仔。





「ヒヒャ ヒ ペヒャヒャヒャ」


うち、一匹が壊れたように笑いだした。

「ピヒャヒャ」
「ペヒャ」
「テヒャヒャヒャ」

壊れた笑いは伝播する。
みんな、気がついてしまった。



もう、演技は終了だということに。



周囲の様子を見て、リーダー仔も我に返る。
今、自分は何をしてしまった?
気がつき、思い至り、青ざめる。

とん

壊れた笑みを浮かべたまま、一匹がリーダーを小突く。
ちょうど全員の輪の中心になるように。
脱落役の仔が、同じように皆の輪の中心に引きずり出された。

「テェヒャァ テェェン テェヒャァ」

脱落役は泣いていた。泣きながら壊れていた。
涙に濡れた瞳だけでリーダーに謝りながら、口元は完全に意識の管理下になかった。

それを見てリーダーも笑った。

「テヒャヒャヒャヒャ テヒャヒャヒャヒャ」

周りもみんな笑った。

練習に擦れた足の裏も、厳しい練習に滝のような汗を流した身体も、
全部全部震わせながら狂ったように笑った。



「No trick」



男がいっそ厳かに告げたときも、9匹は笑い続けていた。



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「できないなら言わなきゃいいのになぁ」

庭先に全ての残骸を埋めてから、男は誰ともなくそう言った。

「テェ」

水槽の中で新作、フンバッバ踊りをしながら一匹の禿裸が答える。
それを見つめる男。

「それ、飽きたな、次のtrickを」
「テェェェ」

秋の夜に「運悪く」生き延びた仔実装の声が木霊する。


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日本には由来も知らずに浸透する祭りが多々ある。
その中でも目新しいのは元は死者を模した祭りであるハロウィン。
もちろん実装たちが由来など知るはずもない。

しかし悲しいかな、誰も知らないところで演技は真実となった。

ただそれだけの話。



完




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中将◆.YWn66GaPQ

ご無沙汰です。
ハロウィンに乗り遅れたので秋祭りに便乗ということで。


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