キィーン コォーン カァーン コォーン… うつらうつらしていた頭に授業終了の鐘が響く。 「くっ…ぁぁぁぁ…」 オレは大きく伸びをして長時間座って固まった体をほぐし、もそもそと机の上の筆記用具を 片付けた。 そのままカバンを肩にかけ、教室を出て食堂へ向かう。時刻は正午。この時間の食堂は大勢 の学生で賑わっていて、どちらかと言えば静かな場所でゆっくり昼食を取りたいオレとして はあまり好きではない場所だ。 だが定食の価格の安さを考えるとそうも言っていられない。ただでさえ貧乏学生なのにここ 最近飼い出した実装石達の食費や消耗品などで余計に出費がかさんでいる。抑えられるとこ ろは抑えていかないといけないのだ。 それに例え飯を食わないにしても今日はどっちにしろ食堂に用があった。 ざわざわざわ… 案の定ざわめいている食堂内を目的の場所目指して突き進む。途中チラッと今日のメニュー を覗いてきた。一番安いのは親子丼か、今日はそれにしよう。 さて、この辺りにいるはずだが… 「おーい、こっちこっち!」 聞き慣れた声がして振り返る。そこには満面の笑みで手を振る友人の姿があった。 【パンチョ第5話・戦争石】 「…で、結局何をするんだ?」 「もう! 説明したじゃないか。公園で野良実装を集める手伝いをして欲しいんだよ」 「それはわかってるよ。聞きたいのは野良実装なんか集めてどうすんだ?ってこと」 「うーん…、そこまでは聞いてないなぁ。これ、実は兄さんの頼みだからさ」 「兄さんの…?」 食堂で簡単に昼食を取ったオレ達は今、大学から程近い公園へ向かって歩いている。 先日オレは隣で歩くこの友人からいくつかの謝礼付きでマラ実装を数日預かる約束をしてい た。しかしその数日間、オレによって徹底的に自由を奪われていたマラ実装はストレスから 偽石が自壊しかけ、どうにか一命は取り止めたものの精神の壊れた廃実装となってしまった のだ。 バツ悪くそれを話すオレだったが友人はまるで気にしていない様に笑って約束通りかかった 費用を払い、マラ実装を入れていた防音水槽ごと引き取っていった。 なんでもこれはこれで使い道があるんだとか…。ただし焼肉の奢りはなくなった上に新たな 約束を取り付けられてしまった。 それがこれだ。大学の講義が半日で終わる日、つまり今日なのだが、これから行く公園で野 良実装を集めるのを手伝って欲しいと頼まれた。 そんなもんで何をするのか知らないが断る理由もなかったので二つ返事で引き受けたのだが …、なるほどコイツの兄さんが絡んでいたか。 友人の兄は実装産業の大手『メイデン社』に勤めている。今のところ直接の面識はないが友 人から聞くところによれば若くしてチーフに昇格したエリートなんだとか。 しかしそうなるとますますわからない。なんでそんな人が弟とその友人に野良実装集めなん か頼むんだ? そんなことを友人と話しながら歩いているうちに目的の公園へと到着した。 決して広くなく噴水や池もない実装石には暮らし難そうな公園だがそれでもあちこちの茂み にちらほらとダンボールハウスらしきものが見える。 この時間帯はそれぞれハウスなどに引っ込んでいるのか出歩いている姿は見かけないが、僅 かに漂ってくる饐えた臭いが確かにこの公園に実装石が住み着いていることを示していた。 「あ、いたいた」 友人が指差した先、公園の出入り口付近に1台の大型ワゴンが停まっていた。 オレ達がそれに近付いていくと向こうも気付いたらしく、運転席のドアが開いて男がひとり 降りてきた。 その男の風貌を表すなら“異様”の一言に尽きるだろう。 まず目を引くのが薄っすらと赤や緑に汚れたロングの白衣だ。さらに髪はボサボサに伸びて いて前髪で目元が隠れてしまっている。それでいて身長が高く、なんとも近寄りがたい妙な 威圧感を放っていた。 正直なところ『マッドサイエンティスト』というのがオレが受けた第一印象だ。 「やあ、よく来てくれたね! 待っていたよ!」 あ、意外にフランクだ。 「紹介するよ。僕の兄さん、場良空太(ばらくうた)だよ」 「は、始めまして。オレは…」 「ああ、友人から聞いてるよ。おもしろい仔実装を飼っているそうじゃないか。君がパンチ ョ君だね?」 「いやいやいや…! オレがパンチョなんじゃないッスよ!?」 「それから僕は場良友人(ばらともひと)。“ゆうじん”じゃないよ」 「知ってるよ! なんだいきなり!?」 コイツとの付き合いもそろそろ長くなるが未だに何を考えてるのかわからない。 この弟にしてこの兄ありといったところか。なんか頭痛くなってきた…。 「それじゃぼちぼち始めようか」 そう言って空太さんはワゴンのハッチバックを開ける。 中には空の実装用キャリーケージが大量に積まれていた。オレ達は3人がかりでそれを地面 に降ろしていく。 そうして並んだキャリーケージは全部で20個にもなった。 「さて、ではパンチョ君、友人、お願いするよ。このケージで野良実装石を捕まえてきてく れ。できれば成体がいい」 「いや、だからオレはパンチョじゃ…」 「オッケー。さ、行くよ!」 「あ、おい待てよ!」 ケージを手に早くも公園へ入っていく友人。オレも適当なケージを担いで後を追う。 「それじゃ私はここで待っているよ。駐禁取られるワケにもいかないのでね」 後ろで空太さんの見送りを受けながらオレ達は公園の奥へと向かっていった。 ————————————————————————————————————————— 「うーん、外からじゃあまりわからなかったけどやっぱりいるねー」 「そうだなぁ。これならそんなに時間もかからなそうだ」 「デズァッ!! デシャァァァァッ!!」 暴れる実装石を踏みつけながら別の1匹をケージに放り込む。 広場の中へ入って少し歩くとさっそくゴミ箱を漁っている数匹の実装石に出くわしたが、オ レ達に気が付いたコイツらは逃げるどころか一直線に駆けて来てデスデスと騒ぎ立ててきた のだ。 一応携帯のリンガルで翻訳してみたが案の定「食い物よこせ」だの「飼わせてやる」だのと テンプレート発言のオンパレードだった。 さらには早くも業を煮やした個体が糞投げの体勢を取ったため、こちらも力ずくでの対応を 取らせてもらったところである。 「ここからは二手に別れようか。僕は南側を重点的に探してみるよ」 「わかった。オレは一旦コイツらを置いてきてから北回りだ」 今捕獲した野良実装は3匹。オレ達は両手にひとつずつ計4つのケージを持ってきていたの でひとつ余る計算だ。 友人はこのままもう1匹探しに行くつもりらしい。オレは捕まえた2匹をワゴンまで運んで 新たに空のケージを取ってこなくちゃならない。 「よっと。実装石とはいえ流石に成体にもなると重いな」 デスデスうるさいケージを2つ下げて空太さんのいるワゴンまで戻る。 空太さんはワゴンの運転席でノートパソコンを広げてなにやら熱心に打ち込んでいる最中だ った。 「お、早速2匹か。そのままケージごと後ろに積んでおいてもらえるかい?」 「ウィッス。 ところでコイツら捕まえてどうするんですか?」 「ん? ああ、研究所で実験に使うのさ」 「実験…?」 「うん。実は私達が研究してきたあるモノがようやく形になってね。いよいよそいつの実験 を始めようか、という段階まで漕ぎ着けたんだ。ところがその直前に薬研の連中が間違え て我々技研がストックしていた実験用実装石を使い切ってしまったのさ」 空太さんの話によればメイデン社の商品開発部門は大きく分けて2つの研究部で成り立って いるらしい。 ひとつはドドンパやコロリなどの実装用薬品を研究開発する薬剤研究部。もうひとつが実装 タタキやリンガルなど実装用製品を開発する技術研究部で空太さんはここに属している。 「まったく薬研の連中ときたら言葉で謝りこそするが代わりの実装石は寄こしゃしない。ま あ現状メイデン社の売り上げの大半はアイツらの作る薬品が占めているからね。こんなち っぽけな支部であっても薬研の地位は残念ながら我々技研より上なのさ。今回は悔しいが 泣き寝入りするしかなかった」 駆除や虐待に重きを置くメイデン社はフードやトイレの砂といった実装石用日常品の分野で は愛護重視のローゼン社にどうしても遅れを取ってしまう。 とはいえメイデン社にとってそこは勝負どころではないので構わないと言えば構わないのだ そうだ。その代わり薬品類に関してはローゼン社も含む他社に追随を許さないほど圧倒的シ ェアを誇っている。 なにしろ実装石駆除や虐待において薬品の使用は基本中の基本である上、愛護派などにとっ ても活性剤等は必要不可欠であるからだ。 派閥を問わず需要のある薬品類に対して駆除虐待用製品の売れ行きは実際のところあまり芳 しくないらしい。 まず当然ながら愛護派に需要はない。そして肝心の虐待派だが既製品を使って虐待を行うの はビギナーのうちだけ。慣れてくるにしたがって一般のホームセンターにあるようなものを 応用したりと凝ったプレイを楽しむようになってしまうからだ。 “虐待製品と言えばメイデン社”というイメージが強いが、薬品類を除けば安定して売れて いるのは躾用の実装タタキと愛護モードの無い純正リンガルぐらいだと空太さんは苦笑いし ながら言った。 「ま、そんなこんなで急遽実験用の実装石を集める必要ができてしまったのさ。本部から補 充があるのはまだ少し先だし待ってられない。こうなったら野良実装でも集めて実験を強 行しよう、ってみんなで決めたんだ。今研究所では私の仲間達が実験までの最終チェック を行っている。後は我々が実装石を届けるだけさ」 なるほど、野良実装を集めるのはそういう訳か。 でもなんだろう…。十分納得できる理由なんだけど何か引っかかるような…。 「あー、ちょっと! なにサボッてんの!」 「おっと、いけねっ!」 ついつい空太さんとの話が長くなってしまった。 その間に友人はさらに2匹を捕まえてきたようだ。オレと別れた時は空だった片方のケージ に1匹、その取っ手に後ろ髪を結び付けられた形でもう1匹、都合3匹を一度に連れて帰っ てきた。 「まったくもう。人が頑張って3匹も運んで来てみればのん気に雑談なんかしてるんだから」 「悪い悪い。今から巻き返すよ」 固く結んだ髪をプチプチと引き千切っている友人に背を向け、オレは新たに空のケージをふ たつ抱えて逃げるように広場へと走った。 ————————————————————————————————————————— 「ふう…、これでラストだな」 最後のケージにたった今蹴り飛ばして気絶させた野良実装を放り込んでオレは溜め息をつく。 不覚にもズボンの端に糞がかすってしまった。射程距離ギリギリまで引き付けてから投糞す るとはなかなか悪知恵の働く奴だったな。だがその結果どうなるかまでは考えが及ばなかっ たようだ。 ドテッ腹に怒りの本気キックをまともに食らった野良実装はケージの中で血混じりの泡を吹 いて痙攣している。おそらく内臓や骨をかなり痛めたはずだ。 もっともそのくらいで実装石が死ぬとも思えない。しばらくすれば治るだろう。 「それにしても…。まったく手加減しなかったな…」 足に残るキックの余韻を感じながらひとり呟く。 実装石に投糞されたのは何も初めてではない。以前であれば腹が立ちこそすれ、本気で手を 上げることは無かった。せいぜい加減したゲンコツくらいだ。 人の形をしていて人語を解す。見ようによっては幼児にも取れる姿をした相手に全力で暴力 を振るうなど考えられないことだった。 日に日にオレの中で実装石への認識が変わってきているのがわかる。これも仔実装を飼いだ して実装石のことをよく知り、糞蟲のマラ実装や親指の相手をしてきたうちに起こった変化 だろう。実際に今、糞蟲を蹴り飛ばした瞬間にオレが感じたのはある種の爽快感だった。 その感覚が少し怖くなり、オレは自分に聞かせるように言い訳する。 「ま、こんなことするのは糞蟲相手のときだけさ。今回集めたのも糞蟲だけだしな」 そう、今日オレが集めたのはいわゆる糞蟲と呼ばれるような個体ばかりだ。 何をするのか知らないがメイデン社で実験に使われるというからにはロクな扱いをされない だろう。まず間違いなく命はないはずだ。場合によっては死ぬより辛い目にあうかも知れな い。 だったらせめて善良な個体は避け、できるだけ糞蟲な個体を選んで捕獲しようと考えた。 とはいえ出会う個体のほとんどが一目でわかる糞蟲ばかりだったので別段選別に苦労したわ けでもないが…。とりあえず話しかけ、その反応でもって捕獲するかしないかを決めてきた。 今捕まえたコイツはオレが近付くまで後ろ手で糞を隠し持ち、話しかけた瞬間に投げつける という不意打ちをかましてくれやがった個体だ。 とっさにサイドステップで直撃こそ躱したものの、避け切れなかった細かい飛沫がズボンに 付着してしまった。 次の瞬間にはこちらを指差して高笑いする野良実装へ渾身のローキックを放っていた次第だ。 まあ何はともあれオレの持つこのケージが最後のひとつだったはず。さっさとワゴンまで持 って行くとしよう。 そう思って広場を横切ったときだった。 「ん…?」 隅の方にポツンと設置された二人掛けの小さなベンチの上にダンボール箱がひとつ置かれて いるのが目に留まった。40×30cm程の水槽くらいのサイズのダンボールだ。 ふと気になって近付いてみる。公園の隅のベンチにポツンと置かれているダンボールの中身 と言えばなんぞや? 捨てられたエロ本か? いやいや、その可能性も無きにしもあらずだがこういうときの定番 と言えばアレでしょう。 …てか側面に思いっきり『かわいがってください』って書いてあるしなぁ。 「テチャ!? ママ! 知らないニンゲンがきたテチ!!」 「デデ!? ホントデス! おまえたち、早くおあいそするデス!」 「「テッチューン☆」」 上から覗き込んでみると中には実装石が3匹入っていた。成体1匹に仔が2匹だ。携帯のリ ンガルを読んでみるとどうやら親仔らしい。 3匹ともフリフリのレースの付いた趣味の悪いピンクの実装服に身を包んでいる。明らかに 捨てられた元飼い仔実装だ。 「デププ…! 今のおあいそでこのニンゲンは私たちにメロメロになったデス」 「ニンゲン! おまえはトクベツにコウキなワタチたちの新しいドレイになることをゆるし てやるテチ!」 「コーエイにおもうテチ!まずはセレブなワタチたちにふさわしいおうちに連れてくテチ! それからカンゲイのパーチーをひらくテチ! ケチったらぶっころすテチャァ!!」 あーあー、思ったとおりに糞蟲だなぁ。捨てられている実装石なんて大抵こんなもんだ。 「オイお前ら。飼い主はどうした? 捨てられたのか?」 「テェ!? こいつナマイキな口のききかたテチ!!」 「あんな役に立たないムノウドレイなんかこっちが捨ててやったデス!」 「ここにいれば新しいドレイが来るって言ったテチ! そしたらおまえが来たテチ。だから さっさとここから出してワタチたちのゴーテイへ連れてけテチィ!!」 よくまあこんなのを仔を産むまで飼ってたな、前の飼い主は…。 親1匹なら何とかなったが仔が生まれたことで耐え切れなくなったってところだろうか? だからって捨てるのはよくないよな。 よし、ついでだからコイツらも連れて行ってみるか。 オレは騒ぐ元飼い親仔を無視して無言でダンボール箱を閉め、ケージと一緒に抱きかかえて ワゴンへと戻った。 「おかえりー。それで最後だね。って何それ?」 「いや実は…」 既にワゴンで待っていた友人と空太さんに経緯を説明する。 その間もダンボール箱からは実装親仔の声がデスデステチテチと聞こえてきて喧しいことこ の上ない。 しばらくリンガルを眺めていた空太さんはニヤリと笑って言った。 「元飼いの糞蟲親仔か…。うむ、おもしろい。 せっかくだしこれも使うとしよう」 そう言いながら空太さんは元飼い入りのダンボールを他のケージと一緒に荷台へ積み込んだ。 その作業を横目で見ながらオレは水道で手を洗う。 ふう、やれやれ。結局よくわからないことに付き合わされたがともかくこれでオレはお役御 免ってわけだ。まだ日も高いし、その辺の古本屋でも冷やかしてから帰るとするかな。 「あー、ところでパンチョ君…」 と思っていたら空太さんに話しかけられた。つーかもうパンチョでいいや…。 「君は愛護派かな…?」 「へ…? 愛護派…、ですか?」 「うむ、見ていると君は今回の依頼にあまり乗り気ではなかったようだから。もしかしたら 愛護派だったのでは…、と思ってね」 「うーん…。飼っている仔実装のことはそれなりに可愛がっていますが、全ての実装石を無 条件で愛護するわけじゃないですよ?」 「そうかそうか。あえて糞蟲ばかり集めていたのは…?」 「単に糞蟲が嫌いなだけです」 「なるほど…。だったらどうだい? 今からうちの研究所を見学して行かないか?」 「へ…?」 メイデン社の研究所見学? なんだか妙なことになってきたぞ…。 これが虐待派ならまさに垂涎、願っても無いラッキーチャンスだろう。オレでさえ確かに興 味を引かれる提案だが…。 「い、いいんスか? そんな大事なところにオレみたいなのをホイホイ連れてって…」 我ながらもっともな意見だと思う。実装産業の大手、メイデン社。その研究所なんて同業者 なら金を払ってでも見に行きたい場所のはずだ。 いくら空太さんがチーフだとはいえ軽々に他人を招き入れていいはずがない。 しかし空太さんはそんなオレの疑問を笑って一蹴した。 「ははは…! その通り、いくら弟の友達でもさすがに研究所の全てを見せられるわけじゃ ない。だから今回見せようと思うのは正確にはメイデン社の研究ではないんだ」 「・・・?」 「一般の会社にも言えることだがね、研究所の中でも一部の同好の士が集まって作った同好 会の様なものがあるんだ。それはテニスやサッカーといったスポーツ系のものだったり手 芸や料理といった文化系のものだったりと様々だが、私のように趣味が仕事になったよう な者は利益を求める仕事としての研究とは別に、趣味で実装石を研究するような会に所属 しているのさ。わかりやすく言えば化学部といったところだ」 「はぁ…、なるほど」 「ちなみに私はそこの部長も兼任していてね。今から見せようと思うのはその会での研究成 果だよ。無論、今までも社の利益に繋がりそうな成果が得られた場合には研究結果をフィ ードバックさせてきたが、今回の研究はまだそこまで進んでいない。本格的な実験と合わ せて外部の人間の意見も聞いておきたいと思ってね。どうかな…?」 「いいじゃん、行こうよ! どうせこの後の予定もないんでしょ?」 友人もグイグイ押してくる。オレは少し考えた。 同好会とはいえメイデン社の実験を見学できる機会なんてそうそうあるもんじゃない。 以前のオレだったら実装産業なんてまるで興味なかったが、パンチョらを飼いだしてから少 なからずおもしろいと感じているのも事実。 何より友人の言うとおりこのまま帰っても特にやることがない。後々の話題にもなるだろう しここは素直に申し出を受けておこう。 「わかりました。なんだかおもしろそうだし、せっかくなので見学させてもらいますよ」 「そうか! そういうことなら早速研究所に案内しよう!」 そう言うが早いか空太さんはワゴンの運転席に乗り込むとエンジンをかけた。 気の早い人だなぁ。まだハッチバックが開いたままなのに…。 閉めようと思いハッチバックに手を伸ばしたオレの前に友人が笑顔で割り込んできた。 「・・・、なんだよ?」 「じゃーんけーん…」 ————————————————————————————————————————— 「「デシャァ!! デズァ! デッスデッス! デッシャァァァ!!」」 「・・・・・」 「「デデッ!! デスデスデス…!! デッスーン!!」」 「・・・・・」 オレは野良実装石の入ったケージに囲まれながらワゴンの荷台で揺られていた。 「なんで…。なんでオレが荷台なんだ…」 「仕方ないよ。ジャンケンに負けたんだから」 「よく言うぜ! なんのジャンケンかも言わずにいきなり始めやがったくせに!」 「まあまあ、もうすぐ着くからガマンガマン」 「ヤロウ…、着いたら覚えてろよ…」 「「デププ…!!」」 「うるせぇ糞蟲共が!」 「ちょっとパンチョ、うるさいよ」 「お前はその名で呼ぶな!」 荷台のオレと助手席の友人とのやり取りをニヤニヤしながら聞きつつ空太さんはワゴンを走 らせる。窓からは目指す『メイデン社商品開発研究所白保町支部』の大きな施設がまだ遠く にあるのが見えた。 ————————————————————————————————————————— 「スーハー オエッ スーハー オェェェ…」 ようやく研究所に到着し、ワゴンの荷台から開放されたオレは転がり落ちるように飛び出し て新鮮な空気を求め、深呼吸と同時に吐き気を堪えていた。 シートも無い荷台で長時間揺らされていたことによる車酔いに加えて、充満する実装臭に鼻 腔を完全に破壊されていた。 あと少し時間がかかっていたら昼食った親子丼をブチまけていたところだ。 「いやぁー、着いた着いた。ここに来るのは久しぶりだよー。 ・・・、大丈夫?」 そんなことは何処吹く風と涼しい顔で近寄ってきた友人。オレはその胸倉を掴む。 「誰のせいでこんな…、ウプッ…!」 「おわーっ!! ゴメン! あやまる! だから放してぇ!!」 「何やってるんだ、二人とも。 ほら、入所許可証」 受付で手続きを取っていた空太さんが2枚のパスポートケースを持ってきた。入館許可証だ。 それを首から下げてオレ達は施設内に入場する。 「ところでパンチョ君。君は実装石の駆除に参加したことがあるかな?」 長い廊下を歩きながら唐突に空太さんが話を振ってきた。 「駆除ですか? 今のところありませんが…」 「ふむ、では実装石に占拠…、汚染と言った方がいいかな? そんな公園を見たことは?」 「それはあります。今のアパートの近くの公園はついひと月ほど前までそんなでしたよ」 「酷いものだったろう。アレを駆除するのは並大抵の苦労じゃないよ。金もかかるしね」 そういった話はオレも知っていた。 実装石1匹1匹は弱く処理するのも簡単だが、問題なのはその繁殖力だ。 つがいを必要とせず、単体のまま花木の花粉や眼球の変色で容易く妊娠、出産する実装石は 環境の良い場所であれば瞬く間に飽和状態まで増殖してしまう。 大掛かりな駆除を実施しせっかく綺麗にした公園が僅かひと月で元通りなんてこともよくあ ることだ。 「せっかく大金をかけて綺麗にしたんだ。その後も綺麗なままにしておきたい、そう思うだ ろう?」 「うーん、確かにそうですね」 「そこで私達は駆除後のアフターサービスに目を付けた。綺麗にした公園等での実装石の再 繁殖を抑えるための研究を始めたんだ」 「繁殖を抑える? 薬か何かを撒くんですか?」 「薬剤研の連中はそんな方法も考えているようだがね。我々が研究しているのはもっと直接 的な排除法だ」 「例えば…、公園をフェンスで囲ったりとか…ですか?」 「それでは外部からの侵入は防げても駆除の生き残りや人為的に捨てられたものなどの繁殖 が防げない。我々が目指したのはただの障壁のようなものではなく、自発的に駆除の生き 残りを見つけ出して処分、あるいは外から渡って来るものの排除を行う、そんなシステム だ」 「はぁ。 例えば…、全自動の駆除ロボットみたいな感じ、ですか?」 そこで空太さんはこちらを振り返りニヤリと笑った。 「君はなかなか勘がいい…。当たらずも遠からずといったところだ」 そしてある部屋の前で止まり、そのドアをノックして言った。 「その答えがここにある。さあどうぞ、きっと楽しんで貰えると思うよ」 ドアに付いたプレートには『第2実験室』と書かれている。 数秒してからドアが開き、中から空太さんと同じ白衣を着た別の男が顔を出した。 「お疲れ様です、チーフ。友人君もご苦労様。それから…、この子が例の?」 「ああ、そうだ。それで準備の方は?」 「オーケーです。いつでも始められますよ」 「よし、さあ友人とパンチョ君も入ってくれ」 そう言うと空太さんは先陣を切ってズンズンと薄暗い部屋の中へ入って行く。 だがオレはその時、またしても何か妙な違和感を感じていた。 なんだろう…。よくわからないが何かがしっくりこない…。 「どうしたの? さ、入って入って!」 その原因に気付く前に友人に背を押され、オレは部屋の中へと入っていった。 あまり広くはないその部屋の中には空太さんと先程の男以外にも数人の男女がいて、各々設 置されたパソコンで何かを打ち込んでいたり書類を手に話し合ったりしていた。 オレはキョロキョロと辺りを見渡してみる。 実験室というからには映画に出てきそうな怪しげな機材などが乱雑しているのかと思ってい たが、数台のパソコンといくつかの計器板が置いてある以外は特に目立つものはない。 気になることと言えばドアから見て正面の壁に大きなガラス窓が埋め込まれていることぐら いか。まるで刑事ドラマに出てくる取調室みたいだ。 どうやら壁の向こうにも部屋があるようだがそちらは真っ暗で何があるのかよく見えなかっ た。 いったいここで何の実験をするのかと思っていると空太さんが見覚えのある形状のヘッドフ ォンを2つ持ってやって来た。家で使っているヘッドフォン型実装リンガルの同機種だ。 「さ、これを着けてこっちに来てくれ。そろそろ始めるからね」 促されるままにオレ達はリンガルを装着し、ガラス窓の前まで連れてこられた。 空太さんが計器板の前に座っている助手に合図を送りボタンのひとつを押させる。 ガシャン ガシャン ガシャン 大袈裟な音と共に向こうの部屋に強烈な明かりが灯った。薄暗い部屋にいたオレ達はその眩 しさに目を逸らす。 しばらくして目が慣れるとようやく部屋の状態が見えるようになってきた。 広い、そして何もない部屋だった。 オレのアパートの部屋が3つくらい収まってしまいそうな面積。白い床、白い屋根、白い壁。 全てが白の平面で構成された殺風景な部屋。その中央にポツンと何かが立っていた。 「実装…石…?」 思わず疑問系になってしまった。なぜなら部屋の中にいた実装石はオレの知る実装石の姿と は大きく違っていたからだ。 着ている服こそ一般的な緑の実装服だが、そこからはみ出した生身の部分、つまり顔や手足 といったところが異様に浅黒い。まるで真夏のサーファーの様な深いモカ色をしていた。 特に顔の部分は茶を通り越して黒の域に達している。そしてその顔つきも普通の実装石とは 明らかに違っていた。 まず気付いたのが目だ。ビー玉でも埋め込んだかの様な真球状をした目ではなく、左右に細 長い楕円形となっている。 さらに構造上決して閉じないはずの口がぴったりと閉じて『へ』の字状になっていた。 黒い顔色のせいでその継目がほとんどわからず、目のことも合わせて一見マスクか何か被っ ているのではと思ったほどだ。 そして前髪と後ろ髪がない。 「デー…スー… デー…スー…」 その黒い実装石は部屋に明かりが灯った後も一歩もその場から動かなかった。 もしかしたら作り物かとも思ったが、僅かに聞こえるくぐもった声とそれに伴って微妙に上 下する肩がそれが生きていることを示していた。 「・・・?」 何を言っているのか気になってリンガルのスイッチを入れてみたが、あの実装石の声がまっ たく翻訳されてこない。ツマミをいじって集音モードにしても結果は変わらなかった。 「ああ、あれは言葉は話さないよ」 その様子に気付いた空太さんが解説してくれた。 「改造によってあらゆる感情を取り除いてしまったからね。口から発するのは呼吸音だけだ」 「改造?」 「そう。あれこそ我々の研究成果、実装石駆除用実装石。その名も『戦争石』だ!!」 ジャジャーンッ っと効果音でも付きそうな芝居がかったポーズでガラスの向こうを指差す 空太さん。当の戦争石と呼ばれた実装石はあくまで不動の姿勢を貫いていた。 「ゴホンッ…。まあ冗談は置いといて、だ。さっき廊下で話しただろう? 駆除後の公園等 で実装石の再繁殖を抑えるための方法を」 「生き残りや渡り個体を自発的に処理するロボットのようなものを置くって話ですよね?」 「うむ。大きな公営公園などには管理人が駐在してその任を負っているようなところもある がね。それでも全てはカバーできないし、小さな自然公園や児童公園ではそもそも管理人 を置くことすら難しい」 「それであのロボットが代わりをするってことですか?」 「そういうこと。それからあれはロボットじゃあないよ。確かに骨格や筋繊維、頭の中に至 るまで全身に機械を埋め込んではいるけどれっきとした生きてる実装石さ。半実半機のロ ボ実装とでも言おうか」 「ロボ実装!?」 「デー…スー… デー…スー…」 体のほとんどを改造されたロボ実装こと戦争石。なるほど、少年心をくすぐる設定だ。 明らかにオレが興味を持ったのがわかったんだろう。空太さんはニヤリと笑うと後ろの所員 達に向かって言った。 「さあ、そろそろ始めよう! 戦争石の性能試験だ」 その声を合図に所員のひとりが何かのスイッチを入れた。 ウィィィィィン 微かな駆動音と共に戦争石のいる部屋の壁が開いていく。真っ白でわからなかったがよく見 れば壁の一部は自動ドアになっているようだ。 「デ…? デデッ…!?」 やがて開いたドアから数匹の実装石がわらわらと出て来た。 「あ…」 その先頭にいるのは先程公園で捕まえた元飼い実装親仔だ。 だが先頭と言っても後続を引き連れて来たわけではない。むしろ後ろの実装石達に蹴られな がら嫌々進んできた感じである。どうやら見知らぬ場所への斥候役をやらされているようだ。 よく見れば趣味の悪いピンクの実装服がかなり汚れ、所々破られていた。ドアの向こうで待 機させられているうちに相当なじられたんだろう。 「あれは全部君達に集めてもらった野良実装だ。その一部を今回の実験に使っている」 そうして全部で4匹の成体と2匹の仔実装が部屋に入った時点でドアは閉められ、野良実装 達はこの部屋に閉じ込められることとなった。 「デー? ここはどこデスゥ?」 「私たちはニンゲンに連れてこられたデス。つまり飼い実装になったはずデース!」 「デデッ!? 飼いデス!? それならさっさとカンゲイのゴチソウを持ってくるデス!! ドレイニンゲン!!」 広い部屋の中で喚きながらウロウロする野良実装達。やがてすぐに何もない部屋の中にある 唯一の異物、すなわち中央で佇む戦争石に気が付くことになる。 「デデッ? こいつなんデス?」 「デピャピャ…! 変な顔デスー!!」 「髪もないデス! 見るデス、私の美しい髪を。 羨ましいデスゥー?」 さっそく集まってきて自分達と容姿の違う戦争石に銘々好き勝手に絡み出す。 だがそれら野次を全身に浴びながらも戦争石はなんの反応も示さず、相変わらずピクリとも しない。 「こいつなんとか言ったらどうデス! それとも口もきけないんデスゥ?」 「こいつきっとママのハクリョクにビビってるんテチ!」 「ハゲはドレイテチ! コウキなワタチタチにさからえるわけがないテッチー!」 意外にも一番グイグイくるのが元飼い親仔だった。大方いじめの対象が自分達から戦争石へ と移ったのを良いことにこれ幸いとここでポイントを稼ぐつもりなんだろう。 ポフポフと戦争石の頭を叩いたり足を蹴ったりしているが肝心の戦争石はやはり不動のまま 小さく呼吸音を漏らすだけである。 「今は待機しろって命令されているからね。アイツはこれで指示しない限り動かないんだ」 オレの怪訝顔を察して空太さんが解説を入れる。そしてポケットから何かを取り出した。 それは一見すると実装リンガルのようだが今までに見たことない型のものだ。 そのリンガルを口元まで持っていくと空太さんは言った。 「戦争石、命令を変えるぞ。その部屋の実装石を排除しろ!」 その途端戦争石の体がビクンと震えた。続いて楕円の両目に淡い光が灯る。 そして今まで微動だにしなかった顔を上げてゆっくりと辺りを見渡した。 「デッ!? 急に動くなデス! 変顔ハゲのくせに高貴な私を脅かすとはいい度胸デッス! ナマイキなドレイは躾けてやるデース!!」 一瞬たじろいだ元飼い親実装だったがバックに大勢の野良実装がいることで気が大きくなっ ているのだろう。すぐに気を取り直すと大きく手を振り上げ実装パンチの体勢に入る。 その時、不意に戦争石が右腕を頬の位置まで持ち上げた。 「デ…? デププ…! 今さら媚びても遅いデッス!!」 笑いながら腕を振り下ろす元飼い親実装。 パスンッ 干した布団を叩いたときの様な良い音がした。そして訪れる静寂。 野良実装達も元飼い仔実装姉妹も何が起きたのかわからず固まっていた。 後ろで見ていたオレも今起こったことを理解するまでしばらく時間を必要としたほどだ。 戦争石の取った行動はもちろん媚びなんかではない。元飼い親実装が殴りかかった時、戦争 石は僅かに上体を捻って溜めを作った。 次の瞬間には目にも留まらぬ速さで戦争石のパンチが元飼い親実装の顔面に打ち込まれてい た。 普通の実装石の様なポフポフパンチではない。脚で生んだ力を腰で加速させ、背中で増加さ せ、顎先から一直線に打ち出す体重を乗せた見事なストレートパンチだ。 そんな凄まじいパンチをカウンターで食らった元飼い親実装。しかし彼女は少しよろめいた だけで倒れなかった。 「「「デ…? デピャピャピャピャピャ…!!」」」 静寂を破り不愉快な笑い声が響く。その様子を見た周りの野良実装達だ。 (実装石目線で)ヘンテコなパンチを放った戦争石を一斉に馬鹿にし始める。 「なんデスゥ? 今の不恰好なパンチは!?」 「そんなんじゃ蛆チャンのプニプニにもならないデース!」 「なんなら私がパンチの打ち方を教えてあげてもいいデスゥ! デピャピャ…!!」 「見ろデス。軟弱な元飼い1匹倒せないパンチデス」 「ちがうテチ! ワタチたちのママが強いんテッチ! さすがママテチューン☆」 それぞれ好き勝手に沸き立つ実装石達。 だが… バタッ 突然紐が切れたように元飼い親実装が倒れこんだ。 「テェ…? ママ、なにコケてるテチ? 恥ずかしいからさっさと立つテチ!」 「そうテチ! 今さらやられたフリとかいらないテチ。さぶいテチィ」 「デ、デ、デ、デゲゴボガボデボボ…!!!」 「「テェェェェッ!?」」 仔実装達のツッコミに答える代わりに口から血泡を吹き、パンツを緑に膨らませながらビク ンビクンと痙攣する元飼い親実装。 仔実装姉妹を含めたその場の実装石達はまたしても何が起こったのかわからず立ち尽くす。 実装石の動体視力では視認できなかったようだがオレ達には見えていた。 戦争石のパンチを食らった元飼い親実装は体こそふらつく程度だったものの、首が一瞬で4 回転して元の位置に戻っていたのだ。 広がった後ろ髪が制動をかけなければ千切れ落ちるまで回ったかも知れない。 「デガガガガガガ…!」 頚椎を破壊された元飼い親実装の痙攣はますます激しくなっていく。 他の実装石達が口をあんぐりと開いて見つめる中、戦争石はゆっくりと片足を持ち上げ、 グシャッ 思い切り元飼い親実装の顔面を踏みつけた。 木から落ちた熟れたザクロの様に四散する頭部。血や肉片、脳漿が飛び散り周囲の実装石達 に降りかかる。 そして痙攣していた元飼い親実装の体はパタリと止まり動かなくなった。 「デデェッ!?」 数瞬遅れてようやく野良実装達も何が起きたのか理解する。 「コイツ! やりやがったデスッ!」 頭に血が上った1匹が戦争石に殴りかかる。 その足目掛けて戦争石は鋭いローキックを放った。 ベキィッ 割り箸をへし折った様な音がして蹴られた野良実装の足が変な方向に折れ曲がる。 「デギャァァァァ…!! デヴォッ!!」 倒れこみ、ブラブラ揺れる足を押さえて転げ回る野良実装の腹になおも蹴りを入れる戦争石。 さらに1発、2発、3発… 「デヴァアッ! デヴォオッ! デゲエッ!」 野良実装は蹴られるたびに血反吐を吐き、腹が陥没していく。 「デベヴォアァッ!!」 4発目が入った時、野良実装は口から盛大にモツを吐き出した。その際くすんだ緑色の小さ な塊が一緒に転がり落ちる。 偽石だ。 戦争石はそれを拾い上げた。 「デゲェ…、ワダジのオイジ…、がえぜデ…ズ…」 もはや動くことも出来ないモツ吐き実装が戦争石の持つ『命』へ手を伸ばす。 戦争石はそれを両手で挟むように持ち直すと、 ガシャッ 「デギャアアアアアアアアアアァッ!!」 一気に粉砕した。偽石を砕かれたモツ吐き実装は全身から血を噴き出し、壮絶な断末魔の悲 鳴を上げて絶命した。 戦争石は砕いた偽石の欠片を無造作に払うと次の獲物を探して顔を上げる。 だがその頃になるとさすがに戦争石の周りに野良実装はいなくなっていた。 戦争石を危険な相手と認識したらしくそれぞれ部屋の中を散り散りに逃げ回っている。 その中で特に足の遅い1匹がいた。怪我をしているのか片足を引きずって歩いている。 んん…? よく見ればあの汚れ具合、オレが蹴り飛ばしたヤツじゃないか…? その実装石の服は左脇腹辺りに小さな裂け目が出来ている。オレは公園で糞を投げてきた野 良を蹴った際に同じような傷ができたことを思い出した。 かなりの重症だったはずだがもう動けるようになったのか。つくづくデタラメな回復力だ。 他の生物なら全治に6ヶ月かかるような負傷でも栄養状態の良い実装石なら例え活性剤など を使わなくても3日で治ってしまう。 だがそれが災いした。もしもまだ動けないような状態だったら今この実験に使われることも なかっただろうに。 戦争石はそんな必死に逃げている傷実装にあっさりと追い付くと背後から無造作に突き飛ば した。 ただでさえバランスの悪い体型の傷実装は受身も取れずにコンクリートの床にキスをする。 「デズッ! デズゥゥゥゥ!!」 恐怖からパンコンしながら尻モチの体勢のまま鼻血を垂らして後ずさる傷実装。それを追っ て戦争石が1歩進んだときだった。 「くらえデッス!!」 なんと傷実装は後ずさっている間に後ろ手でパンコンパンツをまさぐり、戦争石が近付いた ところを見計らって糞を投げつけたのだ。 オレの時とまったく同じことをしやがった。多少悪知恵が働くのかと思ってたが馬鹿のひと つ覚えだったのか? 自分より強いものに対してそんなことをすればどうなるか文字通り体 に叩き込まれたはずなんだが…。 しかも投糞された戦争石はまるでその行動を予測していたかのように僅かに横に避ける最小 限の動きでかわしてしまった。 必死で避けた挙句被弾したオレとは大違いだ…。 「デデッ!?」 自身では完璧と思っていた作戦をあっさり破られた傷実装は逃げるのも忘れて目を白黒させ た。 戦争石は投糞したまま突き出されたその腕を取ると肘間接の逆方向へ躊躇なく折り曲げる。 「デギャァァァァッ!!」 さらに左足も取ると同じように膝を反対側へ曲げた。 「デゲッハァァァァッ!!」 肘と同じく膝もあり得ない方向へ曲げられた傷実装は泣き叫びながら七転八倒するしかない。 それを見下ろしていた戦争石、おもむろに左手をかざす。 シャキィィィン 高い金属音と共に戦争石の左手、人間で言えば拳の山に当たる部分から鋭利な4本のスパイ クが飛び出した。 「すごいだろう! 野良実装の天敵である猫からヒントを得た伸縮自在の爪、『キャットク ロー』だ!」 興奮した口調で空太さんが語る。 シャッ シャッ シャッ シャッ 「デギャアアァァァッ!!」 その爪でまさに猫が掻くように傷実装の全身を切り裂く戦争石。あっと言う間にズタボロに された傷実装は血ダルマとなって横たわる。 「デヒッ… デヒッ…」 もはや満身創痍となった傷実装はそれでもまだ動く片手と片足で這いずりながら逃げようと していた。 なみの生き物ならもうとっくに死んでるところだ…。この死ににくさが実装石の駆除をより 困難なものにしている原因のひとつでもある。だがそれもここまでだった。 グサッ トドメとばかりに戦争石がキャットクローで傷実装の頭を串刺したのだ。おそらく脳にまで 達しているだろう。 傷実装は白目をむいたまましばらくビクビクと震えていたが、その頭からキャットクローが 抜かれると同時に倒れて動かなくなった。両目は白濁していて完全に絶命したようだ。 シャキン 血塗れた爪を再度拳へ収納した戦争石。表情の読めないその目が次の相手へ向けられる。 その最後の野良実装はこの部屋に入ってきたときのドアの前でデスデス喚いていた。 「お願いデスゥ! ここから出してデース! ワガママも言わないデス! いい仔にする デスゥゥゥ!!」 叫びながら壁を叩き続けている。 「さっきまでは凄い糞蟲発言だったんだけどね。いよいよ次は自分と悟って態度を変えてき たよ」 ニコニコしながら楽しそうに言う友人。 「デー… スー…」 「デヒィッ!?」 必死にドアを叩いていた野良実装はいつの間にか背後にいた戦争石の呼吸音に飛び上がって 驚いた。ブリリとパンツが膨らむ。 「デ…、デ…、デ…、デッスーン☆」 「デー… スー…」 「デッスン! デッスン!」 「デー… スー…」 「わ、私たちはー、お友達デスー♪ 仲間デスー♪」 「デー… スー…」 追い詰められた野良実装が取った行動はやはり媚だった。 だが渾身の媚にも戦争石が無反応なのを見るとダンスや歌などあの手この手で敵意がないこ とをアピールする。 戦争石はそれをしばらく無機質な目で見つめていたが、突然野良実装の体に両手を回して抱 きついた。 「デッ!? そ、そうデース! 私たちは仲間デスゥ! デププ…」 野良実装はそれをハグと受け止めたようだ。嫌らしい笑みを浮かべながら戦争石の頭を撫で る。 「高貴で賢い私と強いお前が組めばニンゲンだって目じゃないデスー! みんなドレイにし て優雅な暮らしを…、ってちょっと苦しいデス…! いい加減放すデース!」 野良実装は抱きついたまま離れない戦争石の頭を押して引き離そうとした。 しかし戦争石は離れるどころかより強く抱きしめて野良実装を持ち上げる。 「デゲェ…、抱っこはいいデスゥ! 早く降ろ…デヴォォォォォ!!」 まるで万力が締まっていくかの様に力強く戦争石の両腕が野良実装の胴体を圧迫し始めた。 戦争石が繰り出したのはハグはハグでもいわゆる“ベアハッグ”だ。 みるみるうちに寸胴だった野良実装のボディがヒョウタンの如く括れていく。同時に搾り出 すように口から血を、尻から糞を噴き出していた。 「…! …! …!!」 もはや呼吸も出来ず声も出せない野良実装は涙、鼻水、血でグチャグチャになった顔を歪ま せて戦争石の頭をポフポフ殴る。 だが当然ながらそんなものが効くはずもなく、遂に胴体がヒョウタンどころか砂時計のよう になったところで ゴキン という鈍い音と共に完全に二つ折りにされてしまった。 大量の吐血を全身に浴び、ようやく戦争石はその両手の戒めを解いて野良実装を放り出す。 「デ…ヒュー… ヒュー…」 見事なクビレボディとなり息も絶え絶えで横たわる野良実装。 あらゆる液体でドロドロになったその顔を覗き込んだ戦争石は今度は野良実装の両足をそれ ぞれ左右の脇に抱えるとその場で勢い良く回り出した。 ミスミスミスミスミス…… 実装石の体型のせいか妙な風切り音を出しながら猛烈に回転する戦争石。部屋中に野良実装 の体液が撒き散らかされていく。 ミチ… ミチチ… ミチ… しばらくすると風切り音以外に何かが裂けるような音が聞こえてきた。 ベアハッグで極限まで細く締め潰され、芯となる背骨まで砕かれた野良実装の胴体が凄まじ い回転によってかかる遠心力に耐えられなくなってきているのだ。 「デ…、デガ…、デギャァッ…!」 ミチミチミチ… ブチィッッ 悲鳴と共についに千切れた野良実装の胴体。 回転で付いた勢いのまま鮮血の尾を引いて飛んで行った上半身は壁に叩き付けられ赤と緑の 花を咲かせた。 さらに数回転した後、戦争石は残った下半身も後を追わせるように放り出す。 飛んでいった下半身は寸分違わず半壊した状態で壁にへばり付いていた上半身へと激突した。 ベチャッ 元は一緒だった二つのパーツは再びくっついてひとつになったが、それはもはや実装石の形 はしておらずただの赤黒い肉塊となって壁からずり落ちた。 こうしてたった1匹の戦争石により、僅か数分の間に部屋の野良実装は全滅したのだった。 「全部しとめるのに5分か…、まずまずだな」 手にしたバインダーに挟んだ書類にペンを走らせる空太さん。 「待って兄さん。まだ残ってるよ」 そう言って友人が指差した部屋の角では小さなピンク色の物体がモゾモゾ動いていた。 元飼いの仔実装姉妹だ。戦争石が成体実装を優先して狙ったため、2匹はどうにかここまで 逃げ延びていた。 それ以上の逃げ場はないのだが2匹は自分の方がより奥へ行こうとお互いに押し合っている 最中だ。 「テシャァァ!! どけテチ! そこはワタチの場所テチィ!!」 「なに言ってるテチ! カワイイイモウトを守るのがアネのギムテチ! ここはワタチにゆ ずるべきテッチィィィ!!」 「ふざけるなテチ! コウキなワタチが死んだらセカイのソンシツテチ! ブサイクなオマ エがワタチを守れテチャァァァ!!」」 せめてジッと息を潜めていればいいものを大声で喚き合っていてはわざわざ存在をアピール しているようなものである。 醜い争いを繰り広げる姉妹に戦争石が近付いていく。 「「テヒィィィィィ!!」」 自分達の母親も含め、大人の実装石数匹を難なく屠った相手だ。先程まで罵り合っていた姉 妹は抱き合って震え、血涙を流しながら盛大にパンコンする。 「デー… スー…」 だが戦争石はそんな2匹に攻撃を加えるのではなく、しゃがみ込んで手を差し伸べた。 オレは思わず空太さんを見たがその空太さんも怪訝そうな顔をしている。 「うーむ、確かに戦争石のベースになった実装石は賢くて愛情深い個体だったんだが…。 調教が足りなかったかな? 仔を思う感情も取り除いたはずなんたが…」 呟きながら頭をかく空太さん。 一方で手を差し出された仔実装姉妹はポカンとした顔で見つめ合った。 だがそれも一瞬のこと。何を勘違いしたかニンマリと笑うと、 「テププ…、コイツ、ワタチたちに跪いたテチ!」 「テピャピャ…! トウゼンテチ! コウキでカワイイワタチたちにひれ伏さないヤツなん ていないテッチ!」 「オマエはママよりは使えそうテチ! ワタチたちに仕えることをゆるしてやるからコウエ イに思うテチィ」 「まずはゴハンテチ! ゴチソウをもってこいテチャァ!!」 好き放題騒ぎだし、あろうことか戦争石の手を足蹴にした。 手を差し伸べた戦争石の行為を自分達の方が上だからと歪曲して受け取った仔実装達は罵詈 雑言の限りを尽くしながら戦争石をなじる。 一度調子付いた仔実装達は気付かない。戦争石がプルプルと小さく震えていることに。 「何してるテチ! さっさと動けテチ、このウスノロ!!」 姉妹の片方が再び戦争石を蹴りつけた瞬間、 「デズアアアアアアアッ!!」 今まで微かな呼吸音しか出してこなかった戦争石が雄叫びを上げた。 その声量は凄まじく、オレ達が覗いているガラス窓がビリビリと震えるほどだ。 突然目の前でそんな大声を上げられた仔実装は目を見開いて硬直している。 その頭上から凄まじい勢いで戦争石の拳が落ちてきた。 「ヂッ」 ほぼ垂直に真上から殴りつけられた仔実装は一瞬で頭が胴体にメリ込み、さらに両足を巻き 込みながら戦争石の拳とコンクリートの床でプレスされ押し潰された。 戦争石が打ち下ろした拳を上げた時、形が残っていたのはハミ出した両腕だけ。それ以外は 作りかけのハンバーグのように平たく伸されたミンチと化した仔実装。 だが裏切られた戦争石の怒りはまだ収まらない。 既に原型を留めていない仔実装へ続けざまに左右の拳を叩き込み続ける。 「デーッ! スーッ! デーッ! スーッ!」 グチャッ ドチュッ ベチャッ グチュッ もはや仔実装はミンチを通り越してペースト状だ。戦争石にとってももう床を殴っているの と変わらないだろう。 「テェェェェェン!!」 ようやく我に返り、体が動くようになった最後の仔実装が出さなくてもいい声を出して逃げ ていく。 案の定、一心不乱に床を殴り続けていた戦争石がその声に反応して顔を上げた。 「テェェェェェン!! テェェェェ…チビャッ!!」 後を追い、あっと言う間に追いついた戦争石はその加速のままに仔実装を蹴り飛ばした。 蹴られた仔実装は空中で手足を四散させながら勢い良く宙を舞い… ベチャッ 「おわっ!」 オレ達の覗いているガラス窓へ衝突して染みになった。 ズルズルと滑り落ちていく仔実装だった肉塊。これで今度こそ実験用実装石は全滅したのだ が、戦争石は未だ怒りが収まらないらしく肩を震わせて荒い息を吐いていた。 「デスー…! デスー…!」 「ふむ、結果オーライではあるが感情制御にまだ難があるな。実験後にはもう1ランク上の 調教を行うとしよう」 その様子を観察しながら空太さんは手元の書類に結果や問題点などを走り書いていく。 そうしてひと通りメモを取り終わると例のリンガルを取り出して言った。 「しずまりなさい戦争石。実験はまだ終わっていないぞ」 途端に戦争石はビクリと体を震わせ、最初に見たときの様に直立不動の姿勢を取って動かな くなった。 あれほど怒り狂っていた戦争石がたった一言で一切の感情がない機械の様な存在に戻ってし まう。実装石を並みの飼い実装にするだけでも拷問虐待じみた調教が必要になるが、果たし て今まで戦争石が受けてきた調教がいかなるものか、この態度から僅かに窺うことができた。 だがそれよりも今気になるのはさっきの空太さんの言葉だ。 実験はまだ終わっていないと言った。野良実装相手以外にもまだ何かさせる気なんだろうか? そう思った矢先、再び駆動音と共に閉められていたドアが開き始めた。 「さて、第2回戦だ」 ニヤリと笑う空太さん。 その瞬間、まだ開き切る前のドアの隙間から何かが飛び出してきた。 「デシャァァァァッ!!」 雄叫びを上げながら飛び込んできたそれは一見すると猿か何かの様だった。 全体的に茶色の毛で覆われた毛深い身体。剥き出された鋭い牙。長い手足とその先で鈍く輝 く3本の爪。そして形こそ球体だがどこか鋭利さを感じるオッドアイ。 「す、すごい! 獣装石だ! しかも覚醒してる!」 ガツン と額をぶつける勢いでガラスにへばり付く友人。 オレも自分で気が付かないうちに一歩前に進んで突然の乱入者を見つめていた。 何しろ始めて見る獣装石だ。そのレア度はマラ実装の比ではない。ネットで資料や写真を読 見することはあっても生でお目にかかる機会なんてまずないだろうと思っていた。 獣装石は実装石から極々稀に生まれる獣性を強く実装した突然変異種で、実装石でありなが ら野生の獣となんら遜色ない身体能力を持ち、殺傷力の高い牙や爪も相まって人間にとって も非常に危険と言える存在だ。 しかし大半の獣装石は自身の持つ力に気付くことなく、その異形を理由に同属から迫害され て命を終えてしまうことがほとんどである。 だがひとたび覚醒してしまえば実装種としては上位に当たるマラ実装でさえ相手にならない ほどの戦闘力を誇り、きちんと躾けることができれば犬や鷹に匹敵しうる優秀な猟獣となる ため賢い仔獣装などは1匹数十万円で取り引きされることもあるという。 そんな覚醒獣装石が目の前にいるのだ。オレでさえウズウズしてるのに実装好きの友人が興 奮するのは無理もない。 「デシャゥゥゥゥ… デシャッ! デシャッ!」 スンスンと鼻を動かしながら辺りの臭いを嗅ぐ獣装石。傍から見ても異常に気が立っている のがわかる。どうやら部屋中に散らばっている野良実装達の血肉に反応しているようだ。 「獣装石ってのは実装種の中でもとりわけ排他的な性格をした固体が多いんだ。特に覚醒前 に蔑まれた経験を持つ個体は実装石に対して極めて強い敵意を持つことで知られている。 だから当初はこの計画に獣装石を起用する案もあったくらいさ」 だが獣装石は個体数が少ない上、獣性が高すぎてコントロールが難しいとの理由でボツにな ったと空太さんは続けた。 確かに賢い獣装石は優秀な猟獣になり得るがあくまで獣装石も実装石。ただでさえ少ない個 体数の大半が糞蟲か並み程度の知能しか持たず、下手に強い戦闘能力を持っている分野放し にするには危険な存在である。そのため発見され次第捕獲、あるいは駆除されているのが現 状だ。 そしてどうも今目の前にいる獣装石は後者に当たるタイプの様だった。落ちている肉片を摘 み上げて口に運び、クチャクチャと咀嚼する姿には知能の欠片も見られない。 「デー… スー…」 「デッ!? デシャッ! デシャァァァァッ!!」 嬉々として野良実装の死骸を食らっていた獣装石は離れた場所で待機していた戦争石の呼吸 音に気付き、全身の毛を逆立てて威嚇の体勢を取ると声を荒げて叫んだ。 その攻撃的なイントネーションから防衛の為の威嚇でなかったことがわかる。要はケンカを 売ったのだ。 そんな獣装石の威嚇に応えるように戦争石も前へ出る。 空太さんの命令、「その部屋の実装石を排除しろ」がまだ有効なんだろう。 なるほど、これが公園等であれば後から渡ってきた個体もこうして自動で排除しようとする という訳だ。 そういうことを考えているうちにも両石の距離は縮まっていく。 牙を剥いて唸る獣装石。それを意に介さず近付いていく戦争石。2匹の間はもう2mもない。 「「ゴクリ…」」 「デシャアッ!」 オレと友人が同時にツバを飲んだ瞬間、獣装石が跳ねた。鋭い爪を振りかざし戦争石へと一 気に飛び掛る。 やはり早い! まるで猫のような素早さで戦争石に迫る。 だがその爪は戦争石を捕らえることなく空を切った。すんでの所で戦争石がかわしたのだ。 「デジャァァァァッ!!」 これは獣装石にも予定外のことだったらしい。ある筈の感触のない爪をしばらくニギニギと 動かしていたが、やがて避けられたことに気が付くと額に青筋を浮かべて烈火のごとく怒り 出した。必殺の一撃がただの実装石にかわされたことが相当悔しいのだろう。 怒りのままに再び飛び掛り爪を振るう、がこれもギリギリでかわされてしまった。 しかし今度は獣装石も止まらない。左はかわされたが返す刀で右の爪を薙ぐ。 その爪が僅かに戦争石の頭巾に掠る。手足の長い獣装石に比べて戦争石はあくまで普通の実 装石体型だ。単発であればどうにか避けられても連撃を繰り出されたら回避にも限界がある。 それを理解してか知らずかますます獣装石は攻撃のスピードを上げていった。 右から左へ、左から前へ、前から後ろへ。跳躍力を生かして前後左右から目まぐるしく襲い 掛かる獣装石に戦争石はただただ舞うばかりだ。 徐々に爪が掠る頻度も上がり服のいたる所が裂け、解れていく。 しかし未だ直撃はない。獣装石のスピードも凄まじいがその全てを躱し切っている戦争石の フットワークもかなりのものだ。 あくまで実装石同士の戦いだというのにオレはいつの間にか拳に汗を握っていた。隣の友人 に至っては普段のおとなしげな顔がウソの様に興奮した表情でガラスに額を押し当てている。 だがそんな攻防は唐突に終わりを告げた。戦争石の解れた服が獣装石の爪に引っかかり僅か に引っ張られたのだ。 それはほんの少し戦争石のバランスを崩しただけだったが、紙一重の攻防を繰り広げていた 2匹にはそのワンテンポの遅れがこれまでとは決定的な差となった。 即座に体勢を立て直した戦争石だが既に回避は間に合わず、獣装石の右爪が今度は確実にそ の頬を捉えた。 ギャリィィィンッッ しかしオレ達の耳に聞こえたのは肉の裂ける生っぽい音ではなく、鉄板をガラスで擦ったか のような甲高い金属音だった。 「デ…!? デギャァァァァッ!!」 そして上がったのは戦争石ではなく獣装石の悲鳴。 見れば獣装石の爪が根元から砕けてボロボロになっていた。 一方で戦争石は頭巾こそ大きく裂けたもののその頬には傷ひとつ付いていない。 「なんだアリャ…!? 戦争石の顔面は鉄かなんかでできてんのか…?」 「その通りだよ、パンチョ君」 思わず呟いたオレに空太さんが答える。 「どんなに瞬発力を高めても実装石の体型からして機動力には限界があった。だから代わり に防御力を上げるため、戦争石の全身は間接部を除いて全て薄い鉄で覆われている。特に 顔付近には間接がないため厚さ数ミリの鉄板がそのまま癒着されているんだ。獣装石の爪 ぐらいでは欠片ひとつ剥がれないよ」 なるほど、マスクの様に見えたあの顔は文字通りに鉄仮面だったって訳か。 「それで全身茶色で顔だけ真っ黒なんですね。でも顔には間接がないって言ってもアゴとか は…?」 「戦争石は喋らないし、栄養は点滴で与えている。口を開く必要がないのさ」 そういう風にした本人であるにも関わらず事も無げに言い放つ空太さん。 ふと以前聞いた話を思い出した。実装石に関わる派閥は様々あるが、意外なことに一番残虐 な接し方をするのは虐待派を抑えて実験派だという。 痛めつけた実装石の反応を楽しむという意味では虐待派でさえ実装石と向き合っているのに 対し、実験派にとって実装石の反応などあくまで結果のひとつに過ぎない。彼らが求めるの は研究の成果であり、そのために犠牲になった実装石のことなど見てもいないのだ。 冷血、冷酷、冷徹の氷の精神を持つもの、それが実験派と呼ばれる者達である。 「デギィィィィ…!! デシャアッ!!」 激しい威嚇声で我に返り、オレはしばし離していた目線をガラス窓の向こうへ向けた。 自慢の爪を砕かれた獣装石。てっきり意気消沈するかと思えば意外にもさらに怒りのボルテ ージを上げて戦争石に吠え掛かっている。 おそらく爪が砕けた理由なんかわかっちゃいないんだろう。というか相手の体が鉄のように 硬いなんて普通わかるはずがない。 何でかわからないがコイツのせいで爪が割れた。だからコイツが悪い。絶対に許さない。 そんな思考が見えるような憤怒の表情で獣装石は吠える。 シャキィィィン その咆哮を受けて戦争石の拳から再びキャットクローが飛び出した。 同時に残った左爪を振りかざし獣装石が飛び掛る。合わせるようにキャットクローを突き出 す戦争石。両者の爪と爪が交差する。 ザシュゥッッ 先程とは違い、今度は確かに肉の裂ける音が聞こえた。 「デギャハアアアアッ!!」 だが結局上がったのは先と同じく獣装石の悲鳴。 いくら鋭くても生身の爪と金属の爪では勝負にならない。しかも今回は爪どころか左手首か ら先が千切れて無くなっている。その手首は2匹から少し離れた場所に ベチャリ と音を 立てて落ちた。 「デハッ… デハッ… デ…!?」 手首を失った痛みで動きの止まった獣装石に対し、戦争石は素早く背後に回ったかと思うと 突然背に飛び乗り、さらに両腕を掴んで肩関節の稼動範囲外へと思い切り捩じ上げた。 「デギャァァァァッ!!」 両肩を襲う激痛から逃れようと体を揺する獣装石。しかし揺すれば揺するほどより深く戦争 石の技が決まっていく。既に両腕からはメキメキと軋む様な音が聞こえていた。 「デースーッ!」 ベキベキ…バキィッ 「デギャッハアアアアッ!!」 ひと際戦争石が強い息を吐いて力を込めた瞬間、鈍い音と共に獣装石の両腕があらぬ方向へ へし曲がった。あれでは肩だけでなく、上腕骨に肘関節、両腕のあらゆる箇所がズタズタに なっているに違いない。 「デェェェェ…」 戦争石が腕を放して背から降りると、間接が2、3ヶ所増えたかのように歪になった獣装石 の両腕はブラリと垂れ下がった。 「ああー、勝負アリかな。さすがの獣装石も両腕を砕かれたらおしまいだよ」 「デグルルルルゥゥゥ…! デガアアアッ!!」 「い、いや! 見ろ、まだ勝負は終わっちゃいないぜ!」 色濃く実装した獣性のなせる業か、両腕をへし折られながらもなお戦意を失わず獣装石は大 口を開け、牙を剥いて戦争石に飛び掛った。鋭い牙で狙うのは戦争石の喉笛だ。 空太さんの話によれば首などの間接部は鉄で覆われていない。もしもうまく噛み付くことが できれば獣装石に大逆転の目もまだ残っていた。 「デースーッ!」 グサァッ 「デグッ…!」 だが当然戦争石がそれを許すはずがない。 左手を突き出し、襲い掛かってきた獣装石の顔面に深々とキャットクローを突きたてる。 さらにそのまま腰を落として腕を振るい、獣装石の下腹部まで一気に引き裂いた。 ブシャァッッ 「デギャアアアアアアッ!!」 盛大に鮮血を噴きながら断末魔の悲鳴を上げる獣装石。裂かれた腹からはボタボタと内臓が こぼれ落ちる。 「デ…ガッ…」 バシャリ… そのまま獣装石は自らの血の海へ倒れこんで事切れた。その身体からは未だドクドクと血が 流れ続けている。 戦争石は無機質な目でそれをしばらく眺めていたが、相手が死んだと判断するや何の感慨も 無いと言わんばかりにその亡骸を跨いで定位置である部屋の中央へと向かい、再び直立不動 の姿勢をとって動かなくなった。 「よし、なかなか良い動きだった。あれならば猫やカラスに襲われたとしても逃げ切ること ができるだろう。動物に手を出せば問題になるが最悪自衛のための迎撃も可能だな」 オレと友人は元より他の所員達にもどこか興奮した空気が流れる中、空太さんだけがひとり 冷静に結果をまとめている。 どうやら今のテストは実装石以外の動物から攻撃を受けた場合を想定してのものだったよう だ。 確かに実装石の天敵といえば野良猫やカラスといった野生動物が上げられる。それらは食べ るため、あるいは遊ぶために手頃な獲物である実装石を狙うことが多い。 よって戦争石が実際に公園等に配備されたら同じように襲ってくることが考えられる。だが 実装石ならともかく、例え害鳥と名高いカラスであっても動物を傷付ければ世間からの反発 を生んでしまうだろう。 しかしその場合でもあの敏捷性と防御力があれば手を出さずに逃げ切ることが出来るはずだ。 そして万が一、覚醒獣装石といった危険な種が発生しても十分に撃退できる強さを持ってい ることもわかった。 こんなもんが量産された日にゃ街中に実装石の居場所なんかなくなっちゃうぞ。 そしたら愛護派や虐待派、あるいは観察や実験派からも反発を受けることになりそうだが…。 そんなことを考えているうちに空太さんはメモを取り終わり、それを後ろの所員へ渡して言 った。 「さて、では次のテストを始めるぞ」 「「えっ!?」」 オレと友人は声を合わせて空太さんを見た。これでもう終わりだと思っていたからだ。 そりゃそうだろう。覚醒獣装石まで出してきてこれ以上何があるっていうのか。 そんなオレ達の反応を見て空太さんはニヤリと笑う。 「スピードを得意とする相手には勝てた。では、パワー型が相手ではどうかな?」 ウィィィィ… その言葉を合図にまたしても壁が開き出す。 …ィィィン ガコォン しかも今回は今までで一番大きく開いていく。人間二人が悠々とすれ違えるほど開いたとこ ろでドアは音を立てて止まった。 ズシン… ズシン… その奥から何やら巨大な影がこちらへ向かってくるのが見える。 2m四方はある通路いっぱいに広がったシルエット、その持ち主がついに明かりの灯る実験 室へ顔を出した。 「なんだ、ありゃあ…」 思わず呟いてしまった。 なにしろ目の前に現れたのは人間並み、いや、激しい猫背の分を伸ばせば2mはありそうな 超巨大実装石だ。 「ゲエエーッ!! 実装さん!!」 「実装さん!? あれが!?」 オレもネットなどで噂ぐらいは知っていた。実装さんは何らかの理由で実装石が人間を越す ほどの大きさに過剰成長した姿だと言われている。 しかしその存在については現在も真偽が問われている最中だ。先程の覚醒獣装石は非常にレ アな個体だったが、実装さんについてはレア云々以前にいるいないで議論がなされるような 段階である。 目撃情報以外に正式な記録が無く、今までに発表された写真なども結局は熊の見間違いであ ったり、キグルミによる捏造だったりと確かな存在証拠が何ひとつないのだ。 よって今ではオカルトマニアの間で語られる都市伝説の一種となってしまっている。 言うなれば雪男や口裂け女、ツチノコ、ネッシーやらの仲間なのだ。 「すごい…。ホントにいたんだ、実装さん…」 そんな都市伝説級の存在を目の当たりにした友人は隣りでとんでもない顔で驚いている。獣 装石の時でさえこんな顔はしていなかった。 「あの、いいんですか? 実装さんって生け捕りにしたら何百万か懸賞金が出るって聞いて ますけど…」 「うむ、確かに本物の実装さんだったら一大事だ。こんな実験で使っていいものじゃないな」 「本物だったら? じゃああれは…」 「そう、あれは偽物なんだよ」 空太さんによればあの実装さんは偽石研究の副産物として生まれた人工実装さんだそうだ。 詳しい話は企業秘密だとかで教えてくれなかったが、空太さんは過去に実装石に特殊な放射 線を当て、未だ解明されていない偽石の謎に迫ろうという実験を行ったことがあるらしい。 結果としてほとんどの実装石が死ぬか奇形化する中で、極稀に異常な進化を遂げるものがい たそうだ。それがこの実装さんであり、先の獣装石もそんな中の1匹だったと空太さんは語 った。 オレはふと、その横顔に何か寂しげなものが浮かんだような気がした。それは今日始めて見 る空太さんの人間的な表情に思えた。 「あ、戦争石が動き出した!」 が、そんな一瞬の思念を友人の無邪気な一言が吹き飛ばす。 言葉に釣られて実験場の方に目を戻せば、今まさに戦争石が実装さんへ歩を進め始めたとこ ろだった。 駆除すべき対象には実装さんも含まれているのか。確かに実装さんも詰まるところ実装石に は違いないがサイズやパワーが規格外だ。 それに対し戦争石はあくまで普通の実装石サイズ。いくら改造されているとはいえ身長だけ でも4倍に匹敵する相手に勝ち目があるのだろうか? 「ちなみに事前の測定によれば戦争石は100実装パワー、実装さんには1000実装パワ ーがあることがわかっている」 オレの疑問をさらに後押しするように空太さんが解説を入れる。 実装パワーというのは始めて聞いたが語感からして馬力みたいなものだろうか? だとしたら戦争石は実装石100匹分の力が、実装さんに至っては1000匹分の力がある ことになる。実装石1匹1匹は非力だがそれでも成体ならどうにか1.5リットルのペットボ トルを持ち上げることができる。それが100匹分、1000匹分となればかなりの力にな るだろう。 実際に過去には集まった何百という実装石に押されてプレハブ小屋が崩れ、死者まで出ると いう事件があったくらいだ。単体でそんな力を持つ実装さんが第一種危険生物に指定されて いるのも頷ける。 その実装さんに臆すことなく近付いていく戦争石。こちらも100実装力と破格のパワー を持っているが如何せん相手との力差は10倍だ。成体相手に仔実装が挑むようなものであ る。普通に考えたら戦争石に勝ち目はないように思われた。 「デ…? デププ…。 なんデス? ヘンチクリンなチビがいるデスゥ」 実装さんも近寄ってくる戦争石に気が付いたようだ。 噂では実装さんは大らかな性格をしていると言われていたがどうやらこの偽実装さんは違う らしい。 「クロチビ、ここはどこデス? ドレイニンゲンどもはどこにいるデス? あいつらコウキ な私のランチを忘れやがったデス! 見つけたらボコボコにして糞食わせてやるデース!」 空太さんを始めとする実験室中の所員にやれやれといった空気が流れたのを感じた。 もともと実験の副産物として生まれた偽実装さんだ。別の実験に使うまでは生かしておいた といった感じだろう。 「デ? 私の質問を無視するとはいい度胸デッス! 今なら半殺しと金平糖で許してやるか らさっさと答えろデス!」 当然ながら戦争石は答えない。 その代わり実装さんの足元まで近寄ると目にも留まらぬ速さでキャットクローを一閃させた。 「デギャッ!? 痛いデス! 何するデスこのチビ! ぶっ殺すデシャァァァッ!!」 しかし野良実装や獣装石相手には必殺となり得たキャットクローも、丸太のような実装さん の足には名前通り猫が引っ掻いたような傷しか与えられなかった。 そして傷付けられて激昂した実装さんは足と同じくらい太い腕を戦争石に向けて振り下ろす。 フォームは通常の実装石のそれ。だがデカイぶんむしろスピードは遅いぐらいだ。 ガシャンッ しかし戦争石はまともにそれを受けることになった。 実装さんのパンチはスピードこそ獣装石に遠く及ばないものの、体格のせいで攻撃範囲がや たら広い。獣装石の攻撃を紙一重でかわし続けた戦争石だがそれは主に上体を捻ってのスウ ェービングやダッキングがメインで実際はほとんどその場から動いていなかった。 実装石同様短足の戦争石では今の様に面の広い攻撃を繰り出されたら逃げようがないのだ。 「デデッ!? コイツやけに固いデス」 実装さんのバカでかい拳でコンクリートの床に叩きつけられ、並みの実装なら一瞬で飛散四 散していたであろう攻撃を受けた戦争石。だが全身を機械で強化されている戦争石はまだ原 型を留めていた。 それどころかふらつきながらも立ち上がろうとしている。 が、そこへさらに実装さんの蹴りが入った。戦争石は軽く数メートルは吹っ飛んで壁へ激突 する。 「デププ…! こいつは遊びがいのあるオモチャデスゥ。 他のやつらはちょっと触っただ けで壊れるからつまらなかったデス。 おまえならそこそこ楽しめそうデース!」 ズシンズシンと足音を響かせながら戦争石へ近付いていく実装さん。 一方で戦争石はどうにか起き上がり、今まさに眼前まで迫った実装さんの足へ再びキャット クローを振るった。 「イタタデスゥ! 弱いくせに抵抗するなデシャァッ!!」 しかしやはり先程と同じで効果は薄い。わずかに引っ掻き傷ができたくらいだ。 そして戦争石はそのまま蹴り飛ばされ、またしても床を転がっていく。 「デピャピャピャ…! 高貴で美しく誰よりも強い私に、おまえみたいなチンチクリンがい くら逆らってもパンコンのつっぱりにもならんデスゥ!」 やはり圧倒的な体格差と10倍のパワーを持つ実装さんの前にはさすがの戦争石も打つ手が 無いのだろうか。その後も幾度無く同じことが繰り返された。 起き上がっては実装さんの足を切り、蹴り飛ばされては起き上がる戦争石。 その頑丈さには目を見張るものがあるがそろそろそれも限界が近いようだ。戦争石の体はい たるところがへこみ、ひび割れ始めていた。どこからか煙のようなものまで上がっている。 あと一撃でも食らえば本当にスクラップにされてしまうだろう。 現に今もどうにか立ち上がってはいるものの吹けば倒れそうなほどふらふらしていた。 「デップー…、そろそろ飽きてきたデス。次で終わりにしてやるデス。私のトドメをありが たく受けるデース!」 そんな戦争石を踏み潰そうと実装さんは大きく片足を持ち上げる。 その瞬間、今まで死に体同然だった戦争石の両目に力強い光が灯った。 「デースーッ!!」 気合一閃、そのまままっすぐ実装さんの足へと思い切りキャットクローを突き立てる。 「デギャァァァァッ!!」 今までとは違う大きな悲鳴が実装さんの口をついて飛び出した。 見れば戦争石の腕がズッポリと根元まで実装さんの足に突き刺さっている。 これまでいくらキャットクローを食らっても余裕を見せていた実装さん。しかし腕1本分丸 々串刺されればさすがにただで済むはずが無い。 それを見てようやくオレは戦争石がこれまでしてきた事の意味に気が付いた。 延々と繰り返された戦争石の小さな抵抗。それは全て実装さんの足の同じ場所を狙って攻撃 したものだったのだ。 一度や二度では効果は無かっただろう。それこそ何度も何度も同じ場所を切ることでその部 分の強度を脆くし、満を持して訪れた機会に渾身の一撃を繰り出したというわけだ。 これではいかに規格外の実装さんといえど堪らない。戦争石が突き刺さっていた腕を抜くの と同時に始めて尻もちをつく形で倒れこんだ。 「チャンスだ! 今ならボディーにも攻撃が届く!」 熱くなった友人が叫ぶ。 リンガルを通していないのでその言葉が伝わったわけではないだろうが、戦争石はまるでそ れに応えるように両腕を真上にかざした。 シャキィィィン 次の瞬間、なんと左手だけでなく右手からもキャットクローが飛び出した。 「に、二刀流!?」 さらに戦争石はバック走で実装さんから大きく距離を取ると、今度は実装石とは思えぬスピ ードで一気にダッシュで突っ込んでいく。 「100実装パワー+100実装パワーで200実装パワー!!」 「いつもの2倍の助走が加わって200実装パワー×2の400実装パワーッ!!」 興奮した友人と空太さんが交互に叫ぶ。 その間に戦争石は実装さんの懐まで駆け込んでいた。 「「そしていつもの3倍のダッシュで突っ込めば400実装×3の! 実装さん、おまえを 上回る1200実装パワーだーーーッ!!」」 「いやその計算はおかしいだろう!!」 揃って叫ぶ兄弟に堪らずツッコミを入れた時には、戦争石は両腕のキャットクローを前に突 き出し、そのダッシュ力のままさらに体をライフル弾のごとく回転させて実装さんの土手っ 腹目掛けて飛び込んでいた。 「デギャギャギャギャ…ッ!!」 ドリル…と言うより削岩機のような戦争石の体当たりによって血肉を撒き散らしながら実装 さんの腹が抉れていく。 うおお…、小さい実装石ならともかく2mの実装さんでこの光景はエグイ…。 「…ギャギャギャハーーーッ!!」 オレが再びせり上がってきた親子丼を押さえている間に、戦争石はついに実装さんの体を突 き抜けて勢い良く背中から飛び出した。 そのまま空中でバランスを取ると胸の前で腕を交差させる形で着地する。 その爪の先には野球ボールほどの大きさの緑の塊が突き刺さっていた。実装さんの偽石だ。 「デガ… デ…ゲヘェ…」 胴体に大穴を開けられた実装さんが血反吐を吐き痙攣しながらゆっくり振り返る。 腕を振り上げ、背を向けたままの戦争石に殴りかかろうとするが… 「デー… スー…」 ピシ… ピシピシピシ… 「デガガガガガガガガ…!!」 戦争石がわずかに腕を捻るとキャットクローの刺さった場所を中心に実装さんの偽石に無数 の亀裂が入った。 同時に偽石の状態に呼応するように実装さんの体中に大小様々な傷が浮かび上がってくる。 「デ… わだじの…」 痙攣しながらも実装さんはマスクメロンのように網目状のヒビだらけとなった自身の偽石に 手を伸ばす。 ガクガクと焦点の定まらないその手がどうにか偽石へ届きそうになった時… ガシャンッ 「デ…!」 戦争石は両腕を互い違いに捻った。 実装さんが何か言うよりも早く左右から刺し挟まれていた偽石はガラスのように粉々に砕け 散る。 「デギャアアアアアッ!!」 次の瞬間、実装さんの全身に浮かんでいた無数の傷から一斉に大量の血が噴き出した。 何ccどころではない、一体何十リットルになるのかというほどの血液が噴水のように溢れ 出して行く。 そして白かった実験場が余すとこなく赤く染まった頃ようやく血の噴水は止まり、ビクンビ クンと震えながらついに実装さんはその場で前のめりに倒れ、やがて動かなくなった。 思いのほか凄惨な結果になった対実装さん戦を終え、さすがに静かな空気が実験室に流れる。 そんな中で最初に動いたのはやはり空太さんだ。他の所員から受け取った書類をペラペラと めくる音が部屋に響いた。 チラと見た感じどうやら今回の実験の簡易レポートのようだ。 「ふむ、大方予想通りか。実装さんクラス相手でもどうにか対処できるが、やはり格闘戦に 特化すると効率が悪いな。ダメージも受けすぎだ。ここは改良の余地有りだな」 「え、ええ…。しかしあれだけ実装さんの攻撃に耐えられるなら仮に人間が襲ってきたとし てもしばらく保つことができるでしょう」 「ああ、戦争石が本格的に配備されれれば虐待派等から反発を生むのは必至だからな。過激 な者は破壊活動すらしようとするだろう。いざというときは警報が鳴り警備会社へ連絡が 入るようにすればいい。これだけ保たせられればガードマンも間に合うはずだ」 なるほど、実装さん戦前にオレが懸念した実装関係者からの反発は想定内ってわけか。 自然に実装さんが発生することなんてまずありえないし、今回のテストはそういった人間に よる暴行を想定したものだったんだろう。 まあその場合は人間の腹をぶち抜くわけにもいかないので実際には空太さんの言うとおり警 備員待ちになるだろうが…。 「よし、これにて実験は終了だ。戦争石、次の命令があるまで待機しろ」 「デー… スー…」 特殊リンガル越しに指示を受け、戦争石はこれまでに倒した実装石、獣装石、そして実装さ んの肉片が浮かぶ血溜りの中を進み、いつもの定位置と思われる場所へ向かう。 「デ…!?」 だがその途中で突然戦争石は立ち止まるとガクガクと小刻みに痙攣し始めた。 続いてその体のいたるところから白煙が立ち上がり、さらにはっきりと目に見えるほどバチ バチと音を立てて漏電まで起こしている。 「む…? まずいな。さすがに負担が大きかったか」 空太さんが回収と修理の指示を出し所員達があわただしく動き始める。 それにしても…。 改めてガラスの向こうの実験場に目をやる。 とても元が白かったとは思えないほど鮮血で真っ赤に染まった部屋。いたるところに飛び散 ってへばりついた肉片の数々。 それが実装石のものだとわかっていてもさすがに気分が悪くなる…。 一方で友人は未だ興奮冷めやらぬといった具合だ。 「すごかったね、ギュルルルって! まさか実装さんまで倒しちゃうとは思わなかったよ!」 「あ、ああ…、そうだな…」 「どうしたの? 顔色悪いよ?」 「そりゃあんなもん見せられたらな…」 「うーん、さすがに実装さんは刺激が強すぎたかな? …まだちょっと早かったか…」 「まだ早かった…?」 「い、いや! こっちの話! そ、それよりも戦争石は大丈夫かな?」 言われて見てみればちょうど実験場のドアが開き所員達が中に入っていくところだった。 立ったまま白煙を上げ続けている戦争石は所員達の手によって担架に乗せられる。 2人がかりで持ち上げたところをみると戦争石は重量もかなりあるようだ。 その体中に電極の様なものが取り付けられ、そのコードの繋がったノーパソに空太さんが物 凄い勢いで何か打ち込んでいた。 人間でさえ撲殺できるという実装さんの打撃をあれだけ食らったんだ。さすがに相当のダメ ージを負っているんだろう。 空太さんの作業が終わると所員達はそのまま担架を担ぎ急いで部屋を出ようとした。 だが足元が良く見えていなかったのか後ろを持つ所員が血で足を滑らせてバランスを崩して しまった。 幸い踏みとどまり転倒まではしなかったが衝撃で戦争石の乗った担架が大きく揺れる。 その時、戦争石の鉄製マスクがズレた。 しっかりと癒着してあるはずだが実装さんの攻撃でだいぶガタがきていたらしい。そのまま マスクはずり落ち、その下にあった素顔が晒された。 「うお…」 戦争石の素顔はひどいものだった。顔の皮膚がマスクと一緒に剥がれてしまったせいで筋繊 維が剥き出しだ。眼球はひとつしかなく、顔中のいたるところに電子機器が埋め込まれ、そ れらを繋ぐ配線が肉の間を縫うように張り巡らされている。唇の無い歯茎剥き出しの口が呼 吸の度に上下に開く。基本造型は人間と同じなため非常にグロテスクだ。 それを見たオレはついに抑えていたものが限界を超えた。 「ウプッ… ウオェッ…」 「ちょ、ちょっと大丈夫?」 「だいじょばない… ウェッ… ドイレはどごだ…?」 「おわー!!! ガマン! ガマンして! トイレはあっちだよ、部屋出て左の角!」 オレは口を押さえながら部屋を飛び出し、ダッシュでトイレへと駆け込んだのだった。 ————————————————————————————————————————— ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン 「どう? 気分は少しは良くなった?」 「ああ、腹ん中空っぽになるまで吐いたからな。もう出るモンもねえよ」 正直思い出すとまだ口の中に酸っぱいものが上ってきたりするが研究所にいた時と比べれば ずいぶんマシになった方だ。 オレ達は今、電車に揺られながら帰路についている。 あの後トイレから戻ってみると実験室はてんやわんやの大騒ぎになっていた。 今回の実験で得たデータのまとめに奔走する者。真っ赤に染まった実験場の清掃を始めるも の。そして戦争石の修復に取り掛かる者が一斉に行動を開始したのだ。 特に空太さんは急ピッチで戦争石の修理をしなければならず、それが終われば部長として実 験データをまとめる作業がありオレ達を送り返す余裕がなくなってしまった。 そのためオレと友人は帰りの電車賃を渡され、自分達で帰ることになったのだ。 「それでも少しは楽しかったでしょ?」 「・・・、まあな。戦争石はカッコ良かったよ、実装石のわりには」 「だよね! でも僕はもう少し服装も変えたほうがいいと思うんだ」 「服? 例えばどんなのよ?」 「そうだなぁ…。頭巾の代わりに黒のアメリカンヘルメットとか、パンツも黒ビキニにして ブーツとか履かせたら似合うんじゃないかな?」 「なんだそりゃ。センス悪いなぁ」 「そんなことないよー! きっとカッコイイよ!」 「へいへい、ほら次で降りんぞ」 ————————————————————————————————————————— 駅にて友人と別れたオレは駐輪場に停めたままの自転車を取りに大学へ向かって歩いている。 途中コンビニに寄って晩飯を買い、しばらく進むと昼間野良実装を集めた公園の前に差し掛 かった。 「デスデスデース!!」 突然目の前に野良と思われる仔連れの薄汚れた実装石が飛び出し、大声で喚き散らし始めた。 付き合ってやる必要はないが一応携帯のリンガルを起動させてみる。 「やっと来たデスか、ニンゲン! そのマヌケな顔は覚えてるデス。ずっと待ってたデス! なんでおまえはブサイクでバカなヤツらばっか連れてくデス!? コウキな私こそ飼い実 装にふさわしいことがなんでわからないデッシャァァァ!! 今すぐ私も連れてくデス! 今ならトクベツに私には劣るデスがカワイイムスメも一緒に付けてやるデス! そしたら ゴウカなカンゲイ会を開くデェーッス!!」 どうやらコイツは昼間オレ達が野良を集めるのを見てたらしい。そして連れて行かれた連中 は飼い実装になったと思い込んでいるようだ。 オレはため息を吐き、頭を掻きながら言ってやった。 「やめとけ、やめとけ。オマエみたいなのは今後人間に関わらない方が身のためだぞ?」 「デ…? なに言ってるデスゥ!? この私が飼われてやると言ってるデス! おまえは黙 って言うこと聞いてればいいんデッス! ドレイのブンザイで口答えするなデーッス!!」 やれやれ…、まあ元からオレも話して伝わるとは思っていない。 昼間に見つけていればお望み通り連れてってやっていただろう糞蟲だが今となっちゃどうで もいい存在だ。オレは携帯を閉じ、無視して先を急ぐことにした。 「デスデス!? デーッス! デーッス! デスデスデッス!!」 後ろで糞蟲が騒がしいがシカト。 だがオレはこの判断が間違いであったことをすぐに思い知らされることとなった。 バサリ 「・・・・・」 不意に手にしたコンビニ袋に何かを放り込まれたような感触がして立ち止まる。 「デプププ…」 背後で野良実装がしてやったりといった含み笑いをしていた。 ああ、オレはバカだ…。油断して糞蟲相手に無防備なコンビニ袋を晒すなんて…。 後悔した数瞬後、手にした袋の中でゴソゴソと小さなものが動く音がし始めた。 もう見なくてもわかる。袋の中に仔を投げ込まれた、つまり託児されたのだ。 さすがにこんな堂々とやってくるとは思わなかった。オレはゆっくりとコンビニ袋の中を覗 いてみる。 「テッチュ〜ン♪」 冷たくて気持ちいいのだろう。糞やらなんやらでドロドロに汚れた仔実装がコンビニで買っ た缶カクテルに抱きついてペロペロ舐めていた。 結露した水滴で汚れが溶け、ヘドロのようなネチャネチャしたものが付着していく。 ギギギ…という擬音が似合いそうな動きで後ろの野良実装へ顔を向けるオレ。 口元に手を当てて笑っていた野良実装はそれに気が付くと胸を張って言った。 「デスデース? デッスン、デスデッスン! デププ…!」 リンガルは起動していないが不思議と何を言っているのかわかる気がした。 「これで娘は飼い実装だ。親である私も当然飼われる権利がある。さあ早く連れて行け」 そんなところだろう。 オレはコンビニ袋に手を突っ込み、カクテル缶を抱きついている仔実装ごと掴み上げた。 手の平と缶に挟まれた仔実装がテチテチ抗議してくるが知ったこっちゃない。 そのまま大きく振りかぶり、野良実装の腹目掛け… 「ちくしょう! オレの…、スクリュードライバーッ!!」 「デヴォォォォッ!!」 渾身の力でカクテル缶を投げ付けた。 螺旋状に回転しながら飛んでいった缶は見事野良実装のみぞおちに命中。衝撃で野良実装は 2メートルほど地面をゴロゴロと転がっていった。 ちなみに仔実装は途中ですっぽ抜けたのか更に数メートル先に落下している。生死は不明だ が今はピクリとも動かない。 「デゲェ…! ゴボォ…! ゲボボ…!」 腹に缶が半分ほどメリ込んだ野良実装は仰向けに倒れたまま吐しゃ物を撒き散らして悶絶し ている。 なんとも見苦しい。いつか戦争石が配備されたならこんな奴らに会わなくてもいいようにな るんだろうか。 汚されていない綺麗な公園、仔実装ではなく人間の子供が楽しく遊べる公園。 そんな世界を取り戻すべく空太さん達研究チーム、そして戦争石にはぜひ頑張って欲しい。 そう思いながらオレは未だゲロゲロやっている野良実装を冷ややかに一瞥し、公園を後にし た。 ————————————————————————————————————————— 「はぁー、今日は疲れたな…」 大学に寄り、自転車に乗ってようやく自分のアパートに帰ってきた頃には日が暮れていた。 「ただいまーっと」 「テチャーン! テチャーン! テェェェェン!!」 ドアを開けるなり部屋の奥のケージから禿パンツ一丁の飼い仔実装、『パンチョ』が必死に オレを呼ぶ声が聞こえてきた。 ああ、そういえば前回から3日経っている。この声の感じだとおそらくまたやらかしたんだ ろう。 出掛けに靴箱の上に置いたヘッドフォンリンガルを装着しケージの中を覗いてみる。 「ニンゲンママァ! ワタチ、ちょっとオネンネしたらノパンチャがポンポンになってたテ チィ!! とっても苦しそうテチ! アマアマのおくすりで治してあげテチィ!!」 ううむ、言葉の意味はわからんがとにかく凄いパニクり方だ。 まあ何を言っているのかわからなくても何を言いたいのかはわかる。 ケージの中を見てみれば案の定、ピンポン玉に手足の生えたような姿になったノーパン親指 実装のノパンが白目を剥いて床に転がっていた。 うちのパンチョは本石に自覚のない隠れマラ実装だ。3日に一度くらいの間隔で覚醒し、溜 まった精液をはき出そうとする。覚醒中は理性がなくなるためかその間の記憶はないらしい。 射精は1回で終わるし量も少ない(マラ実装としては)のだが、だからと言って部屋の中でブ チ撒かれたのでは堪らない。 そこで用意したのがノパンだ。やはり生身の同属は具合が良いらしく、ケージ内にノパンが いればパンチョはまず間違いなくコイツを狙う。ノパンには排泄を抑える裏ドドンパと嘔吐 を抑える裏ゲロリの2種類の薬品を常用させているため、膨れるほどの精液を流し込まれて も自分では出すことが出来ない。オレがドドンパで抜いてやるまで水風船のように体内に溜 めておくしかないのだ。 さらに避妊処置も施してあるためマラ実装の精液でも妊娠することがない。 素人考えでやってみた作戦だったが今のところうまく回っていた。 オレはキッチンの戸棚から液状ドドンパの原液と付属のスポイト、それからペットボトルの キャップを取り出し、ノパンの腹から精液を抜いてやるべくドドンパの調合に取り掛かった。 強いて言えばこうやって毎回液状ドドンパを調合する手間がかかるのが欠点だろう。 裏ドドンパを常用しているノパンは今回のように犯された後の精液抜きだけでなく、日頃の 脱糞もドドンパで行わなければならない。 つまりオレは最低でも1日1回はドドンパを作り、ノパンに飲ませなくちゃいけないのだ。 これが非常に面倒くさい。 パンチョさえまともな実装石だったらこんな面倒なことしなくてもいいのになぁ。 そんなことを考えていたらふと思いついたことがあった。 もしかしたら空太さんならパンチョを元の普通の仔実装に戻せるんじゃないか…? 実装石にメチャクチャな改造を施して戦争石に仕立てあげた人だ。マラのひとつやふたつ取 っ払えるのかもしれない。 そうだな、ダメで元々だ。一度見てもらうか…? 「・・・・・。 いや、やめておこう」 そう、なにしろ『実装石にメチャクチャな改造を施して戦争石に仕立てあげた人』なのだ。 さらにヒドイことにされかねない不安がある。 シャキィィィン という音と共に股間からマラを生やすパンチョを想像し、オレは頭を振って自分の思い付き を否定する。 「テチィ…?」 それを見たパンチョは小さく首を傾げるのだった。 <あとがき> という名の言い訳 ギャグのつもりで書き始めたらいつの間にか非常に厨くさいスクになっていました…。 読みづらいものにここまでお付き合い頂きありがとうございます。 今回のテーマ、というか元ネタは言わずと知れた某肉マンガのロボ超人デス、コーホー。 セリフ回しや名シーンは可能な限りこだわって入れ込んでみました。まあそのせいで元ネタ を知らない人には『???』なシーンも多くなってしまったかと思います。(パロ・スペシ ャルなんて活字でどう表現したらいいのやら…) 作者が趣味に走りすぎてはいけないと自制していたはずなんデスけどね…。反省。 そしてさらに存在に賛否両論のある獣装石と実装さんも使用してみました。今のところ『他 実装はいないけれど亜実装はあり』というのが僕の世界観デス。 まあ簡単にブレまくる程度の世界観なんでそのうち他実装を絡めた話を書きたくなるかも知 れませんが。 今回はバリバリの実験派、『場良空太』など新登場人物を出しつつ、そこはかとなく伏線を 敷いて次回へ繋げていくことを意識してあります。非常に遅筆なのでなかなか更新できませ んが今後もぜひお付き合い頂けたらと思います。 なお、文字板などで頂いた感想が非常に励みとなっています。個別にお礼を言うことができ なくて申し訳ありませんがこの場を持って感謝の意とさせて頂きます。 もちろん「それはない」とか「ここはダメだろ」といったご意見もあればぜひ参考にさせて 下さい。少しでも実装を盛り上げられるよう微力ながら力添えしていきたいと思います。 それではここまでお読み頂き改めてありがとうございました。

| 1 Re: Name:匿名石 2018/02/23-22:16:38 No:00005169[申告] |
| どうせなら
「戦争石の脇を無事に走り抜けた者は飼い実装にする」 と称して走り抜けようとした糞蟲を神速で処刑し、 その中でも子供を守った個体に関しては子供だけは助けてやる、 とかって原作のネタがあってもよかった。 |