理論上、月は存在しない。 そんなことを言う人がいたほど月の存在は謎だった。 地球と月は一緒にできたとする兄弟説。 地球の自転の速度が速かったため遠心力で飛び出した物質が集まって月になったとする親子説。 別の場所でできた月を地球が重力で捕まえたとする他人説。 形成時期が違うとか、どんなに早くても飛び出さないとか、地球の重力じゃ捕まえられないとか 諸々の理由で各説は否定された。 今、もっとも有力なのはジャイアントインパクト説。 火星ほどの巨大な微惑星が地球に良い感じの角度でぶつかり飛び出した物質が集まって月が形成されたとする説。 月が存在することは奇跡なのだ。 そう、そんなことに比べれば今の状況など小さい小さい。 いや、でも無理だ。 自分を納得させようとしたが、やっぱり無理だ。 出した後拭かないなんてあり得ない。 便座に座ったまま彫刻の様に固まっていた私はトイレの扉を開け放つと声をあげた。 「おーい、ミドリー!」 『ハイデスー、なんデッスン!?』 デスデス言いながらやって来たミドリに告げる。 「服貸してくれ」 『デエッ!!いちおうきくデスが、なんにつかうんデスゥ・・・』 「バカだなぁお前、トイレで使うって言ったらケツを拭くに決まってるだろ、紙が無いんだよ。察しろよ。」 『そんなのおことわりデス!だんこきょひするデス!!』 「安心しろちゃんと返すから!」 『ふざけるなデス!!』 ちっ、行っちまいやがった。 うう、あいつを呼ぶのは恥ずかしいが今は緊急事態だ。 しょうが無い。 「おーい、チンクー!チンクー!!」 『まったく騒がしいのダワ、いったい何事なのダ・・・ヮ』 「あのー、お尻拭くから紙もってきてくだ・・・」 『ぉぉぉ乙女の前でなんて恥知らずな格好なのダワ、勝手にするのダワ!』 ないわー、真っ赤になって怒ることないわー。 うーん、こうなったら。 「おーい、厄ぅー!厄ぅー!!」 『ルトー、ルトー(ぱたぱたぱた)』 「あ、あの、紙を・・・」 『ルトー、ルトー(ぱたぱたぱた)』 「紙を持ってきて・・・」 『ルトー、ルトー(ぱたぱたぱた)』 あら、行っちゃったよ。 くそぉ〜。 「おーい、ダイフクー!ダイフクー!!」 『ナ”ァノ”ォー!ナ”ァノ”ォー!!(ガシャン!ガシャン!)』 ああ、あいつ危ないからケージに入れといたんだった。 大福切らすと見境無くなるんだよなぁ。 『ボクゥ〜、ご主人様が命令してくれればボクが直接拭き取ってあげ・・・』 あ!そういえば、先日ウォシュ○ット付けたの忘れてたわー。 しばし心地よい水流の刺激を楽しんだ後、温風で乾燥させる。 べんりな世の中になったものだのう。 ハンドタオルで手を拭いた後、足元に居たミドリをインサイドキックで軽く蹴飛ばし、 ブルーの頭を撫で、厄の持ってきてくれたヤ○ルトを半分飲み、チンクに何と言って謝るか考える。 何か忘れてる様な・・・。 ああ!!大福!、大福を買いに行かねば!! ふぅ、やばい、やばい、また忘れるところだったわー。 こうして、また、私はトイレットペーパーを買い忘れるのであった。 「カシラッ!?」
