【パンチョ第4話・マラ マラ マラ(後編)】 「たーだいまっと」 「テチャー!! テチテチィ!」 帰るなりパンチョの切羽詰った出迎えを受けた。なんか相当焦ってるな。 「ちょっと待てよ。リンガル付けてないんだからわかんねって! よっと…。 で、どうし たって?」 「ニンゲンママ、親指チャがタイヘンテチ!! 助けてあげテチィ!!」 「は…?」 どうやら親指の身に何か起こったらしい。パンチョに促されてハウスの中にいる親指の様子 をうかがってみる。 「おい、どうした? なんかあったのか?」 「ヂィィィ…。 ポンポンイタイレチィ…」 寝転がった親指が苦しそうに腹痛を訴えてきた。その腹はまるで妊娠してるかのようにポッ コリ膨らんでいる。 裏ドドンパを食わせたのが昨日の夕方。それから晩飯を与え、一晩経ってから朝食、そして 半日過ぎて今に至る。 約24時間2食で腹痛か…。危ない危ない、もう少しで糞吐きするところだったな。 「なにボーッとしてるレチ…!? ワタチが苦しんでるレチ! さっさとサイコーのチリョ ウをうけさせるレチ! それがドレイニンゲンのギムレチィ!!」 「それだけ減らず口が叩けるならまだまだ余裕だな。 パンチョ、親指をトイレに連れてく んだ。 んでパンツを脱がしとけ」 「テ…? おトイレテチ?」 首をかしげて“なんで?”という顔をしたパンチョだが、わからないままにとりあえず言う ことは聞いて親指を実装トイレへ連れて行く。 「レヂュゥ…! ポンポンにさわるなレチ、このバカハゲ!!」 「テチャ! 親指チャ、ごめんテチ」 さて、その間にオレは買ってきたドドンパのビンを開封した。通常ドドンパやコロリなど実 装石をハメるための薬品は金平糖の形を模した固形タイプが一般的だが、中には飲みやすい (飲ませやすい)液状タイプも存在している。今日買ってきたドドンパはそんな液状タイプだ。 オレにとっては飲ませやすいって理由も大事だけど、その前に金平糖型はパンチョが羨まし がってしまい余計に親指を増長させることになりそうだと思ってこっちを選択した。 これを付属のスポイトで適量吸い上げて水で希釈して使う。ドドンパにせよコロリにせよ活 性剤にせよ、実装用液状薬品は原液であることが多いので要注意だ。少量でもドドンパの原 液を親指に飲ませたら間違いなく破裂するってデスショップの店員に教えてもらった。 えーと、教わった用量では確か…、対象が親指実装の場合ペットボトルのキャップ1杯分の 水に2滴ほど、だったな。これで低圧ドドンパと同じくらいの効果になるそうだ。あくまで 比率の問題だから全部飲ませる必要はない。たったひと舐めでも効果を発揮するのが実装薬 のスゴいところだ。 オレはゴミ箱に捨ててあったペットボトルのキャップを拾って水道水を注ぎ、そこにスポイ トから液状ドドンパを2滴垂らした。たったそれだけで透明だった水が濃いピンク色に染ま り、きつめの甘い匂いを発しだす。いかにも実装石が好みそうな色と匂いだ。 中の残りをビンに戻したスポイトでキャップの中のドドンパ液を少し混ぜ、適当な量を吸い 取ってからトイレにいる親指実装にその先端を突きつけた。 「ほれ、腹痛を治す薬だ。飲め」 「レチュー、アマアマのにおいレチィ♪」 まったく迷いもせずに一気にチューっと飲んでいく親指実装。腹痛いんじゃなかったのか? だが半分くらい飲んだところで親指の動きがピタッと止まった。同時にギュルルルル…とい う音がして… 「レチャァッ!! ウ、ウンチでるレッチィィィ!!!」 ブリュリュリュリュリュリュリュ…! どこにそんな量を内包していたのかと思うほどの糞が親指の体から排出されていく。仔実装 のパンチョが一回に排泄する量を遥かに超える量の糞に実装トイレの砂がどんどん侵食され ていった。成体実装に匹敵する糞量を排出してようやく排便は終わったようだ。 「レチュゥ…♪ ウンチいっぱいでたレチ。 きんもちよかったレチィィィ…」 溜まった糞を一気に排出した親指は恍惚の表情でうつ伏せに横たわっている。 肛門と同時に性器でもある実装石の総排出口。排便という行為は実装石にとって心身共に快 感を得てストレスを緩和する意味があるという。ましてや丸1日強制的に止められていた排 便を開放する快感は凄まじく、親指実装の未発達な快楽神経では受け止めきれずに放心状態 へ陥ったようだ。 プシュッ 「レッ? レチュゥ…」 パンチョが親指の尻を拭き終わった頃を見計らってオレは親指にスプレーを吹きかけた。 一瞬ピクッと反応した親指はすぐにぐったりして動かなくなる。 「お、親指チャ…!?」 プシュッ 騒ぐ前にパンチョにもひと吹き。同じようにぱったり倒れて動かなくなった。 「「スピー… スピー…」」 オレが今2匹に使ったのはデスハウスで買ってきた『実装ネムリ』。早い話が睡眠薬だ。 即効性が売りのスプレータイプ。効果はごらんの通りである。 オレはぐっすりと眠りこけているパンチョをハウスの中の寝床に運び込み、同じく熟睡中の 親指はテーブルの上に敷いた雑巾の上に寝かせた。そしてその横に先ほど買ってきた品々を 並べていく。 さて、準備は完了。これよりオペを開始する! ピンセットを手に取り慎重に親指の顔面に近づける。その先端でまぶたを押し上げ、赤い右 目を摘むように差し込んでいく。 うわぁ、実装石だとわかっていても背筋がゾワゾワする…。 しっかりと眼球を摘めるところまで差し込んだらそーっと取り出し… ぷちゅ 「あ…」 親指の眼球は取り出すためにほんの少し摘む力を強くしたらほとんど抵抗もなく潰れてしま った。想像以上の脆さだ。イクラの方がまだ頑丈だぞ…。 ちょっと予定外だったが取り出すか潰すかの違いは大して問題じゃない。そのまま続行する ことにする。 お次は1本の線香にライターで火をつけた。それをピンセットの時以上の慎重さでなおかつ 素早く、空洞になった右目に差し入れる。小さくジュッと音がして親指の体がピクッと動い た。 慌てて右の眼窩から線香を引き抜く。刺激で意識が戻ったのかと思ったが大丈夫なようだ。 変わらぬ寝息を立てて時折口元をもにゅもにゅ動かしている。ちゃんと生きているのを確認 し、オレは大きな息を吐いて額の汗を拭った。 「あー、緊張したぁ…」 取り出したり潰したりしただけではいずれ回復してしまうが、こうして視神経及び眼窩内を 焼き潰したことで親指実装の右目は自己修復不可能となった。 ここまでは一応順調だ。だがまだ終わりじゃない。最後の仕上げが残っている。 続いて取り出したのは直径5ミリ程の赤いビーズ。これを先程のピンセットで摘み、空っぽ の親指の右目へ押し込んだ。 にゅぷ… 「よし、完成だ!」 出来上がったのは赤いビーズを義眼代わりに埋め込まれた親指実装石。パッと見ではノーマ ルの親指実装と見分けは付かないだろう。我ながらうまくできたものだ。 実装石の妊娠と出産はそのメカニズムこそ完全に解明されてはいないが、そこに瞳の色が大 きく関係しているのは周知の事実である。 普段は赤と緑のオッドアイが妊娠することで両方緑に変化し、やがて出産期を迎えると両目 は赤色へ移行する。 逆に非妊娠時の実装石の目の色が人為的、あるいは事故であれ同色に揃えられてしまうと受 粉や受精といった要因を必要とせずに妊娠、出産状態になってしまうこともよく知られてい ることだ。いわゆる強制妊娠、強制出産というやつである。 特に両目が赤く染まってしまった強制出産は色を戻さない限り、即席の急造胎児である蛆実 装を体力が尽き果てて死ぬまで出産し続けることになるので母体となる実装石にとって非常 に危険だ。 さらに妊娠して両緑になっている実装石の右目を本来の色である赤に染めてしまうと途端に 妊娠状態が解除され、子宮と胃腸を兼ねた糞袋内で育っていた胎児達は食料と認識されてた ちまち消化されてしまうとも言われている。 この様に実装石の出産、妊娠と瞳の色は切っても切れない関係で影響し合っているのだが、 では瞳の色が変化しない状態にしてみるとどうなるか。 つまり今オレが行ったように眼球を再生できないように焼き潰してしまった場合、瞳の色は 変化しようがないため実装石は妊娠、出産が一切できなくなってしまうのだ。こうなってし まうと例え妊娠率100%のマラ実装の精液を腹いっぱい注ぎ込まれたとしても決して妊娠 することはない。 これで覚醒状態のパンチョが親指を襲ったとしても親指が妊娠することはなくなったわけだ。 蛆実装をポコポコ量産されても困るしな。そもそも栄養満点の餌を食って成長してる親指な らともかく、栄養価ゼロの実装ピーターパンを主食にしているコイツじゃ妊娠の負荷に耐え られないかもしれない。 こんな糞蟲、死ぬなら死んでしまえという気持ちが無いわけでもないんだが、託児されたな らいざ知らず自分で連れ帰ってきたという経緯からなんか割り切れないでいた。 だからといって糞蟲にかける情けはない。処分したり捨てたりはしない代わりにそれなりの 役に立ってもらうことにしよう。 そう思いながら手術の終わった親指をハウスで寝ているパンチョの隣へそっと置いておいた。 「…で、おまえはどうしたんだ…?」 「デスー…」 ひょいとしゃがみ込んで防音水槽の中のマラ実装の様子を見てみる。 なんか…、目に見えて衰弱してるな。朝はここまでじゃなかったぞ。オレのいない間にいっ たい何が…? マラ実装は狭い水槽の中でぐったりと横たわっていた。目は窪み頬はこけ、肌はガサガサ。 そして何故か全身傷だらけだ。逃げようとして狭い水槽の中で暴れまわったりしたんだろう か? そんな中で股間から生える巨大なマラだけがビクンビクンと元気に脈打っている。 さすがに少し気の毒に思えてきた。仕方ないので台所から食パンを一切れ持ってくる。昨日 は拒否しやがったが今なら食べるだろ。 ガチャリ 水槽のフタを外すと少しすえた様な臭いが鼻に付く。ここに閉じ込める前にたっぷりと水洗 いしたがそのくらいで実装石の体臭が消えるなら苦労はしない。 マラ実装はチラリとこちらを見た。その眼前で食パンをプラプラ揺らしてみる。 「少しは懲りたか? 反省してるようなら食わせてやるぞ?」 「デッスゥゥゥ!!」 オレの声に反応していきなり立ち上がるマラ実装。しかしその目はオレの持つ食パンには向 けられていなかった。水槽から頭半分ほど飛び出した顔はパンチョたちのいるハウスの方に 釘付けだ。 「そんなヒンソーなものなんかいるかデッス! 食べてほしけりゃステーキでも持ってこい デス! それよりさっさとあのガキどもを寄こせデシャァ!! 特にあの糞親指デス!! アイツはただじゃ済まさないデスゥゥゥ!! たくさん突っ込んで気持ちよくなってから おいしく食べてや『ガチャリ』…! ……! ……!」 最後まで聞かずに押し込むようにしてフタを閉めた。この期に及んでまだ食欲より性欲か…。 何よりも性的快感を第一に考える生き物である。もちろん餌も食べるし睡眠だって取るが全 ては性欲が満たされてからの話だ。然るに麻酔によって感覚を遮断され快感を得ることがで きない、つまりは性欲を満たせないコイツは食事をすることも睡眠を取ることも考えられな くなっているのだろう。 そんなことを考えながら食パンをゴミ袋に放る。マラ実装のツバが飛んでしまっていてとて も食べる気なんか起こらない。 一方でマラ実装は性懲りもなく感覚の無いマラをシゴいている。そして快感を得られないこ とに血涙を流しながら怒り狂い、頭を掻きむしって絶叫しているようだった。 ————————————————————————————————————————— しばらくしてパンチョと親指が起きてきた。 「レチュゥ…?」 親指はやはり右目に違和感を感じているのかしきりに顔を手で擦っている。しかしその違和 感の正体にまでは気付いていないようだ。片目が見えなくなってることぐらいすぐにわかり そうなものなのになぁ。おそらくいつもより視界(視界という概念もなさそうだが)が狭い くらいにしか感じていないのだろう。 それでも焼いたことによるヤケドの痛みが多少あるのかもしれない。あまり気にされて気付 かれても面倒だ。 少し早いがこれ見よがしに晩餌の準備をし始めると途端に違和感のことなんか頭から吹き飛 んだようでパンチョと一緒になって餌皿の前でテチテチレチレチ騒ぎ出した。 盛ってやるとさっそく飛びついて食べ始める。しかししばらく見ているとここでも親指の様 子がおかしいことに気が付いた。 朝はあんなにマラ実装に見せ付けるように食べていたのに今回はおとなしく餌皿の前で食べ ている。しかも味わって食べている様子でもなく、どちらかといえば急いで詰め込んでいる ように見えた。 ドドンパで腹ン中空っぽにしたことでよほど腹が減ったんだろうか? だがニヤニヤと嫌ら しい笑みを浮かべたその表情からは空腹を満たす喜び以外の何かが感じ取れた。 まるで食事よりも楽しいことが待っていて、それが楽しみでしかたないと言っているようだ。 そしてその理由はすぐに判明した。大急ぎで餌を詰め込んだ親指はすぐに立ち上がり、ある 場所目掛けて一直線に走っていく。 ある場所とは無論、マラ実装の水槽の前だ。 「デギャッ!! デズァァァ!! デス! デシャァァァ!!!」 途端にマラ実装の様子がおかしくなった。焦っているような、怒っているような、ひどく狼 狽した感じだ。 「レププ…!」 そんなマラ実装を蔑んだ目で嘲笑する親指。そしてその場でクネクネと妙な科(しな)をつけ ながら踊り出した。 腰に手を当ててクネリクネリと尻を振る。短い足を上げたり下げたり、座り込んで股を開閉 してパンツを見せ付ける。実装服の裾を胸元までたくし上げては焦らすように手を離す。 からかうためのダンスは今朝もやっていたが今回はどうやらストリップのつもりらしい。 人の目で見ると不快感を煽るような動きでしかないそれもマラ実装には効果抜群のセクシー ダンスになっているようだ。狭い水槽の中、体が傷つくのも厭わず凄まじい勢いで暴れまわ っている。 「デギャグガヂィィィ…!!! ヂャゴガギャァァァ!!!」 僅かに漏れてくる声はもはや意味のある言葉ではなさそうだ。 なるほど、オレがバイトから帰ってきたとき、コイツがなんであんなに傷だらけで衰弱しき っていたのか合点がいった。 おそらく暇を持て余した親指は日中ずっとこれをやっていたのだろう。自分の一挙手一投足 に過敏に反応して悶え苦しむマラ実装はさぞかし楽しいオモチャだったに違いない。 「うっふんレッチュン♪ あっはんレッチュン♪ カワイイ親指チャのメロメロダンスレッ チューン☆ マラもニンゲンもそんなに見つめてエッチレチュン♪」 オレもかよ!! マラ実装同様、思わずオレのコメカミにも青筋が浮かんでしまう。 幼さゆえか自慰行為に至るそぶりは見せていないが、そんなことをやらかした日にはパンチ ョのときのように反射的に手を出して潰してしまうかもしれない。 「おい、パンチョ。好きにさせていいのか?」 「ウマウマテッチュン☆ ウマウマテッチュン☆」 「おいってば! あれ、放っといていいのかって聞いてんだよ!」 「今日のごはんもおいしいテチー♪ シアワセいっぱいテッチューン♪」 ダメだ、コイツ…。 仮にも教育係を名乗り出たパンチョに躾を促してみたが当の本石は餌を食べるのに夢中でま ったく状況を理解していない。まあ別に期待もしてなかったけどさ…。 呆れたオレはテレビをつけ、三匹の実装石に背を向けるように座り直して一緒に買ってきた カップ麺で自身の晩飯とした。 ————————————————————————————————————————— 「ぷはぁ…!」 スープの最後の一滴まで飲み干して渇いた喉にお茶を流し込み一息入れる。 ヒョイと振り向けばちょうどパンチョが最後の一粒を食い終わるところだった。そろそろ金 平糖の準備をするかな。 親指は未だ水槽の前でほぼ半裸の状態で笑い転げていた。いい加減よくまあ飽きないもんだ。 そしてマラ実装はというと…、 「うわ…!?」 水槽が赤くなっていた。見ればマラ実装は自分の手をガジガジと食い千切っている。さらに その鮮血が溢れる腕で水槽を叩き、自らの体を掻き毟っていた。 極度のストレスから自傷行為に至ったようだ。これはマズイ…!! 慌ててマラ実装入りの水槽を抱えて風呂場へ向かう。続いてキッチンからラップを、冷蔵庫 から栄養ドリンクを1本持ってきた。 フタを外して暴れるマラ実装を取り出し、その体を押さえつけながら『気をつけ』の体勢で ラップでグルグルと巻く。 身動きが取れなくなったところで栄養ドリンクを1本無理やり飲ませてやった。 実装石と栄養剤の相性はバツグンだ。半身を潰されたパンチョでさえたった一晩で全快した ほどである。たちどころにマラ実装の出血は止まり、全身の小さな傷は瞬く間に消えてなく なっていった。 続いてオレは血まみれになっているマラ実装と水槽にシャワーで水をかけ洗浄した。鉄くさ い臭いが風呂場に充満していく。 やがてその臭いと共に血が流れきる頃になると、栄養ドリンクを飲ませたおかげで心身とも に多少回復したのかマラ実装が再び喚き出した。 「デギャァッ!! 冷たいデスゥ! バカニンゲン! 私を洗うときは温かい水にしろと言 ったはずデシャァァァッ!!」 「おお、お帰り。 ったく、親指にコケにされたくらいで壊れんなよな。お前には焼肉奢り がかかってんだぞ」 「ふざけるなデスッ!! だったらあのクソ親指を寄こせデシャァ!! たくさん突っ込ん で…」 「ハイハイ、それはもう聞いたよ。あいつにはやってもらうことがあるから渡すわけにはい かないの。 そもそも今のお前のマラは何も感じなくなってるはずだろ?」 「うるさいデス!! 突っ込めばきっと気持ちよくなれるデスッ!! だからあのガキ供を 高貴な私に献上しろデスゥゥゥ!!」 ダメだこりゃ。会話が成立しそうもない。 どうにか正気に戻ったようだしもういいだろう。オレはずぶ濡れのマラ実装をラップでグル グル巻きにしたまま再び防音水槽に押し込んだ。 「デズァァァッ!! クソドレイ!! このペタペタしたのをほどけデシャァ!! 私にふ さわしい部屋と食べ物を貢ぐデス! あのチビどもを『ガチャリ』…! ……!!」 しっかりとフタも閉めてから部屋へ戻り定位置へセット。両腕を縛り付けられたマラ実装は 起き上がることもできず、陸揚げされた魚のようにビチビチともがきながら喚いている。 どんどん状況が悪くなっていくがすべて身から出た錆なのだから仕方ない。犬猫といった他 の生き物がこんな仕打ちを受けていたら助けてやりたいと思うのが普通だろう。それに比べ てこうまで同情を引かない、引けない存在なんて実装石くらいなものだ。 アスファルトで焼かれているミミズにさえ可哀想だなと思うことぐらいあるのになぁ。 「ニンゲンママー! ニンゲンママー!」 「ん…?」 マラ実装の様子を見下ろしていたら背後のケージからパンチョに声をかけられた。 「ゴハン食べ終わったテチ! コンペイトウが欲しいテッチューン☆」 「ああ、忘れてた。 スマンスマン」 「わすれてたレッチィ!? このムノウドレイ! コンペェトーをわすれるなんてしんじら れないレチ! おまえは蛆チャよりバカレチ!!」 「ほっほーう?」 そもそも誰のせいで忘れたと思ってんだ、この糞蟲は。 オレはとりあえずパンチョにひとつ、親指にひとつ金平糖を渡してやった。ただし親指に渡 したのは金平糖ではなく裏ドドンパだ。ドドンパでクソ抜きした時点で先に食べさせていた 裏ドドンパは効力を失っている。金平糖と偽って改めて食わせておこうという算段だ。 渡された一粒目を美味そうに食べる2匹。パンチョは口内で、親指は抱きかかえるようにし て舐めながら緩んだ顔をしている。 「テッチューン♪ やっぱりコンペイトウはサイッコーテッチィ! ニンゲンママ、ふたつ めをちょうだいテチュン☆」 やがて先に一粒目を食べ終わったパンチョが満面の笑みでおかわりを催促してきた。 「ダメだ」 「テ…?」 だが断る。 当然もらえるものだと思っていたパンチョはオレの言葉の意味がわからなかったのだろう。 おもしろいことにバンザイの格好で笑顔のまましばらく固まってしまった。 「な、なんでテチ!? コンペイトウはふたつのはずテチ! いつもそうだったテチィ!」 数秒遅れて抗議をしてくるパンチョ。その横に裏ドドンパを食べ終わった親指がやってきた。 「レププ…! ハゲハダカがチョーシにのるなレチ。 コンペェトーはコウキなワタチのた めにあるんレチ! おい、ドレイニンゲン! ワタチはふたつじゃ足りないレチ! ヤマ モリのコンペェトーをもってこいレチ!!」 「お前もそれだけだ」 「レェ!?」 「いいか? お前はオレから金平糖を貰う立場だ。そのオレを怒らせてどうして金平糖が貰 えると思うんだ?」 「ヂィィィィィッ!!」 さすがにオレの我慢にも限度がある。叩けば潰れてしまいそうな親指に手をあげることはで きないが、罰を与えるだけならいくらでも方法はあるわけだ。 本当なら一粒だってやりたくなかったが裏ドドンパを食わせないわけにもいかないので仕方 がない。現に今親指は糞投げ用の“弾”を作ろうと顔を真っ赤にして力んでいる。 親指が黙ると再びパンチョが騒ぎ出した。 「じゃ、じゃあワタチはなんでテチ!? ワタチはニンゲンママの言うこと聞いていいコに してるテチ!」 「パンチョ。お前は何かやらなきゃいけないことがあるんじゃないのか?」 「テェ…?」 「ハァ…、ハァ…、なんでレチ? ウンチでないレチ。 ウンチさえでればこんなクソドレ イニンゲンなんてケチョンケチョンにしてやれるレチィ…!!」 「ほれ、あれを聞いてどう思う?」 「テェェェ…、ニンゲンママにあんなこと言っちゃいけないテチ…」 「だよな? 連れてきたのはオレだからお前の頼みを聞いて親指には手を出さないでやって るけど…、お前言ったよな? 自分がちゃんと育てるって」 「テチュゥ…」 「なにをブツブツ言ってるレチィ! いいからとっととコンペェトーもってこいレチ!!」 「わかったな? 約束が守れないなら金平糖は1個に減らす」 減らすのは1個。ゼロにはしないのはそもそもの元凶である親指が、正体は裏ドドンパであ るとしても金平糖として甘味を得ている以上巻き添えを食った形のパンチョが何もナシとい うのは公平さに欠けると思ってのことだ。 「でもでも…、親指チャは全然言うこと聞いてくれないテチ…。どうしたらいいんテチ?」 「レププ…。 あたりまえレチ! コーキなワタチがなんでハゲハダカのいうことなんか聞 かなくちゃレチ?」 「・・・・・。 パンチョ…、親指を殴れ」 「テェェェ!?」 「思い出してみろ。 お前が悪いことをしたとき、オレはどうしてた?」 「テェェェ…。 ペシペシ棒でいっぱいイタイイタイされたテチィ…」 パンチョの言うペシペシ棒とはマラ実装に使って折れてしまった実装タタキ(小)のことだ。 実装石の躾(虐待)用に作られているだけあってその効果は高く、うちに来たばかりの頃は 何か粗相をしでかす度にアレで打たれていたパンチョにとってトラウマとも言えるアイテ ムだ。 「悪いことをすれば叩く。それが実装石の躾け方だ」 「テ、テェェェ…」 大切な妹分を殴れと言われたパンチョは冷や汗を流しながら狼狽していた。幾度となくオレ の顔と親指の顔とを見比べてはどうすることもできずオドオドと立ちすくむ。 それとは反対に当の親指実装は元気に糞蟲発言中だ。 「このバカニンゲン!! コーキなワタチにシツケなんかヒツヨウないレチ!! おとなし くコンペェトーを出せるようにギャクにオマエをシツケてやるレッチャァ!!」 そう叫ぶないなやまたしてもウンチングポーズで気張り出す親指。“糞を付ければ奴隷”と いう実装石ルールに基づいた行動らしいがそれで「ハイ、わかりました」と素直に奴隷にな るやつなんかいないだろうに。 人間はもちろん、犬猫カラスにいたるまで実装石が糞を投げて無事に済む相手なんてほとん どいない。同属相手だって力が拮抗した相手ではケンカになる。 結局のところ最初から自分より格下相手にしか通用しないルールであり、“糞を付けたから 奴隷”なんじゃなく“奴隷だから糞を付けることができる”だけの話だ。 だが幸せ回路のせいかその辺りを都合よく勘違いした実装石が実に多いこと。この親指もそ んな個体の1匹のようだ。昨日連れてきて以来何かにつけて投糞しようとするがもはやコイ ツの排泄はオレの管理下にある。 ちょっとイヤな言い回しだな…。 「…で、どうする?」 馬鹿は放っておいてパンチョに問いかける。 「躾ができないようなら金平糖はナシだ。 どうする?」 「テチュゥ…」 実装石に本能レベルで刷り込まれた至高の甘味である金平糖と、初めて出来た大切な妹分で ある親指実装を秤にかけたパンチョは今や目に涙まで溜めて考え込んでいた。 そして… 「ダメテチィ…。親指チャ叩くなんてできないテチ…」 「ほぉ…!」 「あたりまえレチ!! ブッサイクなハゲハダカにカワイイこのワタチをなぐれるわけない レチ!!」 「お前は黙ってろ」 これは意外だった。 金平糖を餌に親指を殴らせることでパンチョの中にある暴力への枷をほんの少し外そうと思 っていたのだが、まさか金平糖を諦めるとは…。 「わかった…。なら2粒目の金平糖はナシだ」 「テ、テェェェェン…!!」 「レッチャァァァ!! ふざけるなレチ!! コンペェトーよこせレチィ!! オマエのせ いレチ!? このバカハゲが!! 死んでわびろレヂャァァァッ!!」 金平糖の袋を片付けるオレを見て泣き崩れるパンチョ。精神的にかなりキツイ2択だったよ うだ。 一方で馬鹿親指は救ってもらった事もわからずに罵詈雑言の限りを尽くしながらパンチョの 背中に拳を振るっていた。仔実装相手にすらほとんどノーダメージな腕力より、今のパンチ ョを傷つけているのはその悪口(あっこう)の方だろう。 助けた相手に理解されないどころか逆に恨まれたのでは堪らない。自分でけしかけておいて なんだがオレの親指に対する怒りも増す一方だ。 ホントなら死なない程度にデコピンでもして思い知らせてやりたいところだが、オレが手を 出したのではせっかく耐えているパンチョの頑張りが無駄になってしまう。 実装石が金平糖を諦めるなんて並大抵の覚悟ではできないことだ。 “金平糖が欲しければ親指を殴れ”なんて命令、並みの実装石ならサービス問題である。仮 に2匹の立場が逆だったら親指は嬉々としてパンチョをフルボッコにしていただろう。 それに今回の件はオレにとってもある種の賭けだった。無理やりにでも手をあげさせること で躾の大切さを学んでくれるのが理想的だったが、弱者を虐げる快感を知ってしまえば下手 をすればそのまま糞蟲化することも考えられた。それがまさかオレも予想しなかった第三の 選択を選ぶとは…。パンチョの愛情深さに改めて驚かされた。 だが“それはそれ、これはこれ”。 結局親指を躾けることが出来なかったのだから金平糖はお預けだ。 親指がレチレチ騒いでいるが、リンガルを外してしまえば騒音になり得る声量には至らない 上にパンチョを含む何かを破壊できる程の腕力もない。おまけに糞も止められているので周 囲を汚すこともできない。 となればわざわざイラつく糞蟲の相手をしてやる必要もないのでコイツは放置でいいだろう。 問題はパンチョだ。目に見えて憔悴してしまったパンチョは目を真っ赤に腫らしてグスグス と鼻水を啜りながらケージの角に座り込んでいた。相当落ち込んでいるようで見ていてかわ いそうなほどだ。 オレはそんなパンチョをヒョイと摘み上げた。 「テ…! テチュゥ…?」 「風呂、行くぞ。 今日は特別にオレが洗ってやる」 そう言って風呂場へパンチョを連れて行く。後ろで親指が何か言っていたが俄然無視。 「おふろテッチ☆ おふろテッチ☆ ニンゲンママがゴシゴシしてくれるテチューン♪」 現金なもので早くもパンチョは元気を取り戻し、オレに摘み上げられたまま大喜びでイゴイ ゴ動いている。 っとと…、あんまり動くと滑って落っこちるぞ。 そうして風呂場でオレは適温の湯を張った桶にパンチョを入れてやった。ついでにパンチョ がよく遊んでいるペットボトルのキャップも渡してやる。 パンチョはキャップを船のように浮かべては手で押したりして遊び出した。 「テチューン♪ ぷかぷかテチィ☆ 進めテチ、進めテチ!」 パンチョが桶の中でパチャパチャと遊んでいる間、オレはパンチョのパンツの洗濯に取り掛 かった。 毎日の風呂の時にパンチョ自身に手を抜くことなく洗うようにさせているが、やはり仔実装 の力と器用さでは限界があるのかパンツは徐々に薄緑に染まっていっていた。 そのパンツを蛇口からの流水に浸しながら指で揉むように擦り合わせる。実装服同様に脆い パンツは加減を間違えると破れてしまうので要注意だ。 あらかた洗い終えたらドライヤーをかけて乾かしておく。小さいので渇くのはアッと言う間 だ。 お次はいい感じに温まっていたパンチョを桶から摘み出し、泡立てたボディーソープで丁寧 に洗う。特に普段自分じゃ届かない背中や頭頂部は念入りに擦ってやった。 「テチャーァ。 気持ちいいテチィー♪」 全身を泡に包まれながら背中を掻かれて喜声を上げるパンチョ。その頭からシャワーをかけ て泡を流したらタオルで包み込むようにして拭いてやる。 最後に乾かしたパンツを穿かせればピカピカの禿パンツ一丁仔実装の出来上がりだ。 実装石と違いちゃんと爪のある人間の指で洗われたパンチョは全身の垢がキレイに落ちてテ カテカと輝いていた。 「テチュー、ニンゲンママのゴシゴシは久しぶりテチィ♪ おはだツルツルで気持ちいいテ ッチュン☆」 ゴキゲンでテッテロテーと音程のずれた歌を歌うパンチョを連れて部屋に戻りケージの中に 放す。 いつものように水皿へとまっしぐらに駆けて行きゴクゴクと水を飲むパンチョ。そしていつ ものようにおっさんくさいセリフを吐く。 「さてと…。 あれ? 親指はどこいった?」 ちょっと探してみると親指はハウスの中にいた。どうやらまた不貞寝したようだ。 っとにガキだなぁ、コイツは。 まあイラつくことをレチレチ騒がれないだけこちらとして もありがたい。風呂には入れてないがこのまま寝かせてしまおう。 親指は体格のせいか体臭も成体や仔実装に比べればおとなしめだ。一晩ぐらいなら風呂を抜 いても大丈夫だろう。だいいち、今からこの糞蟲に何かしてやろうって気にはなれそうもな い。ただの風呂だって実装石にとっちゃご褒美だしな。 「テファーァ…」 都合の良いことに風呂でさっぱりしたパンチョも眠くなってきたようだ。アクビと共にモソ モソとハウスの中の寝床へと潜り込んでいく。 だがしばらくしてベソをかきながら這い出してきた。またしても親指に蹴り出されたらしい。 寂しそうにハウスの外に寝転がると相変わらずの速さで寝息を立て始めた。 こうして二晩連続で屋内野宿をするハメになったパンチョだが…。 「さて、今日は無しか…。 となると…、明日かな…?」 固い床で寝苦しそうに歯軋りをするパンチョを見下ろしながらオレはひとり呟いた。 部屋にはラップでグルグル巻きにされたマラ実装の呻き声が小さく響いている。コイツは今 夜も眠れなさそうだなぁ…。 ————————————————————————————————————————— 翌朝。 今日は月曜日。1限から必修科目のあるオレは朝一で鳴った目覚ましに起こされた。 つーかアイツも同じ授業受けてたはずだよな…。堂々とサボりやがってからに。アイツこと 友人は帰ってくるのは明日だと言っていたな。 「良かったな。今日1日頑張れば開放だぞ」 水槽の中でぐったりしているマラ実装にアクビ混じりに声をかける。もっともこっちの声も 聞こえちゃいないのだが。 やはり昨夜も寝れなかったようでマラ実装の両目の隈はますます黒く深くなっていた。 もはや叫んだり暴れたりする気力も残っていないようだ。そのくせ相変わらずマラだけは元 気に脈打っている。普通ここまで衰弱したら勃ちゃしねえよなぁ…。 おそらくマラ実装というのはそういう種なんだろう。まるで体に残った体力を何よりも優先 してマラに送っているかのような、あるいはマラという名のヒルに吸い付かれ体液を吸い取 られているかのような…。本石が望むと望まないとに関わらず“まずマラありき”な体質っ てことかね。 「テッチューン☆」 「ん…?」 朝っぱらからしょうもないことを考察していると足元で高い声がした。 「おはようテチ、ニンゲンママ! ゴハンテチ、ゴハンテチ! 朝ゴハンテッチュン☆」 「ああ、おはようさん。 今準備するからちょっと待ってろ」 オレ自身あんまりボヤボヤしている時間もないのでちゃっちゃと自分の分とパンチョ、親指 の分の飯の用意をする。 オレはいつもの通りのシリアルに牛乳たっぷり、パンチョには実装ピーターパン8粒、親指 にはふやかした実装ピーターパン2粒だ。 「テチューン☆ いただきますテチ!」 ソワソワとだが一応皿の前で手を合わせて一礼するパンチョ。 一方親指は当然というか当たり前というか礼なんかせずにあむあむとフードにかぶり付く。 そしてふと何かを思い出したようにレププと嫌らしく笑うとフードを抱いて走り出した。 まあ行き先は考えなくてもわかる。レッチレッチ…と向かった先は案の定マラ実装の水槽の 前だ。昨夜は急いで食べてから挑発しにいったが、どうせなら食事もじっくり見せ付けてや ろうと考えたんだろう。 到着するやいなや大爆笑しながら腹を抱えて転げまわる親指。ラップで縛られて昨日より哀 れな状態になったマラ実装の姿がよほどツボにはまったようだ。笑いながらも見せ付けるよ うに食べ、挑発するように踊る。 これもまたいい加減見飽きてきた食事風景だ。相変わらずパンチョも自分の分を食べるのに 夢中で親指の動向なんか見ちゃいないし…。そのくせ時々、 「親指チャ、おいしいテチね♪」 なんて独り言のように漏らしている。トリップした脳内では親指と仲良く餌を食べてるとで も思ってるんだろうか? おそらく今まで行われてきた親指の悪行もパンチョ自身の幸せ回路で大幅に軽減されている んだろう。この分じゃ親指を躾けさせるなんて夢のまた夢だな。 なんて思ってたらマラ実装をからかっていた件の親指がてくてくと戻ってきた。 ん…? 今回はずいぶん早いな? いつもならフードを食べ終わるまで、いや食べ終わって からも気が済むまでずっと挑発して遊んでいたはずだが…。 見ればフードも食べきってはいない。2粒目のフードをモソモソかじりながら歩いてくるそ の表情はどこかつまらなそうな感じだ。 ・・・・・。ああ、なるほど。 オレは水槽の中のマラ実装を見て納得した。 リアクションがないのだ。親指がどれだけ挑発しようともグルグルに縛られて横たわった状 態のマラ実装は昨夜のようにジタバタと暴れて悔しがることがない。と言うかできない。 せいぜいが魚のようにビチビチと動く程度で、それも実装石の貧弱な腹筋ではすぐにバテて 止まってしまう。一応額に青筋を浮かべて何事か叫んではいるが防音水槽に遮られてこちら まで届かない。 これでは実質無反応みたいなもんだ。親指が期待するような悶え苦しむ様は見られそうにな い。早々に飽きてしまったんだろう。 なんて言うんだっけ、“怪我の功名”…? とは違う気もするが、まあ良かったじゃないか。 あまり弄られずに済んで。 おっと、オレもそんなことゆっくり考えている場合じゃないぞ。登校時間が押してきている。 食器を片付け、早くも遊び出した実装石達を尻目に慌しく身支度を整えるとオレは急いで部 屋から飛び出した。 今日はバイトがないから早く帰れる。タイミングが合えば実験の結果をこの目で見られるは ずだ。考えた通りにうまくいけばいいのだけど…。 オレは大学へ向けてチャリを漕ぎながら、頭の中で計画のおさらいを繰り返すのだった。 ————————————————————————————————————————— 「帰ったぞー」 最後の講義が終わってすぐにチャリを飛ばしてきたため、なんとか日が暮れる前に帰宅する ことができた。 「あ、ニンゲンママー! おかえりテチィ!」 床の上で横になっていたパンチョがいち早く気付いてケージ越しまで駆けて来る。その様子 は一目でわかるほど疲れきった感じで、ありありと安堵の表情を浮かべていた。 おおかた一日中親指のワガママに付き合っていたんだろう。親指は昨日はマラ実装をからか って遊んでいたようだが、そのマラ実装が反応しなくなった(できなくなった)今、再びその 矛先はパンチョに向けられたというわけだ。 「ニンゲン帰ってきたレチ? おそいレチ! またおなかのヨウスがヘンレチ! はやくア マアマのオクスリをよこすレチ!」 親指は喚きながらハウスの中から出て来た。帰宅が早かったからか昨夜のように腹痛までは 起こしておらず便秘の様な感覚で留まっているようだ。これならまだしばらく放っておいて も良さそうだな。 「ダメだ。あれは飯の前ぐらいにやるのがちょうどいいんだ。しばらく我慢しとけよ」 実際ドドンパでの糞抜きは実装石の体力を大幅に削ることになるし、完全に腹の中を空っぽ にしてしまうのでその後猛烈な空腹感に苛まされることになる。体力のない親指はそれだけ で死に至ることもあるくらいだ。 なにしろ元々が虐待用の劇薬である。用法用量は守って正しく使わなければならない。 いくら親指が糞蟲だからってオレも意地悪で言ってるわけではないんだ。 「レシャァァァッ!! これはギャクタイレチ! タイオウのカイゼンをヨウキュウするレ チィ!! さっさとドゲザしてあやまるレチ!このクソドレイ!!」 だというのに親指ときたら地団太を踏みながら喚き散らし、あまつさえ暴言まで吐く始末。 親の心子知らずもとい飼い主の心実装知らずとはまさにこのことだ。 今なら虐待派の気持ちが少しはわかる気がする。以前はこんなもんわざわざいたぶって何が 楽しいのかと思っていたが、なるほど…こんな態度を見せられれば多少痛めつけて思い知ら せてやろうという気がフツフツと沸いてくるってもんだ。 …とは言え、やはりオレ自身が手を出すわけにはいかない。 金平糖を蹴ってまで耐えているパンチョの為もあるが、実装石相手にムカついたから殴りま した…、ではなんか情けない気がする。あくまで躾のためならいざ知らず、感情に任せて手 を上げたのでは人間としてあまりに小さいだろう。 まあもっとも思わず叩いちまった、ってのはパンチョの躾時代にも何度かあったので今更な 気もするのだが…。 と、そんなしょうもない意地を張って悩んでいたオレだったが、気が付けばパンチョが足元 で何か叫んでいた。 「ニンゲンママァ、テレビを見せてほしいテチュ!」 「は…? テレビ?」 パンチョの言う“テレビ”とはJHKの実装教育番組『お義母さん(ニンゲンママ)といっし ょ』のことだ。 食事時等、オレが家にいる間は必然的にパンチョもテレビを見る機会は多くなるが、コイツ は人間向けバラエティーやニュースにはさほど興味を示さない。代わりに一度見せて以来す っかりハマってしまったのがこのお義母さんといっしょだ。 ともすれば愛誤へ偏りがちな実装番組の中では珍しく真の意味で愛護を目指す仔実装石向け 教育番組として実装関係者の中では有名な番組である。 内容としては飼い実装として飼い主を含む人間への正しい接し方、食事の取り方や着替え、 トイレのマナーなどを番組を介して教えることを旨としている。 取り立ててこの番組が他の愛護番組と一線を画すのは、出演仔実装が決して最初から賢くて 良い仔ばかりではなく適度に糞蟲を混ぜていることだ。そして番組中にNG行為、すなわち 人間への暴言やパンコン、ワガママ、他石への暴力などなど飼い実装として相応しくない行 動を取ったものは腕折りや爪楊枝刺しといった容赦ないお仕置き、あるいはそれ以上の拷問 による処刑をもって見せしめ役とされるのだ。 これを初めてパンチョに見せたときは何か過去のトラウマに引っかかったらしく非常に怯え てしまったのだが、比較的早い段階で何をすると褒められ、何をすると怒られるのかを理解 したようでそれからは画面の中のよく褒められる賢い仔実装のマネをしては楽しんでいた。 実際その賢い仔実装と同じように振舞えばオレから怒られることもなく、それどころかより 可愛がってもらえるのだからますます熱も入るというものだ。 オレにとって幸いだったのはパンチョのそれが快適な飼い実装生活を送るための演技ではな く、実際に模範的な飼い実装になろうとしてのことだったことだ。 もちろんそれが飼い主であるオレを慕う心から目指したものかどうかはわからない。テレビ の中の賢い実装石をアイドル視し、自分もああなりたいと思ってのことなのかも知れない。 ただ理由はどうあれこの番組のおかげで初心者のオレにもあまり手のかからない仔実装にな ってくれたのも事実だ。 今までは毎日勉強と娯楽を兼ねて見せていたがマラと親指が来てからのゴタゴタでこの2日 間ほどすっかり忘れてたよ。 「ワタチはテレビを見てオベンキョウしたテチ。 親指チャもあれを見ればきっとイイコに なってくれるテチュ!」 うーん、なるほどね…。親指にお義母さんといっしょを見せて勉強させようって腹か。親指 の躾をパンチョなりに考えての方法ってわけだ。 だけどなぁ…。 パンチョはこれを“見れば良い仔になれる魔法の番組”のように思ってい るかもしれないが教育番組を見たくらいで良い仔になれる実装石なんかまずいないぞ。 パンチョ自身今の 飼い実装としてまあまあ合格レベル になれたのは偶然にもそこそこの 賢さと素直さを持った個体だったことに加えてオレの実装タタキによるキツイ躾があったか らであり、根っからの糞蟲性質の親指が痛みを伴う躾も無しにテレビを見たくらいで良い仔 になるはずがないのだ。 …とは言えまあ、それをコイツに説明してもわからないだろうし、パンチョが頑張って自分 で考えたアイディアを試しもせずに頭ごなしに否定するのは教育上もよろしくない。 なにより早く帰ってきたのはいいが実際その瞬間までやることがないのも事実。ちょうどい い時間潰しにはなるだろう。 「わかった。 ちょい待ってろよ」 オレはテレビの電源を入れてリモコンを操作し、録り溜めたお義母さんといっしょから未観 賞の回を選んで再生待機状態にした。ちなみに我が家のテレビはHD内臓DVDレコーダー 一体型のちょっとイイやつだ。三ヶ月分のバイト代を溜めて買ったお気に入りの1台である。 さて、再生の準備が出来たらテーブルをその手前1mくらいのところにセット。そしてケー ジからパンチョと親指を摘みあげてテーブルの上に降ろしてやる。 「テッチューン☆ テレビはひさしぶりテチィ♪」 「レチャッ!? この上にはニンゲンのゴハンがあるはずレチ! ドコに隠したレチィ!」 「あー、うるせえ! ほら、どけどけ」 テチレチ騒ぐ2匹をテーブルの中央に追いやり、周囲に適当な雑誌を積み上げて壁とした。 というのも過去に番組最後の実装ダンスのコーナーでテンションの上がったパンチョが危う くテーブルから転げ落ちそうになることが多々あったため、先手を打って防護柵を作るよう にしているのだ。 「あ…、しまった」 ところが先日の古紙回収日に古い雑誌を何冊か捨ててしまったのでテーブルを囲うには手持 ちの雑誌が少し足りなくなってしまっていた。 うーん、何か代わりになるものはないか? キョロキョロと周囲を見回してみると… 「お、これでいいや」 オレが目を付けたのはマラ実装の入った水槽だ。縛られたマラ実装はぐったりしていて水槽 を持ち上げられてもチラッと目線を向けただけでほぼ無反応だった。 いや、僅かに口元が動いていたので何か喋っていたのかも知れない。だが防音ガラスに遮ら れたそれがオレの耳に届くことはなかった。 そのまま雑誌の足りない部分に水槽をあてがい、これでお義母さんといっしょ観賞の準備が 整った。 「よし、それじゃ始めるぞ」 ピッと再生ボタンを押す。 まず番組直前のCMのラスト10秒ほどが流れ、続いて軽快な音楽と共にポップな字体で『 お義母さんといっしょ』の文字が浮かびオープニングが始まった。 パンチョは早くもテッチュンテッチュンと尻を振りだし、親指は何事かと画面を見つめてい る。 そういえば親指はこうしてちゃんとテレビを見るのは初めてだったか。決して大きくはない 我が家のテレビもこのくらいのタッパだと映画館のスクリーンばりの大画面になる。映画を よく観る身としては少し羨ましくもあるな。 そんなことを思ってるうちにオープニングは終わり、いよいよ本編が始まった。 『「良い仔のみんなー! こんにちはですー!!」』 『「「「テッチューン☆」」」』 たくさんの仔実装が乗ったテーブルを前に登場したのは実装のお姉さんことスイお姉さんだ。 幼さの残る整った顔立ちに腰まで届くツインカーリーテール、実装石の頭巾の形状を模した カチューシャを着け、ライトグリーンのワンピースにリボン付きのフリルエプロン、手には 先端がハート型になった実装タタキを持っている。 スイお姉さんはこの番組の看板ムスメ兼進行役だ。その可愛らしさから愛護虐待問わず実装 石に関わりのある者はもちろん実装石自体に興味のない者にも多くのファンがいる。 しかしその素性は一切不明で、出演している番組はこれ1本。その公式サイトにおいても年 齢不明、経歴不明、出身地不明、スリーサイズ不明、そしてどういうわけか性別まで不明と されている謎の人物である。 「レピャピャピャピャピャ…!! なんレチこのニンゲンは? ヘンなカッコレチィ!!」 しかしどうやら親指には違う意味でウケたらしい。 つか格好についてお前が言うな。 『「あれあれー? 声の出てない仔がいるですねー。どうしたんですぅ?」』 『「テシャーッ!! コウキなワタチがなんでアイサツなんかしなきゃならんテチ!? さ っさとコンペイトウをケンジョウしろテチィ!!」』 『「そうテチ! グズグズするなテチ!」』 さっそく活きのいい糞蟲が吼えているな。同調して騒ぐものも多数いる。 スイお姉さんはにこやかな笑みを浮かべたまま手にしたハート型実装タタキを振り上げ… 『「ちゃんと挨拶できない仔はオ・シ・オ・キ・です☆」』 パシーンッ 『テチャァァァァァッ!!」』 最初に騒いだ仔実装へ勢い良く振り下ろした。 『「えい! えい! えーい!」』 パシッ パシッ パシンッ 『「テチュァァア!! イタイテチ! やめテチー!!」』 さらにリズム良く連打。無駄のない実装タタキ捌きで仔実装の全身をくまなく叩いていく。 余談だがファンの中には自分もスイお姉さんに叩かれたいという意見も多い。確かにあの笑 顔で罵られながら叩かれたらクルものがあるかもしれない…、と思うオレって実はM体質だ ったのか…? そうこうしているうちにテレビの中では先の仔実装が全身を赤く腫らしてピクピクと横たわ るまで打たれたところだった。 『「はい、ニンゲンさんから挨拶されたらどうするんですぅ?」』 『「こ、こんにちはテチィ…」』 息も絶え絶えといった風体の仔実装だがなんとか返事を返すことができた。 『「良く出来ましたですー! みんなも挨拶されたら大きな声でお返事するです☆」』 『「「「は、はいテチ!!」」」』 『「「テププ…」」』 最初から素直に挨拶したものも一緒になって騒いだものも大半が怯えながら返事をした。 だが中には叩かれた仔実装を見て笑うものもいる。うちの親指も後者のようだ。 「わかったテチ?親指チャ。 ニンゲンママにはおっきな声でアイサツするテチ」 「レププ…、なに言ってるレチ? アイツはブサイクだからたたかれたレチ。うつくしいワ タチがドレイごときにメーレイいがいで声をかけてやるヒツヨウなんかないレチ!」 同じような顔して何言ってやがる。多少の肉付きの違いはあれど実装石の顔の違いなんて見 てわかるようなもんじゃないんだ。アイツがブサイクならお前だって同じだろーが! 頭上でエアツッコミを入れるオレ。一方画面の中ではスイお姉さんが鼻を摘んで眉をひそめ ていた。 『「あれ? なんか臭いですぅ?」』 『「テェッ!?」』 その言葉に1匹の仔実装がギクリと身を竦ませた。 その仔実装がアップで写される。必死に後ろ手に隠しているがパンツがこんもりと膨らんで いるのが一目でわかる。先程の糞蟲が打たれる様を見てパンコンしたようだ。 スイお姉さんは素早くその仔実装の襟首を摘んで持ち上げた。 『「テ、テチャァァァァァッ!!」』 ブリブリブリブリ… パンコンがバレた仔実装は恐怖からさらに盛大に糞を漏らしてしまう。パンツに収まりきら なかった糞がハミ出して流れ落ち、下にいた仔実装たちが悲鳴を上げて逃げ惑った。 『「そうかぁ、怖くて漏らしちゃったんです?」』 『「テ…? テ、テチューン☆」』 だがスイお姉さんは優しい笑顔のままで仔実装に話しかける。 仔実装もお姉さんの声に怒気がないのを悟ってか途端に甘えた声を上げた。 『「でも漏らしそうになったらおトイレに行くんだって教わったはずですぅ」』 『「テッ…!?」』 『「おトイレはどこです?」』 『「テ…、テ…」』 あくまでスイお姉さんの声は優しく表情は笑顔のままだ。しかし明らかに雰囲気が変わって いる。そのギャップはテレビ越しの、しかも人間のオレでさえ背筋に冷たいものを感じるほ どだ。 そんな冷たい笑顔を間近で浴びたパンコン仔実装は顔中に脂汗を浮かべてガタガタ震えてい る。そして消え入りそうな声で答えた。 『「あ、あ、あそこ…、テチ…」』 パンコン仔実装が指差した先、テーブルの隅には仔実装10数匹が一度に排泄できる大型の 平面式実装トイレが置いてある。収録中便意を催した仔実装はいつでもこのトイレを使用し て良いことになっていた。 『「そうですー、ちゃんとわかってるですね。 えらいえらいですぅ☆」』 『「テチュー♪」』 『「じゃあどうしてわかってたのにおトイレに行かなかったんです?」』 『「テェッ…!?」』 褒められて笑みが戻った仔実装だったが一瞬で再び顔面蒼白となる。言葉だけで見事な上げ 落としだ。 『「おトイレなんて行きたくなかったです? もしかしてワザと漏らしたんですぅ?」』 『「チュワッ! チュワッ!」』 血涙を流しながら違う違うと首を振るパンコン仔実装。しかし次の瞬間… ヒュッ… ドチャッ 摘まれていた襟首を放されてまっすぐにテーブルへと落下した。 その衝撃で仔実装の両足は砕け、あらぬ方向へ捩れて千切れかかっている。薄皮一枚で繋が った状態だ。 『「わかってるのに行かないんならアンヨなんていらないですぅ」』 『「テ…? テ…? テェェェッ!? テチャァァァァァァッ!!」』 傷口から鮮血が噴き出すのと同時に自らの身に起きたことを理解したパンコン仔実装が大声 で泣き叫ぶ。 その様子をにこやかに見下ろしていたスイお姉さんは不意に横を向くと手招きして言った。 『「おーい! デッスーン!」』 『「デ、デスー!」』 呼ばれて飛び出してきたのは禿パンツ一丁の成体実装だ。名前はデッスン。スイお姉さんの アシスタント実装石である。 「テェ…」 何か思うところがあるのだろう。爆笑する親指の横でパンチョが悲しげなため息をついた。 走って登場してきたデッスンはスイお姉さんに何かを渡すと足を粉砕されて泣き喚くパンコ ン実装を摘み上げ、トイレとは反対の隅に置いてある小さな透明のケースの中に放り込んで 蓋を閉めた。 これはお仕置き部屋と呼ばれている小型の防音水槽だ。番組中に復帰不可能な怪我を負った (負わされた)仔実装は次々にこの中に入れられていく。今のようにただ1匹で入っている分 にはまだ良い方で、最後の方になると詰め込まれた仔実装でギュウギュウになり下の方で圧 死するものも少なくない。 デッスンがお仕置き部屋の蓋を閉めて後ろに下がったのを確認したスイお姉さんは先程渡さ れたもの、噴霧式のスプレーボトルをかざして仔実装たちの頭上でシュッシュと振りまいた。 途端に仔実装たちは一斉に腹を抑えて蹲る。 スイお姉さんが手にしたスプレーボトルの中身は液状ドドンパだ。それを霧状にして仔実装 たちに振りかけたわけである。吸い込んだ仔実装はたちどころに便意を模様して右往左往す る。 『「さー、みんな! お腹が痛くなったらどうするんですー?」』 スイお姉さんの言葉でトイレを思い出した仔実装たちは我先にと実装トイレに駆け込み、ブ リブリと脱糞の大合唱となった。 しかし中にはここまできてなおトイレに行くという発想に至らずその場で漏らすものも数匹 いる。そういったものは次々にスイお姉さんによって両足を千切られ、泣き叫びながらお仕 置き部屋に放り込まれた。 「い、いいテチ? ウンチをもらすとああしてイタイイタイされちゃうテチ! 親指チャも ウンチはおトイレでするんテチよ」 今見た仔実装たちの待遇はもちろん、散々オレにぶっ叩かれた記憶が蘇っているのだろう。 パンチョの声は僅かに震えていた。 「バカにするなレチ! セレブなワタチがウンチなんかもらすわけないレチ! アイツらは 蛆チャンと同じクソッタレレチ。 レププ…、蛆チャンからやりなおせばいいレチ」 はて…? 確かコイツ、うちに来たときには「ウンチはしたくなったらすればいいレチ」と か言ってたよなぁ。 おお、早くも効果ありか? だが残念なことにコイツが糞を漏らさないのは食わせてる裏ド ドンパのおかげである。それを止めたらたちどころにクソッタレへと変わるだろうことが目 に見えるようだ。 ため息をついて画面に目を戻せば、腹の中身をすっかり出した仔実装たちがヨロヨロと戻っ てくるところだった。 ここでもしっかり尻を拭かなかった仔実装はスイお姉さんのデコピンによってトイレまで吹 っ飛ばされてやり直しをさせられていた。 中には何度やらせてもうまく出来ない仔実装もいる。その都度デコピンを食らったそいつは 最後にはお岩さんのような顔になりトイレの中で突っ伏して動かなくなってしまった。 そういったものは素早くデッスンが回収してお仕置き部屋に放り込む。そろそろきつくなっ てきたお仕置き部屋からは蓋を開ける度に仔実装の泣き声と呻き声が溢れるようになってい た。 『「さあ、みんな! おトイレも終わったところでオヤツにするでっすー!」』 全匹がトイレから戻ってきたところでスイお姉さんがオヤツの時間を告げる。 それと同時に金平糖の入った手さげカゴを持ってデッスンがやって来た。 『「「「テチューーーン☆」」」』 それを見た仔実装たちは一斉にテーブルの縁に集まり出す。 ちなみにテーブルの高さはおよそ40cmほど。だいたいデッスンの胸くらいの位置に当た る。そこからデッスンは金平糖を一粒ずつ摘み仔実装たちに渡していった。 『「慌てなくてもみんなにあげるデス。1匹一粒ずつデス。貰ったら後ろに下がるデスゥ」』 『「テチュー♪ オバチャ、ありがとうテチ!」』 『「テシャァ!! さっさと寄こせテチ!」』 仔実装の反応は様々だ。金平糖を前にして被っていた猫の皮が剥がれるものも多く、この時 点でまだ結構な数の糞蟲が残っていることがわかる。 そうして全匹に金平糖が行き渡り、受け取ったものから一心不乱に口の中でコロコロ舐め始 めた。 だが何匹かは口の中に入れた瞬間にボリボリ噛み砕くものもいる。おそらくデッスンの言っ た「1匹一粒ずつ」というのを聞いていなかったか、あるいは聞いていても守る気がないよ うな奴らだ。そういう奴ほど決まって… 『「なにしてるテチ!? 食べ終わったのが見てわからないテチィ? はやくおかわりをよ こすテチ! 言われなきゃわからないテチ!?」』 『「そうテチ! 一粒ずつとかセコイのはビンボーニンどもがやることテチ! ワタチはセ レブチャンテチ! そのカゴごとぜんぶワタチのものテチィ!!」』 数匹の糞仔蟲達がデッスンへ詰め寄りテチテチ騒ぎだした。 番組内で金平糖が配られたときは大抵こうなる。デッスンもいつものことといった風情で無 表情のまま一歩下がった。 それを追うように前へ出る糞仔蟲達。だがその先はテーブルの縁。僅か40cmとはいえ仔 実装にとっては体長の3倍もの高低差がある立派な崖だ。人間で言えば5mに相当する高さ である。 そして案の定、興奮しすぎて足元を見ていなかった先頭の1匹が虚空に足を投げ出してその ままテーブルから落下した。 『「テチャァ…ヂッ!」』 先のパンコン仔実装とは違い、足からではなく体の前面でビタンッと落ちた仔実装。だがカ ーペットが敷いてあるため重症には至らなかったようだ。 とは言え決してダメージは軽くない。顔面をしたたかに打ち付けて陥没させた仔実装は鼻血 を噴きながら悶絶する。 『「イタイテチ!イタイテ…ヂュッ!!」』 その頭部を思いっ切り踏みつけるデッスン。テーブルのほぼ真下なので他の仔実装達には死 角となって見えていない。 頭を潰された仔実装はしばらくビクンビクン動いていたがやがてパタリと動かなくなった。 デッスンはそれを無造作に拾い上げてお仕置き部屋に放り込む。 『「言ったはずデス。金平糖は1匹一粒デス」』 『「ふざけるなテチィィィ!! ハゲハダカのドレイのぶんざいでナマイキテチ! さっさ とよこさないとぶっころすテチィ!!」』 『「あらあら、言葉遣いが良くないですねー」』 それまで成り行きを見守っていたスイお姉さんが突然割り込んできた。 『「良い仔はもっと優しい言葉を使うです。 殺すとか言っちゃいけないですぅ」』 そしてたった今金平糖を食べ終わった1匹の仔実装を指差した。 『「はいキミ! キミはデッスンのことを見てどう思うです?」』 『「テェ…!?」』 急に質問された仔実装は戸惑っていたがやがておずおずと口を開いた。 『「オバチャはコンペイトウをくれたいいオバチャテチ。でもハゲハダカでとってもカワイ ソウテチュ…。オカミとオフクがなくてもワタチたちは同じ仲間テチ。元気だしてほし いテチィ」』 よく見るとこの仔実装は頭巾の端に小さく赤い点が打たれている。収録前のオーディション で賢くて愛情深いと判断された証だ。 『「うんうん。 じゃあキミはどう思うです?」』 次の仔実装には青い点があった。糞蟲の印である。 『「テププ…、コイツはなに言ってるテチ? ハゲハダカはドレイテチ! 蛆チャンでも知 ってるジョーシキテチ。 お前はそんなことも知らないテチィ?」』 自分自身をバカにされてもスイお姉さんの笑顔のポーカーフェイスは崩れない。 『「そっかー、じゃあキミは奴隷のデッスンより強いんですぅ?」』 『「あたりまえテチ! ハゲハダカなんかコウキなワタチにかかればボッコボコテチ!」』 『「すごいですぅ! じゃあそんなキミ達にビッグチャーンスです☆ デッスンに勝てたら あの金平糖ぜーんぶあげちゃうですー!」』 スイお姉さんの言葉に仔実装達がどよめく。同時にデッスンがテーブルへよじ登ってきた。 『「「「テッチャァァァァ!!!」」」』 それを見た仔実装の何匹かが一斉にデッスンへと突進した。 テーブルの上に立つデッスンの足にある者はぺすぺすと拳を振るい、ある者はポフポフと蹴 りを放つ。中には投糞を狙ってかウンチングスタイルで力むものもいるが先程ドドンパで糞 抜きされているので糞は出せないようだ。今回の流れはそれを見越してのことなのだろう。 しばらくすると遠巻きに眺めていた仔実装達の中からも1匹また1匹と輪の中に飛び込んで いく者が出てくる。 デッスンが無抵抗なのをいいことに気が大きくなったか、あるいは金平糖全部の誘惑に勝て なくなったか、赤い点をつけた仔実装まで数匹加わっているようだ。 最終的には10匹近い仔実装がデッスンを取り囲み各石思い思いの必殺技を繰り出していた。 しかし如何に多勢とはいえ所詮は仔実装の群れ。成体であるデッスンにダメージらしきもの は見られない。噛みつきでもすれば別だっただろうが仔実装達は気持ちよく拳を振るうこと に夢中のようだ。 やがてこれ以上参加してくる仔実装はいないと判断したスイお姉さんがデッスンに頷いて合 図を送った。それを見たデッスンはようやく動きを見せる。 『「それテチ、それテチ! チププ…、ワタチのコウゲキに手も足も出ないテチ? ズウタ イばっかりおっきくてもハゲハダカなんて蛆チャンのおててをひねるようなもんテチ! さあこれでトドメテチ! ひぃぃぃっさつ!ジッソウパァーーーンチベッ…!!」』 手始めに目の前でひと際大きく騒いでいた仔実装を殴り飛ばす。 さらに足元にいた1匹を踏み潰し、隣にいた1匹を掴みあげると別の1匹へ叩きつけた。 『「「「テ、テチャァァァ!!」」」』 無抵抗だと思っていたハゲハダカの突然の反撃にしばらく固まっていた仔実装達はここにき てようやく事態を理解し、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。 その後を追うデッスン。一番遅れていた仔実装に追いつくと後頭部を掴んで持ち上げた。そ してもう片手で胴体を掴み、ゆっくりと引っ張っていく。 『「ヂィィィ…!! い、いたいテチ! やめろテチ! 今ならゆるしてや…アァァァ!! ごめんなさいテチ!あやまるテチ!だからやめテチ!やめテチィィィ!!…ヂュッ」』 泣き別れとなった頭部と胴体を捨て、なおも仔実装達に迫るデッスン。 残った仔実装達はテーブルの隅に固まり、抱き合って泣き震えている。 『「あれー? どうしたんです? 簡単に勝てるんじゃなかったですぅ? ほらほら、勝っ たら山盛りの金平糖ですよー!」』 『「テ、テチュァァァァァッ!!」』 スイお姉さんの言葉に乗せられ、この期に及んでまだ無謀な勝負を挑もうとする仔実装が1 匹飛び出してきた。 デッスンはまっすぐ走ってきたその仔実装を受け止めて抱き上げると、頭を下へとひっくり 返して持ち替えそのままテーブルへ叩きつける。 ごちゅっ 『「ヂッ…!」』 頭頂部が陥没した仔実装。だがさらにデッスンは二度三度と繰り返して仔実装を叩きつけた。 ごちゅっ ごちゅっ ごちゅっ 『「デプ… デププ…」』 デッスンの口から厭らしい笑い声が漏れた。まるで溜まった鬱憤を晴らすかのように最後に 一際強く叩きつけるともはや頭部の原型を留めなくなった仔実装を投げ捨て、さらに怯え泣 く仔実装達に向かって歩を進め… パシーンッ 『「デギャァァァァァッ!!」』 …ようとしたところで突然スイお姉さんに実装タタキで背中を打たれたデッスンは背中に手 を回して転げ回った。 『「ダメです、デッスンー。 お姉さんのキミが躾と暴力を間違っちゃですぅ」』 『「ご、ごめんなさいデス!! ごめんなさいデスゥ!!」』 土下座して謝るデッスンの頭を実装タタキでペシペシと叩きながらスイお姉さんは仔実装達 に話しかける。 『「みんなわかったです? たとえハゲハダカでも大人は仔供よりずっと強いんです。その 大人だってニンゲンサンには適わないです。 弱い弱いキミタチが大人やニンゲンサン を怒らせたら簡単にプチってされて死んじゃうんですぅ」』 『「「「わ、わかりましたテチィ! イイコにするテチ!!」」」』 残った仔実装達は一斉に気を付けの姿勢をとり声を揃えて返事をした。 その様子を見てウチの親指はまたしても大爆笑だ。 「おい、わかったか? 見ての通り、オレやパンチョが本気になったらお前なんか一瞬でミ ンチなんだぞ? ワガママを言うなとは言わないがもっと己の分を弁えてだな…」 「なに言ってるレチ? ワタチをあんなチキンどもといっしょにするなレチ! オマエこそ ワタチのなさけで生かしてやってるのにいちいちエラソーレチ! オマエもグズグズして ないでコンペェトーのひとつぐらい持ってこいレチ! つかえないハゲドレイレチ!」 八つ当たりに近い形でパンチョを蹴りつける親指。 当のパンチョは“こんなはずでは…”とでも言いたげな表情でオロオロするだけだ。 「パンチョ、お前もわかっただろ? 痛み無しで躾なんかできないんだ。 お前が本当に親 指のことを思ってるなら手を上げるのも優しさのひとつだぞ? このままじゃ近いうちに オレがコイツを潰しちまいかねない」 「テェェェ…」 迷いを見せるパンチョだが未だ踏ん切りはつかないようだ。結局パンチョはこの時も親指に 手を上げられず、テレビを見て良い仔になるよう促すだけで終わってしまった。 今回の件でオレは以前から薄々と感じていたことをひとつ確信した。 どうやらパンチョには躾をする能力…、と言うより暴力を振るうための凶暴性が実装されて いないようなのだ。 実装石は人間と同じく学習によって後天的にスキルを身につける生き物である。だが学習次 第で大抵のことはできるようになる人間とは違い、実装石は生まれつき実装していた能力以 外のスキルを習得することができない。 例えば人間の場合は才能を持たない者が何かを身に付けようとする時、ある程度までは上達 するがそれ以上は進歩しない、といったことが多々あるだろう。 しかし実装石の場合はそれ以前の問題であり、実装していない能力はどう訓練してもこれっ ぽっちも習得できないのである。 実装石がどんなスキルを実装して生まれてくるかは胎教の唄や親実装の環境によってある程 度偏るものの基本的に運任せ。ペット用仔実装などを卸す人工養殖場では最近の研究により ある程度コントロールできるようになっているらしいがそれでも当たり外れは大きいそうだ。 人の役に立つスキルを実装してくるものがいる一方で生きるために必要な能力すら持たない ものもいるらしい。 そう考えると躾らしい躾を受けてこなかった生粋の野良実装であるパンチョが至極すんなり 飼い実装になれたのも納得がいく。糞蟲化の最大要因である暴力性を実装していなかったか らだ。 もちろんこれは野良としては致命的欠点である。弱肉強食の野生の世界で唯でさえ地位の低 い実装石がその僅かな腕力も振るえないなど、どうぞ食べてくださいと言っているようなも のだ。 ペット用として生まれ、人為的に暴力性を実装されなかった飼い実装が捨てられた時などの 例を見ればわかるだろう。そうなったら抵抗らしい抵抗もできないまま貪り食われるしかな い。 だが逆に飼い実装として生きるには適した能力とも言える。 要望が通らなかったり待遇が不満であっても暴れるという選択肢がないのだ。せいぜい泣く か媚びるかぐらい。これなら許されることもあるだろう。もし暴れて万が一糞でも投げた日 には一発でアウトだ。 強いて言えば将来仔を産んだときに躾が出来ず仔を糞蟲化させてしまう可能性があるが、そ の辺は予め避妊しておくとか心を鬼にして間引くとか飼い主サイドの問題も大きい。 つまりパンチョは単頭で飼うなら実に適した実装石と言える。友人に言わせれば大当たり。 初心者のオレが飼うには打って付けの1匹だったわけだ。今のところ仔を産ませるつもりも ない。 というか半マラのコイツって仔を生めるんだろうか…? 「レピャピャ!! またバカが死んだレチ! テレビはおもしろいレチー♪」 そうしてる間にも番組は進み、順調に仔実装の数は減っていっていた。最初は20匹近くい た出演仔実装は僅か4匹しか残っていない。それ以外はみんなお仕置き部屋に放り込まれて 圧死寸前だ。 親指はそんな仔実装達の様子を見て大笑いである。他石の振り見て我が振り直さない辺りつ くづく実装石だと思う。残念ながらお義母さんといっしょを見せて良い仔になってもらおう というパンチョの試みはまるで効果がなかったようだ。まあわかっちゃいたけどな。 そしていよいよ番組は大詰め。実装ダンスのコーナーへと突入した。 『「みんなー! 最後はお歌とダンスでバイバイですー!」』 『「テ、テチュー…」』 軽快な音楽が流れ、ステージもライトアップされる。 しかし残った仔実装達は一様に元気がない。ここにくるまでに受けた恐怖とストレスでかな り参っているようだ。それでも大好きなダンスとあって1匹また1匹と思い思いに手足をバ タつかせ腰を振るい始める。 どんなに賢い実装石でもどういう訳か歌とダンスはメチャクチャだ。傍から見るとバタバタ してるようにしか見えないがアレで本石達は気持ちよく踊っているんだろう。 後ろの方ではデッスンが同じように全力でタコ踊り中である。だが何を隠そう何処に隠そう、 この場の誰よりもテンション高く踊っているのがスイお姉さんだった。 『「さあみんなー! もっと元気に踊るですぅ☆」』 これまたお世辞にもうまいとは言えないダンスだが、パンチラも物ともせずにスカートを翻 し夢中で踊る姿に思わず釘付けになってしまう。 「テッチュン☆ テッチュン☆」 「レッチュン♪ レッチュン♪」 しばらくスイお姉さんのダンスに見蕩れていたが、ふと気が付けば我が家の2匹もノリノリ で踊っている最中だった。 パンチョはお得意のゴーゴーダンス。親指のダンスは初めて見たが…、これはまさかのオタ 芸…か? そしてよく見れば水槽の中のマラ実装も激しくヘッドバンキングしていた。もっともコイツ の場合は目の前で踊るパンイチのパンチョに興奮して蠢いているだけのようだが。 画面の中と外で実装石が踊り狂うというカオスな空間の中、ひょいと時計を見ればそろそろ 夕飯にちょうどいい時間になっていた。 これが終わったらとりあえず飯にするかな。そう思ったオレは親指用のドドンパを作ろうと 席を立とうとした。 その瞬間、それまで夢中で踊っていたパンチョがピタリと動きを止めた。 「ヂィィィィィ… ヂュァァァァァ…」 代わりに搾り出す様な唸り声が開いた口から漏れてくる。 これは…、遂にきたか! 「ヂギィィアァァァ…」 見る見るうちにムクムクとパンツの前面が膨らんできた。 「おまえなにやってるレチ? せっかくきもちよくおどってるのにダイナシレチ!」 だがその変化に気が付かない親指は自らパンチョに近付き、その尻に蹴りを入れた。 「テヂャァァァァァァァッ!!!」 それがスイッチだったかのように絶叫するパンチョ。同時にパンツを押しのけて硬くそそり 立ったマラが姿を現した。ストンと足から滑り落ちるパンツ。 「テハァ… テハァ…」 息も荒く血走った目。正気を失くし、マラ実装として暴走した姿がそこにはあった。 「プ…、レププ…、レピャピャピャピャピャ…!!」 だが親指の反応は意外なものだった。水槽のマラ実装に気付いた時のように慌てて逃げるも のだと思っていたのだがその場で腹を抱えて笑い転げだしたのだ。 「なんレチ?そのみじかいマラは! そんなんじゃ蛆チャンもマンゾクしないレチィ!!」 どうやらパンチョのマラ実装としては短すぎるマラがおかしいらしい。 さらには親指どころか水槽の中のマラ実装までもが涙まで流して爆笑していた。大方自分の マラと比べて嘲っているのだろう。 マラのサイズで優越感を持つのは人間も実装石も同じか…。だがむしろ本来のマラ実装のマ ラのサイズの方が動物としておかしいのだ。自身の身長と同程度の生殖器なんて文字通り無 用の長物である。 それに短いと笑われているパンチョのマラでさえパンチョ自身の比率で考えてみればまだデ カいくらいだ。これで短いと言われたらオレのなんて…。いやいや、そこはどうでもいい。 マラ実装と張り合ったって仕方ないだろう。それよりもパンチョの次の動きが気になる。 「ヂィ… ヂィィ…」 ギョロギョロと周囲を見渡していたパンチョの血走った目は、案の定目の前で笑いこけてい る親指へと向けられた。両手を前に突き出し、荒い息で親指に迫る。 だが親指は逃げない。普通のマラ実装に比べて明らかに短いマラのパンチョがおかしいとい うのもあるだろうが、今まで散々奴隷となじりコケにしてきたハゲハダカがいきなり危険な マラ実装へと変貌するという異常事態に思考がついていっていないのだ。小さかろうがマラ 実装はマラ実装、そこに気が付いていない。 だからさっさと逃げればいいものをいつまでもその場で笑っていた親指はあっさりと捕まっ て持ち上げられた。 「レッ? はなすレチ、このタンショー! おまえみたいなソチンがナイスバデーのワタチ を抱こうなんて10ねん早…」 「テッチャァァァァッ!!!」 奇声と共に片手を親指のスカートの中へ突っ込むパンチョ。そしてパンツを掴むと一切の躊 躇なく思い切り引っ張った。 ビリィィッ 貧弱な仔実装の腕力とはいえ相手はさらに輪をかけて脆い親指実装の実装服だ。 パンツはいとも簡単に破れ、パンチョの手を離れてヒラリと落ちた。 「レ…、レチャァァァァッ!? ワタチのジュンパクパンツがぁぁぁぁぁ!!」 色についてはあえて言及しないが、実装石にとって髪と並んで大切な衣服の一部を奪われた 親指の絶叫が響く。 実装服はある程度の傷やほつれなら体繊維を元に修復するそうだが、あそこまで完全に破ら れたんじゃもはや使い物にならないだろう。 「な、な、な、なんてことするレチィ!! ベンショーするレチ!! シルクのシンピンパ ンツをヨーイしろレチィィィ!!」 掴み上げられたまま、ボロ切れとなったパンツに手を伸ばす親指。怒り狂い、ありとあらゆ る罵詈雑言をツバを撒き散らしながらパンチョに吐きかける。 しかしその狂乱も唐突にピタリと止まり静かになった。なぜならここに来てようやく、パン ツを破かれたことよりもっと直接的な危機が訪れていることに気が付いたからだ。 それは露わになった自身の総排泄口にパンチョのマラの先端が突き付けられたことだった。 物事を都合良く捉える糞蟲でもさすがにその後の展開が予想できたのだろう。 つい先程散々短小と嘲ったパンチョのマラだがそれはあくまで普通のマラ実装との対比での 話。いくら短かろうが小さかろうが実際それは親指の体長に匹敵するほどの長さがあるのだ。 そんなものを突っ込まれたらもちろんタダでは済まない。 「レッチューン☆ ワ、ワタチはオネチャのかわいいイモートレチィ♪ ヒ、ヒドイことし たらダメダメレッチュン!」 この危機を乗り切るため親指が取った行動は実にスタンダード。追い詰められた実装石の頼 みの綱、“媚”だった。 だが… 「テヂィィィィィ!!」 「レェェッ!? ちょっとまつレ…、チュヴォォォォォ!!」 いつものパンチョ相手だったなら有効だったであろう親指の媚。しかし今のマラ化したパン チョにとってそれは余計に興奮を煽るものでしかなかったようだ。 そして欲情がピークに達したパンチョは親指の体内へいきり立ったマラを思い切り深く突っ 込んだ。 「レ、ゴ…ヴォ…」 自身の身長に匹敵するほどのマラを突き刺されて親指は苦悶の表情で悶える。顔面にはびっ しりと脂汗が浮かび、滝のように血涙を流しながら両手は空を掻いていた。 いくら食道から総排泄口までほぼ一直線という構造の内臓をしている実装石でも体内を貫通 するほどの異物が突き刺されれば当然苦しい。 だがこれはまだまだ序の口だ。本当の地獄はこれからだぞ…。 「テハッ! テハッ! テハッ!」 「ヂュッ! グビャ! レヴォ!」 親指に挿入したまま激しく腰を動かし始めるパンチョ。というより自分の腰に親指を叩きつ けていると言った方がいいかも知れない。 そして一突きされるごとに親指の口から押し出されたような悲鳴が上がる。 よく見ればパンチョの腰の動きに合わせて親指の下腹から喉元にかけて隆起が何度も往復し ているのが分かった。つまりあれがパンチョのマラの長さなワケだ。 通常のマラ実装の交尾の場合、長すぎるマラが犯されている実装石の口から飛び出るのが普 通らしい。しかし短いパンチョのマラは親指の体内を貫通するところまではいかず、ギリギ リ喉の奥を抉るところで収まっていた。 「なにッ してッ るレッ ドレッ ニゲッ はやッ たすッ けろッ レヂッ」 そのためかまだ何か喋る余裕があるようだ。ひと突きごとに途切れるのでイマイチ聞き取り 難いがどうやら自分を助けろと言っているらしい。 「助けろってか? 何だよ、相手は散々バカにしてきたハゲハダカだぜ? 強くて高貴で美 しい親指さんなら自分で何とかできるっしょ?」 「ふざッ けるッ なレッ さッ さとッ しろッ レヴォッ」 「それにな、糞蟲のお前を今まで捨てたり潰したりせずに今まで飼ってきたのはこの時のた めなんだぞ。つまりそれがお前の役目だ。タダ飯食ってきた分、しっかり働けよ」 「ヂュワッ! ヂュワァァァァァッ!!」 血涙を流しながらイヤイヤと首を振る親指。 哀れと言えば哀れな姿だ。同情心のひとつも涌きそうなものだがこれまでの親指の糞蟲っぷ りがそれをチャラにしていた。 それにやはりパンチョのマラが短いからだろうか。この状態でまだ話せるってことはそれな りに余裕が残っている証拠でもある。今回は今後のことを考えての実験のつもりだったのだ が、行為を終えて親指が生きているようならそれはそれで成功だ。耐えられずに死んでしま ったなら次は仔実装で試そうと思っていたが今のところ大丈夫そうだ。後は最後の瞬間にど うなるかが問題だな…。 「デッシャアアアアアアアアアアッ!!!」 「うおぅっ!?」 パンチョと親指の様子に気を取られていたオレは突然の大声に思わず飛び跳ねてしまった。 いったい今の大声はどこから誰が? いや、答えは最初からわかっていた。というかこの場 にいるのはオレとパンチョ、親指を除けばもうあと1匹しかいない。だがだからこそ驚いた のだ。 「デガアアアアアッ!! ふざけるなデス!!ふざけるなデス!! この私がずっと出して ないのに!! 気持ち良くなってないのに!! そんな短小ハゲハダカがなんで気持ちよ くなってるデスゥゥゥ!!」 声の主は水槽の中のマラ実装だった。血走った両目を見開き、裂けそうなほどに大きく口を 開いて吼えている。 それにしても安物とはいえ仮にも防音水槽を通してこの音量。いったいどれほどのボリュー ムで叫んでるのか。見れば叫ぶ度に血を吐いている。自身の発声で喉を傷つけているようだ。 「テハッ! テハッ! テハッ!」 だがそんなマラ実装の慟哭も聞こえぬかのようにパンチョは腰を振り続ける。その息がどん どん荒くなってきた。フィニッシュが近いのだろう。 「レ゛ッ レ゛ッ レ゛ッ」 親指はもはや抵抗らしい抵抗もできず、なすがままに突かれていた。だが不幸にも繰り返さ れる苦痛に意識を失うことすらできないようだ。 「アアアッ!! このクソチビィィィ!! 私と代わるデス!! なんでおまえばっかり気 持ちよくなるデスゥ!! 私にも!私にもヤらせろデシャァアアアアッ!!!」 マラ実装が一際大きく吼えた時だった。 「テッ、テッ、テッ、テッチュゥゥゥゥゥン!!」 「レ!? ヴォァァァァァ…!!」 嬌声と共にパンチョが遂に絶頂を迎える。その瞬間、ボムンと親指の体が水風船の様に丸く 膨らんだ。 腹が膨れたとかそんなレベルじゃない。文字通り体全体が真ん丸くなってしまったのだ。 親指はまるでカートゥーンアニメのように変形したボディに半ば埋没した手足をピクピク動 かしながら目を白黒させ、パクパクと開閉する口からは泡を吹いていた。 だがそれでもまだ死なないんだから実装石の体構造には呆れを通り越して感心すらしてしま う。まったく生命力が弱いんだか強いんだかわからない生き物だ。 「チュワワーン…♪」 親指に挿入したまま痙攣を続けていたパンチョは恍惚の表情を浮かべてマラを抜いた。 そのまま取り落とされる親指。ピンポン玉のような体がテーブルに転がる。 そしてパンチョもその場で背中からパタンと倒れ込んだ。その直後には小さな寝息が聞こえ 始める。寝付きが良いのはいつものことだが今回のパンチョはなんとも満足そうな寝顔をし ていた。 む…、その表情になんかイラッときた。こちとら20年生きてきて経験はおろか彼女すらで きたこともないってのによぅ…。 なんだか複雑な気持ちでパンチョを見下ろしていると、まさに今目の前でマラがシオシオと 萎えるように小さくなっていくところだった。見る見るうちに収縮したマラは元通り米粒大 の突起物としてパンチョの股間に落ち着いた。 ま、何はともあれこれでまたしばらくは大丈夫だな。今までのように大量の精液を撒き散ら すこともなかったので臭いもないし掃除の手間も必要ない。ぶっちゃけいくら実装石とはい え他人の精液を掃除するのは正直勘弁だ。役に立ってくれた親指には殊勲賞をくれてやろう。 その肝心の親指だが未だ真ん丸くなったまま動けず、声も出せないまま目だけで助けを求め 続けていた。 腹の中に大量に流し込まれた精液。通常ならマラを抜かれたと同時に総排泄口から…、いや それ以前に口から吐き出してしまうところだがそれを防ぐためにコイツには裏ドドンパと裏 ゲロリを常用させてきた。 総排泄口からの排出も口からの嘔吐もさせず、パンチョの精液を親指の体内に留めさせる。 避妊手術も施された親指は妊娠することもない。 名付けて『親指コンドーム』作戦、大成功だ!! 今回はオレがいる前で事は起こったがこの次はどうなるかわからない。大学に行っている間、 あるいはバイト中にパンチョがマラ化する可能性もある。 だがこの様子を見る限り、おそらく次回もパンチョは親指を襲うだろう。四方を囲まれて隠 れる場所もないケージの中では親指に逃げ場はない。 そう考えると今回生き残ってしまったことは親指にとって幸か不幸か…。少なくとも数日中 にこの苦しみをもう一度経験することになるのだから。 コイツがもう少し殊勝な性格をしていたならパンチョが入ってこれないシェルターの様な隠 れ家を用意してやっても良かったんだけどな。 実際オレも最初はそう考えていた。もともとこの親指はマラ実装に食い千切られた人形の代 わりだ。パンチョが寂しがらないように与えたヌイグルミのようなものである。 しかしよく確認しなかったオレにも非があるとはいえ、本来の役にはまるで立たない糞蟲だ った以上別の形で利用するまでだ。 オレはテーブルの上で身動きできないまま涙目でイゴイゴともがいていたピンポン玉親指を 尻目に戸棚へ向かい、さっき作ろうとした液状ドドンパを改めて作ることにした。 ペットボトルのキャップに水とドドンパを適量混ぜ、スポイトで吸い取って再び居間へ戻る。 『「それじゃ、良い仔のみんな! また明日ですー♪」』 『「「バイバイテチー☆」」』 気が付けば『お義母さんといっしょ』がちょうど終わるところだった。 見てないうちに何があったのか出演仔実装が2匹にまで減っている。大方ハシャギすぎてパ ンコンでもしたかテーブルから落っこちたかなんかだろう。 とりあえずオレはテレビを切り、テーブルの上の親指を摘み上げてトイレへと向かった。 今回は実装トイレではなく人間のトイレだ。実装トイレに入れてある砂は糞便は吸収脱臭で きてもおそらくマラ実装の精液まではその限りでないはず。後々よく読んでみたら袋にも『 実装石の排泄以外に使用しないでください』と記入されていたからな。 摘み上げられた親指は腹を圧迫されるのが苦しいのか指先を通してイゴイゴが強まったのが 伝わってきた。 その親指を便器の上にかざす。まずはパンツを脱がそうと思って思い出した。 「ああ、そういやパンツ、破られたんだっけな」 「…!? …! …!」 親指自身もすっかり忘れていたのだろう。オレの一言でドバッと涙を流す。 「ま、良かったじゃんか。何はともあれ生きてたんだから」 大抵の場合、マラ実装に犯された実装石はその激しすぎる交尾によって体内をメチャクチャ にされて死ぬか、あるいは性欲を発散したマラ実装の次の欲求である食欲を満たすために食 われて死ぬかだ。さらにコイツの場合は腹に注がれた精液で破裂する可能性もあった。 こんな目に遭ったとはいえ命があっただけ御の字だろう。 「パンチョの奴、またそのうちああなると思うからさ。そん時はまたよろしくな」 「…!! …!」 オレは何か言いたげだった親指の口に液状ドドンパ入りのスポイトを押し込んだ。そのまま 口内にほんの数滴分ほど押し流す。 たったそれだけでさっそく効果が現れた。グギュル…という音と共に、摘んでいる指に親指 の体内で糞袋が蠢いたのが伝わる。 次の瞬間、 ブリュリュリュリュリュリュリュリュリュ……!! 凄まじい勢いで親指の総排泄口から大量の精液と1日分の糞便、そして若干の血が流れ出す。 白と緑と赤の入り混じったその液体は思わず鼻を摘んでしまうほどの悪臭を放ちながら便器 の中へこぼれていった。 「………ァ…ァァ…ァァァッ!!」 体が萎んでいくに連れて声が出せるようになったのか親指の声がトイレ内に響き出す。 しかし無理やり流し込まれたものをさらに無理やり抜き取られるというのはかなりの苦痛ら しく、糞抜きをした時の様な快感とは程遠い悲痛な叫びしか出ることはなかった。 ブリュリュリュリュ…ブリュ…プスッ… 最後に屁が一発出てから親指の精液抜きは終了した。 コックを引いて糞と精液を流し、蛇口から流れる水で親指の尻を洗う。 「レヒッ… レヒィ…」 オレに摘まれたままぐったりとうな垂れている親指。せっかく体型も元に戻り声も出せるよ うになったというのに今は何か喋る気力すら残っていないようだ。 「あ、そうだ。引き続き飼うことになりそうだしせっかくだからお前にも名前をやるよ。 お前の名前は今から『ノパン』な」 ワンピースの裾から覗く丸出しのケツを見て唐突に閃いた。 例によってノーパンから取った安直な名前だ。パンチョといいなんだか男っぽい名前ばっか り付けている気がするがまあ問題ないだろう。 もっとも実装石にとっての一大イベントである名付けだというのに主役の親指は心ここにあ らずといった感じだ。 無理もないか。パンチョに犯され始めてから精液抜きする今までずっと続いた激しい苦痛の 渦からようやく開放されたんだから。 部屋に戻ったオレは手にした親指、もといノパンをハウスの中に転がしておいた。 ついでにテーブルの上で未だ眠りこけているパンチョもその隣へ放り込んだ。それを見たノ パンがパンチョから逃げるようにハウスの隅へ這っていく。 うん、パンチョのことを恐怖するようになったのはいい傾向だ。これで少しは言うこと聞く ようになればいいが…。 糞蟲から改心した事例も極稀だがあるようだし期待はしないで様子を見てみるか。ダメなら ダメで引き続き親指コンドームとして飼えばいいだけの話だしな。 パンチョが起きたら飯にしようと思い、オレはテーブルの上の雑誌類を片付け始める。 「ん…? そういえば…」 さっきまでトイレにも聞こえるほど大声で喚き散らしていたマラ実装がやけに静かなことに 気が付いた。 覗いてみるとまだ何か喋ってはいる。だが通常音量に戻ったらしく防音水槽に阻まれて聞こ えなくなっていたのだ。 見れば今までにないくらい顔色が悪い。気になったオレは慌てて水槽のフタを外してみた。 「なんでデス…、なんで私がこんな目にあってて…、あんなタンショウチビばっかり気持ち よくなってるんデス…? なんで…」 なんだ、ただ愚痴を漏らしてるだけだったか。なにしろコイツには自傷の前科があるからな。 少し気をつけないと… 「…んでデス…、なんで…」 ピシッ… ピシ…? フタを閉め直そうとした瞬間、僅かに乾いた音が聞こえた気がした。 その直後、オレがその音の意味に気が付くより早くマラ実装はビクンビクンと大きく痙攣し、 両目もカメレオンのように左右がバラバラに動き回り始めた。 「デボギゴデガデデロデガガガガ……」 口からは泡と共になにやら呪われそうな言語が漏れ続けている。 ここにきて遅ればせながらオレもマラ実装に何が起きたか気が付いた。 「こンのバカ! 偽石が自壊しかけてやがる!!」 欲望の権化と言われる実装石の中でも取り分け欲の深いマラ実装が数日間の禁欲、それによ る不眠、さらに絶食と生物の三大欲求をことごとく封じられ、おまけに遥か格下の親指実装 に挑発を受けるという屈辱。しかも身動きまで制限されて暴れることも出来ない。 そんな状況でトドメとばかりに目の前で生交尾を見せ付けられたマラ実装の偽石は溜まりに 溜まったストレスに耐え切れなくなり崩壊を始めていたのだ。 オレは水槽のフタを放り出し、大急ぎで冷蔵庫に向かい栄養ドリンクを取り出した。 前回の自傷時にはこれで意識を取り戻すことが出来た。だが今回は既に偽石が割れかけてい る。果たして間に合うかどうか…! ダッシュで戻ってきたオレは素早くビンのキャップを外して、未だ呪詛めいた言葉を漏らし ているマラ実装を持ち上げるとその口に突き立てるようにビンを押し込み中身の栄養剤を一 気に流し込んだ。 ゴボゴボと咽ながらもマラ実装は口内の栄養剤を飲み込んでいく。 そしてビンの中が空になる頃、マラ実装の体は痙攣するのを止めておとなしくなった。 死んだかと思ったがどうにか呼吸はしている。 「お、おい…?」 「デー… デヘェー… デデェー…」 体に巻いたラップを解いて水槽の中に戻してみた。しかしせっかく自由になったというのに マラ実装はガラス壁に背もたれて座ったまま虚ろな目で天井を見上げて意味のない言葉を呟 くだけだった。 だがさらに異変は続く。今までギンギンにそそり勃っていたマラがまるで枯れる植物を早回 しで見ているようにゆっくりと倒れていくのだ。 そして座り込むマラ実装の股間でへなっと横たわるマラ。その直後… ドクッ ドクッ ドクッ 「んなぁ…!?」 力なく垂れたマラから堰を切ったように大量の精液が流れ出した。 その量たるや半端ではない。早くも水槽の床いっぱいに広がった精液は尚も勢いを弱めるこ となく、投げ出されたマラ実装の足を飲み込み腰にまで差し掛かろうとしていた。 しかも溜め込まれていた精液は臭いもかなりのものだ。鼻で息が出来ないほどのムワッとし た臭気が部屋に漂い出す。 「おい、ちょっと待て! 止めろ止めろーっ!」 「デヘッ… デヘッ…」 オレも慌ててストップをかけるが当のマラ実装はヨダレを垂らしながら笑いとも喘ぎとも取 れないマヌケな声を出すだけだ。 そうこうしているうちに精液はマラ実装の胸ほど、水槽の半分近くまで溜まってきた。 「デヘェ…」 だが幸いにもそこで打ち止めだったようだ。 最後にブルリと体を振るわせたマラ実装。それ以降水面、もとい精液面が上がることはなか った。 まったく…、いったいどこにこれだけの量を蓄えていたのか…。そりゃあ出せなきゃストレ スにもなるわ、こんなもん。 「デデー… デー… デッデー…」 自身の出した精液風呂に胸まで浸かりながらマラ実装は生気のない顔で虚空を見上げたまま またしても無意味な言葉を呟いている。 自壊こそ防げたものの、偽石に重大な損傷を負ったマラ実装はもはや正気を失くしてしまっ たようだ。体組織はともかくさすがの実装石も偽石までは修復できない。コイツの回復はも う絶望的だろう。 しかしそうなるとマズイ…! コイツには焼肉の奢りが懸かってたのに! いやいや、事は焼肉だけじゃないぞ。友人の「かかった費用も払う…」を当てにしてドドン パ原液やら水槽やら少々値の張るものも購入してしまった。これを取り消されたら生活がか なりキツくなってしまう…! どうにか誤魔化さなければ!! とはいっても実際どうすりゃいいんだ…? マラ実装は元に戻りそうにない。となれば…、替え玉だ! 友人がマラ実装を引き取りにくるまでまだ1日ある。マラ実装は比較的レアな個体だが探し て見つからないほどではない。今からでも探しに行けばうまくすれば…。 ピンポーン 「うひゃう!」 ドポンッ 不意に鳴らされた玄関のチャイムに驚き、持っていた栄養剤のビンを放り出してしまったオ レ。飛んでったビンはよりにもよってマラ実装の水槽に落ち、たっぷりと溜まった精液をテ ーブルと床の上に跳ね散らす結果となった。 ぬあああああ…!チクショウ!足にもかかった! クソッ、こんな時にいったい誰だよ!? 「はーい!!」 半ば八つ当たり気味の口調で来客者に返事をしてオレは玄関へ向かった。 今は余計なことしている時間はないんだ。新聞の勧誘とかだったら速攻で追い返してやる。 「はいはいどちらさん? 新聞だったら間に合って…る…よ?」 「ばんわー」 「・・・・・」 ぬあああああ…! なんでコイツがここにぃぃぃ!? 扉の前に立っていたのは明日帰ってくるはずの友人だった。 「悪かったね、マラ実装の世話なんか頼んじゃって。キミが苦労してるんじゃないかと思っ て急いで帰ってきたんだ。…ってクサッ!どうしたのこの臭い!?」 「あ…、いや…、その…」 目の前にはタイミング悪く帰ってきてしまった友人。 背後では結局精液を撒き散らし強烈な臭いを漂わせる部屋と壊れたマラ実装。 進退窮まったオレにできることはただひとつ。 「「デヘ… デヘへ…」」 「テチゥゥゥン…♪」 虚ろな目で力なく笑うことしかなかった…。 オレがマラ実装とハモッて笑う後ろでこの場で唯一満足しているパンチョが幸せそうな寝言 を呟いていた。 続く <あとがき> と言う名の言い訳 数ヶ月振りの更新になりました! しかも自己最大容量更新デス…。 途中でまた分けようかなー、とも思ったのデスが前編中編と来といて後編をさらに分割する のもどうよ?ということでそのまま1本にすることにしました。相変わらず無駄に長くてス イマセン。 さてさて実は今回の後編、途中でデータをロストしてしまったのデス。 40kb越えた辺りだったかなぁ。HDのトラブルとかでなく本当に些細な自分のミスで書 き途中だった今作を削除してしまい、それが原因でしばらくスクを書く気をなくしていまし た。だけど他の人のスクやイラストなんかを見ているとやはりウズウズしてしまい、ふたば の方にショートスクなどを投下したりしていましたが、改めて記憶を頼りに復元&加筆でど うにか書き上げた次第デス。 まあそんな言うほどの作品でもないんデスがやはり未完で放置するのも気持ち悪いデスから ね。 でもやっぱり実装は書いていて楽しいデス。性質上荒れやすいジャンルですがこれからも楽 しんでいきましょう! では長々とお付き合い頂きありがとうございます。
