大蛆・売ります 「はあ・・・・どうしたものやら・・・・」 俺は閑古鳥の鳴く店内と売れ残りの中実装三姉妹を見比べてため息をついた 見ての通り、俺は個人経営の実装ショップの店長をやっている・・・それも親父の後を継いで経営しているのだが・・・ なんて言うか・・・予想通りの経営状態、ギリギリ赤字と黒字を行ったり来たりしている俗に言う『倒産前』って奴だ 幸い家の近くに愛護派や虐待派が多くライバル店も無いので実装フード等の消費品の売れ行きが良いが 肝心の実装は全く売れず、欲しい客はみんな街の中心の大型ショップに買いにいく ちなみにこの中実装三姉妹は親父が経営している頃に仕入れた『子実装三姉妹』だったのだが 売れ残って成長して未だにショーウインドウに一応飾ってある・・・・ 性格は全く悪くない・・・むしろその辺の高級品よりはマシなはずだ 何せこいつ等は飼い実装になる為に今も自分なりに勉強に励んでいる(多分無駄な努力になるだろうけど) 本来なら処分してもいいのだろうけど・・・・こいつ等以外に実装がウチにいない以上それが出来ない だってそうだろ、実装のいない実装ショップなんてあるものか それはそうと、今三姉妹は6匹の蛆実装を育てている 元々爬虫類用の餌蛆だったんだがこいつ等の退屈しのぎと教養のつもりでくれてやったんだが こいつ等の育て方がいいのか全部が全部10cm以上の大きさまで育っている・・・そして今日も・・・ 『みんなゴハンテスよ〜』 そう言って長女が蛆達を集め始めた 『駄目テスよウジチャン、ウンチはゴハンじゃないテス、ゴハンはコッチテス』 ゴハンの声にトイレに向かおうとする蛆達を三女が上手く誘導している 『みんなで仲良く食べるテス、プニプニはその後テス』 自分達の乾燥エサを砕いて水と混ぜて作った自家製練り餌を皿に持って次女がやって来た 『ゴハンおいしいレフ〜』 『ウジチャン幸せレフ〜』 『ゴハンの後のプニプニが楽しみレフ〜』 『プニプニもいいレフ、でもウジチャンコロコロも楽しみレフ』 そして始まるいつものレフレフ合唱団・・・・なんか意味ある事を言っているのだろうがリンガルが無いと人間には同じレフレフにしか聞こえない この蛆実装のレフレフ合唱なのだが別に客からクレームもないので放任している まあウチで買い物する客にはラジオのだだ流しと同程度の感覚のようだ そんなある日の昼下がり、俺はいつものようにぼんやりとレジに座ってTVを見ていた 「あ〜そう言えば実装紅用の業務用紅茶の在庫切れる前だったっけ〜・・・・確か山郷さんが欲しいって言ってたしな〜・・・・」 ウチは本当に暇でしょうがない・・・・忙しいのは夕方位に仕事帰りの客が寄る時くらいだ 忙しいとは言っても街の大手と違って俺一人で余裕で捌けるレベルなので 今の時間は在庫の確認と発注するかどうかを考える時間になる・・・・・ぶっちゃけボ〜ッとするだけなんだけど 「あの〜すいません」 (トイレの砂の在庫もやばかったっけ・・・・・後で発注しとかね〜とな〜・・・・) 「もしも〜し」 (後なんか在庫でヤバいのあったっけな〜・・・・実装用のシャンプーはまだあったしな〜・・・) 「ちょっと〜」 (実蒼用フードだった、あれもあと2袋しかなかったな・・・) 「お〜い」 「ん?・・うわあ!!」 ぼんやり考えていた俺は店に来ていた客の声におもわず驚いてしまった 「へ!!何!!何!!」 俺の慌てっぷりに客も驚いてた 「あ!!あ・すいません!!何か御用ですか?」 なんとか平静を装って客を見た俺は改めて驚いた、何せ今まで見たことのない客・・・つまり一見さんが2年振りに来たからだ 「あの〜・・・あそこに飾ってある実装石・・」 なんと!!遂にあの三姉妹が売れる時が来・・ 「と一緒にいるウジちゃんなんですけど〜」 なかったかー!!・・・じゃなくて 「??蛆実装ですか?」 「はい、あれは一匹いくらですか?値段が親しか出てなかったモノですから」 何?蛆実装が欲しい?・・・・・何だよそれ・・・まあいいや、どうせ元手はタダだったし 「一匹500円です」 「はあ?500円・・・・」 途端に固まるお客さん・・・・・ぼったくり過ぎたか? 「・・・・ホントに500円?マジで500円?いいの?マジで!!・・・うおっしゃああ!!超ラッキィィィ!!」 固まったお客さんが動き出した途端体全体を使って喜びだした・・・何?・・・どうしたんですかお客さん? 「買う!!全部買う!!全部買います!!全部売って下さい!!」 物凄く鼻息を荒くして財布から金を引っ張り出すお客さんに待って貰って俺はケージに向かった ケージの中で一部始終を見ていた三姉妹は悲しそうな目で俺を見てきた 『ウジチャン売れちゃうのテス?』 『ウジチャンとバイバイしないといけないのテス?悲しいテス・・・』 『テスン・・・テスン・・・でもしょうがないテス』 そりゃそうだろうな〜・・・何せこいつ等にしてみれば手塩にかけて育てた子供のようなものだし 『オネチャはどうして泣いているレフ?』 『ニンゲンサンレフ、ゴハンの時間レフ』 『高い高いレフ!!ウジチャンお空を飛んでいるレフ!!』 一方の蛆実装達は現状を全く理解出来てないようだ・・・まあいいか 俺は6匹全部を持ち帰り用の箱に移してレジまで持ってきた 「え〜ただいま当店には6匹しかいませんが・・・よろしいでしょうか」 「全然構いません!!いや〜わざわざ遠くまで足を運んだ甲斐があった〜」 終始ハイテンションのお客さんから代金の3000円を受け取ってから箱を渡すと お客さんはスキップしながら帰っていった・・・・・何だったんだありゃ? まあそれはそれとして・・・・俺は静かになったケージになぐさめの言葉を掛けた 「あ〜その・・・・まあ何だ、後で新しいウジちゃん用意してやるからそんなに落ち込むなよ 買っていった人は絶対愛護派だろうからさ」 返事はない・・・・・しょうがないか 俺は店の入口に『準備中』の看板を立てて少し離れた所にある釣具屋に釣り餌用蛆実装を買いに出掛けた 新たに10匹の蛆実装を三姉妹にプレゼントしてから俺はグーグル先生に質問してはげしく後悔した その理由は『大蛆実装』の項目に書いてあった事だ よくは分からないが最近蛆実装を飼うのが静かなブームとして流行りだしているのだが 蛆実装はチリィのでちょっとの油断で死んでしまう プニプニし忘れた・し過ぎた・力加減を間違えた・eto とまあ意外と初心者泣かせな所が多い蛆実装・・・ そこで今注目を集めているのが10cm越えまで成長した『大蛆』だ さすがにそこまで成長してれば体も丈夫になっているので初心者でも安心してプニプニが出来る その上頭の中は『ウンチ』『プニプニ』『コンペイトウ』しかない安い脳みそも受けが良く 這い回るだけの蛆なので動き回る範囲もたかが知れているので仔実装のように物を壊す心配もない そしてそんな大蛆実装・・・一般的標準価格は2〜3万円前後らしい あ〜なるほど・・・500円って言った瞬間にハイテンションになるわな・・・・5000円って言えば良かった しかしそんなにデカイ蛆実装が欲しければ子実装として産まれたのの粘膜を剥がさなきゃいくらでも作れるだろうと思ったら 大蛆には大蛆としての厳しい基準があり、それをクリアーするしないで天と地ほどの差が出来るらしい まず体型、大蛆の基準は人参のように細長いものじゃなければならない じゃがいもみたいに丸っこいモノは間違いなく子実装に変体するからだ 次に鳴き声、『レフ』の鳴き声は蛆実装マニアには心地よい鳴き声らしいのだが 『テフ』とか『デフ』なんて鳴き声はマニアには怒りを誘う雑音に聞こえるらしい そしてそう鳴くモノは当然仔実装に変体する 特にこの二つは重要でどちらか片方でも満たしてなければ『大蛆』ではなく『蛆仔』の名前になり 販売価格も5〜10円程度まで一気に下がる そして最後が体長、10cm以上まで成長した蛆実装は体内の偽石情報が蛆実装のままで固定されるらしく それ以降繭を作っても蛆実装のままで大きくなるらしい しかも大蛆は育てるのが難しいらしく、どの実装ショップでも品薄で『買取募集』の広告を出している位だ 「は〜・・・なるほどね〜・・・」 グーグル先生を一通り見てから俺はケージの中で蛆実装の世話を焼いている三姉妹を改めて見た 「う〜ん・・・大蛆か〜・・・・・・・・・・・・・・・ん?・・・・・待てよ・・・」 その時、俺はある事を閃いた それは上手く行けばこの店の経営状態を上向きに変える事が出来るかもしれない画期的なアイデア そう考えた俺はレンタルビデオ屋まで行ってあるDVDを借りてきた そして店を閉めた俺は蛆実装達にタオルを掛けて眠らせている三姉妹をケージから取り出してTVの前に連れて来た 『テエ?店長さん何の御用テス?』 『店長さんがいつも見ているテレビテス』 「まあ落ち着け、そしてこれを見ろ」 俺はそう言ってDVDを再生した DVDのタイトルは『働く実装』と言う子供番組もどきの実装向けのブツで主に愛護派しか借りないのだが 今回考えがあってこいつ等に見せている そして三姉妹はTVの中でいろいろな仕事に従事している実装達を食い入るように見ていた そして30分後、DVDが終わった所で三姉妹の長女が俺に質問してきた 『店長さん、何でTVを見せてくれたテス?』 「ああ、お前らを売るのをやめようと思ってな」 『『『テッ!!テエエエエエエエエエエエエエエ!!』』』 三姉妹は驚きの悲鳴を上げた 『そんなのイヤテス!!悲しいコトはイヤテス!!』 『お願いテス!!何でもしますから処分しないでテス!!』 『テエエエエエエン!!死ぬのはイヤテスーーー!!』 何を勘違いしたのか三姉妹は大声でワンワン泣き出した 「待て、チョット待て、誰も捨てたり処分するなんて言ってないぞ」 とにかく泣き喚く三姉妹に俺は処分しない事をハッキリと言っておいた 『テエエ・・・本当テス?かなしい事しないテス?』 「しないから、そもそも売るのはやめるって意味はそう言う意味じゃない」 『テス?じゃあアタシ達はどうなるテス?』 ここで俺は一呼吸ついてから三姉妹にこう説明した 「お前達には今日から『ブリーダー実装』になってもらう」 『テ?ブリー・・フ実装?』 「何で実装をパンツにしなきゃなんないんだ、そうじゃなくてブリーダー、実装を育てる仕事をお前達にやってもらう」 『テエ?』 「つまりさっき見たTVの実装達のようにお前達も『働く実装』になってもらう訳だ」 ここまでの説明で事態をそれなりに把握した(ような)次女が口を開いた 『テス?・・・それで私達は何をすればいいのテス?』 当然の反応が返ってきた 「特にない、お前達はいままで通りウジちゃんを育てればいい」 『それだけテス?』 「それだけ、以上」 『テエエ・・・・』 三姉妹はまるで狐につままれたような顔でお互いを見合わせていた それから3ヶ月経った 俺の目論見は予想以上の大成功となった 俺の見立ての通り三姉妹は大蛆を育てる事に関しての素質があったらしく順調に大蛆を育て上げてくれた そして店の方も口コミで大蛆マニアの間で有名になり売り上げも今までの5倍近くまで増え 主力の大蛆以外にも他実装を仕入れて販売出来る程の好調になった そして店の中央に用意した大型ケージ内で今日も三姉妹が大蛆育てにクルクル走り回っていた 『『『みんなゴハンテス〜たくさん食べて立派なウジチャンになるテスよ〜』』』 『『『『『『『『『『『『『『『レフ〜ン』』』』』』』』』』』』』』』 そしてそのケージにはいつも人だかりが出来ている 「へ〜・・中実装が育ててんだ〜」 「すっげ〜・・・俺こんなに大ウジチャンいるの初めて見た」 「すいませ〜ん、大蛆ちゃん2匹くださ〜い」 にぎやかな店内を見て俺は思った 蛆実装ブームが続く限りは俺の店は安泰だ
