実装石絶滅黙示録 20××年2月後期、例年の異常気象が偶然にもある突然変異の杉を誕生させた その杉は外見は普通ではあった、しかしその杉から放出される花粉がある生物に恐るべき悪影響を与えたのだ この異変に最初に気付いたのはとある観察派だった 彼はとある森林公園の隅にコロニーを作っている実装石達を観察していた時ある違和感を感じた 「あれ?何でだ?・・・・・子供の数が少なすぎる・・・・・・」 花粉の飛び交うこの季節、本来なら子実装・親指実装・蛆実装がウジャウジャいるはずなのに見当たらない 家の中にもいる感じではない、その証拠に鳴き声がデスと僅かなテチしか聞こえてこない 「駆除業者?・・・はないか・・・てことは子実装以下専門の虐待派が根こそぎ持っていった? ・・・・・・非現実すぎるか・・・・・・・どうなってんだ一体?」 観察派としての経験が長い彼としてもこんな事は始めてだった・・・・・・そして数週間後、このコロニーは全滅した それもマナーの悪い虐殺派や駆除業者ではなく複数の野良犬や野良猫、果てやカラスやドブネズミ、肉食の昆虫達 それまで実装石のコロニーに寄り付かなかった彼らが少しづつコロニーの周囲に現れ、次々に実装石を襲い始め、 たったの10日程度でコロニー全ての実装石を食い尽くしてしまったのだ もちろんこんな事態は観察派の彼も今まで一度だって見た事がない 野良実装石が他の動物達の餌として滅ぶなんて・・・・・ 次にこの異変に感じたのは虐待派だった 「デギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」 パキン 「ああっ!!ちきしょう!!なんだよコイツ、偽石抜く前に死にやがって!!」 彼はどこにでもいるごく普通の虐待派の青年、そして今悲鳴を上げて死んだのはどこにでもいる野良実装石・・・・・なのだが その実装石は一家揃ってあまりにもチリィ過ぎた なにせ蛆や親指、子実装も親実装も全て偽石を取り出す為に腹を捌いた途端にそのショックで偽石を崩壊させ完全死してしまったのだ 「ありえねえって!!これで37匹目だぞ!!なんでこんなに簡単にくたばるんだ!!」 青年には訳が分からなかった、ここ最近忙しかった仕事がやっと一段落して久しぶりに獲物を求めて公園まで出掛け 適当に実装一家を襲撃して『お持ち帰り』の下準備をしただけなのに・・・それだけでみんな死んだ 「おっかしいな〜・・・・糞蟲ってこんなに脆かったっけ?」 青年はどうしても腑に落ちなかった、自分の記憶が間違っていなければ実装石がこの程度で死ぬはずがない だが目の前の実装石はみんな全滅した 「あ〜あ、なんかしらけちまった・・・帰るか」 青年はブツブツと呟きながら殺した実装石を実装処理袋に詰めて丁寧に後片付けして帰っていった そして、この異変は遂に商業的被害をも引き起こした 「会長!!会長大変です!!」 ある実食チェーン『デスヤグループ』の本社内で重役の三葉が血相を変えて会長室に飛び込んできた 「んん?何だね三葉君」 「大変です!!関東工場の生産石が今日の朝になって全滅したとの報告が!!」 「なんだって!!」 そこに別の重役が真っ青な顔で飛び込んできた 「会長大変です!!東海・北陸・北海道の工場の生産石が朝一の操業直後に全滅したと!!」 そこに更に別の重役が飛び込んできた この日、TVや新聞は『多くの食用実装工場で生産石の全滅』で大騒ぎとなり この時になって一部の人間は「実装石に何かが起こった」事に気付きそれぞれが独自に調べ、全員が一つの結論にたどり着いた それは『実装石のデタラメ再生能力の消滅』 最初は世間の誰もが 「そんな馬鹿な事があるもんか、常識的に考えてもありえないって」 そう言って笑い飛ばしていたのだが、数日後にローゼン社が『実装石の異変に関する調査結果』を正式に発表した その発表によると とある地域に生えていた杉の木が突然変異を起こし、その杉から産まれた花粉が実装石のみのDNAを大きく狂わせ 実装石の再生能力を並の生き物程度まで下げてしまった それに伴い実装石の再生能力の恩恵でできた『強制妊娠』と『強制出産』は事実上不可能(無理矢理やれば親が死ぬ)となり これが食用石全滅の原因だったのだ しかし疑問がある・・・突然変異の花粉を吸収したのは極一部の実装石のはずだ・・・ではどうして全国の実装石が変化したのか? その答えが『シンクロニティ現象』だ 世界のどこかで偶然起こった僅かな変異が引き金となり世界全土に影響を与える(有名な所でニトログリセリンの結晶化等)現象 それが今回、実装石に奇跡に近い確率で起こってしまったのだ それともう一つ、異常再生能力を失った事により実装石は『膨大な糞』と『度を越えた体臭』も失った あまり知られていない事だが、他の野生動物が実装石を積極的に狙わない理由が『異常なまでに臭い糞』と『体臭』に問題があるからだ 実装石が公園などを我が物顔で支配(?)できるのもこの『臭い』がバリアーとなって他の動物を寄せ付けなかったからであり シンクロニティ現象によってその『臭いのバリアー』を失った結果、 実装石は『臭い汚物』から『歩くお肉』に変わり果て、鋭い牙も爪のような自衛手段のない実装石は片っ端から他の野生動物に捕食され始めた 実装石の弱体化に伴い少しづつ減っていく野良実装石達をなんとかして守ろうとまず愛護派達が立ち上がった 「このままでは実装ちゃんが絶滅してしまう、今こそ実装ちゃんを『保護指定動物』にして実装ちゃんを守るべきだ!!」 とまあ声高らかにこんな事を世間に訴えたのだが当然誰も見向きもしなかった しかし段々と目に見えて実装石が減るにつれて愛護派のこの運動に虐待派や鍋派などが『呉越同舟も仕方なし』と参加し始め その流れに押された国会の愛護派・虐待派議員の両陣営は『実装石保護管理法』なるモノを国会に提言した・・・・ そしてこれが原因で両陣営は国会で大多数を占める無関心派議員に徹底的かつボロクソに叩かれ、国会での権威と議席をほとんど失った その上、更なる悲劇が実装石と愛護派・虐待派に降りかかった 事の発端は実食チェーン『デスヤグループ』がネット・新聞・TVなどのあらゆるマスコミ関係を使って 『以前の再生能力を持つ実装石に一千万円の懸賞金を掛けます・懸賞金は早い者勝ち・期限無し・詳細はデスヤグループ.com』 の広告を出した事だ デスヤグループのような実装石を商売道具として使っている企業にとって『あの頃のデタラメ再生能力』を持つ実装石は 喉から手が出るほど欲しい、一匹でも手に入ればそれを増やし、経営を再開できるからだ しかもデスヤグループの懸賞金発表の後、ローゼン社やメイデン社、他にも名立たる企業が一斉に懸賞金の広告を発表し その最高額として一億円の懸賞金を出す企業も現れた 常識を超えた懸賞金・・・それは多くの人間を狂わせるには十分な額だった この懸賞金広告に誰もが我先に『実装活性剤・実装再生剤』(実装石の再生能力確認の為)と 『偽石サーチャー』を買い求め、血眼になって実装石狩りを始め 実装石の絶滅にますます拍車が掛かった それは今までのような義務的とか仕事だからの駆除とは違い、確実に野良実装石を容赦なく狩り尽くす実装ハンター達が全国に急増し 懸賞金広告が出て3ヶ月も過ぎた頃には全国の3分の2近くの都道府県が『野良実装石全滅確認』を発表する程実装石は減少した もちろん愛護派や虐待派は一致団結して野良実装石を守ろうとあれこれ奔走したが全てが徒労に終わり、 それどころか逆に周囲からヒンシュクを買って世間から白い目でみられるようになってしまった ここまで騒いでも一向に見つからない『あの頃の』実装石、やがて自分の周囲に実装石がいなくなってほとんどの人達は諦め始めた それでも莫大な懸賞金を諦め切れない者達が向かった先は・・・・・・・・ 「出て来い!!糞愛護派!!」 ドンドン!!ドンドン!!ドンドン!! 「お前が実装石を隠し持ってるのは分かってるんだ!!とっとと出しやがれ!!」 「開けろ!!実装石を出しやがれ!!」 偽石サーチャーを手に持った大人数の人がとある愛護派の家を取り囲んで大声で喚いていた 『デエエエ・・・怖いデスご主人様・・・・』 『テエエエエン!!テエエエエエエエン!!』 『レフ〜?オネチャはどうして泣いてるレフ?それよりもご主人様、ウジチャンはプニプニして欲しいレフ』 「大丈夫だミドリ!!お前達は俺が絶対に・・・」 ガシャーン!!!! 誰かは分からないがシャッターのない風呂場やトイレの窓ガラスを割って無理矢理愛護派の家に突入を始め それを合図に締め切ったシャッターすらも蹴り破って多くの人間が雪崩れ込んだ 「いたああああああああああああああ!!!」 「一億は俺のモノだあああああああ!!」 『デギャアアアアア!!ご主じ』 「うわああああミド」 「一億はどこいったあああ!!」 『レピャ!!』『チベッ!!』 「邪魔してんじゃ」 「ぶっ殺」 最早実装石争奪のはずが興奮した者同士のバトルロイヤルに変わり果て、この騒ぎで3人(家主含む)が死亡する事件となった (因みに実装石一家はこのバトルロイヤルの最中に踏み潰されて偽石も残さずひき肉となった) なにもこの惨事は愛護派だけに降り掛かった訳ではない、実装石を所有している虐待派や実験派の家で同じような惨事が発生していた 流石に懸賞金のせいで死人が出だした事に気まずくなったローゼン社の懸賞金中止を皮切りに9割近くの企業が懸賞金を取り下げた しかし・・・それでも『全ての』企業が取り下げた訳ではなく、これからも実装石に関わる者達には容赦のない不幸が降り掛かる事となった そして・・・・・・・・ ここはローゼン社のとある自販機コーナー前、 「おい、知ってるか『』、会長の事」 「みんな知ってるって、どっかに2〜3日出張に行って帰って来たときにはめちゃくちゃ不機嫌になってるって話だろ」 二人の社員は自販機でコーヒーを買いながら休憩中のお喋りのようだ 「じゃあさ、ドコに行ってたは知らないだろ」 「知ってるのか?」 「噂なんだけどよ、なんでも大分県の支社って話だぜ」 「え?ウチの会社って大分に支社あったの?そんなのオフィシャルやHPにも紹介書いてないだろ」 「あくまで噂だよ、でもさ、大分県に行ってたのは間違いないってよ」 「は〜・・・実装石が全滅間近だって言うのにノンキなじいさんだね〜」 そう言いながら、一人の社員はコーヒーを飲んだ 「実装石全滅か〜・・・・な〜んか実感わかね〜な〜・・・・あのデタラメ生命体って言われてたあの糞蟲がね〜・・・」 もう一人の社員も煙草を吸いながら遠い目をして呟いた 「大分支社・・・・か・・・・・・・・ホントにあんだろうかね〜」 「さあな、まっそんな事より仕事しようや」 「だな」 二人は空き缶をゴミ箱に捨てて自分達のオフィスに向かった 一方、件のローゼン社の会長は一人自室で何かを考えていた 「このシンクロニティ・・・・誰かの差し金なのか?・・・・・もしそうだとすれば大分の『アレ』が自己修復を始めたのも説明がつく・・・・ となれば急いで見つけて殺さねばならないな・・・『最後の子』を・・・・おそらくはもう産まれているかあるいは・・・・・」 そこまで呟いて会長は椅子から立ち、窓辺から外を見下ろした 「必ず見つけ出すからな、『最後の子』よ。この椅子を脅かす者は誰であろうと絶対に殺す」 誰に言うでもないその言葉には明らかなる殺意が篭っていた 実装石崩壊黙示録・2 に続く・・・・・・かも(仕置実装はもうちょっと待って)
