タイトル:マラ マラ マラ 中編
ファイル:パンチョ4・中編.txt
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初投稿日時:2011/01/30-02:37:10修正日時:2011/01/30-02:37:10
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【パンチョ第4話・マラ マラ マラ(中編)】


公園で野良の親指実装をゲットしたオレは息を切らせてチャリを漕ぎ、我が家であるワンル
ームアパートへ帰宅した。
予定より帰宅時間が遅くなってしまったがパンチョはどうしてるだろうか。マラ実装ももう
復活しているだろう。オレは買って来た荷物を抱え急いで自室へと入った。
風呂場のほうからデスデスと喚く声が聞こえる。やはり既に回復しているようだ。まったく
やかましい…。はやく処置をしないとお隣さんから苦情が来てしまうな。
一方パンチョはというとハウスの中で眠っていた。目には涙の跡が見える。

「パンチョ! おい、起きろ」

そんなパンチョを優しく起こしてやると、寝ぼけた顔でフラフラとハウスから出てきた。

「ただいま。 お前にお土産を持ってきたぞ!」

そう言って袋から親指実装を取り出す。
あれ…? 親指実装はぐったりとして動かない。 息はしているので死んではいないようだ
が…。
どうやら気絶しているらしい。おそらくハンドルに引っ掛けた袋が揺れすぎたせいだろう。
まあそのうち目覚めるだろうからそのままパンチョに渡してやる。

「テェェェ…! 本物の親指チャテチ!!ちゃんと生きてるテチィ!! ワタチ、ホントの
 オネチャになれるテチ! ニンゲンママ、ありがとうテチュ☆」

気絶してる親指を抱いてクルクル回るパンチョ。気持ちはわかるが今はあんまり揺らさない
方がいいと思うぞ。心なしか親指の顔色が更に悪くなってるから…。

「テッテロテー♪ テッテロテー♪」

パンチョはリズムも音程もズレた子守唄(?)を歌いながら嬉しそうに親指を抱いている。
とりあえずこっちはオッケーだ。さて、未だデスデスうるさいマラ実装の様子を見に行って
みるか。

風呂場はむわっとした糞の臭いで満ちていた。相変わらず目にしみるような臭いだ。
オレが風呂場に入ったのを気配で感じたのか更に大声で喚き出すバスタブの中のマラ実装。
オレは両手にゴムの手袋をはめ、重しにしていた風呂桶をどかしてバスタブのフタを取り外
した。

「うおっと!!」

フタを開けた瞬間に飛んできた糞をフタの裏で受け止める。風呂の中は糞地獄と化していた。
仮死していたマラ実装はすっかり回復している。頭の傷はもちろん、あれだけ叩いて腫れあ
がった体も元通りだ。まったくこいつらのデタラメさには驚かされる。

「デシャァァァッ!! このクソニンゲン!私をこんなとこに閉じ込めるとはどういうつも
 りデス!!  ぶん殴ってやるからとっとと出しやがれデスゥ!!」
「元気そうでなによりだ。 でもな、お前なんかに殴られたって痛くも痒くもないが、殴ら
 れるためにわざわざ出してやると思うか?」
「ドレイニンゲンは黙って私の言うとおりにすればいいんデシャァ!!! いっちょ前に高貴な
 私と口をきくなデス!! 糞でも食って反省しやがれデスゥ!!」

そう叫んで再び糞を手に取り振りかぶるマラ実装。
おっと、正直それが一番困る。つるりとしたバスタブ内なら簡単に洗い流せるが周りに投げ
散らかされたら後で掃除が大変だ。
オレはマラ実装が糞を投げる前にあらかじめポケットに忍ばせていた『買ってきたアイテム
その①』を取り出して見せ付ける。

「じゃーん! これなーんだ?」

あっさりとマラ実装の目はそれに釘付けとなり、手にしていた糞をどちゃっと落とした。

「デデッ!?金平糖デスゥ!! 寄こすデス、クソニンゲン! 早くしろデス、ウスノロ!」

言われなくともくれてやるさ。
オレは摘んでいたそれをポイッと糞まみれのバスタブに放り込む。

「デッスーン☆」

マラ実装は嬉々として飛びつき、一緒にすくった糞ごとズゾッと口の中に吸い込んだ。そし
てボリボリと噛み砕く。

「デスーン! あんまいデスゥー☆ ようやくクソニンゲンもドレイとしての自覚が持てた
 ようデスー。 でもまだまだ教育がなってないデス。たった1粒で足りるわけないデス。
 何してるデス? 言われなきゃわからないデスかこの無能ドレイ! さっさとおかわりを
 持ってこいデス!この箱いっぱいに注ぐデス!セレブな私を金平糖風呂に入れるデス!!」
「やなこった(即答)」
「デェッ!?」

信じられないといった表情で絶句するマラ実装。
たった1粒の金平糖でどこまで妄想を走らせていたのか…。1粒300Mどころじゃないな。

「デシャァァァッ!! お前は本当にクズデスゥ!! まだ立場がわかってないんデス!?
 だったら教えてやるデス!禿裸にして糞を塗りたくってやるデス! 覚悟するデボッ!!」

再び糞をすくって構えたマラ実装の顔面に拳を叩き込む。顔が陥没したマラ実装は鼻血を噴
きながら糞まみれのバスタブに倒れこんだ。
さあここからが本番だ。
顔を抑えて転げ回っているマラ実装の服を脱がす。
頭巾、前掛け、ワンピース、パンツ、靴に至るまで次々と奪っていく。マラ実装も抵抗する
が大した力でもない上に服の作りが簡単なのであっさりと脱がすことができた。

「や、やめるデス! お前そっちの気があったデス!? 突っ込むのは好きデスが掘られる
 のは嫌デシャァ!!」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇ!!」
「デギャッ!!」

届かない手で必死に尻を隠す仕草が癇に障り、思わずもう1発殴ってしまった。
顔面に続き頭頂部までヘコまされ、目を回してフラフラするマラ実装。おとなしくなったの
は好都合だ。今のうちに『買ってきたアイテムその②』のセットに入る。
それは中に薬品の入った小さな使い捨てのアンプルだ。キャップを外すと先端に小さな注射
針が付いている。それをマラ実装の亀頭辺りに押し当てると内圧で中の薬品が素早く注入さ
れた。針があまりに細く短いためほとんど無痛なんだそうだ。
さて、これであらかた準備は整った。お次はこの糞まみれのマラ実装とバスタブを洗わなく
ちゃならない。
オレはピヨッてるマラ実装にシャワーで冷水をぶっかけた。
それが気付けとなり正気に戻ったマラ実装は冷水から逃れようと狭いバスタブの中で右往左
往する。

「デジャァァァ!! つ、冷たいデスー! やめろデス、バカニンゲン!」

やめろと言われてやめるようなら最初からやっちゃいない。隅々まで念入りに水をかけて糞
を洗い流した。
10分も続けるとジタバタしていたマラ実装の動きも鈍くなってくる。実装石は温度変化に
弱いのだそうだ。冷たいのはもちろん熱いのもダメ。ひ弱な蛆実装に至っては母親の体内と
外気温度との差に耐えられず、夏や冬には生まれた瞬間にパキンしてしまうものもいるらし
い。
それはさておき、排水溝へ流れる水がようやく透明になってきたところでシャワーを止めた。
マラ実装は自らの体を抱くようにしてガタガタ震えている。その後ろ髪を掴んで持ち上げ、
オレは『買ってきたアイテムその③』である『防音水槽』へマラ実装を放り込んだ。
一番安かった幅45×奥行30×高さ30cmの狭い水槽だ。安物だけあって完全防音とは
いかないが、フタまで閉めてしまえば音が外部に漏れることはほとんどなくなる。こいつは
とにかくデスデスと騒がしいので友人が引き取りに来るまでこの中に閉じ込めておくことに
した。

「デデッ? なんデスこれは! さっきより狭いデス!こんなとこに入れるなデシャァ!!」

当然ながらマラ実装が文句を言ってくる。だがそれは自業自得というものだ。

「お前がおとなしくしてたなら少なくともパンチョ用のケージの中での自由は与えてやった
 し、餌だってくれてやったんだ。でもお前はこうでもしないとおとなしくなんかできない
 みたいだからな。友人が来る3日後までお前にはその中にいてもらう。当然餌も抜きだ」

そう言って水槽の縁よりは身長の高いマラ実装の頭を押し込むようにしてフタを置き留め金
でがっちりと固定した。これで中からフタを開けることはできなくなった。ウレタンボディ
と貧弱な腕力では堅固な防音ガラスを割ることも不可能だろう。
マラ実装の身長は40cm程。この水槽の中では横になれば足は伸ばせるが立ち上がること
はできない。せいぜい座るか中腰になるしかなかった。
人間起きて半畳、寝て一畳。糞蟲にはこれだってもったいないくらいだ。
もっとも入れられたマラ実装は当然この待遇が不満な様子。

「ふざけるなデシャァ!! とっとと出せデス、このバカニンゲン! 早くしないとウンコ
 ばら撒くデス! 賢い私は知ってるデース。ニンゲンは高貴な私のウンコが弱点デス!
 投げるといっつも泣いて逃げるデスゥ。 お前もそうなりたくなければさっさとここから
 出して土下座しろデス! そしてお詫びに金平糖風呂を用意するデース!!」

うーん、何か言ってるようだがほとんど聞き取れない。わずかにデスデスと声が漏れている
が小さすぎてリンガルも変換できないようだ。集音モードにすれば別なのだろうけどわざわ
ざそうまでして糞蟲の言うことを聞いてやる義理もない。 
こちらが無反応なのに腹を立てたのか、水槽の中でマラ実装は和式便器に跨るようなポーズ
をして力み始めた。大方得意の糞投げでもしようというのだろう。ほぼ密封されている水槽
内でどこに投げるつもりなのか…。
とは言え臭いは普通に漏れるのでそのまま糞をされるのは望ましくない。だが対策はすでに
済ませてあるので大丈夫なはずだ。
しばらくマラ実装は顔を真っ赤にして力んでいたが、糞は一向に出る気配がなく遂にバテて
座り込んでしまった。荒い息をしながら自分の尻を不思議そうに撫でる。
糞が出なくて当たり前。原因はさきほどオレがマラ実装に食わせた『買ってきたアイテムそ
の①』にある。一見金平糖にも見えるそれの正体は虐待派ご用達の『裏ドドンパ』という薬
品だ。
人間には無害な実装薬シリーズのひとつで“便秘強制薬”とでも言うのだろうか。これを食
った実装石はドドンパ等の対になる薬品で中和するか、腹を掻っ捌いて薬品の影響下にある
糞袋を摘出した後再生するかしない限り、二度と糞や出産といった“総排泄口を通して出す”
行為ができなくなるらしい。
ちなみに親指実装と引き換えにこれを食いまくった公園の実装親子の運命は推して知るべし。

初めて使った裏ドドンパが期待通りの効果を発揮してくれたことを確認し、オレはマラ実装
の入った水槽を抱えて風呂場から部屋に戻り部屋の隅にそれを置いた。
世話をする気がないとはいえ念のため監視する必要はあると考えたからだ。
往生際悪くまたしても何か言いながら踏ん張っているが無駄無駄ァ!
さあこれでマラ実装の方はとりあえず片付いた。さーてパンチョと親指の様子はどうかな?

「…って、なんだこりゃ…!?」

床のいたるところに緑の斑点ができている。部屋に漂う異臭は間違いなく実装糞の臭いだ。
その床を全身糞にまみれた涙目のパンチョが四つん這いになってティッシュで拭いていた。
さらにその背中には親指実装が跨り、パンチョの耳を引っ張りながら奇声を上げている。
声で部屋に戻ってきたオレに気付いた2匹。まず親指がパンチョの背から降りてオレの足元
へ駆けて来た。パンチョに輪をかけた遅さだ。その後ろからパンチョがおずおずとついて来
る。

「レッチューン☆ ニンゲンサン、おなかすいたレチ。約束のコンペェトーを寄こすレチ!」
「お、親指チャダメテチ! ニンゲンママにワガママ言ったらいけないテチ! ウンチもキ
 レイキレイしないと怒られるテチ!」
「うっさいレチ! ハゲハダカのドレイがワタチにイケンするなレチ!」

あっちゃー! こいつも糞蟲か…。 あの家族の中ではまだまともそうに見えたんだけどな
ぁ。
なんてことはない、対格差からこいつが一番格下で威張る相手がいなかっただけだったよう
だ。日々の鬱憤をずいぶん溜め込んだことだろう。そんな時に憧れの飼い実装になり、浮か
れてるところに禿裸がいた。パンチョは名前の由来通りパンツは穿いているのだがその程度
では裸と扱いに変わりないようだ。
初めて自身より格下の相手に出会い存分に糞蟲要素を開花させたといったところか。
まったく、パンチョが同じように糞蟲だったらお前もとっくに禿裸に剥かれてるか食われて
るところだぞ。髪や服の有無で階級が決まっても所詮は親指、仔実装のパンチョが力できた
ら勝てるわけがないだろうに。

「ダメテチィ。金平糖は晩ごはんの時だけって決まってるんテチ。 ワガママ言ったらニン
 ゲンママにイタイイタイされちゃうテチ!」
「レッチャァァァ!!ドレイがコウキなワタチにオコゴトレチ!? ナマイキレチ!こうし
 てやるレチィィィ!!」

唐突に親指はパンツを脱ぐとしゃがみ込み、ブリュブリュと糞を垂れた。そしてそれをすく
い上げるとパンチョに向かって投げ始める。

「や、やめるテチ! そんなことしたらダメテチ! ウンチはおトイレでするんテチィ!」
「レプププ…! おまえバカレチ? ウンチはしたくなったらすればいいんレチ。 それを
 片付けるのがおまえのヤクメレチ!」

糞を投げ続ける親指。パンチョに当たろうが外れようが部屋に糞が飛び散っていく。
体格のせいかパンチョやマラ実装に比べると臭いはまだマシだが部屋に糞を散らかされて良
い気がするわけがない。
しかたない、こいつも禿裸にしておくか…。パンチョと同じ姿になれば少しは己の分っても
のがわかるだろ。
そう思って親指に手を伸ばす。ところがその手と親指の間にパンチョが飛び込んできた。

「ニンゲンママ、待っテチ! お願いだから親指チャにイタイことしないでテチ!」

両手を広げてオレから親指を庇うような仕草をするパンチョ。

「親指チャは小さい仔テチ! ニンゲンママにイタイことされたらきっと死んじゃうテチ!」
「痛くはしない。 禿裸に剥くだけだ」
「それもやめテチ! この仔はちゃんとしたカッコでいさせてあげテチィ!」
「でもなぁ…、せっかく庇ってるお前の背中、メッチャ殴ってんだけどそいつ…」
「ハゲハダカウンチマミレのくせになにさまレチィ! おまえなんかにかばわれるほどおち
 ぶれてないレチィ!!」
「テェェェ…!?」

まいったな。パンチョの情操教育も兼ねて生きた親指を連れて来たがこれはよろしくない。
これなら人形の方がまだマシだ。軽率に野良を拾ってきた自分の浅はかさを今更ながら後悔
した。
『実装石は100匹いたら99匹は糞蟲なんだから』
友人の言葉が思い出される。オレはまだ実装石を甘く見ていたようだ。
幼い親指実装ならまだ大丈夫だろうと思っていたが、幼かろうが小さかろうが糞蟲は生まれ
たときから糞蟲。実装石相手に性善説を求めたオレがマヌケだった…。
これじゃちょっとやそっと躾けたくらいじゃどうにもならなさそうだが一応力関係はハッキ
リさせとこうかと思う。しかし今回はパンチョが執拗に食い下がる。以前の躾と違って痛み
を与えてないからかパンチョがここまでオレに反抗するのは初めてだ。
うーん、仲間を庇うことは悪いことじゃないしなぁ…。仕方ない、ここは折れてやるか…。

「わかったよ、パンチョ。とりあえず今は勘弁してやる。連れて来たのはオレだしな。 そ
 の代わり、お前がしっかり面倒みろよ?」

仲間を思うパンチョの心意気に免じて親指へのペナルティーは無しにしてやった。
昼のマラ実装の件といい、自分さえよければ他はどうでもいいという性格が基本の実装石に
おいて、パンチョが他石を思いやれる愛情を持っているというのはオレにとっても嬉しい発
見だった。もっとも間引きを拒むようでは飼い実装失格なんだろうが…。
まあとにかくこんなチビの悪行ぐらい寛容な心で見逃してやるとするか!

「レププ…。なんレチ? おまえハゲハダカのいうこときくレチ? カイヌシかとおもった
 らドレイのさらにドレイレチか。媚びてソンしたレチ! オイ、ドレイニンゲン!さっさ
 とコンペェトーをもってこいレチ!! はやくしないとぶっころすレチャァ!!!」
「・・・・・。 やっぱ捻っとくか…、キュキュッと…」
「待っテチ! やめテチ! 許してあげテチィィィ!!」


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結局親指はパンチョに預けて世話を任せることにした。
親指の糞蟲っぷりは目に余るものがあるが冷静に考えると親指の体格でできることはたかが
知れている。暴れたところで何かを破壊できるわけでもないし、歯も生えてないのでパンチ
ョを傷つけることもできない。声も小さいのでリンガルを外して少し離れればもうレチレチ
と僅かな擦れ声にしか聞こえない。
唯一ところかまわず糞を垂れるのがやっかいだったが、これもマラ実装用に買ってきていた
裏ドドンパを食わせて解決することにした。
マラ実装と同じく金平糖だと言って渡したら疑いもせずに夢中で舐め始める親指。まあ味も
見た目も同じに作ってあるのだから無理はないが…。
その様子をパンチョは羨ましそうに指(腕)をくわえて見ていた。時折何かを期待するような
目でこちらをチラチラと見ていたが当然あげはしない。これもお前が選んだ道だ。耐えきっ
てみせろよ?
パンチョは金平糖(裏ドドンパ)をもらえないと知った親指は、

「あー、コンペェトーはおいしいレチー♪」

などとことさら見せ付けるようにベロベロと舐めて完食した。
少し不憫に思ったオレは金平糖こそあげはしないものの、目に涙まで溜めて耐えたパンチョ
の頭をグリグリ撫でてやった。パンチョは嬉しそうにテッチュと鳴いてオレの手に擦り寄っ
てくる。
それが気に入らなかったのか親指はまたしてもウンチングスタイルでキバり出すがこいつも
もはや自らの意思で脱糞はできない体だ。散々力んでも得意の糞が出せず、癇癪を起こした
親指はひとしきり悪態をつくとハウスの中に引っ込んで不貞寝してしまった。
マラ実装と親指実装、共に糞蟲なだけあって行動パターンがほぼ同じだ。
ちなみにマラ実装が水槽に閉じ込められたことでハウスやトイレなどはケージ内に戻されて
いる。親指実装サイズでは縦格子の隙間から出ることができてしまうのでケージはサランラ
ップでグルリと巻いた。これにも親指が文句を言ってたが知ったこっちゃない。
ともあれ問題児が寝入ったことでようやくパンチョは自由になれた。
親指が目覚めてから1時間と経ってないがパンチョの疲れっぷりは見ていてかわいそうなほ
どだ。
とりあえず糞まみれのパンチョをお湯で洗ってから部屋の中で自由にしてやった。いつもな
ら喜んでテチテチ言いながら走り回るのだがそんな元気はないらしい。

「なあパンチョ。ホントにいいのか? なんだったらもっとマトモな親指と変えてやるぞ?」

だがパンチョは首を横に振る。

「大丈夫テチ! 親指チャはまだ小さくてムズカシイことがわかんないだけテチ。ちゃんと
 ワタチがイモチャとして立派に育てるテチ!」

初めての妹分か…。無駄に張り切ってるなぁ。
オレはネットで得た情報を思い出す。今のパンチョは愛情深い実装石の初産の状態に近い。
とにかく生まれた仔全匹を育てようとし、糞蟲でも間引くことを躊躇してしまう。だが結局
はそれが原因で家族が危機に瀕するのはよくある話だ。そこから運良く生き残れたなら親実
装は手痛い授業料と引き換えに間引きの重要さを学び、次から我が仔であろうと糞蟲には容
赦しなくなるのだそうだ。
ちなみに飼い実装にもこれが当てはまるが、糞蟲を育ててしまいなおかつ間引きに逆らった
ものは大抵親子共々捨てられるか処分されてしまうので学んだ時にはすでに手遅れだったり
する。
まあ今回はこの糞親指を連れて来てしまったのはオレだし、パンチョの愛情深い一面を見れ
たりとオレにも原因とメリットがあるのでこいつが諦めるまで待ってやることにしよう。

「ん…?」

ふと見ればパンチョはオレの足にもたれかかって眠っていた。よっぽど疲れたようだ。
オレは起こさないように、と言ってもちょっとやそっとじゃ起きないが、とにかくゆっくり
とパンチョを持ち上げてハウスの寝床へ運んでやろうとした。

「デスー…」

部屋が静かになったその瞬間、かすかに聞こえた鳴き声と気持ちの悪い視線を感じて振り返
る。
部屋の隅に置いた水槽。その中のマラ実装がガラスにへばり付くようにしてオレを…、正確
には手の中のパンチョを見つめていた。その目は血走り、荒い息を吐く口からはヨダレがダ
ラダラと垂れている。
ああ、そういやいたっけ。親指騒動でこいつのことをすっかり忘れてた。
オレが見てることに気が付いたマラ実装はガラスを叩きながら叫ぶ。

「クソニンゲン、そいつを寄こすデス! ヤらせろデスッ!! 逞しい私のマラでよがらせ
 てやるデシャァ!!」

何言ってんだかさっぱりわからん。
防音水槽から僅かに漏れる声では通常モードのリンガルは翻訳できない。だが雰囲気的にど
うやらパンチョに欲情しているようだ。はちきれんばかりに膨らんだマラがビクンビクン脈
打っていて正直見るに耐えない。
オレは無視してパンチョを親指の隣に寝かせた。マラ実装と違い親指は本当に寝てるようだ。

「デシャァァァッ!! このバカニンゲン! 私は寄こせと言ったデス!! その禿チビも
 親指もブチ込んでやるデス! さっさとここから出しやがれデスゥゥゥ!!!」

何か叫びながら水槽をぽすぽす叩くマラ実装。目の前にはパンツ一丁の仔実装。
人間で言えば幼い少女がパンツ姿で寝てるようなもんだろうか? 禿だけど…。
だからこそこいつもうちに来た時はパンチョの姿を嘲っていた。だが最後に抜いたのがいつ
かは知らないが、少なくともオレに捕まってからは1発も射精していない。
常にヤリまくり出しまくりという正常なマラ実装としてはもう辛抱溜まらんのだろう。侮蔑
より性欲が勝って禿なんか気にならなくなったようだ。

「デスッ! デスッ! デスッ!」

オレにパンチョを渡す気がないことが分かったのか単に我慢できなくなっただけなのか、マ
ラ実装はその巨大なマラを抱きかかえるようにしてシゴきだした。
持て余した性欲をオナニーで発散させるつもりらしい。
だがそうは問屋が卸さない。

「デスッ! デスッ! …、デ?」

しばらくシゴいていたが唐突に何かに気付いたようにマラを見つめて止まるマラ実装。
自身のマラを叩いたり舐めたりつねってたり、挙句の果てには噛み付いてみたりしている。
そして赤く高揚していた顔がサーっと蒼白に変わった。

「ど、どうなってるデス!? 私のマラが何も感じないデス! これじゃ気持ち良くなれな
 いデスゥ!!」

マラ実装は必死になってマラに刺激を与えようとあらゆる方法を試している。だがそのどれ
も効果がないらしくマラ実装は性欲の捌け口を失って悶絶していた。どうやら『アイテムそ
の②』もしっかり効いているようだ。
オレがマラに打ち込んだアンプルの中身は実装石用の麻酔である。分類上は『実装シビレ』
の一種にあたる。全身ではなく、打ち込んだ箇所の周囲に効果を及ぼす局部型のシビレだ。
これを打たれた実装石は腕なら腕、足なら足といった具合に打たれた部分の感覚が一切無く
なってしまうらしい。
元々は愛護派による飼い実装の偽石摘出などの際に使うことを目的に作られたものだそうだ。
もっとも実際には実装ネムリなどの全身麻酔型の方が使われることが多く、今はあまり売ら
れなくなった商品だ。
むしろ最近はこの麻酔を施した箇所を意識のある本石の目の前で解体し、『無痛による恐怖』
を与えるという虐待のバリエーションアイテムとして使われることの方が多いらしい。デス
ハウスはこういうマイナーアイテムもしっかり扱っているあたり実装関係者から人気の店と
いうのも頷ける。
はたしてこれがマラにも効くのかと不安もあったがその心配は杞憂だったようだ。
マラ実装に夢精というものはないらしいので刺激による快楽以外での射精は不可能だ。糞と
射精の両方がしっかり抑制されたことに満足し、水槽の中で苦悶の表情で悶えるマラ実装を
尻目にオレは途中になっていたネットサーフィンを再開した。


—————————————————————————————————————————


日も暮れてきた頃パンチョが起きてきた。

「テッチューン☆ テチュテチュ♪」

餌用の小皿をぺすぺす叩いてアピールしてくる。少し眠って精神的な疲労から回復したよう
だ。 単に忘れただけなのかもしれないが…。
時計を見れば17時を回っている。そろそろオレも腹が減ってきたな。パンチョ達に餌をや
ってから自分も飯にしよう。
オレが実装ピーターパンの小袋を取ってくると嬉しそうにパタパタと走るパンチョ。そこで
ふと思い出したようにハウスの中に駆け込むと中で寝ていた親指を揺すって起こし始めた。

「親指チャ! 親指チャ! 起きるテチ、ごはんテチ!」
「レファーァ…。 ドレイのくせにワタチのねむりをジャマするなレチ…」

寝ぼけた親指はパンチョに手を引かれてハウスから出てきた。
オレはパンチョ用の皿の隣に親指用にお湯でふやかしたフード2粒の入った小皿を置いてや
る。親指の体格からして2粒もあれば十分だろう。
ちなみにこの小皿はパンチョが我が家に来たての頃につかっていたやつだ。
寝ぼけていた親指は目の前に出された初めてのフードに目を丸くし、次の瞬間には飛びつい
て自身の頭ぐらいあるそれを抱きかかえるようにして食べだした。

「レチャァァァ!! ウマウマレチ!ウマウマレチ!」
「親指チャ、こぼしたらお行儀わるいテチよ」

と言いつつパンチョも閉じきらない口からポロポロ食べカスを落としている。
パッと見仲睦まじい姉妹の食事風景だ。 うんうん、こういうのは見てて和むなぁ。

「レヂィ…!なんでドレイのくせにワタチよりいっぱい食べてるレチ!? ナマイキレチ!
 これはコウキなワタチの食べ物レチ! おまえのもぜんぶ寄こすレチ!!」

嗚呼…、やっぱりこうなるか…。
今まではパンチョが1匹で食べていた1袋10粒入りの実装ピーターパンを今回は2匹で分
けている。体格から親指は2粒、パンチョはその分減って8粒だ。
だが親指は自分の分が少ないのが気に入らないらしく、まだ自分の1粒目すら食べ終わって
ないのにパンチョの皿から新たに1粒奪い取った。
しかし歯の生えていない親指実装ではふやかしていない固形のフードは固くて食べられない。
しばらくあぐあぐとしゃぶっていたがやがてベッと吐き捨てた。

「なんレチ、これは!? かたくてパサパサしてて食えたもんじゃないレチ! こんなのを
 うまそうに食ってるおまえはアジオンチのバカレチ!」

親指は吐き捨てたフードをゲシゲシと足蹴にし、自分の分をクチャクチャと歯のない口で咀
嚼しながらパンチョに見せ付けている。自分の方が旨いものを食べてるところをアピールし
て昼間の金平糖(裏ドドンパ)の時のように羨望の眼差しで見られたいんだろうが、パンチョ
は元が同じものであることを知っているし何より自分の分を取られる心配がなくなったので
むしろ嬉しそうだ。
それどころか噛んでペースト状にした自分のフードを親指に分けてあげようとする余裕さえ
見られる。もちろん親指はそれがおもしろくないので差し出される度に払い落としていた。
相手より少しでも優位に立つことで自尊心を満たそうとするのが糞蟲の性。奴隷だと思って
いる禿裸から食べ物を奪う、あるいは貢がせるのならともかく、分け与えられるなどという
のは自分の方が格下に扱われているようで受け入れられないようだ。
ちっぽけなプライドが満たされずツマらなそうに餌を食べる親指。だがその様子に希望通り
の羨望の眼差しを向けるものが1匹だけいることにこいつは気付いていなかった。
その1匹とは無論、水槽の中のマラ実装である。
口から滝の様なヨダレを垂らしてパンチョと親指の食事風景を食い入るように見つめていた。
オレが見ていることに気付くとしきりにガラスを叩いて何か叫んでいるが例によって防音水
槽に遮られてこちらその音や声が届くことはない。
しばらく見ていると突然マラ実装は四つん這いになりこちらに向けた尻を左右に振り始めた。
どうやら誘惑しているつもりらしい。掘られるのはイヤだと言っていたが餌のために体を売
る覚悟を決めたということか。
逆に腹立たしいな、オイ…!
気持ち悪くて見てられないので目線をパンチョ達に戻す。
2匹はちょうど食べ終わったところだった。相変わらずパンチョは落とした食べカスまで拾
い集めて口に運んでいる。

「ニンゲン! ごはんのあとはデザートレチ! はやくコンペェトーをもってこいレチ!」

一方の親指は早くも金平糖を求めて喚いていた。

「親指チャ、ニンゲンママにそんな言い方しちゃダメテチ!」

パンチョが戒めるがそれを素直に聞くような親指じゃない。禿裸に注意されたことでむしろ
逆上し、パンチョにとっても大したダメージにならないストンピングを食らわせている。
それに対してパンチョはオロオロしながらやめるように言うだけだった。
どうやらパンチョは愛情はあれど躾ができないタイプのようだ。立派に育てると言っていた
がこの様子じゃ前途多難だなぁ。
親指の糞蟲っぷりは最初はオレ自身がムカついて仕方なかったが、今はこの糞蟲をパンチョ
がどう躾けていくのかに興味がある。もっともここまで躾らしい躾はまるでしていないが…。
まあそれも昼のマラ実装のようにパンチョに直接被害を加えるようならば話は別だったが、
仔実装と親指実装の体格差ではそれも不可能なようだ。しばらく様子を見るとしよう。
オレはとりあえず食後のデザートを2匹分4粒渡してやった。

「すくないレチ! こんなんでワタチがマンゾクするとおもうレチか! ハゲドレイ、おま
 えのぶんもよこせレチャァ!!」
「テェェェ…! これだけは譲れないテチィ! 親指チャはさっきもひとつ貰ってたテチ」

これじゃ足りないと喚く親指。さすがのパンチョも1日たった2粒の嗜好品である金平糖ま
では分けられないようだ。慌てて2粒同時に口に放り込み、口内に広がる甘味に顔を緩ませ
る。その背中を親指が殴る蹴るしているがトリップした頭では気にならないらしい。
さて、こいつらはこれでいいとしてオレも飯にしよう。割引券の有効期限も迫ってることだ
し今日は久々に吉野家でも行ってこようかな。
恍惚とした表情を浮かべているパンチョ。癇癪を起こして暴れている親指。水槽の中で悶え
ているマラ実装。三者三様の有り様を見せる実装石達を残してオレは部屋を後にした。


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「ただいまーっと」

結局吉野家で牛丼をかっ込んだ後、コンビニで立ち読みなどして帰宅したのは1時間ほど経
ってからだった。
部屋に入るとレチャレチャと親指の歓声が聞こえてくる。どうやら遊んでいるようだ。
ちなみにオレの部屋はベランダの真正面に街灯があるため夜でもカーテンを閉めないとかな
り明るい。さすがに人間が暮らせるほどの光量はないが実装石達が活動する分には十分な明
かりで照らされている。この街灯のおかげで夜目が利かない実装石のパンチョも、オレが出
かけるときにカーテンを開けておくことで日が暮れてからもトイレに行ったり遊んだりする
ことができたのだ。

パチッ
「テチャッ!?」

とは言え当然ながら実際に室内灯を点けたとき程の明るさはない。なのでこうしていきなり
蛍光灯を点けられると一瞬目がくらむようだ。
今回パンチョと親指はミニカーで遊んでいた。親指の乗ったミニカーをパンチョが押して歩
いていたようだが、突然点いた室内灯のまぶしさに目のくらんだパンチョは前のめりに思い
っきりズッコけた。
必然的に押していたミニカーに力が加わり、押し出されたミニカーは親指を乗せたまま勢い
良くダンボールハウスの側面にぶち当たる。

「レビャッ!」

したたかに前面を打ちつけた親指が跳ね返って転がった。

「テチャァッ!! 親指チャ、ごめんテチ! だいじょうぶテチィ!?」
「レヂャァァァ!! なにやってるレチ、このムノウドレイ!! ワタチがケガしたらどう
 するレチ!? 死んでわびろレッチャァ!!」

昔の親指は転んだだけで死ぬほど脆かったという…。そう思うと頑丈になったもんだよなぁ。
友人に言わせればこれも進化なんだろうか?
まあどうでもいいや。それよりそろそろ風呂に入れる時間だ。
いつもは餌をやって少し遊ばせたら入浴させることにしている。
実装石の体臭は非常に臭い。獣臭とも違う独特の臭気を常に放っている。
毎日綺麗な風呂に入れて体を洗えば気にならない程度まで抑えることもできるがたった1日
空けただけでもう饐えたような臭いが漂い出す。綺麗な風呂はおろか満足に水浴びもできな
い野良実装があそこまでクサイのも頷けるってもんだ。
それに気付いてからは例えどんなに疲れてて自分が風呂に入らずに寝てしまおうともパンチ
ョだけは風呂に入れるようにしていた。
さて、もみ合って転げ回っている2匹を摘み上げて風呂場へ運ぶ。中桶にお湯を張り風呂の
準備ができるとパンチョはまず自身のパンツの洗濯から始める。計量カップで小桶にお湯を
注ぎ、脱いだパンツを入れて両手でモミモミと揉む。
小桶のお湯がじわっと薄緑に染まるが、パンツ1枚ということと毎日キチンと洗ってること
もあり3回も繰り返せば水は濁らなくなった。
問題は親指の実装服だ。当然のようにパンチョに自身の服一式を押し付けた親指実装。自分
で洗おうという気はさらさら無いようだ。
パンチョがどうにか洗濯を教えようとしていたがまったく話を聞こうとしないし、やり方を
見ようともしない。
さっさと中桶の中に入り込むと生まれて初めてであろう温かい風呂に「レチューン♪」とご
満悦な様子で浸かっている。
一方のパンチョは必死に親指の服を洗濯していた。親指の実装服は今までに一度でも洗った
ことがあるのかと疑いたくなるほど汚れが酷い。お湯に浸けるとあっというまに緑に濁り、
何度交換してもその繰り返しでなかなか薄くなる様子が無い。
今までロクに洗濯も水浴びもしてこなかったんだろうなぁ。
それでもパンチョの努力の甲斐あってようやく僅かに濁りが薄くなってくる。だがその頃に
はパンチョの手は擦りすぎで赤くなっていた。それでも洗濯を続けようとするパンチョ。
オレがいい加減な洗濯をしないよう躾けたせいだな。
今日はもういい、と言ってやるとホッとしたような顔でパンチョも中桶の中へ。

「テチュゥー♪ あったかオフロ、気持ちいいテチー☆」

そうしてしばらく2匹で風呂に浸かり、体がほんのり赤みがかってくると次は体を洗う番だ。
桶から出たパンチョはあらかじめオレが小さく切り分けておいた石鹸を手に取り、両手で揉
んで泡立たせるとそれを体に擦りつける。やがて顔以外がモコモコの泡に包まれるパンチョ。
その泡が徐々にウグイス色に染まっていく。
以前は爪の無い手でいくら擦っても大して汚れが落ちないんじゃないかと思っていたのだが、
脆い実装石の皮膚はその程度の刺激でも十分に垢が落ちるようだ。
手の届く範囲をひと通り洗い終えたパンチョはお湯を浴びて全身の泡を流す。ここまで教え
込むのもなかなか苦労したもんだ。
いつもならこれで風呂は終了だが今回は親指がいる。蛆と並んでチリィと言われている親指
の体を人間が洗うのは何かと危険だ。ここはパンチョにもうひと頑張りしてもらおうか。

「大丈夫テチ! ワタチに任せるテッチュン!」

その旨を伝えるとパンチョは言われるまでも無いと胸を張る。

「親指チャ、こっち来るテチュ。 オネチャがキレイキレイしてあげるテチー☆」
「レププ…。ハゲハダカがオネチャとか笑わせるレチ! 来てくださいのマチガイじゃない
 レチー?」

と言いながらも泡にまみれていたパンチョを興味深げに見ていた親指はイソイソと桶から出
てパンチョの元へ走っていった。
パンチョがその体にたっぷりと石鹸を塗りつけてゴシゴシと擦り始めると瞬く間に白かった
泡が深緑へと変わっていく。まるで抹茶カプチーノのようだ。死んでも飲む気にはならない
が…。
それにしてもこいつらパッと見は白いのにこの緑はどこから出てくる色なんだろうか?
汗なのか…? 垢なのか…? まあ白人だって垢は黒っぽいんだから別におかしくはないん
だけどさ…。
しょうもないことで考え込むオレを他所に実装石2匹はそれなりに楽しそうにしている。

「テチューン♪ 親指チャのお髪はキレイテチ! こうすればもっとキレイになるテッチ!」
「コーキなワタチのお髪がキレイなのはあたりまえレッチィ。 ハゲのオマエにはないカガ
 ヤキレチュー☆」

パンチョは親指が初めて言うことを聞いてくれたのが嬉しいらしく、親指はいい香りのする
(安物の石鹸だが)泡に包まれて自慢の髪を見せつけるのが楽しいらしい。
お互いに思うことは違うようだが一応仲良くはやっている。さすがは日本が誇る風呂文化。
昔の人は言いました。イザコザがあったら風呂へ入れと!

風呂から上がったらドライヤーで乾かしてやったパンツと服を渡してやる。

「ありがとうテチ! ニンゲンママ☆」
「なかなかのモテナシだったレチ。 これからもショージンするレチよ」

オアイソするパンチョと小生意気な口をきく親指。2匹を部屋に連れ帰りケージ内に放して
やると風呂で乾いたのか2匹揃って水皿からゴクゴクと水を飲み始める。

「プハーッテチ! オフロの後のこの1杯がたまらんテッチィー!!」

こいつはたまにものすごくオヤジくさいな…。
一方で親指はというと、半目でゆらゆらしていた。どうやらさっぱりして早くも眠くなった
ようだ。
親指実装は仔実装以上に眠って過ごすことが多いらしい。蛆に毛が、もとい手足が生えた程
度の体力を維持するためだそうだ。だったらもう少しおとなしくしてればいいと思うんだけ
どなぁ。
まあ食べたいように食べ、遊びたいように遊び、疲れたら寝る。この自堕落さが実装石なん
だろう。特に親指と蛆は自立ってものがまったくできないため保護者を失った時点で実生終
了と同義なんだそうな。

「ふわぁレチ…。ヨフカシはオハダのタイテキレチィ。うつくしいワタチはもう寝るレチ…」

フラフラした足取りでハウスに向かう親指。その後をパンチョもアクビをしながら追う。

「待つテチィ、親指チャ。 オネチャも一緒に寝るテ、ヂュッ!!」

親指に続いてしゃがみ込んでハウスに入ろうとしたパンチョの顔面に親指の蹴りが入った。

「ハゲハダカがチョーシにのるなレチ! このオウチはワタチのものレッチュ! オマエは
 外で寝ればいいレチ!!」
「テ、テェェェ…」

さすがに顔面を蹴られればダメージはあるようでパンチョは顔を庇いながら後退する。その
ままハウスから追い出されたパンチョは小さく鳴いてからフローリングの床に寝転がった。
その姿はなんとも言えない哀愁を漂わせている…。

「まったく…。 おいパンチョ、それじゃ眠れないだろ? 雑巾1枚やるから布団に…」
「スピー… スピー…」

眠ったんかい!!

ホントに実装石たちの寝付きの良さは羨ましい限りである。そこだけはもう認めてもいいと
思うようになった。眠ると決めてから実際眠れるまで僅か数秒…。こいつらに不眠症ってあ
るんだろうか?
なんて思ってヒョイと見れば…。 ああなるほど、眠れないこともあるか…。

「デヂィィィィィ!」

防音水槽の中のマラ実装だ。麻酔で麻痺したマラにどうにか刺激を与えようと悶々としてい
た。
マラにはアチコチに歯型まで残っている。そうまでしても快感はおろか痛みすら感じること
がなく、溜まって持て余した性欲のせいで眠ることもできずに悶え苦しんでいた。
さらにほんの目の前に無防備なパンツ一丁の仔実装が横になっているのだ。それがますます
マラ実装を欲情させている。

「ヤらせるデスゥゥゥ!! ぶち込ませろデスゥゥゥ!!」

マラをシゴきながらすごい形相で水槽のガラスにへばり付いて口からツバを飛ばして何事か
叫んでいる。
大方ヤらせろとでも言っているんだろうが、仮にヤらせたとしてもそもそも感覚の無いマラ
では結局同じことなんだけどなぁ。

「なんでデスゥ…!? こんなに擦ってるのになんで気持ちよくないんデスゥ…!? デァ
 ァァァァァァァッ!!!」

再び頭を抱えて悶絶するマラ実装。猛った性欲を発散できない苦しみは男として理解できる
がだからといって許してやるわけでもない。
ていうかあの麻酔、一度打ったら3日は効果が続くらしい。どのみちどうしようもないんだ。
せいぜい効果が切れるまで頑張ってくれ。
悶えているマラ実装を後にオレも風呂へ入りにいく。しかし実装糞の臭いのこびり付いたバ
スタブはちょっとやそっと洗っただけではとても入る気になれず、オレは2時間近くひたす
ら風呂掃除をしたあげく精根尽き果てて結局この日はシャワーで済ませることになった…。


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ピピピ… ピピピ… ピピピ…

「む…、ううーん…」

翌朝、目覚まし時計のアラームで目が覚めた。今日は日曜、バイトがある日だ。
オレがフラフラとベッドから起き上がるのと同時に半野宿状態だったパンチョも目を覚まし
てまぶたをゴシゴシ擦りながら大きなアクビをする。
こいつは目覚ましが鳴ると朝ご飯の時間だというのを自然に覚えたらしい。
別にオレより早く起きてろーとか、起きなきゃ飯抜きだーとか躾けたわけじゃない。起きて
こなくたって一応朝飯の準備はしてやるつもりだ。
ただ最初の頃は寝坊して時間がなくなるとついうっかり餌をやり忘れて出かけてしまったり
したこともあった。そうなるともちろん昼飯も貰えないため、パンチョは夕方になってオレ
が帰ってくるまでひたすら空腹に耐えねばならず、帰宅した際にはピカッピカに舐め取られ
た餌皿の中で泣いている姿を見ることもあった。
ともかくそんな経験から目覚ましがなったら一緒に起きて忘れられないように餌の催促をす
るのがパンチョの日課になっている。

「ニンゲンママ、おはようございますテッチー♪ おなかすいたテチュ☆」

餌皿をぺすぺす叩きながらパンチョがテチテチ鳴いている。

「へいへい、ちょっと待ってろよ」

リンガルを外しているのでお互いに言葉は通じないが、何を言っているのかはだいたい分か
る。
餌を用意してやってる間にパンチョはハウスから親指を引きずるようにして連れ出してきた。

「親指チャ、朝テチ! ニンゲンママにご挨拶するテチ。 そしたら朝ごはんテッチュン☆」
「レチュー…。 ごはんレチ…?」

相変わらず寝ぼけている親指。フードを前にして徐々に覚醒していくが昨晩の様なガッツく
勢いはない。どこかつまらなそうだ。
おそらくは昨夜のパンチョとのやり取りが原因だろう。自分の方が旨いものを食べてるとい
うのを見せ付けたのに相手が無反応(同じものなのだから当然)だったのが気に入らないのだ。
根っからの糞蟲であるこの親指にとって、せっかく旨いものを食べてもそれを羨ましがる他
人、他石がいなければ楽しさ半減といったところか。
一心不乱にフードを齧るパンチョを他所に、キョロキョロと何かおもしろいものはないかと
周囲を見渡す親指。
…と、その両目がある一点で止まった。 見つけたのだ、最高におもしろそうなものを。

「デスゥー…」

それは水槽の中のマラ実装。おそらく一晩中眠れなかったのだろう。充血した目の下には黒
々と大きなクマができていた。だがそんな状態でも股間に生えるマラははちきれんばかりに
脈打っているのだから呆れてしまう。
マラ実装に気付いた親指は最初はビクッと体を震わせた。実装界に限れば暴君のごとき強さ
を誇るマラ実装を通常の実装石は無意識に恐れる傾向がある。捕まってしまえば文字通り死
ぬまで犯されることを本能で知っているからだ。
この親指実装も例外ではなかったようで突如として現れた(今の今まで気付いていなかったら
しい)マラ実装に驚き、ワタワタと逃げようとしていた。しかし実装石全般に言えることだが
彼女らは逃げるのがとんでもなく下手だ。足が遅いとかそういう話ではなく、パニックを起
こした実装石はその場をグルグル回るだけで、本石達は逃げているつもりでもまったく脅威
から遠ざかることができないのだ。それがまたパニックの原因になるという悪循環。まっす
ぐ逃げることができるというだけで普通より賢い個体といってもいいぐらいだ。
多分に漏れず我が家の親指実装も直径10cm程の円を描くようにグルグルと走り回るだけ
で一向に距離を稼ぐことができずにいた。さらにいうならパンチョはそんな親指に気付いて
もいない。比較的賢いとはいえ、そう優れた固体でもないパンチョは餌やオモチャなど楽し
いことがあるとそっちに夢中になってしまい周りが見えなくなる癖がある。おそらくこいつ
は未だに部屋の隅にいるマラ実装に気付いていないんだろうなぁ。
緩んだ表情でフードを齧るパンチョとその脇でグルグル回っている親指を見比べながらオレ
も朝食シリアルを口に運ぶ。

「チュベッ!!」

そうしてしばらく走り回っていた親指だがやがて足をもつれさせてビタンと倒れこんだ。

「ヂュゥゥゥゥ…」

打ち付けた顔面を両手で擦りながら起き上がる親指。だがその痛みのおかげで多少なり冷静
になれたようだ。

「レチュ…? あいつ、うごけないレチ…?」

狭い水槽に閉じ込められてマラ実装はこちらに来ることができない。そう気付いた親指の顔
に醜い笑みが浮かぶ。そしてトテトテと水槽まで近付いていくとマラ実装の様子を観察し始
めた。
親指とマラ実装の間にはケージの格子とそれをグルリと覆うラップ、そして頑丈な防音ガラ
スがある。どうやってもマラ実装が親指に襲い掛かることはできない。せいぜい恨めしそう
な視線を送るだけである。
そしてその視線こそ、親指実装が欲しかったものだった。

「どうしたレチー? カワイイカワイイ親指チャレチよー? 見てるだけでいいんレチー?」

マラ実装の前で自身をアピールするようにクルクルと踊ってみせる親指実装。両手を振り回
して必要以上に挑発している。それを見て生気のなくなったような表情をしていたマラ実装
の顔がみるみる赤くなっていった。

「デッシャァァァッ!! このクソチビ!こっちに来いデス!! ぶち込んでやるデス!!
 たくさん出してやるデス!! それから丸齧りにしてやるデッスゥゥゥ!!!」
「レチュー? なに言ってるレチ? ぜんぜん聞こえないレチ。 おまえ声ちいさすぎレチ
 ィ。 レピャピャ…! かわいそうなくらいミジメレッチー♪」

防音水槽に阻まれてマラ実装の声は親指に届かない。逆もまた然りなのだが雰囲気で親指に
馬鹿にされたことは伝わったらしくマラ実装は怒り心頭だ。手から血が滲むほど強くガラス
を叩き、何度も体当たりを繰り返す。しかし強くと言っても実装石レベル。その程度では頑
丈なガラスはビクともしない。その無様な姿を見て親指はますます調子付いていく。

「レピャピャピャピャ…!! バカを見てると楽しいレチィ! おまえはそこでジタバタし
 てればいいレチ。 コーキなワタチはユーガに朝ごはんレッチューン♪」

親指は未だ黙々と食事を続けるパンチョのもとに戻ると、ふやかしてある自分の分のフード
を抱えて再びマラ実装の近くまで掛けて行く。そこで座り込むとわざわざ見せ付けるように
フードを食べだした。

「ウマウマレッチュン☆ ウマウマレッチュン☆」
「デギャァァァ!! ふざけるなデッスー!! それを寄こせデス!! でないとぶっ殺す
 デシャァァァッ!!」
「欲しいレチ?欲しいんレチ? レププ…! あげるわけないレッチー♪」
「デギャガァァァァァァァァッ!!!」

う、うおお…。マラ実装の表情がとんでもないことになっている。
憤怒に歪んだ顔は実装石とは思えないほどの迫力で不覚にも僅かに恐怖しているオレガイル。
だがその怒りを一身に受けている親指はまるでそ知らぬ態度で食事を続けていた。自身の安
全が保障されているとなれば人間でさえ引くような顔で睨まれてもまったく意に介さない度
胸、というか図々しさには逆に感心してしまうな。
おっと、そんなことをしている間にバイトの時間が迫っていた。
急いでシリアルをかっ込み、バイト用の服に着替える。

「じゃ、行ってくるからなー」

一心不乱にフードを齧るパンチョ、マラ実装を挑発している親指、怒り狂うマラ実装。
オレの言葉を聞いてるやつは1匹もいない。一抹の寂しさを感じながらオレは部屋を後にし
た…。


—————————————————————————————————————————


「いらっしゃいませー」

やや重たい押し戸を開けて店内に入るといつもの店員がいつもの口調でいつものように品出
ししながら挨拶をしてきた。
場所は実装ショップ『デスハウス』。バイトを終えたオレはアパートに帰る前に新たに必要
になったものを買いにきたのだ。
薬品コーナーへ向かいお目当ての物を探す。
えーと、あった! 糞抜き剤『ドドンパ』と嘔吐抑制剤『裏ゲロリ』だ。
昨日は成り行きでマラ実装にだけ食わせるつもりだった裏ドドンパを親指にも食わせること
になってしまった。マラ実装と違い親指には餌を与えているため、このままだとアイツは尻
からでなく逆流して口から糞を吐くことになってしまう。それ自体は自業自得なのでどうと
いうことはないのだけど、部屋ン中のその辺で吐かれたりしたらわざわざ裏ドドンパでパン
コンを抑制した意味がなくなってしまう。
面倒かつ余計な出費だが裏ゲロリで糞吐きを押さえ、定期的にドドンパによる糞抜きで管理
することにしたのだ。
他の案としてはパンチョが眠っている間に別の親指実装とのすり替えることも考えた。店内
の生体販売コーナーでは躾け済みの親指実装も売られている。こいつらならトイレなども完
璧にこなせるし、あんな暴言を吐いたり生意気な態度をとったりしないんだろう。
しかし人間から見ればどれも同じような顔をしている実装石だが、実装石達自身にはどうや
ら個々の区別がある程度つくらしい。さらに臭いや声の違いなどの要因が加われば片手で数
えられる石数分ぐらいはほぼ完璧に見分けられるんだそうな。
そもそもそれ以前の問題として躾け済みの親指実装は値段が非常に高い。実装石は虐待紛い
の躾を施して教育するのが基本だが蛆に次いで弱い親指実装は過酷な躾に耐えることができ
ないからだ。加減を間違えればデコピン一発が北斗神拳と化してしまう。そんなもんをどう
やって躾けてるのか興味はあるが、値段から察するに素人にできるほど簡単じゃなさそうだ。
友人が帰ってきたら聞いてみようかな。
とまあそんなこんなですり替えは諦め、しばらくの間は各種薬品による徹底管理で乗り切る
ことにしたワケだ。
手にした買い物カゴにドドンパと裏ゲロリを放り込んだ後、すぐにはレジに向かわず店内を
見て回ることにした。最初に来た時こそ何に使うんだかわからなかった商品も実際に実装石
を飼ってみるとようやく用途がわかったりして結構楽しい。
それにこうしていろんな商品を見てればパンチョのマラ化を抑える方法でも閃くかと思った。
だが…、全然使えそうなアイテムやアイディアは見つからないままだ。実装石用貞操帯やマ
ラ実装用コンドームなんていう変わりものを発見したが応用できそうにはなかった。
短い間だが捕らえてあるマラ実装を見てると射精そのものを抑えるのは非常にストレスにな
るようだ。糞の躾のときの様に射精するときはトイレで…、と教えようにもマラ化したパン
チョは完全に理性が飛んでいるようなのでこれも無理だろう。
射精自体を抑えるのではなく射精先の指定さえできればいいんだが…。人間のようにティッ
シュを使えというのもやっぱり無理だろうなぁ。
何か…、マラ化して理性をなくした状態でも自分からそこに入れたいと思うような…、例え
ばオ○ホ的なものでもあればいいんだが…。

「・・・・・。 ん、待てよ…?」

待て待て待て待て待て待てよ…!?
あるじゃないか!! マラ化したパンチョが真っ先に向かいそうなモノがもうすでに!!
しかしそう都合良くいくものか? いやだがアレをこうして、それをああすれば…。
うむ! 試してみる価値はありそうだ。 どうせダメ元、まずはやってみよう!
思いついた作戦を実行すべくさらに2、3点のアイテムを買い物カゴに追加してレジへ向か
う。果たしてうまくいくだろうか…?
ふと気が付けば、取り立てて趣味もなく何事かに熱中したこともなかった自分が、少し変わ
った仔実装の飼育にずいぶんと熱を上げてるものだ。

「まあたまにはこんなのも悪くないよな…」
「…?」

財布から先日下ろしたばかりの諭吉先生を取り出し、店員に渡しながらオレは静かに呟いた。





     <あとがき>   と言う名の言い訳
相も変わらずまたしても間隔を空けての投稿になりました。間に『冬越え』を挟んだとはい
え、前編を上げてからひと月以上経ってからの投下。しかも完結できない上にまたまた中途
半端に区切っての中編となります。
過去スクの数々の名作飼育モノに影響されたものの、つくづく自分には飼育モノが向いてな
いようでなかなか話が進みません…orz 観察モノになる第2話と冬越えはノリノリでキーボ
ード打ってたんだけどなぁ。
もっともノリノリだったからといっておもしろくなるのかというとまた別の話なわけで…。
まだまだ精進させて頂きます!
最後になりましたが冬越えとマラ前編のイラストを描いて頂いたお二方、ありがとうござい
ました!
嬉しすぎてパキンしちゃいそうでした! 気付くのが遅れてお礼も遅くなってしまい申し訳
ありません。この場を借りて改めてお礼を述べさせていただきます!

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