時はクリスマス。 誰も遊びに来なくなり、野良実装達が巣食う公園に、小学生男子達が集団でやってきた。 「デ、チビニンゲン達デスゥ?」 「飼っテチー、飼っテチー」 久しぶりに見た人間目掛けて、ワラワラと集まってくる野良実装達。 冬の寒さやエサ不足で明日の生活が不安な野良実装達は、公園に人間がやって来たらこうして駆けつけるのだ。 少年達は実装達を抱き上げた。 「デ、デスゥ〜」 「レッチューン」 抱き上げられた事で、飼われたと思い込む野良実装達。 だが、それはただの勘違いだった。 少年達はズボンのポケットからカッターナイフを取り出し、抱き上げた実装の胸に刺した。 「デェッ!」 「レチャ!」 野良実装達が悲鳴をあげるのも構わず、カッターで切る少年達。 実装の体内から偽石を取り出すと、実装を地面に降ろした。 「デッチィィィッ!」 「レチィ! レチィィィ!」 「テェェェェン、テェェェェェン!」 少年達は偽石についた実装の体液をティッシュで軽くふき取ると、ズボンのポケットから携帯ゲーム機を取り出し、偽石をゲーム機のスロットに差し込み、電源を入れた。 ゲーム機のスピーカーから、テチコーンと軽快な機動音が発生した。 「みんな準備できたな。じゃあ、はじめようか」 少年達は方向キーやA、Bボタンを押す等して操作し始した。 「デ?」 「テチ?」 いきなりだった。 突然仔実装が親実装を殴ったのだ。 「何するデス、やめるデス」と仔に向かって叫ぶ親実装。 親実装は仔実装へ反撃しようとするも、何故か体が動かない。 「違うテチ、体か勝手に動くテチィィィ」 仔実装が青ざめた表情をしながら、親実装を殴り続ける。 「レッチャァァァー!」 「テチッ、テチィィィッ!」 「デシャ! デシャ! デシャ!」 悲鳴を聞いた親実装が、周囲に目を向けると、信じられない光景が映った。 親指実装と仔実装が、互いの髪を抜きあっている。 成実装が一心不乱に、石や砂を食べている。 禿裸ドレイの仔実装が、他の実装達の服をビリビリに破いている。 元・飼いで薄汚れたピンクのドレスを着た中実装が、錆びた釘で自らの股の孔を繰り返し刺している。 公園は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。 「みんなー、操作慣れたかー?」 「おう、バッチシ!」 「んじゃあ、対戦すっか?」 「いや、まずはバトロイやんね?」 「よっしゃ」 少年達がニヤリと邪な笑みを浮かべた。その表情を見てゾッとする親実装。 次の瞬間、野良実装達が一斉に立ち上がった。 「デ?」 今まで体が動かなかった親実装も立ち上がった。 「じゃあ、バトルスタート」 一人の少年が言った瞬間、野良実装達が殴りあいを始めた。 「デッ、デッ、デデッ!」 別の場所では成実装が、仔実装と親指実装の集団に、殴る蹴るの暴行を受けていた。 「チッ、ちゃんと動けよデブ!」 少年の一人が成実装を罵った。 「ママァーやめテチィィィ!」 「そっちこそやめるデスゥゥ!」 また別の場所では、仔実装がマラ実装のマラに噛み付いていた。 他にも蛆ちゃんにパワーボムをきめる親指実装や、仔実装にラリアットを見舞う中実装、マラ実装に電気アンマをくらわせる獣装石の姿もあった。 親実装は、少年達が持っているゲーム機と、そのスロットに差し込まれてる偽石を見て、自分達があれに操られている事に気づいた。 そう、少年達が手にしているのはメイデンドーJS。 冥電堂からこの冬発売された最新ゲーム機だ。 他のゲーム機との違いはただ一つ──実装の偽石がゲームソフトなのだ。 少年達は、さまざまなコマンドを入力する事で実装石達を操作し、戦わせているのだ。 メイデンドーJSは上下二画面のダブルスクリーンとなっており、上部画面には実装の目から見た景色が映し出されている。 「デ、デヒャヒャヒャヒャ」 突然笑い出した禿裸成実装。 それを操作している少年は、タッチペンで下部画面に映し出された実装の全身をつついていた。 実装のステータスや翻訳された言葉などが表示されている下部画面は、タッチパネルとなっていた。 男子はタッチパネルで実装をくすぐっているのだ。 「何してんだよオマエ」 そばにいた少年が、くすぐり続けている少年に訊いた。 「いや、このハゲ、最初からもうダメっぽいから」 下部画面のステータスに、禿裸成実装の偽石の状態も表示されていた。画面上の偽石はドス黒い色となっていた。 「せめて最期は笑顔で死ねるようにね」 「オマエ超愛護じゃね」 「デヒャヒャヒャヒャヒャヒャシャシャシャ……デギョッ」 スロットに差し込まれた偽石がパキンと音を発し、同時に画面の表示が消えた。 少年は電源を切り、スロットから偽石を取り出した。 スロットから取り出された瞬間、偽石は粉々に砕け散った。 「や、ヤバイデスゥゥ」 「あ、あ、アクマデスゥゥ、あれはアクマのキカイデスゥゥゥゥ」 遊具等の物陰から、実装達がガタガタ奮えながら見ていた。 「次の拾ってくる」 「おう」 「ヤバイ、こっち来るデスッ!」 「逃げるデスゥゥ!」 粉々に砕け散った偽石を捨てた少年が、自分達がいる方へ向かってくるのを見た実装達は、その場から逃げ出そうと、後ろへ振り返った。 「ヘヘッ、実装ちゃんはっけーん」 振り返った先に、メイデンドーJSを持った中、高校生達がいた。 「デ、デェッ!」 ブバババッ 腰が抜け、盛大にパンコンしながらその場でへたり込む実装石達。 「あいつらストリートファイトしてるけど、混ざるか?」 「ガキに混ざるのはなぁ……実装DDRやらね?」 「いいねー」 「デェェェェェェェェ」 物陰に隠れていた実装達は全部捕まり、休みを与えられる事なく踊らされ続けた。 「レフゥゥゥゥ、レフゥゥゥゥゥゥ」 全力で逃げ続ける蛆ちゃん、その後を追う仔実装。 「う、蛆ちゃん、逃げテチー、あ」 「レピャ!」 仔実装が手に持ってた木の枝で蛆ちゃんを刺し貫いた。 「蛆ちゃん、蛆ちゃぁぁぁぁーん」 仔実装はその場で号泣し、盛大にパンコンしようとした。しかし涙は流れず、総排出孔から糞は出てこなかった。 「さ、どんどん蛆ちゃん狩ってレベル上げよーねぇー」 仔実装を操作している青年は、ニヤリと笑みを浮かべた。 「テェェェェ、やめテチィィィィィ!」 「ダメだよ、もっと強くならないと、明日は仲間達と一緒に、隣の公園のボスを狩りに行くんだから」 「テ、テェェェェッ! イ、イヤテチィィィィィ、ヤツに勝てるわけがないテチィィィィィ!」 仔実装は力の限り叫んだ。 仔実装は前にママ達から隣の公園のボスの噂を聞いたことがあった。 隣の公園のボスとは、物凄く凶暴でズル賢く、駆除も何度も回避したという、とんでもなく強いマラ獣装なのだ。 「大丈夫だって、これでもモンハンは得意なんだ」 「テェェッ、そういう意味で言ってるんじゃないテチィィィッ!」 「ちょっとうるさいぞ、声さげろよ」 隣で親指実装を躍らせていた青年が文句を言った 「わりい、ボリューム消すよ」 「テ、ェ……ッ……」 青年がメイデンドーJSのボリュームボタンを押した瞬間、仔実装の声がどんどん小さくなっていき、やがて声が出なくなった。 仲の良い兄弟が実装姉妹を操って、格闘をしていた。 「兄ちゃんダメだ、なかなか技が決まらないよー」 「じゃあ、オレのポーズかけて動き止めるから、そいつ相手に練習しな」 兄がスタートボタンを押した瞬間、兄の操作していた姉実装の動きが止まった。 かろうじて息はできるが、声も出せず、涙も流せず、糞も漏らせない、まったく身動きできなくなっていた。 「ありがと兄ちゃん」 弟がコマンド入力を開始したと同時に、妹実装が身動き取れない姉実装に技をかけ始めた。 「さ、エリザベスちゃん、ダンスダンスザマス」 愛護派中年女性がメイデンドーJSで、ペットの実装石達をムリヤリ躍らせていた。 「デ、デェェェェ」 中年女性はメイデンドーJSを使って、飼い実装のエリザベスにもっと踊りがうまくなるよう練習させているのだ。 愛護派達の間でもメイデンドーJSは流行しており、礼儀作法やトイレを憶えてくれない実装石達を、ちゃんと躾けようと操作していた。 それから、次々とやって来るメイデンドーJSを持った人間達によって、公園の実装達は狩り尽くされた。 また実装ショップやペットショップでも、メイデンドーJSと実装シリーズが飛ぶ様に売れ、どの店も在庫は完売していた。 年末で実装シリーズの生産工場も休みに入っており、黒髪等のレアな実装の価格は高騰していた。 「デ……デロップ……」 自分の意思とは関係なく操られ続け、乗り物酔いならぬ操作酔いで嘔吐する実装。 長時間の操作による疲労によってパキンした実装。 一方的に技をかけられ続け死んだ実装。 休む間もなくムチャな動きを要求され、全身の筋組織や骨がズタボロになった実装。 潰された実装。 髪や服を失った実装。 全身を噛み千切られた実装。 そんな実装達が公園のあちこちに転がっていた。 無事な実装石は、一匹たりともいなかった。 実装石だけではない。実装燈や実蒼石、実装紅など、他実装も弄ばれた挙句、地面に捨てられていた。 「な、なぜボクゥゥゥ……なんでこんなことするボクゥゥゥゥ?」 地面に大の字になって倒れている実蒼石が力の限り叫んだ。 「だってゲームだからに決まってんじゃん」 何言ってんのオマエといった風に答える少年。 「ゲ!? そんなことの為に、ボクらは使われたボク?」 「うん。だってお前等、飼い主に捨てられた用無し野良だろ」 「ボキャ!?」 「メイデンドーJSのおかげで再利用される事ができたんだから、メーカーに感謝しろよ。んじゃな」 「ボクゥゥゥ……」 実蒼石は悔しさのあまり号泣した。 「デェェッ、デェェェェン!」 「ルトォォォッ!」 「ダワッ、ダワァァァァァッ!」 実蒼石だけではなかった、公園中の野良達が泣いているのだ。 ここまでくると糞蟲だろうがそうでなかろうが、幸せ回路がフル稼働して妄想の世界に逃げ込むのが普通なのだが……。 「デェェェ……も、もうイヤデスゥゥゥ……つ、疲れたデスゥゥゥゥゥ」 だが、メイデンドーJSによって幸せ回路がオフにされ、夢を見ることはできず、辛い現実だけしか見えなくなっていた。 「ぎゃ、虐待派ボクゥゥゥ、こいつら虐待派ボクゥゥゥゥゥゥ!」 「あん人聞き悪い事言うなよ、オレらはだだの──」 「学生だよ」「ゲーマーだぜ」「冥電堂信者だっつーの」「仲のいい兄弟だ」「愛護派ザマス」 ようやく日暮れの時間、午後五時をつげるチャイムが公園内に響き渡った。 「さて、そろそろ帰るか」 「とっしー、また明日なー」 「おう、明日もまたやろうぜ」 「あ、明日もやるボクゥゥ?」 小学生男子達の言葉を聞いた実蒼石が叫んだ。 「あん、だって冬休みだし」 「三学期始まるまで毎日来てやるからな」 公園のあちこちでパキンという音が鳴り響いた。 ---------------------------------------- メイデンドーJS── もとい、あとがきの様なもの メイデンドーJS、あなたはどう遊ぶ?
