新型実装捕獲器を洗い、水気を乾かすために秋晴れの日差しが暖かい庭先に置いて戻ってみると 開けていたはずの捕獲器の両扉が閉まっている・・・もしかして掛かったのか? 近づいて確認してみたが確かに閉まってる、乾かすために開けていたのは確かだから中に何かはいるのだろう どうしたもかと捕獲器を見ていると 「どうしたの?」と妻がやってきた。 「実は・・」と今の状況を話せば 「じゃあ、中を見てみたらいいじゃない。」 「嫌だよ、何か飛び出てきたら危ないから」 「見たかぎり中で動く気配もないし、音も聞こえてこないから案外居ないかもよ」 「そうかな?」 「とりあえず、ゆっくり片側だけ開けてみて確認すれば。はい、やったやった!」 「はぁ〜わかったよ」 妻の好奇心に押され仕方なく開ける事になった、ゆっくりと扉を開けてロックがかからないようにしながら覗いてみると 「レピー、レピー」「レフーレフー」 いた、真ん中近くに指ひとつ分の大きさとその半分ぐらいの大きさの芋虫みたいなのもいる。どうやら寄り添って寝ているみたいだ 「どう?」 「いたよ・・」 「ホント!見せて、見せて〜」 「・・・・どうぞ」 「わ〜〜っちっちゃい〜寝てるの?何か芋虫みたいなものも抱いてる〜かわいい〜」 「起きない間に閉めたいんだけど・・」 扉を戻して閉めて、妻が 「あれ何?」 「何って?」 「あのちっちゃいのと、芋虫みたいなの」 「実装石の子供の小さいめの奴だね、確か芋虫みたいなのは幼体みたいなものだったと思う」 「ふ〜ん、幼児と赤ちゃんみたいなものなのね、大人は気味が悪いけど子供は可愛いのね」 妻はいたく気に入ったみたいだな・・・こちらは気が滅入ってるのに。 「で、どうするの?これ?」 「はぁ〜せっかく乾かしたのにまた水に漬けなきゃいけないだろうな二度手間だな」 「ええっーーー!殺すの?こんなにちっちゃいのに!可哀そうよ!」 「いや、このまま逃がして家に侵入されても困るし、それに蚤やダニやバイ菌なんか持ってるかもしれないからね」 「そうだけど・・まだあんなに小さいし溺れ死にさせるのは酷いわ。」 「じゃあ、どうするんだ?このまま放置でも飢え死にだよ」 「そんなの駄目よ!絶対に!」 あーだこーだとお互いに押し問答を繰り返して話が平行線を辿っていた時に急に妻が 「そうだ!いい方法を思いついた〜」と言いだした。 「なんだ?方法って?」 「ほら近くに雑木林みたいなのがあったでしょう、あそこなら近所の公園みたいに大人実装に襲われ難いし今ならドングリとかもあるから良いんじゃない?」 確かに家から15分ほど離れた所に運動公園を兼ねた保安林があったな、そんな見方したこともなかった。 「と言う事で行ってきてね〜」 「ええっ俺が行くのか?!」 「当り前でしょう、最近運動不足なんだからついでにフィールドアスレチックでもしてきたら。その間に買いものと晩御飯の用意しておくから、はい!行った行った!」 こうなったら妥協しない奴だからな・・しょうがない、 「わかった、行ってくる。ただし、晩御飯は豪華してくれ!これは譲れん!」 「わかったわ期待してて、そうだこの仔達雑食なんでしょう、それだったら前に貰ったシリアルの試供品があったからそれも持って行ってあげて」 こうして片手に捕獲器の入って紙袋もう片手にシリアルの袋を持った男が林に向って行った。 運動公園の辺りまでやってきたが保安林の縁に大型の遊歩道を設けており歩道沿いには落葉性の街路樹がさまざまな種類植えており、それらが大量の落ち葉を落としている。 「やっぱりこの時期は落ち葉がすごいな、ここあたりなら寒さを凌ぐ落ち葉も豊富だから安全そうな場所は無いか探して見るか。」 そう思いながら林寄りに遊歩道を歩いてみると遊歩道から林を覗く辺りに大きなクヌギの樹を見つけた、 見てみるかと樹の根元まで近づいてみると根と根の間に窪みを見つけた。 「此処でいいか。」 細かく探すのも面倒くさいし早く手放したいのもあり、此処にすることにした。 捕獲器を見てみたがまだ寝ているみたいだ、野生動物としてはどうかと思うが今はありがたい早く済まそう。 シリアルの袋を開け樹の根の間に中身を軽く握りつぶした後に山積みにしたあと、その隣の範囲を落ち葉を集めて厚めに敷き詰めた。 捕獲器から出した時の地面の衝突で出来るだけ目が覚めないようにしてみたが上手くいくだろうか? 捕獲器の扉を開けてゆっくりゆっくり斜めにしていき角度を上げていくと扉から落ち葉の上に滑るように実装が出てきた。 上手くいったみたいで2匹とも眠ったままだ、こうしてみると妻が言ったように小さくて可愛く見えるが飼ってみようとは思わないな 多分、ハムスターは飼ってもいいと思うがネズミの子供は飼う気にはならないのと同じなのだろう、 でもこのままは何だし落ち葉を上から被せておくか、カモフラージュぐらいにはなるだろう。 「じゃな、家には来るなよ」 そう声をかけて立ち去ったが、妻が言ったように運動不足ぎみなのは確かだな・・いい機会だからドレッキングでもして帰るか、 と男は公園入口に向かって行った。 「レピーレピー、レチュッンン・・レチュ?」秋晴れの日差しが親指実装の顔に当たり目を覚ました。 「あさレチか、ここはどこレチ?お姉ちゃんどこにいるレチ」 親指は辺りを見回すと全く違う景色が見えていた。 「ふかふかのお布団レチ〜ぽかぽかして気持ちいいレチ〜いい匂いがするレチ、これ何レチか?」 横にあるシリアルの山に気がついた親指は一つまみ取りそれを口に運んだ 「レチュゥゥゥゥン〜!美味しいレチ〜今まで食べた事がないレチ〜ウジちゃん起きるレチ!食べるレチ〜」 「レフ〜ン?」 親指は抱いていたウジ実装を起こしてシリアルの欠片を口に運んだ 「レフレフ・・レッフゥゥゥンン!美味しいレフ!アマアマレフ〜」 今まで親指の姉妹が命がけで集めてきた食べ物は草や酸味のつよい残飯、 たまに硬くなったパンの残骸などだった為、控えめとはいえ甘みのあるシリアルは今までに食べた事がない食べ物だった、 試供品の量とはいえ姉妹にとっては身の丈を超える量だった。 「いっぱいあるレチ〜たくさん食べるレチ〜ウジちゃんもいっぱい食べるレチ〜」 「レフレフ〜美味しいレフ〜幸せレフ〜」 満腹するまで食べて満足したのかお互いに横になった 「お腹いっぱいレチ〜もう食べられないレチ〜」 「満足レフ〜おなかプニプニしてほしいレフ〜」 「ウジちゃんここでプニプニするとウンチがご飯に付いちゃうからだめレチ、お姉ちゃんがウンチ行くときにプニプニしてあげるレチ」 「わかったレフー、はやくプニプニしてほしいレフ〜」 この親指は比較的賢い個体だったみたいだ、この場所を巣と認識してトイレの区別をしている。 「ウジちゃんおトイレ行くレチ、抱いてあげるから一緒に行くレチ」 「ワーイレフ〜プニプニレフ〜」 親指は蛆を抱いて木の根元から遊歩道の方に向かって行った、そこでちょうど良い溝を見つけ、そこで糞を行いウジの排便をさせた 戻ろうとしたときに親指たちの目が遊歩道を見たとき、木漏れ日のなか降り注ぐほどの落ち葉の光景が見えた。 「すごいレチ!お布団がいっぱいレチー!」 親指はウジを抱いたまま遊歩道に駆け出した、そして降り注ぐ落ち葉の絨毯の中踊るようにはしゃいでいた。 「ウジちゃんここは楽園レチ、戻ってこなくなったお姉ちゃん達を探しに行ったらお姉ちゃんの匂いの箱を見つけたレチ、入ったらここに来たレチ お姉ちゃん達もここにいるレチ〜探し行くレチ〜」 「お姉ちゃんに会いたいレフ〜ウジちゃんも一緒レフ〜」 幸せな事があり過ぎたせいで警戒する事も忘れてしまったようだ、 樹の根もとで大人しくしていれば遊歩道に出なければもう少しは幸せに過ごせたかもしれなかったのに・・ 遊歩道を2人の男が歩いてくる、2人とも同じ色の作業着を着て胸元と腕章に「双葉造園」と書かれている。 この運動公園から保安林は市が管理をしており、この時期は林や街路樹の落ち葉の量が多く、それが風にのって付近の住居先にたまり、 苦情が発生しているので市が依頼した造園業者が定期的に落ち葉の掃除をしている、今日はその掃除の日であった。 「相変わらず多いな」 「この時期はしかたがないね」 「きりがないからさっさとやってしまおうぜ」 「ああ、俺はネットにまわるわ」 「OK」 足音と気配を感じて親指が振り返ると、人間たちが此方にやってくるのが見える。親指からしたら驚きだった、 「なんでニンゲンがいるレチ!ここは楽園はずなのにレチ!」 「レフ〜?」 「オネエチャン達が言ってたレチ、ニンゲンにみつかるとカナシイことをされるレチ、だから見つかったらだめレチ」 「ウジチャン隠れるレチ、こっちレチ」 ウジを抱いて親指は街路樹の低木種の茂みの根元に隠れた、親指とは思えない行動で本来なら本能で行ったこの行為は間違ってはいなかった。 ただこの時は不幸か正しくはなかった・・ 落ち葉の掃除は2人1組で行い、1人がブロアバキュームと言う機械を使い、先ずは道路や木の根元の落ち葉を吹き飛ばして吹き溜まりに集め、 ある程度集まれば、吸引し袋に集めていく役をもう一人がネットを立てて吹き飛ばした際の落ち葉が別の場所に行かないように抑える役割をする。 今回もこの組み合わせで行い、道路から林側に落ち葉を集めていく段取りでされていく。 「じゃあ、ここからいくぞー」 「はいよー」 けたたましいモーター音とともに、ブロアバキュームから強力な風が吹き落ち葉を舞い上がらせていく、手慣れた手つきで舞い上がる落ち葉は林側の 道隅に集まって行く。 「レフ—何の音レフ、怖いレフー」 「わからないレチ、オネエチャン助けてレチー、レエェェェンレエェェェン」 得体のしれない音に、恐怖しながら親指達は抱き合い身を震わせていた。 ブロアで吹き飛ばすには2つ理由がある、 一つは砂や砂利が多い場所では、直接吸い込むと砂や砂利を一緒に吸い込み効率が悪いため別の場所に集めたほうがよいからで、 もう一つは、よく落ち葉の集まる低木樹の根元などは直接吸い込みにくく、一度外に出したほうが集め易いからだ。 ブロアを持つ男が風力を強に変え、そのまま親指達のいる樹に近づいた。 「何レチ?、レヒャァァァァ!レチャァァァァ!レェェェェェー」 「レフ?レフーー!レフゥゥゥゥー」 「ウジちゃぁぁぁぁぁぁんん!」 強力な風に瞬く間に親指と蛆は落ち葉とともに吹き飛ばされた、お互いに抱き合っていたが散り散りに飛ばされ地面に落ちた。 鳴き声はモーター音にかき消され、姿は大量の落ち葉に紛れ業者の男は実装がいることすら気がつかなかった。 幸いなことに落ちた場所は親指は落ち葉の積もった山の中、蛆は柔らかい芝地の上だった為、怪我らしいのはほぼ無かった。 「レエェェェン、痛いレチ、ウジチャンどこレチ!ウジチャン!ウジチャァァァァン!」 「レフ—、ここどこレフ?オネエチャンどこレフ?プニプニレフ〜」 お互いの存在を呼び合ったが離れた場所に落とされたため声に気が付くことはなかった。 「そろそろ集めるか」 男はそう言いブロアをバキュームに切り替え落ち葉の吹きたまりに近付けていった。 「ウジチャァァァァン!ウジチャンを探すレチ!ここから出るレチ。」 親指は必死で落ち葉に埋もれた身体を這い出そうとした、そこに吸い込み先がやってきた。 「レ?レェェェェ!レチャァァァァァー!」 違和感に気がついた時には親指は落ち葉とともに吸い込まれた。 「何レチ?、お布団がいっぱいレチ?!、ウジチャンどこレチー!」 親指は落ち葉の袋の中に回収された事に判らかずに外に出ようとしていた。 「思っていたよりも多いな、これならこの区間で袋が一杯になるな。」 ネットを持つ男に向かってブロアの男が 「おおーい、新しい袋を用意しておいてくれーー」 「わかったーー」 男は頷いた。 「レチャァァァァ布団が重いレチ、こんなにいらないレチ、重いレチ!動けないレチ、イタイレチ、 レェェ、オネエチャンーーウジチャァァァン、レェェェンレェェェン」 親指は泣きながら必死に身体を動かそうとしたがドンドン積み重なっていく落ち葉に身体の自由を奪われ押し潰され始めた。 そして、とうとうその時は来た 「よし、満杯だな。おーい交換頼むーあとこれを車に積んでおいてくれ〜」 「わかったー、今行くー」 ネットの男は大量に圧縮された落ち葉の袋を受け取ると、車道わきに停めておいた作業車に向かっていった。 「よいっしょっと!」 作業車の荷台に投げ込み、落ちないように他に回収した袋の間に押し込んだ。 「レチ…レチャ・・レェレェ…クルシ…オネチャ…ウジチャ…レェレェレェ……レペェェェ!」パキン 押し潰され、偽石の砕ける音が袋から聞こえたが車道の雑音の音にかき消され気がつかれる事もなかった。 「レフ—!、何レフー、痛いレフー、オネエチャンどこレフ—、ウンチ出たレフ、プニプニしてほしいレフー、返事してほしいレフ—」 芝地に落とされた蛆実装は何が起こったかも解らずにイゴイゴと身体をくねらせながら姉を呼び続けた。 「オネエチャン返事して欲しいレフ〜、ウジチャンのこと嫌いになったんレフか〜レフェェェェン! プニプニしてほしいレフ、抱っこしてほしいレフー」 芝地にまばらに広がる落ち葉の合間に紛れながら鳴き続ける蛆の上に大きな影が出来た。 そして、蛆の体に何かが乗せられた。 「レフォォォォォォォォォ!」 「あ、ご苦労様です〜大変ですね。」 「そうなんですよ〜ありがとうございます。」 男が造園業のブロアの男に挨拶をしている、先ほど親指達を置いていった男だ。 公園でトレッキングから戻り、再びこちらに戻ってきたみたいだ、 業者の作業を邪魔しないようにして、道を迂回した際に芝地の蛆を踏んでいた。 「レフーレフー!痛いレフ!ポンポンイタイレフ!動かないレフ!オネエチャン!オネエチャァァァンーーー!」 男の足は蛆の下半身を踏んだか蛆に気がつく事なく去って行った、 本来なら致命傷の筈だか、深い芝のある芝地の上だったのと、瞬間的に踏んだために蛆にとっては大怪我の範囲で留まってしまった。 一瞬で死ねた方が蛆にとっては幸せだったかもしれなかった、助からない環境で死ぬまで苦しまなければならないのだから… 「レフ、レフ…プ・・ニ・・プ・・ニ・・オネエ・・チャ・・」 更に蛆に衝撃が走る、 ザッ! 「レフォ!レパポゥパパ!」 ザッ! 「レファ!レクリュチャ!」 ザッ! 「オメメリュキュラキャチャリャ・・・・・・・」 ブロアの男はネットの男が作業車から戻ってくるまでの間、 竹箒でブロアバキュームで取りきれなかった落ち葉を集めていた。 芝地の上の落ち葉を集めていた際に蛆ごと巻き込んでいた、 竹箒に巻き込まれ蛆は肉を裂かれ、貫かれ、押し潰され、隅に落ち葉と一緒に集められた時には、 何の形か判らない塊となっていた。 「おお、居なくなっているか。」 先ほどの男は少し気になったいたのか、親指達を置いたクヌギの木に来ていた。 「シリアルが結構減っているな、餌を食べた後に安全な場所に移動したのか。 やはり子供でも野生動物だな、この場所は危険だと判断したのだろうな。」 廻りを見まわした後に得心したような感じで遊歩道に戻った時に携帯が鳴った。 ピッ 「もしもし、買い物から帰って来たけどどうだった?」 「今、戻る途中に置いてきた場所を見て来たけど、餌食べて居なくなっていたよ」 「そうなの〜元気にやっていけるといいわね〜」 「そんな事よりも、晩御飯の件は?」 「安心しなさぁ〜い、奮発して蟹買ってきたわ〜」 「蟹か!おお〜〜!いいね〜」 「じゃあ、準備してるから戻ってらっしゃい、切るわよ」 実装を捨てに行って、晩飯が蟹になったか〜少しは感謝してもいいかな。 軽くそう思いながら男は家路に急いだ、秋晴れの日差しが心地いいそんな午後の一日であった。 終わり。 全く虐待でも愛護でもなく一般の人と実装の日常を書こうとしたらに長めになってしまいました。 新型実装捕獲器の作品のアナザーで続きみたいなものです。
