うー…飲みすぎた。全く変なテンションになって嫌に落ち着かない。 「お客さん飲みすぎですよ。」 ははは、自分でもそう思うさ。だが、酒に飲まれて至れる境地もあるもんさ。 マスター、少しアホな話しをしてもいいかな? 「ええ、かまいませんよ。こういう酒場ではお客様の愚痴でもなんでも聞くのも仕事のうちです。」 ははっ言うねぇ。じゃ、ちょっと与太話をさせてもらうわ。 俺は仕事柄、あっちこっちの土着宗教を調べてんのさ。 それでさ、最近変な事実が浮かんできたのよ。 「お客様が何か浮かばない顔をしていらっしゃるのもそのせいですか?」 まぁね、そう。その通り。 まったく、なんだってあんなものを崇めるのかねぇ? 「よっぽど変なものなのですか?」 あー…変と言うか…普通なら崇めないものを崇めてる部族が居たんだわ 「悪魔崇拝とかそんな感じですか?」 いやいや、悪魔崇拝のが何倍も理解できるね。 そいつらが崇めてたの、まぁ僻地の部族なんだけどさ?なんとまぁ実装石なのよ。 「…そいつは気持ち悪いですね。」 だろう?まぁその部族の周辺には山実装みたいな奴しか居ないんだけどさ。それでも調べていくと動物を自然の化身としてみてるのともまた違うわけなのよ。 調べていくとその部族、実装石の事を天からの御使いとしてあがめてたんだわ。 それこそ生活の知恵すら実装石から授かったような記述すらある。 「…なんだか実装石らしくないですね?それ。他実装だとかと間違えてるんじゃ無いですか?」 いや、その程度の知恵の記述なら良かったんだけれどね。 精々他実装を含む実装種が持ってる知恵なんてな実装ども自身が身につけてる道具に関してか、そいつらの周辺にある自然環境に関しての知識くらいなもんさ。 でもよ?でもだ、その記述にゃ実装石が火を授けたって書いてあるのさ。火だけじゃない、弓を初めとした狩猟道具やら簡単な建築知識までそこに書かれてたのよ。 「…私をからかってません?流石に冗談にしか聞こえないのですが。」 ははっ、俺だって冗談だって思いたいさ。 「それ、あれじゃないですか?ほら、発掘現場なんかで自分で土偶だとかを埋めて自分で掘り出して…」 あー…マッチポンプだって言いたいのか?そうだったら良かったんだけどねぇ…。 せめて発見された場所が一箇所だったなら…。 「含みを持った言い方をしますね?」 ああ、本当に馬鹿らしいよ。馬鹿らしいからこんなとこで深酒をしてんのさ。 その実装石崇拝がだ、あっちこっち、文明圏とあんまりつながりの無い僻地でいくつも見つかってるんだわ。 まぁ文明圏というか、具体的にはでかい宗教圏と関わりの無いところだな。 「…絶対からかってるでしょ?」 ははは、マスターがそう思うんならそれでいいよ。 ここで話したのは酔っ払いのたわごと、酔いすぎて酔いすぎて自我すら霧散した酔っ払いの妄言だと思ってくれて構わない。 正直、俺だってそう思いたいのさ。 でもさ、見つかっちまってるんだよ、証拠が。しかも証拠が見つかったは地域がばらっばらに飛び地して、過去に交流やら分散やらした気配も無いと来たもんだ。 「つまり、お客さんは何が言いたいのですか?」 あー…まぁわかってるよ。俺が荒唐無稽なことを今言おうとしてるってのはよ。 こんなこと深酒の酩酊の酔いどれの状態でもなきゃ、言ったら即座に病院呼ばれちまうわ。 つまりだ、昔はもっと上位の存在だったのかもしれんってことよ。今や外で残飯やら何やら漁ったり、まるでゴキブリのごとく殺されたりしてるあいつらがよ? それこそ、人間を人間たらしめた火の知識の伝授を行うほどに知能が高かったのかもしれんよ。いまや火を極端に恐れる動物風情にすぎないあいつらがだ。 恐ろしいことに、各地に飛び飛びで存在してやがる実装石崇拝ってのはその内容がことごとく同一のものなもんだから、正直寒気がしてんのさ。 ぶっちゃけるなら握りつぶしてなかった事にしちまいたいくらいさ。 「お客さん、流石に飲みすぎです。タクシーお呼びしましょうか?」 あーまだ大丈夫、大丈夫さ、まだ、なんとかさ。 「大丈夫と言うお客さんに限って大丈夫じゃないから言ってるんです。」 あー…そんなに飲んだか?俺。 「もうボトル3本開けてます。」 そこまで飲んでたか…。じゃぁ、最後にもう一個だけその実装崇拝の共通点に関してだけ話させてくれ。 実装崇拝の記述だと、実装石自体は御使いとして記述されてると言ったじゃないか? 御使いと称するからにはそれを従える神のようなモノも同時に記述されてたんだよ。 それはどの地域も共通して、髪の長い女性の姿をしているのだそうな。 その女性は実装石達の口を借り、体を借り、猿同然だった人間の先祖に火の使い方を初めとした様々な知識を教えていったということらしいのさ。 「なんだかいっきになじみの有る感じの話になってきましたね?」 あー…まあね、神からの知恵や知識の伝授は大抵の神話にある話だ。 でもな、俺が問題にしたいのはそこじゃない、御使いに関する記述にはまた別の話しがあるのさ。 巫女に関しての記述だとは思うんだが、また性質の悪い事が書かれてたのさ。 なんでも、緑色の石を御使いから取り出し、巫女の体に埋めたらその巫女に神が憑き、より複雑な知識を伝授したとかそんな話しさ。 まぁ、神さんも実装石の体よりも人間の体の方ができることが多かったって事だろうね? でも、俺が問題にしたいのはそこじゃない。 人間に緑の石を入れたらその人間が神の意思と言葉を話すようになった、その点こそが今おれがここで酒飲んでぐだついてる理由さ。 「狂信からの異常行動じゃ無いんですか?」 ははは、ま、そう断言しちゃってもいいんだがね?その巫女が居たという証拠のもろもろは全部とっくのとうに土に還っちまってるんだから。 でもさ、やっぱりこの話しも高いシンクロニティを持って各地に伝わってんのさ。 いわく、神が空に帰るためにいと高き塔を作っただの。いわく、すばらしき力を生む機械として水晶の頭蓋骨を作っただの。 馬鹿馬鹿しいくらい同じ内容の記述が各地に残ってんさ。 で、だ、緑の石の話しに戻すんだが、御使いから取り出された緑の石…つまり現代の俺らが偽石と読んで、実装石のコアだと思ってるあれだ。 記述を読む限りじゃそれ、つまり偽石こそが古の巫女らが彼らの神の言葉を受け取る受信機の役割をしていたようなのさ。 「ええ、そこまでは私も理解できます。ですが、あなたが一体なにを問題にしたいのかがわかりません。」 あー…まぁここまででも狂人のたわごとみてーなもんだしなぁ…。 俺が言いたいのはさ、あいつらは今いったい誰の声を受け取ってるのかってことよ。 「そりゃぁ…その神さまなんじゃないですか?」 …随分反応が投げやりになってきたね?マスター。 「いや、ここまでの話しを反芻してもそうとしか思いつかないのですが。」 神さまが一括で操ってるにしちゃ、個々の性質がばらばら過ぎるんだよ、今の実装石。 それに、こんな実験の話しもあるのさ。 宇宙実験の過程でいくつか動物が使われた事があるんだが、その中に実装石も当然含まれてたんだ。 実装石なら有る程度道具も使えるし、意思疎通も出来るから割と画期的な実験動物だと思うだろう? でも、結局実装石を載せた実験衛星は失敗しちまったんだ。 打ち上げや衛星軌道に乗せるのには成功したんだがね?なぜか衛星の中身…訓練を積んだ実装石がうんともすんとも言わなくなったのさ。 バイタルサインは全部正常。でもいくら呼びかけてもまったくの無反応になっちまったそうだ。 その後、何回か同じように実装石を衛星に積んで宇宙に上げてみたそうなんだが、どの衛星実験も宇宙に上がった段階で実装石がとまっちまったそうだ。 「なんですか?それ。新しい都市伝説か何かですか?」 その後、スペースシャトルが開発されてから再度実装石を載せて宇宙に上がってみたそうなんだが。 その時の実装石は止まる事無く、訓練どうりに船内作業をこなしたそうだ。 「…また変な話ですね、それ」 衛星とスペースシャトルとで、一体何が違ったか、それは人間の有無なんだよ。 人が近くに居ないと完全に止まり、人が近くに居れば普段どうりに動く。 ここにさっきの偽石が受信機なんじゃないかって話しがかかってくるのさ。 さて、一体あいつらはその緑の偽石に誰の意思を受信してその口と体を動かしてるのかねぇ? そこに思いいたったから、ここで自棄酒を飲んでるのさ。 「お客さん、流石にそれは考えすぎですよ。」 ははは、だと良いんだがねぇ。…とボトルも4本目が空になったか。 丁度良い、そろそろ俺は家に帰るよ、マスター。散々変な話に付き合わせてすまなかったね。 「いえ、お客様の愚痴を聞くのも私の仕事のうちですから。」 あんた、本当酒場のマスターの鏡だわ。…聞いてもらってすっきりしたよ。ありがとう。 「お役に立てたのなら光栄です。」 今度来た時は変な話じゃなく、楽しい話しをしにここへ来るよ。じゃぁ、お酒、ご馳走さまでした。 「ええ、楽しみにしています。またのご来店をお待ちしております。」 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- からん、と客が扉を出て家路に着く。 「ようやく気付く人間が出てきたな。」 マスターが客の居なくなった酒場でそんな独り言を呟く。 「そう、あれはあなた達自身の姿。今はあなた達を写す鏡そのもの。」 「もっと気付きなさい?いかに自分たちが愚かしいか。」 「もっと気付きなさい?いかに自分たちが暴慢か。」 「そして、気付いたなら成長なさい?でないと鏡を置いた意味が無い。」 長い髪を揺らしながら女マスターはグラスを磨く。 「変わらないあなた達なんて、観察していてもつまらないから。」 磨いたグラスを女マスターが覗き込む、まるでその中に何かがあるかのように。 女は今日も鳥かごを観察している。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 後書き 勢いだけで書いた、今はすっきりしている

| 1 Re: Name:匿名石 2016/07/06-04:00:02 No:00002438[申告] |
| ストレートに実装石は人間の負の面の鏡像てのを書いてて良いね
好きだよこういう露悪趣味 |