双葉実装スレ投下スク1 注射器 針の付いていない注射器を用意する。10mlのシリンダの中身はただの水。塩とかは 入れない。入れてもいいけど、今回は入れない。 「実装ちゃん、おいでー」 「デッスー」 手招きに近づいてきた成体実装石。 逃げないようにその頭を左手で押さえつけ、右手に注射器を用意する。実装石の顔 を少し上に向かせてから、注射器の先端を鼻の穴に押し付けた。そのまま中身の水を 一気に注入し、素早く退避。 「デビュ!」 両鼻と口から緑色の液体を吹き出した。 「デヒッ、デヒュィィッ!」 緊張感の無い悲鳴を上げながら、仰向けに倒れる実装石。鼻から喉にかけての粘膜 を直接水で刺激される痛みは、かなりのものである。両手で鼻と口を押さえ、赤と緑 の涙を流しながら、身体を仰け反らせたり折り曲げたりと暴れていた。 愉快な踊りはしばらく続く。 前略。 手頃な実装石を捕まえ、水の入った注射器を用意。今度は鼻ではなく、耳に先端を 押し当てる。頭巾は気にせず、右の耳穴に水を注ぎ込む。 「デゥゥーン……?」 奇妙な声を上げながら、頭を右に傾ける実装石。頭に続いて、胴体が右に傾き、左 足が浮き上がり、そのままぽてりと横に倒れた。 「デッ、デスゥ? デェ……?」 手足を動かし立ち上がろうとしているが、立ち上がる前に右に倒れている。赤と緑 の目が焦点が合わずに、ちぐはぐに動いていた。起き上がろうとしては倒れ、起き上 がろうとしては倒れの不思議な踊り。 デタラメと言われる実装石でも平衡感覚はある。耳に水を入れられたせいで三半規 管にあたるものが狂い、垂直に立つことができなくなっていた。 「デェーン、デェーッ、デゥァ……」 放っておけば水が抜けて立てるようになるだろう。もしかしたら中耳炎になるかも しれないけど、そこまで眺めている時間は無い。残念。 投下スク2 無駄に壮大な 小さな町の外れにある草地。 その隅っこで、一匹の仔実装が空を見上げていた。口元に右手を添えてぼんやりと。 白い雲の流れる青い空。 「あの空の向こうはどうなってるテチ……?」 そんなことを口にしていた。 実装石の願いは唐突に叶う事がある。 「教えてあげよう」 振り向いた仔実装の目に、黒い服を着たニンゲンが映った。 だが、次の瞬間重力が消える。仔実装の目に飛び込んできたのは緑色の四角い場所 だった。自分がいた草地。それが、見る間に小さくなり灰色の景色に溶け、灰色と緑 が入り交じった地面と白い雲に飲まれる。 仔実装は冗談のような勢いで吹っ飛んでいた。真上へ。 大気圏を成層圏を貫き、宇宙へと。 植物の緑色と街の灰色、土の茶色。そして、雲と雪の白と海の青が映った地球。漆 黒を背景に輝く無数の光と、天を跨ぐ天の川、灰色の月。太陽が白く輝いている。 実装石の常識を全て吹き飛ばす光景に、仔実装はただ魅入っていた。 − − − 漆黒の宇宙。 全天をふたつに割って伸びる天の川、空に輝く太陽から左右に伸びる白い光の線。 遮るもののない宇宙線と真空に晒され、仔実装はなぜか普通に生きていた。 「退屈テチ」 何もない空間を漂いながら、愚痴る。 思考を圧倒するような感動といえど、いずれは冷める。感動が去った後に待ってい たのは、欠伸すら出ないような退屈だった。宇宙空間は案外変化が無い。 それでも、仔実装はその変化に気付く。 「お日様が大きくなってるテチ?」 空に輝く太陽が数倍の大きさになっていた。 地上で暮らしていると気にしないが、太陽系にあるモノは例外無く太陽に向かって 落ちている。惑星から隕石、氷や塵、希薄な気体分子まで、あらゆるモノが。 仔実装もそのひとつだった。 − − − 「チャアァァァ!」 太陽は視界の半分を占めるほどに大きくなっていた。 空気や地面を暖める光の球。 文字通り天文学的な質量の塊である太陽。その多くを占める水素の核融合反応によ り、凄まじい熱量を生み出している。その仕組みは知らないが、そこに呑み込まれれ ば消えると、仔実装は本能で理解していた。 「死にたくないテチィィ!」 無意味に暴れながら、仔実装は願った。 − − − 太陽は地上から見る程度に小さくなっている。 「助かったテチ」 宇宙空間を漂いながら、仔実装は安堵していた。 太陽に向かった物体は、おもにみっつの結末を辿る。ひとつめは太陽の重力に引っ 張られて太陽に落ちる結末。ふたつめは太陽の重力と釣り合い周回軌道を描く結末。 みっつめは太陽の重力を振り切って太陽系外へと飛んでいく結末。 それらは主に速度に左右され、仔実装はかなり速かった。 − − − 「テッチ、テッチ」 手足を動かし、仔実装は必死に虚空を泳ぐ。 何日か、何週間か、何ヶ月か、何年か。はたまた何世紀か。 壊れた時間の中で、仔実装は必死に太陽に向かっていた。向かっているつもりだっ た。しかし、太陽は背景の星とさほど変わらない光の点に変わっている。涙も糞も全 て枯れ果て、自分が何をしているのかも忘れかけていた。 それでも、諦めずに、仔実装は宇宙を泳ぐ。 「テッチ、テッチ……」 何もない宇宙空間を、どういう仕組みか普通に移動しながら。空腹も何も感じず、 窒息することも死ぬこともなく、偽石が砕けることもなく。絶対に死なない確信、絶 対に死ねないという確信が、仔実装にはあった。 すり減った記憶に残る、生まれ故郷。 「テッチ……」 そこに戻ることを願い、仔実装はひたすら手足を動かした。 END 2200.【観察】未来を知ること 2195.【虐】マラの誘惑 2194.【馬】マトリョーシカアタック 実装side 2193.【馬】マトリョーシカアタック 2191.【虐?】みんな実装石 2190.【虐】究極のプニプニ 2172.【観】禁忌の実験 2169.【観察】ある獣装石の一生 2167.【虐】つまようじ 2157.【実験】姉妹のジレンマ 2152.【虐】しまっちゃおうねー? 以下省略
