タイトル:【愛虐】 見張り実装 完結
ファイル:見張り実装9.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:3861 レス数:1
初投稿日時:2006/08/09-21:00:36修正日時:2006/08/09-21:00:36
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「テッチィィィ」

さつきの竹串は親実装の足を貫通した、親実装は痛さで膝を突く。
マリモは再度竹串を膝まずいて、低くなった親実装の腹につき立てた。

ズブッズブブブッ!

竹串は親実装の腹を深く貫いた・・・しかし深く刺しすぎた為に抜けなくなってしまう。
親実装はマリモにおし掛かり、マリモの顔に、げんこつを叩き込んだ。

「この・・なんて事してくれるデス」

ドゴッゥゥ!

「テチャァァァア!!」

痛い・・なんて痛いんだ、鈍い塊がマリモの顔を何度も叩いた。
殴られるたび、マリモの足は飛び跳ね、衝撃が伝わってくる。

ドスン!ドスッ!

「デチャ!テッジィィィ!!」

見る見るうちにマリモの顔は、紫色に腫れ、血まみれになっていく。

「テ・・テヒィィ・・」

動けなくなったマリモの左肩に、親実装は食らいついた。
コキ!ゴキリ!と骨の砕ける音がして、左肩周辺をを噛み千切ってしまう。

「テ・・テジャ・・ア」

既にマリモは抵抗したくても、動く体力は残っていない。
肩から胸の辺りまでぐしゃぐしゃに食い千切られ、千切れた腕がマリモの足元に転がっていく。

傷口からは血が吹き出ている、右手でこれ以上、血が出るのを押さえようとたが、
押さえている右手の間からは、赤黒い血が止め処なく溢れていった。

「旨いデスゥ!やっぱり仔実装は違うデス」
「こんなもんじゃ足りないデス、全部食べるデス」

肩の上のすみれは大喜びだ、憎いマリモが目の前で、血の海をのた打ち回っている。
クククク、いい気味だ、すみれを苛めるからこうなる・・・すみれは幸せの絶頂を感じていた。

待てよ・・・この糞蟲に任せていたら、一気に食い殺しかねない。
マリモには、じわじわと地獄の苦しみを与えて、殺してやりたい。
そしてすみれに命乞いをする前で、マリモの偽石を砕いてやれば、
どんなに気持ちが、いいだろう・・・

「待つレチ、待つレチ、もっとゆっくり食べるレチ」
「すぐ殺すなレチ、すみれが困るレチ」

見ると親実装は、すみれを睨みつけていた、今まで見た事も無い恐ろしい目だ。

「親子ごっこはやめデス・・・・」

親実装はすみれをいきなり掴み上げる、両手に力を入れていく。
すみれの体から、ゴキゴキと骨の折れる音がした。
排泄口からは緑色の糞が、内蔵と一緒に搾り出された。
すみれの顔は握り締められた影響で、苦悶の顔をあげパンパンに膨れ上がっている。

「すみれは良くやったデス・・・ママの可愛い仔デスゥ」
「2匹も、仔実装を持ってきたデス」

「レチャァ・・ア・・何を・・言ってるレチィ・・」

「今までわざと利用されてやったデス、分からなかったデスか」
「デプププ・・・全くおめでたい奴デス」

すみれは唯一動かせる右手を伸ばして、親実装に何かを訴えている。
その右手を親実装は掴むと、一気にスルメを裂くように縦に引き裂いた。

びちちちぃぃ!
「ッッッッッチャァァァア!」

引き裂いた右半身をすみれに見せ付けると、おいしそうに口に運んだ。

「食った気がしないデス」

そう言うとと、すみれの残った体を地面に叩きつけた。
緑色の塊になった、すみれであろう物体は、ピクリとも動かなくなった。
すみれの最後は、実にあっけないものだった。


親実装が目をマリモに向けた時、背中に痛みを感じた。
その痛みはズブズブとお腹を貫いて、親実装の腹まで貫通したのが見えた。

「デッスゥ・・何デス!」
「お腹から、何か出て来たデスゥ!」
「・・・ぐぐぐ・・デジャァァ・・」

攻撃をしたのはさつきだった、背後に回り拾った竹串で思いっきり背中を刺し貫いた。
親実装は腹を抱えてうずくまり、脂汗をかき始める。
さつきの放った一撃は、偽石を傷つけ、胃袋に大きな穴を開けていた。

親実装はしゃがんだまま動けずに、うめき声を上げている。

その隙にさつきは噴水まで、マリモを引きずってきた。
自分の服に水を含ませ、顔を拭くとマリモがやっと気が付く。

「さ・・さつき・・・」


「マリモお姉ちゃん・・・・気が付いたテチ」
「さつきのせいテチ・・・ごめんテチィ!」

「あいつは・・・」

「・・・まだ生きてるテチ」


さつきが止めるのも聞かず、マリモは立ち上がろうとした。

ピシィ

無理に動かした影響で、偽石にヒビが入り、力が抜けて倒れてしまう。

「ガッ・・ガフゥゥ」
マリモはショックで気を失ってしまう。

実装石のデタラメな再生力は、傷口の再生を始めていたが、
流れ出た血液の再生は、まだ追いついていなかった。

さつきはマリモの背中に刺している、竹串を抜き取ると、
マリモの前で構えてみた、さつきを守る為にマリモが構えていたように。

「マリモお姉ちゃん・・・さつきここを動かないテチ」
「お姉ちゃんの言いたい事は、分かってるテチ」
「さつきだけ逃げろテチ・・・お姉ちゃんはずるいテチ」


うずくまっていた親実装だが、全ての回復は望めそうになかった。
偽石の傷は実装石にとって、全ての再生を遅らせるほど、深刻な物だ。
それでも親実装は、仔実装の肉を食べさえすれば、体も治るはずだと思っている。

噴水付近にいる仔実装に目をやると、さつきが竹串を持って威嚇をしている。
仔実装ごときが、なんで自分に歯向かってくるのか、理解が出来なかった。
自分の前では成体実装すら、命乞いをするのに。
一体こいつらは何を考えているのか、親実装は言い知れぬ恐怖を感じていた。

手足として使っていた子供も、いつの間にかいなくなっている。
肩に乗っていた、親指も今となっては、むかつく存在でしかない。
自分の姿を見れば、傷だらけで竹串が何本も、体に刺さったままだ。
早くこいつらを食ってしまおう、いなくなれば恐怖もなくなる。
食ってしまえば、体の異常も治るだろう。

親実装は立ち上がると、さつきに向かって歩いて行く。


その時、親実装に別の実装石が飛び掛ってきた。
その実装石はガリガリに痩せており、服も汚れて穴だらけ、
見た目にもみすぼらしい、さつきも見た事が無い実装石だった。

動きの鈍くなった親実装だが、大きさは飛び掛ってきた痩せ実装よりも大きく、
次第に形勢は、親実装の方へ傾いてきた。

痩せ実装石に乗りかかると、何度も親実装は殴り始めた。
下になった痩せ実装は、手を上に出して、攻撃を防ごうとする。

親実装は、痩せ実装の手に噛み付き、噛み千切る。

ブチ・・ブチィ!

「まずいデス・・・骨と皮だけデス・・・デボッ!」

とたんに親実装仰向けに倒れ、首を押さえて苦しみだした。

「ゲッ!ゲッ!・・・ゴボッゥゥ!」
「な・・何が・・・体が変・・デス」

痩せ実装は手に実装コロリを握っていた。
手を出して噛み付きやすいように、わざと食べさせるように仕向け、
親実装は、その罠にまんまと嵌ってしまった。

「デッスゥゥゥゥン!」

親実装は泡を吹いて、断末魔を上げ絶命した。

痩せ実装は手を押さえながら立ち上がり、さつきの前で座った。

さつきは痩せ実装に、竹串を突き出し威嚇をしていたが、
痩せ実装の顔をみると威嚇をやめた。

みすぼらしい痩せ実装だが、優しそうな顔だ、
自分達に危害を加えない事が、雰囲気からも伝わってきた。

「・・・おばちゃん・・助けてくれたテチか」

痩せ実装はマリモをそっと抱き上げた、マリモは気を失ったままだ。

さつきは、マリモが連れて行かれるのでは無いかと、不安になった。

「さつきのお姉ちゃんテチ・・」
「マリモお姉ちゃんテチ・・・」

痩せ実装はやっと口を開いた。

「マリモって言うデスか」
「可愛い名前デス」

そう言うとマリモに痩せ実装は、頬擦りをした。

さつきはやっとこの痩せ実装が、マリモの母親だと気が付いた。

「おばちゃんは・・・マリモお姉ちゃんのママテチ」
「マリモお姉ちゃん待ってたテチ」
「商店街でずっと・・」

「知ってたデス」
「マリモが商店街にいた事は・・」

「知ってて迎えに来ないなんて、あんまりテチ」
「何で迎えに、来なかったテチ」

「実装石は人間さんに飼われる事が、一番の幸せデス」
「一度・・マリモは人間さんと一緒に、公園に来たデス」
「隠れて見てたデス・・・幸せそうだったデス」

さつきには痩せ実装の言ってる意味が、分からなかった、
ママを待っているマリモお姉ちゃんに、会いにも来ないで、
人間さんと一緒に生きる事が幸せ・・・

「マリモお姉ちゃん、可哀相テチィ!」
「おばちゃん!意地悪してたテチ」

さつきに笑みを浮かべると、痩せ実装は立ち上がった。

「マリモは連れて行くデス」
「傷も酷いデス・・・」
「さつき・・・私はこの公園から出て行くデス」
「マリモと一緒に生きていくデス」

さつきの予想が当たってしまった、マリモを抱き上げた時から、
そんな気がしていたからだ。

これからもずっと、マリモお姉ちゃんと一緒に、生きていこうと思っていたのに。
ママが連れて行ってしまう・・・ママが連れて行くんなら、さつきは何も言えない。

マリモお姉ちゃんもママに会いたがっていた、さつきが間に入る訳には行かない。
でも・・・マリモお姉ちゃんは、さつきのお姉ちゃん・・・・嫌だ!

・・・・・・これでお別れなんて・・・絶対嫌だ!

「絶対!駄目テチ!」
「マリモお姉ちゃんは渡さないテチ!」
「おばちゃんなんか、ママの資格なんか無いテチ」
「今更・・今更なにがママテチィ!」

痩せ実装は、さつきに優しく答える。

「さつきは優しいデス・・」
「さつきと一緒なら、マリモも幸せデス」
「マリモが商店街に帰りたいなら、帰ってくるデス」
「マリモが決めることデス・・・ママには分かるデス」
「だから・・・・それまで良い仔で待ってるデス」

痩せ実装は、公園の出入り口まで歩いて行った。
さつきもマリモを、涙をためて追いかけて行く

「さつきも・・・さつきも一緒に行くテチ」
「連れて行っちゃ駄目テチ」

公園の外に出て、商店街とは反対方向に向かって行く。
さつきも一生懸命、追いかけて行く。

「言っちゃ駄目テチ」
「さつき一人になっちゃうテチィ」

そして公園の外まで歩いて行ってしまった。
さつきはこれ以上行った事が無いので、境になっている道路で止まってしまう。

「マリモお姉ちゃん待ってるテチ」
「さつき・・さつきずっと待ってるテチィー」

さつきは小さくなって行く、マリモのママをずっと見送った。
完全に視界から消えても、その場で立ち尽くしていた。





さつきが商店街に戻った頃、既に朝になっていた。
ウメが心配になって、公園まで迎えに行こうとしている矢先に、さつきが帰って来た。
さつきの様子を見て心配したが、さつきの体が無事なので安心したのか、さつきを抱き上げた。

さつきから、昨夜起こった事を聞いて、胸を痛めたが、
マリモが死んだ訳じゃない事を知り、ほっとしている。








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さつきのママの死体や、同属食い実装親子の死体は、保健所が処分をした。

賢い実装石も、糞蟲実装石もデスミキサーに掛けられ、
死体は肥料として、等しく人間の役に立っていく。




さつきは母実装が死んでしまった為、ウメの家に引き取られた。

他にもさつきを引き取りたいと、申し出があったが、
さつきがウメの家が良いと言うので、申し出た者もあきらめた。

見張り実装が居なくなったので、さつきにどうかと話が出たが、
さつきは自分に向いていない、さつきにはさつきの出来ることがしたいと言うので、
見張り実装は今、この商店街に居なくなってしまった。


ヤスはマリモがいなくなって、淋しそうにしているが、元々ママが見つかるまでの居候、
ママが見つかったんなら、それで良いじゃないかと、強がりを言っている。

魚屋はさつきを引き取りたいと、申し出た一人だが、
さつきがそう言うんじゃ、しょうがないとあきらめた。




暫くしてウメの家に長男が帰って来た、都会で結婚生活をしていたのだが、
一緒になった女性とは、性格が合わずに別れてしまった。

母親には兄である「」が連れて行かれ、
父親には妹のみどりという名前の、5歳の女の子が引き取られた。

長男は養育費や慰謝料が伸し掛かり、都会での生活をあきらめ、
部屋代の掛からない、母親であるウメの所を頼ってきた。

母親と兄を同時に失ったみどりは、ウメの家に来てからも泣いてばかりいた、
電気を消して部屋に閉じこもり、一言も話さなくなってしまう。

父親とウメは心配して、みどりを気にかけるが、返ってみどりは心を閉ざしてしまう。

勿論さつきも、みどりの事は自分の様に心配したが、
さつきが近づくだけで、みどりはさつきを攻撃した。

みどりの事をあきらめないさつきに、みどりは何かとあたる様になった。
さつきが近づいてきたら、物を投げたり、突き飛ばしたりした。

そんな折、みどりの苛めがエスカレートしてしまい、さつきの腕を折る事になる。
手に持っていた硬い絵本を投げつけたからだ、絵本の角はさつきの腕に当たり、
脆い仔実装の腕は、ぽっきりとキレイに折れてしまう。

みどりは自分の行為が怖くなり、知らんぷりを決め込んでいたが、
さつきは自分で転んだんだと、みどりの事は一切話さなかった。

みどりは今日も、部屋の電気を消して壁を見つめていた。
ママはみどりを捨てたんだ、お兄ちゃんは連れて行った、でもみどりは連れて行かなかった。
別れの際もみどりに一言も声をかけなかった、お兄ちゃんもみどりを少し見ただけで、
ママに連れられて行った・・・・ママやお兄ちゃんはみどりが邪魔なんだ。

みどりはいらない子だ・・・パパやウメお婆ちゃんも、みどりの事は嫌いに決まってる。
みんながみどりを嫌いなら・・・みどりも大嫌いだ・・・



「テチィ・・」


またあいつだ・・・酷い目にあわせたのに、まだ懲りないんだ。
壁を見て考え事をしていると、必ずあいつが来る。
テチテチ何を話しているのか、さっぱり分からない。

みどりにさつきは近づいて来る、みどりもやりすぎたと反省しているのか、
今日はさつきを攻撃しない、さつきがみどりを見上げて懸命に何かを話している。

「テチテッチ・・テチィ」(みどりちゃん・・・さつきテチ」

『・・・・・・』

「テチ テチテチ」(ここは暗いテチ」

『・・・・・・』

「テチテチ・・テッチィ」(ウメおばちゃんの所に行くテチ」

『・・・・・・』

みどりは立ち上がり部屋を出て行った、後を追うようにさつきも追いかける。
台所ではウメが夕食の用意をしていた、家族が増えたので毎日が大変なようだ。

『・・・お婆ちゃん』

小さな声で呼んだが、ウメには聞こえなかった、みどりは服を引っ張ってみた。

『・・・!あら・・みどり』
『珍しいわね・・あなたから話しかけるなんて』

途切れるような小さな声で。みどりは話す。

『さつきが話しかけてくる・・・』

ウメはみどりの足元で、心配そうに待っているさつきを見て、ピンと来た。
いつもポケットにしまってある対話型リンガルを、みどりに渡した。

『はい、みどりにあげる・・・みどりの好きに使いなさい』

みどりは足元のさつきに声をかけると、また部屋に戻って行った。

『さつき!こっちよ』

「テチィィ」

『ふぅ・・・またリンガル買って来なきゃ』

そう言うとウメは、また夕食の準備を始めた・・・心なしか嬉しそうである。










あれから季節は、秋の終わりに差し掛かかり、
吹く風も冷たくなってきた頃の日曜日・・・

さつきは玄関で、日課の呼び子に行こうとしている。
横には面白くないという顔をした、みどりの姿があった。

『さつき、また行っちゃうの』

「さつきの仕事テチ、今日は魚屋さんテチ」

『みどりつまんない・・』
『今日は休んじゃえ・・・どうせ魚屋だし』

無理な事だと分かっていたが、さつきを少し困らせたかった。

「またお昼に、遊びに来てテチ」
「さつき・・みどりちゃんを待ってるテチ」

『うん・・・またあそこで待ってるの・・』

「お昼はあの場所って、決まってるテチ」

奥の部屋から、ウメの声がみどりを呼んだ。 

『みどり!いつまでやってんの』
『まだゴハン途中でしょ!食べちゃいなさい』

みどりはさつきに、バイバイをすると声の方へ走って行った。

みどりとさつきはあれ以来、大の仲良しになっていた。
みどりより小さく弱い実装石にみどりは、パパやウメに話せない不満を何でも話した。
さつきも自分のママや死んだ事、お姉ちゃんであるマリモが、連れて行かれてしまった事、
二人の境遇が一緒だと知ると、二人は実の姉妹のような間になった。




お昼になりさつきは、お気に入りの場所・・・あのダンボールに入っていた。
ダンボールに入っては、マリモの事をいつも思い出し、なぜ帰ってこないのかと、
いつも溜息をついていた。

「ふぅ・・・マリモお姉ちゃん」
「今頃どうしてるテチ」
「いつになったら帰ってくるテチ」

さつきはダンボールから公園を眺めていた・・・公園にはいい思い出が無かったな・・
ママも公園で死んじゃったし・・・マリモお姉ちゃんが、連れて行かれたのも公園だ・・

さつきはかつてのマリモの様に、公園を見つめていた、
マリモが連れて行かれた公園から、商店街へ走ってくるんじゃないか思っていた。

現実はマリモと同じで、いつまで待っても帰って来なかった。


公園から風が吹き上げてくる、その風は砂埃を連れて、さつきにも吹き上げる。
さつきの目に砂埃が入り、さつきは目をこすって、涙を拭いた。

やっと目が開き、見上げるとみどりが座って、さつきを笑って見ていた。

『へへー・・さつき泣いてるぅ?』

「違うテチ・・目にほこりが入っただけテチ」

『本当?ここに来るとさつき、いつものさつきじゃないから』

みどりはダンボールに入っている時のさつきが、いつもより暗い事を感覚的に感じていた。
さつきもそんな姿を見られるのが嫌で、元気に振舞ったが、返って不自然さを感じさせた。

みどりは息を切らせている、どうやら走ってきたようだ、後からウメとみどりの父親が歩いてくる。
みどりの父親を見ると、ヤスと魚屋が話しかけてきた。

昔の悪ガキトリオが復活した、ヤスは昔の友達が帰って来たので嬉しそうだ。
ヤス、魚屋、みどりの父親、3人の笑い声が周りに響いてくる。


みどりとウメはさつきと一緒にお昼を食べた、毎日繰り返される日常になっている。
魚屋がみどりに話しかけた。

『さつきといつも一緒だなー、みどりちゃん』

みどりは口におかずを入れたまま、元気に答える。

『うん!だってさつきは私の妹だもん』

『よっし、今日はさつきと一緒に、俺んち手伝っていくか』

『うん!手伝う!みどり手伝う・・・いらっしゃいませー』

さつきは商店街で生きていて、幸せだと思った、
この幸せは全て、マリモお姉ちゃんが、築いた物。

マリモお姉ちゃんが、さつきに残してくれた・・・・大切な財産。








ガサリ・・




幸せな様子を商店街の入口にある茂みから、羨ましそうに見ている目があった。

すみれだ!・・・すみれは生きていた。
叩きつけられ、緑の塊になったすみれだが、しぶとく再生をしていた。

その姿はいびつに再生した右の手と足は、まるでミミズのような感じで、
満足に歩く事もままならい、皮膚は赤くただれて実装石とは、誰も分からない生物に見えた。

肩から脇に巻かれたどす黒い布は、かっては実装石の服であった物が、皮膚にこびり付いている。
普通なら死んでしまう筈のダメージも、すみれの生命力は死ぬ事さえ許してくれなかった。

自分で餌を満足に取れないすみれは、本来実装石にある再生力を利用出来なかった。
手近にある雑草を齧り、自分にたかる蝿から孵化した、蛆虫を食べて生き延びていた。

この程度の栄養では再生どころか、生きて行く事さえ難しく、再生に回す栄養などわずかな物だ。
すみれの再生は時間が経ってしまった為、そのままの姿で固まってしまった。

「さつきお姉ちゃんレチ・・・」
「幸せそうレチ・・・」
「ニンゲンと一緒レチ・・・」
「マリモはいないレチ・・・死んじゃったレチか」

幸せそうに人間に囲まれる、さつきを見てなぜすみれには、
誰も振り向いてくれないのか、好かれたくて一生懸命、生きたのにと考えていた。

すみれとお姉ちゃんとは何が違うんだ、同じ実装石なのに、今の境遇はこんなにも違う。

さつきにみどりが抱きついている、羨ましい・・すみれもお姉ちゃんに抱きついていたな。

「帰りたいレチ・・・さつきお姉ちゃん・・」
「すみれはここレチ・・・ここにいるレチ」

帰ろうと思えば帰れた、優しいさつきお姉ちゃんなら、すみれを許してくれるかもしれない。
すみれは自分の姿を、お姉ちゃんにだけは見せたく無かった。
哀れんだ目を、お姉ちゃんだけには向けられたくなかった。

「ずっと・・・ずっと一緒レチ」
「さつきお姉ちゃんは、すみれのお姉ちゃんレチ」

「ずっと・・・・ずっと・・・レチ・・・」

すみれの存在は誰の目にも止まる事なく、黒い塊になってしまう。
やがて黒い塊は腐って溶けてしまい、すみれが隠れていた茂みの栄養分となった。










みどりと話していた魚屋が、思い出したように話し始めた。

『風の噂で聞いたんだけどさ・・・隣町に寂れた商店街があったろ』

ヤスがその商店街を知っていたのか答えた。

『ああ確か以前のここよりやばいって「」商店街だな』

魚屋は話を続ける。

『俺もさ人事じゃないから、気にしてたんだけど』
『何でも・・あの商店街に仔実装がいるらしいんだよ』

聞いていたウメとさつきは、直感したそのこ実装はマリモじゃないのかと。

 『本当なの、魚屋、詳しく聞かせて』

さつきもダンボールから、必死になにかを話しているが、
リンガルでも拾えないほど興奮している。

『いや、あくまで噂だから話半分でな・・』
『いきなり現れて、横柄な態度を取ってたんだが』
『人の良い豆腐屋の婆さんが、引き取ったそうだよ』
『豆腐屋の場所は、商店街の入口だって言ってたよ』
『今じゃ店番をする仔実装って噂が流れてきたんだ』

さつきとウメはマリモに違いないと思った、でも・・・何で隣町なのか。
もしかしたらマリモではないのか、マリモならこの商店街に来る筈だ。

話し合ってウメは来週、息子の車で確認に行く事になった。
みどりとさつきも一緒に。

次の週、息子の車で商店街の前まで来たウメ達は、
商店街の前にきた、するといきなりさつきが走り出した。


「マリモお姉ちゃん・・マリモお姉ちゃん」
「さつき、待ってったテチ」
「ハアハア・・あの入口にマリモお姉ちゃんが」

「マリモお姉ちゃぁぁんーー!」





隣町の実装石は、マリモでは無かった、それを知ったさつきの落胆も相当なものだ。
どちらにしても商店街にとって、実装石は幸運を呼んで来た。

寂れた隣町の商店街も少しずつだが、客が帰って来て、
かつての賑わいを、取り戻そうとしている。

商店街の入口には、お客を迎える為に仔実装が座っている。
まるで商店街を守るように。


見張り実装は、自分の居場所を捜して人間の為に生きていく。
仲間である実装石を犠牲にして、人間の中で生きて行く為。

自分を必要としてくれるなら、実装石だろうが人間だろうが、
それは問題では無かった、すみれの生き方とさして変りは無い。


それでも自分に優しくしてくれた思いは伝わり、優しくしてくれた者へ愛情は残る。
隣町の豆腐屋に優しくして貰った、優しくしてくれた者の為に、何かをしたい。

仔実装は偶然、見張り実装に、なっただけかも知れない、
自分を拾ってくれた人に恩を返したくて、仔実装は見張り実装になった。



その思いはマリモと同じで、優しくしてくれた者へ送るプレゼントとなった。




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あれ?10話って書きましたが、9話で収まっちゃいました。

僕的には、すみれが主人公になっていました。

終わり方はいくつか考えたんですが、キレイな終わり方でまとめました。

次は短めのスクに挑戦したいと思います
















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1 Re: Name:匿名石 2023/07/19-07:55:06 No:00007562[申告]
マリモ死んじゃったんかなあ…いい作品でした
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