タイトル:【馬】 マトリョーシカアタック 実装side
ファイル:二番煎じ 後付.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1344 レス数:0
初投稿日時:2010/10/09-19:56:21修正日時:2010/10/09-21:20:27
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 山で暮らしていたら、白い服を着た変な人間を見つけた。
 久しぶりに見る人間に、なにか寄越せと威嚇したらひどく驚かれた。もしかしたら食べ
物を奪えるかもしれない。強くなった今の自分なら人間にも勝てる。そう思って襲いかか
ったら返り討ちにあった。

 殴られ蹴られ、何度か殴り返したが大して効かず、逆に頑丈な身体を壊されていく。

「死んでたまるかデズアァ……ァァアァ!」

 咆哮を上げ、実装さんは男に突撃した。
 全身に痣を作り、何ヶ所も骨が折れ、左腕は動かない。あちこちが痛く、苦しい。人間
と実装石の圧倒的な力の差を実感しながらも、実装さんは死に物狂いで戦っていた。

「これで終わりだ」

 ドンッ!

「デボァァ……!」

 男の右拳を胸に受け、実装さんが吹っ飛ぶ。自分より小さいはずの人間とは思えない、
強烈に重い一撃だった。衝撃が肉を突き抜け、その奥にあった偽石に届く。
 胸あった偽石にヒビが走った。それをきっかけに度重なったダメージが噴出する。いく
つもの亀裂によって割れていく、命の本体。

(デェェ……。こんな事になるなら、ニンゲンに手出すんじゃなかったデスゥゥ!)

 両目を白く濁らせながら、実装さんは構えを取った男を見つめた。
 自分はあと数秒で死ぬ。
 もう身体を動かす事もできない。ただ倒れていくだけ。

(せめて、死ぬ前にこのニンゲンを……一回殴ってやりたかった……デス……)

 その思いを最後に、実装さんの偽石は砕けた。





 砕けた偽石の破片。

 そのひとつが実装さんの胸の肉を巻き取り、一瞬にして成体サイズの実装石を一匹作り
上げる。形は違えど、それは一種の強制出産だった。砕けた偽石の情報をコピーした実装
石が、実装さんの口から吐き出される。

「ぶん殴ってやるデシャアァァ!」

 自分の生みの親の身体を蹴り、実装石がニンゲンへと飛び掛かった。
 親である実装さんの記憶と知識を、中途半端に受け継いだ個体。実装さんの今際の際の
願いが強くその意識に刻まれていた。目の前のニンゲンを殴ってやる、と。
 目の前のニンゲンが何倍にも大きくなっているが、怒りの前には無意味である。

 ドッ。

「デバァ!」

 男の放った左の正拳が、成体実装石を吹っ飛ばした。
 それほど強い突きではないが、成体実装石の身体を壊すには十分だった。手足があらぬ
方向に折れ曲がり、胴体も内臓も潰れている。

(このクソニンゲン、ぶん殴ってやるデスゥゥ……!)

 その思いを最後に、実装石の偽石が砕けた。





 砕けた偽石の破片。

 そのひとつが実装石の身体の肉を巻き取り、一瞬にして仔実装を作り上げる。砕けた偽
石の情報を不完全にコピーした仔実装が、成体実装石の口から強制出産された。

「クソニンゲン、ぶん殴らせろテチャァアアァ!」

 成体実装石から吐き出された勢いのまま、仔実装はニンゲンに向かっていく。小さな腕
を構えて、自分の身体の十数倍も大きなニンゲンへと。

「………。てい」

 ポフッ。

「チュバァ!」

 男の放った緩い右拳が、仔実装を吹っ飛ばした。
 即席で作り上げた身体、しかも仔実装である。緩い拳でも身体を破壊するのには十分す
ぎた。衝撃が骨と臓器をぐしゃぐしゃに潰している。
 その姿は、壊れた人形だった。

(このクソニンゲン……!)

 その思いを最後に、仔装石の偽石が砕けた。





 砕けた偽石の破片。

 そのひとつが仔実装の身体の肉を巻き取り、一瞬にして親指実装を作り上げる。砕けた
偽石の情報を粗悪にコピーした親指実装が、仔実装の口から強制出産された。

「このクソニンゲンレチャァアアァ!」

 仔実装から吐き出された勢いのまま、親指実装はニンゲンに飛んでいく。
 ニンゲンが一瞬戸惑いの気配を見せたのには、気付かなかった。

 ペチ。

「レヂュ……!」

 自分よりも巨大な手に払われ、後ろに吹っ飛ぶ親指実装。その身体はあっさりと壊れて
いた。ただでさえ脆い親指実装。しかも、粗悪な強制出産のように作られたのだ。普通に
触れただけでも、身体が壊れるだろう。

(クソニンゲン……)

 その思いを最後に、親指装石の偽石が砕けた。





 砕けた偽石の破片。

 そのひとつが親指実装の身体の肉を巻き取り、一瞬にして蛆実装を作り上げる。砕けた
偽石の情報を乱雑にコピーした蛆実装が、親指実装の口から強制出産された。連続コピー
の繰り返しで、情報はかなりすり減っている。
 だが、その自覚は無かった。

「クソニンゲン レフゥウウゥゥ!」

 親指から吐き出された勢いのまま、蛆実装はニンゲンに向かっていく。
 かつて実装さんだった自分よりも小さかったニンゲンが、既に自分の数十倍の大きさに
なっている事には気付いていない。

「えい」
「レヒャァァァァ!」

 緩いデコピンが、蛆実装を吹っ飛ばした。
 かなーり手加減した指の一発。人差し指を前に出す程度の弱い動きである。それでもチ
リィ、儚いと形容される蛆実装には十分に致命的な一発だった。
 顔が潰れ、首が折れ、内蔵が破裂する蛆実装。

(クソニンゲン…。プニプニ…レフ…)

 その思いを最後に、蛆装石の偽石が砕けた。





 砕けた偽石の破片。

 そのひとつが蛆実装の身体の肉を巻き取り、一瞬にして米粒実装を作り上げる。一セン
チにも満たない、顔と胴体だけの粗悪な実装石。

「クソニンゲン…プニプニ シテ ヘフゥ…ゥゥ…!」

 その思いの力だけで、男に向かって飛んでいく米粒実装。

「ふッ」
「ヘヒャ…ァァァ……!」

 吹き付けられた吐息に、米粒実装が吹っ飛ぶ。空気の壁によって、首の骨が折れ、あち
こちの臓器が潰れていった。

(プニプニ…シテ…ヘフ…)

 その思いを最後に、米粒装石の偽石が砕けた。




 砕けた偽石の破片。

 そのひとつが蛆実装の身体の肉を巻き取り、一瞬にして塵実装石を作り上げる。一ミリ
にも満たない、楕円形の身体に目と口がくっついただけの粗悪な実装石だった。体内もま
ともな臓器はなく、ただ飾り程度の脳と胃袋もどきがあるだけ。
 劣化コピーの繰り返しで、もはや実装さんだった頃の情報は残っていない。

「ニンゲンサン ヘゥ…ゥ♪」

 残っている情報は、目の前の山のように巨大な物体がニンゲンであること。そのニンゲ
ンに、何かの強い好意ようなモノを向けていたことだけだった。

 ヒュゥ。

 風が吹き抜ける。
 決して強いとは言えない風。
 だが、塵実装を吹き飛ばすには十分すぎる力だった。

「ヘゥゥゥ…! ゥゥゥ…!」

 文字通り塵のように舞上げられながら、塵実装は遠くに映ったニンゲンの姿を見つめて
いた。くるくると回転する視界。その中でニンゲンの姿が小さくなっていく。何が起こっ
たかを判断する知能も失われていたが、ニンゲンが自分から離れていくことは理解した。

「ニンゲンサン ニンゲンサン…! ニンゲンサン イッチャ イヤ ヘゥゥゥゥ!」

 小さくなっていくニンゲンに、必死に声をかける塵実装。
 しかし、その願いが叶うことはなかった。


  END


 リクエストがあったので


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