とある山中。 「デズアァ……ァァアァ!」 咆哮する巨大な実装石。 身長二メートルほどの身体を持つ、いわゆる実装さんだった。しかし、その全身に痣が 作られ、あちこちから出血している。肩を砕かれた左腕は力無く垂れ下がったまま動かな い。呼吸も酷く乱れていて、瀕死状態だった。 それと対峙するのは、白い道着を着込んだ無精ヒゲの男である。いかつい身体と堅く握 られた拳。白い道着は、実装さんの返り血を浴びて汚れている。 突進してくる実装さんに、男は強く踏み込んだ。 「これで終わりだ」 声に出さずにそう宣言し、右拳を突き出す。脚から腰、腰から肩、肩から拳へ。不可視 のエネルギーが流れるように伝わっていく。全身の筋肉の収縮を重ねて、最大まで威力を 高められた正拳突き。 ドンッ! 「デボァァ……!」 重い拳を胸に受け、実装さんが吹っ飛んだ。 両腕を広げて後ろに倒れていく実装さん。度重なる攻撃によってボロボロに傷ついた身 体にトドメが刺された。その両目が白く濁っていき、死を伝えている。 瞬間、その三角口が大きく開かれた。 「デシャァァァアアァァ!」 開いた口から、一匹の成体実装石が飛び出してくる。 痣も傷もなく、両目もきれいな赤と緑の健康体の実装石だった。実装さんの身体を両足 で勢いよく蹴り、跳躍する。男に向かって。 ドッ。 「デバァ!」 男の放った左の正拳が、成体実装石を吹っ飛ばした。 硬い拳の一発で、手や足があらぬ方向に折れ曲がり、身体も潰れた実装石。普通の実装 石ならば、素人が思い切り殴るだけで身体は使い物にならなくなる。 だが。 成体実装石の口が大きく開き、 「テチャァアアァ!」 仔実装が一匹飛び出してきた。 成体実装石のように男に飛び掛かっていく。 「………。てい」 ポフッ。 「チュバァ!」 男の放った緩い右拳が、仔実装を吹っ飛ばした。脆いと言われる仔実装。緩い一撃だっ たので粉々に砕けることはなかったが、口から血を流し手足も千切れかけ。壊れた人形の ようになっていた。 だが。 ボロボロの仔実装の三角口が大きく開き、 「レチャァァ!」 親指実装が飛び出してきた。 男は一瞬迷ってから、左手で親指実装を払い退ける。 ペチ。 「レヂュ……!」 後ろに吹っ飛ぶ親指実装。人間ならば触られた程度の一発でも、自分の勢いをカウンタ ーで食らってはひとたまりもない。身体はあっさり壊れてた。 だが。 「レフゥウウゥゥ!」 親指実装の口が開き、蛆実装が飛び出してきた。 尻尾をぴこぴこと動かしながら、空中を泳ぐように男に向かってくる。 数瞬躊躇してから、男は右手を持ち上げた。 「えい」 「レヒャァァァァ!」 緩いデコピンが、蛆実装を吹っ飛ばした。 かなーり手加減した指の一発。デコピンというよりも、人差し指を前に出す程度の動き だが、チリィとか儚いとか形容される蛆実装には十分に致命的な一発である。 だが。 「ヘフゥ…ゥゥ…!」 蛆実装の口が開き、さらに小さな実装石が飛び出してきた。 男は顔を強張らせて、目を凝らす。体長一センチにも満たない米粒くらいの蛆実装だっ た。どういう原理か、壊れた蛆実装の身体を脱ぎ捨て、男の方へと飛んでくる。 どう対応するべきか、かなり真剣に悩んでから。 男は息を吸い込み、口を薄く開いた。 「ふッ」 「ヘヒャ…ァァァ……!」 吹き付けられた吐息に、米粒実装が吹っ飛ぶ。 蛆実装よりも小さく脆い米粒実装。直接触れるどころか、勢いのある空気の流れをぶつ けられるだけで、その身体には使い物にならななくなっていた。 だが。 「!」 男は目を見開く。鍛え抜かれた動体視力が辛うじてソレを捉えていた。いや、意図的に 見つけたというより、偶然目に入ったと表現する方が正確だろう。 何にしろ、ソレを見てしまった。 「ヘ…ウゥ…ゥ!」 米粒実装の口が開き、さらに小さい実装が飛び出してくるのを。 全長一ミリ程度の蛆実装のようなモノ。もはや緑色の塵と言うべき、極小の実装石だっ た。潰れた米粒実装の口から、男めがけてゆるゆると飛んでくる。ともすれば見失いそう な小ささだが、何故か空中を飛ぶ様がはっきりと見えた。 ヒュゥ。 風が吹き抜ける。 決して強いとは言えない風。 塵実装は消えていた。 END 以前にも同じようなネタ書きましたけど、実装マトリョーシカを読んで書いてみたくな りました。 過去スク 2191.【虐?】みんな実装石 2190.【虐】究極のプニプニ 2172.【観】禁忌の実験 2169.【観察】ある獣装石の一生 2167.【虐】つまようじ 2157.【実験】姉妹のジレンマ 2152.【虐】しまっちゃおうねー? 2147.【馬虐】最強の虐待法 2142.【パ・色々】刈り取るモノ 2141.【馬】最強の実装石 2138.【観怪】〈紫〉歩き回る刃物 以下省略
