実装石の両目は妊娠時に緑色になり、出産時に赤色になるのはよく知られた事実だ。 その過程を外部からの操作でシミュレート、つまり目を絵具などで塗ることによって強制的に出産させることができるのもよく知ら れた事実である。 では、その過程を途中で止めてしまったらどうなるか。 妊娠色にしてそのまま永遠に出産色にしなかったらどうなるのか。 これまた良くある実験で結果はすでに出ているのだが、一度は自分の手で確認してみたい。 このところ実装実験に凝り始めたトシアキは、そう考えると居てもたってもいられなくなり、金平糖を片手に公園に繰り出した。 金平糖をばらまくと、たちまち愚かな個体がうようよ寄ってくる。 トシアキはその中から体格がいい成体を見繕うと、夢中で甘味をむさぼるその後ろに近付き、素早く回収袋に放り込む。 三体ほど確保したころには既にばらまいた金平糖は野良たちの腹に消え、取ったの取らないのとデスデスデシャデシャ醜い喧嘩をし ていたり、もっとくれとトシアキの脚にすがりついたりしている。 中には全く関係のない通りがかりの人にせがんでいる奴もいる。 三体もあれば予備も含めて十分。 そう判断したトシアキは長居は無用とばかりにその場から離脱した。 デギャデギャ喚く実験体共を軽くボコり、釘で板に固定。 そこに用意したるは緑のマジックペン。 右目をきゅきゅーとと塗りつぶすと全ての個体が仔を宿す。 板ごと倉庫に設えた大きめの水槽に放り込み、カメラをセットして準備完了。 あとはモニターで適当にチェックしながら来るべき時を待てばよい。 ……だが、彼は致命的なミスを犯していた。 実験開始から十日。胎教が止む。 通常であればそろそろ出産の時期だ。 そろそろデータ収集開始かな。 トシアキはそんなことを考えながらモニターの前でうとうとしていた。 と。 天井から何かが落ちてきた。 なんだろうと思ったとたん、シャキンと音がして肩に激痛が走る。 「ぎゃぁっ!」 思わず声をあげて振り向けば、そこにはらんらんと憎しみに燃える赤と緑のオッドアイがあった。 「ボクゥ……」 「実蒼石?何故?」 気づけば窓の向こうにも大量の影。 カカンと硬い物をぶつかりあう音がしたかと思うと、ガシャンとガラスが割れ、実蒼石たちがぞろぞろと侵入してくる。 どんと何かが部屋のドアにぶつかると、侵入してきた実蒼石が何匹か向かい、仲間を招き入れる。 もちろん天井からも次々降ってくる。 月明かりが差し込む部屋の中、トシアキ以外の全ての瞳が憤りの炎を宿していた。 「な、なんだよ、お前ら」 怯むトシアキに、一匹の実蒼石が無言でモニターを指し示す。 「え?」 見れば、実装石の一匹に変化が現れていた。 短い妊娠期間を終え、いよいよ出産に移るべく、身体が指示を出したのであろう。左目が赤く染まっていた。 右目の色はマジックペンの緑のまま。 その配色は、今目の前で怒気をあげる者達と同じだった。 「実蒼化?まて、俺はそんなつもりじゃ……」 「ボクゥ!」 トシアキの言葉を遮り、一匹の実蒼石が吼えた。 たちまち多くの実蒼石がトシアキに襲いかかり、椅子に抑え込む。 「よせ、何をする」 先ほど吼えた実蒼石が鋏をきらめかせると、トシアキのシャツが裂ける。 露わになった薄い胸板に、さらに開いた鋏が突きつけられる。 「ちょ……う、うわああああああぁっ!」 鋏の刃をナイフのように使い、ぎりぎりと憎しみをこめて大きく十字を刻む。 「やべでっ、うがっ!がぁぁぁっ!!」 目をかっと見開いて身体を震わせるトシアキ。 そこへ、別の二体が同時に鋏を振りかざした。 「うぎゃぁぁぁっ!」 トシアキの目に二本の鋏が深々と突き刺さった。 「いだぃ、やべっ!」 だが、実蒼石たちに容赦するつもりはない。 鋏をそのままぐりっと捻る。 「うぎゃぁぁぁ!」 たちまちトシアキの絶叫が上がる。 さらに血で赤く染まった胸に数匹が襲いかかる。 傷に手を伸ばし、何度か擦ると、べりべりと生皮をはがし始めた。 「ぎぃぃっ!もう、やめでっゆるじでっ!!!」 激痛に泣きわめくトシアキ。だが、大量の実蒼石にがっちり拘束された身体は動かない。 だが、その中で不意に解放された場所があった。 それは、股間。 吼えた実蒼石の鋏がトシアキのズボンとトランクスを切り裂いたのである。 萎縮したペニスに冷たい鋏の刃が触れた。 「がっ?やめ、ぞこはっ」 問答無用で刃が閉じる。 ざくりという感触と共に激痛が走る。 「グギャァァァッ!!!」 だが、その次にはもっと過酷な痛みが待ち受けていた。 彼女は鋏を返し、柄で睾丸を挟み込んだ。 「グギョォ?ヤベデッ、ヤベデグダザイ」 トシアキの濁った哀願を聞き流し、実蒼石は力を込めていく。 男の一番敏感な部分が、みしみしと軋み。 やがて力に抗しきれなくなり、ぐしゃりと潰れた。 「ビギヤァァァァゲアアアアア!!!」 トシアキは訳のわからない絶叫を上げ、口から泡をふきだした。 そしてそのまま白目をむいて気絶する。 しかし、禁忌を犯した男に安息はない。 残ったもう一方をつぶされる痛みで、無理やり意識を取り戻させられた。 目と胸と股間から血を吹きながら、トシアキは呟く。 「うぅ……ぼうひどおもいにごろじでぇ……」 「ボクゥ?」「ボク」「ボクボク」 実蒼石達は何かを相談するように小声で囀り、それからトシアキの両胸に鋏を垂直に当てた。 そのまま力を込めると、ずぶりと鋏が沈んだ。 絶叫は上がらない。 肺に穴があき、力を込めてもそこから空気が漏れてしまうのだ。 ひゅうひゅうとかすかな音を立てるトシアキを残し、実蒼石達は倉庫へ向かう。 種を侮辱する存在をこの世から消し去るために。 (fin) [あとがき] 実蒼禁忌、設定にありながら実際に切り刻まれた人を書いたスクを見たことなかったので自分で書いてみました。 【過去スク】 【虐】【紅】 化粧 【あっさり虐紅】 風呂 【託】 奇跡の価値は 【託】 一部成功 【観察】 幸運の無駄遣い 【観察】 禍福は糾える縄の如し 【狂】 月下の詩 【託愛】 特上寿司 【謎】 幻のエメラルド(1) 【謎】 幻のエメラルド(2) (未完) 【託狂】 私の子供 【観察】 糞虫達(1) 【愛】 糞虫達(2) 【愛】 糞虫達(3) 【虐】 糞虫達(4)
