テチコが目覚めると、目の前に緑の天井が迫っていた。 「ですぅ?」 首を傾げながらその天井を押すと、ピリパリと軽い音を立てて裂けてゆく。 向こう側の高い天井は白かった。 そこから電灯がぶら下がっている。 それは見慣れた俊宏の部屋の天井に似ているようで、違う。 もう一度首をかしげたところに、聞き覚えのある声がした。 「あら、目が覚めたのね」 「ですです〜!」 声の主、章乃に抱きつこうと立ち上がろうとして、ふらついた。 「ダメよ、無理したら。それよりお腹すいてるでしょう?」 言われてみてテチコは気がついた。 確かに今までにないほどお腹がすいている。 「はい、どうぞ」 「です!」 章乃に差し出された丼を受け取り、中身をあっという間に平らげた。 「はい、じゃあこれデザート」 丼を返すと、引き換えに金平糖のようなものを渡された。 テチコはそれを指でつまみあげ、疑いもせず口の中に入れる。 お腹が落ち着くと、いろいろ疑問がわいてきた。 ここはどこなのか。 ゴシュジンサマはどこにいるのか。 だが、何から聞こうか逡巡しているうちに、喉に何かが昇ってきた。 え?と思う間もなく、緑色の半固形物が鼻と口から噴き出す。 「ゲロリが効いてきたようね」 章乃がくすりと笑ってテチコの頬を撫でる。 「あらあら、かわいい顔が台無しね」 そしてそのまま、すっと通った鼻筋に膝を叩き込んだ。 「でぎゃぁあ!」 後ろに倒れこむテチコに、章乃が微笑む。 「人化に必要なのは飼い主の愛。そんなの許せるわけがないじゃない?私が昔から欲しかったものを、ポッと出の、しかも実装石が横 取りするなんて」 そして右足でテチコの長く美しい栗色の髪を踏み、顔面めがけて左足をまっすぐ落とす。 「でぎゃぁあ!」 「だからもらってきちゃった。繭化したのを死んだって嘘ついてね」 テチコはパニックに陥っていた。 自分が約束を守っていれば大丈夫と言う幸福回路の見せた幻覚を破られて。 どうしていいかわからない。 逃げることすら思いつかない。 顔を鼻血と半糞化した吐瀉物にまみれさせ、痛みに叫び声をあげてのたうちまわるばかり。 そんなテチコに、章乃はスタンガンを突きつけた。 「ねえ、聞いてる?糞蟲。自分の言いたいことばかり言うのはダメって教えたわよね」 パシィという音とともに、目の中に火花が散って、テチコは意識を失った。 「ふう、疲れた。華奢に見えて結構重いのね」 テチコを台所まで運んだ章乃は、額の汗を拭くと右に回り込み、気絶しているテチコの顔を覗き込んだ。 剪定鋏を手に取り、刃をテチコの口へ運ぶ。 「ほら、起きなさい」 力を込めると、ざくりという音とともに、ぽってりとした桜色の上唇が裂ける。 「でぎゃぁあ!」 悲鳴とともに跳ね起きようして、側面に肩をぶつけた。 章乃は床下収納を空にして、テチコの上半身を落としていたのである。 身を起こそうにも踏ん張りようがない。 いくら手足を振り回しても章乃にはかすりもしない。 甲羅を返された亀よろしく、全く動けないということはないが、この状況を逃れるのに有効な動きは一切許されていなかった。 「やっぱり実装石はミツクチでないとね」 章乃は道具をペンチに持ち替えると、助けを求めるように空を切るテチコの左手首を捕まえる。 「これもいらない」 すらりと伸びた白い小指をペンチで挟み、甲の方向へ捻った。 「でぎゃあぁ!」 がん のけぞったテチコの頭が床下収納の底を打つ。 だが、章乃は冷たくカウントした。 「まずは一本目。次は薬指よ」 「で、でぎゃあぁ!」 テチコは目をむき、首を激しく振る。 「二本目。次は中指」 「でぎ、ですですで……でぎゃあぁ!」 「三本目」 「でっ!ですですでっ!」 「一方だけだとつまらないから、こっちに曲げましょうか」 今度は手の甲側から挟み、時計回りに捻る。 「でぎゃあぁあ!!」 人差し指は苦痛に引き攣る親指と並行になった。 その親指を挟み、さらに同じ方向に捻ろうとするが、なかなか硬い。 「仕方無いか」 章乃が柄に力を込めると、親指の骨はバキッと音を立てて砕けた。 「でぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」 激痛に泣きわめくテチコ。唇の裂傷もさらに広がって鼻のすぐ下まで達している。 人化しても本能に残っているのか、頬に寄せようとした右手を、章乃は拾い上げた。 「媚びるなんて悪い手ね。次はこっちの親指ね」 その言葉を聞き、何とか親指を守ろうと拳を握りしめる。 「小賢しいわね。じゃあ先にこっち行きましょうか」 章乃は右手を離し、脇で抱え込むようにテチコの右脛を拘束する。 「じゃあいくわよ。せーの、六本七本八本九本十本」 小指側から一本ずつ、まるでつま先を甲の方に丸めるかのように、立て続けに右足の指をへし折る。 「でぎゃぁぁああああ!」 まるで断末魔のような叫び声をあげて胸をのけぞらせ、意識を失う。 「あらあら、まだおねんねの時間じゃないわよ。まだ指だけでも半分も残っているのに」 章乃はそう呟いて、ポリエチレンの洗浄びんを手に取った。 中には生酢。 白目をむくテチコの鼻の穴にノズルを突っ込み、胴を握る。 「でしゃぁ!」 たちまち爆ぜるように意識を取り戻し、むせ返った。 一通り咳きこんだ後、テチコは「ですぅ……」と弱弱しく声をあげた。 章乃はそれを黙殺し、素早く右手首を握るとさっきと同じ轍を踏まぬよう、素早く親指をペンチで挟んだ。 はっと気づいて再び拳を握ろうとするも、もう遅い。 「ですですですです!」 抗議か嘆願か、テチコは色つき涙で何かを喚くが、章乃に聞く気はさらさらない。 「うふふ。何言ってるのかわかんないわ。十一本目」 挟む。 握る。 砕く。 「でぎゃあぁああああ!!!」 長く響くテチコの悲鳴。 その絶叫が絶えないうちに人差し指をへし折る。 「十二本」 「でぎゃぁ!!でぐでぐですです!ですですです!!!」 テチコが何かを哀願しているらしい。 「もしかしてやめてほしいのかしら」 涙と血と涎まみれでテチコが頷くと、章乃はにっこり笑った。 「そう。じゃあこっちを先にしてあげる。十三本」 小指を挟み、外側に捻る。 「でぎゃぁあ!でひでひ!でぎぃっ!」 「喜んでもらえたようでうれしいわ。十四本」 薬指が甲の方にへし折られる。 「でぎゃぁぁ! あ」 絶叫が途中で途切れ、静かになる。 見ればテチコは血混じりの泡を吹いて悶絶していた。 「さっきは十本も耐えられたのにね。早く起きてよ。でないと面白くないじゃない」 再びテチコの鼻腔に酢が注ぎ込まれる。 さっきと同じようにすぐに意識を取り戻し、むせ返り、激痛にすすり泣きながら何とか手首を蠢かし抵抗する。 だが、章乃の手はしっかり握りしめられ、びくともしない。 「これで手は最後ね。十五本」 残った中指がペンチに挟まれ、曲がらない方向に無理やり捩られる。 「でぎゃぁぁぁ!!」 激痛に跳ね上がる両足。 章乃はその裏にさっと腕を回し、受け止めて引き寄せる。 腕をからめて引きよせ、両方まとめて拘束する。 「そんなに待ち遠しかったの?じゃあ期待にお応えして十六本目」 小指を挟み、外側に捻る。 「でぎゃぁ!」 「あと四本か。じゃあ最後はカウントダウンで。最後まで気絶せずに耐えるのよ」 「でっ!ですです!」 「はい、3」 「でぎぃ!」 「2」 「でぎゃあぁ!!」 「1」 「でぎゃあぁあ!!」 「0」 「でぎゃあぁぁあ!!!」 「はい、お終い」 魚のようにばくばくと喘ぐテチコに、章乃はにっこり微笑んだ。 「でもまだまだ人間と違う部分があるわよね」 章乃は得物を長尺のバー(ryに持ち変えるとテチコの両足の間に通す。 冷たい鉄の先端が、露わなテチコの肛門に触れた。 「実装石はこの辺り、全部つながっているんじゃなかった?」 意図を理解したのか、途端にテチコが青ざめる。 「で?です、ですですですぅ!!!」 なんとか逃れようと脚をじたばたさせようとするが、章乃が全身で抱え込んでいるためにびくともしない。 やめてと伸ばす手を打ち払い、バー(ryの頸を握って短辺を中ほどまで捩じ込む。 切れ切れの息を吐くテチコを一瞥し、章乃は手を離した。 解放された足が半円を描いて落ちる。 テチコの尻から伸びたバー(ryの柄は強かに収納の上の床に叩きつけられた。 「でぎゃぁぁァァァぁぁぁ!!!」 ひときわ高く長い悲鳴が上がった。 蹄のような先端が直腸の壁を突き破って膣を貫通し、さらに尿道を巻き込んで恥丘から飛びだしている。 膣口から血が一筋、溢れ出た。 「ブルーデー?……なんてね」 章乃はくすくす笑ってバー(ryの柄を立てた。 障害が無くなりテチコの腰が収納に沈む。 テチコの尻と収納の壁に挟まれて直立するバー(ryの柄。 章乃はそれに足を乗せた。 踏む様に二度三度蹴り押して具合を確かめた後、少しずつ体重をかけていく。 柄が傾くに従い、テチコの股間がくわえ込んだ短辺が、収納の縁を支点に梃子の原理で、通る道の肉を掻き分け千切っていく。 「ぎゃひぃぃ!でぎゃぁ!でぎぃぃっ!」 半狂乱になって悶えるテチコに、章乃が醒めた口調で聞いた。 「ねえ、どうして私たちこうなっちゃったんだろうね」 そして自答する。 「きっと実装石は生まれてきたこと自体が大罪なのね」 (fin) [あとがき] 今回は上げ落としに挑戦してみました。 【過去スク】 【虐】【紅】 化粧 【あっさり虐紅】 風呂 【託】 奇跡の価値は 【託】 一部成功 【観察】 幸運の無駄遣い 【観察】 禍福は糾える縄の如し 【狂】 月下の詩 【託愛】 特上寿司 【謎】 幻のエメラルド(1) 【謎】 幻のエメラルド(2) 【託狂】 私の子供 【観察】 糞虫達(1) 【愛】 糞虫達(2) 【愛】 糞虫達(3)
