ボクは実蒼 1/2 おう、おまえが俺の飼い主か。 うん。 よろしくね。 なんだよ、お前。 やけに元気がねえな。 ごめん… 僕は弱虫だから… 謝まるところじゃねーよ。 つうか、自分で自分を弱虫って言ってどうすんだよ。 でも、本当のことだから… おまえ男だろ? 情けないな。 じゃあ、君は強いの? 当たり前だろ。 実装界の百獣の王とは俺のことよ。 本当? そうさ。 獣装石より いや、雪華実装よりも俺は強いぜ。 そうなんだ… あ、今 君にぴったりの名前、思いついた。 なんだ? 言ってみろ。 うん。君の名前は… ***************************************************************************************** 普通、家の窓に張り付く人型のナマモノと言えば実装石が定番である。 理由は様々。直接託児、不法侵入、食べ物のにおいに引き寄せられた等々。 しかし、利秋は見てしまう。自宅の窓にピッタリ張り付く実蒼石を。 なんか、張り付いてる顔がすごくキモい。 「おい、何のつもりだ?」 「…」 「聞こえてねーのか?」 「…」 「このままにしておくか…」 「… … … … … … …ッ!」 「あああ、こっち見んな! うっとおしい!」 リンガル片手に窓の近くまで寄り、空いている手で シッシッ と離れるよう指示する利秋。 だが、実蒼石は窓にくっついたまま。 窓を開ける利秋。窓に引きずられて実蒼石は派手に倒れる。 「いってぇー。 おいテメェ、いきなり何しやがる!!!」 尻もちをついた状態で実蒼石は抗議する。 こいつが実装石なら間違いなく蹴っ飛ばしてた。だが相手は飼い実蒼、うかつに手を出せない。 「久しぶりじゃねーか。今日は何の用だ?」 「決まってんじゃねぇか。修行をしに来たのさ。」 「んなもん、一人でやってろ。」 「いや、よくいるだろ。漫画とかで主人公の修行をサポートする脇役とかが。」 「俺脇役かよ・・・。 てか、なんで俺のとこに? サポートなら飼い主にしてもらえよ。」 「おう・・ 実は俺の飼い主、以前から結構病弱でよ。今回、それも含めてお前のとこに来たんだ。」 俺関係ねーじゃん。と心の中でボヤく利秋。実蒼石はお構いなしに話を進める。 「俺が落ちこぼれって事、お前も知っているよな。」 「あ… ああ。」 「俺の飼い主が心臓の発作で倒れた。」 「で?」 「だから、俺とアイツは約束した。もし俺が雪華実装の首を持って帰ったら、アイツは心臓の手術をうけるとな!」 「なんで雪華実装? なんの関係が? てか、そういう重い話に人を巻き込むなよ。」 この実蒼石と利秋、以前道で会ったことがある。 その時は 「おもしれー。」 程度の軽い気持ちでコイツを家に連れ帰った。 だがこの実蒼石、飼いである事が発覚する。もちろん飼い実蒼を無断で家に連れ帰れば、実蒼窃盗で罪に問われる。 しかも、前回の一件でコイツがめんどくさい実蒼石というのは骨身に染みて分かっている。なるべく関わりたくない。 帰るよう、説得するための言葉を探す。 だが、いつの間に来たのか。横にルコウがいた。 「それは良い心意気ナノチャワ」 「おお、久しぶりだな。ルコウ」 「久しぶりなのチャワ。アナタの主人を想うその気持ち、感動したのチャワ」 「そうだろ!! なら、俺の修行に付き合ってくれるよな?」 「もちろん。問題無いのチャワ」 「まて、ルコウ。話を勝手に進めんな」 「だいたい、俺達にはこんなポンコツの戯言に付き合う義理はない」 「おい、誰がポンコツだ。俺にはレオという立派な名前があるんだぞ」 「おまえ 名前、レオかよ」 「それがどうした?」 「スコー○・レオンハー○。略してレオだ」 「うおい!」 スコー○・レオンハー○。 説明不要の超有名ブランドの某ゲームの主人公の名前。間違ってもコイツにだけは付けてはいけない。 「謝れ。ブランドの重みとファンに謝れ」 「?」 「まあいいや。よし、とりあえず公園行くぞ」 「ナノチャワ!」 「だから、話を勝手に進めんなっ」 一人突っ込む利秋。二匹はとっくに玄関でスタンバイしている。 (ルコウの奴、なんか目が輝いてるな・・) 「しゃーねーな」 溜息をつく利秋。とうとう折れた。 ***************************************************************************************** 公園に着いた利秋一行。レオが一匹で固まっている。 「で? どうすんだよ」 「うん。どうしよう」 「お前、なんも考えてねぇのかよ」 「しかたないだろ。狩りなんざ、やったこと無いんだから」 「そうか、だったらそうだな・・・・。 よし、試しにアイツらを狩ってみろ」 利秋の指さす方向に二匹の姉妹仔実装がいた。姉妹は楽しそうな顔をして一つのボールで遊んでいる。 追記しておくと、彼女達に罪は無い。偶然選ばれただけだ。 「ふう・・・ 行くぜ」 「頑張るのチャワ」 姉妹のボールが予想もしない方向に転がった。姉は転がったボールを追いかけ、そして真正面から突撃してくるレオを見た。 「うおおおおおお」 「テッチャアーーーー!!!!!」 「なんだ!!?」 姉の悲鳴につられて後ろを振りかえるレオ。 その隙に姉妹は逃げてしまった。 利秋は短く告げる。 「諦めろ」 レオは何を言われたのか分からずキョトンとしていた。 結局、その日一日奮闘するも戦果はゼロで終った。 レオが直接、実装石に負けたわけではない。 コントみたいなミスを犯し続け、まず狩りに入る事ができていない。 その日も利秋がレオを飼い主の元まで送った。 飼い主からは病院で丁寧にお礼を言われた。 その日の夜、利秋宅風呂場にて。 ルコウは実装浮き輪で、湯船にぷかぷか浮いている。 利秋は自分の体を洗いながらルコウに訊いてみた。 「なあ、アイツまた来ると思う?」 「何度でも来るのチャワ。何度でも」 二回繰り返すルコウ。利秋は頭が痛くなった。 ボクは実蒼 続く
