タイトル:【馬】 隣の公園のマッスル
ファイル:筋肉万能主義石(微修正).txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2351 レス数:0
初投稿日時:2010/05/29-17:11:01修正日時:2010/05/30-00:11:42
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 大学生になった僕の下宿先は、小さなアパートの二階角部屋だった。
 部屋の窓からは隣の小さな児童公園が見える。そこに、一匹の奇妙な実装石が住み着い
ていた。実に興味深い実装石で、観察派の僕としては大当たりの物件である。






 その実装石は児童公園の隅っこにある木箱で暮らしていた。

「デスゥ……デッフゥ……」

 塀に立てかけられた鏡に向かってポーズを取っている。

 禿裸でパンツ一枚という姿だというのに、その実装石は実に威風堂々としている。禿裸
の実装石は通常実装社会の最下層に分類されるのだが、この実装石は髪の毛が無いことや
実装服を着ていない事など意にも介していない。

 存在自体、実装石の常識から逸脱していると言った方が正しいかな?

「デッス……!」

 ムキッ。

 両腕を掲げたポージング。
 両腕から上半身前面を強調するダブルバイセップス・フロント。

 その身体は実装石とは思えないほどの異様な筋肉が付いていた。実装石の肉は低反発ウ
レタンとか堅めの豆腐とか言われるけど、こいつの場合はさながら重装甲。割れた腹筋、
分厚い大胸筋、木の幹のような手足の筋肉。背中にはどこか鬼を思わせる筋肉模様が浮か
んでいる。日焼けした皮膚はテカった褐色だった。





 誰が言い出したかは知らないけど、こいつはマッスルと呼ばれている。








 マッスルの朝は早い。

 早朝五時頃に目を覚まし、晴天雨天にかかわらず、公園を三十周ジョギング。続けて、
腕立て伏せ、スクワット、腹筋、背筋をそれぞれ百回行う。

「デス……デッ! デハァ……」

 ムキムキッ。

 それから朝のポージング練習。

 ダブルバイセップス・フロント、ラットスプレッド・フロント、サイドチェストなど基
本的なポーズから、ヨガや前衛芸術を思わせる謎のポージングまで幅広い。

 塀に立て掛けられた鏡の前で、最も美しく見えるポーズを研究しているらしい。








 その後、朝食を取る。

 マッスルの食事は至って質素だ。公園に生えている食べられそうな草を集め、静かに食
する。その姿はさながら修行僧のものだ。通行人から貰ったお菓子などをデザートとして
いるようだけど、体型と比較すると食事量はかなり少ないだろう。その質素な食事で異様
な筋肉を維持できる理由もよく分からない。

 こっそり何かを食べている様子も無いし。
 何でだろう?








 七時過ぎの通学時間。

 マッスルは公園の入り口で、通行人相手にポージングをしていた。

「デスー。デッハ……」

 ムキッ。ムキ。

 胸を張って両腕を腰に当てたラットスプレッド・フロント。ぴくぴくと動く分厚い大胸
筋。顔はにっこり笑っているが、はっきり言って異常さの強調でしかない。身長四十セン
チくらいの実装石なので、そんなに怖くはないけど。
 不気味ではある。

「おー、すげー」
「相変わらずマッスルだなー」
「デスッ! デッフゥ……」

 ピクピクッ。

 興味津々で声を掛けてくる小学生たちに向かって、マッスルはさらなるポージングとと
もに己の筋肉の芸術を見せつけている。身体を横に構えたサイトライセップス。

 その姿は色々な意味で輝いていた。








「お、マッスル。今日もいい筋肉だな」
「デスッ!」

 ムキッ。

 通勤途中のおじさんに、ポージング挨拶を決める。
 両腕を前で合わせ、身体を少し前に傾けたポーズ。

 この溢れんばかりのエネルギーをお裾分けとばかりに、筋肉を軋らせていた。意外と効
果があるらしく、このお裾分けポージングを見るとその日一日元気に過ごせるらしい。








「うわ、キモいー」
「何だよ、この筋肉だるま」
「デッス」

 ムキムキムキッ。

 気持ち悪がる高校生に向けても、気合いのポージングを見せつける。左腕を斜め上に持
ち上げ、右腕を引いた砲丸投げようなポーズ。

 マッスルにとって相手の反応はあまり関係ないようだった。








 午前中はひたすら筋力トレーニングに励む。

 走る跳ぶ、腹筋、背筋、スクワット、腕立て伏せ、何かよく分からない体操。道具が無
くともできるものから、大きめの石を掴んで何度も腕を上下に動かす、重さ十キロのバー
ベルを肩に担いでその場で屈伸を何度も行う。
 休憩無しで途中動きを止めることもない。食事や水分補給すらない。

 明らかにオーバーワークレベルの過剰トレーニング。

 人間がこれと同じようなトレーニングをしたら、逆に筋肉が壊れて萎縮してしまうだろ
う。ドーピングに手を出す前のジャック兄ちゃんのように。マッスルの無茶なトレーニン
グは、生物離れした再生力を持つ実装石だからこそ可能なものだ。








 昼食は朝食と同様、その辺りに生えている草を食べていた。
 横には水の入った500mlペットボトルが置いてある。
 やっぱり粗食だ。








 午後はポージングの練習。

「デッス……デス。デッハッ……! デフゥ……」

 塀に立て掛けられた鏡に向かい、己の肉体が最も美しく見える格好を模索している。

 鏡は高さ五十センチほどで、全身が映るのに十分な大きさだ。誰かから貰ったものらし
く拾った布で拭いたりと大事にしている。その他のトレーニング用具も貰い物。近くには
ボディビルの写真集が置いてあった。これも誰かから貰ったものらしい。
 どれもマッスルの宝物で、いつも大事に扱っている。

 面白半分に色々と与えたくなる気持ちも分かる。
 僕は観察派の流儀として観察対象の実装石には極力関わらないようにしているけど。

「デッスゥ……」

 背筋をピクピクさせながら、自分の筋肉美にうっとりしている。マッスルはかなりナル
シストのようだった。いや、筋肉愛かな?








 下校中の小中学生相手にポージング。

「デスッ……デス……!」

 ムキッ。ピクピク。

 相手に背中を向け、両腕を持ち上げたバックダブルバイセップス。

 このポージングは普通の実装石の"媚び"に当たるものらしい。右手を口元に当てて首を
傾げる、おなじみの動作。その代わりにマッスルは己の筋肉を見せつけている。普通実装
石の媚び動作は気持ち悪がられるんだが、マッスルの筋肉媚びは気持ち悪さが突き抜けす
ぎて、逆に感心を買っている。

「マッスル、相変わらずキモい筋肉だなー」
「これやるよー」

 小学生がポケットから取り出したパンの欠片を放っている。

 マッスルは給食の残りのパンや、学校に持っていったお菓子などを貰うことがある。野
良実装石が人間相手に媚びても何か貰えることはまず無いが、マッスルはその特徴的な姿
のおかげで、食べ物などを貰うことが多い。

「デスッ」

 ムキリ。

 お礼に筋肉美を見せるマッスルだった。








「デスーデスッ……」

 質素な夕食の後に、ひっそりと貰い物を食べているマッスル。
 この非常識な筋肉の栄養源は、筋肉に対する愛かもしれない。時折そういう感情や思
い込みなどの"気持ち"を糧に成長する個体がいる。
 生物学的には無茶苦茶だ。だからこそ面白い不思議生物実装石。





 僕の見た限り、マッスルは賢い個体のようだ。
 致命的にズレてるけど。

 時折虐待派などから金平糖に見せかけてコロリやドドンパなどを渡されることもある。
でも、それらは貰っても食べることはない。毒物を見分けられる知能はあるようだ。

 渡された毒は捨てずに保管してるけど、何に使う気だろう?








 午後七時過ぎ。
 マッスルは姿見用の鏡や各種トレーニング道具などをてきぱきと木箱に片付け、自分
も木箱に潜り込んで眠りについた。
 早寝早起き健康生活らしい。









「ボク」

 マッスルのいる公園に実蒼石がやってきた。

「デスッ」

 ムキッ。ムキッ。

 それに対してマッスルは己の筋肉を見せつけ、素敵スマイルを見せていた。両手を腰に
当てて相手に背筋を見せるラットスプレッド・バック。背筋をピクピクさせながら。

 実に気持ち悪い。気持ち悪さが限界突破して、神々しい。

「ボ、ボクゥ……?」

 本能的に実装石を攻撃する実蒼石だが、マッスルの異様な姿に戸惑っていた。勝てるか
どうかというよりも、マッスルが実装石かどうかを本気で悩んでいる模様。金色のハサミ
を下ろしたまま、頭の上に疑問符を浮かべている。

 その気持ちはよく分かるよ。名も無き実蒼石。こんな筋肉ムキムキの実装石なんて普通
いないし。僕も時折マッスルが本当に実装石か考え込むことがあった。

「デッ! スッ!」

 対してマッスルは、己の筋肉を見せていた。両腕を大きく動かし、胸の前で両腕を交差
させる。さらに片目を瞑ってアピール。多分DAIGOのウィッシュを模したポーズだろう。上
腕筋と大腿筋を強調している。

 その非常識な筋肉があれば、実蒼石くらいは容易く撃退できるはずだ。実際三十キロほ
どの重量を持ち上げる実装石離れしたパワーがある。以前観察派らしき男がダンベルをバ
ーベル代わりに筋力測定をしていた。

 あくまで推測だけど、日本の野良実装では最強だろう。

 でも、マッスルは他者を攻撃するような力の使い方はしないらしい。

「ボォクゥ……」

 しばらく考えてから、実蒼石は何もせずにその場を立ち去った。
 見なかった事にしたようである。








「デシャァア!」

 マラ実装石が現われた。

「デェ、スッ」

 ムキッ。ムキッ。

 だが、マッスルはいつも通り己の筋肉を見せつける。左手を腰に当てて、思い切り仰け
反り、右手を突き出すポーズ。大胸筋から腹筋、大腿筋までを強調していた。
 参考元はONE PIECEのハンコックの見下し過ぎて見上げてるポーズだろう。

 自分の筋肉を見せる相手は、人間だろうと実装石だろうと実蒼石だろうと——基本的に
相手が何だろうと構わないようである。そこには己の筋肉に対する盲目的な愛情と絶対的
な自信が見て取れた。

 ぴたりと動きを止めるマラ実装石。

 そして。

「デェエェェェン! デッス、デェェェン!」

 泣きながら一目散に逃走した。

 決定的な格の違いを自覚させられたんだろう。
 ちょっと同情する。








 当然ながら、虐待派も手を出さない。

 この筋肉の塊相手にどんな虐待をすればいいのか分からないからだ。虐待派の多くは、
実装石の"虐待してオーラ"に引かれるらしい。けど、マッスルにそんな奇特なものは無い。
あるのは理不尽な筋肉と、実装石とは思えない威風堂々とした漢のオーラ。普通の神経し
てたら虐待しようなんて思いつかない。

 それに、虐待するよりも見ている方が面白いのも理由だろう。
 時折イタズラ目的でドドンパやコロリ、ゲロリなどを渡す程度だけど、マッスルはそれ
らを貰うだけで食べはしない。
 食べないけど、保管はしている。







「デスーデスッ」
「テッチー」

 マッスルの住む公園に他の実装石が流れてくることもある。今回はどこかから渡ってき
た親子のようだった。成体一匹と仔が二匹。少しボロボロだが、元気そうである。

 マッスルのいる児童公園は、他に実装石がいない。環境的に居着いてもおかしくないの
だが、そこに居着く実装石はいなかった。

「デッス!」

 ムキッ。

 親子に向かって己の筋肉を見せつける。右腕と右脚を前に出し、左腕を後ろに大きく引
き絞った……多分、牙突の構えを模したポーズ。

 当人としてしては、挨拶のつもりらしいけど。

「デ……。デギャアアァァァア」
「テチャァァァ!」
「テェェン、テェェン!」

 常識を越えたその姿に、親子は悲鳴を上げて逃げ出した。

 この公園に来た実装石の標準的な反応である。マッスルは新しい仲間に向かって挨拶を
しているようだけど、不自然な筋肉の塊を見せられた普通の実装石はそうは思わない。恐
怖のままに逃走するのが常だった。

 気持ち悪いというか、不気味だし。

「デェェ……」

 逃げた親子の背を見つめ、肩を下ろす。
 ——こともなく、変なポーズを決めるマッスル。見る限り残念ポーズらしい。

 マッスルはこの小さな公園でいつも独りだった。その原因が自分の異常筋肉であるとは
思いも寄らないらしい。仮に気付いても改善はしないだろう。

 ただ、他の実装石が居着かないおかげでマッスル自身も駆除を免れている。








 八月上旬の快晴の午後。
 外気温三十七度。

「デッハァ」

 ムキッ。

 焼け付くような暑さも気にせず、マッスルは己の筋肉を磨いていた。容赦なく照りつけ
る真夏の日差しに、日焼けした肌から汗の玉が吹き出している。熱射病起こしてもおかし
くないのに、マッスルはいつもと変わらず元気だった。

 筋肉があるから暑さも平気なのだろう。
 普通は平気じゃないと思うけど……。








 十月初旬の台風の日。
 大雨警報と暴風警報。

「デッスッ!」

 ムキムキッ。

 吹き荒れる風と土砂降りの雨に打たれながら、マッスルは荒れた空に向かって逞しく筋肉
を誇示していた。時折風で飛んで来た木の枝とかがぶつかるけど、自慢の筋肉で跳ね返して
いる。トレーニング器具類は濡れたりしないように保護してあるようだ。

 筋肉があるから台風も平気なのだろう。
 あんまり深く考えてはいけないのかもしれない。








 一月下旬の雪の朝。
 外気温氷点下五度。

「デッフッ」

 ムキムキ、ムキッ。

 しんしんと降る雪の中で、マッスルは相も変わらず元気にポージングしていた。普通の
実装石なら凍死するような環境で、平然と己の筋肉を鍛えている。皮膚からはうっすらと
湯気が立ち上っていた。

 筋肉があるから寒さも平気なのだろう。

 僕もようやくマッスルの筋肉万能主義を理解していた。









 三月中旬の晴れた日の夕方。
 虐待派がやってきた。

「ヒャッハー! 死ね筋肉蟲ィ」

 僕がここに引っ越してから初めて見るマッスル目当ての虐待派である。虐待派というよ
りいわゆる虐殺派、もしくはヒャッ派ー。マッスルに手を出す物好きはいないと思ってた
けど、一応居るらしい。寝癖だらけの髪とよれよれの服を着た痩せた男。

 一メートル近いバールを振り回しながら、マッスルへと襲いかかる。

「デスッ」

 ムキッ。

 対してマッスルは、元気よく己の筋肉を見せつけた。両腕を頭の後ろに回し、腹筋と脚
を見せるアドミナブル・アンド・サイ。

 虐待派相手に普通の実装石が見せる媚びの感覚なんだろうか……?
 多分違う。マッスルはそんな細かい事は考えていない。誰か来たらとりあえず筋肉を見
せる。その程度の条件反射だ。相手が虐待派でも関係ないのか。

「おらァッ!」

 ゲインッ!

 マッスルの顔面にバールの背がめり込んだ。右手に持ったバールのすくい上げるような
フルスイング。吹っ飛んだマッスルが塀にぶつかって地面に落ちる。

 何、今の「ゲインッ!」て音?

「何だぁ、今の手応え……?」

 男も自分が振り抜いたバールを見つめ、訝しげに首を傾げていた。
 実装石を殴った感触じゃないのは分かるけど、おそらく相当に予想外の手応えだったん
だな。殴られた音も奇妙だったし。

 しかし、マッスルは平然と立ち上がっていた。顔面を思いっ切り鉄で殴られたのに、傷
ひとつない。普通の実装石なら頭粉々なんだけど、さすがは筋肉万能主義者。

 でも、人間の虐待派相手にどうする……?
 筋肉があるから虐待派も平気——とはいかないだろう。

 マッスルは実装石としては規格外だけど、バール持った人間相手に戦えるレベルではな
い。筋力、持久力、耐久力は非常識だけど、瞬発力はまだ常識内だからだ。硬い筋肉の装
甲とはいえ、バールの攻撃を耐え抜くのも無理だろう。

 面白い観察対象に死なれるのは困るけど、手を出すのは僕の流儀に反する。てか、キ印
に近い虐殺派は相手にしたくないし……。

 僕の葛藤を余所に、マッスルはパンツから金平糖を一個取り出し、口に放り込んだ。
 これは、何する気だ?

「デッス、デス……デッフゥ……!」

 その場で高速の連続ポージングを始める。ダブルバイセップス・フロントからラットス
プレッド・フロント、サイドチェスト、ダブルバイセップス・バックなど基本ポーズを次
々と行い、今度はオリジナルポーズを決めていた。
 早回し映像のようで、不気味さは普段の数倍である。

「気色悪いんだよ、この筋肉蟲がァ!」

 男がバールの前後を入れ替え変え、マッスルに振り下ろした。さっきはL字の背で殴ら
れたけど、今度は尖った釘抜きの方。しかも片手ではなく両手持ちの振下ろし。さしもの
マッスルも、これ喰らったら無事じゃ済まない。

 だが、マッスルは男を毅然と見据え、大きく口を開いていた。

「デズァッ」

 ボバァアァッ!

「ンぎゃあああああッ!」

 爆裂音が響き、派手な悲鳴とともに男がひっくり返る。顔を押さえ、脚を振り回して悶
絶していた。マッスルの口から大砲のように吐き出された大量のゲロを直撃して。

 ご愁傷様です……。

 手放されたバールが地面に落ちている。
 マッスルの三角口の端から、緑色の液体が垂れていた。

 さっき食べたのは、おそらくゲロリである。前々から時々虐待派から渡された毒を保存
している理由が気になってたけど、こういう事態のためだったか。普通ゲロリ食べてもこ
んな勢いよく噴出はしないけど、内臓の筋肉のおかげなんだろう。

 ん?

「デエェァァッ!」

 マッスルはいきなりその場に屈み込み、土やら草やらを見境なく口に放り込み始めた。
咀嚼もせずに一気に呑み込んでいく。それからパンツから取り出した別の金平糖っぽいも
のを口に入れ、連続ポージング。全身の筋肉が奇怪に蠢いていた。

 この動きは多分、高速で筋肉を動かして、新陳代謝を高めているんだと思うけど。

 物凄く嫌な予感……。

「こんチクショウが! タダで済むと思ってるのか! このゲロ糞蟲がァ……!」

 男が顔に付いたゲロを手で払いのけ、のろのろ起き上がっている。髪も服もゲロまみれ
の無惨な姿だ。涙を流しながら震えていてるけど、まだ心は折れていない。

 だが、手遅れ。
 マッスルの攻撃準備は完了している。パンツを下ろして虐待派に背を向け、思い切り前
屈。総排泄孔が虐待派に照準を合わせていた。さっき食べたのはドドンパだろう。

 つまり——

「デッスゥゥゥ!」

 ブボボバババババッ!

「にょぎああああああッ」

 二度目の爆裂音から、再び響く男の悲鳴。

 ジェットのように噴射された大量の実装糞が直撃し、男は仰向けに倒れ伏した。ゲロに
続いて実装糞をモロに浴び、全身に緑色の泥を塗り付けられたような惨状。

 自業自得とはいえ、これはカワイソウ……。

「う、うう……うああああああッ!」

 突如として跳ね起きた男が、脱兎のごとく逃げ出す。
 さすがに心が折れたらしい。

「デッス」

 ムキッ。

 その背に向かって、マッスルは勝利のポージングを見せていた。

 ゲロリとドドンパを食べたというのに、実に元気そうである。普通の実装石がゲロリに
続けてドドンパ食べたら、よくて瀕死、普通は死ぬけど、マッスルは筋肉があるから平気
なんだろう。





 その後自分で汚した公園を夜遅くまでせっせと掃除するマッスルの姿があった。







 僕が一人暮らしを初めてから、一年が過ぎた。

「デスゥ」

 ムキッ。

 両腕を持ち上げ、前面全ての筋肉を強調するダブルバイセップス・フロント。日焼けし
た肌と圧縮ゴムを詰め込んだようなゴツい肉体。

「おー、すげー。キモい」
「相変わらず超筋肉だなー」
「あはは。変なのー」

 桜の花びら舞う中。通学する小学生に己の筋肉を誇示するマッスルと、それを感心半分
気持ち悪さ半分に眺める子供たち。

 一年前と変わらぬ光景がそこにあった。



  END


過去スク

2116.【虐駆】〈紫〉広場の実装石駆除
2114.【虐馬】マラ実装石虐待
2111.【虐・怪】〈紫〉黒いニンゲン
2108.【虐】上げて落として
2105.【馬】実装された都市伝説
2104.【哀】希望と絶望
2101.【馬】〈紫〉カツアゲ…?
2099.【観察】〈紫〉幸せな最期とは
2097.【虐】斬捨御免
2089.【実験】レインボー実装石
2081.【観察】Narcotic Addict − 麻薬中毒者 −
2077.【馬・虐】〈紫〉マラカノン砲
2071.【馬鹿】〈紫〉虐待してはいけない…
2066.【虐・実験】ジッソウタケ
2057.【虐・他】中途半端な賢さは…
2038.【虐・愛?】ダイヤモンドは砕けない
2031.【馬鹿】雪華実装は鍋派?
1994.【虐・観】時間の狭間に落ちる
1988.【虐】クリスタルアロー
1983.【馬鹿・薔薇】リベンジ! 完全版
1980.【馬鹿・薔薇】リベンジ!
1977.【虐・観】懲役五年執行猶予無し
1970.【実験・観察】素朴な疑問
1958.【虐・実験】虐待&リリース
1954.【獣・蒼・人間】騎獣実蒼の長い一日
1952.【軽虐】既知との遭遇
1944.【馬鹿・薔薇】水晶ハワタシノ魂ダ!
1941.【色々】実装社交界の危機
1939.【駆除】ススキ原の実装石駆除

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