実装石の増戻り 広い土地の実装石を駆除した後、その数が爆発的に増える現象を示す。元よりも増える ことも珍しくない。起こる確率は数パーセントだが、起こると厄介である。その仕組みは 繁殖力の強い個体が環境を独占し、一気に増殖するというもの。ある意味実装石のカオス 成分の噴出なので、根本的解決方法は無い。 ブレーキを踏み、軽トラを止める。 ギアをパーキングに入れ、サイドブレーキを引いてから、俺はエンジンを切った。久しぶ りの自動車運転は緊張したな。 鍵をポケットにしまってから、ドアを開けて外に降りる。 「お待たせしました」 「少し遅かったな。フェンスの穴埋めは終わったぞ」 ベンチに座った利藏さんが立ち上がった。作業着姿で麦藁帽子をかぶっている。その 姿は驚くほど似合っていた。利藏さんの横に、細長い竹棒が一本立てかけてある。太さ 一センチくらいの竹だか笹だかを、百センチほどに切ったものらしい。 「ありがとうございます。ちょっと荷物積み込むのに手間取りまして」 俺は軽トラの荷台に手を向ける。 荷台に置かれているのは、一斗缶が二つと背負い式の噴霧器が二つ。そして、小道具の 入った段ボール箱だ。実装石を駆除するための道具一式である。利藏さんのトラックを借 りて、道具薬品類は実装研の友人から借りたり貰ったりしてきたのだ。噴霧器は利藏さん のものだけど。 「カワイソウ……」 助手席に座っていた紫電が、運転席を通って降りてくる。我が家の居候薔薇実装。今回 はこいつも貴重な戦力だ。何しろ、人手が足りない。 「はい。先生!」 と手を挙げたのは、ベンチの近くに立っていた大学生の男である。 街の虐待派の知合いで、利藏さんの親戚の利明だった。正しくは利明は利藏さんの兄の 孫らしいが、その辺りに興味は無い。その隣に立っているのは、利明の知合いの昭俊であ る。この二人は、利藏さんに引っ張り出されたとか。 「何か目玉はありますか? 具体的に言うと面白い薬とか」 きらきらと眼を輝かせながら、俺を見ている。少し前までの俺は薬品系の虐待派として そこそこ有名だったからな。面白い事期待する気持ちも分かる。 けど、あいにく今日はそういう内容じゃない。 「いくつか薬品は用意してるけど、虐待パーティーやるわけじゃないから、そんな派手な もんは持ってきてないよ。今回の目的はあくまでも駆除だし。しかも、四人と一匹でやる から速効性重視。見つけ次第殺す」 「ちまちま虐待してたら日が暮れるからな。今夜から大雨になるようだし」 昭俊が空を見上げていた。 白い雲の見える晴れた空。雨が降るようには見えないが、天気予報によると夕方から急 激に天候が悪化し、夜から明日の昼に掛けて大雨になるらしい。 「デッ、デェェ……」 その足の下で一匹の実装石がじたばたと暴れていた。 双葉町の西に、秋祭りに使われる広場がある。東西と北の三方向を用水路で囲まれ、残 りの南方向を道路とフェンスで覆われた広場。多目的グラウンドに周囲の林と草地を加え た、およそ五百メートル四方の土地である。 そこで実装石の増え戻りが起こった。 去年の夏に業者による駆除があり、その後も個体数は少なかったのだが、今年の夏頃か ら急激に増殖したようである。実装石のたむろする状態で秋祭りは開けないため、町内会 で人を集めて駆除することになった。 集まったのは、広場の所有者である利藏さんと、その親戚の利明、その友人の昭俊。で、 手が空いていた俺。最後にうちの居候の紫電。少ない……。 でも、実装研の友人から借りたり貰ったり渡されたり押し付けられたりした駆除用道具 と薬品があるので、何とかなるだろう。実際の駆除業者も人間数人に駆除専用実蒼石数匹 で駆除してるようだし。 「これが溶殺剤です。平たく言うと、強化版処理スプレーですね」 俺が見せたのは大型霧吹きに入った無色透明の液体だった。利藏さんと利明&昭俊が物 珍しそうに霧吹きを見ている。普通に見るものじゃないしな。効果が強烈すぎて、一般ル ートでは手に入らないものらしい。 こいつが、今回の主力武器だ。 南の県道に面する広場入り口では、紫電がせっせと実装石用バリアフェンスを張ってい た。フェンスの穴は利藏さんが塞いでいるので、正面入り口を塞げばこの広場は完全包囲 される。残りの三方は農業用水路で囲まれていて、脱出経路は無い。さすがに、用水路を 越えるヤツはいないだろう。 「使い方は簡単です。軽く一吹きかけるだけ」 霧吹きを動かしてから、俺は地面に倒れた実装石に眼を向ける。 説明するよりも見る方が速い。論より証拠。百聞は一見にしかず。てなわけで、昭俊が 捕まえていた成体実装石に中身をシュッと一吹き。 「デデッ! デェッ、デギャッ、デァァァァッ! デェェヒャァァ……!」 シュゥゥゥゥ……。 薬を吹き付けられた左腕が赤緑に泡立ち、白い煙を立ち上らせている。 「おおー」 三人の口から漏れる感嘆の声。 火傷のような痛みがあるようで、実装石は涙を流し糞を漏らし七転八倒していた。なん とか左手の薬を取ろうと右手で触るも、今度は右手に薬が付いて泡立ち始める。 「デッ、デギャガァァァ!」 悲鳴を上げながら、派手に暴れ回る実装石。生きながらに両手を焼かれているようなも のだ。痛みは相当だろう。加えて、溶殺剤は血液に乗って体内から細胞を浸食する。免疫 力を削った実装石に処理スプレーを吹きかけた時のように。 瞬く間に手を浸食され、胴体、両足、頭と溶けていく。 漏らした糞まで消滅するのに一分も掛からない。 「すげ。さすが業務用……」 「でも、臭いな……」 昭俊と利明がそれぞれ口にしている。 実装石のいた場所には、乾いた土のようなものが散らばっている。実装石の残りカス。 辺りにはうっすらとした白煙と強い薬品臭が漂っていた。処理剤をかけた時も多少異臭が 漂うが、これはその比ではない。はっきり言って臭い。 「実装石の生死に関わらず一吹きするだけで殺せます。死体処理もいりません。ただ、見 ての通り強烈な臭いと煙が出るので、薬掛けたら離れた方がいいです。あと、痛みで滅茶 苦茶暴れますんで、掛ける前に適当に殴って気絶させてください」 「了解した」 と、利藏さん。 ちなみに、溶殺剤は一斗缶二本で五百円しか取られなかった。友人を介して実装研から 直接買ったからこんなに安いんだけど。普通に買ったら二缶で一万円はしただろうとのこ と。処理スプレーも原価は5円/L程度らしい。缶や輸送費、保管費、宣伝費などが加わっ て、500ml入り一本五百円になるようだけど。それが世の中の仕組みってか? 「先生ー、あの小道具借りていいですか?」 利明が指差してるのは、荷台の荷物。半分は俺が見繕ったものだけど、残り半分は友人 が適当に突っ込んだものだ。何が入ってるかは完全に把握しているわけじゃない。 「いいけど。借り物だから壊すなよ」 「らじゃ」 満面の笑顔で敬礼してみせる利明。 「じゃ、あとは事前の打ち合わせ通りお願いします——とその前に」 俺はポケットから紙袋を取り出した。 中には爪楊枝ほどの大きさの水晶針が沢山入っている。紫電の命令水晶針。強度や鋭さ は爪楊枝と同じくらいで、人間の皮膚に押しつけても刺さることはない。だが、脆い実装 石には容易に刺さる鋭さはある。 「賢い個体がいたら、頭にこれ刺して下さい。賢い連中は後で使うんで」 小さな紙袋に水晶針を小分けにして、俺はそれを三人に配った。 「では、改めて解散です」 俺の担当は緩い丘になった西の林の方だ。 足下の地面にはドングリが大量に落ちている。クヌギやブナなど広葉樹が多いので、当 然の光景だ。それだけじゃない。ぱっと見ただけでも、地面にはヨモギやノビルなどの野 草が生え、名前のよく分からない背の低い木にも赤い実がなっていた。 「こりゃ、増えるわけだな……」 ため息混じりの苦笑を見せ、俺は足を進めた。 背中に五リットルの噴霧器を担ぎ、左手にリンガル機能付きの偽石サーチャーを持って いる。腰のベルトには実装石駆除用の得物であるステンレスの剣と、実装寄せスピーカー を下げていた。あとは、何かに使えそうな小道具類。 スピーカーから木琴のような音が辺りに響いている。 「ニンゲンデスー」 「美味しいモノ欲しいテチッ」 「ワタチたちを飼ってテッチュ〜ン♪」 草陰から現われた実装石親子。満面の笑顔で俺を見ながら、とてとてと無防備に近づい てくる。見てる方が恥ずかしくなるくらいの、幸せ回路全開お花畑オーラを纏いながら。 仔実装の一匹は歩きながら媚びを行っていた。 こいつらには俺が実装石LOVEの超絶愛護派に見えるらしい。 「さすが業務用」 腰に下げている実装寄せスピーカー。友人から借りた駆除用道具である。 見た目は小さいラジオで、小さいながらもよく響く木琴のような音を鳴らしていた。こ れは、実装石の幸せの歌を模した音楽で、鳴らしているだけで実装石を引き寄せる効果が ある。警戒心の強い連中には効果が無いけど。 これと同じものを利藏さんや、利明たちにも持たせてある。あいにく三台しか渡されて いないので、利明&昭俊は二人で兼用。紫電には渡していない。 「はい。お疲れさん」 俺はステンレスの剣を持ち上げた。長さ六十センチくらいの自作駆除道具。 「デッ」 「ヂッ」 右手を一振り。剣を頭に喰らって気絶する実装石たち。 剣から噴霧器のノズルに得物を持ち替え、グリップレバーを強めに握る。レバーの動き に連動して弁が開き、中身の溶殺剤がノズルから霧状になって吹き出した。無色透明の霧 が親子に降り注ぐのを確認し、俺は距離を取る。 手足を派手に痙攣させながら、白煙とともに溶けて消えていく親子実装石。 残ったのは強い臭いと、残りカスだけ。どちらも今夜から明日の大雨で消えてしまうだ ろう。狙ったわけじゃないけど、大雨はありがたい。 「この調子できりきり行こう!」 噴霧器のノズルから剣に得物を持ち替え、俺は元気に足を進めた。 偽石サーチャーを見ると十時の方向に親子あり。 賢いヤツがいるといいなー。 同じく西の林を担当している利明&昭俊。 二人の周囲には、成体七匹に仔、親指、蛆が三十匹くらい。デスデステチテチと鳴きな がら、二人に親しみの目線を向けている。媚びている者や、仔を持ち上げてアピールして いる者もいる。昭俊の右手に握られた実装寄せスピーカーの効果だった。 足元に近づいてくる実装石を蹴り返しつつ、利明が口笛を吹く。 「こんなにあっさり集まると……逆に拍子抜けだな」 「まったくだ。でも、業者にとっちゃ便利な道具だよな、これ。自分たちでいちいち探さ なくても向こうから勝手に集まってくるんだから。殺されに」 わらわらと集まった実装石を見ながら、昭俊が感心している。最大音量でスピーカーを 鳴らして数分でこの状況だ。実装石の招集効果は金平糖の比ではない。 「だな」 苦笑いしてから、利明は右手に持っていた霧吹きを一吹き。溶殺剤は一リットル入りの 霧吹きと注足し用の二リットルペットボトル。二人で合計、六リットル。背負い式農薬噴 霧器は他の二人が使っていた。 無色透明な霧が、手近にいた実装石五匹に降り注ぐ。 途端、溶殺剤の効果が発揮された。 「熱いデギャァァァアアァア!」 「痛い、痛いテヂィィィイイィィ!」 「助けてテヂャア゛ア゛ア゛ア゛!」 生きたまま液体に身体を溶かされ、悲鳴を上げながらのたうち回る実装石親子。霧を掛 けられた手や胴体、頭が赤と緑の泡を作りながら、白い煙と異臭を上げている。 「総員退避ー、っと」 利明たちは素早く実装石たちから距離を取った。 突然の異変に、周囲の実装石たちは固まっている。 「そいつは、周りのヤツに移せばよくなるぞ」 昭俊が周りの実装石を示した。 溶けかけた実装石がはっとしたように昭俊を見る。それを察して、昭俊が満面の笑顔で 首を縦に振った。自分の口にした言葉を肯定するように。無論、嘘だが。 溶けかけ実装石が、一斉に周りの実装石へと縋りついた。 「助けてデズゥゥ!」 「痛い、熱い、痛いのイヤテチィィィ!」 「近寄るなデシャァァァ!」 逃げようとするものの、腰が抜けてまともに動けない健康実装石たち。 そこに溶殺剤に浸食された実装石が抱きつく。こちらは、全身を蝕む激痛と死への恐怖 から火事場の馬鹿力を発揮していた。だが、無傷の個体に抱きついても、溶殺剤の効果が 消えるわけではない。 逆に、溶殺剤の浸食が無傷の個体に移り、新たな浸食が始まる。 「デデ、デェ……! 熱い、熱いデジャアアアアァァ!」 手の先が泡立ち始めた成体が、半分以上溶けた個体を突き飛ばし、新たな犠牲者を求め て走り出す。他に移せばよくなる——ただその台詞を信じて。 「バイオハザード?」 利明がその惨劇を見ながら、ぼそりと呻いた。 変なツボに入ったのか昭俊が無言で肩を震わせている。 「こっち来るなデスァア!」 「チュベアッ!」 一匹の成体実装石が、浸食中の仔実装を蹴り飛ばした。 数十センチ吹っ飛び、動かなくなる仔実装。蹴られた際に首の骨が折れて仮死したらし い。溶殺剤は仮死した身体を容赦なく浸食、分解していく。 そして、蹴った実装石の足には溶殺剤の泡がくっついていた。 「デェ?」 実装石が自分の足を見る。 溶殺剤——実装石の細胞を喰らい、高速の増殖と死滅を繰り返す、特殊な液体状ガン細 胞。その代謝速度は活性剤を打たれた実装石のソレである。溶殺剤が実装石の細胞に触れ れば、容赦なくその細胞を食い始める。そこに思考や感情は存在しない。 赤と緑の泡が、仔実装を蹴った足から身体を浸食し始めた。 「デェェェ! 痛いデス、熱いデシャァァアア!」 焼け付くような足の激痛に、実装石はその場に倒れる。両目から色付き涙を流し、総排 泄孔から実装糞を漏らしながら。溢れた実装糞にも、赤と緑の泡が移っていた。溶殺剤は 実装糞に含まれる細胞の破片や各種酵素に反応し、容赦なく食い尽くす。 「誰か助けてデスゥゥゥ!」 誰かに移せば好くなる……。 その言葉に突き動かされるように、実装石は犠牲者を求めて両手で這い始めた。 デェェ……。 テチィィ……。 風に乗って流れてくる実装石の悲鳴。 「遊んでいるな、あいつら……」 兄の孫とその友人を思い浮かべながら、利藏は麦藁帽子を動かした。 もっとも、虐待派として心躍るような珍しい薬を渡されたのだから、はしゃぐのも当然 かもしれない。駆除活動であることを忘れていなければいいのだが。 利藏の担当は東の草地。老齢と言うこともあり、一番楽な場所を任されている。 「まったく、年寄りだからと甘く見おってからに……。最近の若者はァ」 老人の特権の台詞を口にしてから、ちらりと視線を移した。 周囲には膝丈の草がまばらに茂り、所々に背の低い木が生えている。その半分はとりあ えず調理すれば食べられる類の植物だ。土や木の枝、場合によってはプラスチック類です ら消化吸収可能な実装石にとって、食料には事欠かない場所だろう。 「増えるのも道理か。といっても、今更全部切るわけにもいかんしな」 ヤツデの木の影に実装石の巣があった。偽石サーチャーは渡されているが、電源は付け ていない。実装寄せスピーカーも同様。長年の経験から、小道具に頼らずとも実装石の住 処は容易に分かる。キャリア五十年以上という噂は伊達ではなかった。 巣といっても、この辺りでは段ボール箱など手に入らない。木の隙間の空間から邪魔な 枝や葉を取り、枯れ枝や草で壁や屋根を作った巣である。動物の作る巣に似ていた。もの の本に寄ると、山実装石の巣はこんな感じらしい。 「デス〜?」 「テチッ」 利藏の気配に気付いて、わらわらと巣から出てくる。 普通の動物が人間を見れば警戒の反応を見せるのだが、実装石たちは落ち着いた雰囲気 から利藏を友好的な相手と認識したらしい。もっとも、バール片手に殺気全開の虐待派相 手でも普通に近づいていく実装石はいるようだが。 実装石は本能的に人間に依存するものらしい。 「親に仔六匹か。賢くはなさそうだな」 利藏は右手を持ち上げる。 その手に握られているのは、細い竹の棒だった。家の庭に生えているメダケを切り、皮 と枝を払ったものである。直径は約一センチ、長さは約百センチ。先端は斜めに切られて いて、突けば刺さるようになっている。さながら竹製の細剣。 これが、利藏の得物だった。 プス、プスッ。 フェンシングのように繰り出される連続突き。 竹棒の先端が、実装石の頭に刺さる。 「デ……」 悲鳴を上げる間もなく、親実装と仔実装は脳を壊され、仮死に陥った。何をされたかも 理解していないだろう。竹棒を刺された顔の穴から、血と脳漿をこぼして倒れている。光 の消えた眼が、青い空を見上げていた。 「普通の生き物なら脳に一発喰らえば即死なんだが……」 実装石は脳や内臓などの重要器官を壊されてもあっさり再生する。偽石さえ無事なら、 挽肉状態からでも元通りに再生可能だ。極端なものになると、身体の破片から株分けよろ しく仔実装の身体と新しい偽石を作ることもある。 そんな常識無視のナマモノ。 最近はそこまで無節操な生命力は無くなったが、生物離れした再生力は健在だ。 利藏は竹棒で巣を壊してから、背負った噴霧器から溶殺剤を親子に吹き付ける。さきほ ど見たのと同じように、泡立ちながら白煙を上げて身体が溶け始めた。 「最近は便利な道具ができたものだな。ワシの若い頃は仮死してるうちに焼却処分が常識 だったというのに。ま、手間が掛からないのはありがたい」 実装石の残りカスには目もくれず、利藏は次の獲物を求めて足を進めた。 ピッ、ピピッ。 「デ……」 「テチ……」 放たれた水晶針に偽石を貫かれ、息絶える親子実装石八匹。 腰に実蒼石用の草切りナイフを下げ、紫電は東の草地を進んでいた。利藏と一緒にこの 辺りを担当している。老齢の利藏さんに無理させないようにお前が頑張れと、こっそり家 主さんから言われていた。 「カワイソウ、カワイソウナ私……。オ仕事タイヘン……」 紫電の持ち物は、草切りナイフと小脇に抱えた150mlのポケットサイズ処理スプレー。 背負ったリュックには処理スプレーが二本とポケット辞書が一冊入っていた。 薔薇実装ということもあり、余分な小道具の類は渡されていない。もっとも、人間が使 う駆除用具を渡されても、使えないのが本当のところだった。 「カワイソウ……」 処理スプレーを構え、実装石の死体に中身を吹き付ける。 白い泡を立てながら、液体細胞がその死体を分解し始めた。薔薇実装の偽石探知能力で 実装石の居場所を探り、見つけ次第水晶針で偽石を壊し、死体を処理スプレーで処分。あ る意味一番基本に忠実な駆除を行っている。 「ソレニシテモ……。空気ガ……騒ガシイ……」 紫電は空を見上げた。 絹雲と巻積雲の見える青空。 実装石の悲鳴が微かに響いている。利明と昭俊の二人が遊んでいるらしい。虐待によっ て死に行く実装石。その苦悶の悲鳴や、致命傷を負った身体が発する警戒フェロモン、死 の恐怖に怯える偽石の波動。それらが、他の実装石に危機感を抱かせている。 この広場の実装石は、漠然と駆除活動が始まった事を感じ取っているだろう。 「次ハ……」 紫電は地面から少し浮かんだまま、移動を始めた。 五メートルほど移動した草陰。 枯れ草などがくっついたぼろ布が地面に落ちている。 紫電はその布の端を掴み、引っぺがした。 「デェェ……!」 「テェェ……!」 隠れていた実装石が、紫電を凝視する。 全身に泥を塗って臭いを消した成体一匹と仔実装四匹。おそらく間引きを終わらせた賢 い親子だ。空気の異変を感じ取って隠れたようである。あらかじめ避難用の穴を用意して あったのだろう。緊急時に隠れるために。 薔薇実装の偽石探知能力の前には無力だったが。 「賢イ実装石、発見……」 紫電が放った水晶針が、親子の頭に刺さった。 「デッ」 一度震えてから、親子実装石は速やかに穴から這いだし、そのまま脇目も振らずに歩き 始める。グラウンドの方に残してきた、目印の水晶目指して。 「デ、デ……身体が勝手にデスゥ……!」 「どうなってるテチ……!」 「何したテチー!」 意志とは無関係に動き出した身体に困惑している親子。 「頑張ッテ……」 紫電は草の影に消えた親子に手を振った。 賢い実装石は武士の情けで苦しませずに殺す。それが紫電の流儀である。 しかし、用事があるなら賢い個体だろうが糞蟲個体だろうが無慈悲に利用するのも、薔 薇実装としての流儀だった。 「オ仕事、頑張ロー……」 紫電は次の実装石を目指して草地を進み始めた。 痛いデェェェス…… 死にたくないテチャァァァ…… どこからともなく響いてくる実装石の悲鳴を聞きながら、親実装石は四匹の仔を連れて 逃げていた。草陰を走りながら、道路に面したフェンスに向かって。空気が命の危険を知 らせている。ここにいれば死んでしまう、と。 「ママ、怖いテチィ……」 前を走らせている仔実装が不安を口にする。 夏の終わりに生まれた仔実装。食料にも恵まれ、今まで平穏に暮らしていた。間引きも 終わって残った賢い仔たち。まさか、いきなり全滅の危険に晒されるとは思っていなかっ ただろう。親実装も油断していた。 「いいから走るデス……!」 ちらちらと左右や後ろを警戒しつつ、親実装は小声で叫び付ける。人間相手に警戒は無 意味に等しいが、無警戒よりは幾分ましだろう。子に前を走らせているのは、見失わない ためだ。後ろを走らせていて、気がついたら全員行方不明では、笑い話にもならない。 「ニンゲンがワタシたちを殺しに来たデス。このままだとワタシたちも殺されてしまうデ ス。これからこの場所を出るデス。どこに行くかは分からないデスけど、もうここにはい られないデス……。お前たちも覚悟決めるデス」 渡りをするしかない。 親実装はそう判断していた。仔実装四匹を連れての渡り行為。しかも、春や夏でなく、 秋の渡り。行き着いた先での冬越え準備は相当に厳しいだろう。仔の全滅はまず確実だ。 自分も春まで生き延びられる可能性は低い。 それでも、ここから逃げなければ待っているのは確実な死である。 生きるには、僅かな可能性に賭けるしかない。 だが、親実装の決意を嘲笑うかのように、逃げ道は消えていた。 「テ……?」 「穴が、無いデス……」 親子が立ち止まった先。 道路と広場を分ける高さ二メートル半のフェンスが左右に続いている。そこには成体実 装石が通れるほどの隙間があった。少なくとも、一昨日くらいまではあった。親実装はそ う記憶している。 しかし今、その隙間は無くなっていた。 細い鉄の杭と頑丈そうな針金で、しっかりと塞がれている。実装石の力では針金を切る ことも杭を抜くこともできない。無機質な鈍色の杭と針金が、自由な道路と危険な広場を 完全に分断していた。 駆除前に利藏が塞いだ結果である。 「先を越されたデス……」 「ママァ……」 苦い顔をする親実装と、不安げな仔実装たち。 「テチッ、テェ……! 出られないテチ……」 一匹の仔実装が必死に隙間に頭を押し込んでいた。小さい身体を生かして強引に外に出 ようとしているが、無謀な試みである。残った隙間は仔実装が出られる大きさも無い。親 指か蛆実装なら出られただろうが。 それでも、仔実装は諦めなかった。 「テェ、チァァアァァァ!」 気合いととともに無理矢理身体を押し込むと、隙間から頭が出た。 だが、頭が出ただけで胴体は通らない。 「テ?」 隙間から出ようとしていた仔実装が動きを止めた。 「テェェェ……! 抜けないテチィィ!」 悲鳴を上げながら、手足をばたつかせる。首が隙間にはまっていた。身体を外に出すこ ともできず、逆に引っ張っても針金に首が引っかかって抜けなくなっている。 「自業自得デス……。お前は、置いていくデス」 親実装は感情を押し殺した声で告げた。 「テェェェ! ママァァァァァ!」 「ママ、酷いテチッ」 「四女ちゃんが可哀想テチ!」 冷徹な判断に、仔実装たちがそれぞれ声を上げる。今まで厳しいながらも優しかった母 実装が、突然仔を見捨てると言い始めたのだ。驚くのは当然だろう。 「残りたい仔は残るデス!」 だが、親実装は折れない。 「今は緊急事態デス……! みんなの命が掛かっているデス。足手まといになるなら置い ていくデス……! ワタシたちは他に出られそうな場所を探すデス」 言うが速いか、針金にはまった仔実装に背を向けた。振り向きもせずに小走りにその場 から離れていく。どこか逃げ出せる場所を探すために。 「テチィ……」 残った仔三匹も少しの躊躇を挟んでから、親実装の後を追う。不安そうに後ろを振り返 ることはあっても、助けに戻る者はいなかった。 「ママァァァァ! 見捨てないでテヂィィィィッ!」 針金にはまったまま必死にもがきながら、残された仔実装は絶叫した。 「ニンゲンが近づいてるデス……」 一匹の実装石が、林から逃げ出していた。 目の前にあるのは、幅二メートルほのどの農業用用水路である。子供が近づかないよう に柵が作ってあるが、柵の作りは粗く実装石が通れる隙間は十分にあった。 だが無論、実装石が二メートルの用水路を飛び越えることはできない。覚醒獣装石なら ぎりぎり可能かもしれないが、あいにく普通の実装石である。 実装石が狙ったのは、道路との境だった。 「ここなら、なんとか行けるデス」 道路の真下へと流れていく用水路。その上には、十センチほどのコンクリートの道があ った。道路の真下を通る用水路の天井部分と、対岸まで続くフェンスとの間。人間ならま ず渡れない幅だが、身長四十センチほどの実装石にとっては、十分な足場だった。 実装石はフェンスにしがみつき、慎重に対岸へと進んでいく。 「デェェ……怖いデス。でも、頑張るデス!」 真下を見ないようにしながら、摺り足で安全な着実に足を進めていた。何もなければそ のまま対岸に辿り着き、無事に逃げ切れるだろう。 だが、実装石は大抵土壇場で妙な不運を呼ぶものだ。 「あー! やっぱいたか!」 「デヒ、見つかったデスッ」 人間の声に視線を転じる。 背中に何かを背負った男が、思い切り右手を振っていた。細長い何かが回転しながら飛 んでくる。狭い足場の上でそれを避ける余裕は無かった。 「デハッ!」 身体に痛みを覚え、視界が一回転する。 バシャ。 水音がして、実装石は自分が用水路に落ちたことを自覚した。しかし、思ったよりも痛 みはない。用水路にはほとんど水が無く、底にはぬかるんだ泥が溜まっている。おかげで ケガをすることもなかった。 「助かったデス……?」 泥まみれで起き上がりながら、実装石は自分の顔を撫でた。 近くに木の枝が落ちていた。さっき人間が投げつけたものだろう。 「嫌な予感して来てみれば、予想通りか」 視線を上げると、人間が用水路を見下ろしていた。 「お前はそれなりに頭が回るみたいだな。生け贄に使いたかったが……引っ張り上げるの もめんどいし、見逃してやるよ。夜から大雨になるけど——ま、頑張れよ〜」 爽やかな、しかし残酷な笑顔を向けながら、そう手を振っている。 「大雨、デス……?」 大雨という言葉に、実装石は空を見上げた。 白い雲の浮かぶ秋の青空。今のところ雨の降る気配は無い。だが、人間は大雨と口にし た。夜から大雨になる、と。ならば、雨は必ず降る。 「デェェ。ここからどうやって出るデスッ?」 実装石は焦燥に駆られるまま用水路の前後に目を向けた。 どこまでも続く用水路。地面にはぬかるんだ泥が溜まっている。そのせいで非常に歩き づらい。左右にそびえるコンクリートの壁は、高さ一メートルほど。実装石の身長の二倍 以上ある。しかも、垂直で掴まるものもない。素手で登ることは不可能だ。 大雨と言うことは、ここは水に沈む。 そうなれば命はない。 「ニンゲン、助けてデスゥゥゥゥ!」 両手を振り上げ、実装石は叫んだ。両目から滝のように涙を流しながら。ある程度賢い ために、自分の運命を理解してしまったのである。このまま用水路から出られなけらば、 増水に巻き込まれての溺死する、と。 しかし、人間はもう用水路を覗き込んでいなかった。 カツコツと硬い音が聞こえてから。 「達者でなー」 そんな言葉とともに、人間の気配が遠ざかっていく。 「デギャァァァ! こんな所で死にたくないデス、死にたくないデスゥゥ! 助けて欲し いデス! ニンゲン、戻ってくるデスゥゥ! 溺れ死ぬのは嫌デスゥゥ!」 コンクリートの壁を叩きながら、実装石は叫んでいた。 後ろから聞こえてくる実装石の声。 あいつは今夜の大雨で溺死するだろう。溶殺剤掛けてやればここで死ねただろうけど、 そこまでしてやる義理はない。もしかしたら、どこか登れる場所探して助かるかもしれな いしな。可能性は限りなくゼロに近いけど。 「これでもう渡れないだろ」 細い脱出口の傍らには杭を打ってある。その杭とフェンスとの間に針金を何度も往復さ せ柵を作っておいた。手抜きな柵だけど、実装石に越えられるようなもんじゃない。 用水路の上部分には、実装石用マキビシも撒いてある。 反対側は……。 確か取水口があって、かなりがっちり塞がれていた記憶が。 「あっち、大丈夫だろ。利藏さんと紫電が担当だし」 適当に納得してから、俺は実装寄せスピーカーのスイッチを入れた。 「誰もいないみたいデス」 親実装は後ろの仔実装に来るように手招きをした。 草陰から仔実装四匹が走ってくる。 「もうすぐ出口テチ」 「怖いテチィ……」 広場に漂う不穏な空気。 親子が目指す先には、広場の正面出口があった。近くには軽トラが停められている。し かし、人の姿は見えない。 「壁が作られてるデスけど……。多分何とかなるデス……」 正面の入り口には、実装石用バリアフェンスが張られていた。入り口左右のブロックの 柱から正面を完全に塞ぐように。オレンジ色の網状シートのフェンスで、一メートルおき にポールで地面に固定されている。 「行くデス」 「テチッ」 親子は揃って駆け出した。 左右を見回し、人間が現われないことを確認しながら走っていく。途中邪魔が入ること もなく、無人の入り口を通り過ぎ、バリアフェンスの前までたどり着いた。 「デス……」 バリアフェンスの高さを確認し、親実装は小さくガッツポーズをした。 「これなら、多分越えられそうデスッ!」 実装石用バリアフェンスの高さは六十センチ。身長四十センチの成体が越えられる高さ ではないが、絶対に越えられない高さでもない。 親子は気付いていないが、左右の門柱の下に四角いスピーカーが置かれている。 親実装は一緒にいる仔に向き直った。 「最初にお前たちを外に投げるデス。落ちた時はちょっと痛いデスけど、我慢するデス」 「分かったテチ!」 希望に満ちた顔で頷く仔実装たち。 フェンスの高さが一メートルもあれば無理だっただろう。だが、目の前のフェンスは六 十センチ。思い切り放り投げれば、仔実装を外に出すことは十分に可能だった。成体実装 石でも時間を掛ければ乗り越えられるだろう。 親実装は長女を持ち上げ。 「デッ……!」 固まった。 ピシピシと奇妙な音が聞こえた。いや、その音は身体の奥から響いている。 「テチ……?」 「なんか、おかしいテチ……」 仔実装たちも異変に気付いた。 身体が思うように動かない。手足から感覚が消えていく。何が起こったのかは分からな かったが、何かが起こっているのは理解した。非常に良くない何かが。 「マズいデス。ここから離れるデス!」 「分かったテチ」 親子が慌ててその場から離れようと走り出すが、数歩も進まずうちに足をもつれさせ転 倒する。平衡感覚が無くなり、手足の感覚も無くなっていた。起き上がろうとしても身体 が動かず、どちらが上なのかも分からない。 しばらくしてから、目眩と吐き気が襲ってくる。 「何が起こったデス!」 声にならない声で親実装は、叫んでいた。 実装パラライザー 門の左右に設置された機械の名前である。 実装生物の神経を狂わせる超音波を発生させる装置だった。効果範囲は十メートルほど で、十数秒聞かせ続けると効果が現われる。効果の現われた個体は、平衡感覚を失い、全 身の自由を奪われ動けなくなる。その際痛みなどはないが、目眩や吐き気など酔いのよう な症状が現われる。 実装石用60cmバリアフェンスは、その十数秒の時間を作るためのものだった。越えられ そうな障害物として立ちはだかり、実装石をパラライザーの効果範囲に一時留めておく。 このセットは逃げる実装石を捕獲する時に使われることが多い。 脱出防止目的の高さ一メートル以上のバリアフェンスも普通に売っていた。 「実装音叉……」 リュックから取り出した平たい木箱を開ける昭俊。 中に収められていたのは、銀色の音叉とゴムのハンマー、取扱説明書と書かれた小さな 紙だった。駆除用道具箱に紛れていたものである。持ち出すなとも言われなかったし、持 ち出し禁止とも書かれていないので、多分大丈夫だろう。 利明が音叉とハンマーを取り出しながら、珍しげにふたつを動かしている。 「これが実装音叉か。初めて見るな」 問答無用で実装石の偽石を砕く音波兵器。だが、市販はされておらず、普通の虐待派が 実物を見ることはまずない。しかし、虐待派を名乗るなら一度はその効力を拝んでみたい と思う道具である。 「えっと、3型実装音叉……。細かい説明はすっ飛ばして——これだな、致死率80%以上の 有効半径5m。致死率30%以上の影響半径10m……しょぼッ!」 説明書を手にしたまま、昭俊が仰け反る。 実装音叉を鳴らせば、周囲一帯の実装石が壊滅する。そんな噂だが、説明書読む限り予 想を遙かに下回る効果のようだった。効果範囲が笑えるほど狭い。 「とりあえず試してみるか」 利明が眼を向けた先では、十数匹の実装石が集まって金平糖をむさぼり食っている。実 装寄せスピーカーによって集められた実装石。大人しくさせるためと、簡単な上げを目的 として金平糖をばらまいていたのだ。 金平糖は道具箱から持ち出した業務用実装寄せ金平糖。 利明は左手で音叉を持ち、右手でハンマーを構えた。 「せーのッ」 トンッッ………ッ…… 「デギッ!」 「デバッ!」 「ヂュィィィィ!」 鈍い振動音と、実装石の短い悲鳴。 利明の近くにいた実装石が偽石を砕かれ、即死する。 だが、少し離れた場所にいた実装石は死んでいる者と生きている者が半々だった。生き ている実装石は、それぞれ自分の偽石のある場所を押さえて、小さく痙攣している。偽石 に重度の損傷を負い、まともに動けないらしい。 「デギギギ、デゲゲガギィィィ」 「いダイ、いだイデズゥゥ!」 離れていた実装石は、偽石のある場所を両手で押さえ、涙や涎や鼻水を垂れ流し、糞も 漏らして元気に悶絶していた。生きてはいるが、凄まじい苦痛に身体と意識を蝕まれてい る。偽石に中程度のダメージを負った結果だった。 「なーんか、俺のイメージと違う……」 左手に持った実装音叉を見ながら、利明は首を傾げた。音叉一発で声すら上げられずに 周囲の実装石が全滅すると考えていたのだが、実物の効果は今の通りである。 「広範囲使用の場合は別売りの音波増幅機を用意しろって書いてある。これは隠れてる実 装石の近くで鳴らして殺す道具みたいだな。巣に忍び寄ってから、トンって」 「なるほどー」 生返事をしつつ、利明は音叉とハンマーを一度をポケットにしまい、溶殺剤を実装石に 吹き付けた。完全死した者、動けない者、生きている者、全員が状態に関係なく溶殺剤に 浸食され、溶けて消えていく。 「じゃ、その方法で駆除するか。ちょっと面白そうだし」 薄暗い木箱の中で、親子の実装石は震えていた。 「ママ、怖いテチィ……」 「大丈夫デス。この箱があれば、絶対に身を守れるデス……!」 震える仔実装を宥めながら、親実装石は断言する。 たまたま広場に落ちていた木箱。実装石が住処を選ぶ場合、本能的な何かで段ボール箱 を好むが、同時に木箱の頑丈さも本能的な何かが教えてくれる。親実装はそれほど賢い個 体ではなかったが、偶然見つけた木箱に信頼を寄せていた。 実際、襲い来る外敵に対して木箱はそれなりに有効である。実装石ではどう頑張っても 壊せず、マラ実装石でも獣装石でも、実蒼石でもまず壊せない。 もっとも、人間には無力なのが現実だ。 トンッ……ッ…… 微かな音が響いた、その瞬間。 「デギャ!」 「テヂッ」 「ヂュゥ」 猛烈な痛みが身体を貫き、親実装は倒れた。 (何が起こったデス……!) まともに動かない思考で、それだけを考える。 全身を蝕む形容しがたい激痛。手足も全く言うことを聞かない。神経を直接焼かれるよ うな凄まじい痛みに、動くこともできない。自分の命の石にいくつもの亀裂が走っている のだと、なぜか理解できた。 目の前では、五匹の仔実装が倒れている。 既に全員眼を白濁させ、息絶えていた。 (痛い、痛いデス……! 苦しいデスゥゥゥ! 酷いデスゥゥゥ!) 叫びたいが声も出ない。 偽石に刻まれた重度のメージに、親実装はただ涙を流して痙攣するだけだった。大事な 仔たちは自分を置き去りにして、安楽な死の世界へと旅立っている。 周りが明るくなった。 「ふむ。仔は全滅だけど、親はぎりぎり生きてるみたいだ。使い方難しいな、実装音叉」 「そりゃそうだろ。無差別殺傷音波だし」 人間の声がする。 この痛みは人間の仕業。頑丈な木箱も人間には無意味。 親実装石がそう理解した時には、何もかもが致命的に手遅れだった。 「あ。そうだ。思い出した……。賢いヤツは使うんだっけ。木箱使ってるってことは、賢 い個体だったかもな。でも、これじゃもう使えないだろ……」 「次探すか」 何かが吹き付けられた。 途端、身体の外側が焼けるような痛みを発し始める。 「デギャアァァァァア!」 身体の中と外から襲い来る痛みに、親実装は動かないはずの手足を振り回して暴れた。 「テェェチャァァァ!」 仔実装の悲鳴とともに、クチャクチャと肉を咀嚼する音が響く。 地面に座った獣装石が、仔実装を食べていた。近くには親実装石の死骸と足を折られた 仔実装が三匹転がっている。どうやら狩りの直後のようだった。 「ほう。獣装石とは珍しい」 利藏は麦藁帽子を持ち上げ、獣装石を見つめる。 何らかの原因で動物の要素を実装した実装石。動物の精液によって妊娠した実装石から 生まれると言われていた。他にも、妊娠直後に動物の毛や肉、糞を口にしたりすると胎内 仔が獣装石に変異することがある。大抵の獣装石は後者が原因だ。だが、因子が無くとも 稀に生まれたりするらしい。 「テェェン! テァァァ!」 「テェェッ、チィィ!」 利藏の姿に気付いた仔実装たちが、助けを求めるように両手を振り上げている。両目か ら色付き涙を流し、必死の命乞いだった。実装石は本能的に人間を庇護者と考える。食わ れる運命の仔実装たちにとって、利藏はまさに救世主に見えただろう。 利藏は感慨もなく、その光景を見下ろす。 実装石の仔食い。 時に自分の仔ですら普通に食ってしまう実装石。一説によると、仔実装石は親実装石に とっての栄養貯蔵庫であるらしい。自分の身体に蓄えられない分の栄養を、仔という形で 外に置いておく。食事が十分で仔が独り立ちできればそれでよし、食事が足らず栄養不足 なら貯蔵庫である仔を食う。どこか本末転倒なそんな仕組み。 「デェ?」 獣装石が利藏に気付いた。 囓っていた仔実装を口に放り込んで丸呑みにしてから、四つ足になって牙を剥く。 「デジャァァアアァァ!」 全身の毛を逆立て、獣装石は威嚇の声を発していた。 人間を危険と判断する程度の頭はあるらしい。大人しく立ち去れば何もしないが、利藏 が攻撃の仕草を見せたりすれば、飛び掛かってくるだろう。 「うるさいヤツだ」 威嚇の声に顔をしかめ、利藏は竹棒を獣装石の目の前に突き出した。 獣装石に引っかかれたり噛まれたりする虐待派の噂は時々耳にする。小型動物程度の運 動能力があり、牙も爪もある獣装石は、普通の野良実装石とは別物だ。普通の野良実装感 覚で虐待しようとすれば、返り討ちに遭うだろう。 だが、一方で結局は実装石だったりもする。 利藏は突き出した竹棒を動かし始めた。空中に円を描くように。 「デ、ス……?」 獣装石の注意が利藏から目の前で動く竹棒の先端に移る。目の前に注意を引くものがあ れば、それを無視することができない。他のことを放り出して、そちらに集中してしまう のだ。思考の並行作業ができないと表現するのだろう。 「デェ……ェ……?」 棒の動きに合わせて、獣装石の赤緑の眼がぐるぐると動いている。眼に引っ張られるよ うに首も動いていた。既に利藏のことは意識の外に放り出されている。 頃合いを見計らい、利藏は素早く竹棒を突き出した。 「デギッ……!」 眉間を一突きされ、実装石は仮死に陥る。 「最近の実装は手応えが無い……」 実装石として相手をすると厄介な獣装石でも、獣装石として相手をしてやればあっさり 仕留めることが出来る。変な小道具も必要ない。結局のところは牙と爪と高い運動能力を 持った実装石でしかないのだから。 「テチュ〜ン♪」 「テッチー♪」 残った仔実装が、利藏相手に媚びたりしている。 自分を襲ってた獣装石を倒した事で、味方と勘違いしているらしい。味方と言えば聞こ えがいいが、穿った意訳をしてしまえば、便利な奴隷と言ったところだろう。 利藏は噴霧器をかざし、グリップレバーを握った。実装石の死体や仮死した獣装石、動 けない仔実装たちに、溶殺剤を吹き付けていく。 「テチィィィィィ!」 「チャァァァァ!」 生きたまま身体を溶かされ、その激痛にのたうち回る仔実装たち。助けてもらえると思 ったところに、与えられたのは地獄の苦痛だった。溶殺剤は白煙を上げて泡立ちなが、仔 実装の小さな身体を瞬く間に浸食していく。 「残念だったな」 実装石の残りカスに一言呟いてから、利藏はその場を後にした。 「喰らうデスァッ!」 「おっと」 ベチャッ……。 俺は横に跳んで、不意に投げつけられた実装糞を躱す。 「デーピャピャピャー」 目を向けた先には、一匹の成体実装石が仁王立ちしていた。右手を俺に向け、左手でお 腹を押さえ、両目から涙を流して笑っている。 「これでお前も糞人間デスー。お前にうんち付けたデスから、これからお前はワタシのい 奴隷デスー。だから、うんこニンゲン、ワタシのことはご主人様と呼ぶデスー。まずは、 コンペイトウとケーキを用意するデスー」 サーチャーに内蔵されたリンガルに表示される文字。 実装石は奴隷扱いした相手に糞を付ける習性があった。同時に、糞を付けられるだけで 奴隷扱いするようになる事もある。その相手は実装石だけでなく、他の実装生物や動物、 人間も含まれた。この実装石が言っているのは、その事だろう。自分の糞を付けたから、 俺は自分の奴隷である、と。 避けたので糞は付いていないが、付いた事にしているらしい。 実装石はその場で地面を蹴りながら、癇癪を起こしたように叫んでいる。 「デシャァァッ! さっさと寿司とステーキ持ってくるデス、このクソニンゲン! お前 は能無しの役立たずデスッ!」 この糞蟲がァ! と、怒りたくなる気も起こらん。 「大当たりだ」 口元に笑みを浮かべ、俺は実装石から離れるように素早く走り出した。 背後から聞こえてくる実装石の叫び声。 「待つデシャァアァァァアァ!」 一分後。 目的のものを回収した俺は、さきほどの実装石の前まで戻っていた。 「そんなデスゥ……!」 実装石が凝視しているのは、俺に捕まった中実装二匹と仔実装四匹である。ビニール紐 で縛られて、干し柿よろしくぶら下げられていた。中実装がそれぞれ仔二匹を連れて逃げ ようとしていたのを捕獲したのである。 「残念だったなー。はっはっは」 吊し実装石を揺らしながら、俺は親実装を見下ろした。 「ママ、ごめんなさいテス……」 「逃げられなかったテス……」 「助けてテチィ……」 泣きながら謝っている中実装&仔実装。 確認せずとも分かる。こいつらは目の前の実装石の子だ。 さきほど親実装が俺を挑発している時、サーチャーにはその場から離れる六匹の反応が 映っていた。親が人間を引きつけているうちに、二匹の中実装がそれぞれ仔実装を連れて 安全な場所まで逃げる。死を覚悟しての芝居だろう。 愛情ある賢い親子、合計七匹。大量収穫だ。 「ワタシの子を返すデスゥゥゥ!」 泣きながら駆け寄ってくる親実装。 その顔面に軽く蹴りを入れてひっくり返しつつ、俺は吊し実装を地面に置いた。ポケッ トから紫電の水晶針を取り出し、下ろした中仔実装石たちの頭に刺していく。 「テェ」 「テチッ」 頭に水晶針を刺されるたびに、小さく痙攣する実装石。発砲スチロールに爪楊枝を刺す ような手応えとともに、薄い紫色の針が脳へと届いていた。 蹴倒した親実装石の頭にも水晶針を刺す。 「デェ? 何デス、身体が勝手に動くデス……」 自分の意志とは無関係に、立ち上がってグランウドへと歩き出す親実装石。ビニール紐 を解いた中実装や仔実装も、親実装と一緒に歩き始める。 「テェェ。足が動かせないテスー」 「ニンゲン、何したテスー!」 口々に叫んでいるが、俺は無視して次の獲物を探しに向かった。 この世の理はすなわち速さだとは思いませんか? 物事を早く終わらせれば、その分時間が有効に使えます——以下略ッ! 「訳がわからんデス……!」 片耳の実装石が、草地を闇雲に走っていた。 どこからか聞こえてくる実装石の悲鳴。空気に満ちた死の臭い。偽石が身の危険を知ら せている。そして、本能と思考が逃げろと自分に命じていた。 だが、本能はどこに逃げるかまでは教えてくれない。 さきほど老いた人間が、棒で親子を刺し殺し、何かの薬でその身体を溶かしてしまうの を見ていた。片耳実装石は偶然死角にいたため気付かれずに生き延びている。それで、人 間がこの広場の実装石を殺しているのだと把握していた。 「どこに逃げればいいデス……!」 逃げなければならない。 しかし、行き先が分からない。 人間に本気で追いかけられたら、実装石に助かる術は無い。 「デスッ!」 片耳実装石はそこで見知ったものを見つけた。 紫色の実装。片耳実装石に背を向けているため顔は見えないが、間違いはなかった。か つてマラ実装石に襲われかけた片耳実装石を助けた風変わりな実装である。 「ムラサキさん、助けてデスゥゥゥ!」 「カワイ、ソウ……?」 泣きながら駆け寄る片耳に、紫色の実装が振り返った。 「ニンゲンがワタシたちを殺そうとしてるデスゥゥゥ! 助けてデスゥゥ!」 泣きながら抱きつくものの、紫色の実装はあっさりと横に移動して躱した。何もない空 間を抱きしめて前のめりに倒れるが、片耳は構わず起き上がる。 「アナタハ……誰?」 「昔ムラサキさんに助けて貰った実装石デス!」 答える片耳に、紫色の実装は顎に手を当て、黄色い片目を空中に彷徨わせる。空を見上げ、 地面を見下ろし、近くの草を見つめ、数秒の黙考から頷いた。 「ソウイエバ……ソンナ事モアッタヨウナ……」 「このままじゃ、ワタシもニンゲンに殺されてしまうデス。アナタなら何とか出来ると思 うデス。お願いデス、助けて欲しいデ——」 そこで、片耳は口を閉じる。 今まで気付かなかったが、すぐ近くに実装石親子の死体が転がっていた。成体実装一匹 に、中実装二匹、仔実装二匹、親指と蛆。その頭や胸には透明な針が刺さっている。 「これは……何デス……?」 片耳の脳裏に、かつて自分を襲ったマラ実装石が浮かんだ。 胸に透明な針を刺され、マラ実装石は息絶えている。 紫色の実装が放った透明な針に偽石を壊され。 ここに倒れている親子も同じだ。透明な針に偽石を壊され、死んでいる。 そして、この親子を殺したのは、紫色の実装。 「どういう事……デス?」 「多分、アナタハ勘違イヲシテイル……。私ハ、アナタヲ助ケタワケジャナイ……。私ハ 襲ッテキタ、マラ実装石ヲ殺シタダケ。アナタガ助カッタノハ、タマタマ……。私ハアナ タノ仲間デモ味方デモナイ……」 「デ……ェ……」 言葉を失う片耳。 紫色の実装は、脇に抱えていた小さな筒を親子の死体に向けた。 シュー。 空気の抜けるような音がして、霧状の何かが死体に掛けられる。途端、死体が泡立ち始 めた。泡の色は違うが、老いた人間によって溶かされた親子と一緒である。 この紫色の実装は、人間の仲間。自分を殺そうとする相手。 片耳は即座にそう結論づけた。 「デジャァァァ! 死にたくないデス、殺さないでデスゥゥゥ!」 腰を抜かしたまま色付き涙を流し、片耳実装石は力任せに腕を振った。 さきほどまで頼もしく見えた紫色の実装が、今は不気味なものに見える。感情の読めな い黄色い眼で、へたり込んだ片耳を見下ろしていた。 「分カッタ……。アナタハ記憶力ガイイ……。ダカラ、使エルカモシレナイ……」 プス。 頭に痛みが走り。 片耳実装はその場に立ち上がっていた。 そして、勝手に歩き始める。自分の意志とは関係無しに。足を止めようとしても、自分 のものではないように、全く言うことを聞かない。 「デェェェ?」 意味不明の事態に、片耳実装石はただ呻くことしかできなかった。 空がすっかり雲に覆われた午後四時半。 広場の実装石をあらかた駆除し終わり、俺たちは入り口前へと戻っていた。 集めた賢い実装石は、成体三十二匹に、中と仔が三十七匹。水晶針を刺して誘導した個 体や、入り口の罠に掛かっていたものなど。あんまり賢くないのもいるようだけど、その 辺りは考慮しない。裏ドドンパと弱性シビレを食わせてあるので、糞を漏らすこともなく 逃げることもない。 「ほい、選べ」 俺は一匹の実装石の前に、握った右手を突き出した。 握られているのは、四本のクジ。一本だけが当りで残り一本が外れと伝えている。 「デェェェ……」 実装石は両目から涙を流しながら、俺を見つめた。賢い個体のため、ここで媚びるよう なことはしない。俺から目を外し、外れ組と当り組を順番に見やる。 当り組、とりあえず命だけは保証された連中。保証されたのは、文字通り命だけ。髪と 実装服は奪われ、前掛けと実装靴だけの哀れな姿となっている。ついでに、額にくっきり と『○』の焼き印が押され、成体は片目を焼き潰されている。 当り組の連中は全員涙を流しながら、外れ組を見ていた。 「デギャアァァァ!」 「痛いデスゥゥ!」 「助けてデシャァァァ!」 外れ組の方は、利藏さんや利明&昭俊、紫電に虐待を受けている。 利藏さんはシンプルに竹棒でひたすら実装石を叩いたり小突いたりしていた。一見適当 に見えるが、逃げる余裕を与えつつ決して逃げられない状況が渋い。しかも、骨折してい る箇所を器用に小突くという厭らしさ。 利明&昭俊は俺が持ってきた小道具で好き勝手虐待していた。実装軟化剤で実装石を粘 土状にしたり、小型バッテリーで感電させたり、忌避剤飲ませたり、免疫抑制剤を注射し て処理剤を掛けたり、楽しそうに虐待してる。 紫電はまち針のように細い水晶針を無数に突き刺していた。毬栗かウニのようになった 実装石が転がっている。他にも頭に水晶針を刺され、その場で身体を滅茶苦茶に捻ってい る者もいた。どちらにしろ、かなり苦しい事になっている。 こちらは全員、虐待の末に殺される予定だ。 「酷いデスゥゥ……」 「選ばないなら、俺が選んでやる」 俺は左手でクジの一本を引き抜く。クジの先は赤く塗られていた。実は四本のクジは全 部赤く塗ってあって、当り外れは俺が決めてるんだけど。 「残念、外れだ」 「嫌デスゥゥゥ!」 痺れた手足を動かし何とか逃げようとするが、俺はその頭を鷲掴みにしていた。身体を 持ち上げられ、弱々しく手足を動かすだけで逃げることもできない。 「おーい。利明、昭俊、追加だ。頼む」 声を掛けてから、俺は掴んでいた実装石を放り投げる。くるくると回転してから、利明 たちの目の前に落ちた実装石。グキと、鈍い音が聞こえた。落下の衝撃でどこかの骨が折 れたみたいだけど、誰も気にしない。 うつぶせの実装石を昭俊が笑顔で摘み上げていた。 「さー。楽しく遊ぼうね、実装ちゃん」 「デェェェン……」 力無く泣いている実装石。 俺は次の実装石の前にクジを握った右手を突き出した。 「ほい、選べ」 これは、実装石の増え戻りを防ぐ方法のひとつだった。 人間の恐怖を植え付け、繁殖力を殺した賢い個体をあえて少しだけ残す。それにより、 無節操な増殖の危険性と人間への恐怖心を定着させるのだ。完全駆除から該当場所を完全 封鎖の方が確実性は高いが、そうもいかないのが現状である。 少なくとも、春くらいまでは効果は続くはずだ。実装研の友人曰く。 その後は知らん。 暗くなった空から雨が降り注ぐ。 時刻は夜七時過ぎ。 「酷いデス……」 片耳実装石は地面にへたり込んだまま、無力に雨に打たれていた。 前掛けと実装靴だけの惨めな姿、額には火傷跡があり、右目は焼き潰されている。もう 仔は生めない。この姿ではどこかの群れに入るのも無理だろう。 片耳実装石を生かしているのは、本能的な死への恐怖だけだった。 ふと頭に浮かんだ、紫色の実装の姿。かつて自分をマラ実装から助け、今回は人間とと もに自分を破滅へと放り込んだ。カワイソウと口にしつつ、可哀想とも何とも思っていな い無情な態度と行動。 「酷いデス……」 片耳実装石は何度目か分からぬ台詞を口にしていた。 「デェエェェェン!」 用水路に落ちた実装石は、ひたすら登れそうな場所を探して彷徨っていた。夕方から降 り始めた雨によって、用水路に水が流れ込み、水嵩は膝まで上がっている。 雨脚は弱まる気配もなく、逆に強くなっていた。 このままでは水に流されて溺れ死ぬのは確実である。 だが、足に絡みつく泥と水のせいで、まともに移動することもできない。 しかも、夜の闇のせいで視界も利かない。 「誰か、助けてデェェスゥゥゥ!」 それでも、実装石は必死に助かろうと足掻いていた。 二週間後、秋祭りは予定通り開催され、つつがなく終わった。 END 過去スク 2114.【虐馬】マラ実装石虐待 2111.【虐・怪】〈紫〉黒いニンゲン 2108.【虐】上げて落として 2105.【馬】実装された都市伝説 2104.【哀】希望と絶望 2101.【馬】〈紫〉カツアゲ…? 2099.【観察】〈紫〉幸せな最期とは 2097.【虐】斬捨御免 2089.【実験】レインボー実装石 2081.【観察】Narcotic Addict − 麻薬中毒者 − 2077.【馬・虐】〈紫〉マラカノン砲 2071.【馬鹿】〈紫〉虐待してはいけない… 2066.【虐・実験】ジッソウタケ 2057.【虐・他】中途半端な賢さは… 2038.【虐・愛?】ダイヤモンドは砕けない 2031.【馬鹿】雪華実装は鍋派? 1994.【虐・観】時間の狭間に落ちる 1988.【虐】クリスタルアロー 1983.【馬鹿・薔薇】リベンジ! 完全版 1980.【馬鹿・薔薇】リベンジ! 1977.【虐・観】懲役五年執行猶予無し 1970.【実験・観察】素朴な疑問 1958.【虐・実験】虐待&リリース 1954.【獣・蒼・人間】騎獣実蒼の長い一日 1952.【軽虐】既知との遭遇 1944.【馬鹿・薔薇】水晶ハワタシノ魂ダ! 1941.【色々】実装社交界の危機 1939.【駆除】ススキ原の実装石駆除
