タイトル:【虐】 上げて落として
ファイル:仔実装石虐待.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:7064 レス数:1
初投稿日時:2010/05/03-17:03:01修正日時:2010/05/03-21:34:28
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 1日目

 部屋の奥に作られた仔実装専用飼育スペース。

 それは、背の低い台の上に作られた、半畳ほどの広さの箱庭だった。20cmほどの柵に囲
まれた正方形の箱。床には緑の絨毯が敷かれ、仔実装用ベッドと仔実装用トイレが置かれ
ている。その他にも小さな観葉植物や花なども飾られ、おもちゃとなるスポンジブロック
やスポンジボールなども置かれていた。

「これから、よろしくテチ、ご主人様」
「よしよし、エメラルド。これからよろしくな」

 お辞儀をする仔実装に、男は微笑みかけた。

 ペットショップで1980円で安売りしていた仔実装。何かの原因で片耳に傷ができてしま
い、それが原因で処分品に回されてしまったらしい。単純に元から安売りだったので、耳
の傷もそのままなのかもしれない。
 そこは男の知るところではなかった。

 何にしろ、処分品に回されたのには相応の理由があるのだろう。

 実装ショップで売っている他の仔実装よりも明らかに格安の仔たち。別名、虐待価格。
上げ済、躾け済の優良虐待用として、虐待派が買っていくことが多い。実装燈を飼ってい
る者が苗床代わりに買ったり、猫を飼っている人間が生きたおもちゃとして買っていくこ
ともある。

 どのみち、その半分は売れ残って処分されるのが実情である。
 通常の仔実装石なら成長して売り物にならなくなっても、調教師が引き取って調教の手
伝いなどに使われるが、処分品にはそのような未来もない。

 男はエメラルドの前に、小皿に山盛りされた金平糖を見せた。

「ほれ、まずは飯だ。食え」
「テェェ……!」

 大量の金平糖を目にして、エメラルドは驚きの声を上げていた。

 生まれてから成長抑制フードを食べつつ調教師の元で半月過ごす。実装ショップに並ん
でからは二週間。およそ一ヶ月の実装生の中で初めて見る、金平糖の山だった。

「いいテチ? 本当に食べていいてテチ?」

 口から涎を垂らしながら、エメラルドは男と金平糖を何度も交互に見やる。調教のおか
げですぐに飛びついたりはしないが、許可が出ればすぐに飛びつく状態だった。

「お前は晴れて飼い実装になったんだ。遠慮するな」
「ありがとうテチ。ご主人サマ!」

 笑顔で答えた男に、エメラルドは金平糖へと飛びついた。







 2日目

「ほら、エメラルド〜。ステーキだぞー」

 男はエメラルドの前に、ステーキを置いた。

 人間が食べるような大きなステーキではなく、仔実装でも食べられるような小さな肉。
だが、小さな仔実装にしてみれば、それは巨大なステーキだった。白い皿の上に温野菜と
一緒にきれいに盛りつけてある。漂う肉汁とバターの香り。

「いただきますテチュ〜」

 エメラルドは大喜びでステーキにかぶりついた。





 薄い常夜灯が灯る部屋。

「何してるテチ……?」

 微睡みかけたエメラルドは、男がカレンダーに向かっている事に気づいた。

 今日の日付の所に『×』が付けてある。それから、五日後に『○』の印が付けられてい
た。エメラルドには印を付けていることしか分からなかったが。

「そのうち分かるよ」

 男は笑顔で答えた。







 3日目

「お寿司テチュ〜♪ 美味しいテチュ〜♪」

 仔実装でも食べられる小さな寿司を口一杯に頬張りながら、エメラルドは至福の声を上
げていた。調教師の元では、飼い実装石の生活は大変と聞かされていたのに、現実は楽園
のような生活である。

「さすが、ニンゲン凄いテチュ〜♪」

 ご主人サマと呼ばなければならないのを、既に『ニンゲン』と言い始めている。エメラ
ルドは順調に、飼い候補から糞蟲へと落ち始めていた。

 その様子を笑顔で見つめる男。





 その夜。

「ニンゲン……?」

 エメラルドは人間がカレンダーに『×』を書いているのを見ていた。
 だが、それが何かは考えることもなかった。







 4日目

「これが、エメラルドの新しい服だよ」

 男が持ってきたのは、きれいな仔実装服だった。鮮やかな緑色の生地と、白いフリル。
あちこちに、きれいなアクセサリが飾られてあった。微かに漂う石鹸と香水の香り。さら
に、きれいなパンツや実装靴まで用意してある。

「ワタチに相応しいきれいなお服テチ〜♪」

 エメラルドはすぐさま自分の実装服を脱ぎ捨て、新しい実装服へと着替えた。

 生まれた時から着ている実装服とは違い、身体にはまだ馴染んでいないが、新しい実装
服には何とも言えぬ高級感があった。

「ワタチはお姫サマテッチュ〜ン♪」

 新しい実装服を見せつけるように踊りながら、エメラルドは至福の声を上げていた。







 5日目

「こんなもの食えるかテチィ!」

 用意された高級実装フードを、エメラルドは思い切りひっくり返した。肉や野菜をバラ
ンスよく含んだ高級フードが、緑色の絨毯に無惨に散らばった。

「ワタチはお姫サマテチッ! このクソニンゲン、さっさともっと高級で甘くて柔らかく
て美味しいものを食べさせるテチャァァ!」
「分かったよ、エメラルド……」

 男は散らばったフードを手早く片付け、部屋を出て行った。

 しばらくして戻って来る。

 その手には、白いケーキの乗せられた皿を持っていた。それをエメラルドの前に置く。
皿に乗せられたのは、平たく白い円筒形のケーキ。トッピングの類は一切無い。

「これなら、満足かな? シンプルホワイト。余計な装飾を一切省いて、その味のみに特
化させた、セレブ御用達の超高級ケーキさ」

 エメラルドは疑うようにしばらく匂いを嗅いでいたが、

「ありがたく食ってやるから感謝するテチ!」

 偉そうに言い切ってから、ケーキを食べ始めた。







 6日目

「こんなもん食えるかテチャァァァ!」

 エメラルドは出されたケーキをひっくり返した。

 昨日は食べたケーキであるが、我が儘を言えばもっといいものを出される。幸せ回路が
昨日の経験からそう導き出していたのだ。

「困ったなぁ。これ以上高級なものは、うちには無いよ」
「なら買ってくるテチ! 探してくるテチ! そんなこともできないテチッ! 何もでき
ない能無しのクソドレイニンゲン、さっさと消えるテチ!」

 癇癪を起こしながら、辺りのスポンジブロックを蹴散らし、仔実装用ベッドをひっくり
返し、身に纏っていた実装服を破り捨てる。一緒に髪の半分くらいが千切れていたが、そ
れには気づいていない。

「そうするよ」

 男はそう告げて、部屋を出て行く。

「この能無しがテチャァァァ!」

 その背に罵倒の言葉を投げかけ、エメラルドは落ちていたタオルを身体に巻き付け、ふ
て寝してしまった。途中何度か目が覚めたが、見回しても男がいない。

 エメラルドはそのまま夜までふて寝を続けることとなる。





 その夜。
 エメラルドが眼を覚ますと、暗い部屋で男がカレンダーに『×』を書いていた。

「もう明日か……。早いなァ……」
「テ?」

 男の言葉が気になったが、眠気のままにエメラルドは再び眠りについた。







 7日目

「どうやら、僕のところじゃ、エメラルドが満足する暮らしはムリみたいだ」
「当たり前テチ、この無能ニンゲン!」

 悪びれる様子もなく言う男に、エメラルドは吐き捨てるように告げた。自分を満足させ
られないニンゲンは、奴隷にも及ばないクズである。

 男は淡々と続けた。

「だから、僕の知り合いに引き取って貰うことにしたよ。彼は大会社の社長だからね、エ
メラルドが満足する生活を与えてくれるよ。きっと」
「なら、さっさとその新しいドレイの元に連れて行くテチ! ワタチはそこで優雅に暮ら
すテチ、もうお前の顔も見たくないテチッ!」
「そう」

 男が笑った。

 その瞬間にエメラルドの意識は途切れた。






  ・ ・ ・ ・






 8日目

「テェ? ここは、どこテチ……?」

 エメラルドは自分がいる場所を見回した。

 暗く湿った臭い部屋。部屋の隅には粒タイプの実装フードが小皿に盛られ、反対側には
実装糞の飛び散ったトイレがあった。床は硬く冷たい。最近まで誰か他の実装石がいた匂
いがするが、それはどうでもいい。

「ここはどこテチッ! こんな臭くて狭くて汚い所はワタチがいる場所じゃ無いテチッ! 
無能ニンゲンッ、さっさとワタチをここから連れ出して、新しいドレイの所に連れて行く
テチッ! 聞こえないテチか!」





 ひとしきり叫んでから、反応が無いことを悟る。

「テェ……テェ……。お腹空いたテチ……」

 エメラルドはふらふらと実装フードの元へと歩いていった。

 今まで自分でも気づいていなかったが、昨日も一昨日も何も食べていない。事実上、約
三日間の断食。成体ならともかく、仔実装にとってはかなりの負担となるものだ。

 思い出してしまえば、後は空腹が急激に意識と身体を蝕んでいく。

 エメラルドは落ちていたフードを拾い上げ、口に入れた。

「不味いテチッ……!」

 あまりの不味さに、フードを吐き出す。

 超格安実装フード。色々ある実装フードの中では最低ランクのものである。
 通常ランクフードを作る際の残りカスを再利用したもので、栄養価も低く味も悪い。実
装石をただ生かすためだけに与えるような餌だ。
 それでも需要はあるため、一応売れている。主にこのような形で。

 超格安フード、人間の料理に慣れたエメラルドの舌には、泥も同然だった。

 しかし、胃を締め付ける空腹には勝てない。

「あの無能ニンゲン、今度会ったらぶっ殺してやるテチ……!」

 毒づきながら、エメラルドは泣きながら徳用フードを口に押し込んでいった。





 ふっと部屋が明るくなった。

「テ?」

 エメラルドが眼を向けた先。

 壁の一面がガラス張りになって、向こうの風景が見えていた。
 自分がいたはずの箱庭。そこに男が仔実装を連れてきている。

 エメラルドのいる小部屋は、仔実装用ベッドのすぐ横辺りにあった。箱庭が見渡せ、幸
せそうに眠る仔実装が間近で見られる特等席である。

「これから、君は飼い実装石だよ」
「分かったテチュ」

 ぺこりとお辞儀をする仔実装。調教師の元で基本的な礼儀は叩き込まれているので、い
きなり変なことを言ったりはしない。

 男はその頭を撫でてから、

「これから、お前の名前はエメラルドだ」
「エメラルド——テチ?」

 不思議そうな顔をしてから、仔実装は再び頷いた。

「これから、よろしくテチ、ご主人様」
「よしよし、エメラルド。これからよろしくな」

 笑顔で言ってから、男は仔実装の前に皿に盛られた山盛りの金平糖を置いた。

「ほれ、まずは飯だ。食え」
「テェェ……!」

 大量の金平糖を眼にして、仔実装は驚きの声を上げていた。

 生まれてから成長抑制フードを食べつつ調教師の元で半月過ごす。実装ショップに並ん
でからは二週間。およそ一ヶ月の実装生の中で初めて見る、金平糖の山だった。

「いいテチ? 本当に食べていいてテチ?」

 口から涎を垂らしながら、仔実装は男と金平糖を何度も交互に見やる。調教のおかげで
すぐに飛びついたりはしないが、許可が出ればすぐに飛びつく状態だった。

「お前は晴れて飼い実装になったんだ。遠慮するな」
「ありがとうテチ。ご主人様!」

 笑顔で答えた男に、仔実装は金平糖へと飛びついた。





 その様子をハーフミラーに貼り付きながら凝視していたエメラルド。満面の笑みで金平
糖を食べる仔実装を見て、不意に我に返った。

「何してるテチィ! この無能クソニンゲンがテチャアァァァ!」

 喉が裂けるほどに絶叫しつつ、両手でぽふぽふとガラスを叩く。しかし、仔実装の腕力
と柔らかウレタンボディでは、硬いガラスに傷を付けることもできない。

 しかも、防音二重ガラスのため、いくら騒いでも声が向こうに届くことはなかった。エ
メラルドは知らないが、外の音はスピーカーを通して中に伝わるようになっている。

「テエエエエェェェ! チャァァアァァァ!」

 それでも、金平糖を美味しそうに食べる仔実装を睨み付け、エメラルドは叫び続けた。

 が。

「テヒュ……!」

 脈絡無く腹から湧き上がった痛みに、エメラルドは動きを止める。
 喚いていた口を閉じ、全身を震わせ、皮膚から油汗を滲ませた。元々美味しいものに慣
れたところに、約三日間の断食を挟んで、安物実装フードを大量に腹に入れたのである。
そこに加わる、泣き叫び暴れるという激しい運動。

 消化器官がショックで拒否反応を起こしたのだ。
 いわゆる急性下痢。

「漏れる——テチ……!」

 トイレ以外の場所で糞を漏らすと、自分が大変なことになる。調教師の元で教えられた
基礎的な躾は守られていた。

 どこでも糞を漏らすという印象がある実装石だが、突然の脱糞を除いては極力糞はトイ
レに当たる場所でするようになっている。いわゆる糞蟲個体はその限りではないが。

「おトイレ……」

 だが、そこにあるのは、実装糞の飛び散った汚いトイレ。今まで使っていた、清潔な仔
実装トイレとは比べものにならない不潔なものである。

「汚いテチィィ……」

 そこで排泄すべきか否か、かなりの時間躊躇ってから。
 エメラルドは意を決した。

 だが、手遅れだった。

「テッ……チャァァァ……!」

 ブリブリ、と不快な音を立て、総排泄孔から実装糞が吹き出していく。

 木でも土でも消化してしまう多数の消化酵素に加えて、その消化吸収を助ける多数の微
生物。その結果、実装石が作り出す実装糞は強烈な異臭を持ち、内部に無数の気泡を含む
ことによって量を嵩増しされる。

 これが実装糞の臭いと、不自然な量の仕組みだった。

 だが、糞にまみれたエメラルドにとってそれはどうでもいいことである。

「気持ち悪いテチ……」

 ガラスに映った自分の姿。糞にまみれた裸の仔実装石。服をむしり取る際に髪も半分ほ
ど抜けていたため、禿裸よりも無惨な容姿だった。
 ガラスの向こうでは、男に遊んで貰っている仔実装の姿。

 あまりに惨めな差である。

「こんなの許せるかテチャァァァァァァァァ!」

 再び癇癪を起こしたエメラルドは、絶叫しながらガラスを叩き続けた。





 その夜。

 一日中叫び続け泣き続けたエメラルドは、憔悴しきってなおガラスに貼り付いていた。

 目の前のベッドで気持ちよさそうに眠っている仔実装。これから夢のような日々を想像
しているのか、その顔には心地よさそうな笑みが浮かんでいる。

 エメラルドは憎悪と怨嗟の形相で、それを睨み付けていた。

 ふと何かに引っ張られるように、顔を上げる。

「……テ?」

 男がカレンダーに『×』を付けていた。

 眠ってしまった仔実装は気づいていない。記憶を辿ってみると、エメラルドが箱庭にい
た時も男はカレンダーに『×』を書き込んでた。

 カレンダーには『○』の記された場所もある。

「あれは何テチ……?」

 その疑問に答える代わりに。

 どこかで機械の動く音。

 次の瞬間、天井から勢いよく水が吹き出した。

「テチャァァァ!」

 洗剤入りのお湯が小さな部屋を丸ごと洗浄する。いきなり全身に襲いかかった大量のお
湯に、エメラルドはその場にひっくり返りパニックに陥る。

 部屋の洗浄は三分ほど続いた。

 その後、エメラルドは起き上がることもできず、泥のように眠りについた。







 9日目

「ほら、エメラルド〜。ステーキだぞー」

 男は仔実装の前に、ステーキを置いた。

 人間が食べるような大きなステーキではなく、仔実装でも食べられるような小さな肉。
だが、小さな仔実装にしてみれば、それは巨大なステーキだった。白い皿の上に温野菜と
一緒にきれいに盛りつけてある。漂う肉汁とバターの香り。

「いただきますテチュ〜」

 仔実装は大喜びでステーキにかぶりついた。






「そいつはワタチが食べるものテチャアァァ! 無能ニンゲン、ワタチにも美味しいご飯
食べさせるテチャァァ!」

 ガラスに貼り付いたまま、エメラルドは元気に喚いていた。

 仔実装が食べているのは、エメラルドも食べたステーキである。美味しそうに小さなス
テーキを食べる仔実装相手に、あらん限りの叫びを続けていた。

「そこの糞仔蟲テチィィ! 何でお前がワタチのステーキ食ってるテチァァァ! ぶん殴
ってやるからこっちに来るテヂィィ!」

 だが、音は外には漏れない。





 その夜、エメラルドはいつの間にか用意されていた実装フードをもそもそと食べていた。
決して美味しいものではないが、空腹に苛まれるよりはいくらかマシである。

「あのクソニンゲン、ワタチを騙したテチ……」

 今になってようやく、自分が騙されていた事に気づいた。
 あの幸せな生活も今の惨めな状態に叩き落とすため。『上げ落とし』という言葉は知ら
ないが、地獄を際だたせるために天国を見せた男の悪意は十分に把握していた。

 ガラスの外を見ると、男がカレンダーに『×』を書き込んでいる。

「あいつ、何してるテチ……?」

 カレンダーに記された『×』の文字。『○』までの間がひとつ減っている。

 エメラルドが男に騙されていた時も、カレンダーの『×』が増えるのは見ていた。その
時はは気にも泊めていなかったが。
 思い返してみると『○』の日に、この牢屋のような部屋に放り込まれた。

 外で幸せそうに寝ている仔実装は、増えていく『×』には気づいていない。かつてのエ
メラルドのように。

「テププ……」

 エメラルドは嗤った。何も知らずに我が世の春を謳歌している仔実装を。『○』の日に
なれば、この地獄に放り込まれることも知らずに。







 10日目

「これが、エメラルドの新しい服だよ」

 男が持ってきたのは、きれいな仔実装服だった。鮮やかな緑色の生地と黄色いフリル。
あちこちにきれいなアクセサリが飾られてあった。微かに漂う石鹸と香水の香り。さらに
きれいなパンツや実装靴まで用意してある。

「ワタチに相応しいきれいなお服テチ〜♪」

 仔実装はすぐさま自分の実装服を脱ぎ捨て、新しい実装服へと着替えた。

 生まれた時から着ている実装服とは違い、身体にはまだ馴染んでいないが、新しい実装
服には何とも言えぬ高級感があった。

「ワタチはお姫サマテッチュ〜ン♪」





「テププ〜♪ あいつは馬鹿テチュ〜♪」

 不味い実装フードをもそもそと食べながら、エメラルドはガラスの前に座って仔実装の
喜ぶさまを眺めていた。その眼に優越感の光を灯しながら。

 もう昨日のように騒いだり喚いたりはしない。

 仕掛けが分かってしまえば、何も知らずに喜ぶ仔実装の姿は喜劇そのものだった。

「今のうちにせいぜい楽しんでおくテチュ〜♪」







 11日目

「こんなもの食えるかテチィ!」

 用意された高級実装フードを、仔実装は思い切りひっくり返した。肉や野菜をバランス
よく含んだ高級フードが、緑色の絨毯に無惨に散らばった。

「ワタチはお姫サマテチッ! このクソニンゲン、さっさともっと高級で甘くて柔らかく
て美味しいものを食べさせるテチャァァ! それがお前の仕事テチャァァ!」
「分かったよ、エメラルド」

 男は散らばったフードを手早く片付け、部屋を出て行った。





「テププ。見てられないテチ……」

 自分と同じ我が儘さを見せる仔実装を眺めながら、エメラルドは嫌らしい笑みを浮かべ
ていた。破滅が分かっているのにそれに気づかぬ相手を眺める優越感。

「もっと我が儘言うテッチュ〜♪」

 他実装石の不幸をおかずに食べる実装フードは、何とも言えぬ味わいだった。







 12日目

「ご馳走持って来るテチャァァァ!」

 仔実装は出されたケーキをひっくり返した。

 昨日は食べたケーキであるが、我が儘を言えばもっといいものを出されると昨日の経験
から導き出していたのだ。

「困ったなぁ。これ以上高級なものは、うちには無いよ」
「なら買ってくるテチ! 探してくるテチ! そんなこともできないのかテチッ! 何も
できない能無しのクソドレイニンゲン、さっさと消えるテチ!」

 癇癪を起こしながら、辺りのスポンジブロックを蹴散らし、仔実装用ベッドをひっくり
返し、身に纏っていた実装服を破り捨てる。一緒に髪の半分くらいが千切れていたが、そ
れには気づいていない。

「そうするよ」

 男はそう告げて、部屋を出て行った。

「このクソドレイテチャァァァ!」

 その背に罵倒の言葉を投げかけ、仔実装は落ちていたタオルを身体に巻き付け、ふて寝
してしまった。





「あとちょっとテチ♪」

 カレンダーに記された『×』と『○』を眺めながら、エメラルドは来るべき破滅を一日
千秋の思いで待っていた。この小部屋に放り込まれて狼狽える、仔実装の惨めで哀れで滑
稽な姿を想像しながら。

「はやく『○』になるテチ〜♪ 『○』になったら——」

 そこでぴたりと笑みを止める。

 ペット用実装石として選定、教育されたため、エメラルドは普通の仔実装よりも頭の回
転は速い。連日の幸せ回路によってかなり鈍ってはいたが、今でも平均以上の知能は残っ
ている。それが、ひとつの疑問を作り出した。

「テェ……? あれが『○』になったらワタチはどうなるテチ……?」

 『○』の日になったら、あの仔実装がここに来る。

 では、自分はどうなる?

 エメラルドはすっと血の気が引くのを自覚した。酔いから醒めたように冷静になった頭
が自分の意志とは関係なく思考を動かしていく。

 この部屋に初めて来た時、そこには誰もいなかった。
 しかし、誰かいた痕跡はあった。
 あの仔実装が明後日、ここに来る。
 自分は……ここにはいられない。




 ではどこに行く?




『痛い、痛い痛いテチャアァァァ。死んじゃうテチャァァ!』
『先生、やめて下さいテチィィィ! ちゃんとお勉強するからテチィィ!』
『死にたくないテチ、死にたくないテチ、死にたくないテチィィィ!』
『誰か助けてテチ、助けてテチィィ!』




 脳裏に浮かんだのは、調教中に不始末をして殺されていった仲間の姿だった。

 ガタガタと身体が震えている。

「テヂャアァアァァアアァアァ!」

 火が付いたような悲鳴を上げ、エメラルドは跳ね起きた。糞が漏れるのも気にせず、腕
が折れるほどの力でガラスを叩き、壁を叩き、必死に小部屋ら出ようとする。

「ここから出してテチャアアァァァ!」

 だが、小部屋にはどこにも出られる場所はなかった。







 13日目

「美味しいもの探してくるテチ! そんなこともできないのかテチッ! 何もできない能
無しクソドレイニンゲン、さっさと失せろテチ!」





「嫌テチ……。死にたくないテチ……」

 エメラルドは部屋の隅にうずくまったまま、震えながら泣いていた。

 外での騒ぎは意識の外に放り出されている。これから破滅する仔実装のことなど、今の
エメラルドにとってはどうでもいい事だった。

 他実装石の破滅と自分の破滅を天秤にかければ、自分の方が圧倒的に重要である。

「お願いしますテチ。明日にならないでテチ……!」







 14日目

 エメラルドは朝からガラスに貼り付き、これから何が起こるのかを凝視していた。もは
や思考することもできず、ただ箱庭を眺める。両目から流れる色付き涙。
 諦めも覚悟も無く、自分の力では何もできない。その無力感を噛み締めながら、エメラ
ルドはただ怯えるだけだった。





「どうやら、僕のところじゃ、エメラルドが満足する暮らしはムリみたいだ」
「当たり前テチ、この低脳ニンゲン!」

 悪びれる様子もなく言う男に、仔実装は吐き捨てるように告げた。自分を満足させられ
ないニンゲンは、奴隷にも及ばないクズだと考えている。

 男は淡々と続けた。

「だから、僕の知り合いに引き取って貰うことにしたよ。彼女はセレブだからね、エメラ
ルドが満足する生活を与えてくれるよ。きっと」
「なら、さっさとその新しいドレイの元に連れて行くテチ! ワタチはそこで優雅に暮ら
すテチ、もうお前の顔も見たくないテチッ!」
「そう」

 男が笑った。

 ポケットから取り出した実装ネムリスプレーを一吹き。

「テ……!」

 仔実装が意識を失い、倒れる。

 それから、小部屋に監禁されたエメラルドに目を向けた。
 ガラス越に目が合う。

「いや、お疲れさん。今まで面白い反応をありがとう、六代目」
「ニンゲン、助けてテチィィィ! 死にたくないテチィィィ!」

 ガラスをぽふぽふと叩きながら、エメラルドは絶叫した。両目から血の涙を流し、腕が
折れるのも無視してガラスを叩き蹴り、頭突きをする。今までで一番大きな声を出して叫
んでいたが、声は男には届かない。

「じゃあねー」

 男が手を振り、エメラルドの意識は途切れた。





  ・ ・ ・ ・





 15日目

「チャアアァァ!」

 悲鳴を上げて、エメラルドは跳ね起きる。全身を蝕む恐怖に周囲に目を向けるが、幸い
にして自分に危険になるようなものは見あたらなかった。

 自分がいた小部屋よりもやや大きな部屋。
 腐った空気が漂っている。

「ようこそテチ……。エメラルドちゃん……」

 陰鬱な仔実装の声に、エメラルドはそちらに目を向けた。

 禿裸の痩せこけた仔実装が五匹。壁に背を預けて座っている。仔実装たちの目はまるで
死んでいるかのように暗く淀んでいた。その顔に刻まれた、深い絶望と疲労の色。
 部屋の隅に実装フードが置かれているが、食べられた気配はほとんど無い。

「ここは、どこテチ……?」

 エメラルドの問いに、先ほど口を開いた仔実装が手を上げた。
 億劫そうに、力なく。

「テ……チ……?」

 その手の示す先に、エメラルドは目を向ける。

 壁にモニタが設置されていた。大きさは10インチほど。エメラルドの知識にモニタとい
う言葉はないが、映像を映す機械の存在は知っている。

 モニタに映るのは、箱庭の映像。そして、エメラルドのいた小部屋の映像だった。

 小部屋には髪を半分失った裸の仔実装が倒れている。
 仔実装が散らかした箱庭はきれいに片付けてあった。

 それで直感的に全てを理解する。

「テ……」

 エメラルドは呆然とそれを凝視するだけだった。





「ここはどこテチッ! こんな臭くて狭くて汚い所は、高貴で美しいワタチがいる場所じ
ゃ無いテチ! 低脳ニンゲンッ、早くワタチをここから連れ出して、新しいドレイの所に
連れて行くテチッ! 聞こえないテチか!」

 起きた仔実装が小部屋の中で騒いでいる。





「これから、お前の名前はエメラルドだ」
「エメラルド——テチ?」
「これから、よろしくテチ、ご主人様」
「よしよし、エメラルド。これからよろしくな。ほれ、まずは飯だ。食え」
「テェェ……!」

 箱庭で仔実装に山盛りの金平糖を与える男。





「何してるテチィ! この低脳クソドレニンゲンがテチャアァァァ!」

 小部屋で暴れる仔実装。







 16日目

「ほら、エメラルド〜。ステーキだぞー」
「いただきますテチュ〜」

 箱庭の仔実装にステーキを与える男。





「そいつはワタチが食べるものテチャアァァ! クソニンゲン、ワタチにも美味しいご飯
食べさせるテチャァァ!」

 箱庭で喚く仔実装。





 その夜。

「テププ……」

 カレンダーに『×』を書き込んでいる男を見ながら、小部屋の仔実装が嗤っていた。








 17日目

「これが、エメラルドの新しい服だよ」
「ワタチに相応しいきれいなお服テチ〜♪」

 男に貰った実装服を着て、箱庭の仔実装が笑っている。

「ワタチはお姫サマテッチュ〜ン♪」





「テププ〜♪ あいつは大馬鹿者テチュ〜♪」

 小部屋の仔実装が実装フードをかじりながら、箱庭の仔実装をあざ笑っていた。

「今のうちにせいぜい遊んでおくテチュ〜♪」







 18日目

「ワタチはお姫サマテチッ! このクソニンゲン、お姫サマにはともっと高級で美味しい
もの用意するテチャァァ!」
「分かったよ、エメラルド」
「チププ〜、何も知らないって素敵テチね〜♪」

 癇癪を起こして高級フードをひっくり返す箱庭の仔実装と、それを眺めながら余裕たっ
ぷりに嘲っている小部屋の仔実装。







 19日目

「このクソドレイテチャァァァ!」

 すっかり増長した箱庭の仔実装。





「ニンゲン様、どうかここから出して下さいテチィィィ!」

 自分の行く末に気づき、狂乱状態になっている小部屋の仔実装。







 20日目

「ワタチのために美味しいもの持ってくるテチ! そんなこともできないのかテチッ! 
何もできないクソニンゲン、お前は奴隷失格テチ! ワタチの前から消えろテチ!」
「ごめんなさいテチ……。ごめんなさいテチ……。ワタチは死にたくないテチ……」

 箱庭の様子を無視して、うずくまって怯えている小部屋の仔実装。







 21日目

「テ……!」

 箱庭の仔実装がネムリスプレーを吹きかけられ、倒れる。

 それから、小部屋に監禁された仔実装に目を向けた。

「いや、お疲れさん。今まで楽しかったよ、七代目ちゃん」
「ニンゲンサマ、助けて欲しいテチィィィ! 何でもするテチィィィ! ワタチは死にた
くないテチィィィ! 死ぬの嫌テチィィ!」

 ガラスをぽふぽふと叩きながら、仔実装は絶叫していた。両目から血の涙を流し、腕が
折れるのも無視してガラスを叩き、額が割れるのを無視して頭突きをする。今までで一番
大きな声を出して叫んでいたが、声は男には届かない。

「じゃあねー」

 シュ……。

 部屋にネムリスプレーが吹き出し、小部屋の仔実装は意識を失った。

「さてと、新しい仔を迎える準備しないとなー。でもちょっと飽きてきたし、これはそろ
そろ終りにするかなー?」

 男は独り言を口にしながら、仔実装が散らかした箱庭を手際よく片付けていく。

 それから、箱庭の仔実装を小さなトングで摘み上げ、小部屋に移した。それから、意識
を失った小部屋の仔実装をトングで摘み出す。





 カタッ……

 エメラルド含む六匹の仔実装が閉じこめられた部屋。

 その天井に小さな穴が開き、禿裸の仔実装が落とされた。さきほど小部屋にいた仔実装
である。床に落ちつつも、ネムリのせいで意識を失ったまま。

 壁に寄りかかったエメラルドは、何の感情もなくその仔実装を眺めていた。





  ・ ・ ・ ・





 22日目

「死にたくないチャアアァァ!」

 悲鳴を上げて、その仔実装は跳ね起きた。目を剥きながら、周囲に危険なものがないか、
必死に確認している。やがて、そのようなものは無いと理解したらしい。

「ようこそテチ……。エメラルドちゃん……」

 落ちてきた仔実装に濁った目を向け、エメラルドはそう呟いた。





 END



 過去スク

2105.【馬】 実装された都市伝説
2104.【哀】 希望と絶望
2101.【馬】 〈紫〉カツアゲ…?
2099.【観察】〈紫〉幸せな最期とは
2097.【虐】 斬捨御免
2089.【実験】 レインボー実装石
2081.【観察】 Narcotic Addict − 麻薬中毒者 −
2077.【馬・虐】〈紫〉マラカノン砲
2071.【馬鹿】〈紫〉虐待してはいけない…
2066.【虐・実験】 ジッソウタケ
2057.【虐・他】 中途半端な賢さは…
2038.【虐・愛?】 ダイヤモンドは砕けない
2031.【馬鹿】 雪華実装は鍋派?
1994.【虐・観】 時間の狭間に落ちる
1988.【虐】 クリスタルアロー
1983.【馬鹿・薔薇】 リベンジ! 完全版
1980.【馬鹿・薔薇】 リベンジ!
1977.【虐・観】 懲役五年執行猶予無し
1970.【実験・観察】 素朴な疑問
1958.【虐・実験】 虐待&リリース
1954.【獣・蒼・人間】 騎獣実蒼の長い一日
1952.【軽虐】 既知との遭遇
1944.【馬鹿・薔薇】 水晶ハワタシノ魂ダ!
1941.【色々】 実装社交界の危機
1939.【駆除】 ススキ原の実装石駆除

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1 Re: Name:匿名石 2023/12/13-09:00:57 No:00008523[申告]
最終部屋の連中の最後は飽きた時でもあるだろうし多分一日でカレンダーの意味に気がつく特異点が現れた時なんだろうな
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