タイトル:【馬】 〈紫〉カツアゲ…?
ファイル:実力差.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2226 レス数:0
初投稿日時:2010/04/21-21:23:47修正日時:2010/04/21-21:23:47
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 夏も終わりの涼しい夕方。
 双葉町の神社近くにある草の生えた空き地。


「おうおうデスゥ」

 突然かけられた声に、紫電は呼んでいたポケット地図から目を離した。空き地の片隅に
ある切り株に腰掛け、本を読んでいた所である。愛用の鞄が横に置いてあった。

「そこのムラサキのお嬢ちゃん、ちょーっとお腹空かないデスゥ?」

 声をかけてきたのは実装石三匹。

 尖った三角形型の実装石用サングラス(700円税別)をかけた柄の悪そうな三匹だった。
柄も悪いが頭も悪そうである。雰囲気からするに野良実装石だろう。飼いには見えない。
サングラスはどこかで拾ったものか。
 よったよったと無駄に肩を動かしながら、紫電の前に立ちふさがる。切り株に座ってい
る紫電の方が視線は上にあるのだが、その辺りはいいらしい。

「一緒にご飯食わないデス?」
「でも、ワタシたちご飯持ってないデスゥ」
「お前のご飯分けてくれないデスゥ?」

 紫電は何も言わぬまま、手で頬を掻いた。

 街を歩いていて実装石に絡まれることは何度もあったが、こういうのは初めてだった。
野良実装石が実蒼石や実装紅に絡むことは普通無い。だが、薔薇実装は珍しいので、紫色
の変な実装生物と認識して、野良実装石が絡んでくることもある。加えて、紫電には薔薇
実装特有の殺気が全く無いため、容易い獲物と見られてるらしい。

 そう思考を巡らせているうちに、実装石が続けた。

「お嬢ちゃん、意味分からなかったデス?」
「分からないなら分かりやすく行ってやるデスゥ。ご飯出さないと痛い目見るデスゥ。ワ
タシたちにボコられたくなかったら、さっさと何か出すデスゥ!」
「飼いだからって手加減してやるほど、ワタシらは優しくないデス!」

 とりあえず、目の前に経っている三匹に目を戻す。

 精一杯肩を怒らせ、怖い顔(おそらく)をしながら、サングラス越しに睨んでくる。

 無感情にそれを見返しながら、紫電は自分がどうするべきかを考えた。ただの実装石三
匹。格好と態度が変なだけであり、他は普通である。適当に背骨に水晶針を突き刺して仮
死させてしまえばいい。それで終わりだ。実際、用が無い限りそうしている。

「聞こえねぇのかデスゥ!」

 三匹のリーダー格らしき一匹が大声を上げた。
 紫電は改めて三匹に目を戻し、その背後に別の影が佇んでいるのに気づいた。

「お前ら、その辺にしておくデス……。相手にされてないことくらい気付けデス……。見
てるこっちが恥ずかしいデス……」
「うるせぇデスッ! てめぇ、殺されたいのか、デ、ス……ゥ……?」

 威勢の良い声が、瞬く間に萎んでいく。
 振り返った先に佇んでいたのは、体格の良い隻眼のマラ実装石。腹にサラシを巻いて、
キッチンナイフを一本差している。神社公園の群れのボス、カシラだった。

「な、何モンデ……ス……」

 三匹の野良実装石が露骨に狼狽えている。それでも虚勢を張るだけの気力は残っている
ようだった。空元気だろうが。

「カワイソウ……」

 いたたまれなくなって、紫電は顔を背けた。

 粋がっているだけの野良実装石三匹。一方、神社公園という厳しい群れの中でボスまで
上り詰めたカシラ。実装石に詳しくない者が見てもすぐに分かるだろう。その力の差は明
らかだった。見ている方が恥ずかしくなるほどの、圧倒的な格の違い。

 カシラは隻眼で三匹を呆れたように見つめ、、

「ケンカしたいなら、代わりにワシが買ってやるデス」
「じょ、上等デスッ!」
「その言葉、後悔させてやるデスッ!」
「くたばるデッシャァアアァァァ!」

 ベシッ、バシッ、ボコッ。
 ガシガシッ、ボコボコボコ、バキッ、ボキッ。
 ドスドスドス、ゴキゴキッ……

「カワイソウ……」

 あっという間に叩きのめされた三匹。カシラを一回も殴ることすらできず、適当な感じ
に殴られまくった。返り討ちという表現そのままに、痣だらけで気を失っている。

 折れた実装サングラスが、空しく地面に落ちていた。

「紫電サン、紅姫サンが探してたデス」
「アリガトウ……」

 カシラの言葉に、紫電は礼を言った。

「トコロデ……カシラサンハ、コンナ所デ何ヲシテイルノ……?」
「この先の林に生えてる草を取ってくるデス。あれはお薬になるデス。紫電サンも変な輩
には絡まれないように気をつけるデス」
「善処スル……」

 そんな手短な世間話をしてから、カシラは去っていった。







「ドウシヨウ……?」

 意識を失ったままの三匹の野良実装石。

 打撲多数、骨折多数、内臓にダメージ。仮死一歩手前である。手加減したとはいえ、覚
醒獣装石に匹敵する力で殴られまくったのだ。しばらくは目を覚まさないだろう。何も無
かったことにしてこのまま立ち去ってしまえばいい。

 だが、読書を邪魔された恨みがあるので。

「カワイソウ……」

 紫電は右手に水晶のカミソリを作り出した。



 夏も終わりの涼しい黄昏時。
 双葉町の神社近くにある草の生えた空き地。
 その隅っこの切り株の近くに禿裸の実装石が三匹倒れていた。

 だが、それを気にする者はどこにもいない。



  END


 過去スク

2099.【観察】〈紫〉幸せな最期とは
2097.【虐】 斬捨御免
2089.【実験】 レインボー実装石
2081.【観察】 Narcotic Addict − 麻薬中毒者 −
2077.【馬・虐】〈紫〉マラカノン砲
2071.【馬鹿】〈紫〉虐待してはいけない…
2066.【虐・実験】 ジッソウタケ
2057.【虐・他】 中途半端な賢さは…
2038.【虐・愛?】 ダイヤモンドは砕けない
2031.【馬鹿】 雪華実装は鍋派?
1994.【虐・観】 時間の狭間に落ちる
1988.【虐】 クリスタルアロー
1983.【馬鹿・薔薇】 リベンジ! 完全版
1980.【馬鹿・薔薇】 リベンジ!
1977.【虐・観】 懲役五年執行猶予無し
1970.【実験・観察】 素朴な疑問
1958.【虐・実験】 虐待&リリース
1954.【獣・蒼・人間】 騎獣実蒼の長い一日
1952.【軽虐】 既知との遭遇
1944.【馬鹿・薔薇】 水晶ハワタシノ魂ダ!
1941.【色々】 実装社交界の危機
1939.【駆除】 ススキ原の実装石駆除

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