人気の無い早朝。 まだ薄暗い道路を実装石親子が歩いていた。成体一匹と仔実装が三匹。普通の親子だろ う。親実装は手に生ゴミなどの入ったビニール袋を下げている。人気のない朝方にゴミ捨 て場を漁るのは、ある程度賢いのかもしれない。 「ママー。お腹空いたテチ」 「ご飯はお家に帰ってからデス」 そんな会話をしながら、住処のある公園へと向かっていた。 早朝五時の道路には車も走らず散歩する人間もいない。だがそれでも、全く危険が無い と言い切れない。実装石は弱い生き物だ。 「デ?」 親実装はふと視線を動かす。 「ママ、どうしたテチ?」 「何かあったテチ?」 「ニンゲン……デス」 道路を一人の人間が歩いていた。黒い服を着て黒い帽子を被った老紳士。右手にステッ キを持っている。足音もなく親子の横を通り過ぎていた。親子が見たのは、遠ざかる後ろ 姿だけ。普段人間を見かけたらすぐに隠れるのだが、いつすれ違ったのかも、いつ現れた のかも分からなかった。 老紳士は実装石親子に気づいた様子もなく、静かに遠ざかっていく。 「こんな時間に散歩するなんて、変わったニンゲンデス……。ニンゲンにはなるべく関わ らないようにするデス。早くおうちに戻るデス」 仔実装たちに目を戻し、親実装はそう告げた。 「分かったテチ」 仔実装たちの返事を聞いてから、歩みを再開する。 と、その時だった。 「コンペイトウテチッ!」 その単語に全員の動きが止まる。 見ると道にピンク色のトゲトゲした物体が数個転がっていた。金平糖。実装石が最も好 むお菓子である。金平糖を前に自制心を保てる個体は少ない。 「あまあまテチ!」 「さっそくいただくテチィ!」 「コンペイトウ、コンペイトウテチッ!」 「待つデス!」 親実装は駆け出そうとした仔の二匹を素早く押さえつける。今までの経験から無造作に 落ちている金平糖は危険な罠と判断したのだ。 だが、押え損なった一匹が金平糖目掛けて走っていく。 「三女、止まるデス! それは罠デスッ!」 「テェ?」 親実装の声に、三女は振り返ろうとして。 コケた。 前のめりに道路へと倒れる。 親実装にも何が起こったのか、すぐには理解できなかった。 「三女……。右足取れたデス……」 見たものをそのまま言葉にする。 道路に転がった三女の右足。振り返ろうとした瞬間に根元からきれいに取れ、道路を転 がって、膝の部分から二つに分かれた。千切ったわけでも毟ったわけでもない。まるで、 元々別のものだったように、あっさりと取れた。 「いたたテチ……」 三女は右足が取れた事に気づかず、頭をさすっている。 「どうしたテチ、ママ?」 両手を道路について起き上がろうとした瞬間。 ポロッ…… そんな音が聞こえた気がした。 両手が根元から取れ、道路に落ちた両手が肘から二つに分かれる。身体が道路に落ちた 拍子に、残った左足も根元から取れて、膝の部分で二つに分かれた。それだけではない。 首が取れ、胴体も斜めに割れるように分かれる。 一瞬で三女の身体がバラバラになった。 不思議と血は出ていない。 胴体の分かれ目から、きれいに割れた偽石が落ちる。 「デェエェェ……?」 親実装はただ無意味に呻くしかできなかった。雲ひとつつ無い明け方の空と、澄んだ冷 たい空気。時折鳥の鳴き声などが聞こえてくる。いつも見ている早朝の風景の中、三女の 姿は酷く非現実的に見えた。 訳が分からない。 誰も何もしていないというのに、目の前で娘がいきなりバラバラになった。偽石が割れ ているということは、もう生きてはいない。 「三女……」 突然の事態に思考停止しながらも、親実装は三女の方へと足を進めた。 ぐるりと、視界が何度か回転する。 転んだ。 咄嗟にそんな考えが浮かんだが、次に見たものがそれを否定していた。 ビニール袋を持った頭のない成体実装が数歩力なく歩き、足をもつれさせてうつ伏せに 倒れる。倒れた拍子に手足と胴体がバラバラになった。ぶつ切りにしたように、いくつも の細かい肉片へと変化する。なぜか、傷口からは血も出ていない。 「ワタシの身体……デス……」 そう呻いたが、声は出ない。 頭だけとなった親実装は、バラバラになった自分の身体を、無力に眺めることしかでき なかった。動くことも声を出すこともできない。不思議と出血もなく、痛みすらない。 「ママァァァァ……!」 泣きながら親実装の生首へと駆け寄る長女。 その身体が縦に割れる。脳天から股間まで、一直線に。右半身は前に倒れ、左半身は後 ろへと倒れた。真っ二つに割れた偽石が道路に落ちる。 「テ……テ……」 最後に一匹だけ残った次女が、数歩後退った。現実を拒むように弱々しく首を振る。 目の前でバラバラになってしまった親と姉妹を見て、恐慌状態に陥っていた。顔を真っ 青にして、両目から涙を流している。 「テチャアァァァァァ——」 悲鳴を上げてその場から逃げ出すものの。 五歩も進まないところで、足から脳天まで数十枚の輪切りとなって道路に散らばった。 ハムのように薄切りになった身体。そこに割れた偽石が見える。 自分がどうなったのかも分からず、次女は死んでいた。 「何で、デス……」 ただ一匹生き残った親実装は、それだけを呟くことしかできなかった。あっという間に 死んでしまった仔実装たち。首だけとなった自分も、ほどなく死ぬだろう。 「ワタシたちが何をしたと言うんデス……?」 遠ざかっていく老紳士の背に、親実装は声にならない声で問いかけた。 END 過去スク 2089.【実験】 レインボー実装石 三角プリズム実験.txt 2081.【観察】 Narcotic Addict − 麻薬中毒者 − 疑似実装麻薬投与実験.txt 2077.【馬・虐】〈紫〉マラカノン砲 マラマラ団襲撃.txt 2071.【馬鹿】〈紫〉虐待してはいけない… 友人の仔実装石姉妹.txt 2066.【虐・実験】 ジッソウタケ 野菜泥棒石後日談.txt 2057.【虐・他】 中途半端な賢さは… 野菜泥棒実装石.txt 2038.【虐・愛?】 ダイヤモンドは砕けない 真性愛護派(誤字修正).txt 2031.【馬鹿】 雪華実装は鍋派? 実装石料理.txt 1994.【虐・観】 時間の狭間に落ちる 不変不動の世界.txt 1988.【虐】 クリスタルアロー 実装石射撃練習.txt 1983.【馬鹿・薔薇】 リベンジ! 完全版 突発的発想その2改.txt 1980.【馬鹿・薔薇】 リベンジ! 突発的発想その2.txt 1977.【虐・観】 懲役五年執行猶予無し 神社公園元幹部実装石.txt 1970.【実験・観察】 素朴な疑問 神社公園実装石実験.txt 1958.【虐・実験】 虐待&リリース 託児実装石虐待.txt 1954.【獣・蒼・人間】 騎獣実蒼の長い一日 金曜九時半作戦決行.txt 1952.【軽虐】 既知との遭遇 双葉山実装探索記.txt 1944.【馬鹿・薔薇】 水晶ハワタシノ魂ダ! 突発的発想.txt 1941.【色々】 実装社交界の危機 神社裏色々実装物語.txt 1939.【駆除】 ススキ原の実装石駆除 実装虐待用薬品処分.txt
