バタバタバタバタバタ・・・ 頭上で轟く轟音。遥か下にある地面。そこで蠢き、衝突し合う無数の親指実装石たち。 せんゆー1(いち)は、眼下に広がる戦場を眺めながら、自らの高ぶる感情と恐怖に、説明できない興奮を覚えていた。 「こっちのほうがたくさん敵を倒してるレチュー。」 ここは放棄されたとある工事現場。 北には丘の上に貯水池があり、東は草も無い寂れた空き地、南にはいくつもの土の山、西には投棄されたショベルカーが置いてある。 せんゆー1の軍は、戦場の南、土の山たちの後方に本拠地を構えている。 敵の本拠地の所在は不明であるが、敵の増援や出現位置を鑑みるに、北西のショベルカーと貯水池の中間地点にある丘のふもとにあると推測される。 現在、戦線は膠着状態であり、両軍がショベルカー付近で小競り合いを繰り返している。 せんゆー1、以下20匹のおやゆびα(アルファ)部隊は、この状況を打破する為、ヘリコプターに搭乗していた。 敵地深部への強制着陸による陽動を行い、敵戦線を崩壊させた後、即座撤退するのである。 せんゆー1は、その名の通りこの軍に最初に就任した最古参であり、周囲からの信望も厚い。 数々の戦場を生き残ってきた彼女にとって、今回の作戦はそう厳しいものではないように思われた。 「テ、テチャー!高い、高いテチュー!落ちたら死んじゃうテチュー!」 後ろで新参のせんゆー385が喚いている。無理も無い。 最古参のせんゆー1でさえ、ヘリコプターに乗るのは初めてなのだ。 何もヘリコプターの導入がこれまで無かったというわけではないが、どういうわけかせんゆー1が搭乗させられることは無かった。(一々選別するのは面倒だから司令官は適当にその場から乗員を見繕っているのだ!) ここにいる他のせんゆー達もほとんど経験が無い。 そのため、ほぼ全員が浮き足立っていた。 「落ち着くテチュー!地面に着いたら少し敵を倒してヘリコプターに乗って帰ってくるだけでチュ!地面には直ぐに戻れるテチュ!早くキチ(基地)に帰ってアマアマ汁を飲むテチュ!」 せんゆー1の檄が飛ぶ。この一声で完璧に静かになることはなかったが、それでも幾分か落ち着いた。 前線を飛び越え、敵地の奥へたどり着いた。 ヘリコプターが徐々に降下してゆく。 「気合入れるテチュー!敵をたくさん倒して生きて帰ってくるテチュー!」 「「「テッチャー!」」」 せんゆー達が気合を入れる。 その時、勇みすぎたせんゆー524が足を滑らせ、ヘリコプターから転落してしまった。 「テチャー!死んじゃうチュー!」 そう叫びながら、せんゆー524は地面に激突し、その体は四散した。 しかし、もはやそれを見て足を竦ませる彼らではなかった。 そう、彼らは戦士(もとい馬鹿で気付いていないだけ)なのだ! 着陸。せんゆー達が一斉に展開する。 それぞれが愛用の剣(爪楊枝とか針)を手に持ち、一箇所に固まる。 ヘリコプターの爆音のおかげで、敵の本拠地と前線から予想以上に敵が迫ってきていた。 迫り来る敵兵。その数は優に200匹を超える。 まともに戦闘したらあっという間にやられてしまうだろうが、陽動は大成功だ。撤退の合図の笛はまだだろうか? 今か今かと、せんゆー達の足腰に力が入る。 しかし、ついに突出していた敵の一団との戦闘に入ってしまった。 敵の数は30、劣勢であるが守りに徹すれば凌げる数である。 ただし、常に敵の数は増えるのだ。長時間は防げない。 一匹、一匹と倒れ行くせんゆー達。 「もうすぐテチュ!もうすぐ帰れるテチュ!ふんばるテチャー!」 せんゆー1が励ますが、それで優勢に転じるわけでもない。不可能だ。 その時、 -------------------------ピーッ!・・・・・---------------------- 笛が鳴った。合図である。 猶予は5秒、5秒でヘリコプターは発ってしまう。 「ヘリコプターに戻るテチュー!」 一斉に反転、駆け出すα部隊。 ヘリコプターに急いで乗り込む。5秒では敵に乗り込まれることも無い。 急上昇するヘリコプター。しかし、3匹が残され、大量の敵に串刺しにされ殺された。 せんゆー1は・・・ヘリコプターに乗っていた。 脱出成功である。 部隊の半分以上が死んだが、敵の前線に穴が開き、味方の本隊がその隙を突いて侵攻、作戦は成功した。 せんゆー1は、この戦闘が始まってから仲良くなり、死んでいったせんゆー135、せんゆー564、せんゆー845達に思いを馳せていた。 「あいつらもがんばったテチュー・・・。」 切ない気持ちになりながらも、作戦の成功に興奮した仲間達は、口々にアマアマ汁への期待を話していた。 本拠地上空に到着し、徐々に高度を下げてゆく。 ついに帰ってきたのだ。親指たちは安堵した。 しかし---------- ヘリコプターが急降下、混乱する親指たち、投げ出される親指たち。 せんゆー1は何とかヘリコプターにしがみついていた。 「「「ッテッチュァァアアアアアアー!」」」 グチャグチャと生々しい音を立てながら染みになってゆく。 ついにヘリコプターは地面に激突。悲しいかな、必死につかまっていたせんゆー1も、その親指元来の弱弱しさゆえ、衝撃で死んでしまった。 ------------------------------------------------------------------------------------------ 「あ、やっべー・・・、操縦ミスったわ。」 俺は高橋、今日は友人のたかゆきと実装ウォーズをしている。 今、俺の目の前には操縦にミスって墜落したヘリコプターのラジコンが転がっている。 「結構生き残ってる奴いたなー、一応お情けで脱出がどうのこうの言ってただけなんだけど。」 ヘリコプターのそばには地面の染みになった奴らと、最後までしがみついて衝撃で臓器の殆どが破裂したり、脳みそを垂れ流したりしてる親指たちがいる。 残念ながら壊滅。 「まあ、不慮の事故ってことで・・・。作戦成功させてくれたしな、どうもどうもありがとう。ご愁傷様です、チンチン、っと。」 実装ウォーズではラジコンの使用も許可される場合がある。 今回は、輸送目的のみに限りラジコンの使用が許された。 俺はヘリコプターのラジコンの下部にプラ板で親指たちを乗せる籠を作り利用した。 車のラジコンの方が一度に大量の輸送を可能とするが、「BlackHawkDown」を好きな俺はあえてヘリを使ってみたのだった。 続編ではありませんが実装ウォーズ系エピソードです。
