片目に映るご主人様 最終話 もう実装親子はベランダのダンボールの中にはいない。 暖房のきいた居間で、放し飼いにされている。 そんな理想的な環境でも、腹黒の知能が回復することは無かった。今日も灰色がかった瞳で「ッェ テ ッテ エ」と鳴きながら、糞を垂れ流すだけである。 そんな状態の仔でも、片目の親実装にとってはかけがえの無い最後の仔。 親実装は、エサを咀嚼して食べやすくしてから口に流し込んでやり、吐き気をこらえながら総排出腔を舐めて綺麗にし、いつも歌を聞かせてやっている。 おれはとしあき。俺自身が、愛情深く賢い片目親実装の事を大事に思い始めている事に驚きを隠せない。 としあきには利美という小悪魔的魅力を持つ彼女がいたが、 利美といる時間よりも、母としての愛をもった片目といる時間の方が、現代社会に疲れたとしあきにとっては満ち足りた時間だった。 この立派な親に対し、今更ながら何かしてやりたい。糞仔蟲共が死んだのは自業自得だが、結果的に片目に悲しい思いをさせてしまったせめてもの償いをしたい。 俺はリンガルを起動した。 「おい、片目。何か、して欲しいことはあるか」 「デス〜ン。ご主人様ありがとうデス〜 でもワタシタチは大丈夫デス、ゴシュジンサマは最近オシゴトで疲れてるデスから、ゆっくり休んで下さいデス」 腹黒をナデナデしながら答える片目。 (優しいゴシュジンサマと、ちょっとおバカになっちゃたけど可愛い仔と幸せに暮らせて、ワタシは幸せ者デスゥ〜 早くゴシュジンサマに恩返しが出来るよう、ワタシ頑張るデスゥ!) はじめはとしあきの変貌ぶりに戸惑っていた片目だったが、今まで仔が殺されたのは仔が失礼をしたから。ご主人様は本当は優しい人だという結論に至った。 そうなると賢い実装石にとって、厳格だが優しい人間は、ヘタに甘やかすだけの人間よりも、愛し尊敬すべき絶対の存在となる。 そしてその態度はとしあきにも伝わり、理想的なパートナーシップが成立していた。 片目は、としあきを尊敬と愛情が入り混じった、潤んだ瞳で見つめていた。 「ェ ッテ ・・エ」 意味もなく鳴く腹黒。 としあきはある事を閃いた。 実装石は最弱生物ではあるが、再生力は強い生き物だ。うまくすれば、失われた片目の目を治せるかもしれない。 としあきなりの償いだった。 凄まじい努力の末、としあきはその方法を発見する。しかし片目は今のままがいいと拒んだ。偽石を取り出し栄養剤に浸し、古傷を無菌のメスで切り取って再生させる。 確かにリスクはあるが、絶対に失敗しない、お前のためにやらせてくれ・・・再三にわたるとしあきの説得に折れる形で、片目は治療を了承した。 としあきは、一世一代の覚悟で、自己流の手術を開始した。 片目の偽石が、栄養剤の詰まったビンに沈んでいる。まるでエメラルドのような輝きだ。 手術を終え、疲労困憊のとしあき医師と患者の片目は、その輝きに見入り、二人で微笑んだ。 手術から二週間が経った。片目の目は再生を果たし、片目は本来の姿を取り戻していた。 「そろそろお前にもちゃんとした名前をつけてやらないとな。」 「そうでデスゥ。もう片目じゃないんデス〜♪」上機嫌な様子で、としあきの股間をまさぐる元片目。 「!???! おいっ、何の・・・ウウゥ!!!!」 愛・・・していた。だから、拒めなかった。掴まれた時点で、半分漏れていた。 腹黒は「・・・ェェェ」と鳴きながら、軟便を漏らしていた。 ギッシギッシギッシギッシ「あああ!!出すよ!出すよあああ!!イギイイイイイ!!」「デエエエスウウウウ〜〜!!!」 その夜も、としあきと片目は愛し合った。自らの求めるものを補い合うかのように、二人はとろけ合った。 としあきが5度目の頂点に雄たけびをあげる様を、腹黒はエッェエェと言って見つめていた。 その日、としあきが帰宅すると、いつもと違う光景が広がっていた。 5匹の仔実装と3匹の親指実装、そしてその母、元片目が一つ指を立ててとしあきを出迎えた。 「おかえりなさいデス、ゴシュジンサマ」「パパテチー♪ハジメマシテテチー」「パパおっきくってカッコイイテチュ〜♪」 仔たちがテチュテチュテチテチと驚喜している。人間に愛されるのが最終目標である実装にとって、「人間である父」は絶対至高の存在なのである。 「やあおちびちゃんたち、おれがパパだよ」としあきは、今だかつて味わったことのない幸福感に震えていた。 「ごめんな、こうなるとは思わなかったから、おまえの分しかエサをおいていかなかったな」 元片目を抱き上げおかえりのキス。ネッチョリ 「デププ、大丈夫デスゥ。クソ蛆どもと、キチ○イ仔をみんなで食べたデスゥ〜♪」 「は・・・?」 「そんなことよりさっさと硬いマラをぶち込んでほしいデスゥ♪マラ仔は軟らかすぎてイケナイから解体してやったデスゥ♪」 「はあ・・・!?」 「チプププ!マラの死に様は最高だったテチュ!パパにも教えてあげるテチュ〜♪ あのマジャアアアアア!!!!!!!」ギチャニュリュリイイ!!!! 親指3匹は一瞬のうちにとしあきに握りつぶされた。 「どういう・・・ことだよ!!!」 「デププ、ゴメンデスゥ、やっぱり出来損ないの親指は目障りだったデスゥ?でも考えてみれば確かに、ゴシュジンサマがいるから非常食なんて生かしておく必要ないデス」 「ギョアアアアオアアユギbkjナジョアジオアア!!!!!!!!!アアアアアアアアア!!!!ああああ!!!!」 としあきは奇声を上げならが仔実装を食い千切っていく。 「モツぅうう、モツウウウウ!!!ああああああ!!!!」グッチャクッチャプビビィ!!食事と同時に脱糞しているとしあき。 「テチャーーー!!パパ凄い食べっぷりテチー!」「チププ!オネエチャはパパと謁見する権利が無いから、パパに食べられてタマタマに帰還テチュア〜♪」 「チャアアア!!パパのタマタマ想像したら頭真っ白になっちゃうテチャアアアア♪♪」ふざけた事をほざく仔蟲達。緑の血で染まったとしあきが元片目に覆いかぶさる。 「ゴシュジンサマ仔を食べて一層ギンギンになっちゃったデスゥ〜♪」パクリ!チュパチュパチュパ「ンヲアアアアアアアアアア!!!!!」 ツボは既に押さえられている。悶絶するとしあき。白い飛沫を撒き散らしながらも片目を殴る!バッキイ!!「デギャッ!?」ドピュウ!「デスゥン♪」グッシャ!!!「デギャアアス!」 ドピュルルゥ!「デフェエェン♪」ドグッシャ!!「デェェェン!DVデスゥ!」ドガ!!グッシャ!!!! 憎い!!!!憎い!!!!!!しね!!!しねええ!!!!!!!俺の心を裏切った片目ええええ!!!実装を信じたおれえええええ!!!!! 片目を醜い本能の塊に戻してしまった俺ええええ!!!本能の塊のクソ蟲ぃいいい!!!!消えてなくなれえええええ!!!!!!!!! ビンに収められた偽石を取り出す!青ざめる元片目。本能が分かっている。 爪で偽石プチプチと削り取るとしあき。「デッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」 「非ャッッッッ破アアアアアアアアアア!!!!何が偽石だよ!!!カントリー○アムより脆いぞ!!!!クソムシの魂は消えろよおおおおお!!!!」 「デッギャア!!!」グッシャラアアア!!偽石の破損が影響し、片目の半身が吹き飛んだ。 次の瞬間、としあきは跪き、子供のように泣き出した。片目・・・体の破損に伴い、再び片目となった片目。そしてその優しい眼差しに気づいたのだ。 「片目ええええ!俺は、俺は・・・!」「・・・泣かないデ、ゴシュジンサマ。ワタシは・・・ワタシタチは、幸せだったんデス・・・」 「どうしても、許せなかったんだ・・・!俺が、無理に、したことが、原因だったのにぃ、」えづいて上手く言葉にならない。 「・・・ゴシュジンサマ、大好きデス・・・お仕事、がんばって・・・立派な・・・」 パキン!! ・・・・・。静寂が辺りを包む。 「チププ、ママはおしゃぶりがヘタだから グッシャ!!! 「テエエエン、パパァ、みんな殺し グッシャ!!!! ・・・・再び、静寂が辺りを支配した。ここに新たな虐待派が誕生したのだった。 5年後・・・国連治安維持部隊として活躍するとしあき。片目と共に暮らしていた頃は、今考えれば厳しい訓練の毎日でノイローゼだった。 その試練を乗り越え、人々の為に危険な任務を遂行する双葉としあき隊員を、人々は敬意を込めて「秘石戦記ストーンバスターとしあき」と呼んだ。 地雷撤去の任務を終えると、宿舎のロッカーに多頭飼いしている、偽石摘出済み仔実装の目の前で、散々偽石をもてあそんだ挙句、食する。 仔実装の恐怖と絶望、そして死。それを味わい、生を堪能し、明日の活力とする。 「片目よ、俺はお前が教えてくれた愛で、これからも人々を守ってゆくよ。 そして実装共、貴様らは永遠にヒャッハーしてやるぜ! 俺の戦いは、始まったばかりなんだからな!」 完 つきあっていただきありがとうございました。多数のご指摘、ご感想ありがとうございます。 虐待紳士に幸あれ! 甲斐甲斐しく世話をしている。 今日は仕事が速めに終わった。たまにはこういう日も必要だ。 おれはとしあき。気まぐれで実装石の親子を飼っているのだが、ここ4、5日は忙しくて奴らをベランダに放置したままだった。 糞蟲に対する愛情などカケラも持ち合わせちゃいないので死んでいようが一向に構わないんだが、悪臭を放つダンボールの中を覗いて見る。 ・・・うげえ。汚い。 ダンボールの四隅に糞が山盛りになり、染み出た糞液がダンボールに染み込んでいる。 「デスゥ〜〜!ご主人様!やっぱり来てくれたデス〜!」糞まみれの親実装が糞まみれの口をクッチャクッチャテッチャネッチャ言わせながら喜んでいる。不愉快な事だ。 何故か片腕だが、どうせ共食いでも食われたんだろう。 ビッチャニュリュウウ 「ヂャアアアア!!クソニンゲン今頃来やがったテチャアア!!ワタチを食糞に追い込んだ罪は重いテチャアア!!」「・・・・・テチィ」 糞山に突っ込んでいた顔を引き抜き、軟便を吐き出しながら吼える共食い。すっかり糞蟲化しているが元気だ。 反面、倒れている腹黒は弱りきって今にも死にそうだ。 「ご主人様、もう貰った袋はいっぱいで糞は入らないデスゥ。ワタシが糞を捨ててくるから、ダンボールから出して欲しいデスゥ・・・」 ・・・俺に糞を片付けろ、と言わないのか。つくづくこいつは糞蟲じゃないな。どうでもいいんだけど。 とは言え、このままじゃ近所迷惑と言うものだ。糞蟲どもを新しいダンボールに入れ替え、公園まで運ぶ。 「デ!?ご主人様、ここは公園デス!?許してほしいデスゥ!捨てないで下さいデスゥ〜!!仔達が殺されてしまうデスゥ〜!最後の仔達なんデスゥ〜!」 「狭いんだから暴れるなテチャア!糞ママはさっさともう片方のオテテ食わせるテチャア!!」「・・・・チィ」 噴水の近くに設置された水道のホースで、雑に洗ってやる。触るのも嫌だしな。 ジャバババ〜 糞蟲親子は目を細めて気持ちよさそうにしている。親は思い出したように、仔蟲どもを裸にし、服と体を洗ってやりはじめた。 「ご主人様、ありがとうございますデスゥ〜」「テッチュウ〜〜〜ン オフロテチュ〜〜ン♪」 「テチャテチャア〜〜〜ア・・・」どうやら腹黒はストレスで精神を病んでいたようだ。リンガルには意味の持った言語が表示されない。 ほんの気まぐれで。俺は親蟲に聞いてみた。「おい親糞蟲。お前、腕を食われたのか」 「ワタシが食べさせたデスゥ。でも三女ちゃんはどうしても食べてくれなかったデス」 「ェェテェテェ」焦点の定まらない瞳で親蟲に髪を洗ってもらっている腹黒。こいつは思ったよりマトモだったのか。知らなかったぜ。 それよりも・・・「オフロおわったらもう片方も食わせるテチュゥ〜ン♪」 「ふうん。じゃあお前は俺との約束は果たせなかったという訳だな」「デデェ!???」「こいつはどう見ても糞蟲だよな。お前は躾に失敗したわけだ」 「デエエ!?」「フザケンナテチ!ワタチは三女を食わないでやったんテチ!糞蟲じゃないテチカスニンゲン!」「失礼はやめるデスァ!!」 ニョム!「テチャアア!」 親蟲の渾身のウレタンパンチで殴り飛ばされる共食い。こうやってこいつから親蟲が三女を守っていたのはすぐに察知できた。 今考えてみれば・・・俺は虐待とか、躾のつもりで共食いを殺すことにしたわけじゃなかった。 親蟲の無償の愛を裏切る糞蟲が許せなかったんだと思う。 だから、ちょっと頑張り過ぎた。 「おい親糞糞クソ蟲、今からこいつを始末する。わかったな」 「デエエエエ!!!待って、待ってデスウウ!次女ちゃんは素直なだけなんデスゥ!オシオキは躾ができなかったワタシにしてくださいデスゥ!」 「話しにならんな。今更なんだよ」「クッソニンゲン!ワタチを殺すとか頭おかしいんテギョオオオオオアアアアア!!!!」 片手で口の辺りを掴んで持ち上げる。イゴイゴイゴイゴもがくが全く完全に無意味。口に親指を突っ込む。「ヂヤイイ!!」親指に噛み付く共食い。「次女ちゃん!何てことするデスゥ!」 ・・・ほう?俺を、噛むなと、言ったのか。親蟲は。「別にかまわないんだぜ?」実装石は脆弱極まりない。 同属のウレタンボディならともかく、人間の高度に計算されて設計されたとしか思えない、しなやかかつ強靭な皮膚、筋肉には傷一つ付けることはできない。 実装石は長い時間を費やせば木の実を食べることも一応可能ではあるが、それはビスケット程度の強度しかない歯の、破壊と再生を繰り返すのが前提である。 つまるところ、噛まれたとしても全くもって痛くないのだが 「次女ちゃん!謝るデス!早くご主人様に謝るデッシャアアア!!」裸のまま、耳と総排出腔から赤と緑の液体を噴出させて激昂する親蟲。 「何でテチイイ!!それより助けてテチ!ママアー!」ふざけた事を言う共食い。ビッチブチミリミリベリッと前後の髪を皮膚ごと毟り取る。 「テチャアアアア!髪イイイイ!!ワタチの髪イイイイ!!」「次女ちゃんん!!」パニックになる親蟲。 個体数の減少により、最近の公園では珍しくなった実装石の悲鳴。それに釣られて数匹の野良実装がデスデスと集まって来たが、即座に踏み抜き肉塊に昇華してやる。 「ジャアアアアアア!!!!チヒイイイイ!!!」親より大柄な野良実装達が瞬殺されたのを目の当たりにし、人間が遥か高みの存在であることを思い出した共食い。血涙とともにブピピブポポと下痢便を噴射している。 糞の質が、ここ数日の栄養状態の劣悪さを表しているな。 「糞をするなよ汚物!!」汚れるのにも構わず、総排出腔周辺を肉ごと毟り取る。「ジャアアッッピャアアアアアーーー!!!」モツと見まがうほどに舌を突き出し、意味不明にモゾモゾ体をよじる共食い。 「親を食ってんじゃねえよ下痢糞蟲!!」むき出しになった糞袋をズルリと引き出し、ミツクチの奥深くに突っ込む。接合部をライターで溶接する。 変わり果てた共食いを親に返してやると「次女ちゃあああん!ご主人さまあーー!」とへたり込み泣き叫ぶ親蟲。 無言で親子の様子を見下ろしていると、ふと共食いの反応が異常なのに気づいた。いやまあ、この状態で異常とかなんとか判断するのはおかしな話だが。 血まみれの手で作業したため、共食いの両目が赤く染まり、膨れ上がった糞袋が口の中に何かをとめどなく産み落としている。「ウェウウェレー・・・レヒャア」「ウェウウェレー・・・レヒャア」 「フェフフェオオエウエオエオレオレオオオエ!!!!!!!」これ以上苦しむことができないといった様子で、産み落とした何かを飲み込んでいく共食い。たまにテチュ〜ンと言ってる気するが。 「チェエ テェ エ」腹黒は焦点が定まらない瞳で、宙を掴もうとモソモソ動いているだけ。 干からびた皮と、大量の溶けた蛆の死体と化して、共食いは死んだ。 「デエエエェエエン! デエエエェェェン!」仔の死を悲しむ親蟲。 「さて、帰るぞ」行きと同じダンボールに親蟲と腹黒を入れる。糞がなくなったからだろうか。抱えたダンボールは少し軽くなっていた気がした。 「次女が、ご迷惑を、おかけしましたデスゥぅ・・・」謝罪する親蟲。謝罪・・・? 無事な方の腕には、共食いの実装服を抱えている。 俺はそれっきり、親蟲を見ないようにして歩き出した。 夕暮れが景色を赤く染める。としあきは夕日を浴びながら歩いていく。 ダンボールの中から、親蟲は残された片目で、としあきを見上げていた。 腹黒は、ェエテ ッテ と鳴いていた。
