タイトル:【虐哀】 実装石に救いナシ?
ファイル:ナイショの精錬方法(後編).txt
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初投稿日時:2010/03/16-01:59:30修正日時:2010/03/17-03:13:44
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  ナイショの精錬方法(前編)の続きデス

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 『デッスゥゥッ!!(開いたデスゥッ!!)』
 そう叫んだ実装石が他の個体の方を向いた瞬間、

 『デギャッッ?!』
 『デププ』 『チププ』
 台の下に隠れていたらしい家族がそいつを突き飛ばして脱兎のごとく(実装基準)で飛び出した。そうそう、
ああいうヤツたまにいるんだよな。

 「あれー?何で扉開いてるんだぁ?」
 『デスーッ!』
 『デス、デシャァァァーー!!』 
 棒読み丸出しの大声をあげて僕が近付くと倒れたヤツを2匹の成体が助け起こしながら扉の外へ出たところ
だった。残りの1匹は仔蟲を連れて先行している。別に血縁でも無かろうに、こりゃ今回は相当賢い大当たり
を引いたかも知れない。

 『デププ、デッス、デッス!』 『チププ、テッチ、テッチ!』
 例の賢い連中を出し抜いて脱走した家族がもうすでに助かったと思っているのか笑いながら納屋の出口に
向かって走って(実装基準)いく。当然気付いて無いんだろうなぁ。“誰が”ゲートを開けたのか。


 “ビシッッ!”『デッギャァァァーーーッ!?』
 先頭を走っていた親蟲が顔面に強烈な一撃をくらってひっくり返った。、それに驚いて立ち止まった仔蟲達の
前に立ち塞がったのは…
 
 『ダワ、ダワダワ?ダワーダワッ!(アラ、もうお帰りになるの?ダワ。でもホストに挨拶も無しにパーティを
中座するのは失礼にあたるのダワ!)』
 手にした青竹を鞭のようにしならせながら脱走家族を見下ろす給食のオバチャン、もとい白尽くめのロッソだった。
本来はわざと逃がした賢い連中により恐怖と絶望感を与えるために外で待機してもらっているのだが、たまに
現れるこういう小ズルイ連中を始末してついでに本命をビビらせるのも天敵であるロッソの大事な仕事だ。尤も
この白尽くめの馬鹿デカイやつを即座に実装紅と認識したヤツは今のところ皆無で実装石にとっては新たな
“シロイアクマ”の登場でしかないのだが。

 「ロッソさーん、もうこっちは充分だからソイツ等は例の方法で。」
 『ダワッ。』
 仔蟲の数が少なければあの仔蟲たちも材料にするが今回は予想していたよりも大漁だったのでその必要はない
だろう(それにメンドクサイし)。気の毒だがあの脱走一家には最高の“オモテナシ”を受けてもらうことになる。

 『デッ…デデデ…』 
 無言で自分達を見下ろすロッソに土下座したり仔を差し出したり、あげくにはパンツを脱いで股をおっ開ろげたり
と醜態の限りを尽くした脱走蟲だったがロッソは眉ひとつ動かさない。やがて何のリアクションもしないロッソに
脱走蟲が逆切れしかけた瞬間、

 『デギャッッ?!』
 ロッソの帽子が僅かに膨らんだ直後、その隙間から飛び出したツインテールが素早く脱走蟲を禿裸にひん剥き
瞬時に帽子の中に納まった。恐らく実装石の視力では何が起こったのか隠れて観察している連中も含めて認識
できた者はいないだろう。

 『デッ?デッ、デッ・デッスーーン、デギャァァァァァ−−−ッッ!!!』
 どのようにされたかは分からずとも禿裸にされたことでとりあえず許してもらえたと勝手な勘違いをした脱走蟲が
とりあえずロッソに媚びようと右手を動かした瞬間今度は一瞬で手足を吹き飛ばされた。当然今のも全く見えては
いないだろう。

 『テチャアアァァァァァーーーー!!』
 目の前の親の惨劇に自らの運命を悟った仔蟲達が親を見捨てて逃げ出した。考えがあってかどうかはともかく
バラバラに逃げたのは賢明と言っていいだろう。相手がロッソ(実装紅)じゃなかったらな。

 『テッチャァァァァァァーーーーーーッッ!!』
 『デゲヘェェェェ・・・』 
 ややドップラー効果を引き起こし気味の仔蟲の悲鳴が聞こえた直後ダルマ親蟲の前に血ダルマの仔蟲が落ちてきた。
これも僕とロッソ以外には何が起こったのか見当もつかないだろう。否、先程から積み上げられたダンボールの
残骸に隠れて震えている賢い連中には恐ろしい妖術か何かに見えているかも知れない。
 タネをあかせば簡単なことで今度はツインテールを無数の細い針状にして逃げ出した仔蟲を串刺にし、そのまま
高速でグルグル振り回しながら床に擦りつけてモミジオロシにしただけなのだが仔蟲に瀕死の重傷を負わせるには
充分すぎる技だろう。普段は不精してテレビのリモコン取ったり、僕を小突いたりするときにしか使わないロッソの
ツインテールだが本当に器用に動く器官であり恐ろしい武器でもあると感じる瞬間である。

 『ダワ、ダワダワ(さて、中のオモテナシには満足頂けなかったみたいですからワタシが直接オモテナシ差し上げ
ますナノダワ)』 
 そう言いながらロッソが青竹を一振りするとその先がササラのように細かく開いた。

 『デギャッ!ヒギャッッ!!』
 『テジャッ!チェジィッ!!』
 脱走家族がササラ鞭で打ち据えられる度にどこにそれだけの体力が残っていたのかと聞きたくなるほどの大きな
悲鳴が聞こえてくる。青竹の切れ口というのは案外鋭くしかもささくれだっている。僕もやったことがあるがアレで
怪我をすると無茶苦茶痛い。そいつで殴られながら切りつけられるのだからその苦痛は尋常ではないだろう。しかも
その太さは万年筆くらいでしかも振るっているのはいくらデカイとは言え人間よりは非力な実装紅だ。幾ら痛め
つけられても致命傷にはならない。まさに江戸時代の拷問さながらの生き地獄であろう。


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 『デジェェェェェ・・・』
 もはやうめき声しかあげない緑赤の肉塊に塩をたっぷりとかけるとそのうめき声も徐々に小さくなっていった。
後は文字どうり塩に命を吸い取られて死んで逝くだけだ。

 『ダワ、ダワダワ?(さて、アナタ達はどんな“オモテナシ”がお好み?ナノダワ)』
 ロッソがそう呟きながらダンボールの山に近づくと・・・

 『デズオウォワァァァァーーーー!!』
 何処に隠し持っていたのか、古釘やガラス片を手にした実装石たちが刺し違える覚悟でロッソに突進し見事本懐を
とげた・・・かに見えたが、

 『デッ?デヒャァァァーーッ?!』
 『ダワダワ(残念でしたナノダワ)』
 冷たく言い放したロッソに軽くいなされてしまう。別に不思議なことでも何でもない。ロッソが素っ裸でいたなら
イザ知らず、デフォの実装服の上に木綿とはいえエプロンまでつけているのだから非力な実装石の力では傷すら
負わせることはできない。ましてその身長差故ヤツ等が狙えたのは分厚いゴム靴を履いた脚だったのだからそれこそ
痛くも痒くもないだろう。

 「はい、お疲れサン」
 『『『『デゲッ!?』』』』
 いつの間にか僕に後ろをとられていた実装石達が一瞬驚いた表情を見せ、次の瞬間命懸けで護ろうとした仔達が
僕に捕まっているのを見て絶望にまみれた血涙を流す。

 「まぁ〜何だ、努力ってのは報われないコトの方が多いんだよねw」
 そう言って親実装たちの脚をへし折ると再び柵の中に放り込んだ。

 「ロッソ、悪いんだけど僕はまだ下準備残ってるから・・・」
 『ダワ、ダワダワダワ(この数なら仕方ないのダワ。彼女達はもうしばらくワタシが相手しておくのダワ)。』
 明らかに乗り気ではないロッソに“当り”仔の下準備を頼むと“C”蟲の糞抜き作業に戻った。


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 “もうオシマイデス。公園でこのアクマに捕まったときにせめて仔だけでもヒトオモイに殺してあげたほうが
どんなに幸せだったか・・・”脚を折られて動けなくされながらワタシは只ヒタスラ泣くことしかできなかったデス。
いつもイッショにゴハンを探しに行っていたゴキンジョサンや今日初めて会ったオナカマは同じように泣きながら動かない
体に必死に鞭打ってなんとか最後の仔だけは助けようと頑張っていたデス。

 『せめてアノ仔たちだけは絶対に助けるデスゥ・・・』
 ゴキンジョサンがそう言いながら仔たちが捕まっている見えない箱を下に落とそうと頑張っていたデスゥ。
 
 『イヤテチー!!タチュケテーーー!ママァーーーー!』
 下からはタクサンの仔の悲鳴と何かを砕く音が水の音に混じって聞こえてくるデス。何をしているのかは
分からないがあのアクマは仔たちを溶かして臭いモノに変えていた。アノ仔達も同じコトになるのだろう。

 『デッギャァァァァァーーー!!』
 たまにオナカマの悲鳴がしたと思うとワタシタチの足元から4本足のアクマの方へ吹っ飛んでいき嬲り殺されている
ようデス。恐ろしい・・・ママが言っていたのは本当だったんだ。たとえどんなに悪いニンゲンサンでもワタシタチを
皆殺しにはしないが、シロイアクマはワタシタチを根絶やしにすると何度も教えられた。でも現実に見たアクマは
もっと恐ろしいヤツだったデス。このアクマたちはワタシタチにイッパイ痛イことをして、イッパイ苦しめて
ゆっくりゆっくり殺すコトを楽しんでいるんデスゥ!

 『デェェ・・・アナタも手伝うデス・・・』
 ゴキンジョサンに声をかけられてワタシはわれに返ったデス。ゴキンジョサンタチは腕や頭、とにかく動かせるトコロを
必死に動かして仔たちの入った箱を落とそうとしている。ミンナ必死なのだろう。箱に押し付けられた腕や顔は
ペッチャンコに潰れ、地面には血を引きずった跡が続いている。

 『デスッ!デッスウウウウーーーー。』
 ワタシも箱を落とすべく蛆チャンのように這いながら頭で必死に箱を押したデス。顔を上げる度に仔達が泣きながら
コッチを見ているのが見えたデス。周りの悲鳴にかき消されて何を言っているのかは聞こえなかったけどワタシには
オ別レを言ってくれているのだとワカッタデス。オ腹から血を流しながらワタシ達は箱をなんとか落とせる所まで
押して行ったデス。

 『・・・恐らくこの高さから落とせば仔は死んでしまうデス。』
 誰かがそう言ったけど私達に迷いは無かったデス。万が一にも助かれば仔は生き延びてくれるハズデス。たとえ
カ〇ワになってもハゲハダカになってもコノ仔達ならばきっと強く生きてくれる・・・それに・・・アクマに恐ろしい殺され方を
されるくらいならこの高さから落ちて死んだほうがどんなに幸せか・・・
 ・・・ダメなママ達でゴメンナサイデスゥ、そう言いながらワタシ達は涙で滲む仔の顔を目に焼きつけ箱を下に落と・・・
落とせないデスゥ!?どんなに頑張っても箱がビクとも動かないデスゥ!!

 『ダワダワ、ダワ(再度残念でしたナノダワ、それと箱を“特等席”まで運んでくれてアリガトウナノダワ)』
 さっきのアクマが哀れみの混じった目でワタシ達を見下ろしながら言ったデスゥ。


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 “当り”仔を“S”と書かれた特別ブ厚い水槽に入れ瀕死の親と一緒に台の上に乗せると念の為にロッソに番を
頼んでC水槽の仔蟲の下準備にとりかかる。所謂アホな糞仔ばかりだからとっとと〆ないと共食いの恐れがある。
とりあえず片っ端から顎を砕き両腕を潰しておく。こうしておけばケンカも糞投げもあのムカつく媚も防ぐことができる。
尤も作業中は左手に糞避けのプラの下敷きを盾代わりに持ってテチュテチュという媚に必死に耐えながらの作業になるが。
 下準備が終わると今度は糞抜きだ。順番に口にホースを突っ込んで水洗いする。その間時々B水槽を睨み付け次は
自分達がこうなるということをBグループの連中に理解させる。

 『デギャアアアァァーー、デッジュウウウウウウーーーンン!!!』
 オゾマシイ声がした方を見ると程よくボコボコに変形した実装石が1匹こちらに向かって走りながら小首をかしげて
いた。本石は必死に媚ているつもりだろうが緑赤に染まったジャガイモに憐憫の情を持つほど僕も暇じゃない。ちょうど
僕の足元に来たところで再度パルタの方へ蹴り飛ばしてやる。あとはパルタが適当に“遊んで”やるだろう。よく見ると
パルタのリードの長さに気づいたヤツ等が結構いたみたいで数匹単位で隅に固まった実装石達がなんとか逃げようと
ネットに噛り付いたり、威嚇したり、媚びたりと思いつく限りの無駄な努力をしている。

 『『『『『テジャァァァァァァァァーーーーーーーーッッッ!!!!!!』』』』』
 C水槽に例の薬剤を一匙垂らすとB水槽の前に置いておく。薬の絶対量が少ないのでCグループが完全に溶け切る
までは20分以上はかかるだろう。コイツ等はこの期に及んでもまだ自分だけは助かるなんて考えているアホばかり
なのでこれ位苦しめないとそれなりの質の忌避剤にならない。ぜいぜい頑張って良い忌避剤になるついでにABクラス
の仔蟲チャンたちを脅かすんだよー。

 『デギャアアアアーーーー』『デェェェェンン、デェェェェェェーーーンンン』
 仔蟲達が溶けている間に残った親蟲たちを始末しておくことにする。と言っても隅に固まったヤツ等をパルタの方へ
蹴っ飛ばし、潰れた肉塊をチリトリで集めてドラム缶の中に捨てるだけだが。

 『デッ、デゲエエエエーーーンン!デスゥ!デス、デジェェェェェーーーン!』
 「ほれ、パルター、コイツで最後だッ!」
 必死に首を横に振りながらネットにしがみ付いていた実装石を引き剥がすとパルタに投げてやる。丁度パルタの
目の前に落ちた実装石は必死にパルタに向かって服と髪を引きちぎって土下座を繰り返していたがその意味は全く
理解してもらえないまま転がされ、潰され他の仲間と同じ肉塊になって実生を終わらせた。

 「よし、これでコッチは終わりっと。」
 総ての屍骸をドラム缶に集めると防腐剤をたっぷりと混ぜておく。これをやっとかないと明日の朝にはとんでもない
腐敗臭が辺りに漂うことになる。こんな物でも100均で売ってるような最低ランクの実装フードの材料にはなるらしく
(ストレス死したことが良いらしい)連絡しておけば業者の人が明日にでも取りに来てくれる。そのことを教えて
もらうまでは処理費用もバカにならなかったんだコレが。

 「さてアッチももういいだろう。」
 C水槽を覗くと最後の2・3匹がちょうど溶けきろうとしているところだった。その惨状を見せ付けられた
Bグループは泣いているヤツ、パニクッているヤツと様々だがそのほとんどがパンツを膨らませている。

 『テェェェェ・・・テチィッ!』
 ざっと見渡してパンコンしていないヤツをA水槽に移動させる。これは別にそんなにシビアには選別しない。


 C水槽に溜まった緑液を安定化させるとペットボトルに詰めていく。2リットルのペットボトルに2本と少し、
市販されている濃度にまで薄めれば100リットル以上の実装忌避剤の原液になる。これは朝のお礼に公園で
使ってもらう。市販されている忌避剤に比べると持続期間が圧倒的に短い粗悪品だが、もし買えばこれだけで
管理事務所の年間予算を超えるほどの量なのだからいつも非常に喜んでもらっている。特に来月は花見やら
なんやらで公園に来る人も多いから尚更に。

 「よいしょっっと!」
 “B”と“ゴミ”の水槽を台の上に置くと後片付けに入る。ドラム缶とネットを水洗いして奥にしまい込み、
床を水洗いして実装石の残骸を文字通りの汚物扱いして始末する。

 『テェェェェ・・・』
 鼻歌まじりに後片付けをする僕の姿に震え上がるSグループ。そうだよ、キミたちはこの程度の存在なのだよ。

 『『『チッギャアアアーーーーー』』』
 共食いで半分くらいになっていたゴミ水槽の糞仔蟲たちを順次雑巾絞りにして痛めつけると同時に糞抜きしてから
忌避剤に変身させてやる。わざわざ雑巾絞りにしたのはコイツ等相手に水使うのがモッタイナイのと今までの惨劇を
対岸の火事と言わんばかりに笑っていたのがムカついたからである。

 「フン、フフン〜♪」
 あえて聞こえるように歌いながら忌避剤を床に撒く。こんなド田舎に野良実装などいないと思うが(因みに
山実装は戦中にほぼ食い尽くしたとは爺ちゃんの談)一応用心しておかないと同属の肉の臭いに寄ってこられると
厄介だから。

 「さて、と」
 パルタのリードを手に取るとロッソが一人頑張っている台の方へ脚を向けた。


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 「ヨッ、お疲レーw」
 竹鞭を振るうロッソと、その竹鞭の猛攻にグズグズの肉塊になりながらも必死に仔を護りなんとか水槽を下に
落とそうと力を込めている親実装の両方にあえて軽く声をかける。その声に応えてロッソが無言で手を差し出すと
抜き取ったのかこぼれ落ちたのかは知らないが回収した親実装達の偽石を僕に渡してくれた。

 『デジェェェェェェ・・・』
 「言ったろ?努力ってのは報われないコトの方が多いって。因みに水槽を落としたければこうやって持ち上げる
必要があったんだよ。」
 そう言って水槽をほんの少し傾けて落ちないギリギリまで押し出してやると瞬時にその理屈が分かったらしく
全匹が怒りや悔しさに満ちた呻き声で応えてくれた。ホントに賢いみたい。
 なんのことはない、台の縁に1センチ角の角材を打ち付けてあるだけなのだがもともと大して良くない実装石の
視力に加え、脚を折っておいたことで腹ばい視線で物を見るしか無かったコイツ等には縁がせり上がっている
のが見えず無駄な努力を続けたばかりか結果的には僕のやっていることもパルタのやっていることも、そして
自分たちのママがロッソに痛めつけられているのも総てがよく見える特等席に仔の入った水槽を持って行って
しまったのだ。まぁ仮に理屈が理解でき五体満足であったとしても4匹でこの重い水槽を持ち上げられるかと
いえば答えはノーだけど。

 『テッチャアアーーーー』
 『チュププ…テチュププーー』
 急に足元が透明になって悲鳴をあげていた仔実装達だったが1匹の様子がおかしい。リンガルを近づけても
翻訳できない。どうやら周りの地獄絵図に耐えられず発狂したか・・・

 『チュププーーーンン♪チェ?チェジャァァァァァァァーーーーッッッ!!!』
 「はーいよく見ててネ♪おバカはこうなるんだヨw」
 この状態でも忌避剤としては使えるが敢えてS仔をびびらせるために使ったほうが効果的だろう。そう判断して
ガラス鍋に仔を放り込むと弱火でじっくり加熱する。始めは仄かに温かい鍋の中に喜んでいたみたいだが徐々に
温度が上がっていくと狂ったように(モトモト狂ってるんだけど)壁を叩き始めた。

 『チュベベベエエエエェェ−−−ッ!!』 “ポンッ!”
 両手が焼け爛れるのも構わずに鍋の内壁を叩いていた仔実装だったが、周りからジワジワと温められたことで頭の
中身が膨張したらしく勢いよく両目をとび出させると眼窩から溶けた脳ミソをダラダラと流しながら崩れ落ち後は
ジュウジュウという音がするだけになった。その光景はSクラスの仔にとどまらず全ての仔蟲達に再度恐怖を与える
には充分すぎるものだったようだ。悲鳴に混じって偽石の割れる音が幾らか聞こえた。

 『『『『『『『『テチェェェェェェンン!!』』』』』』』』
 B水槽の仔蟲達にも先程と同様の措置をして溶かす準備に入る。今度はAとSの仔実装が惨劇を直に見学させられる
ことになる。

 『『『『『『『『チッギャアアアァァァァーー!!』』』』』』』』
 ブクブクと泡立ちながら溶けていく仔蟲達。先程よりは多い目に薬剤を使っているがそれでも完全に溶け切る
にはたっぷり10分はかかるだろう。この間に親実装達を処分してしまうことにした。

 「さて、ご覧のとうりだ。どうする?カワイイ仔の最期を見取ってやるかい?やっぱメンドクサイよねー、
んじゃさっさと死のーねーw」
 そう言って親実装達の偽石を一気に砕く。別に深い意味は無い。僕に捕まりさえしなければ不快獣扱いされる
ことはあってもここまでの地獄は見ずに済んだであろう連中に対するせめてもの情けと礼だ。とは言えコイツ等の
屍骸も行き先はフード工場なんだけど。

 「後は僕一人でなんとかなるな。んじゃロッソ、オツカレサン。」
 そう言いながらロッソを台から抱き下ろしマスクをはずした僕達を見て生き残りの仔実装達が驚きに満ちた表情
に固まる。


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 『テエエエェェェーー!?(ニンゲンとア、アカイヤツ・・・テチ!?)』
 ほんの数秒間驚いた顔でいた仔実装達だったが、やがて様々な声で泣き、喚き始める。アクマならイザ知らず
ニンゲンしかも同じジッソウの頭を撫でているヤツならもしかしたら助けてくれるかもと一縷の望みにかけて僕に
命乞いをするヤツ、ジッソウ種でありながら自分達を痛めつけていたロッソに対してあらん限りの罵声を浴びせる
ヤツ、様々な声がリンガルから響き、すぐに別の声にかき消されていく。

 『・・・』
 そんな仔実装達を一瞥するとパルタを連れてロッソは無言で出て行った。無理もなかろう、食うためならニワトリ
でも潰す僕でも人間モドキを潰すのは精神的に結構堪える仕事だ。まして自分に浴びせられる罵声を理解できる
ロッソなら尚更に。
 自然界においても素手で戦えば実装種最強のグラップラーの実装紅だがそのあまりにニッチな食性の為自分の
ナワバリを荒らされたり相手が攻撃してこない限りは通常他者を攻撃することはまず無い。ましてこのクラスの
知能を持った実装石なら進んで共存することは無いにせよ殺したいとまで思うことは無いだろう。それでもロッソが
この仕事を手伝ってくれているのはひとえに僕の為だ。『コレもワタシの大事なオ仕事ナノダワ』といつも言って
くれてはいるが内心辛いのはあの背中を見ていれば分かる。いつも当然のような顔で仕事を依頼して来るあの
クソオヤジは僕達のこの心境に果たしてどこまで気づいているのやら。


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 『テチェェェェェーーーン!!チェジェェェェーーーーン!』
 A水槽の中から僕に媚びてきたヤツを中心に3分の1ほどつまみ出して手早く糞抜きを済ませるといまだブクブクと
泡立つB水槽に放り込む。不思議とコイツ等クラスには当然のように憐憫の情が湧くのでなるべく全身が浸かる
ようにやってしまう。
 
 『テ・テ・テテテテテテ・・・・・・』
 残りの仔実装達がガタガタと震えるのを横目に見ながらB水槽の中身も安定化させる。これも5リットル弱の
量になった。
 これはオヤジに渡す分。糞味噌混合で作る市販の実装忌避剤と違って比較的良質な仔のみを原材料としている
ため効果、持続期間共にすばらしい高級品だ。ビルメンテを生業にしている親父にとって植込みやゴミ置き場を荒らす
実装石は商売柄徹底的に潰したい相手ではあるのだが、まさかお客サンの目の前で糞蟲を潰すワケにもいかない上に
本人もイイ歳して頭のついた魚が食えない“コボンちゃん”がそのまま大きくなったような性格のため実装石を殺す
こと無く遠ざけることのできる良質な忌避剤は非常に重宝しているようだ(だったら自分で作れと思うのだがアノ性格
だからなぁ・・・)。どうせオヤジも費用の内に入れてお客さんに請求するのは分かっているのでタップリボッタ食って
やることにしている、ロッソの精神的慰謝料込みとして。それでも市販品に比べれば格段に安い上に質も良いんだから
別に問題は無い。


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 間違えないように“B”“C”としっかりペットボトルに記して片付けるとAとSの水槽に近づく。今までの
経験から言ってここまで来るともう攻撃する意思も何もかも萎えてしまっているため後は淡々とやっていける。

 『テエエエエェェェェンン・・・』
 “A”仔を全て服を剥ぎ取って燃やし糞抜きをしてついでに束子でガシガシ洗った後水槽の空いた所に残った薬剤を
全部ぶちまけて後は只ニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべて見下ろしつづける。
最初のうちこそ僕に向かって遠慮がちに媚びたり、揃って踊って(るつもり)みたり、あげくに土下座してみたりと
ひたすら生にしがみつく努力を続けていた“A”仔達だったが僕がただひたすら笑顔で首を横に振り続け、目障りな
コトをしたヤツから順に頭や目に竹串を突きたてていくと何をしても無駄と悟った連中から順次薬剤に飛び込んでいった。
それにつれて徐々に薬剤の量も増えていき最後まで生きる意思を示していたヤツ等も土下座したままのポーズでその
中に沈んでいった。

 「んふふフフ〜♪」
 完全に溶けきったA水槽をチャプチャプ揺らしながらS水槽に近づく。残った5匹は抱き合って泣き崩れていたが
僕が近づくと中の1匹が意を決したように立ち上がり僕に向かってテチテチと訴え始めた。


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 『テチャァッ。テチュテテエェェン!?(ニンゲンサンあんまりテチ。ワタチタチがニンゲンサンに迷惑をかけて
いるのは知ってるテチ。だからと言ってコンナ残酷な方法で殺すなんてあまりにヒドイテチ。)』
 おっ、出たな今回の大当り。可哀想だけどお前がこの後最悪の運命を歩むんだよ。

 「ははは、残酷とは心外だね。僕は公園でお前等を踏み潰して只のゴミ扱いする連中と違って少なくとも
ある程度は人間サンに役立つモノに作り変えてやってるんだぜ。お前等の仲間を追っ払うためのお薬にしてね。
それこそお前等みたいなゴミ以下をな。」

 『・・・テェェェ、テチャァァーー。テチュテチェェェェェーーン?(…ヒドイテチ、ワタチタチにだって生きる
ケンリくらいあるテチ。ジッソーセキが嫌われてるのはママからずっと聞かされてきたテチ。だから公園でヒッソリ
暮らしてたテチ。どうしてそっとしておいてくれなかったテチ?)』

 「あのな、何か勘違いしてない?お前達が住んでいた公園も始めからあんな形だったワケじゃない。そう、
僕の知る範囲で100年ほど前に畑にもならない荒地を開いて大きな工場を作って、そこを戦後しばらく…っても
分からないな、およそ50年ほど前に駅前の整備に伴って今の公園に作り変えていったんだ。まぁお前にも
分かるように言うならばお前のママのママのママのと100代以上前くらいのご先祖様の頃からあの公園は
人間が作って利用してきたんだ。その目的は人間サンとその庇護を受けるモノがくつろぎ憩うため、断じて
お前等ゴミ蟲が住んで良い場所じゃない。ただこういう目的でもない限りお前等に係わるのも面倒だから
今日まではたまたまほっとかれただけだよ。それに僕が見逃した連中も春になりゃ駆除でゴミ箱逝きだし…
いずれにせよお前等実装石の辿り着く先は地獄以外に無いのさ♪」
 コイツの頭では当然理解できないレベルの壮大なスケールの説明をしてやったつもりだったが驚いたことに
コイツは漠然とだが理解したらしい。ハラハラという感じで血涙を流しながら僕に訴えかけてきた。

 『テチュアァッ。テチテチュテチェ?テチュテチャテ・・・(その公園にママのママのママも住んでたハズテチ。
どうしてその時にメイワクだと言ってくれなかったテチ?ワタチタチもニンゲンサンに殺されるクライなら…)』

 「お前みたいに賢いヤツばっかならな。」
 『テッ!?』
 相手の発言を遮るのは僕の主義に反するが時間が勿体無いので問答を終わらせることにした。

 「そりゃ総ての実装石がお前やお前のママ程度の知恵を持って人目につかずひっそり暮らしてりゃ僕達人間も
ここまで毛嫌いすることは無かっただろうよ。でもお前は知ってるんだろ?ほとんどの実装石は愚かで傲慢で
醜く不潔だ。そして何より生物としては最低の能力しか持たないクセに本気で自分はこの世で最高の存在だと
思い込んでいる。そこでずっと見ていたんだから多くのオ仲間がどんな科白をほざいて、どんなリアクションを
してくたばっていったかは知ってるだろ?」

 『テエエエエェェ…』
 「つまり種として実装石は只のゴミ…否、処分するのにかなり手間がかかるという意味ではそれこそゴミ以下の
存在なんだよ。そんなお前達が今まで公園を使わせてもらった代償に差し出せるモノといえば命でも安いくらい、
だからせめてこうしてオ仲間を遠ざけるための忌避剤になって人間の役に…」

 『テチェェェーーン!テチーッ、テチュテチュアアーーー!(他に方法がアルはずテチ!コンナ恐ろしい目に
会わなくてもきっと生きてニンゲンサンの役に立てる方法がワタチタチにもあるはずテチ!!ニンゲンサンの愛情を
受けられるハズテチ!)』
 今度は仔実装が僕の発言を遮ってきやがった。

 『テチーッッ!テチュゥァーーッッ!テチテチュアアァァーーッ!!(オウタ歌うテチ!ダンスもするテチ!アノ赤い
オバチャンみたいにニンゲンサンのお手伝いもするテチ!!)』
 幾ら賢いとは言え所詮は仔実装か。恐怖が先行して発言がややテンプレになってきた。確かにここまでの
知能レベルならちゃんと躾ればそれなりのモノには仕上がるのかも知れないが生憎僕にはそんな趣味も暇も無い。

 「正直、今の発言には失望したよ。お前ちゃんと見てたんだろ?僕達に媚びてきた連中がどうなったか。お前達が
キレイだと思ってる歌声は僕達には雑音、カワイイと信じてるダンスや媚びは不快感を跳ね上げるだけの行為なんだよ。
尤もその上ぶっ飛んで股おっ開ろげなかっただけはまだ賢いって言ってやるけど。」
 デコピンでひっくり返した仔実装の頭を指でグリグリ押さえながら最後の説明をする。

 「それに“お手伝い”するだぁ?同属を虐殺してまで生き延びたいのかお前は?それとも僕の他の仕事を手伝える
つもりかい?悪いけど僕の本業は普通の人間でもなかなか手伝えるモノじゃない。試しにコイツを見て内容が
分かるかい?少なくともココに書かれた内容が完全に理解できなきゃ僕としては使い走りにもならないな。」
 そう言って古新聞と一緒に持ってきた官報の1枚を目の前に落としてやる。当然文字が読めないんだから内容など
理解できようハズがない。これはロッソも理解できていないけどそこはコイツに知らせる必要はない。

 『・・・・・・』
 もはや万策尽きた仔実装が無言で官報の上に赤緑のシミを落とし続ける。これでコイツは理解してくれたハズだ。
自分達がどんなに求め足掻いても人間が自分達を受け入れてくれることなど無い事と、自分達が人間の役に立つ
方法は只一つしかないという事を。


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 「ところで、アソコにお前の姉妹はいるかい?」
 残ったS仔達を指差して訪ねたが仔実装は無言で首を振った。もし姉妹がいればそいつと比べてより賢い方を
選べたんだけどな。

 「じゃとっととオワカレしろ、お前はもう少しやってもらうコトがある。」
 残りの仔実装達も服を剥ぎ取って糞抜き・水洗いしてからもう一細工。首に発泡スチロールで作った浮き輪を
つけて頭に注射を打ってからA水槽に浮かべてやる。

 『『『『『チュギュゥォォォーーーオオオッッ!!!!!』』』』』
 自分の運命を覚りながらも浮き輪のせいですぐに沈めない生き地獄の中で仔実装達が恐怖・怒り・悲しみ・絶望・etc.
その総てを表現しながら徐々に徐々に溶けていく。しかも表面が少し溶けると何故か再生が始まるためその生き地獄が
なかなか終わってくれない。次第に悲鳴がキ〇ガイじみたものに変わっていく。

 「すげーなぁー、アイツ等は実装活性剤のおかげで溶けた分だけ再生していくからなかなか死ねないんだ。」
 『テエッ?!』
 血涙でグシャグシャの梅干が僕と水槽を交互に見比べる。僕の手にした注射器の中身が自分達に死ぬことさえ
許さない恐ろしい薬だと知った仔実装がフルフルと首を横に振りながら後ずさりするがその速度はあまりにも遅い。
あっさりと捕まえると水槽の上まで連れて行く。

 『『『『『テジャチジャチュブゥゥゥ:oke;fl;[[-97p:.,----!!!』』』』』
 リンガルは動かしていないが翻訳できるようなことは喋っていないだろう。手にした仔実装も仲間の最期を見届け
ながら自分の最期を知ったかのように只ひたすらに涙を流し続ける。

 『チュギョオオオオーーーーツッ!!』
 そんな仔実装の頭に注射器を突き立て残りの活性剤を全部注入する。量にして他の連中の3倍といったところか。

 『テエッ??!』
 S仔4匹が完全に溶けきったのを見届けさせてから次は自分が溶かされると思っていた仔実装を水槽に戻し最後の
作業の準備にとりかかる。ようやく完全に溶けきったA水槽の中から未だ少し泡立っている液体を件の瓶に3分の1
ほど戻すと残りは全て安定化させる。

 「今回はかなりの量が取れたなぁ。」
 3リットル近く取れた最高級実装忌避剤に思わず歓声が出た。賢い個体だけを選別し、ソイツ等にこれでもかと
この世の地獄を見せつけ、自らの運命を覚らせた後に強制的に望まぬ自殺をさせたところに更に賢い個体を徹底的に
苦しめながら溶かし込んだ忌避剤は一般市場にはまず出回らない逸品だ。通常は医療機関や特別な動植物を保護
している施設など万が一にも実装石の侵入が許されない場所でのみ使用されており普通に買えば市販されている
最低単位の量で僕の月収くらいは軽く吹っ飛ぶほどにお高い。
 しかしそのぶん効果はテキメンで人間の嗅覚ではほとんど分からないほどにまで薄めて撒いておいても台風でも
来ない限りは1ヶ月以上実装石を近づけることは無い。賢い連中を心身共に限界まで苦しめて分泌させた警報フェロモン
はそれほどに強烈なのだ。
 これは御袋にくれてやるとあっという間に捌いてしまう。自分でもガーデニングに凝っているし、その絡みの
友人や本格的に家庭菜園をやっている知人なんかに分けて非常に喜んでもらっているらしい。僕に対する報酬が
たまに野菜が届く程度ってのは納得いかないんだけど。

 水槽を水洗いし、台そのものも奥に片付け、がらんとした納屋の床に“S”と書かれた小さな水槽が一つ、
その中に最早考える事を放棄したかのように虚ろな表情で水槽の前に置かれた件の瓶を見つめる仔実装がいた。


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 「これだけたくさん作ると匂いも強烈になってくるなーw」
 鼻をこすりながら言う僕を感情のこもらない目でチラリと見た仔実装だったがすぐに視線を戻してしまった。
僕にとっては(というより実装石以外にとっては)爽やかな“匂い”だがコイツ等実装石にとってはそれこそ
内臓がひっくり返るほどの強烈な“臭い”のハズだ、普通ならどんなに賢い仔でも多少は漏らしたり吐いたりするが
コイツにはその兆しすらない。ここまでくると逆に怖いくらいだ。
 
 『テチャァァァァァーーー!テッ!?チュギュウォォォォォーーーーッッ!!』
 服をむしってからコイツには水洗い・糞抜きをした後もう一手間、口から熱湯を流し込んで糞袋の内壁を焼き潰しておく。
万が一にも糞を漏らされると台無しになるからだ。

 「さて、これが何だか分かるよな?」
 ヒューヒューとおかしな息をして何とか熱を逃がそうとしている子実装の目の前に瓶を置きながら話しかける。

 「もうお気づきだとは思うがコイツはお前達実装石から忌避剤の成分を抽出するための溶剤、つまり忌避剤になる前の
状態だ。」
 何故今更そんな事を?と言いたげな仔実装の視線を無視して話を続ける。

 「実はな、この状態では溶けた実装石はまだ死んじゃいないんだ。いままで苦しめられ、溶かされた実装石の
怨念というか思念が渦巻いて今でもこの中で苦しみ続けている。そいつらが五体満足で動いている実装石に触れると
嫉妬心から痛めつけてやろうとか自分達と同じ目に会わせてやろうとか、本能的に喰ってやろうという意思が生じる
ために更に同属を溶かし込んでいく。お前も気づいてただろ?仔蟲達の苦しみ方が尋常じゃなかったのを。あれは手足を
食いちぎられるような物理的な痛みと同時に偽石レベルで聞こえてくる恨みや恐怖の声に情報を処理しきれなくなった
脳が全てを痛みとして処理する他なかったためにああなったんだ。つまりこの瓶の中には何千・何万の仔実装たちの
無念や恐怖が渦巻いている。言ってみりゃ老舗のおでんダシかうなぎのタレみたいな物かな?」
 さらりと言うことで仔実装の恐怖心を高めていく。

 「さっきの安定剤はそんな実装石たちを蒸発させて忌避剤の主成分、警報フェロモンって言うんだけどね、そいつだけを
取り出すための薬。つまり安定剤を加えない限り溶かされた実装石はこの中で永遠に同属の呻き声を聞きながら自分も
呻き続け、どことも分からぬまま自分の体を齧られる痛みに苦しみながら本能的に少しでも生きようと自分の体でもあり
他石の体でもある物を喰らい続けることになる。」
 改めて目の前にある物の恐ろしさを説明された仔実装が真っ白に近い顔色で総排泄口をパクパクさせ始めた。
内臓を焼いてなかったら確実に糞漏らしてたな。

 「でもな、その無間地獄もさすがに永遠には続かない。何故だか分かるか?簡単に説明すると小さくなっていく
からだ。当然溶かした液体を使って忌避剤を作る訳だから1匹あたりの物理的な質量も意思も少しずつ消費されて
いって最終的には0に近づいていく。まぁそれが唯一の救いだろうな、」

 「お前以外のヤツには。」

 『ゲヘェッ!?』
 喉を焼かれたおかしな声をあげて仔実装が僕のほうを向いた。

 「今この中には今まで溶かし込んできた賢い仔実装達と今日溶かした賢い連中の恨みや苦しみが数で言えば
何万と蠢いている。しかしその一つ一つの量は先述したようにあまりにも小さく少ない。もちろんこの状態でも
忌避剤として使うなら申し分無い代物だが忌避剤を“創る”ためのタネイモにするには少々力不足だ。これから
新たに溶かされるヤツに最初の一撃というか強烈な恐怖を伝えるいわば代表者の大きな意思が必要になる。」
 そう言いながら僕を見上げたままの仔実装を見る。

 「もう分かるよな?何故お前がココにいるのか、何故最後までこの地獄を見せつけられたか。お前にはこれから
この瓶の中で溶けてもらって亡者たちの代表者になってもらう。言ってみりゃ切込み隊長ってところかな?因みに
お前だけは他の溶かされた連中と違って次に使われるまでは100パーセント意思が残った状態でこの中で溶け続ける
からなんとなく外が見えて音も聞こえるらしい。但し意思疎通はできないし周りの残留思念からうける攻撃も他より
大きい分苦痛も尋常じゃないらしいがな。それに当然他の連中よりも“小さく”なるのに時間がかかるから多くの
同属の声が消えて逝くのを混沌の中で聞き続けることになる。」
 今まで完全に呆けていた仔実装の目に徐々に光が戻ってくる。

 「そんな顔するなよ。さっきも言ったろ?お前達が人間の役にたつ方法なんてこれくらいしか無いんだよ。否、
“お前”としてはどれくらい存在しているのかは分からんが、お前達の基準で言えばほぼ永遠に近い時間“生きて”
人間サンの役に立つんだお前にとっても本望だよなw」
 その声に光の戻った仔実装の目に血涙が溢れ出す。

 『ゲッ、テジャギヒィィーーーー!!ゲヒャァァァッ!テジャ、ジィヒャァァァーー!!(イ、嫌デジィーーーーッ!
ぞんな恐ろじいメは絶対にイヤジェヒィ!!もうイヤデジィ!いっそのことゴロジヤガレジェジィッ!!)』
 そう叫びながら腰の抜けた体で水槽の中を這いずる仔実装。活性剤を打ってなかったら確実にパキンしてる
レベルだろう。

 「まぁそう言うなこれからは飢えも寒さも関係ない処でタクサンのオトモダチと永くながーく“生き”られるんだ。
お前等実装石にとっちゃ楽園みたいなモンじゃないか。」
 そう言いながら仔実装を拾い上げると割り箸に縛り付ける。その間も暴れ・訴えかけ本能的に必死に生にしがみ
続ける。そう、お前のある意味見苦しいほどのその生への執念が必要なんだ。

 『ジェギェギャヒィィィィーーーーーーーーーーッッッッ!!!!』
 焼け潰れた喉から血を噴出しながら絶叫する仔実装を瓶に入れるとキッチリと蓋を閉めて脇に片付ける。瓶の中の
液剤は割り箸に縛り付けられた仔実装の腰くらいまでしか入っていないため活性剤が切れるまでコイツは下半身を
溶かされ続けることになる。

 『ジェジュゲハァァァァァァーーーーーー!!!』
 分厚い瓶を介して聞こえる仔実装の声を敢えて無視して後片付けをする。こうすることで仔実装に人間に対する
恐怖や絶望と同時に怒りや恨みを植えつけるとこれが他の残留思念とうまく混ざり合って同属に対する恨みに転嫁
されるらしい。特に今の僕のようにロッソ(他実装)を可愛がっていたような人間に対する恨みはそれは良いエネルギー
になるそうな。

 コロンと瓶が転がる音を聞いて瓶に近づくと脚が完全に溶けてバランスを崩した仔実装が中で顔から溶けている
ところだった。

 『・・・・・・』
 「・・・・・・」
 少し瓶を揺らしながら完全に仔実装を溶かすと無言で手を合わせてしまう。いつも無意識にやってしまうこと
なので別に気にもしていないが。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 こうやって実装忌避剤を作るようになってからもうどれくらいたつのか。きっかけが逆代先生と雑談している
ときになんとなく出た「実装忌避剤ってアレ案外高いんですよねー。」という言葉からだったのだけは覚えている。
 その時先生から「アレのほとんどは人件費だよ、ホントはあんまり教えてイイモンじゃないけど「」クン商売柄
口も固いしもし良かったら教えてあげるよ。」と液剤を少し分けてもらい同時に作るコツも教えてもらって今に
至っているが後悔していないと言えば正直嘘になるだろう。

 商売柄“汚れ”役を引き受けるのには慣れているし、どんな商売にでも穢れ的な部分は多かれ少なかれあるとは言え
やはり命を奪うというのは実装石相手でも多少は良心が痛む。コイツ等が僕達に危害を加えていない限りは。

 逆代先生が言うには実装忌避剤を作る工場の工員はよほどの精神的タフじゃなければ勤まらないそうだ。
虐待派には天職では?と訊ねたことがあるが虐待派にも情けはあるとのこと。だからと言って狂ったヒャッ派ーに
勤まるモノでも無いそうな。まぁ何となく分からんでもない、色んな意味で。
 ある意味人の心のまま鬼畜生にならなきゃできない仕事だもんな。

 昔爺ちゃんに初めて鴨撃ちに連れて行かれ、池で泳いでいた鴨が鍋になるまでを見せられながら人が生きていく上
での業を説かれたことがある。生きていくというのは食うにせよ利用するにせよ他の命を頂くことなんだと。
それを理解できない奴に生きる資格は無いということも。
 その理屈に当てはめれば実装石に生きる資格なんて無いのかも知れない。人間でもそういう奴らがたまにいるが
娯楽のためだけに他者や弱者を甚振ったり、食い物を無駄に食い荒らしたりするコイツ等を生物と定義するのは
自然に対して失礼極まることなのかも知れない。

 「実装石が生きて人間の役に立つ方法か・・・」
 さっきの仔実装の言葉をなんとなく考えてみる。だがどう考えてもそれは有り得ないことのように思えた。
 所詮人間だって種族としてはエゴのカタマリみたいなモンだ、基本的に自分達にとって有用な物で無い限りは
傍に置こうとは決してしない。そういう意味では他の生物よりも突出した“ド畜生”と言うべきかもしれない。
 例えば牛馬は労働力として、犬や猫は害獣から自分達や財産を守るガードマンとして、豚やニワトリは食料で
ない物を食料に変えるため、そして実蒼石や実装紅は緑の害獣を始末するために雇い入れるところから最初は
付き合い始め、文化レベルがある程度上がって生活に余裕ができてから初めて愛玩物としての地位を与えられたのだ。

 しかし実装石は始めに人間に提供できる労働力を何も持ち合わせていない。その癖最初から愛玩物としての、
否それ以上の地位を要求してくるために嫌われるんじゃないだろうか?一部の例外を除いてどんな生物でも自分に
対して見返りが無い限り相手に蜜を与えることはありえない。まして“計算”高いという特性を持つ人間ならば
口で無償と言っても何らかのリベートが無い限りは他者を助けることは絶対にしないだろう。たとえ常にご高説を
たれている宗教家のミナサンであっても。
 つまり実装石は愛してくれと言う前に愛される為に役立てるよう努力をしなければならないのではと思う訳だ。
この世は総てギブアンドテイクなのだから。そんな中でせいぜいコイツ等が人間の役に立てるのはこうして忌避剤に
でもなるか、実験動物になるか、良くても食用かヒャッハーされるか・・・いずれにせよ命を差し出す以外には方法は
無いんだろうな。次第に泡がおさまっていく瓶を眺めながら無理矢理そう結論づけた。まぁさっきも言ったように例外
(愛誤派)は存在するから彼等に庇護を求めれば多少は共存できるのかも知れんが。
 

 「「」よ、心配すんな。テメーが潰した相手に手ェ合わせる気持ちが有るうちは人間は畜生道には落ちんよ。」
 いつの間にか納屋の入口に立っていた爺ちゃんが僕の腹の内を見透かしたように笑いながら言った。その横には
風呂上りらしくサッパリした顔のロッソとパルタが何を言うでもなく微笑んでいた。

 「それよりもうそろそろ晩飯の時間だ。先に風呂入ってこい。」
 僕に近づきながらタオルを手渡し背中を叩く。・・・参ったな、流石僕の3倍近く生きてるバケモノだ。いろんな
意味でまだまだ勝てないよ。

 『ダワダワ。(「」、お疲れ様ナノダワ。でもオ爺サマに心配されてるようじゃマダマダナノダワ。)』
 「はいはい、そーですね。」
 なんとも言えない慈しみに満ちた目で僕を見るロッソ。傍らのパルタも無邪気な色の混じった同じような目で
僕を見ている。

 「・・・そうか、これなのかな?」

 『ダワ?』

 「いや、なんでもないよ。腹減っただーけ。」
 ロッソの頭に手を置きながらさっきの仔実装の言葉に対する答えが出たような気がした。人に限らず総ての者が
他者と共存するために持たねばならず、実装石が持ち合わせていないモノ。それはきっと他者を慈しむ心なんじゃ
ないかな?
 別に何か代償を得られずともコチラを思う心が感じられれば決して相手をゴミクズ扱いすることは無い。実装石達に
とって慈しむべきモノは基本的に我が身オンリー、どんなに賢いとされるヤツでもせいぜい身内まででそれすら
他者を欺いたり、媚びたりする為の嘘だったりすることも少なくない。実装石もたとえ物理的には不可能でも精神面で
始めに自分から“ギブ”を与えることができるようになれば他の生き物達がそうであったようにいつかは人間からの
“テイク”を得られるんじゃないかな。どれ位先の話かは別として。少なくとも忌避剤の材料になる警報フェロモンは
自分以外の者を護るために備わっているんだし。

 「まぁ最近は人間でも我が身オンリーの糞蟲が増えてきたけどね。」
 『ダワダワ?』
 一人でブツブツニヤニヤしている僕に怪訝そうな顔をしたロッソを無視して風呂場へ向かう。難しいコト考える
のは今日は終わり。後は爺ちゃんと晩飯食って、酒飲んでお泊りするだけだ。そうだ、今回は忌避剤も沢山取れたし
親父にはいつもより多い目に請求してやろーっと。

 「「」−ッ、風呂沸かしなおしたぞー。」
 「はいよー!」
 外の焚き口から聞こえた爺ちゃんの声に大きく伸びをしながら応えた。


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 前・後編読んで下さった皆さんお疲れ様でした。あんな描写もコンナ描写もと欲張っているうちに例によって長々と
した文章になってしまいました。もう好きなところだけ拾い読みしてやって下さい。

 過去スクで仔実装を溶かして忌避剤を作るネタを見て「もしそんなことができるなら主成分は何?」と思ったところから
話を練り始め乏しい知識をフルに使いなんとか纏めた文章ですので突っ込み所は多々あれど何卒ご容赦を。

 予断ですが今回登場した爺ちゃんにはほぼノンフィクションのモデルが存在します。本人曰く「元気だから死なずに
歳とった」らしいですが大正生まれってのはハッキリ言って別の生物にしか見えません。

 最後にいつもスクを読んでくださる皆さん、そして感想を下さる皆さん毎度お付き合いくださって本当にありがとう
ございます。


過去スク

sc1612. 二種混合 
sc1630. カラーマジック
sc1635. ドレスコード(前編)
sc1636. ドレスコード(後編)
sc1734. 合体!ゴジッソウ 
sc1854. 小さな〇〇のクラッシャー
sc1879. 実装観察(?)日記 
sc2067. ナイショの精錬方法(前編)


 

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