タイトル:【人 愛と哀】 人の環境次第で考えや思想も変わるモノだ
ファイル:捨てられた人化実装.txt
作者:KF 総投稿数:3 総ダウンロード数:2010 レス数:0
初投稿日時:2010/03/01-02:49:19修正日時:2010/03/01-02:49:19
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                   価値観なんて・・・・








「はあ・・・しんどい・・」

おもわずため息と文句が口からこぼれる

なんで今日に限ってオフィスのコピー機が大破すんだよ、よりによって明後日の会議の書類作ってる最中に・・・

おかげで6時に家に帰り着くはずが今や深夜11時、家に帰る途中に24時間のレストランがないから安いコンビニ弁当が今夜の晩飯

こんな気分なので実装石の託児なんて喰らいたくないから、袋の口をしっかり縛って、家路を急いでいると

「テスン・・・・・・テスン・・・・・」

どこからか女の子のすすり泣く声が聞こえてきた

「んん?・・・」

機嫌が悪いし、疲れてはいるが、なぜか物凄く気になった、なんでこんな時間に女の子の声が?とりあえず声の主を探すと

少し離れたゴミ捨て場のそばの電柱の足元に、女の子が座り込んでメソメソ泣いていた

このまま通り過ぎるような薄情な事なんてできなかったし、何よりその子を見た時、奇妙な違和感を感じた

その子の着ている服が緑色で、頭に緑色のフード(?)を被っている事だ、何ていうか・・・

「ねえ、君・・」

とりあえず声をかけてみると女の子は顔を上げた

「で・・す?・・・ワタシ?・・・・」

パッと見るとかなりの美少女だがその瞳は赤と緑のオッドアイ、少し猫っぽい口元、少しだけとがった耳

もしかして、この子は人化実装?・・でもなんでこんな所に・・・・・・と思ったら

なんと彼女の首に「捨て実装」と乱暴に殴り書きしたダンボールがぶら下っていた

「君、もしかして捨てられたの?」

後で考えてみれば随分残酷な事をダイレクトに聞いたと反省している、なぜなら・・・

「で・・・す・・ゴシュジ・・・・・てえええええええええん!!てええええええええん!!」

思い出したくない事を思い出した人化実装は火が付いたように大声でワンワン泣き出した

これがただの実装石だったら首をへし折って、そのままゴミ捨て場に放り捨てて帰るけど

相手が人化実装だとそれが出来ない、だって作りが人間みたいだし、可愛いから暴力を振るうのに激しく抵抗感がある

それに実装石と分かっていても、女の子を泣かせてしまった事がとても気まずい

「ご、ゴメンゴメン、とにかく落ち着いて落ち着いて、あっそうだ、俺の家においで、ここにいるよりはマシだから」

「ヒック・・ヒック・・・・・クスン・・・クスン・・・・」

このまま放って置くなんてできなかったのでなんとかなだめて、とりあえず連れて帰る事にした

家に上げてから砂糖多めのカフェオレを飲ませて落ち着かせてやると、人化実装はお礼を言ってから、身の上をポツリポツリと語りだした






この人化実装は元々ここから数キロ先にある公園に住んでいた野良実装石だったが

ある男に拾われて飼い実装になった(付けられた名前はリョク)、飼い主の男は虐待するでもなく、甘やかすでもなく、自分を本当の家族のように接してくれた

時にはドジをして怒られたり、時には頭を撫でながら褒めてくれたり、一緒にいろんな所に出掛けたりと本当に幸せな日々だった

そんな飼い主の愛情を受けたリョクはいつしか「もっとご主人様のお役に立てたら・・・」と考えるようになり

その純粋な想いがリョクを人化実装に変えた、「これでもっとご主人様をお手伝いできる」飼い主も喜んでくれるはずだった。

ところが用事で外出していた飼い主が帰って来て、人化したリョクの姿を見た途端、いきなり大激怒

「お前なんぞもう要らん!!」

そう怒鳴って首に例のダンボールを掛けられて家を叩き出されて、あてもなく彷徨い、疲れてあそこで泣いていた・・・・






「です・・・ゴシュジンサマ・・・・・」

そこまで話すとリョクはうつむいて、また大粒の涙をポロポロこぼして泣き出した

それにしても変な話だ・・・・リョクの話の通りなら

捨てられた原因は人化した事になる、でもそんな奴いるだろうか

服の上からでもわかる大きめで形のよい胸、スリムなボディライン、整っているけど少し幼い顔立ち、どこに捨てる理由があるのだろうか?

う〜ん、飼い主に会えば理由が解るかもしれないけど・・・・

ふとリョクが首に掛けていたダンボールが気になり、ひっくり返してみたら

飼い主らしき「猪谷 高」の下半分切れた名前と、かろうじて読める住所の書いた伝票が貼り付いていた

どうやら何かの宅配便のダンボールを無理矢理破って作ったようだ、よっぽど頭にきてたのか・・・・

まあここから先は明日調べればいい、て言うかもう疲れた

俺は買ってきたコンビニ弁当を半分にしてリョクに食べさせ、シャワーを浴びて寝る用意をしたのだが・・・・

「イッショ・・・ダメ?・・・」

ウルウルした上目遣いで裾を掴まれて、仕方なく(本当だぞ!!なんだその疑わしい目は!!)一緒に寝る事にした・・・しかし・・・

寂しいから抱きつくリョクに悪意がないのは解るけど・・・解るけど!!これは何の拷問だ!!

背中に当たるムニムニ柔らかいモノのせいですっかり眠気は吹き飛び、脳内で本能と理性の大戦争勃発、駄目だ!!耐えろ!!

傷心に付け込んで襲うなんて人として最低だ!!でも!!背中にムニムニが!!あああああ!!!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結局、俺は一睡もできなかったが、なぜか体の方は元気一杯の状態だった(理由を聞くな!!聞かないでくれ!!)












「よう「」、もう昼なのに随分眠そうだな?」

社員食堂でウトウトしながらB定食を食べている所に、同僚の吉明が自分の飯を持って向かいの席に座った

「なんだよ?」

「いやさ、朝からまるでゾンビみたいに頭を揺らして仕事してんの見りゃ気になるぜ、どうしたのさ?」

そこまで俺酷かったのか・・・

「いやさ、実は実装石を拾ったんだよ」

「は?お前確か無関心派だって言ってたじゃん、もしかして虐待に目覚めたか」

そう言えば吉明は虐待派だったっけ

「違う、お前と一緒にするな」

「はあ?じゃあ愛護かよ・・お前さあ、そっちは・・・」

忘れてた、吉明は愛護派が大嫌いだったっけ

「人化実装だよ」

どうせ隠す理由なんてないから本当の事を教えた、すると次の瞬間テーブルから吉明が一瞬で消えて(クロック*ップ?)俺の足元で土下座してた

「偉大なる「」様、どうか彼女の出来ない哀れな私めに、その人化実装をお譲り下さいませ、どうか護慈悲を」

「お前アホだろ、全く・・・」

しかし吉明、お前は本当にコロコロ態度を変える奴だな〜、まあそこが憎めないんだけど

「駄目?」

「駄目に決まってるだろーが」

「じゃあさ、どこで拾ったのさ、それだけでも教えてくれよ」

吉明にせびられて俺はリョクを拾った経緯と彼女の身の上話を話した・・・・

「へ〜、世の中には解らない奴もいるもんだな〜」

「お前に言われたら終わりだな」

「ヒドッ!!・・・それはそうと飼い主らしい奴に会いに行くのか?」

「ああ、このままじゃどうも俺が納得いかないし、リョクが可愛そうだからな」

「なんだそりゃ、お前なんで実装なんかの為にそこまでするんだよ?」

俺だってなぜそこまでしたいのか解らない、でも頭の中のモヤモヤをスッキリする為にはどうしても会わなきゃいけない気がする

「やめとけよ、そこまでする理由がどこにあるんだよ、どうせ実装石だろ、だから・・・・」

「何があってもお前だけは絶対に家に呼ばん・・・」

「そんな酷い事言わないで〜「」様〜、どうか一目だけでもその人化実装に会わせて〜」









昨日より早く仕事も終わり、帰る途中にリョクの元飼い主(らしき)の所に寄ろうと思ってたのに吉明が

「そのリョクって子に会いたい!!会いたい!!会いたい!!」

まるでデパートでオモチャをねだる駄々っ子みたいに喚くので、仕方なく一度家に帰る羽目になった

「ただいまー」

「です・・です、オカエリです!!」

一人(一匹?)でお留守番していたリョクが、ドアを開けた途端飛び付いてきた、よっぽど寂しかったようだ

「うわあ、リョク!!落ち着け!!落ち着くんだ!!」

「です、ですです〜」

嬉しそうに体を摺り寄せてくるリョクをなんとか引き剥がしてとりあえず家に入る

「いいな〜・・・ってチョット「」!!俺も家に入れてくれよ!!」

あ、吉明忘れてた





「えーっと、リョクちゃんだったっけ。これから君にいくらか質問をするよ」

「です?ハイです」

初めて生で見る人化実装に一通り大興奮した吉明は、リョクにいくつかの質問を始めた

物の名前、喋れる単語、道具の使い方や理解力、文字の読み書き、eto・・・・

時間にして1時間程だっただろうか、やっと吉明の質問が終わった

「です・・ツカレタです」

リョクはいきなりの質問攻めでクタクタになっているが、吉明はかなり神妙な顔をしている

「なあ「」、ちょとこいつは少しまずいかもしれないぞ・・・・」

「な・・・なんだよ吉明?この子がどうしたんだってんだ」

もしかしてリョクは盗難届けが出てるのか?

「違う・・・指が五指ちゃんとあるし、片言だけど人の言葉が喋れる・・・・この子はレアだ・・・・レア人化実装だ」

「は?・・それのどこがまずいんだ?」

「そうか・・・「」は知らなくても無理ないか・・・・「」、パソコン借りるぞ」

そう言って吉明は勝手に俺のパソコンを立ち上げると、あるオークションサイトを開いた、そこには

『人化実装・ノーマル・¥4000000より開始・入札締め切りはX日22時』

『人化実装・姉妹・ノーマル・¥8500000より開始・入札締め切りはX日24時』

『人化実装・レア・¥20000000より開始・入札締め切りはXX日12時』

実装石に疎い俺でもすぐに解った、それは人化実装の売買オークションのサイト

「吉明・・・これって・・・・」

「言っておくがこれはデタラメサイトじゃない、人化実装は滅多な事では生まれない存在だから

欲しがる人間の方が圧倒的に多い、だから金持ちの中にはいくら札束を積んででも欲しいって奴や

多少非合法な手段を使ってでも手に入れたいって奴がいる、ましてやレアタイプならなおさらだ」

「マジかよ・・・・」

「それにレアタイプは捨て値で売っても2000万以上の値段だ、そんなのを只のサラリーマンが飼っているなんて周囲に広まれば・・・・」

その先は言われなくても簡単に想像がつく、と言うより考えたくない・・・・・

「あ・・すまん、脅かしすぎたか・・・心配するな、きちんと手を打てば大丈夫だって」

「たとえば?」

とりあえずここは吉明の方が実装関係に詳しいから、彼のアドバイスを受ける事にした

「まず服、普通の女の子が着る服を着せて、その緑の服とフードを着ないようにした方がいい

それからカラーコンタクト、黒か茶色を外出する時に付けておけばそれだけでも十分誤魔化せる

後は言葉使いかな?勉強には教育TVの幼児向け番組なんかが解りやすくていいかもしれないな」

なるほど、だが吉明よ、できれば仕事の時もそれだけイキイキしてくれれば・・・・・

しかし吉明のアドバイスは参考になるな

「そうなると・・・・まずは服の調達からか・・・・・」

「そうだな、最初はユニ*ロ辺りで揃えてからってオイ!!マジで飼うつもりか「」!!」

「そうだけど、それがどうした?」

今更何を驚いている吉明、だから色々聞いたんじゃないか

「・・・・まあしょうがないか、じゃあ俺も手伝うよ、じゃあリョクちゃん、まずはスリーサイズを測るから服を脱いで・・・・」

「吉明、やっぱお前帰れ」












次の日、てか昨日行く暇が無くなったので、改めて例の住所のマンションを訪れた

見た目は今風の新しいデザイナーズマンションみたいだけど・・・・・・本当にいるのかな?リョクの元飼い主

とりあえず住所の部屋に到着したのでインターホンを押して見る

「はい、猪谷ですけど。どちら様ですか?」

「あのすいません、私「」と申しますけど捨て実装石の件で・・・」

「ちょっと待ってて下さい」

どうやら当たりのようだ、鍵をいじる音がした後、ドアが開いた

「どうぞ」

なんとなくノッペリした顔の男がドアを開けて、そこに立っていた

「・・あ、すいません、失礼します・・」





その青年は「猪谷 高四郎」と言う名前で在宅ビジネスと株主投資でそこそこ裕福な生活らしい・・・・・しかし・・・

随分と生活感の無い家だ・・・・・仕事に必要な物以外にある物と言えば

基本的な家具と実装石の飼育セットしかない。

「殺風景な部屋でしょ」

コーヒーを持って猪谷が隣のリビングから出て来た

「あ・・いえ、その・・・・えーっと、リョクの事なんですけど」

「悪いですけど、二度と会う気はないですよ」

マジか・・・けど、

「何で?一体リョクのどこが・・・」

「あの姿ですよ」

「え?」

「・・・・少し、長い話になりますけど・・・・・」

そう言って、猪谷は自分の身の上話を始めた












猪谷は産まれる直前に母親の胎内にいる時に母親が交通事故に遭った

極めて危険な状態ではあったが、辛うじて母子共に一命を取り留めたのだが、とんでもない代償を払う事になった

彼は事故の際に顔面の骨が破損して、とてつもない醜い顔になってしまったのだ

そのあまりの醜さに、母親は僅か3ヶ月足らずで彼を捨てて蒸発した

後に残った父親は、彼の顔を戻せないかと医者に相談したが、ある程度成長してからじゃないと完全な整形ができないのと、

それなりに戻すのにも莫大な金が必要になるが故、その時は諦めざるを得ず

父親は彼を祖父の所に預けて金を稼ぐ為に出稼ぎに出掛けた

そして彼の地獄が始まった

その醜い顔が故、世間から「悪魔」「化物」呼ばわりは当たり前、

小学校に入学する歳になればPTAから入学の猛反対を受け、たらい回しの末に全ての学校から入学を拒否、

それ故、全ての勉強は祖父が教えてくれた

しかも、世間の人達は

「あそこの家には奇形児が住んでいる」

「あそこの家の子供は実装石との間の子供だからあんなに醜いんだ」

「あそこの家の老人は頭がおかしい奴で、実装石を自分の孫だって言い張ってる」

そんな根も葉もない噂が立つや否や、嫌がらせはもっと酷くなった

石を投げ込まれたり落書きや脅迫電話、火炎ビンだって投げ込まれた事もあった

そんな生活が彼の人生に人間不信と言う暗い影を落とした

そんなある日、祖父が彼の為に実蒼石と実装紅を買ってきたのだが、二匹とも彼の顔を見た途端

「冗談じゃないボク(ダワ)!!こんな化物と暮らすくらいなら野良生活の方がずっとマシボク(ダワ)!!」

それだけ言ってあっさりと逃げ出して行った。この出来事は彼にとってあまりにもショックが大きかった

「自分は人間どころか実装にまで拒絶されている・・・・」

その事実は子供には耐え切れないほど重かった

もう何もかもがイヤになり、絶望に心が塗り潰されそうになっていた数日後

縁側からボンヤリ外を眺めていると、庭の隅で何かが動いているのに気が付いた、どうやら野良実装石のようだ

おそらく渡りの途中で何かに襲われたのだろう

ボロボロで片腕の無い親実装石と痩せこけた仔実装石は彼の姿を見つけるとヨロヨロしながらも近付いて何かを訴え始めた

興味を持った彼は携帯電話のリンガルのアプリを起動させて実装親子に話かけた

「君達は家に何か用かい?」

彼の問いかけに親実装が答えた

「ニンゲンサンお願いがあるデス、ワタシはいいデスから子供になにかお恵み下さい、お願いします・・・」

そう言って親はよろけながらも彼に土下座した、よほど切羽詰ってたのだろう

「ニンゲンサン、ワタチよりママにゴハンを食べさせて下さいテチ。ママはもう3日も食べてないテチ

このままじゃママが死んじゃうテチ、ワタチは昨日食べたから大丈夫テチ!!」

気丈に振舞う仔実装のお腹の虫はグーグー泣いている、食べ盛りなのに相当無理をしているのが解る

その時彼はこの親子にこんな質問をした

「君達は僕を見てどう思う?」

彼はこの親子に自分の顔を良く見せた、しかし

「ニンゲンサンどうしたデス?ニンゲンサンはニンゲンサンデス」

「テチ?ニンゲンサンのお顔に変なものは付いてないテチ」

実装親子は彼の顔を見ても怖がりもしなければ、見下しもしなかった。

自分の顔を怖がらない存在がいる、彼にとって産まれて始めての体験だった

「ねえ君達、家の飼い実装にならない?」

「デデ!!でもワタシは野良デス!!だからニンゲンサンの迷惑に・・・」

その親はかなり賢い個体で、自分の身分を十分にわきまえていた、

「そんな事気にしなくていいから、おじいちゃんには僕がちゃんと言うから」

そんな振って沸いた幸福に親子は涙を流して喜んだ。これが彼と実装石の生活の始まりだった

その親子は野良とは思えない程優秀な実装石で、寂しかった彼の初めての友達となり、彼の心を癒してくれた

しかし、彼が実装石を飼っている「愛護派」のレッテルが付くと周囲の嫌がらせは更に酷くなった

そんな12歳のある日、人目に付かない深夜に実装親子と日課の散歩に出掛けた時の事だった

恐らく深夜、いつも散歩に出掛けるのを誰か見ていたのだろう、

いきなり数人の高校生が難癖つけて殴りかかって来た、助けに入った親子は彼の目の前で殺された

ゲラゲラ笑いながら実装親子を殺している高校生から助けようと、殴られながらも彼は近くに転がっていた木の棒を振り回し、なんとか高校生達を追い払った

しかし時既に遅く、親子はもう偽石まで踏み壊されて完全に死んでいた

彼は泣きながら親子の死体を持ち帰り庭先に埋めた。そしてその日の朝、いきなり警察が彼の家に来て

「この家の子供が複数の高校生にいきなり暴力を振るい、何人かが大怪我をした」

と言いだしたのだ、もちろん彼は深夜に何があったのかは正直に全て話した、殴られた痣だって見せた

ところが警察は彼の言うことには耳を貸さず、一方的に「少年の一方的な傷害事件」として立件した

彼の家族は嵌められたのだ、気味の悪い一家を一日でも早く追い出したい周囲の住民に・・・・











「あの事件以来、私は家族以外の人間を、世界を憎みました。」

長い話を区切るように青年は一息ついてコーヒーを飲んだ

「それで、あの・・・」

「あの事件の後、私達の家族はあの地域から追い出されました、『化物は出て行け!!じゃなきゃ殺す』って言われてね

それからしばらくして顔の整形をしたんですけど、人間嫌いは今も治ってません、

だからこそ人に会わないでも金が稼げる在宅ビジネスで生計を立ててるんです

それに・・・もう家族はみんな他界しましたし・・・・」

「じゃあリョクを追い出したのって」

「人間と同じ姿、いくらあれが実装石だと解っていても駄目なんです、あの姿をみると激しい嫌悪感と殺意が沸いてくる

だから追い出した・・・・・・仕方なかったんです」

「そうだったんですか」

もしかしてとは思ってはいたけど、そんな深い理由があったなんて・・・





結局、彼の話とリョクの話を合わせた俺なりの結論は

リョクに悪気は決してなかった、ただ男の愛情に答えたくて、役に立ちたくて、喜んでもらいたくて人化した

もし彼が普通の愛護派ならば喜んでくれただろう、今以上に大切にしてくれただろう

だが彼は普通じゃなかった、彼は人間を憎んでいた、それ故に人間の姿になったリョクを見た途端

彼の中で「家族のリョク」は「憎い人間の姿になったリョク」に代わってしまい、彼とリョクの幸せな関係は壊れた

しかしそれが解ったとしても俺には何も出来ない。只、俺の疑問は解消しただけだった














あれから4ヶ月、リョクは今でも俺の家にいる

あの後、猪谷青年からリョクの飼育登録許可証やら手続きの書類を貰って家に帰り、リョクに全てを話した

リョクはしばらくショックでふさぎ込んでいたが、しばらくして吹っ切れたのか、本来の明るさを少しづつ取り戻した

それにほとんど毎日のように吉明が尋ねて来ては騒いでいるのでそれもあったからだろう

それに人間の言葉や常識を勉強したリョクは、今では目の色に気付かなければ普通の女の子と変わらない位に振舞えるようになり

最早「飼っている」よりも「同棲」しているような状態だ

それと俺はあの日以来、猪谷青年には会っていない、彼はあの後すぐに引っ越したらしい

多分偶然でもリョクに会いたくなかったからなのかもしれない、あくまでも俺の推測だけど






彼は今でも実装石を飼っているんだろう、彼にとって心を許せる存在はきっと実装石しかいないだろうから

でも・・・・優秀な実装石は本当の愛情を貰えば人の姿になる、その愛情に答える為に

そしてその瞬間、愛情は嫌悪と憎しみに変わる、人間を憎んでいる彼にとってその姿は嫌悪と憎悪の塊にしか見えないだろうから















あれから2年たったある夜、花梨(リョクの名前を人間風に変えた)とTVを見ていたら猪谷青年が出ていた

『実装さんと暮らしている愛護派青年』のタイトルで

TVの向こうで、実装さんと幸せそうに暮らしている猪谷青年を見て

「あの姿だったら私捨てられなかったのかな?」

花梨はちょっと寂しそうに呟いた

「俺は今のままがいい、花梨が実装さんになったら一緒に暮らせないだろ」

「ですぅ・・・」









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